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触媒への応用 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

触媒への応用
― 「吸着エネルギー」を物差しに触媒を探す。計算とAIの予測を、実験とどう突き合わせるか

触媒は、反応を速くし、狙った物だけを作り、長持ちする材料です。候補は膨大で、実験だけでは探しきれません。そこで、表面に分子がどれだけ強くくっつくか(吸着エネルギー)を、計算やAIで見積もり、有望な候補だけを実験に回す研究が進んでいます。 この記事では、その考え方(火山図)を数値の模型で確かめ、Open Catalyst Project などの大規模データと、計算で見つけて実験で確かめた例、そして計算と実験が合わなかった例を、一次情報で整理します。白金族金属の使われ方や資源の話は、本シリーズ「白金族金属と触媒」編に任せ、ここでは探し方に集中します。

構成:査読論文(Nature、Nature Materials、Nature Chemistry、ACS Catalysis、npj Computational Materials、ChemCatChem ほか)、arXiv、Open Catalyst Project と fairchem の公式ページを使用/計算例は本稿の計算/確認日 2026年10月22日

表面の計算模型で候補を絞り、電極を作って測定する場面です。吸着の計算値と、実験で測る活性は同じ量ではありません。
図1 概念画像(ImageGen生成)。表面の計算模型で候補を絞り、電極を作って測定する場面です。吸着の計算値と、実験で測る活性は同じ量ではありません。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。
この記事の構成
  1. 3行でわかる/読む前に/シリーズの中での位置
  2. 触媒を「計算で探す」とは ― 吸着エネルギーと火山図
  3. 計算で見つけ、実験で確かめた例
  4. 大規模データの整備 ― Open Catalyst Project ほか
  5. 精度の数字を読む ― エネルギーの誤差は、速度にどう効くか
  6. 計算と実験のあいだ ― OCx24 が示したこと
  7. 文献データから学ぶ ― 触媒データの偏り
  8. 実験を自動で回す
  9. 予測と実験を区別する ― 確かめのはしご
  10. 素材技術者の視点
  11. 限界と、確認できなかったこと/まとめ
  12. 評価・標準の読み方
  13. 用語集
  14. 参考資料(一次情報)
  15. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・進行中・提案段階などで、確定していない事項
このほか、材料研究への読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。企業・研究グループの主張は「主張」として扱います。

この記事の数値の読み方

第2章と第5章の計算は、説明用の模型や、物理の式による本稿の計算です。実在の触媒の性能を示すものではありません。論文の数字は条件とともに紹介するもので、研究グループやモデルの優劣を決めるものではありません。 Open Catalyst の数字は、2020年の論文のベースラインです。この分野は変化が速く、最新のモデルの精度は、公式のリーダーボードで確認する必要があります(本稿では最新の数字を確認していません)。確認日は 2026年10月22日です。

1. 3行でわかる/読む前に/シリーズの中での位置

  • 触媒の探索では、「吸着エネルギー」が物差しになります:表面に分子がくっつく強さは、強すぎても弱すぎても活性が落ちます(火山型の関係)。この強さを計算やAIで大量に見積もり、候補を絞ります事実[参考資料1・6]
  • 計算で見つけ、実験で確かめた例があります:水素発生(BiPt)、CO₂からメタノール(Ni–Ga)、CO₂からエチレン(Cu–Al)。一方、同じ手法でも、CO₂還元では計算の特徴量が実験をほとんど説明できませんでした事実[参考資料3・4・5・7]
  • 計算の誤差は、速度に指数で効きます:障壁が0.1 eVずれると、室温付近で速度の見積りが約48倍ずれます。2020年のOpen Catalyst のベースラインの誤差(0.5 eV前後)は、そのままでは速度の予測には使えない大きさです本稿の計算/事実
この記事を読む前に知っておくこと

触媒の知識は、反応が表面で進むこと、貴金属がよく使われることが分かれば十分です。MIの知識は要りません。次の4点だけ、先に頭に置いてください。

  • 材料探索=「広大な地図の中から、宝のありかを探す」:触媒の組合せ(金属・合金・酸化物)と、表面の面の違い、吸着する分子の違いを掛け合わせると、候補は膨大です。MIは探す場所を絞る道具です
  • 機械学習=「過去のデータから傾向を学ぶ近似器」:学習した範囲の外(外挿)は苦手です。物理法則を理解しているわけではありません
  • DFT=「電子の振る舞いから材料の性質を計算する物理シミュレーション」:近似を含み、実測と一致するとは限りません。吸着エネルギーは、DFTで計算する代表的な量です
  • 計算・実験・AIの分担:計算は「安く速く候補を出す」、実験は「本当にそうか確かめる」、AIは「探す場所を絞る(DFTを速く真似る)」
シリーズの中での位置

この記事は、本シリーズ「マテリアルインフォマティクス(MI)」の応用編の1つです。白金族金属の使い方・劣化・資源・リサイクルは「白金族金属と触媒」編、DFTの中身は「密度汎関数理論の基礎」編、機械学習原子間ポテンシャルは「機械学習原子間ポテンシャル」編、評価データの分け方は「ベンチマークと評価の読み方」編と「MIの結果の評価と再現性の読み方」編で扱います。この記事は単独でも読めるよう、必要な前提を本文で説明します。

2. 触媒を「計算で探す」とは ― 吸着エネルギーと火山図

(1) まず、身近なたとえから

触媒の表面で反応が進む様子を、「ボールを受け取って、次の人に渡す」作業にたとえてみます。握る力が弱すぎると、そもそもボールを受け止められません(反応物が表面に乗らず、反応が始まらない)。逆に握る力が強すぎると、今度は手から離せません(生成物が表面にとどまり、次の反応物が乗れない)。ちょうどよい強さのとき、いちばん速く回ります。これがSabatier(サバティエ)の原理です。 たとえの限界:実際の表面では、複数の段階が同時に進み、表面の状態も反応中に変わります。ボールを渡すだけの単純な話ではありません。

(2) 「ちょうどよい強さ」を、数字で表す

表面への「くっつきやすさ」を数字にしたものが吸着エネルギーです(負の値が大きいほど強い結合)。ある反応で重要な中間体の吸着エネルギーを横軸に、活性を縦軸にとると、山の形になります。形が火山に似ているため、火山図と呼ばれます。 Nørskov らは、電子状態の計算から、酸素還元反応のさまざまな金属での速さの傾向を、酸素と水酸基の吸着エネルギーで説明しました事実[参考資料6]。つまり、吸着エネルギーは、触媒を数字で表す「名刺」(記述子)の役を果たします。

火山図の仕組みを、本稿が作った小さな模型で確かめます(図3)。

①表面の模型、②計算、③候補の比較、④選別、⑤合成、⑥測定の役割です。図の区分は説明用で、実際の順序は研究によって異なります。
図2 概念画像(ImageGen生成)。①表面の模型、②計算、③候補の比較、④選別、⑤合成、⑥測定の役割です。図の区分は説明用で、実際の順序は研究によって異なります。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。
元のSVG・数値・出典を確認する
触媒を計算とAIで探す流れ(概念図) ①表面を切り出す 結晶の面と、吸着す る分子を原子で組む ②吸着エネルギー DFT(または、そ れを真似るAI)で 計算 ③火山図で見る 吸着の強さと活性の 関係で並べる ④候補を絞る 上位だけを実験に回 す ⑤合成・測定 作って、活性・選択 性を測る ⑥条件を上げる 電流・圧力・時間を 実機に近づける 計算とAI(予測) 実験(確認) この記事の読み方の軸 ・①〜④は「予測」。どれだけ多くの候補を扱っても、⑤で測るまで、触媒としての性能は確定しない ・②の吸着エネルギーは、触媒の活性を決める要素の一部にすぎない(電解液、電位、温度、粒子の形は別) ・⑤と⑥の間には、さらに「材料ギャップ(理想表面と実触媒の差)」がある ・触媒の良し悪しは、活性(速さ)、選択性(狙った物だけ作る)、安定性(長持ち)の3つで見る (流れの区切りは本記事による整理)

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。触媒をMIで探す流れ。左の4段が計算とAIによる予測、右の2段が実験による確認です。区切りは本記事による整理で、手法ごとに順序や段の数は異なります。

火山型の関係(説明用の模型・本稿の計算) -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 結合が強すぎる → 生成物が離れない 結合が弱すぎる → 反応物を活性化できない ちょうどよい 材料A 材料B 材料C 重要な中間体の吸着エネルギー(eV。負が強い結合) 活性 (対数) 模型:活性化の障壁=0.9+0.5×E(eV)、脱離の障壁=0.2+max(0, −E)(eV)、500 K。遅い方の段が速度を決めると仮定。数値は説明用の仮定
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。Sabatierの原理(結合は強すぎても弱すぎても良くない)を表す、説明用の模型の計算です。障壁の式のパラメータは本稿の仮定で、実在の材料や反応の値ではありません。材料A・B・Cも架空です。吸着エネルギーと速度の傾向は、Nørskovらの酸素還元の解析[参考資料6]など、実在の系の解析で確認されています。
  • 反応物を活性化する段階:吸着が強いほど障壁が下がる(障壁 = 0.9 + 0.5×E、Eは吸着エネルギー [eV])
  • 生成物が離れる段階:吸着が強いほど障壁が上がる(障壁 = 0.2 + max(0, −E))
  • 遅い方の段階が全体の速度を決めると仮定(500 K)。活性は、障壁が低いほど高い

この模型では、2つの障壁が等しくなる E ≒ −0.47 eV で、活性が最大になります(本稿の計算)。左(強すぎる)ではEが1 eV変わるごとに活性が約10桁、右(弱すぎる)では約5桁変わり、山の左右で傾きが違うことも分かります。数値はすべて説明用の仮定で、実在の反応の値ではありません。

つまずきやすいところ:なぜ吸着エネルギーだけで、活性を語れるのか(語れないのか)

語れる理由:関連する複数の中間体の吸着エネルギーが、互いに連動することが知られています(スケーリング関係)。そのため、1〜2個の吸着エネルギーで、活性の傾向をおおよそ表せます(本記事による解説)。 語れない理由:電解液、電位、pH、温度、粒子の形や欠陥、担体との相互作用は、吸着エネルギーに含まれません。OCx24の論文は、孤立した吸着分子のエネルギーだけでは、CO₂還元の複雑さを予測するには不十分だったと述べています[参考資料7](第6章)。

(3) もう1つの目安:dバンド模型

遷移金属の表面では、金属のd電子のエネルギー分布(dバンド)の位置が、吸着の強さの目安になる、という考え方(dバンド模型)が広く使われています。Hammer と Nørskov の1995年の論文(題名「Why gold is the noblest of all the metals」)が、この考え方の原点の1つとして知られています[参考資料21](本稿では題名と書誌の範囲で確認)。詳しい説明は、本シリーズ「密度汎関数理論の基礎」編に任せます。

3. 計算で見つけ、実験で確かめた例

計算で触媒を探す試みは、AIが一般的になる前から行われています。ここでは、計算で候補を絞り、実験で確かめた3つの例を、論文の要旨にもとづいて並べます(図4)。

計算で見つけ、実験で確かめた3つの例 例 計算で何をしたか 予測 実験で確かめたこと Greeleyら 2006 水素発生(HER) 700超の二元表面合金を、DFTで 活性と安定性を評価 BiPt:活性はPtと同等以 上と予測 合成して試験。Ptより良いHER性能と報告(計算 と一致) Studtら 2014 CO₂→メタノール 記述子の解析と計算で、Ni–Ga金 属間化合物を安定な候補に Ni–Gaが良い活性を持つと 予測 合成して試験。Ni₅Ga₃が活性・選択性が高く、 Cu/ZnO/Al₂O₃と同等以上のメタノール活 性、CO副生は大幅に少ない(常圧) Zhongら 2020 CO₂→エチレン DFTと能動学習で、Cu–Al合金 を探索 CO結合が最適に近い部位が多 い合金を予測 合成して試験。ファラデー効率80%超(純Cuは約 66%)、400 mA/cm²。その場XASで配 位環境を確認 3つとも、計算が候補を絞り、実験が確かめた。ただし、いずれも対象は1つの反応・限られた条件で、他の反応や長期の安定性までは 要旨の範囲では確認できない。計算の予測と実験が一致した例は、うまくいった報告が公表されやすい点にも注意(本記事による解説)
図4 概念図(ベクター作図)。計算で候補を絞り、実験で確かめた3つの報告の要旨の整理[参考資料3・4・5]。内容は各論文の要旨に基づきます。
  • 水素発生(Greeley ら、2006):DFTで700を超える二元表面合金の活性と安定性を評価し、BiPtが、水素発生の標準的な触媒であるPtと同等以上の活性を持つと予測しました。BiPtを合成して試験し、純Ptより良い水素発生の性能を示したと報告しています事実[参考資料3]。
  • CO₂からメタノール(Studt ら、2014):記述子にもとづく解析と計算で、Ni–Ga金属間化合物を安定な候補として見つけ、いくつかの触媒を合成して試験しました。Ni₅Ga₃が特に活性・選択性が高く、従来のCu/ZnO/Al₂O₃触媒と同等以上のメタノール合成活性と、COの副生がかなり少ないことを、常圧で報告しています事実[参考資料4]。
  • CO₂からエチレン(Zhong ら、2020):DFTと能動学習(active learning。少ない計算で効率よく候補を選ぶ方法)で、Cu–Al合金を見つけました。ファラデー効率(電気がどれだけ目的物に使われたか)80%超(純Cuは約66%)を、400 mA/cm²の電流密度で達成し、その場X線吸収で、C–C結合の形成に有利なCuの配位環境を確認したと報告しています事実[参考資料5]。
よくある誤解:「AIが新しい触媒を発明した」

誤解:AIが触媒を設計し、そのとおりに優れた触媒ができた。
正しくは:これらの例では、計算(DFT)が候補を絞り、人が合成して、実験で確かめたのが成果です。AI(機械学習)が使われた場合も、役割は「候補を絞る」ことで、触媒として優れているかを決めるのは、合成と測定です。 また、これらはうまくいった例です。計算で有望とされたが実験で良くなかった候補は、公表されにくいため、成功率は読み取れません(本記事による解説)。

4. 大規模データの整備 ― Open Catalyst Project ほか

(1) 何が公開されているか

Meta の FAIR(Fundamental AI Research)と、カーネギーメロン大学の化学工学科が共同で進めるのが、Open Catalyst Project です。目的は、AIで触媒を計算し、再生可能エネルギーの貯蔵に使える触媒を見つけることだと、公式サイトに書かれています事実[参考資料12]。公開されているものを、表にまとめます(確認日 2026年10月22日)。

名前中身(論文の報告)何のために
OC20(2021)DFTの緩和計算 1,281,040 件(一点計算 約2.65億回)。窒素・炭素・酸素の化学種を含む、多様な材料・表面・吸着分子。評価用の分割済み。ベースライン(CGCNN、SchNet、DimeNet++)と、公開のリーダーボード[1]吸着エネルギーと力を、AIで予測する課題の共通の土台
OC22(2023)酸化物の電極触媒。DFT緩和 62,331 件(一点計算 約985万回)。全エネルギーを予測する課題。OC20と合わせて学習すると、エネルギー予測が約36%改善(GemNet-OC)[2]酸素発生反応(OER)の触媒など、酸化物
OC25(2025)固体と液体の界面のデータセット。論文は「固液界面のものとして最大」と記述し、Cu表面のCO二量化の自由エネルギーを、800原子超のセルで計算[10]電解液の効果(溶媒、イオン、電荷)を含む電極触媒
UMA(2025)約5億の3次元原子構造で学習した、汎用の原子モデル。1つのモデルが、分子、材料、触媒に使える[11]。公式リポジトリは、触媒用のタスク名として oc20、oc22(酸化物)、oc25(電極触媒)を挙げる[13]課題ごとに別のモデルを作らずに、触媒の計算ができる
Catalysis-Hub.org10万件を超える吸着・反応エネルギーを集めた、触媒表面の反応の公開データベース。計算条件も記録して再現性を確保[14]計算データの共有と再利用

出典は各論文の要旨・本文、公式サイト、fairchem の README(確認日 2026年10月22日)。事実。

つまずきやすいところ:OC20の3つの課題(S2EF・IS2RS・IS2RE)

OC20は、「表面に分子が乗った構造」から何を当てるか、で3つの課題に分けています(図5)。S2EFは、原子の位置から、DFTのエネルギーと各原子の力を当てる課題です。これは「機械学習原子間ポテンシャル」と同じ考え方です。IS2RSは、最初の配置から、エネルギーが最小になる構造を当てる課題、IS2REは、最初の配置から、緩和後のエネルギー(吸着エネルギー)を直接当てる課題で、触媒の分野でもっとも一般的とされています[参考資料1]。

Open Catalyst 2020 データセットの3つの課題 S2EF 構造→エネルギーと力 原子の位置を入力し、DFTのエネル ギーと各原子の力を予測 IS2RS 初期構造→緩和後の構造 最初の配置から、エネルギーが最小の 構造を予測 IS2RE 初期構造→緩和後のエネルギー 触媒の分野でもっとも一般的な課題。 吸着エネルギーを直接予測 データの規模と評価の約束(Chanussotら、2020。数字は論文の報告値、計算は本稿) ・DFTの緩和計算 1,281,040 件(一点計算 約264,890,000 回=1件あたり約207回。本稿の計算) ・評価は4つの分割:学習と同じ範囲(ID)、未知の吸着分子(OOD吸着)、未知の触媒組成(OOD触媒)、両方が未知(OOD両方) ・指標:エネルギーの平均絶対誤差(MAE)、力のMAE、許容範囲内に入る割合(IS2REでは誤差0.02 eV以内の割合 EwT) ・2020年のベースライン(IS2RE):エネルギーMAE 0.50〜0.92 eV、中央値だけで答える基準は 1.68〜1.89 eV ・0.02 eV以内に入る割合は約2〜7%(IS2RE)。S2EFの指標も含め、論文は「実用にはまだ遠い」と述べた(2020年) ・その後、データ(OC22:酸化物、OC25:固液界面)とモデル(UMAなど)が公開され、最新の結果は公式リーダーボードで確認する ※ 2026年10月22日時点の最新の数字は、本稿では確認していません
図5 概念図(ベクター作図)。Open Catalyst 2020(OC20)の3つの課題と、データの規模・評価の約束[参考資料1]。2020年のベースラインの数字で、現在の最先端のモデルの精度ではありません。

(2) モデルとデータのライセンス

fairchem(Meta FAIR のコードの集まり)のコードはMITライセンスで、モデルや重みのライセンスは用途の領域ごとに違う、とREADMEに書かれています。UMAのモデルを使うには、Hugging Face でモデルへのアクセスを申請し、ログインする必要があります事実[参考資料13]。データセットごとの利用条件(商用利用の可否など)は、本稿では確認できませんでした。自社で使う前に、公式の記載を確認してください。

5. 精度の数字を読む ― エネルギーの誤差は、速度にどう効くか

(1) 2020年のベースラインの数字

OC20の論文は、3つのグラフニューラルネットワーク(CGCNN、SchNet、DimeNet++)をベースラインとして試しました。初期構造から緩和後のエネルギーを当てる課題(IS2RE)で、学習に使った全データで訓練した結果は、次のとおりでした事実[参考資料1]。

  • エネルギーの平均絶対誤差(MAE):0.50〜0.92 eV(モデルと、テストの分割により異なる)
  • 「中央値を答える」だけの基準:1.68〜1.89 eV
  • 誤差0.02 eV以内に入った割合(EwT):約2〜7%
  • テストは4つの分割(学習と同じ範囲/未知の吸着分子/未知の触媒組成/両方が未知)。未知の分割ほど、誤差が大きくなる傾向

論文は、S2EFの指標について、結果は「実用にはまだ遠い」と述べています[参考資料1]。また、ほとんどの課題で、モデルの大きさに上限が見られなかったことから、より大きなモデルで改善する可能性を指摘しています[参考資料1]。 ここで強調したいのは、これが2020年のベースラインだという点です。その後、データ(OC22、OC25)とモデル(UMAなど)が公開されており、現在の精度は、これより大きく良い可能性があります。しかし、最新の数字は、本稿では確認していません。公式のリーダーボードで、確認日と条件を確かめてください。

(2) 本稿の計算:0.1 eVのずれは、速度の何倍か

エネルギーの誤差の大きさが、どれほど重大かを、速度の式から計算します。反応の速度は、障壁(活性化エネルギー)Ea に対して、おおよそ exp(−Ea / kT) に比例します(k:ボルツマン定数、T:温度)。障壁が ΔE だけ違えば、速度は exp(ΔE / kT) 倍違います。これを数値で見ます(図6)。本稿の計算

エネルギーの誤差が速度に与える影響(本稿の計算) 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 1 10² 10⁴ 10⁶ 10⁸ 10¹⁰ 10¹² 6.9倍 48倍 2,290倍 約2.5億倍 2.6倍 6.9倍 48倍 15,842倍 吸着エネルギーの誤差(eV) 速度の 見積りの ずれ(倍) 青:300 K(室温付近) 赤:600 K(気相の熱触媒の例) 式:ずれの倍率 = exp(ΔE / kT)。障壁の誤差が、そのまま速度に効くと仮定した本稿の計算。OC20の2020年のベースライン(0.5 eV前後)は、この図の右端に当たる
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。障壁(またはそれに結びつくエネルギー)が ΔE ずれたとき、速度の見積りが何倍ずれるか。実際の反応では、律速段階が変わる、複数の段階が絡むなど、この単純な関係からずれます。
  • 300 K(室温付近):0.05 eV → 6.9倍、0.1 eV → 48倍、0.2 eV → 約2,300倍、0.5 eV → 約2.5億倍
  • 600 K(気相の熱触媒の例):0.05 eV → 2.6倍、0.1 eV → 6.9倍、0.2 eV → 48倍、0.5 eV → 約1.6万倍

つまり、誤差0.5 eV 前後のモデルは、「この触媒は、あの触媒の何倍速い」という定量の予測には使えません。使えるのは、「候補の大まかな順位をつけて、実験に回す数を減らす」ための選別です。ただし、同じ手法の誤差は、比べる触媒の間でかなり共通する(系統的なずれ)ことが多く、順位づけは絶対値より当たりやすいこともあります(本記事による解説。どの程度当たるかは、課題ごとに確かめる必要があります)。

つまずきやすいところ:吸着エネルギーの誤差と、障壁の誤差は同じではない

図6は、「障壁の誤差が、そのまま速度に効く」と仮定した最も単純な見積りです。実際には、吸着エネルギーの誤差は、障壁には一部しか伝わらない(図3の模型の係数0.5のように)こともあれば、複数の段階が絡んで、もっと複雑に効くこともあります。この図は、「エネルギーの誤差が、指数で速度に効くので、0.1 eVの違いも無視できない」という感覚をつかむためのものです。

(3) 計算の「構造」の選び方も、誤差の元

吸着エネルギーは、表面の「どの位置に」「どの向きで」分子が乗るか(吸着の配置)で変わります。いちばん低いエネルギーの配置を探すのも、手間のかかる作業です。AdsorbML は、機械学習ポテンシャルで、低いエネルギーの配置を探す方法で、バランスのとれた設定では、最も低いエネルギーの配置を87.36%の割合で見つけ、計算を約2,000倍速くできたと報告しています。この評価のために、約1,000の表面と約10万の配置を含む Open Catalyst Dense データセットも作られました事実[参考資料8]。 言い換えると、残りの約13%では、最も低い配置を見逃していることになります(本稿の計算:100% − 87.36%)。この見逃しは、エネルギーを実際より高く見積もる誤差になります。

また、Kolluru らは、触媒向けの機械学習ポテンシャルが、特定の化学種・組成に絞った研究では、データの間を補間することはうまくいくが、化学空間の全体に一般化するのは難しいと述べ、OC20はそれを変えようとする取り組みだと位置づけています事実[参考資料9]。

6. 計算と実験のあいだ ― OCx24 が示したこと

(1) 何をしたか

Abed らは、AIによる触媒の計算の予測と、実験の結果とのあいだの隔たりを埋めるため、実験のデータセット(OCx24)を作りました(2024年のプレプリント)事実[参考資料7]。

  • 実験:2つの合成法(化学還元、スパーク放電)で、13元素の572試料を合成。XRFとXRDで、組成・純度・構造を確認。441個のガス拡散電極(再現試料を含む)で、CO₂還元(CO2RR)と水素発生(HER)を、最大300 mA/cm²で評価。独立した調製は230、似た組成をまとめると179の対象
  • 計算:約19,400の材料(Materials Project、OQMD、Alexandriaの、反応条件で熱力学的に安定になりうる材料)で、6種の吸着分子(OH、CO、CHO、C、COCOH、H)の吸着エネルギーを、AIとDFTを組み合わせて計算。6.85億回の構造緩和と、約2,000万回のDFT一点計算が必要だった。論文は、触媒の計算スクリーニングとして最大と述べる

(本稿の計算:6.85億 ÷ 約2,000万 ≒ 34。DFTの一点計算1回あたり、AIによる緩和が約34回、という規模感です。)

(2) 結果:水素発生はうまくいき、CO₂還元はうまくいかなかった

計算と実験のあいだ(Abedら、OCx24) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.61 0.59 水素発生(HER) 電圧 0.46 0.22 CO2還元: 水素 0.44 0.00 CO2還元: CO 0.43 0.18 CO2還元: 液体生成物 0.08 0.01 CO2還元: エチレン LOO(同じ組成の試料が学習側にある) LOCO(その組成を丸ごと除く) ・HERは吸着エネルギー(H、OH)で説明でき、学習にPtがなくても、予測の火山の頂上付近にPtが現れた(論文の報告) ・CO2還元は、孤立した吸着分子のエネルギーでは説明できない(LOCOでR²はほぼ0〜0.2)。実験側のばらつき σ=0.043 V(297本の再現試料) ・シミュレーションが扱わなかったもの:電解液、pH、気・固・液の界面、温度、反応器の設計、表面の電場など(論文の記述)
図7 概念図(ベクター作図)。OCx24のR²の報告値[参考資料7]。LOOとLOCOは、データの分け方の違いです(LOCOは、その組成の試料を学習から完全に除く、より厳しい評価)。HERは平均した吸着エネルギーを特徴量にした線形モデル(表1:LOO 0.61、LOCO 0.59)、CO₂還元は吸着エネルギーと元素の特徴量を使ったランダムフォレスト(本文の値)です。
  • 水素発生(HER):水素(H)と水酸基(OH)の吸着エネルギーだけを特徴量にした線形モデルで、実験の電圧を説明できました(その組成を丸ごと除く評価 LOCO で R² = 0.59)。実験側のばらつき(297本の再現試料)は σ = 0.043 V です。このモデルで約19,400の材料の活性を見積もると、Ptが火山の頂上付近に現れました。学習データには、Pt(合金も含む)がなかったにもかかわらずです事実。さらに、Pd・Pt・Rh・Ir・Ru・Au・Os・Agを含まない436の材料(うち282はSeを含む)を、低コストのHER触媒の候補として挙げています。これは予測で、実験で確かめた結果ではありません[参考資料7]。
  • CO₂還元(CO2RR):生成物ごとに、ランダムフォレストで生産速度を予測しました。同じ組成が学習側にある評価(LOO)では、H₂ R² = 0.46、CO 0.44、液体生成物 0.43でした。しかし、その組成を丸ごと除く評価(LOCO)では、H₂ 0.22、液体生成物 0.18、CO 0.00、エチレンは0.01で、ほとんど説明できませんでした。論文は、孤立した吸着分子のエネルギーと元素の特徴量だけでは、この化学の複雑さを予測するには不十分と結論しています事実[参考資料7]。
よくある誤解:「吸着エネルギーを計算すれば、触媒の性能が分かる」

誤解:DFTやAIで吸着エネルギーを大量に計算すれば、どの反応でも触媒の優劣が分かる。
正しくは:OCx24では、水素発生は吸着エネルギーで説明できましたが、CO₂還元は、同じ手法でほとんど説明できませんでした。論文は、CO₂還元は反応の経路が多く(炭素2個までの生成物だけでも数百の反応がありうる)、電解液、pH、気・固・液の界面、温度、反応器の設計、電場の効果などの影響が、シミュレーションに入っていないと述べています[参考資料7]。反応によって、「吸着エネルギー」という物差しが通用する範囲は違います。

つまずきやすいところ:LOO と LOCO は何が違うのか

LOO(Leave One Out)は、試料を1つ除いて、残りで学習し、除いた試料で評価する方法です。同じ組成の別の試料が学習側に残るので、「似たものを当てる」ことができます。LOCO(Leave One Composition Out)は、ある組成の試料を、すべて除いて評価します。これは、これまで見たことのない組成を当てる、触媒探索で本当に必要な力を測る、より厳しい評価です。LOOでは当たるのにLOCOで当たらないのは、データ漏れや外挿の問題の、触媒での現れ方です(本記事による解説。一般論は本シリーズ「ベンチマークと評価の読み方」編)。

論文は、データを増やすと相関が良くなる傾向から、データセットを1万〜10万規模に増やせば、予測がはるかに良くなると見込んでいます[参考資料7](未確定/将来。著者の見込みです)。

7. 文献データから学ぶ ― 触媒データの偏り

計算ではなく、過去に報告された実験データから学ぶ方法もあります。触媒の分野でも試みられています。Suzuki らは、メタンの酸化カップリング(OCM)、水性ガスシフト(WGS)、CO酸化の文献データで、触媒の組成を直接入力するのではなく、元素の特徴を入力する方法が予測精度を上げることを示し、勾配ブースティング(XGBoost)が最良で、OCMでは上位20の候補触媒を提案しました事実[参考資料16]。同じ論文は、文献データには、組成の重なりが少ない、過去の報告の偏りがある、多くの元素でサンプル数が少ないといった障害があると述べています[参考資料16]。

OCMについては、高スループット実験と触媒インフォマティクスを組み合わせた報告[参考資料17]、機械学習で反応条件を決める報告[参考資料18]もあります(本稿では題名の範囲で確認)。触媒への機械学習の応用を広く整理した総説として、Toyao らの論文があります[参考資料19](題名の範囲で確認)。

素材技術者の視点①:触媒の文献データには、「失敗」が書かれていない

論文に載るのは、うまくいった触媒が中心です。活性が出なかった触媒、再現しなかった触媒は、ほとんど載りません。そのため、文献データから学んだAIは、「どんな触媒が良いか」は学べても、「どんな触媒がだめか」を学びにくくなります(本記事による解説)。OCx24が「正の結果と負の結果の両方を含む」ことを、実験データセットの条件に挙げているのは、この問題への対応です[参考資料7]。

自社で実験データを整えるときは、うまくいかなかった触媒と、その条件も、必ず記録してください。触媒のデータには、組成のほかに、調製法(含浸・共沈など)、担持量、焼成条件、前処理(還元など)、反応条件(温度・圧力・ガス組成・空間速度)、触媒の量、転化率の時間変化が必要です。この記録が、データの価値を決めます。

8. 実験を自動で回す

もう1つの探し方は、実験そのものを自動で回し、AIが次の条件を選ぶ方法です。Burger らは、移動型のロボットで、水から水素を作る光触媒の配合を探索しました。ロボットは8日間、自律的に動いて、10変数の実験空間で688回の実験を行い、バッチ式のベイズ探索で、初期の配合より6倍活性の高い光触媒の混合物を見つけたと報告しています事実[参考資料20]。(この例は、光触媒の混合物の探索で、金属触媒の探索とは対象が違います。)ロボットとベイズ最適化の一般的な説明は、本シリーズ「自律実験室」編と「ベイズ最適化と能動学習」編で扱います。 OCx24 も、合成から、XRD・XRFによる特性評価、電解の試験までを、高スループットの流れで行ったものです[参考資料7]。

多数の触媒を同じ条件で比較する場面です。活性だけでなく、条件・対照・繰り返し・耐久性も記録します。
図8 概念画像(ImageGen生成)。多数の触媒を同じ条件で比較する場面です。活性だけでなく、条件・対照・繰り返し・耐久性も記録します。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。

9. 予測と実験を区別する ― 確かめのはしご

ここまでの報告を、「どこまで確かめられたか」で並べます。触媒では、次の5段に分けて考えると整理できます(本記事による整理)。

  1. 計算上の予測:吸着エネルギー、火山図、安定性の計算やAIによる予測
  2. 合成して構造・組成を確認:実際に作り、XRD、XRF、その場X線吸収などで確認する
  3. 標準的な条件で活性・選択性を測定:面積や質量で規格化した活性、生成物の割合を測る
  4. 実機に近い条件・安定性:高い電流密度、圧力、不純物、長時間の試験
  5. 独立した検証・スケールアップ:他のグループによる追試、実機や量産での再現
触媒の確かめのはしご:各報告が確認した段 OC20 Chanussot Greeley 2006 Studt 2014 Zhong 2020 OCx24 Abed 2024 Burger 2020 ①計算上の予測 吸着エネルギー、火山図、安定性の計算・ AI予測 ● ● ● ● ● - ②合成して構造・組成を確認 XRD、XRF、その場XASなどで確認 - △ ● ● ● - ③標準的な条件で活性・選択性を測定 規格化した活性、生成物の割合 - ● ● ● ● ● ④実機に近い条件・安定性 高電流密度、圧力、長時間の試験 - - - △ △ - ⑤独立した検証・スケールアップ 他グループの追試、実機・量産での再現 - - - - - - ●=報告で確認、△=一部のみ・または要旨の範囲では詳細不明(長期の安定性など)、-=確認できなかった/対象外 Burgerらは光触媒の配合の探索で、①の計算は用いていない。OC20はデータセットで、実験の確認は含まない
図9 概念図(ベクター作図)。触媒の「確かめのはしご」と、各報告が到達した段。要旨・本文で確認できた範囲での本稿の整理で、研究の優劣ではありません。

図9のとおり、OC20はデータセットで、第1段(予測)の道具です。Greeley らから Zhong らまでの3つの例は、第1〜3段まで進み、OCx24は、第1〜3段と、第4段の一部(産業的に意味のある電流密度まで)を扱いました。ただし、第5段(独立した検証・スケールアップ)まで確認できた報告は、この記事で扱った中にありませんでした。また、長期の安定性は、要旨の範囲では確認できませんでした。

素材技術者の視点②:「計算で見つけた」触媒を評価するときの質問
  • どの段まで確かめたか:計算だけか、合成して測ったか、実機に近い条件か
  • 何と比べたか:基準の触媒(Pt、Cu、市販品)を、同じ条件で測ったか。Greeley らはPt、Studt らはCu/ZnO/Al₂O₃と比べています[参考資料3・4]
  • 活性は、何で規格化したか:幾何面積、電気化学的な表面積(ECSA)、質量のどれか。McCrory らの標準プロトコルは、10 mA/cm²(幾何面積あたり)に必要な過電圧を主な指標とし、ECSAあたりの比活性も示しています[参考資料15]
  • 反応の条件は、実用に近いか:電流密度、温度、圧力、ガスの純度。CO₂還元の例では、400 mA/cm²という高い電流密度で評価した報告があります[参考資料5]
  • 安定性は:活性が高くても、数時間で劣化すれば使えません。Greeley らは安定性も計算で見ています[参考資料3]が、実験での長期の安定性は、要旨の範囲では確認できません。白金やイリジウムの劣化は、本シリーズ「白金族金属と触媒」編を参照

10. 素材技術者の視点

素材技術者の視点③:計算の「理想表面」と、実触媒のあいだ

計算で扱うのは、きれいに切り出した結晶面と、そこに乗せた分子です。一方、実際の触媒は、ナノ粒子、欠陥、担体との界面、不純物、反応中に変わる表面を持ちます(材料ギャップ)。OCx24の論文は、規則的な金属間化合物のナノ粒子は、計算でモデル化しやすい反面、合成が極めて難しく、失敗が多いため、すべての試料の特性評価が必要だと述べています事実[参考資料7]。XRDで「狙った構造にならなかった」試料も多く、そのときは、組成が最も近い材料の吸着エネルギーで代用しています[参考資料7]。

実務では、次の順で確認すると安全です。①狙った構造ができたか(XRD、組成分析)、②粒子の大きさ・形(顕微鏡)、③反応条件での表面の状態(その場測定)、④活性・選択性・安定性。計算の予測は、①のきれいな表面の話であり、②〜④は実験で確かめます。

素材技術者の視点④:計算を、自社の実験にどうつなぐか
  • 吸着エネルギーを、「順位づけ」に使う:絶対値ではなく、候補の順位と、基準の触媒(自社の現行品)との相対で見ます(第5章)
  • 反応ごとに、使える物差しか確認する:水素発生のように吸着エネルギーで説明できる反応と、CO₂還元のように説明できない反応があります(第6章)。自社の反応で、既知の触媒の順位を再現できるかを、最初に確かめます
  • 既知の触媒を入れて、モデルを点検する:OCx24のPtのように、既知の良い触媒が、予測の上位に現れるかは、モデルが妥当かの1つの目安になります[参考資料7](ただし、それだけでは十分でない)
  • 実験の設計:基準の触媒を毎回同じ条件で測る、複数ロットで再現を確認する、触媒量・表面積で規格化する、反応器の物質移動の影響を確認する
  • データの記録:調製・前処理・反応条件・失敗例を残す(第7章)。自社の実験データは、計算データにない、価値の高い情報です

AIに任せやすい部分と、専門家の判断が要る部分

場面AIに任せやすい専門家の判断が要る
候補の前選別数千〜数万の組成・表面から、吸着エネルギーで順位づけして数十件に絞る反応に合った記述子の選択、条件の妥当性、既知の触媒での点検
計算の実行機械学習ポテンシャルによる吸着配置の探索と緩和(AdsorbML[8])モデルが学習した範囲の外か(外挿)の判断、DFTでの確認の範囲
合成・特性評価(ロボットによる繰り返し作業)狙った構造ができない原因の見立て、粒子の大きさ・担持法の設計
活性・選択性の測定決まった手順の測定、データの記録反応条件の設定、物質移動と反応速度の切り分け、安定性の評価

表は本記事による整理(解説)です。

11. 限界と、確認できなかったこと/まとめ

(1) 最新の精度

Open Catalyst の精度の数字は、2020年の論文のベースラインです。その後のモデル(UMAなど)の精度や、公式リーダーボードの最新の値は、本稿では確認していません。

(2) 要旨・題名の範囲で引用した論文

Greeley ら、Studt ら、Zhong ら、Burger ら、Nørskov らは要旨の範囲で、Hammer と Nørskov(1995年)、Toyao ら、Nguyen ら、Ohyama らは題名と書誌の範囲で引用しました。OCx24は、プレプリント(arXiv)の本文で確認しました(査読を経た掲載版の有無は、本稿では確認していません)。

(3) ライセンス

fairchemのコードはMITライセンスと確認しましたが、データセットごとの利用条件(商用利用の可否など)と、各モデルの重みのライセンスは、本稿では確認していません。

(4) 扱っていないこと

反応速度論のマイクロキネティックモデル、触媒の劣化・被毒のモデル、均一系触媒・酵素触媒、光触媒(Burger らの1例を除く)、触媒の企業の事例は扱っていません。白金族金属の資源・リサイクルは、本シリーズ「白金族金属と触媒」編を参照してください。

(5) 日本国内の動向

日本の触媒研究のデータ基盤や、国内の機関・企業の取り組みは、この記事では調べていません。

この記事のまとめ
  • 触媒の探索では、吸着エネルギーが物差しです。強すぎても弱すぎても活性が落ちる火山型の関係を使い、計算やAIで候補を絞ります事実
  • 計算で見つけ、実験で確かめた例があります。BiPt(水素発生)、Ni–Ga(CO₂→メタノール)、Cu–Al(CO₂→エチレン)。ただし、うまくいった例が公表されやすい点に注意します事実
  • Open Catalyst は、計算データの共通の土台です。OC20(DFT緩和128万件)、OC22(酸化物)、OC25(固液界面)、UMA。2020年のベースラインのエネルギー誤差は0.50〜0.92 eVでした事実
  • エネルギーの誤差は、速度に指数で効きます。0.1 eVのずれは、300 Kで約48倍、600 Kで約6.9倍です本稿の計算
  • 計算と実験の対応は、反応で違います。OCx24では、水素発生は吸着エネルギーで説明でき(LOCO R² 0.59)、Ptが予測の頂上に現れましたが、CO₂還元はほとんど説明できませんでした事実
  • 触媒を評価する質問:どの段まで確かめたか、何と比べたか、何で規格化したか、実用に近い条件か、安定性は。独立した検証・スケールアップまで確認できた報告は、この記事の範囲にはありませんでした

12. 評価・標準の読み方

触媒のMIの「良し悪し」は、何を正解とするか(DFTの計算値か、実験か)、評価データの分け方(学習に似た組成を含めるか、除くか=LOOかLOCOか)、比べる相手(中央値、基準の触媒)、どの段まで確かめたか(第9章)で決まります。触媒のMIに特化した国際標準は、確認できませんでした。ここでは、コミュニティのベンチマークと、実験の評価の共通の手順を、確認できた範囲で表にします(確認日 2026年10月22日)。

評価項目代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典)標準・指針(ISO/IEC・NIST など)読み方の注意
吸着エネルギー・力の予測Open Catalyst 2020(OC20):S2EF(エネルギーMAE、力MAE、EFwT)、IS2RS(ADwT、AFbT)、IS2RE(エネルギーMAE、誤差0.02 eV以内の割合EwT)。分割はID・OOD吸着・OOD触媒・OOD両方。公開のリーダーボード[1・12]。OC22(酸化物、全エネルギーの課題)[2]、OC25(固液界面)[10]事実確認できなかった2020年のベースラインの数字と、現在のモデルの数字は違う。最新は公式のリーダーボードで、確認日と条件を確認する
吸着配置の探索AdsorbML と Open Catalyst Dense(約1,000表面・約10万配置)。最低エネルギーの配置を87.36%、約2,000倍の速さ[8]事実確認できなかった見逃しの約13%が、エネルギーを高く見積もる誤差になる
計算の特徴量と実験の対応OCx24(572試料、441電極、HERとCO2RR):R²(LOO・LOCO)、実験のばらつき σ = 0.043 V(HER電圧)[7]事実確認できなかったLOCOが、新しい組成への力を測る。LOOだけの数字は過大になりうる
触媒の実験の比較McCrory らの標準プロトコル(HER 18種・OER 26種の電極触媒。10 mA/cm²に必要な過電圧、短時間(2時間)の安定性、電気化学的な表面積)[15]事実確認できなかった(このプロトコルは論文で示された共通の手順で、ISOなどの規格ではない)同じ条件で比べないと、活性の優劣は決められない。規格化の方法(幾何面積・ECSA・質量)を確認
計算データの共有Catalysis-Hub.org(10万件超の吸着・反応エネルギー、計算条件を記録)[14]。FAIR原則[22]事実(FAIRは原則であり、ISOなどの規格ではない)原則は推奨で、要求ではない。計算の条件(汎関数、設定)がデータで揃っているかが、再利用の鍵
文献データの学習Suzuki らの、OCM・WGS・CO酸化の文献データでの検討[16]事実確認できなかった組成の重なりが少ない、過去の報告の偏り、サンプル数の少なさ。失敗例が少ない
ライセンスfairchem:コードはMIT。モデル・重みは用途ごとに異なり、UMAはHugging Faceでの申請が必要[13]事実確認できなかった(データセットごとの条件)商用利用の可否は、公式の記載を確認する
独立した検証—確認できなかったこの記事の範囲では、第5段(独立した検証・スケールアップ)まで確認できた報告はなかった

表の整理は本稿の計算(整理)。各数字は論文の要旨・本文、公式サイトで確認(確認日 2026年10月22日)。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • ベンチマークの順位と、自社の触媒での実力は別です:OC20のようなベンチマークは、計算データでの吸着エネルギーの予測の評価です。実際の触媒の活性・選択性・安定性は、別に確かめる必要があります
  • 予測と実験検証を区別します:第9章のはしごのどの段かを確認します。「AIが見つけた」は、第1段の話のことが多い
  • データの分け方:LOOとLOCOで、数字が大きく変わります。新しい組成を探すのなら、LOCOの数字を見ます
  • 標準・原則の強さ:FAIR原則は推奨です。McCrory らのプロトコルは、共通の手順の提案で、法的な拘束力を持つ規格ではありません。著者の見込み(データを1万〜10万規模に増やすと予測が良くなる)は、未確定/将来として扱います

13. 用語集

触媒
それ自身は変わらずに、反応を速くする物質。
活性/選択性/安定性
反応の速さ/狙った生成物の割合/長持ちするか。触媒を見る3つの物差し。
吸着/吸着エネルギー
分子が表面にくっつくこと/そのくっつきやすさ(負が大きいほど強い)。
Sabatierの原理
表面との結合は、強すぎても弱すぎても活性が落ち、ちょうどよい強さが最良になるという考え方。
火山図
吸着の強さを横軸、活性を縦軸にして、山の形になる図。
記述子
触媒を数字で表した「名刺」。吸着エネルギーなど。
スケーリング関係
関連する中間体の吸着エネルギーが、互いに連動する関係。
dバンド模型
遷移金属のd電子のエネルギー分布が、吸着の強さの目安になるという考え方。
DFT(密度汎関数理論)
電子の振る舞いから材料の性質を計算する物理シミュレーション。近似を含む。
緩和(構造緩和)
原子の配置を、エネルギーが最小になるように動かす計算。
S2EF/IS2RS/IS2RE
OC20の3課題。エネルギーと力/緩和後の構造/緩和後のエネルギーを当てる。
MAE
平均絶対誤差。予測と正解の差の絶対値の平均。
OOD(分布外)
学習に使った範囲の外のデータ。未知の吸着分子や触媒組成。
LOO/LOCO
1試料だけ除く評価/同じ組成の試料を全部除く評価。LOCOの方が厳しい。
HER/OER/CO2RR
水素発生反応/酸素発生反応/CO₂の電気化学還元。
ファラデー効率
流した電気のうち、目的の生成物に使われた割合。
ガス拡散電極(GDE)
気体を触媒の層に届けやすくした電極。高い電流密度の評価に使う。
ECSA
電気化学的に活性な表面積。活性を規格化する指標の1つ。
能動学習
次にどのデータを取るかをAIが選び、少ない計算・実験で学ぶ方法。
材料ギャップ
計算の理想的な表面と、実際の触媒(粒子・欠陥・担体)との差。
FAIR原則
データを見つけやすく、アクセスしやすく、組み合わせやすく、再利用しやすくする原則。
MI(マテリアルインフォマティクス)
データと計算、機械学習を使って材料の研究を効率化する方法。

14. 参考資料(一次情報)

  1. Chanussot L. ほか "Open Catalyst 2020 (OC20) Dataset and Community Challenges", ACS Catal. 11, 6059–6072 (2021), DOI 10.1021/acscatal.0c04525(プレプリント arXiv:2010.09990 を本文の確認に使用) — arxiv.org/abs/2010.09990
  2. Tran R. ほか "The Open Catalyst 2022 (OC22) Dataset and Challenges for Oxide Electrocatalysts", ACS Catal. 13, 3066–3084 (2023), DOI 10.1021/acscatal.2c05426(要旨を arXiv:2206.08917 で確認) — arxiv.org/abs/2206.08917
  3. Greeley J. ほか "Computational high-throughput screening of electrocatalytic materials for hydrogen evolution", Nat. Mater. 5, 909–913 (2006), DOI 10.1038/nmat1752 — doi.org/10.1038/nmat1752
  4. Studt F. ほか "Discovery of a Ni-Ga catalyst for carbon dioxide reduction to methanol", Nat. Chem. 6, 320–324 (2014), DOI 10.1038/nchem.1873 — doi.org/10.1038/nchem.1873
  5. Zhong M. ほか "Accelerated discovery of CO2 electrocatalysts using active machine learning", Nature 581, 178–183 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2242-8 — doi.org/10.1038/s41586-020-2242-8
  6. Nørskov J. K. ほか "Origin of the Overpotential for Oxygen Reduction at a Fuel-Cell Cathode", J. Phys. Chem. B 108, 17886–17892 (2004), DOI 10.1021/jp047349j — doi.org/10.1021/jp047349j
  7. Abed J. ほか "Open Catalyst Experiments 2024 (OCx24): Bridging Experiments and Computational Models", arXiv:2411.11783(2024年11月、プレプリント) — arxiv.org/abs/2411.11783
  8. Lan J. ほか "AdsorbML: a leap in efficiency for adsorption energy calculations using generalizable machine learning potentials", npj Comput. Mater. 9, 172 (2023), DOI 10.1038/s41524-023-01121-5(オープンアクセス) — nature.com/articles/s41524-023-01121-5
  9. Kolluru A. ほか "Open Challenges in Developing Generalizable Large-Scale Machine-Learning Models for Catalyst Discovery", ACS Catal. 12, 8572–8581 (2022), DOI 10.1021/acscatal.2c02291(要旨を arXiv:2206.02005 で確認) — arxiv.org/abs/2206.02005
  10. Sahoo S. J. ほか "Insights into CO dimerization at electrified Cu interfaces from large-scale machine learning simulations"(Open Catalyst 2025〔OC25〕の導入), arXiv:2509.17862 — arxiv.org/abs/2509.17862
  11. Wood B. M. ほか "UMA: A Family of Universal Models for Atoms", arXiv:2506.23971 — arxiv.org/abs/2506.23971
  12. Open Catalyst Project "Open Catalyst Project"(公式サイト) — opencatalystproject.org
  13. Meta FAIR Chemistry "fairchem"(GitHub の README。コードのライセンスとUMAのタスク名の確認に使用。確認日 2026年10月22日) — github.com/facebookresearch/fairchem
  14. Winther K. T. ほか "Catalysis-Hub.org, an open electronic structure database for surface reactions", Sci. Data 6, 75 (2019), DOI 10.1038/s41597-019-0081-y(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s41597-019-0081-y
  15. McCrory C. C. L. ほか "Benchmarking Hydrogen Evolving Reaction and Oxygen Evolving Reaction Electrocatalysts for Solar Water Splitting Devices", J. Am. Chem. Soc. 137, 4347–4357 (2015), DOI 10.1021/ja510442p — doi.org/10.1021/ja510442p
  16. Suzuki K. ほか "Statistical Analysis and Discovery of Heterogeneous Catalysts Based on Machine Learning from Diverse Published Data", ChemCatChem 11, 4537–4547 (2019), DOI 10.1002/cctc.201900971 — doi.org/10.1002/cctc.201900971
  17. Nguyen T. N. ほか "High-Throughput Experimentation and Catalyst Informatics for Oxidative Coupling of Methane", ACS Catal. 10, 921–932 (2020), DOI 10.1021/acscatal.9b04293(題名の範囲で確認) — doi.org/10.1021/acscatal.9b04293
  18. Ohyama J. ほか "Data Driven Determination of Reaction Conditions in Oxidative Coupling of Methane via Machine Learning", ChemCatChem 11, 4307–4313 (2019), DOI 10.1002/cctc.201900843(題名の範囲で確認) — doi.org/10.1002/cctc.201900843
  19. Toyao T. ほか "Machine Learning for Catalysis Informatics: Recent Applications and Prospects", ACS Catal. 10, 2260–2297 (2020), DOI 10.1021/acscatal.9b04186(題名の範囲で確認) — doi.org/10.1021/acscatal.9b04186
  20. Burger B. ほか "A mobile robotic chemist", Nature 583, 237–241 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2442-2 — doi.org/10.1038/s41586-020-2442-2
  21. Hammer B., Nørskov J. K. "Why gold is the noblest of all the metals", Nature 376, 238–240 (1995), DOI 10.1038/376238a0(題名と書誌の範囲で確認) — doi.org/10.1038/376238a0
  22. Wilkinson M. D. ほか "The FAIR Guiding Principles for scientific data management and stewardship", Sci. Data 3, 160018 (2016), DOI 10.1038/sdata.2016.18 — doi.org/10.1038/sdata.2016.18

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
OC20:DFT緩和1,281,040件(一点計算 約264,890,000回)、3課題(S2EF・IS2RS・IS2RE)、4つの分割、ベースライン3種、公開リーダーボード。IS2REのベースライン:エネルギーMAE 0.50〜0.92 eV、中央値基準1.68〜1.89 eV、誤差0.02 eV以内の割合 約2〜7%。S2EFの結果は実用にはまだ遠いと論文が述べる。ほとんどの課題でモデルの大きさに上限が見られなかったChanussot ら(2021)の要旨・本文・表(arXiv版)
出典1 https://arxiv.org/abs/2010.09990
事実
OC22:酸化物、DFT緩和62,331件(一点計算 約9,854,504回)、OC20との併用でエネルギー予測が約36%改善(GemNet-OC)Tran ら(2023)の要旨
出典2 https://arxiv.org/abs/2206.08917
事実
BiPt:700超の二元表面合金をDFTで評価、Pt並み以上の活性と予測、合成して試験しPtより良い性能(計算と一致)Greeley ら(2006)の要旨
出典3 https://doi.org/10.1038/nmat1752
事実
Ni–Ga触媒:記述子の解析と計算で候補を見つけ、合成して試験。Ni₅Ga₃が活性・選択性が高く、Cu/ZnO/Al₂O₃と同等以上のメタノール合成活性、COの生成が少ない(常圧)Studt ら(2014)の要旨
出典4 https://doi.org/10.1038/nchem.1873
事実
Cu–Al:DFTと能動学習で探索。エチレンのファラデー効率80%超(純Cuは約66%)、400 mA/cm²(1.5 V vs RHE)。その場XASで配位環境を確認Zhong ら(2020)の要旨
出典5 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2242-8
事実
酸素還元の速さの傾向を、酸素と水酸基の吸着エネルギーで説明Nørskov ら(2004)の要旨
出典6 https://doi.org/10.1021/jp047349j
事実
OCx24:572試料・13元素、XRF・XRD、441電極(HER・CO2RR、最大300 mA/cm²)、独立調製230・対象179、19,406材料・6吸着分子・6.85億回の緩和と約2,000万回のDFT一点計算、HER(LOCO R²=0.59、LOO 0.61)、Ptが火山の頂上付近(学習にPtなし)、σ=0.043 V(297本)、436の貴金属を含まない候補(282がSe含有)、CO2RRのLOO(H₂ 0.46・CO 0.44・液体 0.43・エチレン 0.08)とLOCO(0.22・0.00・0.18・0.01)、シミュレーションの単純化、データ1万〜10万規模で改善の見込み、金属間化合物ナノ粒子の合成の難しさAbed ら(プレプリント)の要旨・本文・表1
出典7 https://arxiv.org/abs/2411.11783
事実/未確定/将来
AdsorbML:機械学習ポテンシャルで低エネルギーの吸着配置を探索、最低エネルギーを87.36%、約2,000倍の速さ、Open Catalyst Dense(約1,000表面・約10万配置)Lan ら(2023)の要旨
出典8 https://www.nature.com/articles/s41524-023-01121-5
事実
特定の化学種・組成に絞った触媒向けの機械学習ポテンシャルは、補間はできるが、化学空間全体への一般化が難しいKolluru ら(2022)の要旨
出典9 https://arxiv.org/abs/2206.02005
事実
OC25:固液界面の最大のデータセット。Cu表面のCO二量化を800原子超のセル・7 nsまでの拡張サンプリングで計算Sahoo ら(arXiv)の要旨
出典10 https://arxiv.org/abs/2509.17862
事実
UMA:約5億の3次元原子構造で学習した汎用の原子モデル、1つのモデルで分子・材料・触媒Wood ら(arXiv)の要旨
出典11 https://arxiv.org/abs/2506.23971
事実
Open Catalyst Project が Meta FAIR とカーネギーメロン大学の共同研究で、AIで触媒を計算・発見して再生可能エネルギーの貯蔵に使うことを目的とすること公式サイト
出典12 https://opencatalystproject.org/
事実
fairchemのコードはMITライセンス、モデルは用途ごとに異なる、UMAはHugging Faceでの申請とログインが必要。タスク名 oc20(触媒)・oc22(酸化物触媒)・oc25(電極触媒)fairchem の README(確認日 2026年10月22日)
出典13 https://github.com/facebookresearch/fairchem
事実
Catalysis-Hub.org:10万件超の吸着・反応エネルギー、計算条件の記録Winther ら(2019)の要旨
出典14 https://doi.org/10.1038/s41597-019-0081-y
事実
HER 18種・OER 26種の電極触媒を標準プロトコルで比較。10 mA/cm²(幾何面積あたり)に必要な過電圧、2時間の安定性、ECSAMcCrory ら(2015)の要旨
出典15 https://doi.org/10.1021/ja510442p
事実
文献データ(OCM・WGS・CO酸化)で元素の特徴を入力する方法、XGBoostが最良、OCMで上位20の候補。組成の重なりの少なさ・過去の報告の偏り・サンプル数の少なさSuzuki ら(2019)の要旨
出典16 https://doi.org/10.1002/cctc.201900971
事実
OCMの高スループット実験と触媒インフォマティクス、OCMの反応条件の機械学習、触媒インフォマティクスの総説(題名の範囲)Nguyen ら、Ohyama ら、Toyao らの題名・書誌
出典17 https://doi.org/10.1021/acscatal.9b04293
出典18 https://doi.org/10.1002/cctc.201900843
出典19 https://doi.org/10.1021/acscatal.9b04186
事実
移動ロボットによる光触媒の探索:8日間・688実験・10変数、バッチ式ベイズ探索、初期配合より6倍高い活性Burger ら(2020)の要旨
出典20 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2442-2
事実
dバンド模型の原点の1つとして知られる論文(題名と書誌)Hammer と Nørskov(1995)の書誌
出典21 https://doi.org/10.1038/376238a0
事実
FAIR原則(Wilkinson ら、2016)の題名・書誌論文の書誌
出典22 https://doi.org/10.1038/sdata.2016.18
事実
火山図の模型(障壁=0.9+0.5E と 0.2+max(0,−E)、500 K、頂点 E≒−0.47 eV、左右の傾き約10桁・約5桁/eV)。ずれの倍率 exp(ΔE/kT)(300 K:0.05 eVで6.9倍・0.1 eVで48倍・0.2 eVで約2,300倍・0.5 eVで約2.5億倍/600 K:2.6倍・6.9倍・48倍・約1.6万倍)。一点計算の比(264,890,000÷1,281,040≒207、685百万÷2,000万≒34)、100%−87.36%本稿の計算(説明用の模型と、アレニウス型の式による計算)。実在の触媒の値ではない本稿の計算
最新のOpen Catalyst の精度、データセットごとの利用条件、触媒のMIに特化した国際標準、第5段(独立した検証・スケールアップ)まで確認できた報告、長期の安定性の実験的な確認本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない解説
「スケーリング関係により1〜2個の吸着エネルギーで傾向が表せる」「うまくいった例が公表されやすい」「LOOでは当たりLOCOで当たらないのは外挿の問題」「同じ手法の誤差は比べる触媒の間で共通しやすく、順位づけは当たりやすい」「触媒の文献データには失敗が少ない」という読み取りと、AIに任せやすい/専門家が判断する場面の整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図2〜図7・図9が実データの観察ではなく説明のための作図であること。図1と図8がImageGen生成の概念画像であること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月22日/出典は一次情報(査読論文、arXiv の論文、Open Catalyst Project と fairchem の公式ページ)に限定しています。Open Catalyst の精度の数字は2020年のベースラインです。 計算例は本稿の模型や式による計算で、実在の触媒の性能を示すものではありません。 最新の精度、データセットごとの利用条件、触媒のMIに特化した国際標準、独立した検証・スケールアップまで確認できた報告、長期の安定性の実験的な確認については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図8はImageGen生成の概念画像です。