主要成果
中国の香港城市大学、吉林大学、中山大学の研究チームは、逆構造ペロブスカイト太陽電池において、変換効率27.50%(リバーススキャン条件下)を達成する新技術を開発しました。このデバイスは、開回路電圧(VOC)1.202 V、短絡電流密度 26.40 mA/cm2、フィルファクター(FF)86.67%という高い性能を示しています。また、天津市計量监督检验研究院による独立認証では、定常状態効率 27.31%が確認されました。
技術・詳細
本研究の核心は、正孔選択層に「高エントロピー分子接合(HE-MCs)」を導入した点にあります。具体的には、化学構造が似ているが非中心対称単位を持つ3つのカルバゾールベース分子(CbzNaph、CbzNaphBF、CbzNaphBT)を1:1:1のモル比で混合して使用しました。CbzNaphBFとCbzNaphBTにはそれぞれ酸素および硫黄を含むユニットが組み込まれており、これにより分子間の相互作用とパッキング配置が多様化し、構成上の無秩序さ(高エントロピー状態)が生まれます。
デバイスの構造は、FTO/HE-MCs/ペロブスカイト/C60/SnO2/Cuとなっており、以下の工程で製造されています。
- 正孔選択層:混合溶液をFTOガラスにスピンコートし、100 Cで10分間アニール。
- 吸収層:バンドギャップ 1.55 eVのペロブスカイトを2段階スピンコート法で堆積し、100 Cで30分間アニール。
- 上部層:表面パッシベーション後、C60(30 nm)を熱蒸着、SnO2(40 nm)を原子層堆積法(ALD)で形成し、最後に銅(Cu)電極(100 nm)を熱蒸着。
- 反射防止:ガラス基板背面へフッ化マグネシウム(120 nm)をコーティング。
背景・業界の文脈
ペロブスカイト太陽電池の商用化における大きな壁は、変換効率の向上と長期的な動作安定性の確保です。特に従来の単一成分による分子接合は、熱ストレス下で分子パッキングの秩序が失われ、正孔輸送能の低下やデバイスの劣化を加速させるという熱的不安定性の課題がありました。本研究では、あえて構造的な複雑さ(高エントロピー化)を持たせることで、分子接合の崩壊を防ぎつつ効率的な電荷輸送を維持することに成功しました。その結果、CbzNaph単体を用いたデバイスの平均変換効率 26.37%に対し、HE-MC採用デバイスでは 27.29%へと向上し、VOCとFFの改善が見られました。
今後の展望
今回の成果は、Nature Photonics誌に掲載されました。本研究で達成した27.50%という数値は、2026年5月に陝西師範大学などのチームが報告した逆構造ペロブスカイト太陽電池の効率 27.41%(Nature誌掲載)に匹敵する極めて高い水準です。研究チームは分子動力学シミュレーションや密度汎関数理論計算を用いて、熱老化前後での分子パッキングと電荷輸送を検証しており、85 Cでの連続的な1サン照射下での最大電力点追跡など、過酷な条件下での安定性評価も行っています。
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