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ダッソー・システムズ 企業解説

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COMPANY PROFILE / マテリアルインフォマティクス

ダッソー・システムズ
― 材料シミュレーションの老舗ソフト「Materials Studio」に、公開の機械学習力場を取り込む

Dassault Systèmes(ダッソー・システムズ)は、CATIAやSOLIDWORKSで知られるフランスの大手ソフトウェア会社です。材料向けは、ライフサイエンスと材料の研究のためのブランド「BIOVIA」が担い、その看板製品が、材料の原子・分子レベルの計算ソフトMaterials Studioです。

2025年12月に公開された最新版(2026版)は、外部で作られた機械学習力場「MACE」を取り込み、自社データで微調整する機能を備えました。本稿は会社全体ではなく、材料向けのソフトに絞って、何を提供し、どこから技術やデータを取り入れ、何が確認できないかを整理します。BIOVIAや材料向けの売上は開示されていません。

構成:Dassault Systèmesの2025 Universal Registration Document(2026年3月提出)、公式サイトの製品ページ、データシート、リリースノートを一次情報として使用/最終更新 2026年10月22日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるDassault Systèmesと、マテリアルインフォマティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. マテリアルインフォマティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(全社は簡潔に)
  5. マテリアルインフォマティクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はマテリアルインフォマティクスで何を目指しているか
  9. マテリアルインフォマティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集
  13. 出典
  14. 主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるダッソー・システムズと、マテリアルインフォマティクスでの立ち位置

正式名称Dassault Systèmes SESE(欧州会社)。2015年に株式会社(SA)から変更
本社フランス・ヴェリジー=
ヴィラクブレ
10 rue Marcel Dassault
上場Euronext Paris(CAC 40)2025年のURDの記載
MIでの類型MIソフト・材料AI
(主)
材料向けはBIOVIAブランド
材料向けの主製品BIOVIA Materials Studio2026版を2025年12月1日に公開
機械学習力場MACE系を搭載外部のモデルを取り込み、微調整できる
材料向けの売上非公表BIOVIA単独の売上も開示なし
BIOVIAの由来2014年にブランドを創設Accelrysの買収に伴う(URD)
まず押さえるべき1点

マテリアルインフォマティクス(MI)とは、材料のデータを集め、AIや計算で性質を予測・設計し、実験で確かめるという流れで新しい材料を探す方法です。Dassault Systèmesは、この流れのうち「予測・設計」を、原子・分子レベルの計算ソフトで行う側にいます 事実。AIの会社が新しいモデルを作るのとは違い、長年の計算ソフトの中に、外部で公開された機械学習力場を取り込む形で、機械学習を取り入れています 事実。

ただし、会社全体は設計・製造・シミュレーションなど広い事業で、材料向けは一部です。URDは、ライフサイエンス・ヘルスケア部門(MedidataとBIOVIAなどを含む)が非IFRSソフト売上の21%と記載するだけで、BIOVIAや材料向けの金額は開示されていません 未確定/将来。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:社名は Dassault Systèmes(è にアクセント)。日本語では「ダッソー・システムズ」。法人格は SE(欧州会社)です。BIOVIAは、同社のライフサイエンスと材料向けのブランド名で、別会社ではありません。Materials StudioはBIOVIAの製品名です。本稿では、会社全体を「Dassault Systèmes」、材料向けの部門・ブランドを「BIOVIA」と書き分けます。

公式サイト:https://www.3ds.com/

3. マテリアルインフォマティクスの世界で、この会社はどこにいるか

マテリアルインフォマティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「MIの会社」でも、データ→設計→実験のどこを担うかで、強みと課題が違う 基盤モデル・計算基盤 MIソフト・材料AI 自動実験・ロボット 応用する側 データと計算でAIを作る 解析ソフトと材料AI ロボットで実験を回す 電池・化学・半導体など Google DeepMind/Microsoft Meta/NVIDIA Citrine/Schrödinger Preferred Networks/CuspAI Chemspeed/Radical AI Periodic Labs/Lila Sciences SES AI/Mitsui Chemicals Applied Materials 大規模な計算と人材 使いやすさとデータ 実験を回す速度 実際の材料と市場 実験での検証は他者頼み 顧客のデータ次第 設備費と再現性 内製の人材とデータ不足 Dassault Systèmesは左から2番目の「MIソフト・材料AI」。計算ソフトの老舗が機械学習力場を取り込む 強みは長年の計算ソフトと使いやすさ、課題は機械学習の中核を外部モデルに頼る点(本稿の整理)
図1 マテリアルインフォマティクスに関わる企業の4類型と、Dassault Systèmesの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。Dassault SystèmesがBIOVIAブランドで材料向けの計算ソフトを提供していることは、URDと公式資料の記載に基づきます。

MIの会社は、同じ「AI」でもデータ集め→予測・設計→実験で確かめるのどこを担うかで性格が変わります。BIOVIAの位置を、この流れの上に置くと次のとおりです。

BIOVIAはMIの流れのどこを担うか 主な担当は「予測・設計」の計算ソフト。データは顧客のものと公開データを使い、実験は顧客が行う ① データを集める ② 予測・設計する ③ 実験で確かめる Pipeline Pilot (データ処理の流れの基盤) CCDCの結晶データを 検索に利用 材料データ事業は確認できず 量子から古典まで CASTEP・DMol3・ONETEP Forcite・GULP・COMPASS III MACE(機械学習力場) Python・MACE微調整 実験室や品質の 情報管理ソフトも持つ (URD)。材料向けでの 利用実績は 確認できなかった BIOVIAの主な担当は「② 予測・設計」の計算ソフト。機械学習力場は外部のモデルを取り込む 計算で実験の回数を減らすことが製品の位置づけ(会社の説明)。減らせる程度の数字は示されていない 主に担う 一部・確認できた範囲
図解 BIOVIAがMIの流れのどこを担うか。区分は本稿が公開資料から整理したもの 本稿の計算。製品は出典3・4・5、実験室向けソフトは出典1による。

量子力学の計算は本シリーズの技術解説「密度汎関数理論の基礎」を、分子動力学は「分子動力学」を、機械学習力場は「機械学習原子間ポテンシャル」「マルチスケールシミュレーションとデジタルツイン」を参照してください。

4. 会社の規模(全社は簡潔に)

全社の規模だけを押さえます 事実。

指標(IFRS・百万€)2024年12月期2025年12月期
売上高6,213.66,235.8
 うちソフトウェア売上5,613.35,641.0
営業利益1,359.61,354.3
研究開発費1,286.21,323.3
項目内容
従業員約25,000人(2025年12月31日)。うち研究開発は9,968人(約40%)、博士号取得者は1,000人超
拠点・顧客世界188拠点。390,000社超の顧客(URD)
本社所在地フランス・ヴェリジー=ヴィラクブレ
上場市場Euronext Paris。CAC 40の構成銘柄
部門別のソフト売上(非IFRS)製造業 71%、ライフサイエンス・ヘルスケア 21%、インフラ・都市 8%(2025年)
ここで注意

上の数字は会社全体のものです。材料向けの規模を示す数字ではありません。ライフサイエンス・ヘルスケアの21%には、Medidataなど臨床試験向けの事業が含まれ、BIOVIAや材料向けの内訳は示されていません。研究開発費1,323.3百万€も全社のものです。材料向けの売上・研究開発費・人員はいずれも非公表で、本稿は推計もしません 未確定/将来。

5. マテリアルインフォマティクスにかけているリソース

材料向けの人員・予算は非公表です。公式資料から読み取れる範囲を、確認できなかった項目を含めて示します。

リソースの種類内容区分
人全社の研究開発人員は9,968人(約40%)、博士号取得者は1,000人超。BIOVIA・材料向けの専任人数は非公表事実(材料向けは非公表)
金全社の研究開発費は1,323.3百万€(2025年。政府の助成41.8百万€を受けている)。材料向けの内訳は非公表事実(内訳は非公表)
外部への出資・買収・合弁・事業売却買収:2014年にAccelrysを買収し、BIOVIAブランドを創設(URDの沿革)。材料向けのスタートアップへの出資・新たな買収は、URDに記載が見当たらなかった事実(その他は確認できず)
大学・研究機関・公的資金との連携ソフトに学術コードの版(GULP 6.4、ONETEP 7.3.95など)を取り込み、CCDCのデータベース検索にAPIを利用(リリースノート)。URDには、ガラス包装の製造会社とコンサルティング会社がBIOVIAを使って包装を軽量化した研究プロジェクトの記載(数値なし)。公的資金の記載は見当たらなかった事実(公的資金は確認できず)

主要な製品の状況

会社の公式資料で確認できた範囲です。性能に関する記述は会社の説明で、本稿は再現・検証していません。

名称種別内容(公表された仕様・対象・条件)公開の形・ライセンス段階日付出典
BIOVIA Materials Studio材料の原子・分子シミュレーションの統合環境触媒、高分子、複合材料、金属・合金、医薬、電池などの研究者向け。「実験の前に計算で試す(in silico first)」考え方で、物理実験を減らすことをうたう(会社の説明)。25年超の歴史商用。価格・ライセンス条件は確認できなかった提供2026版 2025年12月1日出典3・4
Materials Studio 2026の新機能版のアップデートMaterialsScriptにPythonを追加、MACEの微調整、FlexTSによる反応経路探索、粘度計算の新しい手順、CASTEPの高速化(ACE)、DFTB+のGPU対応など商用提供2025年12月1日出典5・4
MACE系の機械学習力場機械学習原子間ポテンシャルMACE-OFF23(分子用)とMACE-MP-0(固体用)は2025版で追加。2026版でMACE-MP-0は、完全な基盤モデルに拡張したMACE-MP-0b3に置き換わり、MACE-MATPES-r2SCAN-0が加わった。後者は、Metaの公開データOMat24で学習し、MatPES(Materials Projectの一部をr2SCAN法で再計算したデータ)で微調整されたモデルとデータシートが説明。モデルのライセンスは本稿では確認していない製品に搭載。モデルは外部で公開されたもの提供2025版/2026版出典4
Pipeline Pilot Materials Studio Collectionワークフロー基盤「MACE Fine Tuning」プロトコルで、自社のデータ(Study Table)を使ってMACEを微調整できる商用提供2025年12月1日出典4・5
Materials Studio Simulation on 3DEXPERIENCEクラウド版安全で共同作業ができるクラウド環境で、原子・メソスケールのモデルを作り、計算・解析する商用提供日付の記載なし出典3

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1981年Dassault Systèmes創業(データシートの記載)CATIAなど設計ソフトの会社として
2014年Accelrysを買収し、BIOVIAブランドを創設(URD)材料・化学・生物の計算とデータ管理ソフトを取り込んだ
2015年法人格をSAからSE(欧州会社)に変更(URD)会社の形態の変更
2025年版Materials StudioにMACE機械学習力場(MACE-OFF23・MACE-MP-0)を導入(データシート)機械学習力場を製品に取り入れた最初の版
2025年URDが、「AIネイティブ」な3つの提供形態(Virtual Companions・Generative Experiences・Virtual Twins as a Service)を導入したと記載全社のAI戦略。BIOVIAでは新規の分子・材料の探索にも使うと説明(戦略の表明)
2025年12月1日Materials Studio 2026を公開Python対応、MACE微調整、反応経路探索など
2026年3月31日2025 Universal Registration Documentを提出全社の規模・戦略の一次資料

7. 今後の計画

Materials Studioの次の版確認できなかった版の日程の記載なし
材料向けの目標確認できなかった売上・利用者数の数値目標の記載なし
機械学習力場の拡張確認できなかった新しいモデルの追加計画の記載なし
全社のAI戦略2026年に「AIを具体的な価値に」URDの戦略表明。材料向けの個別の計画ではない

URDは、2026年に「AIをすべての産業で具体的な価値に変える」と述べています 未確定/将来が、材料向けの具体的な日程・数値目標はありません。

確認できなかったこと

次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。

Materials Studioの次の版の時期/BIOVIA・材料向けの売上・人員・投資額/機械学習力場の自社開発の計画/取り込んだ外部モデルのライセンス条件。「BIOVIAの材料向けが○%伸びる」といった報道ベースの話は、本稿では採用しません。

8. この会社はマテリアルインフォマティクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
機械学習力場は自社で一から作らず、公開されたモデルとデータを取り込む方針データシートが、MACE(外部の論文を引用)、Metaの OMat24、MatPES を製品の中核の説明に使っている推測
既存の量子・古典の計算に、機械学習力場を追加の道具として差し込むForciteでMACEを使えるようにし、CASTEPなど既存のモジュールも並行して改良(GPU対応・高速化)推測
材料研究を「バーチャルツイン」の枠で位置づけているURDがBIOVIAを「生物と材料のR&Dのバーチャルツイン」で実験の前にシミュレーションする、と説明事実(会社の位置づけの表明)
利用者が自分で機械学習力場を育てることを重視Pythonの追加、MACE Fine Tuningプロトコルを今回の目玉にしている推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

データシートは、MACE-MATPES-r2SCAN-0を「固体系の汎用の力場をめざすモデル」とし、Metaの公開データで学習したものと説明しています 事実。ここから、Dassault Systèmesの強みは機械学習力場そのものを開発することではなく、外部の最新モデルを使いやすい形(GUI・ワークフロー・微調整)で製品に載せることにある、と本稿は読みます 未確定/将来。この場合、機械学習の部分の進歩は外部のモデルの更新に左右されます。

9. マテリアルインフォマティクス分野の提携マッピング

BIOVIAを中心とした、技術・データの取り込み関係 Materials Studioのデータシート・リリースノートに記載のある関係のみ。提携ではなく、取り込み元の関係を含む BIOVIA Dassault MACE(公開モデル) MACE-OFF23・MP-0b3を 製品に搭載(2025〜26版) Meta(OMat24) MACE-MATPES-r2SCAN-0の 学習データの出所 MatPES Materials Projectの一部を r2SCANで再計算したデータ 学術の計算コード CASTEP・ONETEP・GULP・ DFTB+の学術版を取り込み CCDC 結晶データベースの 検索にAPIを利用 Accelrys(買収) 2014年。BIOVIAブランドの 創設につながった 自社基盤:Pipeline Pilotなど モデル・データの取り込み元 計算コード・自社基盤 買収
図2 BIOVIAを中心とした技術・データの取り込み関係。出典:Materials Studio 2026のデータシートとリリースノート、URDの沿革。ここに描いたのは共同開発の提携ではなく、製品が使っているモデル・データ・コードの出所です。Meta・MatPESなどの提供元と、Dassault Systèmesの間に契約があるかは確認できませんでした。

10. 提供している技術・製品・サービス

Materials Studioで機械学習力場を使う流れ

Materials Studioは、量子力学の計算(CASTEP、DMol3、ONETEPなど)から古典的な力場の計算(Forcite、COMPASS III、GULPなど)までを一つの環境にまとめた、材料の原子レベルのシミュレーション環境です。機械学習力場(MLIP)は、量子計算のデータで学習し、結合の切断や化学反応も、量子計算に近い扱いを、はるかに短い時間で行うことをねらいます(データシートの説明)。

公開モデルを選び、自社データで微調整し、反応や物性を計算する 機能の内容はデータシートとリリースノートによる。精度の数値は資料に記載がない ① モデルを選ぶ 公開のMACEから 分子用か固体用かを 選ぶ (OFF23/MP-0b3 ほか) ② 微調整 自社データを使い Pipeline Pilotの MACE Fine Tuning で調整する ③ 計算する Forciteで分子動力学 と反応経路探索 (FlexTS)。分散力は D3補正で扱う ④ 確かめる CASTEPなどの 量子計算や実験と 照合する (利用者が実施) 会社の例:シリコン中のリチウム拡散の障壁を、MACEで計算し、量子計算・実験と「よく一致」と説明 例の数値(障壁の大きさ)は、確認したデータシートの本文に記載がなく、本稿では確認できなかった
図解 Materials Studio 2026で機械学習力場を使う流れ(データシートによる)。④の照合は、利用者が行う手順として本稿が補った。例は会社の説明で、独立した検証は確認できなかった。

データシートは、新しい版で次のことができると述べます 事実(すべて会社の説明)。

機能内容読むときの注意
Pythonでの自動化MaterialsScriptにPythonが加わり、Pythonの機械学習ライブラリも使える25年超の歴史で初めてのPython対応と会社が説明
MACEの微調整基盤モデルを出発点に、自社データで追加学習する精度が上がる程度は資料に数字がない
反応経路・遷移状態ForciteのFlexTSとMACEで、重合・触媒・電池内の反応の障壁を計算リチウムのシリコン中の拡散障壁の例のみ(数値記載なし)
分散力(ファンデルワールス)の補正MACE-MP-0b3などは、分散力の情報なしで学習されたため、D3補正を併用するNMC811の充電時の体積収縮の例で補正の効果を示す(数値記載なし)
粘度の計算複数の初期状態の平均を二重指数関数に合わせる新しい手順で、従来の推定から「予測」に精度・計算時間の数値の記載なし
素材技術者の視点:機械学習力場を自社の系で使うときの読みどころ

Materials Studioの取り組みで素材技術者に関わる点は3つです 事実。(1) 公開の基盤モデルは出発点:固体用のMACE-MATPES-r2SCAN-0は汎用をめざすモデルですが、自社の系(特定の合金、高分子、界面など)では、微調整するか、量子計算で確認する手順が前提になります。(2) 分散力の補正:データシートによれば、固体用のモデルの一部は分散力を含めずに学習されているため、層状材料や分子結晶ではD3などの補正が必要です。補正の有無で結果が変わるため、設定の確認が大切です。

(3) 計算は実験の代わりではない:会社は「実験の前に計算で試す」と説明しますが、示されている例は少数で、数値の精度は資料にありません。結果は、自社の測定値と照合して使う前提です。また、モデルの学習データの範囲(Materials Projectの一部、Metaの無機材料データなど)の外の化学では、精度が落ちる可能性があります(一般的な性質。会社の資料で個別には確認していません)。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
材料向けの規模が見えないBIOVIA・材料向けの売上・人員・投資が非公表。ライフサイエンス・ヘルスケア部門にはMedidataなども含まれる事実
機械学習の中核を外部モデルに頼るMACEなどは外部で作られたモデル。更新や条件の変更は外部に左右される。ライセンス条件は本稿では確認していない推測
性能の主張が例示にとどまるデータシートの例(シリコン中のリチウム拡散、NMC811の体積収縮)は、数値や条件の記載がなく、独立した検証は確認できない事実
競合の存在Schrödingerの10-Kは、材料科学の競合としてBIOVIAを挙げる。本稿は優劣を比較しない事実
学術コードの版に依存CASTEP・ONETEP・GULPなど、学術側のコードの版を取り込んでいる。更新の速度は外部の開発に影響される推測
戦略の表明と実績の差URDの「AIネイティブ」の提供形態は戦略の表明で、材料向けの実績の数字はない推測
価格・条件が見えないライセンス条件・価格は公式ページで確認できなかった未確定/将来

12. 用語集

マテリアルインフォマティクス(MI)
材料のデータとAI・計算を使い、新しい材料を探す方法。データ→予測・設計→実験の流れで進める。
BIOVIA
Dassault Systèmesの、ライフサイエンスと材料の研究向けブランド。2014年にAccelrysの買収で創設。
Materials Studio
BIOVIAの材料向けシミュレーションソフト。量子から古典までの計算を一つの環境にまとめている。
機械学習力場(MLIP)
量子計算のデータで学習し、原子間の力とエネルギーを速く出す機械学習モデル。
MACE
外部で開発された機械学習力場の方式。MACE-OFF23は分子用、MACE-MP-0b3は固体用の基盤モデル。
OMat24/MatPES
機械学習力場の学習に使われる公開データ。OMat24はMeta、MatPESはMaterials Projectの一部をr2SCAN法で再計算したもの。
CASTEP・DMol3・ONETEP
量子力学(密度汎関数理論)の計算モジュール。
Forcite
古典力場や機械学習力場で分子動力学・構造最適化を行うモジュール。
分散力(ファンデルワールス力)
分子や層の間にはたらく弱い引力。DFT計算では補正が必要。
Pipeline Pilot
BIOVIAのワークフロー基盤。データ処理や計算の手順をつなぐ。
バーチャルツイン
製品や材料を、コンピュータの中に再現した仮想の双子。
Universal Registration Document(URD)
欧州の上場企業が提出する年次報告書。
分子・材料・部材の模型をつなぐ役割です。計算の画面があるだけで、実機への妥当性が確かめられたとは限りません。
図3 概念画像(ImageGen生成)。分子・材料・部材の模型をつなぐ役割です。計算の画面があるだけで、実機への妥当性が確かめられたとは限りません。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。

13. 出典

  1. Dassault Systèmes 2025 Universal Registration Document(年次報告書。2026年3月31日提出、英語訳)。会社概要、売上・研究開発費・従業員数、BIOVIAの位置づけ、沿革。フランス語版が法的拘束力を持つ。 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
  2. Dassault Systèmes ニュースリリース “Filing of the 2025 Universal Registration Document”(2026年3月31日)。 https://investor.3ds.com/news-releases/news-release-details/dassault-systemes-filing-2025-universal-registration-document
  3. Dassault Systèmes 公式サイト BIOVIA Materials Studio 製品ページ。製品の位置づけと応用分野。 https://www.3ds.com/products/biovia/materials-studio
  4. Dassault Systèmes データシート “What’s New in Materials Studio 2026”(資料番号 DS-10079-0626)。MACE・Python・FlexTS・粘度計算などの新機能。 https://www.3ds.com/assets/invest/2026-06/biovia-materials-studio-whats-new-2026.pdf
  5. Dassault Systèmes リリースノート T61-2025 “Materials Studio 2026”(2025年12月1日)。個々の改善項目。 https://www.3ds.com/support/documentation/resource-library/t61-2025-materials-studio-2026
  6. Schrödinger Form 10-K(2025年12月期)。材料科学の競合としてBIOVIAを挙げている。第三者の提出書類。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1490978/000149097826000010/sdgr-20251231.htm
  7. Dassault Systèmes 公式サイト(ロゴの取得元・会社概要の確認用)。 https://www.3ds.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称(SE)、本社所在地、上場市場(Euronext Paris・CAC 40)、2015年のSA→SE変更事実出典1 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
売上高・ソフトウェア売上・営業利益・研究開発費(2024・2025年、IFRS)事実出典1 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
従業員約25,000人、研究開発9,968人、博士1,000人超、188拠点、顧客390,000社超、部門別ソフト売上の割合事実出典1 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
URDの提出日(2026年3月31日)事実出典2 https://investor.3ds.com/news-releases/news-release-details/dassault-systemes-filing-2025-universal-registration-document
2014年のAccelrys買収とBIOVIAブランドの創設事実出典1 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
BIOVIAの位置づけ(生物・材料のバーチャルツイン)、AIネイティブな提供形態、ガラス包装の研究プロジェクト事実出典1 https://investor.3ds.com/static-files/ce30eb59-e3df-4f57-af64-d7f105bb3cc3
Materials Studioの位置づけ、応用分野、クラウド版事実出典3 https://www.3ds.com/products/biovia/materials-studio
Materials Studio 2026の新機能(Python・MACE微調整・FlexTS・粘度・分散力補正)と、MACE各モデルの説明事実出典4 https://www.3ds.com/assets/invest/2026-06/biovia-materials-studio-whats-new-2026.pdf
2026版の公開日(2025年12月1日)、個別の改善項目、学術コード(GULP 6.4・ONETEP 7.3.95)の版、CCDC検索のAPI利用事実出典5 https://www.3ds.com/support/documentation/resource-library/t61-2025-materials-studio-2026
SchrödingerのForm 10-Kが、材料科学の競合としてBIOVIAを挙げていること事実出典6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1490978/000149097826000010/sdgr-20251231.htm
MIの3段階(データ→予測・設計→実験)のどこを担うかの整理本稿の計算本稿による整理(公開資料に基づく)
BIOVIA・材料向けの売上・専任人員・投資額・研究開発費の内訳未確定/将来いずれも確認できなかった。本稿では推計もしない(本稿で確認した出典に記載なし)
材料向けのスタートアップ出資・新たな買収・公的資金未確定/将来本稿が確認した出典1に記載なし。存在しないとも断定しない
次の版の時期、材料向けの数値目標、外部モデルのライセンス条件、価格未確定/将来確認できなかった。本稿では推定しない
公開モデルとデータを取り込む方針という読み推測データシートの説明からの本稿の解釈
機械学習力場を既存の計算に追加の道具として差し込むという読み推測機能の構成からの本稿の解釈
利用者が自分で機械学習力場を育てることを重視しているという読み推測新機能の構成からの本稿の解釈
機械学習の中核を外部モデルに頼るというリスク推測製品構成からの本稿の解釈
学術コードの版への依存、戦略の表明と実績の差というリスク推測製品構成とURDの記載からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月22日/Troy Technical
本稿の数値は、Dassault Systèmesの2025 Universal Registration Document、公式サイトの製品ページ、データシート、リリースノートに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。会社の説明による性能・効果の記述は、本稿が再現・検証したものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。