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AMD 企業解説

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COMPANY PROFILE / AI・機械学習

AMD
― CPU(EPYC)とAI GPU(Instinct)の両方を持ち、大口顧客との契約を株式の権利と組み合わせて広げているチップ企業

AMDは、サーバー用CPU「EPYC」とAIアクセラレータ「Instinct」の両方をデータセンターに供給する半導体企業です。 2025年(2025年12月27日終了の会計年度)の売上高は346.4億US$、うちデータセンター部門は166.4億US$でした。 2026年4〜6月期にはデータセンター部門が67.2億US$(前年同期比107%増)に達しています。 一方で、OpenAIとMetaが最大6ギガワット、Anthropicが最大2ギガワットのInstinctの導入を計画しており、AMDはこれらの顧客にワラント(株式を買う権利)や出資を組み合わせていると提出書類・発表に書かれています。 本稿では、何を売っているか、何に資金を投じているか、大口契約がどの段階にあるか、輸出管理がどう影響したかを、会社の提出書類と公式発表の範囲で整理します。確認日は2026年10月15日です。

構成:AMDが米国SECに提出したForm 10-K(2025年12月27日終了の会計年度)とForm 10-Q(2026年6月27日終了の四半期)、Form 8-K、公式発表・製品ページを一次情報として使用/確認日 2026年10月15日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるAMDと、AI・機械学習での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)
  5. AI・機械学習にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はAI・機械学習で何を目指しているか
  9. AI・機械学習分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるAMDと、AI・機械学習での立ち位置

正式名称Advanced Micro Devices, Inc.米国の法人。通称AMD。1969年創業と10-Kが記載
本社米国・カリフォルニア州
サンタクララ
ファブレス。ウェハーはTSMCなどに委託
上場Nasdaq: AMD会計年度は12月末に近い土曜日に終わる
この分野での区分チップ・メモリCPUとGPUの両方。完成ラックは製造・販売しない(10-Q)
2025年の売上高346.4億US$2025年12月27日終了。前年は257.85億US$
うちデータセンター部門166.4億US$売上の約48%(本稿の計算)。EPYCとInstinctなどを含む
中心となる製品Instinct MI350/MI400
EPYC、Helios
Heliosは72個のGPUを載せるラックの設計
従業員約31,000人2025年12月27日時点
まず押さえるべき1点

AMDのAI向けの大口契約には、顧客へのワラントや出資が組み合わされています 事実。 OpenAI(2025年10月)とMeta(2026年2月)には、それぞれ最大1億6,000万株を1株0.01US$で買える権利(ワラント)を発行しました。権利は、InstinctのGPUの購入目標と株価などの条件を満たした分だけ確定します。 2026年6月27日時点で、確定した分はなく、財務への影響もないと10-Qは述べています。 2026年7月には、Anthropicとの最大2ギガワットの導入計画とあわせて、AMDが最大50億US$の出資を約束したと発表しました。 つまり、AMDは「売る側」であると同時に、買い手の株式や権利にも関わる立場になりつつあります。 一方で、2025年・2024年とも売上の10%以上を占める顧客はなかったと10-Kは記載しています 事実。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Advanced Micro Devices, Inc.、通称はAMDです(日本語では「アドバンスト・マイクロ・デバイセズ」と書かれることもあります)。 ロゴは公式サイトで配布されている白色版のため、濃い背景に置いています。 製品名のInstinct(AIアクセラレータ)、EPYC(サーバーCPU)、Pensando(ネットワーク)、Helios(ラックの設計)は、社名ではなく製品の名前です。

公式サイト:https://www.amd.com/en.html

3. AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか

AI・機械学習に関わる企業の4つの類型 同じ「AIの会社」でも、モデル・チップ・クラウド・導入で、強みと売り先が違う モデル開発 チップ・メモリ クラウド・インフラ プラットフォーム モデルとAIを開発する 計算の部品を供給する 計算資源を貸し出す 開発と導入の土台を提供 OpenAI/Anthropic Google/Meta NVIDIA/AMD TSMC/SK hynix Microsoft/AWS Oracle/CoreWeave Hugging Face ほか 研究力と計算資源 性能と供給の確保 設備投資と顧客基盤 開発者との接点の広さ 計算コストと競争に左右 供給制約と投資に左右 稼働率と契約に左右 収益化の道筋が不確実 AMDは「チップ・メモリ」の会社。CPU(EPYC)とGPU(Instinct)の両方を持つ点が特徴(本稿の整理) 完成ラックは自社で製造・販売せず、設計(Helios)をパートナーに提供する(10-Qの記載)
図1 AI・機械学習に関わる企業の4類型と、AMDの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。10-Kは「AIシステムにはチップだけでなく、計算・ネットワーク・システム設計・ソフトウェアの全体の革新が必要だ」と述べています。

4. 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)

AMDの会計年度は12月末に近い土曜日に終わり、2025年は2024年12月29日から2025年12月27日までです。データセンター部門にはAIアクセラレータ(Instinct)とサーバーCPU(EPYC)などが含まれ、内訳(Instinctだけの売上)は開示されていません(本稿で確認した範囲)。数値は10-K・10-Qの記載です 事実。

指標(百万US$)2024年(〜2024年12月28日)2025年(〜2025年12月27日)
売上高25,78534,639
データセンター部門の売上12,57916,635
クライアントとゲーム9,64914,550
エンベデッド3,5573,454
データセンター部門の営業利益3,4823,603
研究開発費6,4568,091
営業利益(全社)1,9003,694
2026年の指標(百万US$)第2四半期(〜2026年6月27日)前年同期(〜2025年6月28日)上期(6か月)
売上高11,5367,68521,789
データセンター部門の売上6,7183,24012,493
データセンター部門の営業利益(損失)2,103(155)3,702
研究開発費2,5281,8944,925
ここで注意

前年同期(2025年第2四半期)には、米国の輸出規制によるInstinct MI308の在庫等の費用約8億US$が含まれています。データセンター部門の営業損失(1.55億US$)はこの影響を含む数字なので、前年同期との比較ではこの点を考慮してください 事実。 また、10-Qは「データセンター部門の売上が前年同期比107%増」の主因をEPYCとInstinct MI350の需要としていますが、両者の売上額の内訳は書かれていません。 会社が示した2026年第3四半期の売上見通しは約130億US$(±3億US$)です。これは会社の見通しで、未確定です 未確定/将来。

5. AI・機械学習にかけているリソース

4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、10-K・10-Q・8-K・公式発表で確認できたかを表にします。

リソースの種類内容区分
人約31,000人(2025年12月27日)。AIに特化した人数の内訳は開示されていない事実
金:研究開発費2025年は80.91億US$(売上の約23%:本稿の計算)、前年は64.56億US$。2026年上期は49.25億US$事実
金:設備投資2025年の有形固定資産の購入は約10億US$(キャッシュ・フロー計算書の記載)事実
金:購買・リース等のコミットメント無条件のコミットメントが約122億US$(2025年12月)から約303億US$(2026年6月)へ。データセンターのリース保証の最大額は41億US$。四半期末後に、未開始のリース(総額95億US$、2027〜2028年開始見込み)と最大50億US$の投資コミットメントを締結事実
外部への出資・買収:ZT Systems2025年3月に買収(32億US$の現金と830万株)。設計部門を残し、製造部門は2025年10月にSanminaへ売却(24億US$の現金とSanmina株1,151,052株。最大4.5億US$の追加対価を2028年まで受け取る資格)事実
外部への出資・買収:その他2024年8月にSilo AI(フィンランドのAI研究所)を取得(現金6.65億US$)。2025年はソフトウェア・光接続・推論技術の取得も実施(10-K)。2026年第2四半期にMEXT(メモリ最適化技術)を取得(決算発表)事実
顧客へのワラント・出資OpenAIとMetaに各最大1億6,000万株のワラントを発行。2026年7月、Anthropicに最大50億US$を出資することを約束したと発表(実行は将来)事実
World Labsの合併契約2026年9月26日に合併契約を締結。購入価格は約82億US$で、AMD株で支払う。8-K(9月28日)の本文では完了時期や条件を確認できなかった確認できなかった(完了)
大学・公的機関との連携米国エネルギー省(DOE)が2025年10月27日に、Oak Ridge National LaboratoryのAMD搭載スーパーコンピューターLux(2026年初めに導入予定)とDiscovery(2028年到着予定)を発表。官民の投資額は10億US$超とDOEが記載事実
公的資金の受領AMDが補助金等の公的資金を受けたという記載は、10-K・10-Qで確認できなかった確認できなかった

主要な製品・契約の状況を、会社の資料で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月15日)。

製品・契約規模・内容段階日付出典
Instinct MI355X(MI350シリーズ)HBM3E 288GB、TSMC 3nm。10-Kは2025年に大手クラウド等がMI350Xを導入したと記載出荷中発売日 2025年6月12日(製品ページ)出典8・1 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi350/mi355x.html
Instinct MI455X(MI400シリーズ)HBM4 432GB。Heliosの中核のGPU発売(製品ページの発売日)2026年7月23日(製品ページ)出典7・3 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi400/mi455x.html
Helios(ラックの設計)MI455X 72個、EPYC「Venice」、Pensando「Vulcano」。AMDは設計を提供し、完成ラックは製造・販売しない出荷開始見込み(2026年下期)10-Q(2026年8月)、製品ページ出典2・9 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
OpenAIとの契約最大6ギガワット。最初の1ギガワットはMI450シリーズ。ワラント最大1.6億株契約(導入は顧客の計画)。ワラントは未確定2025年10月出典1・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
Metaとの契約最大6ギガワット。最初の1ギガワットはMI450系のカスタムGPUとVenice CPU。出荷は2026年下期に開始の予定契約(出荷は予定)2026年2月24日出典4・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000045/pressreleasedatedfebruary2.htm
Anthropicとの提携最大2ギガワットのMI450シリーズ(Helios)。最初の1ギガワットは2027年前半から。AMDは最大50億US$の出資を約束契約(導入は予定。出資は将来)2026年7月22日出典5 https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1292/amd-and-anthropic-announce-strategic-partnership-to-deploy-up-to-2-gigawatts-of-amd-instinct-mi450-series-gpus
DOE向けスーパーコンピューター Lux/DiscoveryLuxは2026年初め、Discoveryは2028年の導入予定計画2025年10月27日出典10 https://www.energy.gov/articles/energy-department-announces-new-public-private-partnership-model-two-supercomputers

「導入は顧客の計画」とは、10-Qが「顧客が最大○ギガワットを導入する意向(intends to deploy)」と書いていることによります。購入量が確定した契約ではありません。ギガワットはデータセンターの電力規模であり、GPUの台数や売上額ではありません。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2024年8月Silo AIを取得(現金6.65億US$)AIモデルとソフトの人材を取り込んだ(10-K)
2025年3月31日ZT Systemsを買収ラック規模のシステム設計の力を獲得(10-K)
2025年4月米国政府がMI308の中国等向け輸出に新たなライセンスを要求。第2四半期に約8億US$の在庫等の費用を計上輸出管理の影響を受けた最初の大きな例(10-K)
2025年6月12日Instinct MI355X(MI350シリーズ)の発売日(製品ページ)10-Kは、2025年に大手クラウド等がMI350Xを導入したと記載
2025年10月OpenAIと最大6ギガワットの契約とワラントを発表。ZTの製造部門をSanminaへ売却(27日)大口の契約と、ラックの自社製造をやめる判断
2025年第4四半期ライセンスを得てMI308の出荷を開始し、約3.6億US$の費用を戻し入れ費用は最終的に約4.4億US$(10-K)
2026年2月Metaと最大6ギガワットの契約(24日)。MI325を特定の中国顧客へ出荷するライセンスを取得ただし中国への輸入が認められるかは不明と10-Qが記載
2026年7月Anthropicと最大2ギガワットの提携(22日)。Instinct MI455Xの発売日(23日)Heliosの出荷準備
2026年8月4日第2四半期決算。Heliosの出荷が始まると説明。第3四半期の売上見通しは約130億US$「Heliosが立ち上がり始める」とCEOが述べた(決算発表)
2026年9月26日World Labsとの合併契約を締結(約82億US$、AMD株で支払い)AIモデルの研究を取り込む動き。完了は未確認

7. 今後の計画

2026年第3四半期の売上見通し約130億US$(±3億US$)会社の見通し。非GAAPの粗利益率は約56%
Heliosの出荷2026年下期に開始見込み10-Q。製品ページは「量産出荷は2026年下期」と記載
Anthropicへの導入最初の1ギガワットは2027年前半から最大2ギガワット。計画であり確定した台数ではない
World Labsの買収約82億US$(AMD株)完了時期・条件は8-Kの本文では確認できなかった

会社はこれらを「見通し」「予定」として述べており、達成の事実ではありません 未確定/将来。10-Qは、Heliosのように製品の移行が速まるほど、供給と需要の管理が難しくなり、売上や在庫に影響しうると述べています。

確認できなかったこと

次はいずれも会社の10-K・10-Q・8-K・公式発表で確認できませんでした 未確定/将来。 Instinct単体の売上/Heliosの出荷台数と価格/OpenAI・Metaへの出荷の実績(ワラントは2026年6月27日時点で未確定)/World Labsの買収完了の時期と条件/Anthropicへの出資を実行する時期。 顧客名つきの導入台数や売上の数字は報道で語られることがありますが、本稿では採用しません。

8. この会社はAI・機械学習で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
チップ単体から、ラック規模の設計の提供へ広げているが、製造は他社に任せるZTの設計部門を残して製造部門をSanminaへ売却し、Sanminaを「複雑なAIシステムを作る製造の優先パートナー」とした。10-Qは、Heliosの完成ラックを製造・販売しないと記載推測
大口顧客の購入を、ワラントや出資と組み合わせて確保しようとしているOpenAIとMetaのワラントは、Instinctの購入目標の達成と株価条件を満たした分だけ確定する。Anthropicには最大50億US$の出資を約束推測
オープンな規格(UALink、Ultra Ethernet、OCPのラック)を差別化の軸にしているHeliosの製品ページが「OCP Open Rack Wide、UALink、UECなどのオープンな規格に基づく」と記載。ROCmもオープンソースのソフトウェア基盤と説明推測
AIのモデル・ソフトの知見を社内に取り込む動きを続けているSilo AI(2024年)、MEXT(2026年)、World Labs合併契約(2026年9月)。ただし合併の目的は8-Kの本文では確認できない推測
売上は特定の顧客に偏っていない2025年・2024年とも、売上の10%以上の顧客はない(10-K)。売掛金では、1社が11%(2025年12月)、別の1社が24%(2024年12月)事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

OpenAIとMetaのワラントは、AMDのGPUを買う量が増えるほど、買い手が安い価格でAMD株を取得できる仕組みです。権利が確定する条件は、GPUの購入目標と株価の条件で、確定した分も、さらに技術・商業上の条件を満たして初めて行使できると10-Qに書かれています 事実。 これは、購入量の確保と顧客の関与を深める効果を狙った設計と読めます。一方で、2026年6月27日時点で確定した権利はなく、導入の「意向」と実際の購入の間には距離があります。 本稿は、この仕組みを「AMDが大口需要を確保するために株式の価値を使っている」と読みますが、会社がそう説明しているわけではありません 未確定/将来。

9. AI・機械学習分野の提携マッピング

AMDを中心としたAI・機械学習分野の関係 10-K・10-Q・8-K・公式発表に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない(確認日 2026年10月15日) AMD チップ・設計 TSMC ウェハー製造(10-K) Sanmina ラック製造の優先パートナー 米エネルギー省/HPE Lux・Discoveryの導入予定 ZT Systems 2025年3月に買収(設計を保有) OpenAI 最大6GW(契約)+ワラント Meta 最大6GW。Heliosを共同開発 Anthropic 最大2GW/最大50億US$出資を約束 World Labs 合併契約(約82億US$。完了は未確認) 導入先・共同開発の相手 製造・供給を担う相手 出資・買収・契約(確定前を含む)
図2 AMDを中心としたAI・機械学習分野の関係。出典:10-K、10-Q、8-K、公式プレスリリース、米国エネルギー省の発表。右側の顧客は、いずれも「導入の意向」や計画の段階であり、購入量が確定したものではありません。決算発表(2026年8月4日)は、Heliosの導入先としてAnthropic、Cirrascale、HUMAIN、Meta、Microsoft、OpenAI、Oracle、Tensorwave、Vultrなどを挙げていますが、導入の規模や段階は確認できません。点線の関係(買収・合併契約)は完了を意味しません。

10. 提供している技術・製品・サービス

層主な製品10-K・公式資料の記述
AIアクセラレータInstinct MI350シリーズ(MI355X)、MI400シリーズ(MI455X、HPC・ソブリンAI向けのMI430X)、MI350P10-Kは「年1回のペースで新しいInstinctを出す」方針を記載。MI355Xは2025年、MI455Xは2026年7月の発売日
サーバーCPUEPYC(第5世代、2026年に第6世代「Venice」)第5世代を2025年に投入。第6世代は決算発表で紹介
ネットワークPensando Pollara 400 AI NIC、Vulcano AI NIC、Salina DPU、UALink/UALoEGPUクラスターの接続用。Vulcanoは800Gbps(製品ページ)
ラックの設計Helios(MI455X 72個)OCPのOpen Rack Wide規格に基づく。AMDは設計を提供し、完成ラックは製造・販売しない(10-Q)
ソフトウェアROCm(オープンソースのAI・HPC向けソフト基盤)PyTorch、TensorFlow、JAXなどへの「Day-0対応」と製品ページが記載
AI PC・組み込みRyzen AI(NPU搭載)、Versal AI EngineAI向けの本分野の中では従たる事業

AMDの製品ページに載っている開発元の公称を、世代ごとに並べます(確認日 2026年10月15日)。いずれも理論上のピーク値で、実測の性能ではありません。

項目(AMD公称)Instinct MI355X(MI350シリーズ)Instinct MI455X(MI400シリーズ)
発売日2025年6月12日2026年7月23日
製造プロセスTSMC 3nm/6nm FinFETTSMC 2nm/3nm FinFET
MXFP4(4ビット)のピーク性能10.1 PFLOPS40.3 PFLOPS
MXFP8/OCP FP8のピーク性能5 PFLOPS(疎性なし)20.1 PFLOPS
GPUメモリ288 GB(HBM3E)432 GB(HBM4)
メモリ帯域(ピーク)8 TB/s23.3 TB/s
冷却・電力標準的な基板の消費電力 1,400W(TBP)直接液冷(DLC)
項目(AMD公称)Heliosラック(MI455X 72個)
FP4/FP8のピーク性能(ラック合計)2.9 EFLOPS/1.4 EFLOPS
HBM4の容量(ラック合計)31 TB
スケールアップ帯域(ラック合計)260 TB/s(UALink over Ethernet)
スケールアウト帯域(ラック合計)43 TB/s(Pensando Ethernet)
提供時期設計をパートナーに共有中。量産導入は2026年下期の見込み(製品ページ)

出典:AMDの製品ページ。数値は理論上のピーク値で、疎性の扱いはデータ型ごとに異なります(MI355X・MI455Xの表は、FP16・BF16・INT8などの「疎性あり」を別の行で示し、MXFP4・MXFP8の行には疎性の記載がありません)。AMDのMI455Xのページは、NVIDIAのVera Rubinとの比較表を載せていますが、比較の条件は各社の注記によるため、本稿は他社製品との比較や優劣を転載しません。また、同じHeliosのページの別の箇所には「GPUあたりのメモリ帯域19.6 TB/s」という記載があり、仕様表の23.3 TB/sと一致しません。本稿は仕様表の値を使い、記載の食い違いがあることを明記します。

素材技術者の視点:AIアクセラレータを決めるのは、メモリ・先端プロセス・冷却と接続

メモリ:MI355XからMI455Xで、GPUメモリはHBM3Eの288GB(8TB/s)からHBM4の432GB(23.3TB/s)に移ります(AMD公称) 事実。MI455Xは12個のHBMスタックを載せると製品ページは記載しています。メモリの容量と帯域は、大きなモデルを1つのGPUに載せられるかどうかに直結する、というのが一般的な理解です(本シリーズの技術解説「HBM」を参照)。

先端プロセスとチップレット:MI455Xは「TSMC 2nm/3nm FinFET」と表記され、複数の製造プロセスのチップを1つの基板にまとめる構成だとうかがえます。10-Kは「カスタム対応のチップレット基盤」と「Infinity Fabricスイッチ」に言及しています 事実(本シリーズの「チップレット」「CoWoS」「異種統合」を参照)。

冷却と電力:MI455Xは直接液冷(DLC)です。MI355Xの基板の消費電力は1,400W(TBP)と製品ページに記載があります。Heliosは、従来より電力・冷却に余裕のある幅広のラック(Open Rack Wide)、電力棚と垂直のバスバー、液冷の配管を前提としています 事実(本シリーズの「AIデータセンターの電力と冷却」を参照)。

つなぎ方:Heliosはラック内の接続にUALinkをEthernetの上で動かす方式(UALoE)を使い、ラック間はPensandoのEthernetでつなぐ、と製品ページは説明しています。これはAMDが示す構成で、実際の性能や他方式との優劣は、本稿では確認できていません。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
導入の意向と実際の購入の差OpenAI・Metaは「最大6ギガワットを導入する意向」で、Anthropicは「最大2ギガワット」。確定した購入量ではない。ワラントは2026年6月27日時点で未確定事実
顧客への株式権利と出資ワラントの行使や出資の実行は、AMD株の希薄化や投資の評価に影響しうる。最大50億US$の出資は将来の実行(10-Qは四半期末後に最大50億US$の投資コミットメントを締結と記載)事実
輸出管理2025年4月に新ライセンス要件。MI308で約8億US$の費用を計上し、のちに約3.6億US$を戻し入れ(差し引き約4.4億US$)。2026年2月にはMI325の中国向けライセンスを得たが、中国で輸入が認められるかは不明で、米国での検査に伴う25%の関税がかかる。AI拡散ルールの撤回と新ルールの予定(10-K)。規則は変わりうる事実
製品移行と供給10-Qは、Heliosのようなシステム規模の製品が供給・需要管理を難しくし、売上と在庫に影響しうると記載。TSMCなどの製造委託に依存事実
コミットメントの増加無条件のコミットメントが約303億US$に増加。リース保証の最大額は41億US$。データセンターのリースの未開始分は45億US$と95億US$(四半期末後)事実
競合10-Kはデータセンターで主にIntelとNVIDIAと競合すると記載。10-Qは、NVIDIAが市場での地位とソフトウェアの仕組みで顧客に影響することや、2025年9月のNVIDIAとIntelの提携が競争を強める可能性に言及している(AMDの記述)事実
買収の統合ZT Systemsの統合、World Labsの合併(完了は未確認)、Silo AIなど。買収は期待した効果を得られない可能性がある(10-K)事実
顧客の自社設計一部の顧客は自社でデータセンター向けのチップを開発しており、AMDの市場を狭める可能性がある(10-K)事実

12. 用語集

Instinct
AMDのデータセンター向けAIアクセラレータ(GPU)のブランド。MI350、MI400などの世代がある。
EPYC
AMDのサーバー向けCPUのブランド。x86系。
Helios
MI455X 72個などを1つのラックにまとめた設計。AMDは設計を提供し、完成ラックは作らない。
ROCm
AMDのオープンソースのAI・HPC向けソフトウェア基盤。
UALink
アクセラレータ同士をつなぐ業界の接続規格。UALoEはEthernet上でUALinkを使う方式。
MXFP4
4ビットの浮動小数点形式の1つ。ピーク性能は理論値で、実測ではない。
ワラント
あらかじめ決めた価格で株を買える権利。AMDはOpenAI・Metaに最大1億6,000万株ずつ発行した。
ギガワット(GW)
データセンターの電力規模の単位。GPUの台数や売上額ではない。
TBP
Typical Board Power。基板の標準的な消費電力。
10-K/10-Q/8-K
米国SECに提出する年次報告書/四半期報告書/臨時報告書。
演算タイルとメモリを同じパッケージへまとめる構成例です。チップレット接続と放熱を区別してください。
図3 概念画像(ImageGenで生成)。演算タイルとメモリを同じパッケージへまとめる構成例です。チップレット接続と放熱を区別してください。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

13. 出典

  1. AMD Form 10-K for the fiscal year ended December 27, 2025(米国SEC提出、2026年2月4日)。事業内容・セグメント・売上・研究開発費・従業員数・ZT Systems・OpenAIとの契約とワラント・輸出管理・リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
  2. AMD Form 10-Q for the quarterly period ended June 27, 2026(米国SEC提出、2026年8月5日)。2026年第2四半期・上期の売上、OpenAIとMetaとの契約とワラント、コミットメント、リース保証、Helios、輸出管理(MI325)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
  3. AMD AMD Reports Second Quarter 2026 Financial Results(Form 8-K 添付のプレスリリース、2026年8月4日)。セグメント別売上、第3四半期の売上見通し、ハイライト(Helios、Instinct MI400、Anthropicとの提携など)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000121/q22026991.htm
  4. AMD AMD and Meta Announce Expanded Strategic Partnership to Deploy 6 Gigawatts of AMD GPUs(Form 8-K 添付のプレスリリース、2026年2月24日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000045/pressreleasedatedfebruary2.htm
  5. AMD AMD and Anthropic Announce Strategic Partnership to Deploy Up to 2 Gigawatts of AMD Instinct MI450 Series GPUs(プレスリリース、2026年7月22日)。 https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1292/amd-and-anthropic-announce-strategic-partnership-to-deploy-up-to-2-gigawatts-of-amd-instinct-mi450-series-gpus
  6. AMD Form 8-K(2026年9月28日提出)。2026年9月26日のWorld Labs Technologies, Inc.との合併契約(購入価格は約82億US$、AMD株で支払い)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000182/amd-20260926.htm
  7. AMD AMD Instinct MI455X GPU(製品ページ。仕様表。確認日 2026年10月15日)。 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi400/mi455x.html
  8. AMD AMD Instinct MI355X GPU(製品ページ。仕様表。確認日 2026年10月15日)。 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi350/mi355x.html
  9. AMD AMD Helios rackscale solution(製品ページ。仕様と提供時期。確認日 2026年10月15日)。 https://www.amd.com/en/products/rackscale-solutions/helios.html
  10. 米国エネルギー省 Energy Department Announces New Public-Private Partnership Model, Two Supercomputers, to Accelerate American Dominance in Science and Technology(2025年10月27日)。Oak Ridge National LaboratoryのAMD搭載スーパーコンピューターLuxとDiscovery。 https://www.energy.gov/articles/energy-department-announces-new-public-private-partnership-model-two-supercomputers
  11. AMD 公式サイト(ロゴ画像の取得元。ロゴは公式サイトで配布されている白色版のSVG。確認日 2026年10月15日)。 https://www.amd.com/en.html

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
売上高・セグメント別売上・研究開発費・営業利益(2024〜2025年)、従業員約31,000人事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
売上の10%以上の顧客はなかったこと、売掛金の集中度事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
ZT Systemsの買収とSanminaへの製造部門の売却、Silo AIの取得事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
OpenAIとの契約とワラント、MI308の費用(約8億US$と約3.6億US$の戻し入れ)、輸出管理の経緯事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000018/amd-20251227.htm
2026年第2四半期・上期の売上、データセンター部門の売上と営業利益、研究開発費事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
OpenAI・Metaの契約(最大6GW)とワラントが未確定であること事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
コミットメント約303億US$、リース保証41億US$、四半期末後の投資コミットメントとリース事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
Heliosが2026年下期に出荷開始の見込みで、完成ラックは製造・販売しないこと事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
MI325の中国向けライセンスと25%の関税事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
第2四半期決算、第3四半期の売上見通し(約130億US$)、MI400シリーズ、Heliosの導入先、Anthropicとの提携、MEXTの取得事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000121/q22026991.htm
Metaとの契約(最大6GW。最初の1GWは2026年下期から出荷の予定)事実出典4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000045/pressreleasedatedfebruary2.htm
Anthropicとの提携(最大2GW、最初の1GWは2027年前半から、最大50億US$の出資の約束)事実出典5 https://ir.amd.com/news-events/press-releases/detail/1292/amd-and-anthropic-announce-strategic-partnership-to-deploy-up-to-2-gigawatts-of-amd-instinct-mi450-series-gpus
World Labsとの合併契約(約82億US$、AMD株で支払い)事実出典6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000182/amd-20260926.htm
MI455Xの仕様と発売日事実出典7 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi400/mi455x.html
MI355Xの仕様と発売日事実出典8 https://www.amd.com/en/products/accelerators/instinct/mi350/mi355x.html
Heliosの仕様と提供時期、ページ内の帯域の記載の食い違い事実出典9 https://www.amd.com/en/products/rackscale-solutions/helios.html
DOE向けスーパーコンピューターLux・Discovery事実出典10 https://www.energy.gov/articles/energy-department-announces-new-public-private-partnership-model-two-supercomputers
ロゴ画像の取得元事実出典11 https://www.amd.com/en.html
AI・機械学習に関わる企業の4類型の区分とAMDの位置づけ本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
データセンター部門が2025年の売上の約48%、研究開発費が売上の約23%という比率本稿の計算本稿の計算(16,635÷34,639、8,091÷34,639)
Heliosの出荷、OpenAI・Meta・Anthropicの導入、Anthropicへの出資の実行、World Labsの買収完了未確定/将来会社の見通し・計画・約束であり、確定した事実ではない。確認できなかった項目は本文に明記 出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2488/000000248826000123/amd-20260627.htm
ラック規模の設計を提供しつつ製造は他社に任せているという読み推測10-K・10-Qの記述からの本稿の解釈
大口顧客の購入をワラントや出資と組み合わせて確保しているという読み推測10-Q・発表の記述からの本稿の解釈
オープンな規格を差別化の軸にしているという読み推測製品ページの記述からの本稿の解釈
モデル・ソフトの知見を取り込む動きという読み推測10-K・8-Kの記述からの本稿の解釈
メモリ・先端プロセス・冷却・接続に関する素材技術者の視点解説一般的な技術解説であり、AMDの開示内容ではない。数値は製品ページの公称

最終更新:2026年10月15日/Troy Technical
本稿の数値は、AMDが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類(10-K、10-Q、8-K)と、同社および米国エネルギー省の公式発表・製品ページに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。製品の性能値はAMDの公称(理論上のピーク値)で、他社製品との優劣は述べていません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。