主要成果
Bi 0.5 Na 0.5 TiO 3(BNT)ベースのセラミックスにおいて、高エントロピー(HE)粒界エンジニアリングを用いることで、中電界域(200-500 kV/cm)でのエネルギー貯蔵性能(ESP)を大幅に向上させることに成功しました。開発された(1- x)(Bi 0.5 Na 0.5 ) 0.7 (Ba 0.3 Sr 0.7 ) 0.3 TiO 3 – x La(Mg 2/3 Nb 1/3 )O 3 (BNBST- x LMN) セラミックスのうち、x = 0.08のモデル(BNBST-0.08LMN)は、450 kV/cmの電界において、回復可能エネルギー密度(W rec)6.50 J/cm 3および高い貯蔵効率(η)86.42%を記録しました。また、安定したESPと高速な充放電性能(t 0.9 ≈ 45 ns)も示しています。
技術・詳細
本研究では、LMNの導入によって構成エントロピーを増加させ、相競合を誘発させています。フェーズフィールドシミュレーションにより、x = 0.08のモデルが正規化電界下で低い残留分極(P r)と高い最大分極(P max)を持つことを迅速に特定しました。原子スケールの観察では、BNBST-0.08LMNセラミックスにおいて、短範囲の極性領域と長範囲の非極性領域が共存し、酸素八面体がランダムに傾斜していることが判明しました。これにより、強い局所的な双極子相関を維持しつつ、分極異方性を効果的に低減しています。
さらに、粒界においてMg酸化物化合物が観察されました。これがピンニングセンターとして機能することで、結晶粒の微細化、絶縁性能の向上、および電気ツリー(絶縁破壊の経路)の伝播抑制が実現しています。
背景・業界の文脈
パルス電力アプリケーション向けの誘電体キャパシタは、高速な充放電と高出力密度、長寿命という特性から重要視されています。特にBNTベースのセラミックスは、Bi 3+ -O 2- の強い共有結合により高いP maxを得られるため有望視されてきましたが、低い絶縁破壊強度(E b:約100 kV/cm)と、長範囲に秩序化した強誘電ドメインに起因する大きなヒステリシス損失が課題となっていました。
近年、5種類以上の主要陽イオンを含む高エントロピー(HE)設計が導入され、P rの制御に有効であることが示されています。しかし、これまでのHE戦略による超高エネルギー貯蔵性能は、主に500 kV/cmを超える極めて高い電界下で達成されており、設備や人員への危険性、長期信頼性の低下といった実用上の問題がありました。また、HE戦略では結晶粒の微細化によりE bが向上する一方で、比誘電率(ε r)やP maxが低下するというトレードオフが存在し、中電界域での高性能化は困難とされてきました。
今後の展望
本研究で提示されたHE粒界エンジニアリングの手法は、BNTベースのセラミックスにおいて、中電界域で高いエネルギー貯蔵性能を実現するための汎用的なルートを提供します。これにより、産業用統合電源システムへの採用に向けた有望な候補材料となることが期待されます。
元記事: https://www.oaepublish.com/articles/microstructures.2026.235?to=comment
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