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論理量子ビットと耐故障量子計算 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

論理量子ビットと耐故障量子計算
― 「守る」から「守ったまま計算する」へ

前の記事で、たくさんの量子ビットで1つの量子ビットを守る「誤り訂正」を見ました。では、守った量子ビットで、実際に計算はどうするのでしょうか。 この記事は、①「論理量子ビット」という言葉の中身と、数字の読み方、②必要な物理量子ビット数の見積もり(前提しだいで桁が変わる)、③近年の実験の成果、④守ったまま計算するために要る部品(論理ゲートと魔法状態)、⑤新しい符号(qLDPC など)の位置づけ、⑥各社の計画(未確定)を、図と小さな数値で順に説明します。 「何個の論理量子ビット」という発表を、条件つきで読めるようになることが目標です。

構成:査読論文(Nature、Physical Review、Quantum ほか)、arXiv の論文、企業・DARPA の公式ページ、ISO の規格情報を使用/数値例は本稿で計算/確認日 2026年10月16日

量子ビットのチップを大量に作る製造の場面です。論理量子ビットを増やすには、均一な量子ビットを多数作る製造が欠かせません。実際の工場・製品を示すものではありません。 多数の物理素子で論理情報を保護する考え方を併記しています。未知の量子状態を複製する図ではありません。
図1 概念画像(ImageGen生成)。量子ビットのチップを大量に作る製造の場面です。論理量子ビットを増やすには、均一な量子ビットを多数作る製造が欠かせません。実際の工場・製品を示すものではありません。 多数の物理素子で論理情報を保護する考え方を併記しています。未知の量子状態を複製する図ではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
この記事の構成
  1. 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置
  2. 物理量子ビットと論理量子ビット ― 「1個」の中身と、数字の読み方
  3. 必要な物理量子ビット数の見積もり ― 前提で桁が変わる
  4. 近年の実験の成果(確認日 2026年10月16日)
  5. 耐故障計算に必要なもの ― 論理ゲートと魔法状態
  6. qLDPC など新しい符号の位置づけ
  7. ロードマップと第三者評価(未確定/将来)
  8. 確認できなかったこと/まとめ
  9. 評価・標準の読み方
  10. 用語集
  11. 参考資料(一次情報)
  12. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=企業・機関の計画、目標、将来の見積もりなど、確定していない事項
このほか、読み取りや説明は「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値の読み方

実験の値は、各論文・発表に記載の値を、条件(誤り検出か訂正か、後選択の有無、記憶か計算か)を添えて引用しています。企業の計画・目標は「未確定/将来」で、達成済みの事実ではありません。企業の発表は「企業の主張」として扱い、特定の企業・方式の優劣は論じません。 この分野は変化が速いので、機器・計画・規格の状態は確認日(2026年10月16日)時点のものです。資源見積もり(必要な量子ビット数)は、仮定した条件の上での試算で、実機の性能ではありません。

1. 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置

  • 論理量子ビットの数は、条件つきで読む:論理量子ビットは、多数の物理量子ビットで守った「誤りの少ない1個」です。でも「論理量子ビット○個」という数字は、誤りを直したのか、見つけて捨てただけなのか、どの符号か、論理誤り率はいくつか、を添えないと意味が決まりません。例えば Quantinuum の2026年の実験は、98個の物理量子ビットから、誤り訂正が48個、誤り検出だけなら最大94個、という報告です事実[参考資料17]
  • 耐故障計算には、論理ゲートと魔法状態が要る:守ったまま計算するには、符号を壊さない演算(論理ゲート)が要ります。Tゲートという演算だけは作るのが特に高くつき、その原料が魔法状態です。必要な物理量子ビット数は、前提しだいで100万個未満から数千万個まで大きく変わります事実[参考資料9・10・11]
  • 新しい符号と計画は、まだ途中:qLDPC 符号は物理量子ビットを減らせる見込みですが、離れた量子ビットとの結合が要ります。IBM は2029年に論理200個を計画しますが、これは計画です未確定/将来[参考資料32]
この記事を読む前に知っておくこと

前の記事「量子誤り訂正と表面符号」の内容(誤り訂正符号、符号距離 d、しきい値、物理量子ビットは 2d²−1 個)が前提です。短く言い直すと、次のとおりです。 量子ビットは壊れやすいので、多数の物理量子ビットで1つの論理量子ビットを守ります。物理誤り率がしきい値より低ければ、符号を大きくするほど論理誤りは減ります。

シリーズの中での位置

「量子誤り訂正と表面符号」の次に読むと分かりやすい記事です。この記事の話を支える冷凍機と配線は「極低温と制御」編、量子ビットの材料と製造は「量子コンピュータの材料と製造」編で扱います。「量子優位性の読み方」編も、数字の読み方の参考になります。

2. 物理量子ビットと論理量子ビット ― 「1個」の中身と、数字の読み方

(1) 身近な例:大事な書類を、複数の金庫に分けて預ける

1枚しかない大事な書類を、10か所の金庫に分けて預け、毎日「他の金庫と食い違っていないか」だけを点検するとします。1か所が壊れても、他から復元できます。 物理量子ビットが「1つの金庫」、論理量子ビットが「金庫全体で守られている、1枚の書類」にあたります。 たとえには限界があります。量子ビットは、書類のようにコピーを作れません。前の記事で見たとおり、情報をもつれた複数の量子ビットに分散して持たせ、「食い違い」だけを測ります。

「論理量子ビット」は、積み重ねの真ん中にある アルゴリズム 量子化学の計算など 論理ゲート・論理測定 格子手術、魔法状態(第5章) 論理量子ビット 多数の物理量子ビットで守った1個 誤り訂正符号とデコーダ 表面符号、qLDPC符号など(第6章) 物理量子ビット 実際の装置。1操作の誤りは約10-3 実際に解きたい問題。ここまで届いて初めて「使える」 論理量子ビットの上で計算する(本記事の主題) 「論理量子ビット○個」は、ここを数えた数字 前の記事「量子誤り訂正と表面符号」で説明 素材・製造・冷却が支える(本シリーズの各記事) ※ 各層の名前は本記事の整理(概念図)。数値の「約10-3​」は、Google の論文が述べる最先端の2量子ビットゲートの水準[参考資料1]。
図2 概念図(ベクター作図)。物理量子ビットから論理量子ビット、論理ゲート、アルゴリズムまでの積み重ねを示した概念図です。各層の名前は本記事の整理です。

上の図のように、物理量子ビットは実際の装置の量子ビットで、1回の操作の誤りは約10−3です[参考資料1]。論理量子ビットは、符号とデコーダの上に作られた、誤りの少ない量子ビットです。 その上に論理ゲート(論理量子ビットへの演算)を重ね、最後にアルゴリズムが乗ります。「論理量子ビット○個」という数字は、この真ん中の層を数えたものです。

(2) 「論理量子ビット○個」を読むための3つの確認

  1. 誤りを「訂正」したのか、「検出」して捨てたのか?誤り検出符号は、誤りが見つかった実行を捨てる(後選択)ことで、残った結果の誤りを減らします。捨てずに直す誤り訂正とは別のものです
  2. どの符号で、距離はいくつで、論理誤り率はいくつか?距離2の符号は、誤りの検出はできますが、1個の誤りも訂正できません
  3. 何をした実験か?論理量子ビットを保存しただけ(記憶)なのか、論理ゲートを含む計算までしたのか、です
「誤りを見つけて捨てる」と「見つけて直す」は別のもの 誤り検出:疑わしい実行は捨てる 誤り訂正:見つけて直して、続ける 緑:使える結果 灰:捨てた結果(本稿の計算) 緑:使える結果(捨てない) 例:1層ごとに10%の実行が「疑わしい」と判定され、20層続くと、残るのは 0.920​ ≈ 12%(100回のうち約12回)。 訂正は捨てずに続けられるが、そのぶん、検査用の量子ビットと回路、古典の処理が増える。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。誤り検出(疑わしい実行を捨てる)と、誤り訂正(直して続ける)の違いを、100回の実行の例で示した図です。1層あたり10%・20層の例は説明用の仮定の計算で、実験の値ではありません。

図の例で考えます。1層ごとに10%の実行が「疑わしい」と判定されて捨てられるとします。20層続けると、残るのは 0.920 ≈ 12% です(100回のうち約12回。本稿の計算)。 後選択は、浅い回路では手軽で効果的ですが、回路が深くなると、使える結果が指数的に減ります。深い計算には、捨てずに直す誤り訂正が要ります(本記事による解説)。

よくある誤解:「98個の物理量子ビットから、94個の論理量子ビットができた」

94個は、誤りを「検出」するだけの符号で数えた個数です。Quantinuum の2026年のプレプリントは、98量子ビットの Helios で、誤り検出符号で最大94個、2層の連結(誤り訂正)で48個の論理量子ビットを使った計算が、物理量子ビットより良い性能(ブレークイーブン超え)だったと報告しています。後選択を含みます事実[参考資料17]。 正しくは、「94個(検出)と48個(訂正)の2つの数字がある」です。物理98個に対し、論理の数が多いことは、符号の距離が小さい(守りが薄い)こととセットです。数字の大きさだけで、性能の優劣はつけられません。

(3) 物理量子ビット何個で、論理量子ビット1個か

符号によって、「物理何個で論理1個か」の比は大きく違います。次の表は、確認できた例です。実験、シミュレーション、提案が混ざっているので、区分を必ず見てください。

符号・構成物理:論理の比(本稿の計算)できること・条件区分
表面符号 距離7(Google)101:1(補助の量子ビットを含む)論理量子ビットの保存(記憶)の実験。論理誤りは1周期あたり0.143%[参考資料1]実験 事実
表面符号 距離27(Google の外挿)1457:1論理誤り10−6に必要と見積もられる大きさ(記憶)[参考資料1]将来の見積もり 未確定/将来
gross 符号 [[144,12,12]](IBM)288:12(24:1)12個を約100万周期保つ記憶のプロトコル(物理誤り0.1%の回路レベルのシミュレーション)。同じ抑制を表面符号で行うと約3000個要る、と著者は見積もる[参考資料23]提案 未確定/将来
アイスバーグ符号の連結(Quantinuum、Helios)98:48(約2:1、訂正)/98:94(約1:1、検出)プレプリント。訂正は距離4の連結符号、検出は距離2。後選択を含み、物理量子ビットより良い性能と報告[参考資料17]実験 事実
[[8,3,2]] ブロック(Harvard ほか、2023)符号の比 8:3(約2.7:1)距離2=誤り検出のみ。最大48個の論理量子ビットでサンプリング回路を実行[参考資料13]実験 事実
12量子ビット符号(論理2)、16量子ビット符号(論理4)(Quantinuum と Microsoft)6:1、4:1誤り検出と後選択により、論理誤り率が物理の基準より11倍〜800倍低いと報告(Nature、2026)[参考資料16]実験 事実
高レート qLDPC 符号 [[1152,580,≤12]](QuEra ほか)約2:1物理誤り0.1%、回路レベル雑音のシミュレーションで、1論理量子ビット・1周期あたり 2.9×10−11。記憶の結果[参考資料28]シミュレーション 未確定/将来
4次元幾何符号 [[96,6,8]](Microsoft)16:1物理誤り10−3の回路レベル雑音で、1論理量子ビット・1周期あたり約10−6と見積もる[参考資料27]提案 未確定/将来

比は、物理量子ビット数÷論理量子ビット数の単純な割り算です(本稿の計算)。符号の距離・論理誤り率・測った内容が違うので、比の小さい行が「優れている」わけではありません。

つまずきやすいところ:比が小さいほど良い、ではない

「2:1」と「24:1」を比べると、2:1のほうが量子ビットを節約できています。でも、守りの厚さ(距離)と、得られる論理誤り率も違います。距離2の符号は検出しかできず、距離12の符号は5個の誤りまで直せます。 比較するときは、同じ論理誤り率(たとえば10−6)を得るのに、物理量子ビットが何個要るか、を見ます。これが次の章の「資源見積もり」の考え方です。

3. 必要な物理量子ビット数の見積もり ― 前提で桁が変わる

(1) まず、桁をつかむ簡単な計算

表面符号の論理量子ビット1個は、距離 d で 2d²−1 個の物理量子ビットを使います。前の記事で見たように、論理誤り10−6には距離27、つまり1457個が必要と Google は見積もっています[参考資料1]。 では、論理量子ビットが1000個なら、どうでしょう。1457個 × 1000 = 約146万個です(本稿の計算。魔法状態の工場や、配線・移動のための余白を含まない最小の見積もり)。 このように、「論理量子ビットの数」×「1個あたりの物理量子ビット数」で、すぐ数百万個の桁になります。

(2) 研究者の見積もりは、前提と「仕事」で大きく変わる

実際には、計算の中身(Tゲートの数、何量子ビットを同時に使うか)、物理誤り率、周期、実行時間で、必要な数が変わります。次の表は、確認できた見積もりです。

必要な物理量子ビット数の見積もり:前提と仕事が違えば、桁が変わる 104 105 106 107 108 109 1秒 1分 1時間 1日 1週間 実行時間(対数目盛) 物理量子ビット数(対数目盛) 100量子ビットの回路(T回数108​)を1秒で:3.3億個 同じ回路を22分で:12万個 同じ回路を4時間で:5.5万個 RSA-2048の因数分解(2019年の見積もり):8時間・2000万個 RSA-2048(2025年の見積もり):1週間未満・100万個未満 FeMoco(量子化学):4日未満・約400万個 物理誤り率 10-4​ を仮定(Litinski) 物理誤り率 10-3​ を仮定(他の3つ) ※ 数値は各論文の要旨の記載値。どれも表面符号、1マイクロ秒の周期を仮定。 ※ 仕事の内容も誤り率も違うので、点どうしの上下を単純には比べられない。 ※ 「RSA-2048」は資源見積もりの例題として使われるもの。本稿は攻撃の手順を扱わず、暗号が破られる時期も予測しない(第3章の注)。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。論文に記載の資源見積もり(物理量子ビット数と実行時間)を、1つの図に重ねたものです[参考資料4・9・10・11]。数値は各論文の要旨の記載値で、仕事の内容と物理誤り率が違うため、点どうしの上下は単純には比べられません。
見積もり仕事(例題)前提結果
Gidney と Ekerå(2019年に arXiv、2021年に Quantum 誌)2048ビットの RSA 整数の因数分解(資源見積もりの標準的な例題)正方格子・最近接結合、物理ゲート誤り10−3、表面符号の周期1マイクロ秒、制御系の反応時間10マイクロ秒約2000万個、約8時間[参考資料9]事実
Gidney(2025年、プレプリント)同上同じ前提(誤り0.1%、周期1マイクロ秒、反応時間10マイクロ秒)。近似的な剰余演算、「yoked」表面符号による待機中の論理量子ビットの保管、魔法状態の培養で削減100万個未満、1週間未満[参考資料10]事実
Lee ら(2021年)FeMoco の計算(窒素固定酵素の補因子とされる鉄・モリブデン・硫黄のクラスター。量子化学の難しい例題としてよく使われる)周期1マイクロ秒、物理ゲート誤り0.1%以下約400万個、4日未満[参考資料11]事実
Litinski(2019年)古典的に扱えない100量子ビットの計算(T回数108、T深さ106)物理誤り10−4、周期1マイクロ秒4時間:5.5万個/22分:12万個/1秒:3.3億個[参考資料4]事実
Beverland ら(2022年、プレプリント)3つの大規模な応用量子ビットの大きさ・速さ・制御のしやすさを変数とする、資源見積もりの枠組み実用的な量子優位に、数十万〜数百万個の物理量子ビットが要る[参考資料12]事実

数値は各論文の要旨の記載値です。「RSA」は例題として使われているもので、本稿は攻撃の手順を扱わず、暗号が破られる時期も予測しません(暗号の移行は本シリーズ「耐量子暗号への移行」編)。

よくある誤解:「2000万個が100万個未満になった。技術が実現に近づいた」

半分は正しく、半分は注意が要ります。同じ前提(誤り0.1%、周期1マイクロ秒)のもとで、計算の進め方(アルゴリズムと符号の使い方)の改善で、見積もりが20分の1以上になったのは事実です[参考資料9・10]。 ただし、これは見積もりであって、実機で達成した個数ではありません。現在の実験は、論理量子ビットが数個〜数十個の段階です(次の章)。また、実行時間は8時間から1週間未満へ延びています。量子ビットと時間は、交換されます(上の Litinski の例も同じです)。

つまずきやすいところ:なぜ「時間」と「量子ビット数」が交換されるのか

魔法状態を作る「工場」を増やせば、Tゲートをどんどん実行できて速くなりますが、工場の分だけ量子ビットが要ります。工場を減らせば、量子ビットは少なくて済みますが、Tゲートを待つ時間が増えます。 Litinski の例では、同じ計算が、4時間(5.5万個)、22分(12万個)、1秒(3.3億個)と、時間と量子ビット数がほぼ反比例しています[参考資料4]。グラフの横軸(時間)と縦軸(量子ビット)を見比べると分かります。

多数の物理量子ビットを動かすために、冷却装置と配線、制御機器を複数並べた場面(モジュール型の設計のイメージ)です。実際の装置を示すものではありません。
図5 概念画像(ImageGen生成)。多数の物理量子ビットを動かすために、冷却装置と配線、制御機器を複数並べた場面(モジュール型の設計のイメージ)です。実際の装置を示すものではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
素材技術者の視点①:「100万個」を、どう作り、どう冷やすか

数百万個の物理量子ビットは、1枚のチップには載りません。IBM は、離れたチップどうしを「L カプラ」(マイクロ波のケーブル)でつなぐモジュール型の設計を示しています[参考資料32]事実(企業の説明)。また、チップの製造を300ミリウェハーの半導体工場に移し、新しいチップの製造期間を半分以下にした、と述べています[参考資料31]事実(企業の主張)。 素材・製造の側から見ると、大量・均一・高い歩留まりで量子ビットを作ることと、多数のモジュールを極低温に保つこと(冷凍機、配線、熱の問題)が、論理量子ビットの数を増やす壁になります(本記事による解説)。これらは、本シリーズ「量子コンピュータの材料と製造」編と「極低温と制御」編で扱います。

4. 近年の実験の成果(確認日 2026年10月16日)

ここ数年で、論理量子ビットの実験は、「1個を守る」段階から、「数十個を動かし、論理ゲートや魔法状態を試す」段階に入りました。次の表は、確認できた主な論文です。方式・符号・測り方・後選択の有無がそれぞれ違うので、数字を並べて優劣をつけないでください。査読前のプレプリントは、その旨を書きました。

年・グループ方式・符号確認できた結果読み方の注意
2023(Nature)Harvard、MIT、QuEra ほか中性原子(最大280物理量子ビット)。表面符号、カラー符号、[[8,3,2]]表面符号の距離を3から7へ上げると2量子ビット論理ゲートが改善。[[8,3,2]](3次元)で最大48個の論理量子ビット、論理2量子ビットゲート228個・論理CCZゲート48個のサンプリング回路を実行。誤り検出で物理量子ビットの性能を上回る[参考資料13]事実48個は距離2の符号による検出。訂正された論理量子ビット48個ではない
2024(arXiv)Microsoft、Atom Computing ほか中性原子イッテルビウム(256量子ビット)24個の論理量子ビット(48原子)のもつれを作り、平均1.8個の紛失原子を訂正。最大28個の論理量子ビット(112原子)で Bernstein–Vazirani のアルゴリズムを、物理より良い誤り率で実行[参考資料15]事実プレプリント。原子の紛失を「検出できる誤り」に変える設計(消失変換)を利用
2025(Nature)Harvard、MIT、QuEra ほか中性原子(最大448原子)。表面符号、[[15,1,3]]、[[7,1,3]]、[[16,6,4]]4周期の確認回路で2.14(13)倍の「しきい値の下」。横断的ゲートと格子手術による論理もつれ。[[15,1,3]]の符号で任意角度の合成。数十個の論理量子ビットと数百回の論理テレポーテーション[参考資料14]事実しきい値の下の確認は4周期。万能な計算の部品を試した実験で、深い計算の実行ではない
2025(Nature)Harvard、MIT、QuEra ほか中性原子。カラー符号 距離3・5魔法状態の蒸留を論理量子ビットで実現。距離3と距離5のカラー符号で、出力の魔法状態の論理忠実度が入力より向上[参考資料19]事実蒸留の部品の実験。出力の誤り率が計算に足りる水準かは別
2025(Physical Review X)Quantinuumトラップイオン。15量子ビットの Reed–Muller 符号から7量子ビットの Steane 符号へ「符号切り替え」Steane 符号で魔法状態を82.58%の確率で作り、不忠実度は最大5.1(2.7)×10−4。操作の主要な誤りより2.7倍以上低い[参考資料20]事実成功した場合のみの値(成功確率つき)。検出と選別を含む
2025(Nature)Google Quantum AI超伝導量子ビット。カラー符号 距離3・5論理ランダム化ベンチマークで、横断的クリフォードゲートが加える誤りは0.0027(3)。魔法状態の注入は後選択(約75%保持)で忠実度99%超。距離3のカラー符号どうしで格子手術により論理状態を移し、忠実度86.5(1)〜90.7(1)%[参考資料30]事実魔法状態の99%超は後選択つき。格子手術の忠実度は約9割で、計算に足りる水準ではない
2026(Nature)Quantinuum、Microsoftトラップイオン(QCCD)。12量子ビット符号(論理2)、16量子ビット符号(論理4)誤り検出と後選択で、論理誤り率が複数の物理的な基準より11倍〜800倍低い[参考資料16]事実後選択を含む。「訂正」ではなく「検出」による改善
2026(arXiv)Quantinuumトラップイオン Helios(98量子ビット)。アイスバーグ符号の連結48〜94個の論理量子ビットで、状態準備・測定、QEC 周期、論理ゲート、GHZ 状態、量子磁性の3次元 XY モデルの部分的耐故障シミュレーションが、物理量子ビットより良い性能(ブレークイーブン超え)[参考資料17]事実プレプリント。後選択を含む。訂正は48個、検出は94個
2026(arXiv、2026年9月)Quantinuumトラップイオン Helios。[[20,2,6]] の C₄-Helix 符号反復訂正で1論理量子ビット・1周期あたり 4.6+6.2−2.6×10−5。2論理量子ビットのクリフォード群を能動訂正のもとで評価し、2量子ビット論理クリフォードあたり 2.8+1.0−1.6×10−4。距離5の表面符号とつなぎ、3論理量子ビットの GHZ 状態の忠実度の下限が99.925%。いずれも後選択なしで物理より良い[参考資料18]事実プレプリント。符号の設計は「早期の耐故障の段階」向けで、魔法状態を含む万能計算の実演は要旨に書かれていない
2026(arXiv、2026年6月)超伝導量子ビット。距離3の表面符号どうしの格子手術論理ベル状態を作り、論理2量子ビットの Deutsch–Jozsa アルゴリズムを実行。魔法状態の注入とゲートテレポーテーションで論理 RX(π/4) の忠実度0.943(誤りが検出されなかった条件つき)[参考資料21]事実プレプリント。1周期あたりの論理誤りは約3%(リークの除外後)と大きい
2026(arXiv、2026年6月)トラップイオン。9種類の符号(qLDPC、トポロジカル、連結)を1台で18量子ビットで4つの論理量子ビットを符号化する qLDPC 符号で、以前の超伝導の類似の実演より最大9倍良い論理誤り率。一部でブレークイーブン[参考資料22]事実プレプリント。比較対象は別の装置・別の条件

数値は各論文の要旨・本文の記載値です(表記は原論文のまま)。「2026年9月・6月」のプレプリントは査読前で、内容が変わる可能性があります。表の整理は本記事のものです。

物理量子ビット数と論理量子ビット数(実験、検出のみ、提案・シミュレーション) 10 100 1000 1 10 100 1000 物理量子ビット数(対数目盛) 論理量子ビット数(対数目盛) 1:1(物理と論理が同数) 10:1 100:1 Google d=7(記憶) Quantinuum 2026(訂正48) Quantinuum 2026(検出94) C4-Helix [[20,2,6]] 12量子ビット符号(論理2) 16量子ビット符号(論理4) Atom/MS 24 Atom/MS 28 Harvard 2023(検出48) IBM gross [[144,12,12]] MS 4D [[96,6,8]] mitten [[300,60,14]] QuEra [[1152,580]] QuEra [[2304,1156]] 実験:誤り訂正(捨てずに直す) 実験:誤り検出・後選択を含む 提案・シミュレーション(実機ではない) ※ 数字は各論文・発表の記載値。記憶か計算か、後選択の割合、測った量が違うので、点の上下で優劣をつけないでください。 ※ Harvard 2023 の「48」は距離2の符号 [[8,3,2]] による誤り検出。Atom/MS は紛失原子の訂正と検出を併用。分類は本稿の整理。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。主な実験と提案の、物理量子ビット数(横軸)と論理量子ビット数(縦軸)の対数グラフです[参考資料1・13・15〜18・23・27・28]。実験(緑と橙)と、実機ではない提案・シミュレーション(紫の○)を区別しています。分類は本稿の整理です。
つまずきやすいところ:図の見かた

横軸が物理量子ビット数、縦軸が論理量子ビット数です。右下に行くほど「物理が多くて論理が少ない」(守りが厚い)、左上に行くほど「物理に近い数の論理」(守りが薄い、または検出のみ)です。 緑は「訂正」の実験、橙は「検出・後選択」を含む実験、紫の○は実機ではない提案とシミュレーションです。実験の点は、図の左下に集まっています。紫の○(右上)は計算で期待される値で、実機の結果ではありません。

まだ確認できていないこと:本稿が確認した範囲では、誤り訂正された論理量子ビットの上で、非クリフォードゲートを含む深い計算を、実時間のデコードと組み合わせて実行した実験は見つけられませんでした。上の実験の多くは、部品(記憶、ゲート、魔法状態)を一つずつ試す段階です。

5. 耐故障計算に必要なもの ― 論理ゲートと魔法状態

(1) 「耐故障」とは

耐故障(フォールトトレラント)とは、誤り訂正の手順そのものが、ときどき間違えても大丈夫、さらに誤りが広がらないように演算を進める設計のことです。Preskill は、「訂正の途中でたまに間違えても、回復はうまく働く」「符号化した情報は、誤りが深刻に広がらないまま処理できる」と説明しています事実[参考資料2]。 たとえば、1つの誤りが、演算のたびに2つ、4つと増えていくと、訂正が間に合いません。そうならないように、論理ゲートは慎重に作ります。

(2) 論理ゲートの作り方 ― 3つの方式

方式考え方長所注意実験の例
横断的ゲート2つの符号ブロックの、対応する物理量子ビットどうしに、同じ操作をかける誤りが広がらない。操作が簡単誤り検出のできる符号では、横断的ゲートだけで万能な計算はできない(Eastin–Knill の定理)[参考資料8]事実Google のカラー符号:論理ゲートが加える誤り0.0027(3)[参考資料30]
格子手術2つのパッチをつなげて間の検査を測り、また離す(下の図)表面符号の隣どうしの結合だけで、論理CNOTなどを作れる[参考資料3・4]事実時間がかかる(測定を何周期か繰り返す)距離3のカラー符号どうしで論理状態を移す、距離3の表面符号どうしの論理ベル状態[参考資料30・21]
符号切り替え1つの符号で作った状態を、別の符号に移す符号ごとに得意なゲートを使い分けられる切り替えの手順そのものの誤りも抑える必要があるReed–Muller 符号から Steane 符号へ[参考資料20]

方式の整理は本記事の解説です(出典は各セルの参考資料)。実験の欄は、第4章の表の結果に対応します。

格子手術:2枚のパッチを「つなげて測り、また離す」 ① 論理量子ビットが2つ ② つなげて、間の検査を測る ③ 離す 論理量子ビットA 論理量子ビットB 1つの大きなパッチになる (間の領域の検査の積を測る) A B 測定の結果が残る つなげて測るのは、2つの論理量子ビットの「積」(たとえば ZZ や XX)です。測った結果で、2つの間にもつれが作られます。 この操作の組み合わせで、論理CNOTゲートなどが作れます[参考資料3・4]。 個々のデータ量子ビットを直接いじらず、検査の測定だけで進むのが特徴です。 ※ 概念図。パッチの大きさ、検査の細部は省略した説明用の絵で、特定の論文の回路ではありません。
図7 概念図(ベクター作図)。格子手術のイメージを示した概念図です[参考資料3・4]。2つの表面符号のパッチをつなげて間の検査を測り、また離して、論理演算を行います。細部は省略した説明用の絵です。

(3) クリフォードゲートと、Tゲートの違い

論理ゲートには、作りやすいものと、作るのが特に難しいものがあります。やさしく言うと、矢印を「90度刻み」で回す操作(Hadamard、S、CNOT など。クリフォードゲートと呼びます)は、多くの符号で作りやすい一方、45度のような「中途半端な」回転(Tゲート)は作りにくいのです。

理由は、図のとおりです。クリフォードゲートだけでは、矢印は北・南・東・西・手前・奥の「6方向」にしか行けません。45度の回転が加わって初めて、任意の向きに近づける組み合わせが作れます。 そして、Eastin と Knill が示したように、誤りを検出できる符号では、横断的なゲートだけで万能にはできません[参考資料8]。Tゲートには、別の方法が要ります。 クリフォードゲートに T ゲートを加えると万能な計算ができる、という整理は、耐故障計算の総説でも説明されています[参考資料45]事実。

矢印の「90度刻み」だけでは足りない:Tゲートが要る理由 90度刻み(クリフォードゲート)だけ 北 南 東 西 45度の回転(Tゲート)を足すと 北 南 東 西 クリフォードゲート(H、S、CNOTなど)だけでは、 矢印は北・南・東・西・手前・奥の「6方向」にしか行けない (手前と奥は図の面に垂直で、中心の○で示す) 45度の回転(Tゲート)が加わると、 赤い○のような「中間の向き」にも行ける。 その組み合わせで、任意の向きに近づける Tゲートは、論理量子ビットの上では「作るのが特に高くつく」ゲート。その原料が魔法状態です(次の図)。
図8 概念図(ベクター作図)。クリフォードゲート(90度刻み)だけで行ける6方向と、45度の回転(Tゲート)を加えたときの中間の向きを、矢印の図で示した概念図です。球を真横から見た断面で描いています。

(4) 魔法状態 ― Tゲートの「使い捨ての原料」

Tゲートを論理量子ビットの上で行う標準的な方法は、魔法状態という特別な状態を、使い捨ての部品として使うことです[参考資料6]。たとえるなら、特殊な型を、別の工場で丁寧に作って運び込み、1回使うごとに消費するようなものです。 たとえには限界があります。魔法状態は量子の状態で、コピーできません。使うたびに、新しく作る必要があります。

問題は、魔法状態を、必要な精度で作ることです。近くにあるクリフォードゲートで作った魔法状態は、そのままでは精度が足りません。そこで、蒸留という方法を使います。 粗い魔法状態を多数集めて検査し、1つでも食い違いが出たらそのロットを捨て、通れば、精度の高い1個にします(下の図)。15個から1個を作る蒸留では、出力の誤りが約 35p³ になります(Litinski の説明[参考資料5]。元の方式は Bravyi と Kitaev[参考資料6])。

魔法状態:粗い15個から、精度の高い1個を取り出す 誤り p の魔法状態 15個 例:p = 10-3 15対1 蒸留 15個を検査して、 1つでも食い違いが出たら そのロットは捨てる 精度の高い 魔法状態 1個 誤り ≈ 35p³ Tゲート (魔法状態は 使い捨て) 数値の例(本稿の計算):35 × (10-3​)³ = 3.5 × 10-8​。つまり 10-3​ の粗い状態が、1回の蒸留で約 10-8​ になる。 蒸留の出力をもう一度蒸留すると 35 × (3.5×10-8​)³ ≈ 1.5 × 10-21​(主要な項だけの理想的な計算で、他の誤りは含まない)。 代わりに近年は、1個の状態を少しずつ「育てる」魔法状態の培養が提案された(Gidney ら、2024)。 培養は同じ精度の蒸留より、使う量子ビットと時間の積が約1桁少ない、と著者らはシミュレーションで見積もる[参考資料7]。 ※ 35p³ は、15対1 蒸留で3つの誤りが検出されずに通り抜ける組み合わせが35通りあることによる(Litinski の説明[参考資料5])。 ※ 元の方式は Bravyi と Kitaev による[参考資料6]。
図9 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。15対1の魔法状態蒸留の流れと、出力の誤り約35p³の数値例です[参考資料5・6・7]。数値は主要な項だけの理想的な計算で、実機の結果ではありません。
つまずきやすいところ:なぜ「35p³」だと嬉しいのか

p=10−3(0.1%)とすると、p³=10−9で、35を掛けても 3.5×10−8 です。入力の誤りが3乗になるので、わずかに精度を上げるだけで、出力は急に良くなります。 これが、蒸留が実用的な理由です。ただし、蒸留には、多数の量子ビットと時間が要ります。Litinski は、蒸留で使う論理量子ビットの大半を、低い符号距離で符号化できると示し、コストは思われているほど大きくない、と論じました[参考資料5]。

近年は、蒸留とは別に、魔法状態の培養が提案されました。1つの状態を、表面符号のパッチの中で、少しずつ大きさと信頼性を育てる方法です。Gidney らは、10−3の一様な回路雑音のもとで、論理誤り率2×10−9に達するのに、従来の方法より約1桁少ない量子ビット×周期でよい、とシミュレーションで見積もり、「蒸留はこれ以上必要ない可能性もある」と書いています[参考資料7]事実(プレプリント。著者の見積もり)。 Gidney の2025年の見積もり(第3章)も、この培養を使って魔法状態の工場の領域を減らしています[参考資料10]。

(5) 魔法状態の実験はどこまでか

  • 蒸留:中性原子で、距離3と5のカラー符号の魔法状態を蒸留し、出力の論理忠実度が入力より向上しました[参考資料19]事実
  • 符号切り替え:トラップイオンで、Steane 符号の魔法状態を82.58%の確率で作り、不忠実度は最大5.1(2.7)×10−4でした[参考資料20]事実
  • 注入(超伝導):Google のカラー符号で、魔法状態の注入が、後選択(約75%保持)で忠実度99%超でした[参考資料30]事実
  • ゲートテレポーテーション:2026年のプレプリントで、距離3の表面符号に、魔法状態の注入とゲートテレポーテーションで、論理 RX(π/4) を、忠実度0.943(誤りが検出されなかった条件つき)で実現しました[参考資料21]事実

どれも「部品が動いた」段階です。必要な精度(たとえば10−9〜10−12)の魔法状態を、必要な速さで、大量に供給できることは、まだ示されていません(本稿の確認範囲)。

(6) 古典の処理と、時間

Tゲートを魔法状態で実行すると、その結果を測って、次の演算を決める必要があります。測定結果を読み、デコードし、次の命令に反映するまでの時間(反応時間)が、計算の速さを決めます。 第3章の見積もりでは、制御系の反応時間を10マイクロ秒と仮定しています[参考資料9・10]。Litinski の例では、T深さが106の計算が1秒で終わるには、1層あたり1マイクロ秒以下で進める必要があります(本稿の計算)。そのとき、量子ビットは3.3億個必要です[参考資料4]。 つまり、量子の部品だけでなく、高速な古典の処理(デコーダ、制御)が、耐故障計算の速さの上限を決めます。前の記事のデコーダの話がそのままつながります。

6. qLDPC など新しい符号の位置づけ

表面符号は、実装しやすい代わりに、論理量子ビット1個に 2d²−1 個もの物理量子ビットが要ります(前の記事)。そこで、物理量子ビットを減らせる新しい符号が研究されています。代表がqLDPC 符号(量子低密度パリティ検査符号)です。 qLDPC 符号は、表面符号と同じく、各検査が少数の量子ビットだけを見ます。違いは、検査の結び方が離れた量子ビットにもまたがる点で、これによって、多数の論理量子ビットを少ない物理量子ビットで守れる可能性があります[参考資料25]事実。 理論の面では、Panteleev と Kalachev が、「漸近的に良い」(距離も符号化率も、量子ビット数に比例して大きくできる)qLDPC 符号が存在することを示しました[参考資料44]事実。

符号によって、量子ビットどうしの「つなぎ方」の要求が違う 表面符号:隣どうしだけ(平面) 1層の平らな配線で足りる gross 符号など(qLDPC):離れた量子ビットともつなぐ 2層の配線:長い結合は上の層へ gross 符号の測定回路は、次数6の結合を、2つの平面グラフに分けて実装できると示されている[参考資料23]。 IBM は、離れた量子ビットをつなぐ「Cカプラ」のために、低損失の配線層を複数使う設計を説明している[参考資料31]。 中性原子やイオンでは、原子やイオンを動かして、全結合に近いつなぎ方で同様の符号を狙う(第6章)。
図10 概念図(ベクター作図)。表面符号の平面の結合と、gross 符号など qLDPC 符号が必要とする長距離の結合(2層の配線)を対比した概念図です[参考資料23・31]。実際のチップの配置を示すものではありません。

(1) IBM の gross 符号 ― 提案とその主張

Bravyi らは、gross 符号[[144,12,12]]を含む qLDPC 符号の族を使った、耐故障な記憶を示しました。標準的な回路雑音モデルでしきい値0.8%と、表面符号に並ぶ水準で、1回の症状測定は深さ7の隣接CNOTの回路で行え、必要な結合は次数6のグラフ(2つの平面グラフに分けられる)です事実[参考資料23]。 物理誤り0.1%を仮定した回路レベルのシミュレーションで、12個の論理量子ビットを約100万周期保つのに、物理量子ビットは288個です。同じ抑制を表面符号で実現すると、約3000個かかる、と著者は見積もっています[参考資料23]。これは記憶の提案と見積もりで、実機での実演ではありません。

IBM は、この符号を使った計算機の設計「Tour de gross」も示し、同じ物理量子ビット数で、表面符号のアーキテクチャより約1桁大きな論理回路を実行できると見積もっています[参考資料24]事実(プレプリント。企業の見積もり)。 また、IBM は2025年11月に、qLDPC 符号に必要なプロセッサの部品を示す実験用チップ「Loon」を発表しました(企業の主張)[参考資料31]。離れた量子ビットをつなぐ「Cカプラ」のために、低損失の配線層を複数使う設計です。

(2) 動かせる原子・イオンでの高レート符号

中性原子やトラップイオンは、原子やイオンを動かして、離れた量子ビットどうしをつなげられる(全結合に近い)ので、qLDPC 符号と相性が良いと考えられています。Xu らは、原子を並べ替えることで、qLDPC 符号の遠距離の結合を実現する方法を提案しました[参考資料26]事実。 QuEra、Harvard、MIT の2026年のプレプリントは、符号化率が1/2を超える超高レートの符号を示しています。[[1152,580,≤12]](物理1152個で論理580個)で、物理誤り0.1%の回路レベルのシミュレーションで、1論理量子ビット・1周期あたり 2.9×10−11です[参考資料28]事実(記憶のシミュレーション。実験ではない)。この構成は、Kasai の新しい構成に基づきます[参考資料29]。QuEra 自身も、これは記憶の結果で、耐故障計算のすべての部品が揃ったわけではない、と書いています[参考資料46]。

符号の種類物理:論理の例(本稿の計算)つなぎ方の要求状況(確認日 2026年10月16日)
表面符号距離7:101:1。距離27:1457:1隣り合う4個だけ(平面)実験が最も進んでいる。論理ゲートは格子手術[参考資料1・3・4]事実
カラー符号距離3・5の実験隣どうし(検査は複雑)横断的なクリフォードゲートが可能。Google が超伝導で実験[参考資料30]事実
qLDPC(gross 符号)24:1(288:12)次数6、2つの平面グラフに分けられる(長距離の結合)提案とシミュレーション。実機は未確認[参考資料23・24]未確定/将来
高レート qLDPC(QuEra ほか)約2:1原子の並べ替えで長距離をつなぐシミュレーション[参考資料28]未確定/将来
4次元幾何符号(Microsoft)16:1([[96,6,8]])全結合に近い(中性原子、イオン、光など)理論と見積もり。Microsoft は、近い将来に論理50個の構成に使えると説明(企業の主張)[参考資料27]未確定/将来
アイスバーグ符号の連結(Quantinuum)約2:1(訂正)〜約1:1(検出)全結合(イオンを動かす)実験(プレプリント)。後選択を含む[参考資料17]事実
ボソニック符号(猫量子ビット)+外側の符号―隣どうしAWS が、距離5の繰り返し符号を外側に使った実験を Nature に報告(前の記事)[参考資料43]事実

比は単純な割り算(本稿の計算)。符号の距離・論理誤り率・測る内容が違うので、比較は同じ論理誤り率で行う必要があります(第2章)。

よくある誤解:「qLDPC を使えば、量子ビットは10分の1で済む」

条件つきです。IBM は、gross 符号が必要な物理量子ビットを「約90%減らす」と述べています[参考資料32](企業の主張)。この数字は、記憶のプロトコルの回路レベルのシミュレーションで、表面符号の約3000個と比べたものです[参考資料23]。 論理ゲートまで含めた全体の比較は、設計と見積もり(Tour de gross)であって、実機の結果ではありません[参考資料24]。また、長距離の結合を作る配線と、その損失、デコードの速さという、別の難しさがあります。 正しくは、「qLDPC は、量子ビット数を大きく減らせる可能性のある、有力な提案。ただし、実機での実証は途中」です。

素材技術者の視点②:長距離の結合は、「配線層の材料」の問題になる

超伝導量子ビットで qLDPC 符号を作るには、離れた量子ビットをつなぐ長い結合が要ります。IBM は、この「Cカプラ」のために、低損失の配線層を複数使う、と説明しています[参考資料31]事実(企業の説明)。 配線層の誘電体は、量子ビットの電場が染み出す場所の一つです。前の記事で見た Google の論文は、寿命の改善を、製造技術の改善と「参加率」の設計によると書いています。同じ考え方は、配線層の絶縁膜にも当てはまると考えられます(本記事による解説・推測)。つまり、層間の絶縁膜の損失、層ごとの欠陥密度、貫通する接続部の質が、新しい符号を超伝導で実現できるかを左右する材料の課題になりえます。

素材技術者の視点③:方式によって、「材料の課題」の形が違う

超伝導は極低温の冷凍機と配線、材料の欠陥(前の記事)が課題です。トラップイオンでは、Quantinuum が、Apollo のイオントラップのチップは、標準的な CMOS の製造技術で作り、CMOS の電子回路で制御する、と説明しています[参考資料35]事実(企業の説明)。IonQ は、ダイヤモンドの薄膜を使って、ダイヤモンドの量子デバイスを産業規模で製造できるようにする、と述べています[参考資料34]事実(企業の主張)。 中性原子は、極低温の冷凍機ではなく、真空とレーザー光(光学部品)が中心です。論理量子ビットを増やす壁は、材料の欠陥よりも、光学・真空・制御電子回路の量産に移ります(本記事による解説)。 方式ごとに、素材技術者の関わる場所が違う、という点を押さえておくと、各社の発表が読みやすくなります。

7. ロードマップと第三者評価(未確定/将来)

各社は、耐故障量子計算の実現に向けた計画を公表しています。以下はすべて計画・目標で、達成済みの事実ではありません未確定/将来。計画は更新されます。論理量子ビットの数え方(誤り検出か訂正か、距離、論理誤り率)が、公表資料の範囲では確認できないことも多く、数字を並べて優劣をつけられません。

計画の年表:紫の○は「計画」で、達成済みの事実ではない(確認日 2026年10月16日) 2025 2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033 IBM Microsoft と Atom Computing Quantinuum IonQ Google Quantum AI DARPA QBI Loon 発表 Kookaburra Cockatoo Starling:論理200・1億ゲート Magne:2027年初め、物理1,200超 Apollo:2020年代末、論理 数百個 2030年:物理200万個・論理8万個 次の目標:論理誤り 100万周期に1回未満(年は示されていない) 2033年:産業上有用な機の可否を判定 発表済み(企業の主張) 計画・目標(未確定/将来)
図11 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。各社・機関が公表した計画の年表です(確認日 2026年10月16日)[参考資料31〜40]。紫の○は計画・目標で、達成済みの事実ではありません。緑は企業が発表済みとする項目です(企業の主張)。
企業・機関計画・目標(公表資料の趣旨)確認できた最新の状況
IBM2029年に IBM Quantum Starling:200個の論理量子ビットで1億回の演算。その先に Blue Jay(2000個、10億回の演算)。途中に Loon(2025年)、Kookaburra(2026年)、Cockatoo(2027年)[参考資料32・33]未確定/将来2025年11月に Loon を発表(企業の主張)[参考資料31]。確認日時点で、Kookaburra の完成の発表は確認できなかった(IBM の技術ページの提供中の一覧にない)[参考資料33]
Microsoft、Atom ComputingMagne(Level 2「Resilient」の量子コンピュータ)。Atom Computing の中性原子ハードウェア(物理量子ビット1,200超)と Microsoft のソフトウェア。デンマークの QuNorth が運用。2027年初めに稼働の見込み[参考資料38・39]未確定/将来2026年8月の Microsoft のブログが、Magne の稼働は2027年初めと記載。Level 2 は Microsoft の分類(企業の用語)
Quantinuum2020年代の末までに、Apollo:数百個の論理量子ビット、論理誤り率10−6より良い、数百万回の演算(2024年のブログ)[参考資料35]未確定/将来2026年3月のブログは、Helios で48個の誤り訂正と最大94個の誤り検出の論理量子ビットを報告(企業の説明)[参考資料36]。Apollo の日付の更新は、公式資料では確認できなかった
IonQ2030年までに、物理量子ビット200万個、論理量子ビット8万個(物理:論理=25:1。本稿の計算)[参考資料34]未確定/将来公式ロードマップの目標(企業の目標)。論理量子ビットの定義(符号・距離・論理誤り率)は、ページでは確認できなかった
Google Quantum AI次のマイルストーン:論理誤り率が100万周期に1回未満の、長寿命な論理量子ビット(年は示されていない)[参考資料37]未確定/将来ブログは、Willow での「しきい値の下」の誤り訂正(2024年12月に発表)に続き、カラー符号や動的な回路の実験が、このマイルストーンに近づくものだと書く(企業の説明)
DARPA(量子ベンチマーク計画 QBI)産業的に有用な量子コンピュータを2033年までに作れるかを判定する計画。Stage C は、設計どおりに作れ運用できることを政府と検証する段階(最大3億ドル)[参考資料40]未確定/将来DARPA のページ(確認日)の「現在参加中」:Stage C は Atom Computing、Diraq、IBM、IonQ、Microsoft、PsiQuantum。Stage B は Nord Quantique、Photonic、Quantinuum、Quantum Motion、QuEra、Silicon Quantum Computing、Xanadu。Stage A は Google Quantum AI、Quandela

上の表は、公表資料の趣旨の要約です。DARPA のページは、QBI は「参加者の競争ではない」と明記し、段階は検証の進み具合を表します(順位ではありません)。企業の計画は、各社の公式資料で確認し、日付は確認日時点のものです。

つまずきやすいところ:計画の「論理量子ビット」を、どう読むか

たとえば IBM の「論理200個、1億回の演算」は、1個あたり、平均50万回の演算に相当します(1億÷200。本稿の計算)。IonQ の「論理8万個」は、演算の回数も、論理誤り率も、公式ページでは確認できませんでした。 計画を読むときは、「論理量子ビット○個」だけでなく、何回の演算を、どの論理誤り率で実行できるのかを探してください。個数だけでは、計算の大きさは分かりません。

8. 確認できなかったこと/まとめ

確認できなかったこと

  • 深い耐故障計算の実機での実演:誤り訂正された論理量子ビット上で、非クリフォードゲートを含む深い計算を、実時間デコードとともに行った実験は、本稿の確認範囲では見つけられませんでした。
  • IBM の Kookaburra の完成:確認日時点で、完成を示す発表は確認できませんでした。
  • qLDPC 符号の実機での実証(gross 符号など):提案とシミュレーションは確認しましたが、gross 符号そのものの実機での実演は確認できませんでした(トラップイオンの qLDPC 符号の実験は、プレプリントで確認)。
  • 各社の計画の論理量子ビットの定義:IonQ などの公式ページで、符号・距離・論理誤り率の定義は確認できませんでした。
  • ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況:前者は有料のため、題名と段階のみ確認しました。後者は、作業グループのサイトからは発行済みかを確認できませんでした。
  • 2026年のプレプリントの査読:Quantinuum、超伝導の格子手術、トラップイオンの qLDPC 符号は、確認日時点で査読済みの版を確認できませんでした。
この記事のまとめ
  • 論理量子ビットの数は、条件つきで読みます。誤り訂正か検出か、符号と距離、論理誤り率、記憶か計算か、後選択の有無を添える必要があります。98個の物理量子ビットで、訂正は48個、検出は最大94個でした事実
  • 必要な量子ビット数は、前提で桁が変わります。RSA-2048 の例題で、2000万個(2019年の見積もり)から100万個未満(2025年)。FeMoco は約400万個。時間と量子ビット数は交換されます事実
  • 守ったまま計算するには、論理ゲートと魔法状態が要ります。Tゲートの原料の魔法状態は、15対1の蒸留で誤りが約35p³になります。実験は部品の段階で、必要な精度と量はまだ示されていません事実
  • qLDPC など新しい符号は、物理量子ビットを減らせる有力な提案ですが、長距離の結合が要り、実機での実証は途中です。紫の○(提案・シミュレーション)と実験を区別します事実
  • 各社の計画は、すべて「未確定/将来」。IBM は2029年に論理200個、IonQ は2030年に論理8万個などと述べますが、達成済みの事実ではありません未確定/将来

9. 評価・標準の読み方

論理量子ビットと耐故障計算の進み具合は、論理誤り率(論理量子ビットが、1周期や1回の演算で、どれだけ壊れるか)、論理量子ビット数(検出か訂正かを区別して)、論理ゲートの忠実度、魔法状態の品質、資源見積もり(必要な物理量子ビット数と時間)で測ります。 どれも、符号、距離、後選択の有無、測った内容(記憶か計算か)を添えないと意味が決まりません。標準(規格)は、論理量子ビットの数え方を直接定めたものは、本稿では確認できませんでした。確認日は2026年10月16日です。

評価項目代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典)標準・指針(ISO/IEC・IEEE など)読み方の注意
論理誤り率1周期(または1論理演算)あたりの誤り。Google:距離7で0.143%(記憶)[参考資料1]。C₄-Helix:1論理量子ビット・1周期あたり4.6×10−5(プレプリント)[参考資料18]事実確認できなかった符号、距離、周期数、デコーダ、後選択の有無を必ず添える
論理量子ビット数Quantinuum:訂正48個、検出最大94個[参考資料17]。Harvard 2023:距離2の符号で最大48個(検出)[参考資料13]事実確認できなかった(数え方を定めた標準は確認できなかった)検出か訂正か、距離はいくつか。数字の大きさだけで優劣をつけない
論理ゲートの忠実度論理ランダム化ベンチマーク。Google のカラー符号:横断的クリフォードゲートが加える誤り0.0027(3)[参考資料30]事実確認できなかったゲートの種類(クリフォードか、魔法状態を要するか)を区別する
魔法状態の品質出力の不忠実度と成功確率。Quantinuum:不忠実度が最大5.1(2.7)×10−4、成功確率82.58%[参考資料20]事実確認できなかった成功した場合の値か。必要な精度(10−9前後以下)との差を確認する
資源見積もり物理量子ビットの数と時間。Gidney と Ekerå、Gidney、Lee ら、Litinski。枠組みは Beverland ら[参考資料4・9・10・11・12]事実確認できなかった前提(物理誤り率、周期、反応時間)と仕事の内容を添える。実機の性能ではない
第三者の検証・進み具合DARPA の QBI:Stage A・B・C の評価で、最終的に産業的に有用な機を2033年までに作れるかを検証[参考資料40]事実―段階は検証の進み具合で、順位ではない(DARPA は競争ではないと明記)。Microsoft の Level 1・2・3 は企業の分類
用語・定義―(評価ではなく用語の標準)ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(2024年5月発行。本文は有料)[参考資料41]事実用語の定義を揃える標準。「論理量子ビット」の定義が含まれるかは、本文を確認していない
性能指標・ベンチマークの標準―IEEE P7131(量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案)の作業グループのサイト[参考資料42]未確定/将来標準案の段階。発行状況は確認できなかった

表の整理は本稿の計算(整理)。規格の番号・題名・発行年月は、各機関のページで確認しました(確認日 2026年10月16日)。規格本文は有料のため、題名・適用範囲にとどめています。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • 「論理量子ビット○個」は、検出か訂正か、後選択か、で別の数字です:1つの発表に、検出の数と訂正の数が両方あることもあります。必ず、論理誤り率と距離とセットで読みます
  • 実験と、シミュレーションや計画は、別のものです:図の紫の○(提案・シミュレーション)、各社のロードマップは、達成済みの事実ではありません。企業の発表は「企業の主張」、査読前のプレプリントはその旨を区別しました
  • 資源見積もりは、実機の性能ではありません:誤り率・周期・反応時間などの前提で、桁が変わります。同じ前提のもとで見積もりが減ったことと、実機で達成したこととは、別です
  • 標準は、まだ用語の段階です:ISO/IEC 4879 は用語の標準で、法的拘束力や、性能の合否を決める力はありません(一般に、規格は法令や契約で引用されて初めて拘束力を持ちます。本記事による解説)。ベンチマークの標準(IEEE P7131)は、標準案の段階です

10. 用語集

物理量子ビット
実際の装置の量子ビット。誤りが起きる。
論理量子ビット
多数の物理量子ビットで守った、誤りの少ない量子ビット。
誤り訂正
誤りを見つけて直し、計算を続けること。
誤り検出
誤りを見つけるだけ。疑わしい実行は捨てる(後選択)。
後選択
誤りが検出された実行を捨てて、残りだけを使うこと。
符号距離
気づけない誤りになるまでに必要な、誤りの個数。
論理誤り率
論理量子ビットが、1周期や1演算で壊れる確率。
ブレークイーブン
論理量子ビットが、物理量子ビットより長持ち(または高精度)になる点。
耐故障(フォールトトレラント)
訂正の手順自体が誤っても、誤りが広がらないようにした設計。
論理ゲート
論理量子ビットへの演算。符号を壊さないように作る。
横断的ゲート
符号ブロックの対応する物理量子ビットどうしに、同じ操作をかける方式。
格子手術
2つの表面符号のパッチをつなげて測り、また離して、論理演算を行う方式。
符号切り替え
1つの符号の状態を、別の符号に移す方式。
クリフォードゲート
矢印を90度刻みで回すなど、作りやすい演算(H、S、CNOT など)。
Tゲート
45度の回転。論理量子ビットの上では作るのが特に難しい。
魔法状態
Tゲートを行うための、特別な状態。使い捨ての原料。
蒸留
粗い魔法状態を多数集めて、精度の高い少数にする手順。
培養
1個の魔法状態を、パッチの中で少しずつ育てる方法。
qLDPC 符号
各検査が少数の量子ビットだけを見る、量子低密度パリティ検査符号。
gross 符号
IBM が示した qLDPC 符号の一つ。[[144,12,12]]。
資源見積もり
計算に必要な物理量子ビット数と時間を、前提を置いて見積もること。
反応時間
測定結果を読み、次の命令に反映するまでの時間。
消失変換
誤りを、原子の紛失など「検出できる誤り」に変える設計。
DARPA QBI
産業的に有用な量子コンピュータの実現可能性を検証する、米国の計画。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Google Quantum AI and Collaborators "Quantum error correction below the surface code threshold", Nature 638, 920–926 (2025), DOI 10.1038/s41586-024-08449-y — doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
  2. Preskill J. "Reliable quantum computers", Proc. R. Soc. Lond. A 454, 385–410 (1998), DOI 10.1098/rspa.1998.0167 — doi.org/10.1098/rspa.1998.0167
  3. Horsman D., Fowler A. G., Devitt S., Van Meter R. "Surface code quantum computing by lattice surgery", New J. Phys. 14, 123011 (2012), DOI 10.1088/1367-2630/14/12/123011 — doi.org/10.1088/1367-2630/14/12/123011
  4. Litinski D. "A Game of Surface Codes: Large-Scale Quantum Computing with Lattice Surgery", Quantum 3, 128 (2019), DOI 10.22331/q-2019-03-05-128 — doi.org/10.22331/q-2019-03-05-128
  5. Litinski D. "Magic State Distillation: Not as Costly as You Think", Quantum 3, 205 (2019), DOI 10.22331/q-2019-12-02-205 — doi.org/10.22331/q-2019-12-02-205
  6. Bravyi S., Kitaev A. "Universal quantum computation with ideal Clifford gates and noisy ancillas", Phys. Rev. A 71, 022316 (2005), DOI 10.1103/PhysRevA.71.022316 — doi.org/10.1103/PhysRevA.71.022316
  7. Gidney C., Shutty N., Jones C. "Magic state cultivation: growing T states as cheap as CNOT gates", arXiv:2409.17595 (2024)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2409.17595
  8. Eastin B., Knill E. "Restrictions on transversal encoded quantum gate sets", Phys. Rev. Lett. 102, 110502 (2009), DOI 10.1103/PhysRevLett.102.110502 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.102.110502
  9. Gidney C., Ekerå M. "How to factor 2048 bit RSA integers in 8 hours using 20 million noisy qubits", Quantum 5, 433 (2021), DOI 10.22331/q-2021-04-15-433 — doi.org/10.22331/q-2021-04-15-433
  10. Gidney C. "How to factor 2048 bit RSA integers with less than a million noisy qubits", arXiv:2505.15917 (2025)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2505.15917
  11. Lee J. ほか "Even more efficient quantum computations of chemistry through tensor hypercontraction", PRX Quantum 2, 030305 (2021), DOI 10.1103/PRXQuantum.2.030305 — doi.org/10.1103/PRXQuantum.2.030305
  12. Beverland M. E. ほか "Assessing requirements to scale to practical quantum advantage", arXiv:2211.07629 (2022)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2211.07629
  13. Bluvstein D. ほか "Logical quantum processor based on reconfigurable atom arrays", Nature 626, 58–65 (2024), DOI 10.1038/s41586-023-06927-3 — doi.org/10.1038/s41586-023-06927-3
  14. Bluvstein D. ほか "A fault-tolerant neutral-atom architecture for universal quantum computation", Nature 649, 39–46 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-09848-5 — doi.org/10.1038/s41586-025-09848-5
  15. Reichardt B. W. ほか "Fault-tolerant quantum computation with a neutral atom processor", arXiv:2411.11822 (2024)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2411.11822
  16. Paetznick A. ほか "Improved quantum processor logical error rates via correction and detection", Nature 654, 349–355 (2026), DOI 10.1038/s41586-026-10628-y — doi.org/10.1038/s41586-026-10628-y
  17. Dasu S. ほか(Quantinuum) "Computing with many encoded logical qubits beyond break-even", arXiv:2602.22211 (2026)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2602.22211
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  19. Sales Rodriguez P. ほか "Experimental demonstration of logical magic state distillation", Nature 645, 620–625 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-09367-3 — doi.org/10.1038/s41586-025-09367-3
  20. Daguerre L. ほか "Experimental demonstration of high-fidelity logical magic states from code switching", Phys. Rev. X 15, 041008 (2025), DOI 10.1103/dck4-x9c2 — doi.org/10.1103/dck4-x9c2
  21. Wang Y. ほか "A superconducting surface-code processor with lattice-surgery logical operations", arXiv:2606.06598 (2026)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2606.06598
  22. Tham E. ほか "Breakeven demonstration of quantum low-density parity-check codes", arXiv:2606.06455 (2026)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2606.06455
  23. Bravyi S. ほか(IBM) "High-threshold and low-overhead fault-tolerant quantum memory", Nature 627, 778–782 (2024), DOI 10.1038/s41586-024-07107-7 — doi.org/10.1038/s41586-024-07107-7
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  25. Breuckmann N. P., Eberhardt J. N. "Quantum low-density parity-check codes", PRX Quantum 2, 040101 (2021), DOI 10.1103/PRXQuantum.2.040101 — doi.org/10.1103/PRXQuantum.2.040101
  26. Xu Q. ほか "Constant-overhead fault-tolerant quantum computation with reconfigurable atom arrays", arXiv:2308.08648 (2023)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2308.08648
  27. Aasen D. ほか(Microsoft) "A topologically fault-tolerant quantum computer with four dimensional geometric codes", arXiv:2506.15130 (2025)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2506.15130
  28. Zhao C. ほか(QuEra、Harvard、MIT) "Towards ultra-high-rate quantum error correction with reconfigurable atom arrays", arXiv:2604.16209 (2026)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2604.16209
  29. Kasai K. "Breaking the orthogonality barrier in quantum LDPC codes", Quantum (2026), DOI 10.22331/q-2026-09-09-2205(arXiv:2601.08824) — arxiv.org/abs/2601.08824
  30. Lacroix N. ほか(Google Quantum AI) "Scaling and logic in the colour code on a superconducting quantum processor", Nature 645, 614–619 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-09061-4 — doi.org/10.1038/s41586-025-09061-4
  31. IBM "IBM Delivers New Quantum Processors, Software, and Algorithm Breakthroughs on Path to Advantage and Fault Tolerance", プレスリリース (2025年11月12日)(企業の発表) — newsroom.ibm.com(2025-11-12)
  32. IBM "IBM Sets the Course to Build World's First Large-Scale, Fault-Tolerant Quantum Computer at New IBM Quantum Data Center", プレスリリース (2025年6月10日)(企業の発表) — newsroom.ibm.com(2025-06-10)
  33. IBM "IBM quantum technology"(公式ページ。確認日 2026年10月16日) — ibm.com/quantum/technology
  34. IonQ "IonQ roadmap"(公式ページ。確認日 2026年10月16日) — ionq.com/roadmap
  35. Quantinuum "Technical perspective: By the end of the decade, we will deliver universal, fully fault-tolerant quantum computing", 公式ブログ (2024年9月) — quantinuum.com/blog/technical-perspective…
  36. Quantinuum "Skinny Logic: Quantum Codes Go on a Diet", 公式ブログ (2026年3月4日) — quantinuum.com/blog/skinny-logic-quantum-codes-go-on-a-diet
  37. Google Research "Dynamic surface codes open new avenues for quantum error correction", 公式ブログ — research.google/blog/dynamic-surface-codes…
  38. Microsoft Quantum "From research to product: logical-qubit demonstrations shaping Microsoft's utility-scale quantum software platform", 公式ブログ (2026年8月3日) — quantum.microsoft.com/…/from-research-to-product…
  39. Atom Computing "Building quantum supercomputers with Microsoft"(公式ページ) — atom-computing.com/building-quantum-supercomputers-with-microsoft/
  40. DARPA "Quantum Benchmarking Initiative (QBI)"(公式ページ。確認日 2026年10月16日) — darpa.mil/research/programs/quantum-benchmarking-initiative
  41. ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(2024年5月発行)。セルビア規格協会(ISS)の掲載ページで、番号・題名・発行日・「Published」を確認 — iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432(ISO の公式ページは https://www.iso.org/standard/80432.html。当方の環境では自動取得できず、検索結果の記載で確認)
  42. IEEE P7131 作業グループ "Quantum Benchmarking Working Group P7131"(量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を扱う作業グループのサイト) — sagroups.ieee.org/7131
  43. Putterman H. ほか(AWS) "Hardware-efficient quantum error correction via concatenated bosonic qubits", Nature 638, 927–934 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-08642-7 — doi.org/10.1038/s41586-025-08642-7
  44. Panteleev P., Kalachev G. "Asymptotically good quantum and locally testable classical LDPC codes", arXiv:2111.03654 (2021)(プレプリント。STOC 2022) — arxiv.org/abs/2111.03654
  45. Campbell E. T., Terhal B. M., Vuillot C. "Roads towards fault-tolerant universal quantum computation", Nature 549, 172–179 (2017), DOI 10.1038/nature23460 — doi.org/10.1038/nature23460
  46. QuEra Computing "Quantum Error Correction at Record Efficiency: Why Neutral Atoms Are Leading the Way", 公式ブログ (2026年4月20日) — quera.com/blog-posts/quantum-error-correction-at-record-efficiency…

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
最先端の物理操作の誤りは約10−3(2量子ビットゲート99.9%)。距離7の表面符号は101量子ビット。論理誤り10−6に距離27・1457個の外挿Google(2025)
出典1 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
事実
耐故障の考え方:訂正の途中の誤りがあっても回復が働き、符号化した情報を誤りが深刻に広がらずに処理できるPreskill(1998)の要旨
出典2 https://doi.org/10.1098/rspa.1998.0167
事実
格子手術による表面符号の計算。時間と空間のトレードオフ(Litinski:4時間5.5万個、22分12万個、1秒3.3億個。物理誤り10−4、周期1マイクロ秒、T回数108、T深さ106)Horsman ら(2012)、Litinski(2019)の要旨
出典3 https://doi.org/10.1088/1367-2630/14/12/123011
出典4 https://doi.org/10.22331/q-2019-03-05-128
事実
魔法状態蒸留のコストの見直し(低い距離での符号化)。15対1の蒸留の出力誤りが35p³(3つの誤りの検出されない組み合わせが35通り、失敗時は破棄)。元の方式(Bravyi と Kitaev)Litinski(2019)の要旨と本文、Bravyi と Kitaev(2005)
出典5 https://doi.org/10.22331/q-2019-12-02-205
出典6 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.71.022316
事実
魔法状態の培養:蒸留より約1桁少ない量子ビット×周期で、10−3の雑音のもと論理誤り2×10−9。蒸留は不要になる可能性(著者の見積もり、シミュレーション)Gidney ら(2024)の要旨
出典7 https://arxiv.org/abs/2409.17595
事実
誤り検出のできる符号では、横断的ゲートだけの万能な符号は存在しないEastin と Knill(2009)の要旨
出典8 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.102.110502
事実
クリフォードゲートに T ゲートを加える万能計算の整理、魔法状態蒸留と他の方式の比較Campbell ら(2017)の要旨
出典45 https://doi.org/10.1038/nature23460
事実
RSA-2048の因数分解の見積もり:2019年は2000万個・8時間、2025年は100万個未満・1週間未満(前提:誤り0.1%、周期1マイクロ秒、反応時間10マイクロ秒)Gidney と Ekerå(2021)、Gidney(2025)の要旨
出典9 https://doi.org/10.22331/q-2021-04-15-433
出典10 https://arxiv.org/abs/2505.15917
事実
FeMoco:約400万個・4日未満(誤り0.1%以下、周期1マイクロ秒)。3つの大規模応用に数十万〜数百万個Lee ら(2021)、Beverland ら(2022)の要旨
出典11 https://doi.org/10.1103/PRXQuantum.2.030305
出典12 https://arxiv.org/abs/2211.07629
事実
Harvard ほか(2023):最大280物理量子ビット、表面符号の距離3→7で改善、[[8,3,2]]で最大48論理量子ビット(228個の論理2量子ビットゲート、48個の論理CCZ)、誤り検出Bluvstein ら(2024)の要旨
出典13 https://doi.org/10.1038/s41586-023-06927-3
事実
Harvard ほか(2025):最大448原子、2.14(13)倍のしきい値の下(4周期)、横断的ゲートと格子手術、[[15,1,3]]で任意角度の合成、数十個の論理量子ビット・数百回の論理テレポーテーションBluvstein ら(2025)の要旨
出典14 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09848-5
事実
Microsoft と Atom Computing(2024):256量子ビット、24論理(48原子)のもつれ、平均1.8個の紛失原子の訂正、28論理(112原子)の BV アルゴリズムReichardt ら(プレプリント)の要旨
出典15 https://arxiv.org/abs/2411.11822
事実
Quantinuum と Microsoft(Nature、2026):論理誤り率が11倍〜800倍低い、12量子ビット符号(論理2)と16量子ビット符号(論理4)、誤り検出と後選択Paetznick ら(2026)の要旨
出典16 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10628-y
事実
Quantinuum Helios(2026、プレプリント):98量子ビット、[[k+2,k,2]]検出符号と連結符号、48〜94論理量子ビット、後選択、ブレークイーブン超え。論理48(訂正)・64/94(検出)Dasu ら(要旨)、Quantinuum のブログ
出典17 https://arxiv.org/abs/2602.22211
出典36 https://www.quantinuum.com/blog/skinny-logic-quantum-codes-go-on-a-diet
事実
C₄-Helix(2026年9月、プレプリント):[[20,2,6]]、1論理量子ビット・1周期あたり 4.6×10−5、2量子ビット論理クリフォードあたり 2.8×10−4、3論理量子ビットの GHZ 状態の忠実度の下限99.925%、後選択なしBerthusen ら(要旨)
出典18 https://arxiv.org/abs/2609.03194
事実
魔法状態蒸留(距離3・5のカラー符号、出力の忠実度が入力より向上)、符号切り替え(Steane 符号、82.58%、不忠実度5.1(2.7)×10−4)Sales Rodriguez ら(2025)、Daguerre ら(2025)の要旨
出典19 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09367-3
出典20 https://doi.org/10.1103/dck4-x9c2
事実
Google のカラー符号:横断的クリフォードゲートの誤り0.0027(3)、魔法状態の注入で忠実度99%超(後選択、約75%保持)、格子手術による論理状態の移送の忠実度86.5(1)〜90.7(1)%Lacroix ら(2025)の要旨
出典30 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09061-4
事実
超伝導の距離3の表面符号どうしの格子手術(2026年6月、プレプリント):論理誤り0.0365(2)・0.0282(1)(リーク除外後)、論理ベル状態、論理 RX(π/4) の忠実度0.943Wang ら(要旨)
出典21 https://arxiv.org/abs/2606.06598
事実
トラップイオンの9種類の符号(2026年6月、プレプリント):18量子ビットで4つの論理量子ビット、以前の超伝導の類似の実演より最大9倍良く、ブレークイーブンTham ら(要旨)
出典22 https://arxiv.org/abs/2606.06455
事実
gross 符号:しきい値0.8%、深さ7の回路、次数6の結合(2つの平面グラフ)、12論理を約100万周期・288物理(物理誤り0.1%)、表面符号なら約3000個Bravyi ら(2024)の要旨
出典23 https://doi.org/10.1038/s41586-024-07107-7
事実
Tour de gross:同じ物理量子ビット数で、表面符号のアーキテクチャより約1桁大きな論理回路を実行できるとの見積もり(企業の見積もり)Yoder ら(プレプリント)の要旨
出典24 https://arxiv.org/abs/2506.03094
事実
qLDPC 符号が表面符号の代替であること、「漸近的に良い」qLDPC 符号の存在、原子の並べ替えによる qLDPC 符号の実現の提案Breuckmann と Eberhardt、Panteleev と Kalachev、Xu らの要旨
出典25 https://doi.org/10.1103/PRXQuantum.2.040101
出典44 https://arxiv.org/abs/2111.03654
出典26 https://arxiv.org/abs/2308.08648
事実
4次元幾何符号:[[96,6,8]]、論理誤り約10−6(物理10−3、回路レベル雑音)Aasen ら(プレプリント)の要旨
出典27 https://arxiv.org/abs/2506.15130
事実
高レート qLDPC 符号:[[2304,1156,≤14]]で1.3×10−13、[[1152,580,≤12]]で2.9×10−11(物理0.1%、回路レベル雑音のシミュレーション)。記憶の結果であることZhao ら(プレプリント)の要旨、QuEra のブログ、Kasai
出典28 https://arxiv.org/abs/2604.16209
出典46 https://www.quera.com/blog-posts/quantum-error-correction-at-record-efficiency-why-neutral-atoms-are-leading-the-way
出典29 https://arxiv.org/abs/2601.08824
事実
AWS の猫量子ビットと外側の繰り返し符号(距離5)の実験Putterman ら(2025)の要旨
出典43 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08642-7
事実
IBM:Loon の発表、Cカプラのための低損失の配線層、300ミリウェハー工場での製造(製造期間を半分以下)(企業の主張)IBM のプレスリリース(2025年11月12日)
出典31 https://newsroom.ibm.com/2025-11-12-ibm-delivers-new-quantum-processors,-software,-and-algorithm-breakthroughs-on-path-to-advantage-and-fault-tolerance
事実
IBM の計画:Starling(2029年、論理200、1億回の演算)、Blue Jay(論理2000、10億回)、Loon(2025)・Kookaburra(2026)・Cockatoo(2027)、Lカプラ、qLDPC で必要な物理量子ビットを約90%減らすとの主張IBM のプレスリリース(2025年6月10日)、IBM の技術ページ
出典32 https://newsroom.ibm.com/2025-06-10-IBM-Sets-the-Course-to-Build-Worlds-First-Large-Scale,-Fault-Tolerant-Quantum-Computer-at-New-IBM-Quantum-Data-Center
出典33 https://www.ibm.com/quantum/technology
未確定/将来
IonQ の計画:2030年までに物理200万個・論理8万個。ダイヤモンド薄膜によるデバイス製造の主張IonQ の公式ロードマップ
出典34 https://www.ionq.com/roadmap
未確定/将来
Quantinuum の計画:2020年代末までに Apollo(数百個の論理量子ビット、論理誤り10−6より良い、数百万回の演算)。Apollo のイオントラップのチップは CMOS 製造Quantinuum の公式ブログ(2024年9月)
出典35 https://www.quantinuum.com/blog/technical-perspective-by-the-end-of-the-decade-we-will-deliver-universal-fault-tolerant-quantum-computing
未確定/将来
Google の次のマイルストーン(100万周期に1回未満の長寿命な論理量子ビット)、Willow でのしきい値の下の誤り訂正(2024年12月に発表)Google Research の公式ブログ
出典37 https://research.google/blog/dynamic-surface-codes-open-new-avenues-for-quantum-error-correction/
未確定/将来
Magne:Level 2「Resilient」、物理量子ビット1,200超、QuNorth が運用、2027年初めに稼働の見込み。Atom Computing の Level 2 の目標Microsoft Quantum のブログ(2026年8月3日)、Atom Computing のページ
出典38 https://quantum.microsoft.com/en-us/insights/blogs/from-research-to-product-engineering-logical-qubit-demonstrations-shaping-microsoft-utility-scale-quantum-software-platform
出典39 https://atom-computing.com/building-quantum-supercomputers-with-microsoft/
未確定/将来
DARPA の QBI:2033年までの産業的に有用な機の可否の判定、Stage A・B・C の内容と参加者(確認日)、競争ではないことDARPA の公式ページ
出典40 https://www.darpa.mil/research/programs/quantum-benchmarking-initiative
未確定/将来
ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary" が2024年5月に発行(Published)されたことセルビア規格協会(ISS)の掲載ページ
出典41 https://iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432
事実
IEEE P7131 の作業グループが、量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を技術範囲としていること。発行状況は確認できなかった作業グループのサイト
出典42 https://sagroups.ieee.org/7131
未確定/将来
物理:論理の比の表、1457×1000=約146万個、0.920≈12%、35×(10−3)³=3.5×10−8、2段目 約1.5×10−21、IBM の1億÷200=1個あたり50万回、IonQ の200万÷8万=25:1、Litinski の T 深さ106・1秒から導く1層1マイクロ秒以下本稿の計算(仮定は本文に明記)。実機の結果ではない本稿の計算
深い耐故障計算の実機での実演、Kookaburra の完成、gross 符号の実機での実証、各社の計画の論理量子ビットの定義、ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況、2026年のプレプリントの査読本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない解説
「書類を複数の金庫に預ける」「使い捨ての特殊な型」というたとえ、「比が小さいほど良い、ではない」「配線層の絶縁膜の損失が新しい符号の課題になりうる」「方式ごとに材料の課題の形が違う」という読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図1と図5がImageGen生成の概念画像であること。他の図が実データの観察ではなく説明のための作図であること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(査読論文、arXiv の論文、企業・DARPA の公式ページ、ISO 規格の掲載ページ)に限定しています。企業の計画・発表は「企業の主張」「未確定/将来」として区別しました。 資源見積もりと数値例は仮定を置いた試算で、実機の結果ではありません。 深い耐故障計算の実機での実演、IBM の Kookaburra の完成、gross 符号の実機での実証、各社の論理量子ビットの定義、ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況、2026年のプレプリントの査読については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図5はImageGen生成の概念画像です。

図版更新:2026年10月17日。本文・出典整理表のベクター作図という表記は、保存した元SVGの由来を示します。現在の主図の形式と読み方は各図下の説明を参照してください。ImageGen画像は実測や実在製品の写真ではなく、元SVG・数値・出典は展開して確認できます。