主要成果
武漢紡織大学と同済病院の研究チームは、酵素を一切使用せずに間質液(ISF)中のグルコース濃度を測定できる、手首装着型のホロウ(中空)マイクロニードルプラットフォームを開発しました。本研究はNature Communicationsに掲載され、ラットを用いた迅速な間質液抽出と準連続的なモニタリングの実証に加え、1名のヒト被験者において予備的な実現可能性が示されました。
技術・詳細
本プラットフォームは、主に2つのモジュールで構成されています。
- 流体抽出モジュール: 中空マイクロニードルを用いて皮膚直下の間質液に痛みのない方法でアクセスし、負圧によって少量の流体を分離可能なセンサーカートリッジへ吸引します。これにより、皮膚組織を電極から物理的に分離して保護し、カートリッジの洗浄・再利用を可能にしています。
- 電気化学センシングモジュール: 触媒表面積を最大化したAu–Pt/Niフォーム複合体の3次元多孔質構造電極を採用しています。測定前に短いカソードパルスを印加して「水素発生反応」を誘発し、電極表面でプロトンを消費して水酸化物イオンを生成させることで、局所的に一時的なアルカリ性微小環境を構築します。この環境下で非酵素触媒が効率的にグルコースを酸化させ、得られた電流値から濃度を算出します。
また、統合されたpHフィードバック機構によるクローズドループ制御を搭載しており、必要な範囲内でのみアルカリ界面を生成します。これにより、組織へのダメージや測定への干渉を防ぎ、抽出量やグルコース濃度の変動に適応させることが可能です。
背景・業界の文脈
従来の商用血糖値モニターの多くは、グルコースオキシダーゼという酵素に依存しています。しかし、この酵素は熱やpHの変化、時間の経過によって活性を失うという根本的な弱点がありました。一方、金属電極で直接グルコースを酸化させる非酵素式センサーは安定性に優れていますが、多くの触媒がアルカリ性条件下で最適に動作するのに対し、生体内の間質液はpH約7.4の中性に近いという乖離がありました。これまでの手法では外部からアルカリ溶液を添加する必要があり、ウェアラブルデバイスへの実装は困難とされてきました。
今後の展望
in vitro実験およびラットを用いたin vivo研究では、迅速な流体抽出と準連続的なモニタリング能力が確認されました。ヒト被験者による初期テストでも、手首から間質液を抽出し、信頼性の高い非酵素的測定値を得られることが示されています。手首装着型という形状は、既存のスマートウォッチなどのウェアラブルエコシステムへの統合を容易にします。さらに、酵素ベースのセンサーが劣化により7〜14日ごとの交換を必要とするのに対し、本システムのカートリッジは再利用可能なため、デバイス寿命の劇的な延長が期待されます。
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