主要成果
2026年10月13日、中国浙江省の舟山沖において、世界初となる商用ベースの船間グリーンアンモニア燃料供給(バンカリング)が完了した。このオペレーションでは、専用の液体アンモニアバンカリング船「Shenghang Yongle」から、ベルギーのCMB.TECH社が所有するアンモニア燃料船「Mineral Europa」へ、計1,000トンのグリーンアンモニアが転送された。今回の成功は、国際海運におけるグリーン燃料の適用可能性を示す重要な成果となった。
技術・詳細
バンカリングとは船舶への燃料補給プロセスを指す。今回実施された「船間バンカリング」は、船舶が陸上のターミナルに接岸することなく、燃料タンカーが受給船の横に並んで直接燃料を転送する手法である。これにより、補給に要する時間の短縮と港湾混雑の緩和という明確なメリットが得られる。
供給されたグリーンアンモニアは、吉林省にある中国エネルギー工程公司(CEEC)の松原水素エネルギー工業園で生産されたものである。同施設は、再生可能エネルギー由来の電力を用いて生産を行う、世界最大規模のグリーン水素・アンモニア・メタノール統合プロジェクトである。
背景・業界の文脈
グリーンアンモニアは、再生可能エネルギーを用いて製造でき、液体として貯蔵可能で、燃焼時に二酸化炭素を排出しないため、遠洋航海における極めて有望な燃料と見なされている。また、既存の有害化学物質の貯蔵・輸送インフラを転用できる点も利点である。一方で、アンモニアは毒性を持つため厳格な安全管理が不可欠であり、従来の船舶燃料よりもコストが高いという課題がある。今回の舟山でのオペレーションは、商用条件下において安全管理と物流体制が十分に機能するかを検証することを目的として設計された。
今後の展望
これまでグローバル海運におけるグリーンアンモニアの活用は、試験的な小規模実証段階に留まっていた。しかし、今回の商用バンカリングの成功により、「生産・貯蔵・輸送・補給・利用」という統合的なグリーン海運サービスネットワークの実現可能性が検証された。CEEC Hydrogen Energyの李景光(Li Jingguang)会長は、これがゼロカーボン海運の新たな段階への移行であり、中国がグリーン海運の新たな軌道に確実な一歩を踏み出したと述べている。今後は、中国産グリーンアンモニアの大規模輸出や、アンモニア専用バンカリング艦隊の構築に向けた再現可能なビジネスモデルとなることが期待される。なお、燃料補給を終えたMineral Europaは、舟山を出港し、商用貨物輸送のためオーストラリアへ向かう予定である。
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