🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

マイクロソフト(量子コンピュータ) 企業解説

← 量子コンピューターの解説一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / 量子コンピュータ

マイクロソフト(量子コンピュータ事業)
― 「物質の新しい状態」で量子ビットを作ろうとする挑戦。公式の主張と、論文・専門家の反論が並んでいる

Microsoft は、量子コンピュータでは他社とまったく違う道を選んでいます。 ふつうの量子ビットは壊れやすいので、あとから誤りを直す工夫が要ります。 Microsoft は、最初から壊れにくい性質を持つ量子ビット(トポロジカル量子ビット)を、特殊な半導体と超伝導体の組み合わせで作ろうとしています。 2025年2月の「Majorana 1」、2026年6月の「Majorana 2」で成果を発表していますが、 この方式が本当に実現できているかは、論文・専門家の間で見解が分かれています。 本稿は、結論を断定せず、公式資料・論文・反論を並べて、確認できた事実と未確定の点を分けて示します。 あわせて、クラウドサービス Azure Quantum と、他社の装置を使った誤り訂正の取り組みも扱います。

構成:Microsoft の公式ブログ・技術論文・Form 10-K(2026年6月期、2026年7月提出)、Nature誌の論文と査読ファイル、arXivの論文、DARPAの公開ページを一次情報として使用/確認日 2026年10月16日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるMicrosoftと、量子コンピュータでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(量子に関わる部分に絞る)
  5. 量子コンピュータにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は量子コンピュータで何を目指しているか
  9. 量子コンピュータ分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるマイクロソフトと、量子コンピュータでの立ち位置

正式名称Microsoft Corporation量子部門の名前は Microsoft Quantum。クラウドは Azure Quantum
本社米国ワシントン州
レドモンド
量子ハードの試験拠点の1つが米国メリーランド州に開設(2026年9月)
上場Nasdaq: MSFT会計年度は6月30日まで。全社の規模は第4章で簡潔に
会社の類型光・シリコンほか
(従:ソフト・クラウド)
主力の量子ビットは「トポロジカル」。クラウドとソフトも提供
量子ビットの作り方半導体+超伝導体の細線
(マヨラナ方式)
電子数の偶奇(パリティ)の測定で計算する設計
最新の機器Majorana 22026年6月2日に発表。技術論文は査読前(arXiv)
10-Kでの量子の記載0件2026年6月期の10-K全文に「quantum」の語なし(本稿の確認)
会社の目標2029年までに
拡張可能な量子コンピュータ
会社の目標であり、達成済みではない
まず押さえるべき1点

この記事で最も大事なのは、「会社が主張していること」と「第三者が確認していること」を分けて読むことです。 大まかな整理は次のとおりです。

確認できた事実:Microsoft は、2025年2月と2026年6月に、素子の測定結果を公表しました。 2025年のNature論文は、電子数の偶奇(パリティ)を1回の測定で読む素子の構造を示しました。 2026年6月のプレプリントは、Z型パリティの切り替え時間が約20秒に達したと報告しています。

未確定:その信号が本当にマヨラナ零モード(この方式の量子ビットの材料となる状態)によるものかどうか、 また、計算に必要な操作がそろって動くかどうかは、論文の編集部・独立した研究者・Microsoft 自身の間で議論が続いています。 Nature誌の編集部は、2025年の論文について「この結果はマヨラナ零モードの存在の証拠ではない」と査読ファイルに書いています 事実。 本稿は、この論争について結論を出しません。

この記事で最初に覚える3つの言葉

トポロジカル量子ビット:情報を「物質のかたち(位相)」に分散して持たせ、ノイズに強くしようとする量子ビットです。うまくいけば、誤りを直す手間(誤り訂正)を大きく減らせる、という期待があります。

マヨラナ零モード:細い超伝導の線の両端に現れるとされる、特殊な状態です。この状態を作れたかどうかが、方式の成否を分ける最大の争点です。

パリティ:線の中の電子の数が「偶数か奇数か」という情報です。この方式では、パリティを測ることで計算します。 パリティが長く変わらないことは良いことですが、それだけで量子ビットとして使えることの証明にはなりません(理由は第10章)。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Microsoft Corporation(米国)です。 量子に関わる部門は Microsoft Quantum(旧称に Azure Quantum があり、現在は Azure Quantum がクラウドサービスの名前)です。 Majorana 1・Majorana 2 は、量子処理装置(QPU)の製品名・試作機の名前で、本稿の「マヨラナ零モード」(物理現象)とは別のものです。

公式サイト:https://www.microsoft.com/en-us/(ロゴは公式サイトのヘッダーで使われている画像を取得)

3. 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか

量子コンピュータを作る会社は、「量子ビットを何で作るか」によって、強みと課題が大きく違います。 Microsoft は、3つ目の「光・シリコンほか」(トポロジカルという新しい方式)が主で、 4つ目の「周辺・ソフト」(Azure Quantum、開発キット、誤り訂正のソフト)が従です。

量子コンピュータに関わる企業の4つの類型 同じ「量子の会社」でも、量子ビットの作り方(方式)で、強みと課題が違う 超伝導 イオン・中性原子 光・シリコンほか 周辺・ソフト 回路で量子ビットを作る 原子やイオンを並べる 光やシリコンで作る クラウド・ソフト・通信 IBM/Google Rigetti/IQM Quantinuum/IonQ QuEra/Pasqal PsiQuantum/Xanadu Diraq/Microsoft NVIDIA/AWS 富士通/東芝 製造技術と研究の蓄積 高い精度と操作性 光の技術と量産の可能性 使いやすさと連携 冷却と配線の難しさ 拡大と速度の課題 方式の実証が途上 自社のデバイスが主力ではない Microsoft は主に「光・シリコンほか」(トポロジカル方式)。Azure Quantumなど「周辺・ソフト」も担う トポロジカル量子ビットの実証は、論文・専門家の間で見解が分かれている(第10章)
図1 量子コンピュータに関わる企業の4類型と、Microsoftの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。Microsoft の方式がトポロジカルであることは、公式ブログと論文(出典2・3・5)の記載に基づきます。

それぞれの特徴を、一言で言い換えておきます。

類型量子ビットの正体得意なこと難しいこと
超伝導極低温に冷やした電気回路半導体と同じ作り方で回路を作れる冷凍機と大量の配線が要る
イオン・中性原子電気や光で捕まえた原子1個1個が同じ性質で、精度が高い数を増やすことと、動作の速さ
光・シリコンほか光の粒(光子)、シリコンの電子のスピン、トポロジカル(細線の両端の状態)など工場で作れる可能性、壊れにくさへの期待方式の実証がまだ途上
周辺・ソフト量子ビットは作らないクラウド・ソフト・通信で全体を支える自社の装置の優位は無い

4. 会社の規模(量子に関わる部分に絞る)

Microsoft は巨大な会社なので、会社全体は簡潔に示し、量子の数字は確認できた範囲だけを書きます 事実。

指標(US$百万)2025年6月期2026年6月期
売上281,724331,839
営業利益128,528155,237
研究開発費32,48835,562
従業員(2026年6月30日)―約223,000人
ここで注意

上の数字は会社全体のものです。 量子コンピュータ事業の売上・投資額・専任人員数は、いずれも公表されていません 未確定/将来。 2026年6月期の Form 10-K の全文を検索しても、「quantum」の語は1回も出てきません(本稿の確認)。 つまり、量子事業は、法定開示書類の上では個別の事業としては扱われていません。 研究開発費US$355.6億のうち量子がいくらかも不明です。本稿は推計しません。

5. 量子コンピュータにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人量子部門の人員数は非公表。研究開発の中心人物として、量子ハードウェア担当のChetan Nayak氏(テクニカルフェロー)、ソフト・誤り訂正担当のMatthias Troyer氏らが公式ブログに登場。「20年以上、この方式を追ってきた」と公式ページが説明事実/人数は非公表
金量子事業の研究開発費・設備投資は非公表。メリーランド州に15,000平方フィートの量子研究センターを開設(2026年9月22日、メリーランド大学・州と共同で整備。投資額は確認できず)事実/金額は非公表
外部への出資・買収・合弁・事業売却Atom Computing(中性原子)と、デンマークのQuNorthが運営する論理量子ビット機「Magne」を共同設計中。出資・買収は、本稿で確認した資料に記載なし。QuNorthは、デンマークの輸出投資基金(EIFO)とNovo Nordisk Foundationの共同事業事実/出資は確認できず
大学・研究機関・公的資金DARPAのUS2QC(QBIの前身の試行事業)で最終段階に進み、DARPAは2026年10月7日にMicrosoftをStage Cの企業に含めた/メリーランド大学・メリーランド州(研究センター、ポスドク支援)/DARPAの評価には空軍研究所、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所、ロスアラモス・オークリッジ・ローレンスバークレー・ローレンスリバモアの各国立研究所が参加/Fermilabと制御技術で協力事実
製造のための投資量子チップの製造設備への投資は、本稿で確認した資料に記載なし。研究センターに「作業台(makerspace)」を設ける確認できず

主要なデバイス・製品の状況

名前方式・規模代表的な性能・内容(会社の公表。測定法・条件つき)段階日付・出典
Majorana 1トポロジカル(InAs半導体+アルミニウム超伝導体)。会社は「8個のトポロジカル量子ビットを、100万個を載せる設計のチップに載せた」と説明(物理。会社の主張)会社は「トポロジカル量子ビットを搭載した世界初のQPU」と説明(会社の主張)。同日のNature論文は、パリティの単発読み出し(測定割当誤り1%、読み出しの信号雑音比1に3.6マイクロ秒)を報告。Z型パリティの切り替えは約1〜12ミリ秒実証(実験)。評価は割れている2025年2月19日
Majorana 2トポロジカル(InAs半導体+鉛超伝導体)。複数のテトロン(細線2本1組)の素子。論文は4量子ビット配列の設計を示すZ型パリティの切り替え時間が約20秒(一部は1分超)。トポロジカルギャップは約30→約70 µeV(上位5分の1の素子)。会社は「1,000倍の改善」と説明(会社の主張)。X型の測定結果は本論文に記載なし実証(プレプリント)。査読前2026年6月2日(arXiv)
論理量子ビットの実験(Quantinuum製のイオントラップ機を使用)イオントラップ。Microsoftが設計した誤り訂正符号(12量子ビットと16量子ビット)論理誤り率が物理回路より11倍〜800倍低いと報告(誤り検出と事後選択を併用)。ベル状態の回路で約0.8%→0.001%実証(Nature論文)2026年6月10日
Magne中性原子(Atom Computing製、1,200超の物理量子ビット)+Microsoftのソフト。デンマーク・コペンハーゲンでQuNorthが運営誤り訂正を自動で行い、論理量子ビットを利用者に提供する「レベル2(Resilient)」の機械。会社は「商用の汎用機として初」と説明(会社の主張)未確定/将来2027年初頭に稼働予定(2026年8月3日時点)
Azure Quantum/QDKクラウドとソフト(Q#・Qiskit・Cirq・OpenQASM対応、資源見積もり)他社のハードにアクセス(IonQ・Pasqal・Quantinuum・Rigettiが提供元として記載)。QDKは無償のオープンソース提供中公式ドキュメント(2026年10月16日確認)
素材技術者の視点:アルミニウムから鉛へ。「ギャップ」を広げる材料の勝負

この方式で素材が効くのは、半導体と超伝導体をどれだけきれいに貼り合わせられるかです。 Microsoft の素子は、インジウムヒ素(InAs)などの半導体の薄い層の上に超伝導体の膜を重ね、ゲート電極で細線の形を作ります 事実。 Majorana 1 では超伝導体にアルミニウム、Majorana 2 では鉛を使い、 「トポロジカルギャップ」(状態を守るエネルギーの壁)が、上位5分の1の素子で約30 µeVから約70 µeVに広がったと報告しています。 半導体の層も、インジウムヒ素とインジウムヒ素アンチモンの組み合わせと、ガリウムアンチモン基板に変わりました 事実。 この壁が広いほど、熱や外から来る粒子による「パリティの反転」が起きにくくなる、というのが会社の説明です。 一方で、素材が無秩序(不純物・欠陥)だと、見かけ上はトポロジカルな信号が出ても別の原因になりうるというのが、反論の側の中心的な論点です(第10章)。 材料の目で見れば、この方式は「界面の質」と「均一性」が、量子の成否と直結する珍しい方式です。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2018年3月・2021年3月この分野で2018年にNature誌に載った「量子化されたマヨラナコンダクタンス」の論文が、2021年3月8日に撤回された同じ現象の主張が、過去に基準を満たさず撤回された。Microsoft のページも、過去の主張から学んだと述べる
2023年6月Physical Review B誌に、InAs-Alの素子が「トポロジカルギャップ・プロトコル」を通過したとする論文トポロジカル相の候補を探す手順(TGP)を示した
2025年2月19日Majorana 1を発表。Nature誌にパリティ測定の論文。論文の編集部は「結果はマヨラナ零モードの存在の証拠ではない」と注記会社の主張と、論文の位置づけに差がある
2025年2月26日・3月11日独立した研究者(Henry Legg氏)が、2023年と2025年の論文へのコメントをarXivに投稿手順(TGP)の信頼性と、読み出しが起きた領域の解釈に疑問
2025年7月11日Microsoft がarXivに、テトロン素子のX・Z型パリティの測定を投稿。X型の切り替えは約14.5マイクロ秒、Z型は約12.4ミリ秒、割当誤りはXが16%、Zが0.5%量子ビットとして使う操作(X)は、Z型より桁違いに短い時間で切り替わっていた
2026年6月2日Majorana 2を発表(Build)。技術論文をarXivに投稿。Z型パリティの切り替えが約20秒Al→Pbで大幅に長くなった。査読前
2026年6月10日Quantinuumの装置を使った論理量子ビットの論文がNature誌に掲載他社のハードで誤り訂正ソフトの効果を示した
2026年6月24日Nature誌に、Legg氏のMatters Arising(2025年の論文への指摘)と、Microsoft Quantumの返答が掲載査読つきの場での反論と返答。決着したとは言えない
2026年9月22日メリーランド州に量子研究センターを開設。DARPAの独立評価用にMajorana 2の量子ビットを提供外部による検証の入口
2026年10月7日DARPAが、Stage Cの企業の1つとしてMicrosoftを挙げる(US2QCから進んだ)実用規模の設計と性能の政府による検証が続く
2026年10月8日理論研究者(Laubscher、Sau、Das Sarma)が、測定用の量子ドットとの結合が、観測されるXパリティ寿命を延ばしうるとする論文をarXivに投稿寿命の解釈をめぐる、新しい議論

7. 今後の計画

2027年初頭Magne(論理量子ビット機)
が稼働予定
会社の予定(Atom Computing・QuNorthと)
2029年拡張可能な量子
コンピュータ
会社の目標。以前の想定(2033年)から前倒しと説明
DARPA Stage C独立評価が進行結果は未公表
ロードマップマイルストーン1・2を
達成済みと会社が説明
3〜5は未達(会社の説明)

これらはすべて会社の目標・計画であり、達成済みの事実ではありません 未確定/将来。 公式ロードマップは、5つのマイルストーン(①マヨラナの作成と制御、②ハードウェアで守られた量子ビット、③高品質な量子ビット、④多量子ビット、⑤論理量子ビットによる耐障害システム)を示し、 ①と②を達成済みとしています。ただし「達成済み」は会社の評価で、第三者の確認が済んだことを意味しません。

確認できなかったこと

次はいずれも、本稿で確認した一次資料に記載がありません 未確定/将来。

量子事業の売上・投資額・人員数/トポロジカル量子ビットのゲート操作の忠実度(1量子ビット・2量子ビットの操作の誤り率)/ Majorana 2のX型パリティの測定結果/DARPAの検証の結果/Microsoft QuantumのNature誌の返答の内容(本稿では確認していない)/ Majorana 2の論文の査読の有無と時期。

8. この会社は量子コンピュータで何を目指しているか

ここは、会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
狙いは「誤り訂正の手間を、素材の性質で減らす」こと。成功すれば、必要な量子ビットの数が大きく減る公式ブログが「トポロジカル量子ビットは本質的に誤り率が低く、小さく、デジタル制御ができる」と説明事実(会社の説明)
トポロジカルの結果を待たず、他社の装置と自社のソフトで誤り訂正の実績を積む二本立てにしているQuantinuumのイオントラップ機での論理量子ビットのNature論文、Atom Computingとの「Magne」の計画推測
Azure Quantum は、どの方式が勝つか分からない間の「窓口」の役割Azure Quantumは、IonQ・Pasqal・Quantinuum・Rigettiなど他社の装置を並べて提供し、QDKは複数の言語とハードに対応推測
2029年の目標は、外部の独立評価(DARPA)の結果に強く左右されるMicrosoftが、DARPAの評価のために、Majorana 2の量子ビットをメリーランドの研究センターに提供推測
今後の最大の関門は、Xを含む全操作がそろった量子ビットの実証Majorana 2の論文はZ型パリティの寿命を報告し、X型の結果は記載がない。2025年の自社論文ではX型の切り替えは約14.5マイクロ秒推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

「Z型で20秒」と「X型で14.5マイクロ秒」を並べると、約140万倍の差があります 本稿の計算(20 s÷14.5 µs=約1.38×10⁶。ただし、20秒はMajorana 2(鉛)のZ型、14.5マイクロ秒は2025年のアルミニウム素子のX型で、別の素子・別の材料の値です。同じ条件の比較ではありません)。 この方式の量子ビットは、ZとXの両方の測定がそろって初めて、あらゆる状態を扱えます。 Z型だけが長く保たれても、計算に必要なX型が短ければ、量子ビットとしては十分とは言えません。 Majorana 2の論文は、X型の結果を示しておらず、「Pauli測定の忠実度への含意を議論する」としています 事実。 この点が、今後の最大の確認事項になると、本稿は読みます 未確定/将来。

9. 量子コンピュータ分野の提携マッピング

下の図は、公式ブログ・公式ドキュメントに記載のある関係だけを、種類別に線で分けたものです。

Microsoft を中心とした量子コンピュータ分野の提携関係 公式ブログ・公式ドキュメントに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない Microsoft Quantum Atom Computing/QuNorth Magne:論理量子ビット機(計画) Quantinuum 論理量子ビットの共同実験 Fermilab 制御技術(QICK)で協力 Azure Quantumの提供元 IonQ/Pasqal/Quantinuum/Rigetti メリーランド大学 研究センターを共同整備 makerspaceのパートナー AMD/Intel/IQM/Riverlaneほか Bluefors/Quantum Motion makerspaceの初期パートナー DARPA US2QC/QBI Stage C・独立評価 メリーランド州 Discovery Districtの施設整備 EIFO/ノボ ノルディスク財団 QuNorthを通じてMagneに関与 共同開発・共同研究・提供 資金・評価・公的支援
図2 Microsoft を中心とした提携関係。出典:Microsoft Quantumの公式ブログ(出典16・17・18)、Azure Quantumの公式ドキュメント(出典20)、DARPAの公開ページ(出典21・22)。図に含めたのは、これらに記載のある関係だけです。線の種類は本稿による整理で 本稿の計算、各社との契約の内容や規模は本文の出典を参照してください。DARPAとの関係は評価の対象になったという意味で、技術の成功を示すものではありません。

10. 提供している技術・製品・サービス

Microsoft の技術は、「電子の数が偶数か奇数か」を測ることで計算するという発想が出発点です。次の図で、流れを3つに分けて見ます。

トポロジカル量子ビットの流れ ― 3つのステップ Microsoft の公式ブログと論文にもとづく、本稿の整理(会社の説明の図解) ① 細い線を作る 半導体の上に超伝導体を 重ね、ゲートで細線にする。 細線2本1組が「テトロン」 InAs+Pb(旧:Al) ② 両端の状態を使う 線の両端に特別な状態 (マヨラナ零モード)が できると会社は説明 ここが最大の争点 ③ 測定で計算する 電子数の偶奇(パリティ)を 量子ドットとマイクロ波で 読み、測定で計算を進める デジタルパルスで制御 ポイント:計算は「電子数の偶奇(パリティ)」の測定で行い、壊れにくさは線の性質に頼る設計 争点:マヨラナ零モードが本当にできているか。論文の編集部・反論・会社の主張が分かれている 確認できたのはパリティの単発読み出しと、Majorana 2のZ型パリティ寿命約20秒(査読前)
図解 Microsoft が説明するトポロジカル量子ビットの流れ(出典:公式ブログ、Nature論文、arXiv論文)。会社の説明を本稿が図にしたもので 本稿の計算、実際の素子の構造や寸法を示すものではありません。②は会社の主張であり、確認された事実ではありません。

トポロジカル量子ビットとは何か

  1. 細い線を作る:半導体(インジウムヒ素)の上に超伝導体(アルミニウム、のち鉛)を重ね、ゲート電極で細い線の形に絞ります。極低温に冷やし、磁場をかけます。
  2. 線の両端に特別な状態(マヨラナ零モード)ができる、と考える:うまくいくと、線の両端に、1つの電子を2つに分けて持つような状態が現れるとされます。情報は「両端を合わせたパリティ」に保存されるので、局所的なノイズに強い、という期待です。
  3. 測定で計算する:パリティは、量子ドット(小さな電荷の入れ物)とマイクロ波で読みます。計算は、パリティ測定の組み合わせで進めます(測定ベース)。細線2本を1組にしたものが「テトロン」です。
  4. 誤りは線の性質で守る、というのが売り:理想的には、情報が両端に分散しているため、ふつうの量子ビットより誤りが起きにくい、というのが会社の説明です。

主張と、確認できたこと、反論を並べる

論点会社の主張・公式資料確認できた事実(論文・一次資料)反論・留意点状態
マヨラナ零モードのあるトポロジカル相を作れたかMajorana 1の発表で「新しい物質の状態(トポロジカル超伝導)」を作ったと説明同日のNature論文は、パリティの単発測定の素子を示した。論文自身が、トポロジカルな起源と、そうでない起源の両方での解釈を議論している。Nature編集部は査読ファイルで「結果はマヨラナ零モードの存在の証拠ではなく、素子構造を示す論文として出版」と注記Legg氏は、読み出しが起きた領域の元の伝導データが「無秩序でギャップが見えない」と解析し、自明な機構の可能性を指摘(arXiv 2025年3月、Nature Matters Arising 2026年6月24日)。Microsoft Quantumの返答も同日掲載(内容は未確認)未確定/将来
パリティ寿命が約20秒公式ブログは「量子ビットの寿命の平均が20秒、1分超も、1,000倍の改善」と説明技術論文(arXiv 2026年6月2日、査読前)は、InAs-Pbのテトロンで「Z型パリティの切り替え時間が約20秒」と報告。Al素子では1〜12ミリ秒。ギャップは約30→約70 µeVブログの「量子ビットの寿命」は、論文ではZ型パリティの切り替え時間。論文はX型の結果を示さない。Legg氏は「プレプリントは根本の問題を解決しない」と述べたと報道。一方、別の研究者(Agarwal氏)は「素晴らしい進展」と評価したと報道。理論論文(arXiv 2026年10月8日)は、測定用ドットとの結合が観測寿命を延ばしうるとモデルで示す実証(プレプリント)/解釈は未確定/将来
2029年に拡張可能な量子コンピュータ公式ブログが「タイムラインを半分にし、2029年を見込む」と説明目標の記載は確認。達成の事実はない前提のマイルストーン(多量子ビット、論理量子ビット)は未達と、会社のロードマップも示す未確定/将来
DARPAによる検証US2QCの最終段階にあり、メリーランドでMajorana 2の量子ビットをDARPAに提供DARPAは2026年10月7日、MicrosoftがUS2QCからStage Cに進んだと述べる。DARPAは「QBIは競争ではなく、勝者を選ぶものでもない」と明記検証の結果は未公表。Stage Cは、検証の対象になったという意味で、成功の保証ではない進行中(結果は未公表)
この論争を、どう読めばいいか

本稿は、トポロジカル量子ビットが「実現した」とも「実現していない」とも断定しません。読むときの手がかりを3つ挙げます。

1. 「パリティが長く保たれる」は、「量子ビットとして使える」と同じではありません。計算には、Zだけでなく、Xの測定、そして2量子ビットの操作が必要です。現時点で公表されているのは、主にZ型の結果です。

2. 同じ信号に、複数の説明がありえます。論文の著者は「トポロジカルな起源と、そうでない起源の両方を議論」し、編集部は証拠ではないと注記し、反論側は「自明な機構でも説明できる」と主張します。どれが正しいかは、独立した実験による再現が進まないと決まりません。

3. 外部の検証が始まっています。DARPAが装置を使って独立に試験する計画で、結果が公表されれば、判断材料が増えます。会社・研究者のいずれも非難せず、公式の資料と論文を並べて確認してください。

Azure Quantum と、誤り訂正のソフト

Azure Quantum は、Microsoft のクラウドで量子コンピュータを使うサービスです。 利用者は、Microsoft の無償の開発キット(QDK)でプログラムを書き、IonQ、Pasqal、Quantinuum、Rigettiなど他社の実機やシミュレーターに送れます。 また、必要な量子ビットの数や時間を見積もる「資源見積もり」も提供しています 事実。 Microsoft は、誤り訂正のソフト(符号の設計、デコーダー)にも力を入れています。 2026年6月のNature論文では、Quantinuumのイオントラップ機で、論理誤り率が物理回路より11倍〜800倍低くなったと報告しました。 ただし、この結果は誤り検出と事後選択(誤りが見つかった実行を捨てる)を併用しており、事後選択だけでは長い計算に拡張できないと、公式ブログ自身が説明しています 事実。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
方式の実証が確定していないマヨラナ零モードの存在をめぐる議論が続く。Nature編集部も証拠ではないと注記事実
量子ビットとしての性能が未公表1量子ビット・2量子ビットの操作の忠実度は、本稿で確認した資料に記載なし。X型の測定結果も未公表未確定/将来
プレプリント段階の主張Majorana 2の中心的な成果は、査読前のarXiv論文に基づく事実
目標の時期(2029年)会社の目標で、前提のマイルストーンは未達未確定/将来
過去の主張の撤回この分野では、2018年のNature論文が2021年に撤回された。Microsoft も、過去の主張から学んだと述べる事実
財務が見えない量子事業の投資・売上・人員は非公表で、10-Kにも記載がない。外部から投資規模を確かめられない事実
他社の装置に依存する部分Magne(Atom Computing)や論理量子ビットの実験(Quantinuum)は、他社のハードに依存する事実
方式間の競争超伝導・イオン・中性原子・光・シリコンなどの開発が進む。どれが先に実用規模に届くかは未確定推測

12. 用語集

量子ビット
量子コンピュータの計算の最小単位。0と1が重なった状態を使う。
トポロジカル量子ビット
情報を物質の「かたち(位相)」に分散して持たせ、ノイズに強くしようとする量子ビット。
マヨラナ零モード(MZM)
細い超伝導線の両端に現れるとされる特殊な状態。この方式の材料。
パリティ
線の中の電子の数が偶数か奇数かという情報。
Z型・X型の測定
テトロンで行う、2種類のパリティ測定。計算にはどちらも必要。
テトロン
超伝導の細線2本を1組にした、トポロジカル量子ビットの基本単位。
トポロジカルギャップ
トポロジカルな状態を守るエネルギーの壁。広いほど安定とされる。
トポロジカルギャップ・プロトコル(TGP)
素子がトポロジカル相にあるかを伝導データで判定する、Microsoftの手順。
量子ドット
電子を1個ずつ出し入れできる、ごく小さな電荷の入れ物。パリティの読み出しに使う。
論理量子ビット
誤りを直すために多数の物理量子ビットをまとめた「間違えにくい1個」。
誤り検出と事後選択
誤りが見つかった実行を捨てて、結果を良く見せる方法。長い計算には使いにくい。
Matters Arising
Nature誌が、掲載済みの論文への指摘と、著者の返答を載せる形式。
プレプリント
査読を受ける前に公開される論文原稿(arXivなど)。
DARPA US2QC/QBI
米国国防高等研究計画局による、実用規模の量子コンピュータを検証する取り組み(US2QCはQBIの前身の試行事業)。
Azure Quantum/QDK
Microsoftの量子クラウドサービスと、無償の量子開発キット。
Microsoft の量子ハードウェア研究の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。 ナノワイヤ端の着色は研究対象の位置を示す模型です。マヨラナ状態や動作するトポロジカル量子ビットの実証画像ではありません。
図3 概念画像(ImageGen生成)。Microsoft の量子ハードウェア研究の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。 ナノワイヤ端の着色は研究対象の位置を示す模型です。マヨラナ状態や動作するトポロジカル量子ビットの実証画像ではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。

13. 出典

  1. Microsoft Corporation Form 10-K for the fiscal year ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年7月)。売上、営業利益、研究開発費、従業員数。全文に「quantum」の語がないことを本稿が確認。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/789019/000119312526323660/msft-20260630.htm
  2. Microsoft(Chetan Nayak) ブログ「Microsoft unveils Majorana 1, the world’s first quantum processor powered by topological qubits」(2025年2月19日)。 https://azure.microsoft.com/en-us/blog/quantum/2025/02/19/microsoft-unveils-majorana-1/
  3. Microsoft(Chetan Nayak) ブログ「Majorana 2 – Microsoft’s Scalable Quantum Processor With Reliable, Long-Lasting Qubits」(2026年6月2日)。 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/majorana-2-scalable-quantum-processor
  4. Aghaee ほか(Microsoft Quantum) “20 Second Parity Lifetime in an InAs–Pb Tetron Device”, arXiv:2606.03884(2026年6月2日、査読前)。Majorana 2の技術論文。 https://arxiv.org/abs/2606.03884
  5. Microsoft Azure Quantum(Aghaee ほか) “Interferometric single-shot parity measurement in InAs–Al hybrid devices”, Nature 638, 651–655(2025年2月19日)。 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08445-2
  6. Nature 上記論文の査読ファイル(Peer Review File)。冒頭に編集部の注記。 https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41586-024-08445-2/MediaObjects/41586_2024_8445_MOESM2_ESM.pdf
  7. Legg “On the robustness of topological gap detection via transport”, Nature 654, E22–E26(Matters Arising、2026年6月24日)。2025年のNature論文への指摘。 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10567-8
  8. Legg “Comment on ‘Interferometric single-shot parity measurement in InAs-Al hybrid devices’, Microsoft Quantum, Nature 638, 651-655 (2025)”, arXiv:2503.08944(2025年3月11日)。 https://arxiv.org/abs/2503.08944
  9. Legg “Comment on ‘InAs-Al hybrid devices passing the topological gap protocol’, Microsoft Quantum, Phys. Rev. B 107, 245423 (2023)”, arXiv:2502.19560(2025年2月26日)。 https://arxiv.org/abs/2502.19560
  10. Aghaee ほか(Microsoft Quantum) “Distinct Lifetimes for X and Z Loop Measurements in a Majorana Tetron Device”, arXiv:2507.08795(2025年7月11日)。 https://arxiv.org/abs/2507.08795
  11. Laubscher、Sau、Das Sarma “Measurement-induced enhancement of the X-parity lifetime in a Majorana tetron”, arXiv:2610.12223(2026年10月8日、査読前の理論研究)。 https://arxiv.org/abs/2610.12223
  12. Microsoft Azure Quantum(Aghaee ほか) “InAs-Al hybrid devices passing the topological gap protocol”, Physical Review B 107, 245423(2023年6月21日)。 https://doi.org/10.1103/PhysRevB.107.245423
  13. Nature 撤回通知。2018年の論文「Quantized Majorana conductance」(Nature 556, 74–79)の撤回(2021年3月8日)。 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03373-x
  14. Microsoft Quantum 公式ページ「Our Quantum roadmap」。5つのマイルストーンと達成状況の説明(2026年10月16日確認)。 https://quantum.microsoft.com/en-us/vision/quantum-roadmap
  15. Microsoft Quantum 公式ページ「Path to Majorana 2」。方式の経緯と会社の説明(2026年10月16日確認)。 https://quantum.microsoft.com/en-us/vision/path-to-majorana-2
  16. Microsoft Quantum(Charles Tahan) ブログ「Microsoft’s quantum research center is open for discovery in Maryland」(2026年9月22日)。 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/microsoft-quantum-research-center-maryland
  17. Microsoft Quantum(Paetznick、Reichardt) ブログ「From research to product engineering…」(2026年8月3日)。Magne(Atom Computing、QuNorth)の説明。 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/from-research-to-product-engineering-logical-qubit-demonstrations-shaping-microsoft-utility-scale-quantum-software-platform
  18. Microsoft Quantum(Matthias Troyer) ブログ「Microsoft’s application of error correction to trapped-ion qubits published in Nature」。 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/microsoft-application-of-error-correction-to-trapped-ion-qubits
  19. Paetznick ほか(Microsoft、Quantinuum) “Improved quantum processor logical error rates via correction and detection”, Nature 654, 349–355(2026年6月10日)。 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10628-y
  20. Microsoft 「What is Azure Quantum?」公式ドキュメント(2026年10月16日確認)。 https://learn.microsoft.com/en-us/azure/quantum/overview-azure-quantum
  21. 米国国防高等研究計画局(DARPA) Quantum Benchmarking Initiative(QBI)の公開ページ(2026年10月8日時点の参加企業一覧)。 https://www.darpa.mil/research/programs/quantum-benchmarking-initiative
  22. 米国国防高等研究計画局(DARPA) ニュース「Four more teams enter Quantum Benchmarking Initiative’s final stage」(2026年10月7日)。 https://www.darpa.mil/news/2026/four-more-teams-enter-quantum-benchmarking-initiative-final-stage
  23. Science News(報道) 「Microsoft’s quantum chip got an upgrade. Critics are still skeptical」(2026年6月2日)。独立した研究者の発言(二次情報)。 https://www.sciencenews.org/article/microsoft-quantum-chip-upgrade-majorana
  24. Microsoft 公式サイト(ロゴの取得、会社概要の確認用)。 https://www.microsoft.com/en-us/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
法人名、本社(ワシントン州レドモンド)、会計年度(6月30日)、従業員約223,000人(2026年6月30日)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/789019/000119312526323660/msft-20260630.htm
売上・営業利益・研究開発費(2025年6月期、2026年6月期)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/789019/000119312526323660/msft-20260630.htm
2026年6月期のForm 10-K全文に「quantum」の語がないこと事実本稿の確認(10-K全文の文字列検索。出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/789019/000119312526323660/msft-20260630.htm)
量子事業の売上・投資額・人員数、量子の研究開発費の内訳未確定/将来本稿で確認した一次資料に記載なし(非公表)。本稿では推計しない
Majorana 1の発表(2025年2月19日)、8個のトポロジカル量子ビットを載せたとの説明、100万個を載せる設計、測定割当誤り1%、Z型の切り替えが約1ミリ秒に1回事実出典2 https://azure.microsoft.com/en-us/blog/quantum/2025/02/19/microsoft-unveils-majorana-1/
Nature論文:InAs-Alの素子でパリティの単発干渉測定、信号雑音比1に3.6マイクロ秒、滞在時間が1ミリ秒超、トポロジカル・非トポロジカル両方での解釈の議論事実出典5 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08445-2
Nature編集部の注記:結果はマヨラナ零モードの存在の証拠ではなく、素子構造を示す論文として出版事実出典6 https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs41586-024-08445-2/MediaObjects/41586_2024_8445_MOESM2_ESM.pdf
Legg氏のMatters Arising(2026年6月24日):読み出しが起きた領域が無秩序でギャップが見えず、自明な機構を示唆すると解析事実出典7 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10567-8
Legg氏のarXivコメント(2025年2月26日、3月11日):TGPの信頼性と読み出し領域の解釈への疑問事実出典9・8 https://arxiv.org/abs/2502.19560 https://arxiv.org/abs/2503.08944
Microsoft Quantumの返答が2026年6月24日に同じ場で掲載されたこと(内容は本稿で未確認)事実出典5 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08445-2
Majorana 2の発表(2026年6月2日)、鉛への材料変更、平均20秒・1分超・1,000倍、2029年の目標、DARPA事実出典3 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/majorana-2-scalable-quantum-processor
技術論文:Z型パリティの切り替え時間が約20秒、Al素子では1〜12ミリ秒、ギャップ約30→約70 µeV(上位5分の1)、Pauli測定の忠実度への含意を議論、X型測定の結果は記載なし事実出典4 https://arxiv.org/abs/2606.03884
Microsoft自身の2025年7月の論文:X型約14.5マイクロ秒、Z型約12.4ミリ秒、割当誤りX 16%・Z 0.5%(Al素子)事実出典10 https://arxiv.org/abs/2507.08795
理論研究(2026年10月8日):測定用ドットとの結合が観測されるXパリティ寿命を延ばしうるというモデル。査読前事実出典11 https://arxiv.org/abs/2610.12223
独立した研究者の発言(Leggは批判的、Agarwalは肯定的)事実出典23 https://www.sciencenews.org/article/microsoft-quantum-chip-upgrade-majorana
2023年6月のPhysical Review B論文(TGP)事実出典12 https://doi.org/10.1103/PhysRevB.107.245423
2018年のNature論文の撤回(2021年3月8日)、Microsoftのページが過去の主張から学んだと述べること事実出典13・15 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03373-x https://quantum.microsoft.com/en-us/vision/path-to-majorana-2
ロードマップの5つのマイルストーンと、①②を達成済みとする会社の説明事実出典14 https://quantum.microsoft.com/en-us/vision/quantum-roadmap
20年以上この方式を追ってきたという説明事実出典15 https://quantum.microsoft.com/en-us/vision/path-to-majorana-2
メリーランド州の量子研究センター(15,000平方フィート、2026年9月22日)、DARPAへのMajorana 2の量子ビットの提供、makerspaceの初期パートナー、Fermilabとの協力事実出典16 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/microsoft-quantum-research-center-maryland
Magne:Atom Computingの1,200超の物理量子ビット、QuNorthが運営、EIFOとNovo Nordisk Foundationの共同事業、2027年初頭に稼働予定事実出典17 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/from-research-to-product-engineering-logical-qubit-demonstrations-shaping-microsoft-utility-scale-quantum-software-platform
Quantinuumの装置での論理量子ビットのNature論文(論理誤り率が11倍〜800倍低い、誤り検出と事後選択を併用)事実出典19・18 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10628-y https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/microsoft-application-of-error-correction-to-trapped-ion-qubits
事後選択だけでは長い計算に拡張できないという公式ブログの説明事実出典17 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/from-research-to-product-engineering-logical-qubit-demonstrations-shaping-microsoft-utility-scale-quantum-software-platform
Azure Quantumの提供元(IonQ・Pasqal・Quantinuum・Rigetti)、QDK、資源見積もり事実出典20 https://learn.microsoft.com/en-us/azure/quantum/overview-azure-quantum
MicrosoftがUS2QCからStage Cに進んだこと、QBIは競争ではなく勝者を選ぶものでないこと、検証に参加する機関事実出典22・21・3 https://www.darpa.mil/news/2026/four-more-teams-enter-quantum-benchmarking-initiative-final-stage https://www.darpa.mil/research/programs/quantum-benchmarking-initiative https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/majorana-2-scalable-quantum-processor
2029年に拡張可能な量子コンピュータという目標未確定/将来会社の目標であり確定していない。目標の記載は出典3 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/majorana-2-scalable-quantum-processor
20秒(Majorana 2のZ型)と14.5マイクロ秒(2025年のAl素子のX型)の比(約140万倍)本稿の計算本稿の計算(20÷14.5×10⁻⁶=約1.38×10⁶)。別の素子・別の材料の値であり、同じ条件の比較ではない
量子ビットの作り方の類型(4類型)の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの例示
トポロジカル量子ビットの成否、マヨラナ零モードの存在、ゲート操作の忠実度、DARPAの検証結果、Majorana 2の論文の査読未確定/将来本稿で確認した一次資料に記載なし、または議論中。本稿では結論を示さない
他社への出資・買収・合弁・事業売却未確定/将来本稿で確認した資料に記載なし。本稿では存在しないとも断定しない
二本立て(トポロジカルと他社装置の誤り訂正)という読み推測Quantinuumの論文とMagneの計画からの本稿の解釈
Azure Quantumは方式が定まらない間の窓口という読み推測提供元の多様さとQDKの対応範囲からの本稿の解釈
2029年の目標はDARPAの評価結果に左右されるという読み推測DARPAへの装置提供の記載からの本稿の解釈
最大の関門はXを含む全操作がそろった量子ビットの実証という読み推測Majorana 2の論文にX型の結果がないことと、2025年の自社論文のX型の値からの本稿の解釈
方式間の競争のリスク推測他の方式の開発状況からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月16日/Troy Technical
本稿の数値は、Microsoft が米国SECに提出したForm 10-K、Microsoft の公式ブログ・技術論文・公式ドキュメント、査読つき論文、arXivのプレプリント、DARPAの公開ページに基づきます。調査会社の市場推計、報道ベースの数値は使用していません(専門家の発言は報道から引用した箇所を明記しています)。機器名・ロードマップ・契約・企業構造は2026年10月16日時点の確認で、この分野は変化が速いため、最新の情報は会社の発表と論文で確認してください。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は特定の企業・研究者を評価・非難するものではなく、トポロジカル量子ビットの成否について結論を示すものではありません。

図版更新:2026年10月17日。本文・出典整理表のベクター作図という表記は、保存した元SVGの由来を示します。現在の主図の形式と読み方は各図下の説明を参照してください。ImageGen画像は実測や実在製品の写真ではなく、元SVG・数値・出典は展開して確認できます。