COMPANY PROFILE / 量子コンピュータ
パスカル(Pasqal)
― 原子を光で並べる量子コンピュータを、欧州の計算センターに納め、2026年8月にNasdaqへ上場したフランスの会社
Pasqalは、レーザー光で1個ずつ捕まえて並べた原子を、量子コンピュータの部品(量子ビット)として使うフランスの会社です。2019年に、2022年のノーベル物理学賞のAlain Aspect氏らの研究をもとに設立されました。会社は今日は「アナログ」方式(原子の並べ方で問題を表し、原子どうしの自然な力に計算させる方式)を主力とし、同じ装置を将来は「デジタル」方式(命令を1つずつ重ねる方式)の誤り訂正へ進める、と説明しています。2026年8月27日に特別買収目的会社(SPAC)Bleichroeder Acquisition Corp. IIとの合併を完了し、8月28日からNasdaq(PSQL)で取引が始まりました。売上は2025年に約1,650万€で、まだ小さく、損失は拡大しています。本稿では、上場の経緯(SECの提出書類)、装置の納入実績、売上と資金、将来のロードマップを、会社の提出書類と発表の範囲で整理します。「量子優位」などは会社の主張として扱います。確認日は2026年10月16日です。
- 30秒でわかるPasqalと、量子コンピュータでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 量子コンピュータにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は量子コンピュータで何を目指しているか
- 量子コンピュータ分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるパスカル(Pasqal)と、量子コンピュータでの立ち位置
(Palaiseau)SEC提出書類の所在地。欧州・米国・カナダ・サウジアラビア・韓国に拠点
(2026年8月28日〜)SPAC(Bleichroeder Acquisition Corp. II)との合併を2026年8月27日に完了
中性原子光チップの実験ではルビジウム原子(会社の発表)。主力はアナログ方式で、デジタル方式も目指す
140〜200量子ビット物理量子ビット。消費電力は約4kW(会社の説明)。7台を設置、3台を製造中
200個超会社の計画。実験段階の結果はまだ小規模(本文参照)
Pasqalは、量子コンピュータを「今すぐ使える形」で売ろうとしている会社です。今日の主力はアナログ方式で、原子の並べ方で解きたい問題(最適化や物質のシミュレーションなど)を表し、原子どうしの自然な力に計算させます。ゲートを1つずつ重ねる「デジタル方式」と、間違いを直す「誤り訂正」は将来の目標という位置づけです 事実。売上はまだ小さく(2026年上半期は約490万€)、顧客は欧州の公的な計算センター(フランスのGENCI/CEA、ドイツのユーリッヒ研究センター、イタリアのCINECA)やサウジアラムコなどです。会社は2026年に「実用的な量子優位を今日提供できる」と述べていますが、本稿はこれを会社の主張として扱い、独立した検証は確認できませんでした。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:社名はPasqal(フランス語読みでパスカル)。法人としては、合併後の上場会社がPasqal Holding SAで、事業会社のPasqal SASはその子会社です。名前の由来は17世紀のフランスの科学者ブレーズ・パスカルです。Orionは装置の名前、Pulserはソフトウェアの名前で、いずれも社名ではありません。
公式サイト:https://www.pasqal.com/3. 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか
まず、量子ビットと方式の話です。量子ビットは量子コンピュータの最小の部品で、普通のビットと違い、0と1の「重ね合わせ」の状態をとれます。何で作るかが「方式」で、Pasqalは電気を帯びていない原子(中性原子)を使います。
Pasqalの装置は、同じ原子の配列を2つのやり方で使えるのが特徴です。次の図解は、その違いを簡単にしたものです。
4. 会社の規模
Pasqalは2026年8月に上場したばかりで、年次報告書(Form 20-F)はまだ出ていません。2025年までの数字は目論見書、2026年上半期の数字はForm 6-Kに添付された経営陣による財務分析(MD&A)の記載です。単位は百万€(千€の値を丸めて表示)です 事実。
| 指標(百万€) | 2024年 | 2025年 | 2026年上半期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3.5 | 16.5 | 4.9(前年同期は4.3) |
| うち QPU(装置)の販売 | 0 | 7.5 | 0 |
| うち QPU関連サービス | 2.1 | 6.5 | 3.9 |
| うち クライオスタット販売 | 1.4 | 2.6 | 0.9 |
| 営業損失 | (46.8) | (50.5) | (59.2)(株式報酬等37.5を含む) |
| 純損失 | (48.5) | (92.4) | (53.2) |
| 現金・同等物 | ― | 73.8(12月末) | 110.8(6月末)→ 約312.9(2026年8月27日) |
2025年の売上は表では16,468千€、本文では「16.4百万€」と記載されています。2025年の純損失9,240万€には、償還債券(ORA債)の公正価値の変動による約3,490万€の損失が含まれます。
| その他の規模 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 従業員 | 約300人(博士号保持者70人超)。パレゾー本社に14の専用実験室とQPU用の10室 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026085694/ea0282861-11.htm |
| 特許 | 約92の特許ファミリー(発行済みと出願中の合計) | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026085694/ea0282861-11.htm |
| 受注残など | 「予約・採択済みの事業」7,040万€(2026年6月30日)。助成金・税額控除・複数年の顧客契約を含み、売上ではない | 出典4 https://www.pasqal.com/newsroom/pasqal-reports-first-half-2026-financial-results/ |
| 発行済み株式 | 2026年8月27日時点で212,293,691株 | 出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026096761/ea0303765-20f_pasqal.htm |
2026年上半期の売上増(14%)は、案件の売上計上のタイミング(ユーリッヒ研究センターのQPUのアップグレード)によるもので、会社も「売上は期ごとに変動しうる」と書いています。サウジアラムコの装置は2026年に稼働を始めましたが、関連する売上は今後のサービス提供に応じて計上される見込みです 事実。また、「予約・採択済みの事業」は助成金や税額控除を含むため、売上の見通しではありません。
5. 量子コンピュータにかけているリソース
4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、確認できたかを表にします。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 約300人、博士号保持者70人超。2025年の人件費は約3,870万€(2024年は約2,790万€)。研究開発の人員が多数 | 事実 |
| 金:資金調達 | 創業以来の調達総額は3億US$超(目論見書)。2025年4〜12月に償還債券(ORA債)6,830万€(年利12%)、2025年12月〜2026年2月にSeries C株で約1.01億€(1株139.54€)、2026年3月に転換社債3.125億US$(払込額2.5億US$)。SPACからの信託口座の残りは約2,769万US$(償還が約2.66億US$あったため) | 事実 |
| 金:現金 | 2026年6月末に1.108億€、合併後の8月27日に約3.129億€(半期決算)。会社の合併完了の発表は「約3.6億US$の現金が利用可能」と記載(通貨・日時・定義が異なる) | 事実 |
| 金:公的資金・公的融資 | 政府の助成金収入は2025年に約720万€(2024年は約1,080万€)。ケベック州投資公社の融資(最大1,500万カナダドル)、米国イリノイ州の金融公社の融資(最大1,500万US$、年3.55%)、Bpifranceの融資 | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁 | Qu&Co Solutions(2021年に買収、2025年6月にオランダ法人を閉鎖して整理)、MyCryoFirm(2022年に買収。クライオスタット)、Aeponyx Enterprises(カナダ、2024年に買収。光集積回路)。株主はQuantonation(11.5%)、Bpifrance関連(11.4%)、Runa Capital(8.9%)、EIC Fund(6.8%)、Temasek関連(5.6%)など(2026年9月1日時点、20-Fの表) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的機関との連携 | Institut d’Optique、フランスのGENCI/CEA、ユーリッヒ研究センター、CINECAへの装置納入、EUのQ-PLANET(総額5,000万€、28機関、Pasqalが調整役)、フランス国防調達庁(DGA)の防衛プログラム(第1段階を完了後、2026年9月に参加を終了) | 事実 |
主要な装置・実験の状況を、会社の資料で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月16日)。数値は会社の公称または会社の発表で、方式や条件が異なるため、他社と並べて優劣をつけません。
ゲートの忠実度(フィデリティ)や量子ビットのコヒーレンス時間の数値は、本稿が確認した提出書類・発表には記載が見当たらなかったため、表に載せていません。段階の「計画」は実現が確定したことを意味しません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2019年 | フランスで設立。Georges-Olivier Reymond、Christophe Jurczak、Alain Aspect、Antoine Browaeys、Thierry Lahayeの5人が共同創業 | 中性原子の研究者が創業者 |
| 2021〜2022年 | Qu&Co Solutionsを買収(2021年)、MyCryoFirmを買収(2022年)。Series A(2021年)、Series B(2022年) | ソフトと冷却技術を取り込んだ |
| 2023年1月 | サウジアラムコのベンチャー部門Wa’ed Venturesが出資 | のちのサウジ展開の布石と会社が説明 |
| 2024年 | 1,000個超の原子の配列(6月)。Aeponyx(カナダ)を買収(光集積回路)。サウジアラムコとの契約 | 量産・小型化に向けた光部品の取り込み |
| 2025年 | カナダ・シェルブルックに第2の工場を開設。4月にLoïc Henrietが会長に就任、10月29日にWasiq Bokhariが経営トップ(Managing Director)に就任。ORA債(4〜12月)、Series C(12月〜)。Qu&Coの整理(6月) | 経営体制と資金の組み替え |
| 2025年11月 | サウジアラムコのダーラン・データセンターに200量子ビットの装置を設置(11月24日) | 中東初の産業向け量子コンピュータと会社は説明 |
| 2026年2月〜3月 | SPACとの合併契約に署名(2月28日)。転換社債の契約(3月4日) | 上場への道筋 |
| 2026年5月〜7月 | XPRIZE Quantum Applicationsの最終選考に進出(5月)。論理量子ビットと物理量子ビットを比べた実験(5月)。光集積回路のパッケージ拠点をケベックに開設(7月2日) | 応用・部品の両面の発表 |
| 2026年8月 | SPACの株主が合併を承認(25日)、合併完了(27日)、Nasdaqで取引開始(28日)。信託口座から約2.66億US$が償還された | 上場会社になった |
| 2026年9月〜10月 | シェル会社報告書(20-F、9月2日)、半期決算(9月24日)、フランス防衛プログラムPROQCIMAへの参加終了(9月28日)、EUのQ-PLANETの調整役として発表(10月6日) | 防衛から民生・欧州の産業政策へ重心が動いた |
7. 今後の計画
まず、会社が目論見書で示した「装置の世代」の計画を図解にします。すべて会社の計画で、達成の事実ではありません。
会社はこれらを「目標」「計画」「見込み」として述べており、達成の事実ではありません 未確定/将来。ロードマップのページは「2026年第1四半期末までに量子優位性を実証する」という目標を掲げていました。2026年9月の半期決算の発表は「有意義な応用で量子優位性を今日提供できる」と述べますが、その根拠となる条件や古典コンピュータとの比較は発表文に書かれておらず、本稿では確認できませんでした。
次はいずれも会社の提出書類・発表で確認できませんでした 未確定/将来。ゲート・フィデリティ(1量子ビット・2量子ビット)とコヒーレンス時間の数値/Velaの受注・納入先/論理量子ビットの実験の誤り率の数値/量子優位性の主張に対する古典側の反論の有無(本稿は調べていない)/フランスの新しい公的支援の金額。「世界第2位の規模の量子コンピュータ群」(会社の説明)といった言葉は会社の主張で、第三者による比較は確認していません。
8. この会社は量子コンピュータで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 当面の収益の中心は、アナログ方式の装置の納入とサービスで、デジタル(耐故障)は後から | 目論見書が「近い将来はアナログで先行」と記載し、売上は装置の販売(2025年)とQPU関連サービス(2026年上半期)。デジタルは2028〜2029年の計画 | 推測 |
| 欧州の公的な計算センターへの納入で実績を作り、中東・アジアへ販路を広げる | GENCI/CEA、ユーリッヒ、CINECAへの納入、サウジアラムコの装置、Eleven VenturesやKACSTとの覚書、韓国・米国・カナダの拠点 | 推測 |
| 量産と小型化のボトルネックを、光集積回路(PIC)で解こうとしている | Aeponyxを買収し、PICから4個の原子を約27.5秒保持。光学部の大きさを最大50分の1にできると説明。Q-PLANETで1013nmのチップ上レーザーを担当 | 推測 |
| 公的資金の中心を、防衛(PROQCIMA)から民生・欧州の産業政策へ移した | 2026年9月28日の発表で、PROQCIMAへの参加終了と「商業応用に焦点」を述べ、民生の耐故障の研究開発計画の提出を求められたと記載。10月6日にQ-PLANETの調整役 | 事実(理由の解釈は推測) |
| SPAC上場で得た現金は、公開株主の大規模な償還のため限られた | 約2.66億US$が償還され、信託口座に残ったのは約2,769万US$。転換社債(払込額2.5億US$)などと合わせて、会社は約3.6億US$が利用可能と発表 | 事実 |
半期決算の発表は、光集積回路(PIC)のレーザーで4個のルビジウム原子を4つの光ピンセットで約27.5秒保持したと述べます。会社は、この数字は従来の光学部品を使う装置と同程度で、光学部の大きさを最大50分の1にできると説明しています 事実。中性原子の装置は、原子の数を増やすほど、レーザーを狙った位置に届ける光学部品が大きく・複雑になります。ここから本稿は、「Pasqalは、光学系をチップにまとめることで、量子ビットを1万個規模に増やす際の部品の大きさと組み立ての手間を減らすことを、量産の鍵と見ている」と読みます。ただし、実験で保持したのは4個で、1,000個単位の配列をPICで動かした記載はありません。これは会社の説明を前提にした読みで、実際の量産への効果は今後の実証で確かめられる点です 未確定/将来。
9. 量子コンピュータ分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 層 | 主な製品 | 提出書類・公式資料の記述 |
|---|---|---|
| 量子ビット | 光のピンセットで並べた中性原子 | レーザーで冷やして捕まえた原子を格子状に並べ、別のレーザーで状態を操作し、蛍光で読み出す。量子ビットを「作る」必要がなく、自然の均一さを使えると説明。量子ビット自体に極低温の冷却は不要(会社の説明) |
| 装置 | Orion(140〜200量子ビット) | 客先に設置する形(オンプレミス)。データセンターに置ける。アナログとデジタルの両方のモードを同じ装置で動かす設計 |
| ソフト | Pulser、Pulser Studio、ハイブリッド用ライブラリ | アナログ方式の計画を作るためのツール。IBMのQiskit、NVIDIAのCUDA-Qとの連携 |
| クラウド | Pasqal Cloud、Microsoft Azure Quantum、Google Cloud Marketplace | アナログ方式のQPUにクラウド経由で接続。従量課金型で利用できる |
| その他 | クライオスタット(極低温用の装置) | 売上区分に「クライオスタット販売」があり、2025年は約260万€。MyCryoFirm(2022年に買収)由来。量子ビットには極低温を使わないと説明しつつ、装置内でのこの機器の役割は資料に詳しい記載なし |
原子は「同じ」、効くのは光と真空:中性原子の装置では、量子ビットの材料は自然の原子です。会社は「量子ビットを製造する必要がない」と述べます 事実。性能は、原子を保つ真空の質と、狙った原子に正確に光を当てる光学系で決まります。
光集積回路(PIC):会社は、PICが高速の変調器、低雑音のレーザー、増幅器、フィルターなどを提供でき、数万量子ビットへの拡大に適合すると説明します 事実。EUのQ-PLANETでは、4つの波長(461nm、698nm、795nm、1013nm)のレーザー、原子チップ、原子時計用の微細加工の蒸気セルなどを開発し、Pasqalは1013nmのチップ上レーザーを担当します 事実。シリコンやフォトニクスの製造プロセスを、原子の制御用の光源や部品に応用する方向です。
確認できなかった点:PICの具体的な材料や製造プロセス(例:窒化シリコン、シリコン、薄膜ニオブ酸リチウムなど)は、本稿が確認した資料に記載が見当たりませんでした 未確定/将来。本シリーズの技術解説「シリコンフォトニクス」「窒化シリコン導波路」「薄膜ニオブ酸リチウム」「半導体レーザー」は、こうした部品の背景を扱います。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 売上が小さく、損失が大きい | 2025年の売上は約1,650万€に対し純損失は9,240万€、2026年上半期は売上約490万€に対し純損失5,320万€ | 事実 |
| 負債・希薄化の負担 | 転換社債3.125億US$(払込額2.5億US$)は金融負債として公正価値で測定される。転換社債の転換(約2,604万株相当)と投資家向けワラントの行使(約3,255万株相当)で、株式が増える可能性 | 事実 |
| 会社の方針に対する政府の関与 | Bpifranceが株主で、事業会社の戦略委員会でも賛成票が必要な事項(知的財産のフランス国外への移転、重要資産の域外売却、幹部の任命など)がある。意思決定に制約が生じる可能性を会社が記載 | 事実 |
| 公的プログラムの変更 | フランスの防衛プログラム(PROQCIMA)への参加を第1段階の後に終了。民生の公的支援は今後の設計で、内容・金額は未定 | 未確定/将来 |
| 買収に伴うカナダ政府への約束 | Aeponyxの買収に関連し、雇用、技術の共同利用の制限などの約束・遵守義務を負い、事業の柔軟性を制限する可能性があると会社が記載 | 事実 |
| 「量子優位」の主張の検証 | 会社は「今日の応用で量子優位を提供できる」と述べるが、条件・比較は発表文に十分示されていない。独立した検証は確認できない | 未確定/将来 |
| 製造能力の制約 | 年13台への拡大は「人員・準備・部品の調達が整った場合」の見込み | 未確定/将来 |
| 規制の変化 | 現在、QPUは軍民両用品目に分類されず輸出管理の対象外だが、法令の変更で変わりうる。EUの量子法は提案段階 | 事実 |
| 競合の存在 | Atom Computing、QuEra Computing、Infleqtionなどの中性原子、超伝導・イオン・光の各方式も論理量子ビットを目指す。会社の「世界第2位の規模の装置群」は会社の主張で、他社との優劣はここでは判断しない | 事実 |
12. 用語集
- 量子ビット
- 量子コンピュータの最小の部品。0と1の「重ね合わせ」をとれる。
- 中性原子
- 電気を帯びていない原子。レーザー光で捕まえて並べ、量子ビットとして使う。
- 光ピンセット
- 細く絞ったレーザー光で、原子を1個ずつ捕まえて動かす仕組み。
- アナログ量子計算
- 原子の並べ方で問題を表し、原子どうしの自然な相互作用に計算させる方式。ゲートを重ねない。
- デジタル(ゲート方式)
- 「ゲート」という命令を重ねて計算する方式。誤り訂正と組み合わせやすい。
- 論理量子ビット
- 複数の物理量子ビットを組み合わせ、間違いに強くした量子ビット。
- 耐故障(FTQC)
- 計算中の間違いを自動で直しながら動く量子コンピュータ。
- QPU
- 量子処理装置。量子コンピュータの計算の中核となる装置。
- 光集積回路(PIC)
- 光を扱う部品を1つのチップの上にまとめたもの。
- SPAC
- 特別買収目的会社。先に上場し、その後に事業会社と合併して、事業会社が上場する形をとる。
- Form 20-F/6-K
- 米国に上場する外国企業が出す年次報告書(20-F)と随時報告(6-K)。
- ORA債
- 株式に償還される債券。Pasqalは2025年に発行し、のちにSeries BまたはSeries C株に転換された。
13. 出典
- Pasqal Holding SA(米国SEC) Proxy statement/prospectus(Form 424B3、2026年8月5日)。会社情報、技術、製品、顧客、規制、財務(MD&A)、リスク、装置の世代の計画。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026085694/ea0282861-11.htm
- Pasqal Holding SA(米国SEC) Shell Company Report on Form 20-F(2026年9月2日提出、事象日2026年8月27日)。合併の完了、償還額、転換社債、株主構成。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026096761/ea0303765-20f_pasqal.htm
- Pasqal 「Pasqal and Bleichroeder Acquisition Corp. II Complete Business Combination」(2026年8月27日)。 https://www.pasqal.com/newsroom/pasqal-and-bleichroeder-acquisition-corp-ii-complete-business-combination/
- Pasqal 「Pasqal Reports First Half 2026 Financial Results」(2026年9月24日)。半期の売上・現金・技術のハイライト。 https://www.pasqal.com/newsroom/pasqal-reports-first-half-2026-financial-results/
- Pasqal Holding SA(米国SEC) Form 6-K Exhibit 99.2、MD&A(2026年6月30日の半期、2026年9月24日提出)。売上の内訳、純損失、現金。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2119292/000121390026102831/ea030634601ex99-2.htm
- Pasqal 「Aramco and Pasqal make history with Saudi Arabia’s first quantum computer」(2025年11月24日)。 https://www.pasqal.com/newsroom/aramco-and-pasqal-make-history-with-saudi-arabia-first-quantum-computer/
- Pasqal 公式サイト「Our Roadmap」(確認日2026年10月16日)。ロードマップの目標。 https://www.pasqal.com/technology/roadmap/
- Pasqal 「Pasqal Announces an Evolution of Its Collaboration Framework with the French Public Authorities」(2026年9月28日)。PROQCIMAへの参加終了。 https://www.pasqal.com/newsroom/pasqal-announces-an-evolution-of-its-collaboration-framework-with-the-frenchpublic-authorities/
- Pasqal 「Pasqal Reaffirms its Commitment to the EU’s Quantum Ambitions as It Leads Q-PLANET…」(2026年10月6日)。 https://www.pasqal.com/newsroom/pasqal-reaffirms-its-commitment-to-the-eus-quantum-ambitions-as-it-leads-q-planet-for-neutral-atom-technologies/
- 米国SEC EDGARのPasqal Holding SAの提出書類一覧(確認日2026年10月16日)。 https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0002119292&type=&dateb=&owner=include&count=40
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月16日/Troy Technical
本稿の数値は、Pasqal Holding SAが米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類(Form 424B3、20-F、6-K)と会社の発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。装置の性能値は会社の公称または会社の発表で、方式・測定条件が異なる他社の値と並べて優劣をつけていません。株価・評価額には触れていません。
