主要成果
イタリアのIRCCS Fondazione Istituto Neurologico Carlo Besta(FINCB)とミラノ工科大学(Politecnico di Milano)の共同研究チームが、細胞内のエネルギー産生を担うミトコンドリアを、その機能を維持したまま高度な材料で被覆する手法を開発しました。この研究成果は、Journal of the American Chemical Society(JACS)に掲載されました。
技術・詳細
研究チームは、用途に応じて特性を調整できる高度な材料である「金属有機構造体(MOF)」を採用しました。MOFは、2025年のノーベル化学賞を北川進氏、リチャード・ロブソン氏、オマール・ヤギー氏が受賞した分野の材料です。
ミトコンドリアは非常に繊細な構造であり、外部からの干渉で容易に機能を失うため、被覆処理は極めて困難な課題とされてきました。しかし、本研究ではMOF材料を微量にミトコンドリア表面へ直接適用する技術を開発し、この障壁を克服しました。検証の結果、被覆されたミトコンドリアは引き続きエネルギーを産生し続けており、本プロセスが必須機能を損なうことなく表面修飾を可能にすることが実証されました。
背景・業界の文脈
ミトコンドリアは細胞が不可欠な活動を行うために必要なエネルギーを生成しています。この構造が正常に機能しなくなると、多くの希少疾患を含むさまざまな疾患の原因となります。特に、脳や筋肉など大量のエネルギーを必要とする臓器や組織に深刻な影響を及ぼしますが、現状では効果的な治療選択肢は限られています。
本研究は、2023年に設立された共同研究室「BraiNs laboratory」において、FINCBのミトコンドリア生物学の専門家であるValeria Tiranti博士と、ミラノ工科大学の化学および材料工学の専門家であるPierangelo Metrangolo教授らの連携により達成されました。
今後の展望
本技術の最大の利点は、目的に応じて被覆材をカスタマイズできる点にあります。Metrangolo教授は、将来的に特定の機能を果たす異なる特性のMOFを開発し、目的別のコーティングを実現できる可能性を指摘しています。
具体的な応用案として、機能不全に陥った細胞に健康なミトコンドリアを導入する「ミトコンドリア移植」という実験的手法が挙げられます。Tiranti博士は、専用に設計された被覆材が、健康なミトコンドリアの輸送を容易にし、受容側細胞との相互作用を促進させる可能性があると述べています。ただし、被覆されたミトコンドリアが未被覆のものより移植において優れた性能を示すかどうかについては、今後のさらなる研究による検証が必要です。
元記事: https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261012185008.htm
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