TECHNOLOGY EXPLAINER
量子誤り訂正と表面符号
― 壊れやすい量子ビットを、たくさんで守るしくみ
量子ビットは、ほんのわずかな乱れで状態が崩れます。長い計算を最後までやり遂げるには、誤りを見つけて直すしくみが欠かせません。それが量子誤り訂正です。 ところが量子ビットは、情報をコピーできず、測ると壊れます。では、どうやって直すのでしょうか。 この記事は、量子力学を知らなくても読めるように、身近な例 → 言葉の説明 → 図 → 小さな数値の順で、古典の「3つで多数決」から、3量子ビットの小さな符号、そして表面符号とその「しきい値」までを、段階を追って説明します。
- 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置
- なぜ誤り訂正が必要か ― 誤り率と計算の長さ
- 古典の誤り訂正から出発する ― 3つで多数決
- 量子ではなぜ難しいのか ― 3つの壁と、その乗り越え方
- 3量子ビット符号を、段階を追って見る
- 安定化子とシンドローム測定 ― 小さな例を一般化する
- 表面符号のしくみ ― 格子、検査、光る点
- デコーダ ― 光った点から「何が起きたか」を推定する
- しきい値 ― 「ある線より下なら、大きくするほど良くなる」
- 実験はどこまで来たか(確認日 2026年10月16日)
- 現実の壁と、素材技術者の視点
- 確認できなかったこと/まとめ
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・将来の見積もりなど、確定していない事項
このほか、読み取りや説明は「解説」として区別しています。推測は太字で示します。
図の曲線のうち「本稿の計算」とあるものは、仮定を置いた試算で、実測ではありません。実験の値(論理誤り率、Λ など)は、Google の論文[参考資料12]に記載の値を、条件を添えて引用しています。 この分野は変化が速いため、機器・ロードマップ・規格の状態は確認日(2026年10月16日)時点のものです。企業の発表は「企業の主張」として扱い、特定の企業・方式の優劣は論じません。
1. 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置
- 誤り訂正が必要な理由:量子ビットの1回の操作の誤りは、最先端でもおよそ0.1%(10−3)です。1回なら小さな値でも、操作を1000回重ねると「一度も間違えない確率」は約37%まで下がります。長い計算には、誤りを見つけて直すしくみが要ります事実[参考資料12]本稿の計算
- 量子ビットでも誤りは直せる:量子ビットはコピーできず、測ると壊れます。でも、情報そのものではなく「隣と同じか」という症状(シンドローム)だけを測れば、情報を壊さずに誤りの場所が分かります。情報は「コピー」ではなく、複数の量子ビットに分散して預けます事実[参考資料1・2・4]
- 表面符号としきい値:表面符号は、この考え方を2次元の格子に並べた方式です。物理誤り率がしきい値より低ければ、格子を大きくするほど論理誤りが指数的に減ります。Google は、格子の一辺(符号距離)を3→5→7と増やすごとに誤りが約2.14倍ずつ減ることを、実験で示しました事実[参考資料12]
量子ビットは、球の中心から表面へ向かう矢印で表せます(北極が0、南極が1、斜めが重ね合わせ)。測ると、0か1のどちらかに決まり、元の矢印は戻りません。これだけで足ります。 くわしくは本シリーズ「量子コンピュータの基礎」編で説明します。ここでも、必要な場面で短く言い直します。
「量子コンピュータの基礎」「量子ゲートと量子回路」「コヒーレンスとフィデリティ」を読んでから本記事に進むと、いちばん分かりやすい順序です(単独でも読めるように作っています)。 この記事の次は、誤り訂正の上に計算を載せる話(論理ゲート、魔法状態、新しい符号)を扱う「論理量子ビットと耐故障量子計算」編、そして、これらを支える冷凍機と配線を扱う「極低温と制御」編です。
2. なぜ誤り訂正が必要か ― 誤り率と計算の長さ
(1) 身近な例:「1万回の作業を、1回も間違えない」
電卓で足し算を1万回続けるとします。ボタンを押し間違える確率が1回あたり0.1%なら、どうでしょう。1回ごとの成功率は99.9%と高く見えます。 でも、1万回すべてを成功させる確率は、0.999を1万回掛けた値で、約0.0045%(4.5×10−5)にしかなりません本稿の計算。 「1回の失敗率が小さい」ことと「長い作業を失敗なく終えられる」ことは、別の話です。
(2) 量子コンピュータでは、操作の数がとても多い
量子コンピュータの計算は、量子ゲート(量子ビットへの1回の操作。本シリーズ「量子ゲートと量子回路」編)を何百万回、何億回と重ねます。 Google の論文は、最先端の多量子ビット機が2量子ビットゲートの99.9%の正確さ(誤りは0.1%)にようやく到達した一方で、多くの応用に必要な誤り率は10−10より小さいとされる、と述べています事実[参考資料12]。 つまり、必要な水準と現状の間には、桁で7桁の開きがあります(0.1%=10−3と10−10。本稿の計算)。
| 1回の誤り率 p | 100回 | 1000回 | 1万回 | 100万回 | 10億回 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10−3(0.1%) | 90.5% | 36.8% | 0.0045% | ほぼ0 | ほぼ0 |
| 10−6 | 99.99% | 99.9% | 99.0% | 36.8% | ほぼ0 |
| 10−9 | ほぼ100% | ほぼ100% | ほぼ100% | 99.9% | 36.8% |
本稿の計算。成功確率=(1−p)N。操作の誤りが独立に起きると仮定した単純な計算で、実際の計算の成功確率ではありません。目安として、約 1/p 回の操作で、全部正しい確率は約37%(1/e)になります。
誤りです。誤り率が高いままでは、量子ビットを増やしても、長い計算は最後まで正しく終わりません。性能は「何量子ビットあるか」だけでなく、「誤り率と操作を重ねられる回数」で決まります。 正しくは、量子ビットの数と誤り率の両方が要ります。そこで、たくさんの量子ビットを誤り訂正に使うのです(次の章から)。
3. 古典の誤り訂正から出発する ― 3つで多数決
(1) 身近な例:電話で番号を3回言う
聞き間違いの多い電話で、番号を確実に伝えたいとします。どうしますか。同じ番号を3回言えば、1回聞き間違えても、残り2回が一致するので、多数決で正しい番号が分かります。 これが繰り返し符号(同じ情報を何度も持たせて守る、最も簡単な誤り訂正符号)の考え方です。情報を増やして(冗長性)守るわけです。
(2) 小さな計算で確かめる
1つのビットが反転する確率を p とします。3つで多数決すると、2つ以上が同時に反転したときだけ失敗します。その確率は 3p²(1−p) + p³ = 3p² − 2p³ です(独立と仮定。本稿の計算)。 p=10%(0.1)なら 2.8%、p=1%なら 0.0298%です。p が小さいほど、冗長性の効果は急に大きくなります。逆に、p が 0.5 に近いと、何個持たせても守れません。
誤りを1つ見つけるだけなら2つで足ります(食い違いに気づく)。1つ直すには、どちらが正しいかを決める「多数決」が要るので、最低3つです。 もっと強くしたければ、5つ、7つ…と増やします。後で出てくる表面符号の「距離」は、この「いくつの誤りまで直せるか」の一般化です。
4. 量子ではなぜ難しいのか ― 3つの壁と、その乗り越え方
「3つ持たせて多数決」は、量子ビットにはそのままでは使えません。壁が3つあります。順番に見て、それぞれどう乗り越えるかも示します。
| 壁 | 何が問題か | 乗り越え方 |
|---|---|---|
| ① コピーできない | 未知の量子状態を、そっくり複製することはできない(量子の複製不可能性)[参考資料6・7]事実。「3つにコピーして多数決」ができない | コピーせず、情報を複数の量子ビットに分散して預ける。1つの量子ビットの情報を、もつれた複数の量子ビットの「まとまり」に移す(第5章) |
| ② 測ると壊れる | 量子ビットの値を直接測ると、0か1に決まってしまい、重ね合わせ(矢印の向き)が失われる | 値そのものでなく、「隣と同じか」(偶奇)だけを測る。矢印の向きの情報は測らないので壊れない(第5・6章) |
| ③ 誤りの種類が多い | 古典のビットは「0↔1の反転」だけ。量子ビットは、矢印の向きが連続的にずれうる。ビット反転のほかに、位相反転(矢印の左右が逆になる)もある | 症状を測ると、ずれは「誤りあり/なし」のとびとびの結果に決まる。ビット反転と位相反転の両方を直せる符号なら、1つの量子ビットに起きる任意の誤りを直せる[参考資料1・2・8]事実 |
上の表のうち、複製不可能性は Wootters と Zurek、Dieks の論文[参考資料6・7]、誤り訂正の一般論は教科書と総説[参考資料1・2・8]によります。「乗り越え方」の言い換えは本記事の解説です。
図の見かたを確認しましょう。量子ビットの状態は、球の中心から出る矢印で表します。 ビット反転は、北と南を入れ替える誤りです(0寄りの矢印が1寄りになる)。位相反転は、左右を逆にする誤りです。位相反転では、測ったときの0と1の出やすさは変わりません。 つまり測っても気づけない誤りで、後の計算の「波の強め合い・弱め合い」(干渉)を狂わせます。量子の誤り訂正は、この2種類の両方を相手にします。
誤りです。コピーできないのは「未知の状態を、そっくり複製する」ことです。誤り訂正符号は、複製ではなく、もつれを使って情報を分散して預けるので、コピー不可能性にぶつかりません。 たとえば、1つの量子ビットの状態を α|0⟩+β|1⟩ とします(α、β は0と1の「出やすさ」を決める数)。3つにコピーできたとしたら、状態は (α|0⟩+β|1⟩) が3つ並んだものになり、000、001、…、111 の8通りの成分が混ざります。 符号化した状態 α|000⟩+β|111⟩ は別物で、成分は「000」と「111」の2つだけです。3つの量子ビットが1つのまとまりとして「0か1か」を一緒に持っている、と読みます(第5章で図解)。
量子もつれは「2つ以上の量子ビットが1つのまとまりとして振る舞い、片方だけでは状態を書けない」ことでした。誤り訂正符号の状態は、まさにこれです。 1つの量子ビットだけを取り出して見ても、守っている情報(α、β)は何も分かりません。だから、1つの量子ビットに起きた小さな乱れでは、情報が壊れにくいのです。
5. 3量子ビット符号を、段階を追って見る
まず、いちばん小さな量子の誤り訂正符号を、ビット反転だけを相手にして追います。教科書の定番の例です[参考資料1・2・3]。3つの量子ビット q₁、q₂、q₃ を使い、守りたい情報は q₁ に入っています。
ステップ① 符号化 ― コピーではなく、「つなぐ」
q₂ と q₃ は最初は0です。q₁ を「制御」にして、q₂、q₃ に CNOT(制御NOT:制御側が1のときだけ、相手を反転する操作)をかけます。 q₁ の状態が α|0⟩+β|1⟩ なら、結果は α|000⟩+β|111⟩ になります。「3つとも0」の成分が α、「3つとも1」の成分が β、という状態です。
具体的な数で見ましょう。α=0.6、β=0.8 とします(0と1の出やすさは、それぞれ 0.6²=0.36 と 0.8²=0.64。2乗して足すと1になる約束です)。符号化した状態は 0.6|000⟩+0.8|111⟩ です(本稿の計算の例)。 3つを別々に測っても、結果はいつも「000」(確率0.36)か「111」(確率0.64)で、3つは必ず同じ値になります。これが「3つが1つのまとまりとして振る舞う」ということです。
ステップ② 誤りが起きる
ここで、q₂ にビット反転が起きたとします。状態は 0.6|010⟩+0.8|101⟩ に変わります。q₂ だけが他の2つと食い違っています。
ステップ③ 症状を調べる ― 「値」ではなく「隣と同じか」だけを測る
補助の量子ビット a₁、a₂ を使います。a₁ は「q₁ と q₂ は同じ値か」、a₂ は「q₂ と q₃ は同じ値か」だけを調べます(CNOT を2回ずつかけて、補助を測る)。答えは「同じ(0)」か「違う(1)」の2通りです。この2つの答え (a₁, a₂) をシンドローム(症状)と呼びます。
上の例では、q₁≠q₂ なので a₁=1、q₂≠q₃ なので a₂=1、症状は (1, 1) です。 ここが大事なところです。「000」の成分でも「111」の成分でも、症状は同じになります(誤りが入った後の「010」でも「101」でも、(1, 1))。だから、症状を測っても、0.6 と 0.8 の比(守りたい情報)は何も分かりませんし、乱れもしません。 測ったのは「どの隣どうしが食い違っているか」だけで、「いま 0 か 1 か」は測っていないのです。
ステップ④ 訂正する
症状から、誤りの場所を決めます(上の図)。(1, 0) なら q₁、(1, 1) なら q₂、(0, 1) なら q₃ が反転しています。(0, 0) なら誤りなしです。q₂ とわかったので、q₂ をもう一度反転すれば、0.6|000⟩+0.8|111⟩ に戻ります。 情報は、最後まで一度も「測られて」いません。
壊れるのは、情報を運んでいる量(0か1か、その出やすさ)を測ったときです。上の測定は、情報を運んでいない量(隣と同じかどうか)を測っています。 たとえ話をすると、「封筒の中身は見ずに、封筒に傷がついていないかだけを検査する」ようなものです。矢印の図では、「矢印の傾き」は見ず、「3本の矢印の向きがそろっているか」だけを見る、と言い換えられます。 ただし、たとえには限界があります。量子の測定では、傷の「ある・なし」を測った結果、もともと連続的だった小さなずれが「傷あり」か「傷なし」のどちらかにはっきり決まるという性質も働いています(壁③)。
この符号の限界
3量子ビット符号が直せるのは、ビット反転だけです。しかも、位相反転には逆効果です。 q₁、q₂、q₃ のどれか1つに位相反転が起きても、守っている情報(α|000⟩+β|111⟩ の符号)が変わってしまいます。位相反転の起きやすさを q で表すと、守った情報が位相反転で壊れる確率は、およそ 3q になります(1つあたり q の量子ビットが3つあるため。q が小さいときの近似。本稿の計算)。
そこで、位相反転用の同じ構造の符号(基底を入れ替えて使う)を、ビット反転用の符号と二重に重ねたのが、Shor が1995年に示した9量子ビット符号です[参考資料4]。 その翌年に Steane が、7量子ビットで同じ目的を果たす符号を示しました[参考資料5]。どちらも、1つの論理量子ビットを複数の物理量子ビットで守り、任意の1量子ビット誤りを直せます事実[参考資料4・5]。
もっと詳しく:数式でみる3量子ビット符号(式に慣れた方向け。読み飛ばして構いません)
符号化:|ψ⟩ = α|0⟩+β|1⟩ → α|000⟩+β|111⟩。誤り X₂(q₂ のビット反転):→ α|010⟩+β|101⟩。 検査(安定化子)Z₁Z₂ と Z₂Z₃ の固有値(+1か−1)が、シンドロームの 0 と 1 に対応します。Z₁Z₂ は、q₁ と q₂ が同じ値なら+1、違えば−1です。符号化した状態は、どちらの検査でも+1(誤りなし)です。 X₂ の後は、どちらの検査も−1になり、(1, 1) と読めます。符号化した状態の2つの成分は、どちらも同じ固有値をもつので、測定は α、β の情報を取り出しません。
6. 安定化子とシンドローム測定 ― 小さな例を一般化する
前の章の「隣と同じか」という検査は、一般に安定化子(スタビライザー)と呼ばれます。意味は次のとおりです。 「守っている状態に対しては、測ると必ず同じ答え(+1)になる検査」です。誤りが起きると、検査の答えが−1に変わり、誤りに気づけます。 この「検査の組み合わせで符号を定義する」やり方(安定化子符号)は、Gottesman が体系化しました[参考資料8]。
| 符号 | 物理量子ビット n | 守る情報(論理量子ビット k) | 距離 d | 検査の内容 |
|---|---|---|---|---|
| 3量子ビット符号 | 3 | 1 | ビット反転に対して3(位相反転には対応しない) | 隣どうしが同じか(Z₁Z₂、Z₂Z₃) |
| Shor 符号 [[9,1,3]] | 9 | 1 | 3 | ビット反転用と位相反転用の検査を組み合わせる[参考資料4] |
| Steane 符号 [[7,1,3]] | 7 | 1 | 3 | 7量子ビットの検査[参考資料5] |
| 表面符号(回転型) | d² | 1 | d(3、5、7…) | 隣り合う4個(端は2個)に対するX検査とZ検査(d²−1個)[参考資料12・18] |
[[n,k,d]] は符号の大きさを表す標準の書き方です(n=物理量子ビット数、k=守る論理量子ビット数、d=距離)。Shor 符号と Steane 符号の数値は原論文[参考資料4・5]、表面符号は Google と AlphaQubit の論文の記述[参考資料12・18]によります。表の「検査の内容」は本記事の解説です。
「距離」とは何か
符号距離 dは、「誤りがいくつ重なると、気づけない誤り(論理誤り)になるか」を表す数です。誤りが d 個つながると、検査では見えなくなります。 d 個未満なら、必ず「何かがおかしい」と分かります。そのうち(d−1)/2 個までは、正しく直せます(d=3なら1個、d=5なら2個、d=7なら3個)。 第3章の「3つで多数決」は、距離3の例(1個の誤りまで直せる)でした。
7. 表面符号のしくみ ― 格子、検査、光る点
(1) 格子に並べる
表面符号は、量子ビットを2次元の格子に並べる誤り訂正符号です。Kitaev が1990年代後半に考案したトーリック符号が元で[参考資料9]、Bravyi と Kitaev が端のある平面版を示し[参考資料10]、Dennis らが誤りの回復手順と「しきい値」を解析しました[参考資料11]。 Fowler らの解説論文は、これを大規模な計算機の設計に結びつけました[参考資料14]。
図の○がデータ量子ビット(情報を預ける)、■が測定量子ビット(検査のためだけの量子ビット)です。距離 d のとき、データ量子ビットは d²個、測定量子ビットは d²−1個で、合わせて 2d²−1 個です事実[参考資料12]。d=3なら17個、d=5なら49個、d=7なら97個です本稿の計算。 青い面の中心の■(X検査)は、そのまわりの4個のデータ量子ビットの「位相が揃っているか」を、橙の面の中心の■(Z検査)は「値が揃っているか」を、毎周期調べます。
(2) 論理量子ビットの情報は、どこにあるのか
守りたい情報は、1個のデータ量子ビットではなく、格子全体に分散して入っています。どの1個を取り出して見ても、情報は分かりません(第4章の「もつれ」の話)。 情報を読み書きする「論理演算」は、格子の端から端までつながる長さ d の鎖(図の縦と横の点線)に対応します[参考資料18]。誤りが d 個つながって端から端まで届くと、気づけない論理誤りになります。これが、距離が「守りの厚さ」になる理由です。
(3) 誤りは、隣の検査を「光らせる」
誤りが起きると、その量子ビットの隣り合う検査の答えが食い違います。この「食い違い」を検出イベント(検査の答えが、前の周期から変わったこと)と呼びます[参考資料18]。 図では、食い違った検査を赤く「光った」ものとして描きます。1個の誤りなら、隣り合う2つの検査(または端の1つ)が光ります。誤りが数個つながると、鎖の両端の検査だけが光り、間の検査は光りません(隣どうしで打ち消しあうため)。
光るのは「検査」で、誤りの起きた量子ビットではありません。検査は鎖の端しか教えてくれないので、「どの量子ビットが間違ったか」は、光った点の配置から推定します。これが次章のデコーダの仕事です。 上の図 C のように、推定が実際の誤りとずれると、直したつもりで論理誤りが残ります。距離を大きくするのは、こうした失敗を起こりにくくするためです。 また、図は「ビット反転だけ」を描いています。実際には位相反転も同じしくみで、X検査(青)が光ります。
(4) なぜ2次元の格子で、隣どうしだけなのか
表面符号では、各検査が隣り合う4個だけを見ます。遠くの量子ビットと直接つなぐ必要がありません。平らなチップ上に量子ビットを並べ、隣と接続するだけで作れるので、超伝導量子ビットなどの実装に向いています。 Wang らは、2次元の正方格子上の最近接の相互作用だけで、ゲートの誤りが1%を超えても耐えられる手順を示しています事実[参考資料15]。
代わりの代償もあります。守る情報1個あたりに、データ量子ビットだけで d²個、測定量子ビットを含めて 2d²−1 個の量子ビットが要ります。この大きさ(オーバーヘッド)を減らす新しい符号は、次の「論理量子ビットと耐故障量子計算」編で扱います。
8. デコーダ ― 光った点から「何が起きたか」を推定する
デコーダは、検査の結果(光った点の並び)から、「どの量子ビットに誤りが起きたか」を推定し、訂正の方法を決める古典コンピュータ(またはその処理)です。 答えが1つに決まらない場合があるので、「最もありそうな誤り」を選びます。誤りは少ないほどありそうなので、「誤りの数が最小になる推定」が基本です。
(1) 最小重み完全マッチング(MWPM)
光った点を、全体の道のり(誤りの数)が最短になるように、2つずつ(または端と)結びます。結んだ道に沿って、量子ビットを訂正します。前章の図 B(2個の誤り)では、光った2点を最短の道で結ぶと、実際の誤りと一致します。 この方式は、表面符号のデコーダとして最もよく使われています[参考資料16]。
(2) 測定もまちがえる ― 時間方向も見る
検査の測定そのものも、誤ることがあります。そこで、1回の測定だけでなく、複数周期の結果を並べて、「前の周期から変わったところ」を見ます(検出イベント)。 これは、2次元の格子に時間の軸を加えた3次元の問題になります。Dennis らが定式化した方法です[参考資料11]。
| 方式 | 考え方 | 確認できたこと | 注意 |
|---|---|---|---|
| 最小重み完全マッチング(MWPM) | 光った点を、道のりが最短になるように結ぶ | Sparse Blossom:雑音0.1%、距離17の表面符号で、1周期あたり1マイクロ秒未満(1コア)と報告[参考資料16]事実 | ソフトウェアの実装の速さ。実機で使うには、測定データの転送や遅延も含めた評価が要る |
| Union-Find | 光った点から領域を広げ、つながったら結ぶ | 最悪でも誤り量のほぼ線形時間(n·α(n))で動くと報告[参考資料17]事実 | 計算が速い設計。精度は条件による |
| ニューラルネットワーク(AlphaQubit) | 実験データで学習した推定 | Google の実機データ(距離3・5)で、他の最先端のデコーダを上回ると報告。シミュレーションでは距離11まで[参考資料18]事実 | 学習データが要る。Google の実験では、高精度のネットワークは1周期あたり24マイクロ秒で、実時間の要求(1.1マイクロ秒)には届かず、オフラインで使った[参考資料12] |
| 実時間用(Google の実験) | Sparse Blossom を表面符号向けに特化した版 | 距離5で平均遅延63マイクロ秒、100万周期まで維持[参考資料12]事実 | 1周期は1.1マイクロ秒。遅延は、周期より長くても、処理を並列にして追いつくしくみが要る |
| Relay-BP(IBM、qLDPC符号用) | 信念伝播を改良した、並列に動く軽量なデコーダ | FPGA や ASIC での実時間実装を想定した手法として提案[参考資料19]。IBM は、qLDPC 符号で480ナノ秒未満の実時間デコードを達成したと発表(企業の主張)[参考資料20]事実 | プレプリント(査読前)と企業の発表。第三者による検証は、本稿では確認できなかった |
デコーダの種類と性能は、符号・雑音の仮定・実装(ソフトウェアか専用回路か)で変わります。数値を並べて優劣をつけないでください。
測定は、Google の超伝導機では1.1マイクロ秒(100万分の1.1秒)ごとに行われます[参考資料12]。デコーダがこれより遅いと、結果がたまっていく一方になります(本記事による解説)。 また、データの量も増えます。距離27なら、1周期に728ビットが古典側に届きます(d²−1。本稿の計算)。誤り訂正は、量子の仕組みであると同時に、高速な古典の計算とデータ転送の問題でもあるのです。
9. しきい値 ― 「ある線より下なら、大きくするほど良くなる」
(1) 守りを厚くすると、守るべき場所も増える
表面符号の格子を大きくすると、守りは厚くなります。でも同時に、誤りの起きうる場所(量子ビットと操作)も増えます。どちらが勝つのでしょうか。 Google の論文は、このバランスを次のように述べています。物理誤り率がしきい値より低ければ、量子ビットを増やすほど論理誤りは指数的に減ります。しきい値より高ければ、増やすほど悪くなります事実[参考資料12]。 理論的には、1ゲートあたりの誤り率がある臨界値より小さければ、任意に長い計算を信頼できる精度で行える、と Preskill が説明しています事実[参考資料13]。
(2) 式と、数値の例
Google の論文は、表面符号の論理誤り率 εd を、物理誤り率 p としきい値 pth を使って、次のように近似しています事実[参考資料12]。
εd ∝ (p / pth)(d+1)/2 距離を2つ増やしたときの減り方 Λ = εd / εd+2 ≈ pth / p
言葉にすると、「p がしきい値の半分なら、距離を2つ増やすごとに論理誤りがおよそ半分になる」です。Λ(ラムダ)は、距離を2つ増やしたとき、論理誤りが何分の1に減るかの数です。 数値の例で、p/pth=0.5(Λ=2)のとき、比例定数を1とすると、距離3で 0.25、距離5で 0.125、距離7で 0.0625、距離9で 0.03125 になります本稿の計算。距離を増やすごとに、半分ずつ減っていきます。
Λ=2.14 は、「距離を2つ(3→5、5→7…)増やすと、論理誤りが2.14分の1になる」という意味です。式の Λ ≈ pth/p から、実機の物理誤り率が、しきい値の約0.47倍(1/2.14)にあたる、と読めます(本稿の計算)。 「しきい値の下」には入っていますが、余裕は2倍ほどです。物理誤り率が半分になれば、Λ はおよそ2倍になります(Λ ∝ 1/p。同じ装置・同じ誤りの構成を保つ、という仮定の試算)。
(3) Google の実験の数値(2024年発表、2025年にNature掲載)
Google は、超伝導量子ビット(105量子ビットのチップ)で、距離3、5、7の表面符号を動かし、論理誤り率を調べました。次の表は論文の補足表の値です(ニューラルネットワークのデコーダ、オフライン)事実[参考資料12]。
| 符号距離 d | 使う物理量子ビット(2d²−1) | 論理誤り率(1周期あたり) | 前の距離との比 |
|---|---|---|---|
| 3 | 17 | 0.650%(6.50×10−3) | ― |
| 5 | 49 | 0.303%(3.03×10−3) | 約2.15分の1 |
| 7 | 97(実験は補助を含め101) | 0.143%(1.43×10−3) | 約2.12分の1 |
表の「前の距離との比」は、6.50÷3.03=2.15、3.03÷1.43=2.12(本稿の計算)。論文は距離ごとに複数の配置を平均し、最小二乗で Λ=2.14±0.02 を報告しています[参考資料12]。同じデータでも、デコーダの違いで Λ は変わります(アンサンブル型のマッチングでは Λ=2.04±0.02、ε₇=0.171%)。
この実験では、距離7の論理量子ビットの寿命が291±6マイクロ秒で、構成する物理量子ビットの最良(119±13マイクロ秒)の2.4±0.3倍でした[参考資料12]。これを「ブレークイーブン」(論理量子ビットが、最良の物理量子ビットより長持ちする点)を超えた、と表現します。 ただし論文自身が、この指標は状態の準備・測定・ゲートの費用を含まない、と書いています[参考資料12]。「記憶として長持ちする」ことと「計算ができる」ことは、別です。
この結果を延長するとどうなるでしょうか。Google の論文は、外挿で、論理誤り率 10−6 に達するには距離27(物理1457個)が要ると見積もっています[参考資料12]。本稿の単純な計算(Λ=2.14が距離を増やしても変わらないと仮定)でも、距離27で 7.1×10−7となり、同じ結論になります本稿の計算。 もし物理誤り率が半分になって Λ が約2倍(4.28)になったら、距離17(物理577個)で 10−6 に届きます本稿の計算。必要な量子ビットが約2.5分の1(1457÷577)です。これは、第11章の素材の話につながります。
誤りです。しきい値の下に入ると、「大きくするほど誤りが減っていく」ようになるだけで、ゼロにはなりません。目標の誤り率に届くには、距離を大きくする必要があり、Google の見積もりでは距離27・物理1457個(10−6)です。 さらに、Google が距離29までの繰り返し符号で調べたところ、論理誤りは10−10で頭打ちになりました。約1時間に1回(3×109周期に1回)起きる、まれな相関のある誤りが原因とされています[参考資料12]。 正しくは、「しきい値の下は出発点。そこから、規模・誤りの質・速度を磨いていく」です。
もっと詳しく:「しきい値」の値はなぜ1つに決まらないのか
しきい値は、雑音の仮定(誤りの起きかたのモデル)、検査の回路、デコーダで変わります。Wang らは、2次元の最近接結合だけの手順で、物理的にもっともらしい雑音モデルごとに、誤りが1.1〜1.4%までなら耐えられると計算しました[参考資料15]。Google の実験でも、検出確率と1/Λ の関係から、しきい値付近の振る舞いが論じられています[参考資料12]。 実機では、リーク(量子ビットが0・1以外の状態に出る誤り)や相関のある誤りも加わるため、「理論のしきい値」と「実機で実際に得られる Λ」は一致しません。
10. 実験はどこまで来たか(確認日 2026年10月16日)
表面符号など、誤り訂正の「記憶」(量子ビットの情報を保つこと)の実験は、ここ数年で大きく進みました。次の表は、確認できた主な査読済み論文です。方式・符号・測り方がそれぞれ違うので、数字を並べて優劣をつけないでください。
| 年・グループ | 方式・符号 | 確認できた結果 | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 2023年(Nature)Google Quantum AI | 超伝導量子ビット。表面符号 距離3と距離5 | 距離5の論理量子ビットが、距離3の平均を「わずかに」上回った。論理誤りは1周期あたり 2.914%±0.016%(距離5)と 3.028%±0.023%(距離3)[参考資料21]事実 | 誤り訂正で性能が量子ビット数とともに良くなり始めた最初の実験、と著者が位置づけた。改善は小さい |
| 2025年(Nature。2024年8月にarXiv)Google Quantum AI | 超伝導量子ビット。表面符号 距離3・5・7(最大101量子ビット) | Λ=2.14±0.02。距離7で論理誤り 0.143%±0.003%(1周期)。論理量子ビットの寿命が最良の物理量子ビットの2.4±0.3倍。距離5で実時間デコード[参考資料12]事実 | 記憶の実験。論理ゲートや計算ではない。「しきい値の下」を実験で示した |
| 2025年(Nature)Harvard、MIT、QuEra ほか | 中性原子(最大448原子)。表面符号ほか | 4周期の確認回路で、2.14(13)倍の「しきい値の下」の性能。原子の損失の検出と機械学習のデコードを利用[参考資料22]事実 | 周期数が少ない確認。Google の距離3→7の実験とは条件が異なる(偶然、数値が同じ) |
| 2025年(Nature)Google Quantum AI | 超伝導量子ビット。カラー符号 距離3→5 | 論理誤りを Λ(3/5)=1.56(4) の係数で抑制[参考資料23]事実 | カラー符号は、論理演算を効率よく行いやすい符号とされる。しきい値の下に入っているかは、シミュレーションからの推定 |
| 2025年(Nature)Amazon Web Services(AWS) | 超伝導回路。猫量子ビット(ボソニック符号)+外側の繰り返し符号 距離5 | 位相反転の訂正が距離3から5で改善。論理誤りは1周期あたり平均で、距離3の区間 1.75(2)%、距離5 1.65(3)%[参考資料24]事実 | 別の考え方の符号。ビット反転は猫量子ビット自身が抑え、位相反転を外側の符号で直す |
各行の数値は、それぞれの論文の要旨・本文に記載の値です(引用時の表記は原論文のまま)。確認できなかった実験(他の超伝導機での距離7以上の実験など)は、本稿には含めていません。
11. 現実の壁と、素材技術者の視点
(1) 残っている壁
- 計算(論理ゲート):ここまでは「記憶」の話でした。符号を保ったまま演算をするには、さらに工夫(格子手術、魔法状態など)が要ります。本シリーズ「論理量子ビットと耐故障量子計算」編で扱います
- リーク:量子ビットが「0・1」の外側の状態に出てしまう誤りです。Google の距離7の実験では、リークを除くための追加の4量子ビットを使っています[参考資料12]事実
- 相関のある誤り:誤りが、近くの多数の量子ビットで同時に起きる現象です。多数決の前提(誤りが独立)を崩します。Google の論文は、距離29の繰り返し符号でも10−10で頭打ちになり、約1時間に1回の相関誤りが原因と述べています[参考資料12]事実
- 規模:論理誤り10−6に必要な距離27は物理1457個です(上記)。多数の論理量子ビットが要る応用では、さらに桁が上がります(次の記事)
- 速度と配線:1.1マイクロ秒ごとの測定、デコーダ、数千本の配線と冷却(本シリーズ「極低温と制御」編)
表面符号では、物理誤り率が下がると Λ が上がり、同じ論理誤り率に必要な距離が小さくなります。本稿の試算では、Λ が2.14から4.28になると、10−6に必要な物理量子ビットは1457個から577個に、約2.5分の1になります本稿の計算(Λ ∝ 1/p と、誤りの構成が変わらないことを仮定)。 量子ビットの誤り率は、超伝導体の膜、ジョセフソン接合の酸化膜、基板、界面の質に支えられています。つまり、材料の改善は、必要な量子ビット数(チップの面積、配線、冷却の負荷)を、二乗で減らすことにつながります。 Google は、平均のT1(エネルギー緩和の時間)68マイクロ秒、T2,CPMG 89マイクロ秒への改善を、製造技術の改善、「参加率」の設計(電場が欠陥の多い領域にどれだけ染み出すかの設計)、回路パラメータの最適化によると書いています[参考資料12]事実。
高エネルギーの粒子(宇宙線、放射線)が基板に当たると、フォノン(結晶の振動)が基板中に広がり、超伝導体の「準粒子」を一時的に増やします。この準粒子がジョセフソン接合を横切ると、広い範囲の量子ビットで同時に誤りが起きます。 McEwen らは、同じ基板上に、超伝導ギャップ(準粒子が壊れる最小のエネルギー)の異なるアルミニウムの接合を作り分けて、この相関誤りを抑えられることを示しました[参考資料25]事実。 Google の論文は、以前の実験で約10秒に1回あった高エネルギーの衝突による誤りの床(約10−6)を破れたのは、ギャップを設計した接合のおかげと考えている、と述べています[参考資料12]事実。 別の研究は、放射線が超伝導量子ビットのコヒーレンスに与える影響を測り[参考資料26]、地下施設で放射線の影響を減らす試験も報告されています[参考資料27]。 素材の側から見ると、基板の材料と厚さ、接合の材料、遮蔽(の材料)が、「ごくまれな誤りの床」を決める変数です。
表面符号は、格子のすべての量子ビットが、ほぼ同じ質であることを前提にします。Google の論文は、T1 の揺らぎの原因になる二準位系(TLS。材料中の微小な欠陥)の周波数が時間で動くことを記録し、その軌跡を予測して、ゲートの周波数が TLS と衝突しないようにする工夫をしています[参考資料12]事実。 言い換えると、欠陥を完全になくせないので、使い方で避けているのが現状です。膜・界面の欠陥密度、再現性、ウェハーごとのばらつきを下げる材料・プロセスの改善は、誤り訂正の規模の拡大に直接つながると考えられます(本記事による解説・推測)。 量子ビットを支える材料と製造は、本シリーズ「量子コンピュータの材料と製造」編で詳しく扱います。
12. 確認できなかったこと/まとめ
確認できなかったこと
- ISO/IEC 4879:2024 の本文:有料のため、題名・発行年月・段階のみを確認し、定義の内容は書いていません。
- IEEE P7131 の発行状況:作業グループのサイトは確認しましたが、発行済みかどうかは、そのページから確認できませんでした。
- 他の超伝導機での、距離7以上のしきい値の下の実験:本稿で確認できた査読済みの実験は、表に挙げたものに限ります。ほかにも研究が進んでいる可能性があります。
- IBM の「480ナノ秒未満の実時間デコード」の第三者検証:IBM の発表と、手法のプレプリント[参考資料19・20]を確認しましたが、第三者による検証は確認できませんでした(企業の主張)。
- 実機における理論上のしきい値の実測値:実験は Λ(距離を増やしたときの変化)で示されており、しきい値そのものの値は、本稿では確認していません。
- 長い計算には誤り訂正が必要です。1回の誤り率がpなら、約1/p回の操作で、全部正しい確率は約37%に下がります本稿の計算
- 量子ビットは、コピーせずに守れます。情報を、もつれた複数の量子ビットに分散し、「隣と同じか」という症状だけを測って、誤りの場所を逆算します事実
- 表面符号は、2次元の格子と隣どうしの検査で作る符号です。守りの厚さは距離 d で表し、物理量子ビットは 2d²−1 個要ります事実
- しきい値の下に入ると、大きくするほど論理誤りが減ります。Google は距離3→5→7で Λ=2.14 を示し、距離7で1周期あたり0.143%でした。10−6には距離27・物理1457個が必要と見積もられています事実
- 残る課題は、論理ゲート、相関のある誤り、速度(デコーダ)、規模、配線と冷却です。材料の改善は、必要な量子ビット数を二乗で減らす力を持ちます
13. 評価・標準の読み方
量子誤り訂正の「進み具合」は、おもに次の「ものさし」で測ります。論理誤り率(守った情報が1周期あたりどれだけ壊れるか)、誤り抑制係数 Λ(距離を増やしたとき何分の1に減るか)、ブレークイーブン(守った情報が、最良の物理量子ビットより長持ちするか)、そしてデコーダの遅延(周期に追いつくか)です。 どれも、符号の種類、距離、周期の数、デコーダ、平均の取り方を添えないと、意味が決まりません。標準(規格)は、誤り訂正の評価を直接定めたものは、本稿では確認できませんでした。用語の標準が発行されている段階です。確認日は2026年10月16日です。
| 評価項目 | 代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典) | 標準・指針(ISO/IEC・IEEE など) | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 論理誤り率(1周期あたり) | 論理メモリ実験で、周期数に対する論理誤りを当てはめて求める。Google:距離7で0.143%±0.003%(101量子ビット)[参考資料12]事実 | 確認できなかった | 符号・距離・周期数・デコーダ・X/Z 基底の平均を必ず添える。メモリ(保存)と、演算(ゲート)は別 |
| 誤り抑制係数 Λ | 距離を2つ増やしたときの論理誤りの比。Google:2.14±0.02[参考資料12]。Harvard ほか:2.14(13)(4周期)[参考資料22]。Google カラー符号:Λ(3/5)=1.56(4)[参考資料23]事実 | 確認できなかった | 同じ装置・同じ符号で距離を変えた比。符号や方式が違う Λ を並べて優劣をつけない。デコーダで値が変わる(Google 2.04〜2.14) |
| ブレークイーブン利得 | 論理量子ビットの有効寿命÷最良の物理量子ビットの寿命。Google:2.4±0.3[参考資料12]事実 | 確認できなかった | 状態の準備・測定・ゲートの費用を含まない(論文自身の注記) |
| デコーダの性能 | 論理誤り率と遅延。Google:距離5で平均63マイクロ秒、周期1.1マイクロ秒[参考資料12]。IBM:480ナノ秒未満(企業の主張)[参考資料20]事実 | 確認できなかった | ソフトウェアの速さと、実機のデータ転送を含む遅延は別。方式(表面符号か qLDPC か)で問題の大きさが違う |
| 必要な規模 | 2d²−1。Google の外挿:10−6に距離27・物理1457個[参考資料12]事実。試算の Λ=4.28:577個本稿の計算 | 確認できなかった | 外挿は、Λ が一定で新しい誤りが現れない、という仮定のもの |
| 用語・定義 | ―(評価ではなく用語の標準) | ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(ISO/IEC JTC 3。2024年5月発行。本文は有料)[参考資料28]事実 | 用語の定義を揃える標準で、誤り訂正の性能の測り方を定めるものではない。本文は未確認 |
| 性能指標・ベンチマークの標準 | ― | IEEE P7131(量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案)。作業グループのサイトが、技術範囲は P7131 が定めると記載[参考資料29]未確定/将来 | 標準案の段階。発行済みかは確認できなかった。内容も未確認 |
表の整理は本稿の計算(整理)。規格の番号・題名・発行年月は、各機関のページで確認しました(確認日 2026年10月16日)。規格本文は有料のため、題名・適用範囲にとどめています。
読み方の注意(素材技術者向け)
- 「論理量子ビット」は、符号の種類・距離・測った範囲で別物です:「論理量子ビットを作った」という発表は、どの符号か、距離はいくつか、論理誤り率はいくつか、何周期測ったか、を添えて読んでください。「しきい値の下」「誤りを抑制」も、「何と比べて何倍か」を確認します
- 企業の発表と、査読・第三者の検証は別です:表の実験は査読済み論文です。デコーダの速さなど、企業の発表だけのものは「企業の主張」として扱いました
- 記憶(メモリ)と計算は別です:表の実験の多くは、論理量子ビットを保つ実験です。論理ゲートを含む計算の誤り率は、別に確認が要ります
- 標準は、まだ用語の段階です:ISO/IEC 4879 は用語の標準で、法的拘束力や、性能の合否を決める力はありません(一般に、規格は法令や契約で引用されて初めて拘束力を持ちます。本記事による解説)。ベンチマークの標準(IEEE P7131)は、確認日時点では標準案です
14. 用語集
- 量子誤り訂正(QEC)
- Quantum Error Correction。量子ビットの誤りを、情報を壊さずに見つけて直す技術。
- 物理量子ビット
- 実際の装置の量子ビット。誤りが起きる。
- 論理量子ビット
- 多数の物理量子ビットで守った、誤りの少ない量子ビット。
- 冗長性
- 同じ情報を余分に持たせて、誤りに備えること。
- 繰り返し符号
- 同じ情報を何度も持たせ、多数決で直す最も簡単な符号。
- 複製不可能性
- 未知の量子状態をそっくりコピーすることはできない、という性質。
- ビット反転
- 0と1が入れ替わる誤り。矢印の北と南が入れ替わる。
- 位相反転
- 矢印の左右が逆になる誤り。測っても0と1の出やすさは変わらない。
- CNOT
- 制御側が1のときだけ、相手を反転する2量子ビットの操作。
- シンドローム(症状)
- 検査の答えの並び。誤りの場所を逆算する手がかり。
- 安定化子
- 守っている状態では必ず+1になる検査。誤りで−1になる。
- データ量子ビット
- 情報を預ける量子ビット。
- 測定量子ビット
- 検査のためだけに使う補助の量子ビット。
- [[n,k,d]]
- 符号の大きさの書き方。物理n個、論理k個、距離d。
- 符号距離 d
- 気づけない誤りになるまでに必要な、誤りの個数。
- 表面符号
- 量子ビットを2次元の格子に並べ、隣どうしで検査する符号。
- 検出イベント
- 検査の答えが、前の周期から変わったこと。
- デコーダ
- 検査の結果から、起きた誤りを推定する古典の処理。
- MWPM
- 最小重み完全マッチング。光った点を最短の道でペアにするデコード方式。
- しきい値
- これより物理誤り率が低いと、符号を大きくするほど論理誤りが減る境目。
- Λ(ラムダ)
- 距離を2つ増やしたとき、論理誤りが何分の1になるか。
- ブレークイーブン
- 論理量子ビットが、最良の物理量子ビットより長持ちする点。
- リーク
- 量子ビットが0・1以外の状態に出てしまう誤り。
- TLS(二準位系)
- 材料中の微小な欠陥。量子ビットのエネルギーを奪い、T1を縮める。
15. 参考資料(一次情報)
- Nielsen M. A., Chuang I. L. Quantum Computation and Quantum Information, 10周年記念版, Cambridge University Press (2010)(誤り訂正は教科書の標準的な参照先) — doi.org/10.1017/CBO9780511976667
- Roffe J. "Quantum error correction: an introductory guide", Contemporary Physics 60, 226–245 (2019), DOI 10.1080/00107514.2019.1667078 — arxiv.org/abs/1907.11157
- Devitt S. J., Munro W. J., Nemoto K. "Quantum error correction for beginners", Rep. Prog. Phys. 76, 076001 (2013), DOI 10.1088/0034-4885/76/7/076001 — arxiv.org/abs/0905.2794
- Shor P. W. "Scheme for reducing decoherence in quantum computer memory", Phys. Rev. A 52, R2493 (1995), DOI 10.1103/PhysRevA.52.R2493 — doi.org/10.1103/PhysRevA.52.R2493
- Steane A. M. "Error correcting codes in quantum theory", Phys. Rev. Lett. 77, 793 (1996), DOI 10.1103/PhysRevLett.77.793 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.77.793
- Wootters W. K., Zurek W. H. "A single quantum cannot be cloned", Nature 299, 802–803 (1982), DOI 10.1038/299802a0 — doi.org/10.1038/299802a0
- Dieks D. "Communication by EPR devices", Phys. Lett. A 92, 271–272 (1982), DOI 10.1016/0375-9601(82)90084-6 — doi.org/10.1016/0375-9601(82)90084-6
- Gottesman D. "Stabilizer codes and quantum error correction", 博士論文, arXiv:quant-ph/9705052 (1997) — arxiv.org/abs/quant-ph/9705052
- Kitaev A. Yu. "Fault-tolerant quantum computation by anyons", Ann. Phys. 303, 2–30 (2003), DOI 10.1016/S0003-4916(02)00018-0 — doi.org/10.1016/S0003-4916(02)00018-0
- Bravyi S. B., Kitaev A. Yu. "Quantum codes on a lattice with boundary", arXiv:quant-ph/9811052 (1998) — arxiv.org/abs/quant-ph/9811052
- Dennis E., Kitaev A., Landahl A., Preskill J. "Topological quantum memory", J. Math. Phys. 43, 4452–4505 (2002), DOI 10.1063/1.1499754 — doi.org/10.1063/1.1499754
- Google Quantum AI and Collaborators "Quantum error correction below the surface code threshold", Nature 638, 920–926 (2025), DOI 10.1038/s41586-024-08449-y(arXiv:2408.13687) — doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
- Preskill J. "Reliable quantum computers", Proc. R. Soc. Lond. A 454, 385–410 (1998), DOI 10.1098/rspa.1998.0167 — doi.org/10.1098/rspa.1998.0167
- Fowler A. G., Mariantoni M., Martinis J. M., Cleland A. N. "Surface codes: Towards practical large-scale quantum computation", Phys. Rev. A 86, 032324 (2012), DOI 10.1103/PhysRevA.86.032324 — doi.org/10.1103/PhysRevA.86.032324
- Wang D. S., Fowler A. G., Hollenberg L. C. L. "Surface code quantum computing with error rates over 1%", Phys. Rev. A 83, 020302(R) (2011), DOI 10.1103/PhysRevA.83.020302 — doi.org/10.1103/PhysRevA.83.020302
- Higgott O., Gidney C. "Sparse Blossom: correcting a million errors per core second with minimum-weight matching", Quantum 9, 1600 (2025), DOI 10.22331/q-2025-01-20-1600 — doi.org/10.22331/q-2025-01-20-1600
- Delfosse N., Nickerson N. H. "Almost-linear time decoding algorithm for topological codes", Quantum 5, 595 (2021), DOI 10.22331/q-2021-12-02-595 — doi.org/10.22331/q-2021-12-02-595
- Bausch J. ほか "Learning high-accuracy error decoding for quantum processors", Nature 635, 834–840 (2024), DOI 10.1038/s41586-024-08148-8 — doi.org/10.1038/s41586-024-08148-8
- Müller T. ほか(IBM) "Improved belief propagation is sufficient for real-time decoding of quantum memory", arXiv:2506.01779 (2025)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2506.01779
- IBM "IBM Delivers New Quantum Processors, Software, and Algorithm Breakthroughs on Path to Advantage and Fault Tolerance", プレスリリース (2025年11月12日)(企業の発表) — newsroom.ibm.com(2025-11-12)
- Google Quantum AI "Suppressing quantum errors by scaling a surface code logical qubit", Nature 614, 676–681 (2023), DOI 10.1038/s41586-022-05434-1 — doi.org/10.1038/s41586-022-05434-1
- Bluvstein D. ほか "A fault-tolerant neutral-atom architecture for universal quantum computation", Nature 649, 39–46 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-09848-5 — doi.org/10.1038/s41586-025-09848-5
- Lacroix N. ほか "Scaling and logic in the colour code on a superconducting quantum processor", Nature 645, 614–619 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-09061-4 — doi.org/10.1038/s41586-025-09061-4
- Putterman H. ほか(AWS) "Hardware-efficient quantum error correction via concatenated bosonic qubits", Nature 638, 927–934 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-08642-7 — doi.org/10.1038/s41586-025-08642-7
- McEwen M. ほか "Resisting high-energy impact events through gap engineering in superconducting qubit arrays", Phys. Rev. Lett. 133, 240601 (2024), DOI 10.1103/PhysRevLett.133.240601 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.240601
- Vepsäläinen A. P. ほか "Impact of ionizing radiation on superconducting qubit coherence", Nature 584, 551–556 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2619-8 — doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8
- Cardani L. ほか "Reducing the impact of radioactivity on quantum circuits in a deep-underground facility", Nat. Commun. 12, 2733 (2021), DOI 10.1038/s41467-021-23032-z — doi.org/10.1038/s41467-021-23032-z
- ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(2024年5月発行)。セルビア規格協会(ISS)の掲載ページで、番号・題名・発行日・「Published」を確認 — iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432(ISO の公式ページは https://www.iso.org/standard/80432.html。当方の環境では自動取得できず、検索結果の記載で確認)
- IEEE P7131 作業グループ "Quantum Benchmarking Working Group P7131"(量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を扱う作業グループのサイト) — sagroups.ieee.org/7131
16. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 最先端の多量子ビット機が2量子ビットゲートの99.9%に到達したばかり。多くの応用に必要な誤り率は10−10未満とされる | Google(2025)の序論 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y | 事実 |
| 未知の量子状態は複製できない(複製不可能性) | Wootters と Zurek、Dieks(1982) 出典6 https://doi.org/10.1038/299802a0 出典7 https://doi.org/10.1016/0375-9601(82)90084-6 | 事実 |
| 3つで多数決する繰り返し符号が、誤り訂正の最初の例として教科書・総説で説明されること。ビット反転・位相反転を直せれば任意の1量子ビット誤りを直せること | 教科書・総説(Nielsen と Chuang、Roffe、Devitt ら、Gottesman) 出典1 https://doi.org/10.1017/CBO9780511976667 出典2 https://arxiv.org/abs/1907.11157 出典3 https://arxiv.org/abs/0905.2794 出典8 https://arxiv.org/abs/quant-ph/9705052 | 事実 |
| Shor が1995年に量子コンピュータのメモリのデコヒーレンスを減らす方式(9量子ビット符号)を示したこと。Steane が1996年に量子の誤り訂正符号を示したこと | Shor(1995)、Steane(1996)の題名・書誌 出典4 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.52.R2493 出典5 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.77.793 | 事実 |
| 安定化子符号の体系化(Gottesman) | Gottesman の博士論文(要旨) 出典8 https://arxiv.org/abs/quant-ph/9705052 | 事実 |
| トーリック符号(Kitaev)、端のある平面の符号(Bravyi と Kitaev)、誤り回復としきい値の解析(Dennis ら)、表面符号を大規模計算機の設計に結びつけた解説(Fowler ら) | 各論文の要旨 出典9 https://doi.org/10.1016/S0003-4916(02)00018-0 出典10 https://arxiv.org/abs/quant-ph/9811052 出典11 https://doi.org/10.1063/1.1499754 出典14 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.86.032324 | 事実 |
| 2次元の最近接の相互作用だけで、ゲート誤り1%超に耐えられる手順。しきい値が雑音モデルごとに1.1〜1.4% | Wang ら(2011)の要旨 出典15 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.83.020302 | 事実 |
| 誤り率がある臨界値より小さければ、任意に長い計算を信頼できる精度で行えること(しきい値定理の説明) | Preskill(1998)の要旨 出典13 https://doi.org/10.1098/rspa.1998.0167 | 事実 |
| 表面符号:データ量子ビット d×d、検査 d²−1個、2d²−1個の物理量子ビット。論理演算は端から端の鎖。検出イベントの定義。平面接続の符号で最も誤りに強いとされる | Google(2025)の序論と AlphaQubit の論文の記述 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y 出典18 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08148-8 | 事実 |
| 論理誤り率の近似式 εd ∝ (p/pth)(d+1)/2、Λ=εd/εd+2 ≈ pth/p | Google(2025)の序論の式 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y | 事実 |
| Google の実験:Λ=2.14±0.02、距離7で0.143%±0.003%(101量子ビット)、論理量子ビットの寿命291±6マイクロ秒が最良の物理量子ビット119±13マイクロ秒の2.4±0.3倍、周期1.1マイクロ秒、平均遅延63マイクロ秒(距離5)。補足表:距離3・5・7が6.50・3.03・1.43×10−3、アンサンブル型で Λ=2.04 | Google(2025)の要旨・本文・補足表 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y | 事実 |
| 寿命の指標がゲート・準備・測定の費用を含まないこと。外挿で10−6に距離27・1457個。距離29までの繰り返し符号で10−10の床、約1時間に1回の相関誤り。T1 68マイクロ秒の改善の原因(製造・参加率・パラメータ)。TLSとの周波数衝突を避ける工夫 | Google(2025)の本文 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y | 事実 |
| 2023年の Google の実験:距離5が距離3の平均を僅かに上回り、論理誤り 2.914%±0.016%(距離5)と 3.028%±0.023%(距離3) | Google(2023)の要旨 出典21 https://doi.org/10.1038/s41586-022-05434-1 | 事実 |
| Harvard ほか:最大448原子、4周期の確認回路で2.14(13)倍のしきい値の下の性能、原子損失の検出と機械学習のデコード | Bluvstein ら(2025)の要旨 出典22 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09848-5 | 事実 |
| Google カラー符号:距離3→5で Λ(3/5)=1.56(4) | Lacroix ら(2025)の要旨 出典23 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09061-4 | 事実 |
| AWS:猫量子ビットと外側の繰り返し符号(距離5)。論理誤り 1.75(2)%(距離3の区間)、1.65(3)%(距離5) | Putterman ら(2025)の要旨 出典24 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08642-7 | 事実 |
| Sparse Blossom が、雑音0.1%・距離17で1周期あたり1マイクロ秒未満(1コア)。Union-Find 型が最悪でもほぼ線形時間。AlphaQubit が Google の実機データ(距離3・5)で他のデコーダを上回り、シミュレーションで距離11まで | 各論文の要旨 出典16 https://doi.org/10.22331/q-2025-01-20-1600 出典17 https://doi.org/10.22331/q-2021-12-02-595 出典18 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08148-8 | 事実 |
| Relay-BP が、FPGA や ASIC での実時間実装を想定した並列のデコーダとして提案されたこと。IBM が qLDPC 符号で480ナノ秒未満の実時間デコードを達成したと発表したこと(企業の主張) | Müller らのプレプリントの要旨と IBM のプレスリリース(2025年11月12日) 出典19 https://arxiv.org/abs/2506.01779 出典20 https://newsroom.ibm.com/2025-11-12-ibm-delivers-new-quantum-processors,-software,-and-algorithm-breakthroughs-on-path-to-advantage-and-fault-tolerance | 事実 |
| 高エネルギーの衝突が準粒子を増やし相関誤りを起こすこと。ギャップを作り分けたアルミニウムの接合で抑制できること。放射線がコヒーレンスに与える影響の測定と、地下施設での試験 | McEwen ら、Vepsäläinen ら、Cardani らの要旨 出典25 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.240601 出典26 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8 出典27 https://doi.org/10.1038/s41467-021-23032-z | 事実 |
| ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary" が2024年5月に発行(Published)されたこと | セルビア規格協会(ISS)の掲載ページ 出典28 https://iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432 | 事実 |
| IEEE P7131 の作業グループが、量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を技術範囲としていること。発行状況は確認できなかった | 作業グループのサイト 出典29 https://sagroups.ieee.org/7131 | 未確定/将来 |
| 成功確率の表と図((1−p)N)、3つの多数決の誤り確率(3p²−2p³)、2d²−1 の表、距離ごとの比(2.15、2.12)、Λ=2.14 の外挿(距離27で7.1×10−7)、Λ=4.28 の仮定の試算(距離17・577個、約2.5分の1)、728ビット・0.66 Gbit/s、3量子ビット符号の例(α=0.6、β=0.8)、位相反転の約3倍、図の距離別モデル曲線 | 本稿の計算(Python。仮定は本文と図の注記に明記)。実機の結果ではない | 本稿の計算 |
| ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況、他の超伝導機での距離7以上の実験、IBM のデコード速度の第三者検証、実機でのしきい値の実測値 | 本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 「情報を封筒に入れたまま傷だけを検査する」というたとえ、「距離は守りの厚さ」「材料の改善は必要な量子ビット数を二乗で減らす」という読み取り、TLSの回避が現状の使い方であるという整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1と図10がImageGen生成の概念画像であること。他の図が実データの観察ではなく説明のための作図であること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(査読論文、arXiv の論文、教科書、企業の発表、ISO 規格の掲載ページ)に限定しています。企業の発表は「企業の主張」として区別しました。 数値の試算は本稿の計算で、実機の結果ではありません。 ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況、IBM のデコード速度の第三者検証、実機でのしきい値の実測値については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図10はImageGen生成の概念画像です。

