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オラクル 企業解説

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COMPANY PROFILE / AI・機械学習

オラクル
― データベースの会社から、AI向けGPUクラウドの大規模事業者へ。受注残と設備投資が一気に膨らんだ

2026年5月期のForm 10-Kには、RPO(受注残)6,380億ドル(前年は1,380億ドル)と設備投資557億ドル(前年は212億ドル)が載っています。2026年8月末にはRPOは6,640億ドルになりました。どちらもAI専用の数字ではありませんが、OCIの大型AI契約が全社の財務に表れた通期です。本稿は、会社全体ではなくAI・機械学習に関わる部分(OCI、AIデータセンター、AI向けデータベース)に絞り、何を投じ、誰と組み、何を目指しているかを一次情報から整理します。契約・投資・データセンターの計画は確認日(2026年10月15日)時点の公表内容で、未確定/将来として扱います。会計年度は5月期です。

構成:Oracleが米国SECに提出した2026年5月期 Form 10-K・2027年5月期第1四半期 Form 10-Q・Form 8-K、およびOracleの公式発表・公式ページを一次情報として使用/確認日 2026年10月15日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるOracleと、AI・機械学習での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)
  5. AI・機械学習にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はAI・機械学習で何を目指しているか
  9. AI・機械学習分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるオラクルと、AI・機械学習での立ち位置

正式名称Oracle Corporation日本語表記はオラクル。日本法人は別会社
本社・上場米国テキサス州オースティン
NYSE: ORCL
会計年度は5月31日に終わる
この分野での区分クラウド・インフラ(主)
プラットフォーム・導入(従)
データベースとアプリケーションにAIを組み込む
中心となる製品OCI(Oracle Cloud Infrastructure)
Oracle AI Database
GPUクラウドとAI向けデータ基盤
クラウドインフラ売上(2026年5月期)181億ドル(前年比 77%増)前年は102億ドル。AI専用ではなくOCI全体の売上
設備投資(2026年5月期)557億ドル前年は212億ドル。「データセンターの拡張」が主因と10-Kが説明
受注残(RPO)6,640億ドル(2026年8月31日)2026年5月31日は6,380億ドル、1年前は1,380億ドル
契約の相手10-K・10-Qは顧客名を記載せずOpenAIなどとの関係はOracle公式ページで確認できる範囲だけ書く
まず押さえるべき1点

Oracleは、データベースとビジネスアプリで知られる会社ですが、AI・機械学習の世界では「AI向けGPUクラウド(OCI)を大規模に貸し出す会社」へと比重を移しています。10-Kによると、2026年5月期のクラウドインフラ売上は181億ドル(77%増)、設備投資は557億ドルで、受注残は1,380億ドルから6,380億ドルへ(約4.6倍、本稿の計算 本稿の計算)増えました 事実。

一方で、フリーキャッシュフローはマイナス237億ドルで、資金は社債(FY2026に額面430億ドル)、優先株、増資で調達しています 事実。受注残が増えた理由について、10-Kは「大型のクラウド契約が成立した」とだけ書き、顧客名・各契約の金額は書いていません。本稿でも推計しません。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Oracle Corporation。社名と同じ「Oracle」を冠した製品が多く、OCI(クラウドインフラ)、Oracle AI Database(旧称のデータベースにAIの機能を加えたもの)、Oracle Fusion Cloud(業務アプリ)は別の製品です 事実。本稿は、AI・機械学習に関わるOCIのAIインフラを中心に書き、業務アプリやハードウェア事業は最小限にとどめます。

公式サイト:https://www.oracle.com/

3. AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか

AI・機械学習に関わる企業の4つの類型 同じ「AIの会社」でも、モデル・チップ・クラウド・導入で、強みと売り先が違う モデル開発 チップ・メモリ クラウド・インフラ プラットフォーム モデルとAIを開発する 計算の部品を供給する 計算資源を貸し出す 開発と導入の土台を提供 OpenAI/Anthropic Google/Meta NVIDIA/AMD TSMC/SK hynix Microsoft/AWS Oracle/CoreWeave Hugging Face ほか 研究力と計算資源 性能と供給の確保 設備投資と顧客基盤 開発者との接点の広さ 計算コストと競争に左右 供給制約と投資に左右 稼働率と契約に左右 収益化の道筋が不確実 Oracleはクラウド・インフラが主で、AIデータベースなどのプラットフォーム・導入が従 GPUクラウドで計算を貸し、同じ基盤で自社のデータベースとアプリにAIを載せる
図1 AI・機械学習に関わる企業の4類型と、Oracleの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。強調した2枠は、AIの計算資源を貸すクラウド・インフラ(主)と、データベース・業務アプリにAIを組み込むプラットフォーム・導入(従)です。主従の区分は本稿の整理で、10-KのOCIとOracle AI Databaseの説明に基づきます。

4. 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)

Oracleは業務アプリやハードウェアも持ちますが、本稿ではAIに関わる部分(OCI、データセンター、資金調達)に絞ります。数字は2026年5月期Form 10-K(2026年5月31日終了)と2027年5月期第1四半期Form 10-Q(2026年8月31日終了)によります 事実。

指標(百万ドル)2024年5月期2025年5月期2026年5月期
全社の売上52,96157,39967,357
営業利益15,35317,67820,606
研究開発費8,9159,86010,272
設備投資(Capital expenditures)6,86621,21555,663
クラウドインフラ売上(OCI)―10,23418,101
クラウドアプリケーション売上―14,27215,888
2027年5月期 第1四半期(2026年6〜8月)2026年6〜8月前年同期
全社の売上(百万ドル)19,345(30%増)14,926
クラウドインフラ売上(百万ドル)7,388(121%増)3,347
営業利益(百万ドル)6,7284,277
設備投資(百万ドル)28,4998,502
その他の基本情報内容
従業員(2026年5月31日)約141,000人(米国約49,000人、米国外約92,000人)。AIの専任人員は10-Kに記載なし
本社米国テキサス州オースティン(自社所有、約90万平方フィート)
現金・市場性証券(2026年5月31日)319億ドル(1年前は112億ドル)
営業キャッシュフロー/フリーキャッシュフロー(2026年5月期)320億ドル/マイナス237億ドル(フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー−設備投資。会社の定義)
ここで注意

上の数字は全社またはOCI全体のもので、AIだけの規模を示すものではありません。クラウドインフラ売上には、AIと無関係のOCIの利用(データベースや汎用の計算)も含まれます。10-Kは、クラウド・ソフトウェア事業の営業マージン率が63%から59%に低下した理由を「OCIの成長を支えるインフラ費用の増加」と説明しています 事実。

5. AI・機械学習にかけているリソース

Oracleは、AIだけに限った人員・研究開発費・設備投資を開示していません。以下は、提出書類と公式ページから確認できた範囲です。

リソース確認できた内容区分
人全社で約141,000人。AI専任は非公表。2026年5月期に、主にリストラ計画(2026 Restructuring Plan)の退職関連費用を含む「Restructuring and other」18.4億ドルを計上(10-K)事実
金(研究開発費・設備投資)研究開発費102.7億ドル、設備投資556.6億ドル(2026年5月期)。10-Kは設備投資の増加を「データセンターの拡張が主因」とし、「2027年5月期以降も増える見込み」と述べる。AI向けの金額は非公表事実
外部への出資・事業売却Ampere Computing Holdingsへの出資持分を、2025年11月25日のSoftBank Group Corp.による買収で売却し、現金43億ドルを受け取り、27億ドルの売却益を計上(10-K)。AIモデル会社への出資は10-K・10-Qに記載なし事実
大学・研究機関・公的資金との連携AIに関する大学との共同研究、NAIRRなど公的資金は、10-K・10-Qと本稿の出典に記載なし。Oracle公式ページには、データセンター所在地の学校への寄付や教育資金の記載がある(地域貢献で、研究連携ではない)確認できず
データセンターの規模(MW・GW)2027年5月期第1四半期に「850MWの追加データセンター容量を引き渡した」(決算発表)。MWがIT負荷か受電容量かは記載なし。Zettascale10は「マルチギガワット」の計画(会社の説明)。拠点ごとのMWは公式ページに記載なし未確定/将来

拠点ごとの段階(オラクル公式ページ、2026年10月15日に確認)

拠点公式ページの記載段階
テキサス州アビリーン2026年9月時点で、総容量の75%を引き渡し済み。残りは以降の四半期に引き渡し稼働・一部引き渡し済み
テキサス州シャックルフォード郡2025年8月に契約。顧客への引き渡しは2027年上半期から契約済み・建設中(引き渡しは将来)
ニューメキシコ州ドーニャアナ郡2025年9月に契約。顧客への引き渡しは2027年上半期から。電力はBloom Energyの燃料電池が基本設計契約済み・建設中(引き渡しは将来)
ウィスコンシン州ポートワシントン2025年9月に契約。顧客への引き渡しは2027年下半期の見込み契約済み・建設中(引き渡しは将来)
ミシガン州ソーリン・タウンシップ2025年10月に契約。顧客への引き渡しは2027年下半期から。ネットワークの中核は今年の暦年末に引き渡し契約済み・建設中(引き渡しは将来)

この表の「段階」は、公式ページの文言を本稿で整理したものです。各拠点のIT負荷・受電容量(MW)や最終投資決定の日付は、公式ページに記載がありません 未確定/将来。

契約・債務の開示(2026年5月31日と8月31日、10-K・10-Qの定義のまま)

項目(百万ドル)2026年5月31日2026年8月31日
社債・借入の総額(Notes payable and other borrowings)129,541―
運営リース負債30,190―
ファイナンスリース負債7,701―
まだ開始していないリース(ほぼすべてデータセンター)260,000288,000
無条件の購入義務(電力・部品など)13,30934,150

まだ開始していないリースは、10-Kで「2027年5月期第1四半期から2029年5月期の間に開始、期間15〜19年」、10-Qで「2027年5月期第2四半期から2029年5月期の間に開始」とされています。10-Kは、そのうち1件でOracleが貸し手の借入を最大33億ドルまで保証していると記載しています 事実。5月31日以降に、クラウドインフラ資産の無条件の購入コミットメントがさらに190億ドル(期間5年)増えたとも書かれています。開示された義務の金額であって、Oracleの評価や財務の健全性を示すものではありません。無条件の購入義務は、10-Kでは主にデータセンターの電力契約、10-Qでは部品の長期調達と電力契約を含み、範囲が異なるため、2つの数字を直接比べないでください。

資金調達(2026年5月期〜2027年5月期第1四半期)内容
社債2026年5月期に額面430億ドルの優先社債(手取り427億ドル)を発行
優先株2026年2月5日に6.50% Series D 強制転換優先株を発行、手取り50億ドル
普通株(ATM)2026年2月2日に最大200億ドルのATMを開始。2027年5月期第1四半期に1.41億株を発行し、手取り199億ドルで完了
その他2026年3月に100億ドルの新しい5年のリボルビング・クレジット、100億ドルのコマーシャルペーパー枠。顧客の前払い(重大な金融要素を含む)は2026年5月期に46億ドル、2027年5月期第1四半期に114億ドル
会社の見通し「2027年5月期は、負債と株式で約400億ドルを調達する見込み(200億ドルのATMを含む)。2026暦年に追加の社債は発行しない見込み」(2026年6月10日の決算発表。未確定/将来)
受注残(RPO)の読み方

Oracleの10-Kは、RPOを「まだ収益として認識されていない契約上の収益。繰延収益、請求済みで未回収・未認識の金額、今後請求・認識される金額を含む」と定義しています。2026年5月31日は6,380億ドルで、約12%が今後12か月、34%が13〜36か月、34%が37〜60か月、残り(約20%、本稿の計算)がそれ以降に収益になる見込みです。2026年8月31日は6,640億ドル(13%・37%・34%、残り約16%)です 事実。

10-Kは、増加の理由を「期間中に成立した大型のクラウド契約」とだけ述べ、顧客名と契約ごとの金額を示していません。2026年6月10日の決算発表は、増加の大半が顧客がGPUを前払いするか、顧客がGPUを購入してOracleに提供する大型AI契約で、その前払い・持ち込み分が合計750億ドルだと説明しています 事実。したがって、受注残はAIだけの数字ではなく、収益になる時期が先に偏った契約の積み上がりで、金額の大きさをそのままAI需要の強さと読むことは本稿では避けます 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2025年7月22日OpenAIとの「Stargate」に関する発表(題名:Stargate Advances with 4.5GW Partnership with Oracle)。Oracle公式ページが一覧に掲載。本文は本稿では確認できませんでした計画の規模は題名の数字だけ。IT負荷か受電容量かは確認できず
2025年8〜10月シャックルフォード、ドーニャアナ、ポートワシントン、ソーリンの各拠点を契約(公式ページ)複数州でAI専用データセンターを同時に進める
2025年10月14日OCI Zettascale10を発表。複数のデータセンターにまたがり、最大80万個のNVIDIA GPUを想定。OpenAIとの旗艦クラスター(アビリーン)の基盤と説明。同日、AMD Instinct MI450を5万個使うAIスーパークラスターを2026年暦年第3四半期から提供すると発表NVIDIAとAMDの両方のGPUを提供する計画
2025年11月25日保有するAmpere ComputingをSoftBank Groupが買収、Oracleは持分を売却自社でのチップ開発・出資から距離を置いた
2026年2〜3月ATM(最大200億ドル)、Series D強制転換優先株(50億ドル)、優先社債、100億ドルのリボルビング・クレジットなどを整備設備投資を負債と株式の両方で賄う
2026年6月10日2026年5月期第4四半期の決算。RPO 6,380億ドル、顧客の前払い・持ち込み分750億ドル受注残の積み上がりと資金調達計画を公表
2026年9月10日2027年5月期第1四半期の決算。RPO 6,640億ドル、850MWのデータセンター容量を引き渡し、30万個超のGPUを顧客に引き渡し、ATMを完了引き渡しが加速している

7. 今後の計画

AMD MI4505万個から開始
2026暦年第3四半期
2025年10月の発表。2027年以降に拡大。開始の確認は本稿では未確認
Zettascale10最大80万個のGPU2025年10月の発表で、提供は「翌暦年の下半期」とされた。現在の状況は未確認
開始前リース2,880億ドル2026年8月31日。第2四半期(2026年9〜11月)〜2029年5月期に開始予定
2027年5月期の売上900億ドル以上2026年9月10日の会社の見通し

上の項目はすべて会社の目標・計画で、実現を保証するものではありません 未確定/将来。Oracleは、クラウド・ソフトウェア事業の費用が「2027年5月期とその後数年も、データセンター容量の拡大と新しい地域への展開で増える」と述べています 事実。

確認できなかったこと

次はいずれも、本稿の出典に記載がありません 未確定/将来。

各拠点のMW(IT負荷・受電容量)/OpenAIとの契約の金額・期間(Oracleの提出書類)/受注残に含まれる顧客別の金額/AMD MI450の提供開始の実績/AI事業単体の売上・利益。報道や決算説明会の発言にある数字は、本稿では採用しません。

8. この会社はAI・機械学習で何を目指しているか

ここには、会社が直接述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
AIインフラのクラウド事業者としての成長を最優先にしているクラウドインフラ売上が77%増、設備投資が2.6倍。決算発表は「AIクラウドの需要は供給より速く伸びている」と述べる推測
顧客の前払い・GPUの持ち込みで自社の資金負担を抑える決算発表が、大型AI契約の前払い・持ち込み分が750億ドルで「Oracleが調達すべき資本を大きく減らす」と説明推測
NVIDIAとAMDの両方のGPUを提供し、特定の供給元に偏らないZettascale10はNVIDIA、MI450の提供はAMDと、それぞれ公式発表推測
設備投資を需要に先行して、負債と株式で賄っているフリーキャッシュフローがマイナス237億ドル、2026年5月期に社債430億ドル・優先株50億ドル、2027年5月期に増資199億ドル事実
データベースとアプリにもAIを組み込む方針を続ける10-Kの製品説明(Oracle AI Database、Autonomous AI Database、AIエージェント)。クラウドアプリの売上は11%増にとどまる事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

2026年6月の決算発表は、受注残の増加の大半が「顧客がGPUを前払い、または自ら購入してOracleに提供した」大型AI契約だと説明し、その合計を750億ドルとしています 事実。

この説明から、本稿は「Oracleは契約の構造によって、設備投資の一部を顧客に負担させる方向に動いている」と読むのが自然だと考えます 未確定/将来。ただし、その750億ドルが受注残6,380億ドルのうち何割か、各契約の期間と解約条件は書かれておらず、顧客名も不明です。数字の大きさだけから、リスクが小さいとは言えません。

9. AI・機械学習分野の提携マッピング

Oracleを中心としたAI・機械学習の提携関係 Oracleの公式資料(10-K、決算発表、公式発表、公式ページ)に記載のある関係のみ。確認日 2026年10月15日 Oracle クラウド・導入 OpenAI アビリーンなどのStargate拠点 NVIDIA Zettascale10のGPU AMD MI450を5万個(計画) データセンター事業者 Vantage・Related Digitalほか Bloom Energy 燃料電池による電力 Ampere 持分を2025年11月に売却 提携・共同開発 チップ・電力の供給 出資(売却済み)
図2 Oracleを中心としたAI・機械学習の提携関係。出典:2026年5月期Form 10-K、Oracle公式ページ「AI Data Centers」、2025年10月14日のOracle公式発表。図に含めたのはOracleの公式資料に記載のある関係だけです。OpenAIとの関係は公式ページと発表の記載で確認できる範囲で、10-K・10-Qには顧客名がありません。データセンター事業者はOracle公式ページの「Partners」に名前が出る企業(Related Digital、Vantage Data Centers、STACK Infrastructure、Crusoe)の例で、各社との契約内容は本稿では確認していません。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品・設備規模・仕様(開発元公称)段階日付・出典
OCI(AI Infrastructure)GPUを使う仮想マシン、ベアメタル、高性能計算。AIモデルの学習と推論に使える(10-Kの説明)。クラウドインフラ売上は2026年5月期に181億ドル提供中10-K(2026年6月22日)
OCI Zettascale10複数のデータセンターにまたがり、数十万個のNVIDIA GPUで構成。最大約16ゼタFLOPSのピーク性能(Oracle公称。精度条件は発表に記載なし)。初期は最大80万個のGPUを想定受注開始(2025年10月)。提供は「翌暦年の下半期」とされた(現状は未確認)Oracle公式発表(2025年10月14日)
AMD Instinct MI450スーパークラスター初期5万個。1個あたり最大432GBのHBM4、20TB/sのメモリ帯域。72個のGPUを収めた液冷ラック(AMD「Helios」設計)2026暦年第3四半期から(未確定/将来)Oracle公式発表(2025年10月14日)
Oracle AI Database/Autonomous AI DatabaseデータベースにAIの機能を組み込み、OCI、他社クラウド(マルチクラウド)、顧客のデータセンターで提供(10-K)。利用者数・売上の内訳は記載なし提供中10-K
OCIの提供形態OCI Dedicated Region、Sovereign Cloud、Alloy、Exadata Cloud@Customerなど、顧客の拠点や規制に合わせた形態(10-K)提供中10-K
素材技術者の視点:電力・冷却・ネットワークが「容量」を決める

Oracleの公式資料を読むと、容量を左右するのはチップだけでなく、電力・冷却・ネットワークであることがよく分かります 事実。10-Kのリスク要因は、データセンター拡張が「許可された建設可能な用地、予測可能な電力、ネットワーク機器、GPU・メモリなどの部品」に依存し、AIの計算需要で電力の確保が世界的に制約されていると述べます。

Oracle公式ページは、拠点が閉ループの非蒸発式冷却を使い、水の使用量を「一般的なオフィスビルと同程度」に抑える設計だと説明します。ニューメキシコ州の拠点では、電力にBloom Energyの燃料電池を使う設計です。ネットワークでは、Zettascale10がGPU同士の遅延を下げるため、キャンパスを半径2キロメートル以内に収める設計だと発表されています。AMDのMI450は、液冷の72個GPUラックと、1個あたり最大432GBのHBM4を前面に出しています。本シリーズの技術解説「AIデータセンターの電力と冷却」「学習クラスターとインターコネクト」「HBM」も併せて参照してください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
キャッシュフローと資金調達2026年5月期のフリーキャッシュフローはマイナス237億ドル、2027年5月期第1四半期はマイナス約50億ドル。資金は社債・優先株・増資で調達し、10-Kは「借換えができない、または条件が悪化するリスク」を挙げている事実
将来の義務の大きさ開始前のリースが2,880億ドル(ほぼすべてデータセンター)、社債・借入が1,295億ドル、購入義務など。これらは開示された義務であって、Oracleの財務健全性への評価ではありません事実
大口顧客への集中10-Kは、OCIの一部で「少数の大口顧客に集中している」とし、顧客が支払いや契約の履行をしない場合、複数年のデータセンター容量とそれに伴う資金調達を、対応する収益なしに抱える可能性を述べる事実
リース期間と顧客契約の不一致10-Kは、長期のデータセンターのリースの期間・価格調整が、顧客契約の期間・価格と一致しないことが多いと記載事実
電力・用地・部品10-Kは、電力の確保と価格変動、建設の遅れ、第三者の資金調達や工期、GPU・メモリなどの部品の不足をリスクに挙げる事実
受注残の収益化の時期受注残の12〜13%が今後12か月で収益になる見込みで、残りは先。大型契約の成立時期で変動する事実
マージン率の低下クラウド・ソフトウェア事業の営業マージン率が63%から59%へ低下(インフラ費用の増加)事実
AI規制EU AI法の義務が段階的に適用され2030年まで続くこと、米国の連邦・州の規制の不確実性、AIインフラや計算資源、モデルの重みに対する政府の制限の可能性を10-Kが記載(EU AI法の段階は本シリーズの技術解説「EU AI法」を参照)事実
提携先との関係の変化顧客・提携先の名前が提出書類にないため、契約の条件や継続性は公式文書の範囲でしか確認できない推測

12. 用語集

OCI
Oracle Cloud Infrastructure。Oracleのクラウドインフラのサービス。GPUを使うAI向けの計算も含む。
RPO(Oracleの定義)
まだ収益として認識されていない契約上の収益。繰延収益と、請求済み未回収・未認識の金額、今後請求・認識される金額を含む。
Stargate
OpenAIなどが発表したAIインフラの構想の名称。Oracleは拠点の一部を提供・運営するとOracle公式ページに記載。
ATM(at-the-market)
市場価格で随時、株式を売る方式の増資。Oracleは上限200億ドルを使い切った。
強制転換優先株
一定の時期に普通株へ転換される優先株。Oracleは2026年2月に50億ドルを調達。
Zettascale10
Oracleが発表した、複数のデータセンターにまたがる大規模GPUクラスターの名称。
ギガワット(GW)
電力の単位。データセンターの規模を表すが、IT負荷か受電容量かは資料により異なる。
Form 10-K/10-Q/8-K
米国上場企業がSECに提出する年次報告書/四半期報告書/臨時報告書。
AI計算の基盤と、データを扱うサービスの窓口を分けています。クラウド契約や特定顧客の設備を示す図ではありません。
図3 概念画像(ImageGenで生成)。AI計算の基盤と、データを扱うサービスの窓口を分けています。クラウド契約や特定顧客の設備を示す図ではありません。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

13. 出典

  1. Oracle Form 10-K for the fiscal year ended May 31, 2026(米国SEC提出、2026年6月22日)。OCIの説明、クラウドインフラ売上、設備投資、受注残(RPO)の定義、リース・購入義務、資金調達、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
  2. Oracle Form 10-Q for the quarterly period ended August 31, 2026(米国SEC提出、2026年9月11日)。2027年5月期第1四半期の実績、受注残6,640億ドル、開始前リース2,880億ドル。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526389274/orcl-20260831.htm
  3. Oracle Form 8-K(2026年9月10日提出)のExhibit 99.1。2027年5月期第1四半期の決算発表(850MWのデータセンター容量の引き渡し、AIクラウド契約の追加、ATM増資の完了)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526387905/orcl-ex99_1.htm
  4. Oracle Form 8-K(2026年6月10日提出)のExhibit 99.1。2026年5月期第4四半期の決算発表(受注残6,380億ドル、顧客が前払い・持ち込みしたハードウェア750億ドル、資金調達計画)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526265848/orcl-ex99_1.htm
  5. Oracle Oracle公式ページ「AI Data Centers」(2026年10月15日に確認)。拠点ごとの契約時期と引き渡しの段階、提携事業者。 https://www.oracle.com/data-centers/
  6. Oracle Oracle公式発表「Oracle Unveils Next-Generation Oracle Cloud Infrastructure Zettascale10 Cluster for AI」(2025年10月14日)。 https://www.oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-unveils-next-generation-oci-zettascale10-cluster-for-ai-2025-10-14/
  7. Oracle Oracle公式発表「Oracle and AMD Expand Partnership to Help Customers Achieve Next-Generation AI Scale」(2025年10月14日)。 https://oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-and-amd-expand-partnership-to-help-customers-achieve-next-generation-ai-scale-2025-10-14
  8. Oracle Oracle公式サイト(会社の確認用。ロゴは同社ドメインの oracle-logo.svg を取得)。 https://www.oracle.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称・本社・NYSE上場・会計年度、従業員数、本社の面積事実出典1・8 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm https://www.oracle.com/
売上・営業利益・研究開発費・設備投資・クラウドインフラ売上・クラウドアプリ売上(2024〜2026年5月期)、フリーキャッシュフロー事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
2027年5月期第1四半期の売上・クラウドインフラ売上・営業利益・設備投資、RPO 6,640億ドルと内訳、開始前リース2,880億ドル、購入義務事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526389274/orcl-20260831.htm
2027年5月期第1四半期の決算発表:850MWの引き渡し、30万個超のGPU、ATM完了、フリーキャッシュフロー、売上900億ドル以上の見通し事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526387905/orcl-ex99_1.htm
2026年5月期第4四半期の決算発表:RPO 6,380億ドル、前払い・持ち込み分750億ドル、資金調達計画事実出典4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526265848/orcl-ex99_1.htm
RPOの定義と、12か月・13〜36か月・37〜60か月の内訳事実出典1・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526389274/orcl-20260831.htm
社債430億ドル、優先株50億ドル、ATM、リボルビング・クレジット、コマーシャルペーパー、顧客の前払い事実出典1・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526389274/orcl-20260831.htm
Ampereの売却(SoftBank Groupによる買収、現金43億ドル、売却益27億ドル)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
開始前リース2,600億ドル、33億ドルの保証、5月31日以降の190億ドルの購入コミットメント事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
拠点ごとの契約時期と引き渡しの段階(アビリーン75%ほか)、提携事業者事実出典5 https://www.oracle.com/data-centers/
OCI Zettascale10の仕様・受注開始・OpenAIのアビリーンの旗艦クラスター事実出典6 https://www.oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-unveils-next-generation-oci-zettascale10-cluster-for-ai-2025-10-14/
AMD MI450の5万個・仕様・開始時期事実出典7 https://oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-and-amd-expand-partnership-to-help-customers-achieve-next-generation-ai-scale-2025-10-14
RPOの「残り約20%・約16%」、設備投資2.6倍、マージン率の変化本稿の計算本稿の計算(出典1・2の数字から算出)
4類型の区分(クラウド・インフラが主、プラットフォーム・導入が従)本稿の計算本稿による整理。出典1の説明に基づく
AI専任の人数・AI向けの設備投資・AI単体の売上未確定/将来いずれも非公表。本稿では推計もしない(出典1に記載なし) https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
各拠点のMW、OpenAIとの契約の金額・期間、受注残の顧客別金額未確定/将来出典1〜5に記載なし。報道の数字は採用しない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526277521/orcl-20260531.htm
大学・公的資金との連携未確定/将来出典1・2に記載なし。存在しないとも断定しない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526389274/orcl-20260831.htm
AMD MI450の開始、Zettascale10の提供、拠点の引き渡し(2027年)、2027年5月期の見通し未確定/将来出典3・5・6・7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1341439/000119312526387905/orcl-ex99_1.htm https://www.oracle.com/data-centers/ https://www.oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-unveils-next-generation-oci-zettascale10-cluster-for-ai-2025-10-14/ https://oracle.com/news/announcement/ai-world-oracle-and-amd-expand-partnership-to-help-customers-achieve-next-generation-ai-scale-2025-10-14
AIインフラのクラウド事業者としての成長を最優先にしているという読み推測売上・設備投資の変化と決算発表の表現からの本稿の解釈
顧客の前払い・持ち込みで資金負担を抑えるという読み推測決算発表の説明(750億ドル)からの本稿の解釈
NVIDIAとAMDの両方を提供するという読み推測Zettascale10とMI450の発表からの本稿の解釈
提携先との関係は公式文書の範囲でしか確認できないというリスク推測提出書類に顧客名がないことからの本稿の解釈

最終更新:2026年10月15日(確認日)/Troy Technical
本稿の数値は、Oracle Corporationが米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類と、Oracleの公式発表・公式ページに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。製品の性能値は開発元の公称で、第三者の測定ではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。契約・投資・データセンターの計画は2026年10月15日時点の公表内容です。会計年度は5月期(例:2026年5月期=2025年6月〜2026年5月)です。