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AIデータセンターの電力と冷却 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

AIデータセンターの電力と冷却
― 「何MWか」「何kWのラックか」を、定義をそろえて読む

AIの計算は、サーバー1台、ラック1本、建物1棟のどの単位でも、これまでより桁違いの電力と熱を生みます。そのため、IT機器の電力(IT負荷)と電力会社から受ける容量(受電容量)、PUE、空冷と液冷の境目、冷却に使う銅・冷媒・配管・シールの材料といった、これまで設備の専門家の言葉だった話題が、AIの計算コストの一部になりました。この記事では、IEA と米国エネルギー省・ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)の報告、メーカーの公式資料、ASHRAE・OCP・ISO の文書を使って、数字の意味をそろえ、素材技術者の視点から冷却まわりの材料の論点を整理します。

構成:IEA「Energy and AI」、DOE・LBNL「2024 United States Data Center Energy Usage Report」、NVIDIA の公式ガイド、ASHRAE の白書・標準のページ、OCP のPG25ガイドライン、ISO/IEC 30134 のページ、Google の公式ページ、3M の SEC 提出書類、ECHA のページを使用/確認日 2026年10月15日

サーバー、ラックの冷却配管、冷却分配装置を一緒に示しています。電力の入り口と、熱を運び出す液の経路は別です。
図1 概念画像(ImageGenで生成)。サーバー、ラックの冷却配管、冷却分配装置を一緒に示しています。電力の入り口と、熱を運び出す液の経路は別です。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。
この記事の構成
  1. AIデータセンターの電力と冷却とは(3行でつかむ)
  2. 言葉をそろえる ― IT負荷、受電容量、PUE
  3. どのくらいの電力か ― 国際機関と研究所の推計
  4. ラックの電力密度とGPU ― 数kWから百kW超へ
  5. なぜ空気では足りなくなるか ― 熱の物理
  6. 冷却方式 ― 空冷、リアドア、直接液冷、浸漬
  7. 素材技術者の視点:冷却まわりの材料 ― 接液材料、冷媒、シール、フッ素系液体
  8. PUEの読み方 ― 1.09と1.4を並べてはいけない理由
  9. 電力供給の制約 ― 系統、機器の納期、そして将来の電力設計
  10. 限界と、確認できなかったこと
  11. 評価・標準の読み方
  12. 用語集
  13. 参考資料(一次情報)
  14. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・予定・提案であり、実績や確定が確認できていない事項
このほか、読み取りや整理は「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値の読み方

電力と熱の数字は、何の電力か(IT機器だけか、施設全体か)、定格か実測か、エネルギー(TWh)か電力(MW・GW)かで、同じ言葉でも意味が変わります。メーカーの値は「公称」、国際機関・研究所の値は「推計」で、将来の数字は予測やシナリオです。データセンターの計画・契約・発表の規模は「未確定/将来」として扱い、建設中や稼働中の規模とは区別します。個別の企業・施設の優劣は論じません。本稿は設備の設計・購入・安全の助言ではありません。

1. AIデータセンターの電力と冷却とは(3行でつかむ)

  • 電気はすべて熱になります:サーバーが使った電力は、最終的に熱として出ていきます。だから「電力を受ける」問題と「熱を捨てる」問題は同じ量の裏表で、ラック1本が数十〜百kW超になると、空気では運びきれなくなります(第5章の本稿の計算)本稿の計算
  • 数字は定義で読む:IEA は世界のデータセンターが2024年に約415 TWh(世界の電力の約1.5%)を使ったと推計し、2030年は基本ケースで約945 TWhとしています事実[参考資料1]。米国についてLBNLは、2023年に176 TWh(4.4%)と推計しています事実[参考資料3]。いずれも「エネルギー」で、建物の「MW」とは別の量です
  • 素材が冷却を支えます:直接液冷では、チップの熱が熱界面材料、銅の冷却板、冷媒、配管、シールを順に通って外へ出ます。OCP の2026年9月のガイドラインは、これらの接液材料(wetted materials)の適合性の確認を設計者と運用者に求めています事実[参考資料15]
この記事でいちばん大事な一行

「100 MWのデータセンター」は、IT負荷なのか、受電容量なのか、計画なのかで、まったく別の話になります。PUEが1.2なら、IT負荷100 MWの施設は施設全体で約120 MWを必要とします(第2章の本稿の計算)。そして、計画・契約・発表の MW は、建設・稼働の MW とは区別して読みます。

2. 言葉をそろえる ― IT負荷、受電容量、PUE

データセンターの電力には、少なくとも次の4つの「MW」が混ざって使われます。どれを指すかで、数字は何割も変わります。ISO は「データセンターの施設とインフラ」の規格群(ISO/IEC 22237)と、重要業績指標の規格群(ISO/IEC 30134)を整備しており、2025年には「データセンターの IT 機器と施設インフラの容量計画・予測・管理」の技術仕様(ISO/IEC TS 8236-1、-2)も発行されています事実[参考資料17]。ここでは、それらの本文は未確認のまま、一般的な用語の使い分けを整理します(本稿の解説)。

言葉意味(一般的な使い方)読むときの注意
IT負荷(IT load)サーバー、ストレージ、ネットワーク機器など IT機器が使う電力設計の最大(定格)か、実際の運転の値かを確認する。サーバーは定格まで使い切ることはまれ(下の LBNL の記述)
施設の電力(facility power)IT負荷に、冷却、電力変換の損失、照明などを加えた建物全体の電力。IT負荷 × PUE が目安施設の電力は、PUEが悪いほどIT負荷より大きくなる
受電容量・契約容量(utility capacity)電力会社や送電事業者から受けられる(または契約した)容量冗長設計や将来の増設の余裕を含みうる。契約済みでも、系統の工事が終わるまで使えないことがある(第9章)
計画・発表の規模企業や事業者が計画・発表した規模。IT負荷か受電容量か明記されないことがある未確定/将来 として扱い、建設中・稼働中の規模と区別する

4語の整理は本稿の解説です。一般的な用語法で、ISO 等の規格本文に基づく定義ではありません。

PUE(power usage effectiveness、電力使用効率)は、「施設全体の電力量 ÷ IT機器の電力量」で表す指標で、1.0 に近いほど、冷却や電力変換などの「IT以外」の電力が小さいことを示します(本稿の整理)。国際規格 ISO/IEC 30134-2 が PUE の定義、測定区分、計算、報告、解釈を定めています事実[参考資料16]。Google の公式ページは、PUE を「冷却や配電などの、計算以外の間接的なエネルギー」を比べる業界標準の比と説明しています事実[参考資料18]。

電力の入り口と熱の出口(概念図)電力会社受電容量変圧・配電UPS(損失あり)IT機器IT負荷サーバー・ネットワーク・ストレージ熱として外へ排熱=受けた電力冷却設備(ポンプ、ファン、冷凍機など)IT以外の電力のおもな部分施設の電力 = IT負荷 + 冷却 + 電力変換の損失 + その他PUE = 施設全体の電力量 ÷ IT機器の電力量※ 概念図。実際の構成は施設で異なります(冗長構成、発電機、蓄電設備などは省略)。
図2 概念図(ベクター作図)。受電容量、IT負荷、PUE の関係を示す説明用の図です。PUE の定義は ISO/IEC 30134-2[参考資料16]と Google の説明[参考資料18]によります。
本稿の計算①:IT負荷100 MWの施設に必要な施設の電力とGPUの数

本稿の計算 施設の電力:PUE 1.2 なら 100 × 1.2 = 120 MW。PUE 1.4(LBNL の2023年の米国平均の推計事実[参考資料3])なら 140 MW。同じIT負荷でも、PUEの差だけで20 MWの違いです。

GPUの数:NVIDIA の公式ガイドは、GB200 NVL72 のラックの消費電力を約120 kW、1ラックに72個のGPUと記しています事実[参考資料7][参考資料9]。100 MW ÷ 0.12 MW = 約833 ラック、×72 = 約60,000.0個は、IT負荷のすべてがこのラックだと仮定した上限的な概算です。

前提と限界:実際には、ストレージ、フロントエンドのネットワーク、冷却設備の電力などがあり、ラックの消費電力は構成で変わります。ラックの消費電力を定格と見るか、実際の運転値と見るかでも数が変わります(LBNL は、8個のH100ノードが測定で定格の熱設計電力の平均74%だった解析に触れています事実[参考資料3])。個別の施設の規模や GPU 数の予測ではありません。

3. どのくらいの電力か ― 国際機関と研究所の推計

IEA の「Energy and AI」は、2024年の世界のデータセンターの電力消費を約415 TWh(世界の電力消費の約1.5%)と推計し、過去5年で年12%ずつ増えたとしています事実[参考資料2]。基本ケースでは2030年に約945 TWh(世界の約3%弱)、2024〜2030年で年約15%の成長、2035年は約1,200 TWhと見込み、2035年の幅は感度ケースにより700〜1,700 TWhとしています事実[参考資料1]事実[参考資料2]。IEA 自身が、現在と将来の数字の両方に不確実性があると述べています(IEAの記載)。

2024年の内訳は、サーバーが平均で約6割、ストレージが約5%、ネットワーク機器が最大5%、冷却は効率の良いハイパースケールで約7%から効率の悪い企業のデータセンターで3割超までとされています事実[参考資料2]。2030年までの増加分の約半分を高速化されたサーバー(GPU搭載サーバーなど)が占めると基本ケースは見ています事実[参考資料2]。

米国については、DOE が2024年12月20日に公表した LBNL の報告が、2014年58 TWh、2018年約76 TWh(1.9%)、2023年176 TWh(4.4%)と推計し、2028年は325〜580 TWh(6.7〜12.0%)のシナリオ範囲を示しています事実[参考資料3]事実[参考資料4]。この幅は、GPUの出荷数、AIサーバーの運転状況(定格の60〜80%)、冷却方式の選択(液冷への移行など)の違いによる複数のシナリオです事実[参考資料3]。報告は、この分野のデータの公開が少なく、推計は仮定に依存すると断っています(LBNLの記述)。

数字値平均電力に直すと(本稿の計算)
世界 2024年(IEA 推計)約415 TWh約47 GW
世界 2030年(IEA 基本ケース)約945 TWh 未確定/将来約108 GW
米国 2023年(LBNL 推計)176 TWh約20 GW
米国 2028年(LBNL シナリオ範囲)325〜580 TWh 未確定/将来約37〜66 GW。LBNL は稼働率50%を仮定して設備として74〜132 GWと換算

TWh を 8,760時間で割った平均電力は本稿の計算です。世界(IEA)と米国(LBNL)は対象・方法が異なり、足し引きや直接の比較はしません。LBNL の「74〜132 GW」は報告の記載で、稼働率50%を仮定した換算です事実[参考資料3]。

ここで大事なのは、エネルギー(TWh)は一年間の積算で、電力(GW、MW)は同時に必要な大きさだという点です。電力設備は、平均ではなく「同時に必要な最大」に合わせて作るため、同じTWhでも必要な設備の大きさは稼働率で変わります(LBNL が稼働率50%で換算した理由)。

4. ラックの電力密度とGPU ― 数kWから百kW超へ

NVIDIA の DGX H100(GPU 8個)のユーザーガイドは、最大消費電力を10.2 kW、吸排気の気流を1,105 CFM(ファン80%)、発熱を38,557 BTU/hr(約11.3 kW)としています事実[参考資料5]。これは空冷のサーバー1台の公称値です。4台を1ラックに入れれば、4 × 10.2 = 約40.8 kW になります本稿の計算。

これに対し、GB200 NVL72(72個のGPUと36個のCPUを1ラックにまとめた、ラック規模の液冷設計事実[参考資料9])について、NVIDIA の DGX GB ラックのガイドは、ラックの消費電力が約120 kWで、計算トレイは液冷、ネットワークとストレージの機器は空冷だと記しています事実[参考資料7]。OCP への設計提供を説明した NVIDIA の技術ブログも、ラックに必要な冷却容量120 kW に直接液冷を採用し、1,400 Aを流せる母線、100ポンド超の鋼材補強、液冷のクイックディスコネクトを備えたと述べています事実[参考資料8]。

次の世代では、DGX Vera Rubin NVL72 のガイド(2026年10月7日更新)が、ラックに電源棚4台(各110 kW定格、18.3 kWの空冷電源6個)を載せると記していますが、ラックの消費電力は記載していません事実[参考資料11]。電源棚の定格は電源設備の容量で、ラックの消費電力とは別の量なので、本稿は消費電力を推計しません。さらに先については、NVIDIA が「1 MW のITラック」を支える800 VDC の電力設計への移行を、2027年から、Kyber ラック規模のシステムに合わせて進めると述べています(同社の計画)事実[参考資料10]。

ラックの電力の目安(対数目盛り)公称値・本稿の計算・企業の計画を区別して表示。建物全体ではなく、サーバー1台またはラック1本の値です。10 kW100 kW1,000 kWDGX H100 1台(最大)10.2 kW(公称)同4台を1ラック(本稿の計算)40.8 kW(計算)空冷ラックの例(ASHRAE白書)50.0 kW(例示)GB200 NVL72 ラック(約)120 kW(公称)1 MW ITラック(NVIDIA 計画)1,000 kW(計画)※ DGX H100 は空冷サーバー1台の最大消費電力(NVIDIA 公称)。GB200 NVL72 は NVIDIA のガイドの「約120 kW」。※ 1 MW は NVIDIA が述べた将来の設計目標で、実績ではありません。ASHRAE の50 kWは白書の例示値。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。各値は[参考資料5・7・10・12]にもとづきます。公称・例示・計画・本稿の計算が混在し、1つの物差しでの優劣ではありません。
素材技術者の視点①:定格と実際の運転は違う ― 設計の余裕は「材料の余裕」でもある

LBNL の報告は、サーバーの「定格電力」は電源・電気設備を設計するための保守的な値で、すべての部品が同時に最大で動くと仮定したものであり、実際にそこまで使われることはまれ、と説明しています事実[参考資料3]。同じ報告は、測定された8 GPUノードの運転電力が、メーカーの定格熱設計電力の平均74%だった解析を引いて、AIサーバーの運転電力を定格の60〜80%と置いています事実[参考資料3]。

ところが冷却は、定格の熱を捨てられるように作る必要があります。冷却板、熱界面材料、ホース、クイックディスコネクトは、平均ではなく最も熱い瞬間の流量と温度で選ばれます。つまり、電力の議論で「実際は定格の7割」と言えても、材料と配管の設計は定格側の条件を満たす必要がある点は変わりません(これは本記事による解説で、個別の設計判断ではありません)。

5. なぜ空気では足りなくなるか ― 熱の物理

熱を運ぶ流体の量は、「Q = 質量流量 × 比熱 × 温度差」で決まります。同じ熱量を同じ温度差で運ぶなら、比熱が大きく密度も大きい水は、空気よりはるかに少ない体積で済みます。ASHRAE の技術委員会 TC 9.9 の白書は、液冷は空冷より熱を取り除く効果が「何倍も」高く、チップの電力が上がるほど、チップと冷却媒体の温度差の制約から、より低い熱抵抗が必要になるため、空冷から液冷への移行が進むと述べています事実[参考資料12]。

本稿の計算②:120 kWのラックの熱を、空気と水で運ぶとどうなるか

本稿の計算 空気の物性の確認:NVIDIA の DGX H100 は、気流1,105 CFM(0.52 m³/s)で発熱38,557 BTU/hr(11.3 kW)と記載事実[参考資料5]。空気の密度1.2 kg/m³、比熱1,005 J/(kg·K)と置くと、空気の温度上昇は約18 K。

空気で120 kW:温度上昇を同程度の18 Kとすると、必要な風量は 120,000 ÷ (1.2 × 1,005 × 18) = 約5.5 m³/s(約11,700 CFM)。DGX H100 を4台詰めたラックの気流(4 × 1,105 = 4,420 CFM)の約2.7倍です。

水で120 kW:温度上昇を10 Kと仮定すると、質量流量は 120,000 ÷ (4,186 × 10) = 約2.87 kg/s、体積で約172 L/分。空気の体積流量の 約1/1,900.0 です。

前提と限界:温度上昇(空気18 K、水10 K)は仮定の値で、実際の設計値ではありません。冷却液には水とプロピレングリコールの混合液(PG25 など)が使われ、本稿は水の物性値で概算しました(混合液の物性による補正はしていません)。ラックのすべての熱が液体に行くのではなく、NVIDIA のガイドが記すとおり一部の機器は空冷です事実[参考資料7]。

チップ側の制約も同じ方向です。チップの電力 P、許容できるケース温度 Tc、冷却媒体の温度 Tf のとき、冷却経路全体に許される熱抵抗は (Tc − Tf) ÷ P 以下でなければなりません(ASHRAE の白書の考え方事実[参考資料12])。本稿の例(ケース温度の上限85℃、媒体35℃、いずれも仮定の値)では、700 Wのチップなら約0.071 K/W、350 Wなら約0.143 K/W、仮に1,400 Wなら約0.036 K/W です本稿の計算。H100 SXM の最大TDPはNVIDIAの公称で最大700 W(設定可能)です事実[参考資料21]。電力が倍になると、許される熱抵抗は半分になります。

120 kWを運ぶのに必要な流量(対数目盛り・本稿の計算)空気は温度上昇18 K、水は10 Kと仮定。体積流量(m³/s)で比較。0.001 m³/s0.01 m³/s0.1 m³/s1 m³/s空気(約11,700 CFM)5.5 m³/s水(約172 L/分)0.0029 m³/s空気は水の約1,900.0倍の体積を流す必要がある(この仮定のもとで)。※ 空気の密度1.2 kg/m³・比熱1,005 J/(kg·K)、水の密度998 kg/m³・比熱4,186 J/(kg·K)。水の値でPG25を代用した概算です。※ 温度上昇は仮定値で、実際の設計値ではありません。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。本稿の計算(Q=質量流量×比熱×温度差)です。仮定した温度上昇での概算で、特定の設備の設計値ではありません。

6. 冷却方式 ― 空冷、リアドア、直接液冷、浸漬

ASHRAE TC 9.9 の白書は、液冷の方式として、チップに冷却板(コールドプレート)を直接載せる「直接液冷(オンチップ冷却板)」、ラックの背面に置く熱交換器(リアドア)、サーバーを液体に浸す「浸漬冷却(単相・二相)」を挙げています事実[参考資料12]。LBNL の報告も、液冷(リアドア熱交換器、直接液冷、浸漬)は冷却水の温度を上げて無料に近い冷却(フリークーリング)を広く使えることが利点だと整理し、液冷ITシステムは空冷より高い水温で運転できることが多い、と述べています事実[参考資料3]。

方式熱の通り道(一般的な整理)ASHRAE 白書・OCP 資料が挙げる論点
空冷チップ → ヒートシンク → 空気 → 空調機サーバー内ファンの電力が増え、密なサーバーで10〜20%に達することがある。50 kWのラックならファン電力は少なくとも5 kW(ASHRAE 白書の記述)
リアドア熱交換器サーバーは空冷のまま、排気をラック背面の水冷コイルで冷やす空冷と液冷の中間。非液冷分の熱の回収にも使われる(LRZ のSuperMUC-NG の例)
直接液冷(オンチップ冷却板)チップ → 熱界面材料 → 冷却板(銅)→ 冷却液 → マニフォールド → CDU接液材料の適合性の確認、コネクターの耐久、流体の管理が要点(第7章)。NVIDIA は GB200 NVL72 で採用
浸漬冷却(単相・二相)サーバー全体を絶縁性の液体に浸し、液体で熱を運ぶASHRAE 白書は、材料の適合性の評価と保証への影響の確認を展開前に行うことを勧め、タンクでは保守に重い機器の取り外しが必要になりうると述べる

すべて事実(ASHRAE TC 9.9 白書[12]、LBNL[3]、NVIDIA[7]の記述の整理)。第2列の経路の書き方は本稿の整理です。

ASHRAE の液冷クラス(第5版、2021年)名称の意味
W17、W27、W32、W40、W45、W+旧称は W1、W2、W3、(W40は新設)、W4、W5。名称は供給水温の上限を入れた形に改められ、いずれの下限も2℃。機器は、指定クラスの範囲全体で通常の性能を発揮することが要求される

事実(ASHRAE TC 9.9 白書[12])。各クラスの温度の詳しい値は第5版の本文(有料)で確認でき、本稿は名称の意味のみを記載します。

チップからTIM、冷却板、ラックの配管、CDUの熱交換器を通り、別系統の施設側へ熱を渡します。二つの液系統を混ぜずに示しています。
図5 概念画像(ImageGenで生成)。チップからTIM、冷却板、ラックの配管、CDUの熱交換器を通り、別系統の施設側へ熱を渡します。二つの液系統を混ぜずに示しています。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。 [参考資料15]
元のSVG模式図・数値・出典注記を見る
直接液冷:チップの熱が外に出るまでの通り道と、材料の論点(概念図)チップパッケージ熱界面材料(TIM)冷却板(銅など)冷却液(PG25 など)配管・接続継手・シールCDU熱交換施設の水・外気へ(ドライクーラー等)材料の論点(本稿の整理)・TIM:熱抵抗、厚み、温度サイクルでの劣化(本シリーズ「熱界面材料TIM」編)・冷却板:銅と、ろう材(OCPの表に銅・錫・りん・ニッケルのろう材の例)・冷却液:PG25=プロピレングリコール約25体積%+防食剤+水。防食剤は徐々に消費される・継手:ステンレス製を推奨、ニッケル・クロムめっきは摩耗でガルバニック腐食の懸念・エラストマー:過酸化物架橋のEPDMを推奨。硫黄架橋は硫酸イオンを溶出する可能性※ 材料の例はOCPのPG25ガイドライン[参考資料15]の記述(「代表的な例で網羅的ではない」とされている)。※ 構成は説明用で、特定の製品の構造ではありません。※ 運転温度の目安は、OCP のガイドラインで17〜66℃の閉ループが想定されています。
図5 概念図(ベクター作図)。直接液冷の熱の通り道と、材料の論点の概念図です。材料の記述は OCP のPG25ガイドライン[参考資料15]、TIMは本シリーズの解説によります。

7. 素材技術者の視点:冷却まわりの材料 ― 接液材料、冷媒、シール、フッ素系液体

OCP の「液冷ラックにおけるプロピレングリコール系熱伝達流体の使用ガイドライン」(改訂2.0、版1.0.0、2026年9月15日)は、冷却液の通る部品を「接液材料」と呼び、冷却板、CDU(冷却液分配装置)、ホースと配管、ポンプのシール、熱交換器、クイックディスコネクトのシールを含めて、選んだ流体との適合性を、設計者・施工者・運用者が確認することを求めています。適合性はシステムの最高運転温度で確認し、部品の交換や設計の変更のたびに再確認するとしています事実[参考資料15]。

材料OCP ガイドラインの記述(PG25 向け・代表例で網羅的でない)
銅適合する代表例として CDA110、CDA1020、CDA1220 などの銅を挙げる。冷却板に銅、ろう材(銅・錫・りん・ニッケル系の例)が使われる
真ちゅう亜鉛15%未満が望ましい。15%超は脱亜鉛腐食を受けやすく、使うなら ISO 6509 で耐脱亜鉛性を確認し、製造者に相談する
ステンレス鋼304L、316L 以上が望ましい。クイックコネクターはステンレス製を推奨
めっきした継手ニッケル・クロムめっきの継手は、実績が確認されるまで避けることを推奨。繰り返しの使用でめっきが摩耗すると、下地の金属との間でガルバニック対ができ、腐食しやすくなりうる。真ちゅうが腐食すると亜鉛や銅が冷却液に溶け出す。亜鉛が銅の冷却板の長期性能に及ぼす影響は、現時点で確定していない
EPDM(エラストマー)過酸化物架橋の EPDM を推奨。硫黄架橋の EPDM は時間とともに冷却液に硫酸イオンを出し、腐食の問題につながりうるため注意
運転温度閉ループの運転温度は17〜66℃が想定される。この範囲を超える場合は、特にエラストマーとプラスチックの適合性の見直しが必要

すべて事実(OCP PG25 ガイドライン[15]の記述の整理)。本稿は規格・設計の助言ではなく、材料名の列挙は代表例にとどまり、個別の採用の可否は流体と部品の供給元の確認が必要です。

素材技術者の視点②:冷却液は「消耗する材料」、そして接続部は「繰り返し使う部品」

同じガイドラインは、冷却液に防食剤が配合され、金属表面に保護層をつくる一方で、防食剤が徐々に消費されること、時間とともに濃度が下がることを述べ、防食剤の析出による汚れや閉塞が起きうるとして、防食剤の濃度・pH・汚染の分析記録を残すことを求めています事実[参考資料15]。冷却液は、入れて終わりの材料ではなく、保守で状態を監視し続ける材料です。

接続部(クイックディスコネクト)は、NVIDIA の技術ブログが、ラックの設計で位置合わせと確実な接続のための工夫(ブラインドメイトのマニフォールドなど)を挙げている部品です事実[参考資料8]。ラックの保守のたびに繰り返し抜き差しされるため、シールのへたりや、めっきの摩耗(上記の表)が、液漏れリスクの材料側の論点になります(これは本記事による解説です)。

浸漬冷却と、フッ素系の液体。ASHRAE の白書は、浸漬冷却は幅広い温度への対応、高い熱の捕捉、高密度などの利点がある一方、デプロイとサービスに複雑さがあり、液体とIT機器の材料の相性が保証に影響しうるので、展開の前に材料適合性の評価と保証への影響の確認を行うことを勧めています事実[参考資料12]。二相式の浸漬冷却に使われる液体には、フッ素系のものがあります。3M は2022年12月に、2025年末までにすべてのPFAS(有機フッ素化合物)の製造から撤退する方針を発表し、2025年9月30日の四半期報告書(10-Q)はその撤退に向けて進行中だと記しています事実[参考資料19]。EU では、PFAS全般の制限提案について、ECHA のページ(2026年10月15日確認)が、SEAC(社会経済分析委員会)の意見案への意見募集が2026年5月25日まで行われ、11月の SEAC 会合の議題が2026年10月7日に公表されたと示しています事実[参考資料20]。最終的な規制の内容と時期は確認できておらず、「未確定/将来」事実です。どの液体が対象になるかは物質ごとの確認が必要で、本稿は個別の冷却液の可否を論じません。

素材技術者の視点③:「熱を運ぶ」と「材料を守る」は同じ設計の表裏

冷却液の温度を上げると、冷凍機の使用が減ってフリークーリングが広く使えるため、エネルギーの面では有利です(LBNL、ASHRAE の記述)事実[参考資料3][参考資料12]。一方、OCP のガイドラインが示すとおり、温度が上がるほどエラストマーやプラスチックの適合性の確認範囲が広がります事実[参考資料15]。エネルギーの効率と、材料の寿命・信頼性は、温度を介してトレードオフになりえます(本記事による解説)。

熱界面材料の役割と劣化は本シリーズ「熱界面材料TIM」編、UPS・電池と系統の関係は「データセンターと蓄電」編、HBMなどのパッケージ内の熱は「HBM」「CoWoS」編に詳しく書いています。本稿は、それらをつなぐ施設側の電力と冷却の物差しを担います(本記事による位置づけ)。

中央の流路付き冷却板、薄いTIM、液の試料、継手、シールを区別してください。熱伝導だけでなく、腐食・漏れ・材料の適合性も確認対象です。
図6 概念画像(ImageGenで生成)。中央の流路付き冷却板、薄いTIM、液の試料、継手、シールを区別してください。熱伝導だけでなく、腐食・漏れ・材料の適合性も確認対象です。 実際の施設・製品・測定結果ではありません。

8. PUEの読み方 ― 1.09と1.4を並べてはいけない理由

PUEには数字が複数あり、対象と測り方が違います。LBNL は、米国のデータセンターの平均PUEを、2014年の約1.6から2023年の約1.4に下がったと推計しています(大規模なハイパースケール・コロケーションへの移行が主因)。2028年は、液冷のAIサーバーの増加も含めて、1.15〜1.35に下がるシナリオを示しています事実[参考資料3]。LBNL の数字は、設計どおりの運転を仮定したシミュレーションにもとづく推計で、個々の施設の実測のPUEとは異なると報告自身が断っています事実[参考資料3]。

一方、Google の公式ページは、自社の全世界のデータセンター群の2025年の年間平均PUEを1.09(過去12か月の累積値、安定運転に入った大規模施設が対象)としています事実[参考資料18]。これは企業の報告値で、LBNL の米国全体の推計(約1.4)とは対象も方法も異なり、並べて優劣を論じることはできません。

IT電力を1.00としたときの「IT以外」の大きさ(対象・方法が異なる値)IT機器 = 1.00米国平均 2014年(LBNL 推計)PUE 1.60米国平均 2023年(LBNL 推計)PUE 1.40Google 全世界 2025年(企業の報告)PUE 1.09米国平均 2028年(LBNL シナリオ)PUE 1.15〜1.35(未確定/将来)※ 値は、LBNL[参考資料3]の推計(設計どおりの運転を仮定したシミュレーション)と、Google[参考資料18]の自社報告。※ 対象施設、測定の境界、期間が異なるため、棒の長さの優劣を論じることはできません。※ 2028年は、棒の薄い範囲がLBNLのシナリオ範囲(1.15〜1.35)。
図7 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。値の出典は[参考資料3・18]です。棒は PUE−1(IT以外の比率)を示す作図で、対象・方法が異なる値の優劣比較ではありません。

PUEが見えにくくするものもあります。ASHRAE の白書は、サーバー内部のファン電力が、密なサーバーで10〜20%に達しうることを示し、ファンはサーバーと同じUPSから給電されると述べています事実[参考資料12]。サーバー内部のファンはIT機器の一部なので、一般にはIT側の電力に入ります(本稿の解説で、規格本文は未確認です)。つまり、空冷から液冷に替えてファン電力を減らすと、PUEの分母(IT電力)が減り、施設全体の電力も減るので、PUEの数字だけでは改善の全体像が見えません(本稿の解説)。PUEは「IT以外の効率」の指標であり、同じ計算量を使った電力(計算あたりの電力)の指標ではありません。

9. 電力供給の制約 ― 系統、機器の納期、そして将来の電力設計

IEA は、電力網が多くの地域で既に逼迫しており、手当てをしなければ計画中のデータセンター・プロジェクトの約20%が遅れるおそれがある、と推計しています。系統の接続待ちは長く複雑で、先進国で新しい送電線の建設に4〜8年かかり、変圧器やケーブルなど重要な機器の待ち時間はこの3年で倍増し、ガス火力のタービンの納期も数年に及ぶとしています事実[参考資料1]。また、米国のデータセンター容量の半分近くが5つの地域の集積に集中しており、データセンターは地域の電力市場で大きな比率を占める、と述べています事実[参考資料1]。AI向けのデータセンターは、アルミ精錬所のような電力多消費の工場並みの電力を使いうるが、地理的にはるかに集中している、とも記しています事実[参考資料1]。

この制約は、「受電容量」と「IT負荷」を区別する理由でもあります(第2章)。契約や発表の規模が大きくても、系統側の工事や機器の納期が間に合わなければ、その容量は使えません。IEA の「約20%が遅れうる」は、IEA の推計と条件つきの見通しで、個別の計画の結果を予言するものではありません事実[参考資料1]。

施設の内部の電力設計も変わろうとしています。NVIDIA は、1 MW のITラックを支えるために、54 V系から800 VDCへの移行を進めるとし、2027年に Kyber ラック規模のシステムに合わせて本格生産に入ると述べ、54 V系に比べエンドツーエンドの効率が最大5%向上、同じ導体サイズで85%多く電力を送れる、などと主張しています(同社の主張・計画)事実[参考資料10]。同じ文書は、過電流保護の信頼性や保守の面で「なお技術革新が必要」で、設備投資・運用費・安全性への影響を検討中だとも述べています事実[参考資料10]。これらは実績ではなく設計目標です。UPSと蓄電池の役割の変化は、本シリーズ「データセンターと蓄電」編で扱っています。

制約何が足りないか出典での扱い区分
系統接続接続の順番待ち、送電線の建設期間(先進国で4〜8年)IEA が2030年に向けて約20%の遅延リスクと推計未確定/将来
重要機器変圧器・ケーブルの待ち時間が3年で倍増、タービンの納期が数年IEA の記述事実
地域の集中米国のデータセンター容量の半分近くが5つの地域に集中IEA の記述事実
ラック内の電力供給母線の電流(GB200 NVL72で1,400 A)、将来は800 VDC案NVIDIA のブログ。800 VDC は2027年からの計画未確定/将来

IEA[1]、NVIDIA[8・10]の記述の整理。

10. 限界と、確認できなかったこと

  • 個別の施設の規模:特定のデータセンターやプロジェクトの MW・GPU 数は、IT負荷か受電容量かを公式資料で区別できなかったため、本稿は載せていません。計画・契約・発表の規模は「未確定/将来」です
  • ラックの消費電力:GB200 NVL72 は「約120 kW」(NVIDIA のガイド)を使いました。DGX Vera Rubin NVL72 のラック消費電力は、公式ガイドに記載がなく確認できていません。電源棚の定格は消費電力ではありません
  • 規格の本文:ISO/IEC 30134-2:2026、ISO/IEC 22237-4、ASHRAE 90.4-2025、ASHRAE Thermal Guidelines 第5版の本文は有料または未取得で、確認したのはISOやASHRAEのページ、白書、ファクトシートの記載です。PUEの測定区分の詳細や液冷クラスの各温度は書いていません
  • 冷却液・材料:OCP のガイドラインは PG25 向けで、他の冷却液(浸漬用の絶縁液体など)の材料適合性や、二相式の個別の液体の規制上の位置づけは確認していません。ECHA の最終的な規制内容は確認できていません
  • 水の使用と地域差:LBNL は、米国のデータセンターの直接の水消費が2023年に約660億リットル、電力を通じた間接の水の使用が約8,000億リットルと推計しています事実[参考資料3]。本稿は水の問題を詳しく扱わず、電力と冷却に絞りました。気候や電源構成による地域差も詳しくは扱っていません
  • 他の編との境界:UPSと蓄電池は「データセンターと蓄電」編、熱界面材料の詳細は「熱界面材料TIM」編、パッケージ内の熱は「HBM」「CoWoS」編にあります
この記事のまとめ
  • 電力の「MW」は定義で読みます。IT負荷、施設の電力(IT×PUE)、受電容量、計画・発表は別の量で、IT負荷100 MWは、PUE 1.2で約120 MW、PUE 1.4で約140 MWの施設の電力になります本稿の計算
  • エネルギー(TWh)と電力(GW)は別の量で、IEA の世界約415 TWh(2024年)、LBNL の米国176 TWh(2023年)は推計です事実
  • ラックの密度は数十kWから百kW超へ。120 kWのラックの熱を運ぶのに、空気は水の体積の約1,900.0倍が必要という概算になりました本稿の計算
  • 液冷では接液材料が設計の中心になります。OCP は最高運転温度での適合性確認、防食剤の管理、EPDM の架橋方式や継手のめっきへの注意を示しています事実
  • PUEは対象と方法が違う値を並べて優劣を論じない。PUEの国際規格 ISO/IEC 30134-2 は2026年1月に第2版が発行され、2016年版は撤回されています事実[参考資料6]
  • 電力供給は系統側の制約を受けます。IEA は、計画中のプロジェクトの約20%が遅れるおそれがあると推計しています事実

11. 評価・標準の読み方

データセンターの電力と冷却は、(1) エネルギー効率(PUE など)、(2) 熱の取り扱い(温度条件・冷却方式)、(3) 設計の効率基準、(4) 液冷の流体・材料、(5) 将来の電力設計、といった観点で評価します。AIの推論性能のような「ベンチマーク」は、施設の電力や冷却には一般に存在せず、規格と指針、事業者の自己報告が中心です。以下は、2026年10月15日に公式ページで番号・題名・版・状態を確認できたものです。

評価項目代表的な評価手法・資料(名称・出典)標準・指針読み方の注意
エネルギー効率(PUE)LBNL の推計(米国平均1.4=2023年)[3]、Google の自社報告(1.09=2025年)[18]事実ISO/IEC 30134-2:2026(PUE、第2版、2026年1月発行。2016年版は撤回[6])。ISO/IEC 30134 は PUE のほか、REF(再エネ)、ERF(エネルギー再利用)、CER(冷却効率比)、CUE(炭素)、WUE(水)などの KPI の規格群[16・17]事実対象施設、測定の境界、期間が違う値を並べない。本文は有料で未確認(規格は「測り方」を定め、水準の合否を定めるものではない)
設計の効率基準確認できなかった(個別の施設の適合状況)ANSI/ASHRAE 90.4(データセンターの省エネ標準)。2022年版のファクトシートは、機械負荷成分(MLC)と電気損失成分(ELC)の上限を定め、IT機器の負荷が10 kW超かつ床面の電力密度が20 W/ft²超のデータセンターに適用すると記す。ASHRAE のページは2025年版を掲載[13・14]事実建築・省エネ法規(IECC など)が参照する場合がある。2025年版の本文は未確認
熱環境・液冷クラスASHRAE TC 9.9 白書「Emergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers」(2021)[12]事実ASHRAE Thermal Guidelines for Data Processing Environments 第5版(2021年):液冷クラス W17〜W+。ISO/IEC 22237-4:2021(データセンターの設備とインフラ ― 環境制御)[12・17]事実ガイドラインは推奨で、法的拘束力はない。第5版の後継(改訂)の有無は確認できなかった
液冷の流体・接液材料OCP「Guidelines for Using Propylene Glycol-Based Heat Transfer Fluids in Liquid Cooled Racks」改訂2.0・版1.0.0(2026年9月15日)[15]事実OCP の Cold Plate サブプロジェクトの接液材料ワークストリームが、リスト拡充と検証を進めている(ガイドラインの記載)[15]未確定/将来ガイドラインの材料表は「代表例で網羅的でない」。自社の部品の採用は、流体と部品の供給元での確認が必要
フッ素系液体の規制3M の SEC 提出書類(2022年12月発表、2025年9月30日の10-Q)[19]、ECHA のページ[20]事実EUのPFAS制限提案:SEAC 意見案への意見募集は2026年5月25日まで、11月の SEAC 会合の議題は2026年10月7日に公表[20]未確定/将来提案・意見案の段階で、確定した規制ではない。個別の液体の対象可否は物質ごとに確認
将来の電力設計NVIDIA の800 VDC のブログ(企業の計画)[10]未確定/将来確認できなかった(800 VDC のデータセンター電力の国際規格)効率やコストの数字は企業の主張で、独立した検証は確認できていない
計画・契約・発表の規模(MW)確認できなかった(IT負荷と受電容量を区別して公表する統一的な枠組み)ISO/IEC TS 8236-1・-2:2025(IT機器と施設インフラの容量計画・予測・管理)が存在する[17]。本文は未確認事実未確定/将来 として扱い、IT負荷か受電容量かを必ず確認する

区分タグは各セルに付けています。ISO・ASHRAE・OCP・ECHA の番号・題名・版・状態は、各公式ページで2026年10月15日に確認しました(ISO と ASHRAE のページはブラウザで確認)。表の整理は本稿によるものです。

読み方の注意は3つです。

  • 宣言値と実測値:メーカーの消費電力・気流は公称の最大値、PUEは企業の自己報告か研究所のシミュレーションで、個別の施設の実測とは別物です。比べるときは、測定の境界と期間をそろえます
  • 標準は「測り方」と「推奨」が中心:ISO/IEC 30134 は KPI の定義と測り方の規格で、ASHRAE の熱ガイドラインと OCP のガイドラインは推奨です。法的な要求(建築・省エネ法規)と区別して読みます
  • 版と状態の確認:PUEの規格は2026年に改訂され、旧版は撤回されました。ガイドラインも改訂が続いています(OCP PG25は2026年9月に改訂2.0)。引用するときは版と日付を添えます

12. 用語集

IT負荷
IT機器が使う電力。
受電容量
電力会社などから受けられる(契約した)容量。
PUE
Power usage effectiveness。施設全体の電力量÷IT機器の電力量。
WUE
Water usage effectiveness。水の使用量の効率の指標。
TDP
Thermal design power。冷却設計の基準となる熱設計電力。
直接液冷
チップに冷却板を載せ、冷却液で熱を運ぶ方式。
浸漬冷却
サーバーを絶縁性の液体に浸して冷やす方式(単相・二相)。
CDU
Coolant distribution unit。冷却液を循環・分配し、施設の水と熱交換する装置。
接液材料
冷却液に触れる部品の材料。
PG25
プロピレングリコール約25体積%の防食剤入り水溶液。
PFAS
有機フッ素化合物の総称。
TWh/GW
エネルギー(一年の積算)/電力(同時に必要な大きさ)。

13. 参考資料(一次情報)

  1. IEA "Energy and AI" — Executive summary(2025年版。2024年約415 TWh、2030年基本ケース約945 TWh、系統接続の遅延リスク約20%など/確認日 2026年10月15日) — iea.org/reports/energy-and-ai/executive-summary
  2. IEA "Energy and AI" — Energy demand from AI(内訳:サーバー約60%、冷却は約7%〜30%超、2030年までの増加の要因、地域別の増加/確認日 2026年10月15日) — iea.org/reports/energy-and-ai/energy-demand-from-ai
  3. Shehabi A. ほか(LBNL) "2024 United States Data Center Energy Usage Report", Lawrence Berkeley National Laboratory (2024), DOI 10.71468/P1WC7Q(PDF の本文を、eScholarship のページ上で閲覧して確認/2026年10月15日) — escholarship.org/uc/item/32d6m0d1
  4. 米国エネルギー省 "DOE Releases New Report Evaluating Increase in Electricity Demand from Data Centers"(2024年12月20日) — energy.gov/articles/doe-releases-new-report-evaluating-in...
  5. NVIDIA "NVIDIA DGX H100 User Guide" — Introduction(8 GPU、最大10.2 kW、気流1,105 CFM、38,557 BTU/hr、GPUメモリ 640 GB) — docs.nvidia.com/dgx/dgxh100-user-guide/introduction-to-dg...
  6. ISO/IEC "ISO/IEC 30134-2:2016"(第1版、2016年4月。状態は「撤回」、改訂版として ISO/IEC 30134-2:2026 が公表済みと表示/確認日 2026年10月15日) — iso.org/standard/63451.html
  7. NVIDIA "NVIDIA DGX GB Rack Scale Systems User Guide" — Hardware(ラックの消費電力は約120 kW、計算トレイは液冷、他は空冷、電源棚) — docs.nvidia.com/dgx/dgxgb200-user-guide/hardware.html
  8. NVIDIA "NVIDIA Contributes NVIDIA GB200 NVL72 Designs to Open Compute Project", NVIDIA Technical Blog (2024年10月15日) — developer.nvidia.com/blog/nvidia-contributes-nvidia-gb200...
  9. NVIDIA "NVIDIA GB200 NVL72"(72個の Blackwell GPU と36個の Grace CPU、ラック規模の液冷設計/確認日 2026年10月15日) — nvidia.com/en-us/data-center/gb200-nvl72/
  10. NVIDIA "NVIDIA 800 VDC Architecture Will Power the Next Generation of AI Factories", NVIDIA Technical Blog(1 MW のITラック、2027年からの計画、効率・導体・コストに関する同社の主張) — developer.nvidia.com/blog/nvidia-800-v-hvdc-architecture-...
  11. NVIDIA "NVIDIA DGX VR NVL72 User Guide" — Hardware(2026年10月7日更新。72 GPU、電源棚4台・各110 kW定格、ラックの消費電力の記載なし) — docs.nvidia.com/dgx/dgxvr-user-guide/hardware.html
  12. ASHRAE TC 9.9 "Emergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers", ASHRAE white paper (2021)(液冷クラスW17〜W+、サーバー内のファン電力、浸漬冷却の留意点) — ashrae.org/file%20library/technical%20resources/bookstore...
  13. ASHRAE "ASHRAE Data Center Resources"(ANSI/ASHRAE Standard 90.4-2025 を含む標準・資料の一覧/確認日 2026年10月15日) — ashrae.org/technical-resources/bookstore/datacom-series
  14. ASHRAE "Standard 90.4-2022" fact sheet(目的、機械負荷成分・電気損失成分、適用範囲) — ashrae.org/file%20library/about/government%20affairs/advo...
  15. Open Compute Project "Guidelines for Using Propylene Glycol-Based Heat Transfer Fluids in Liquid Cooled Racks", Revision 2.0, Version 1.0.0 (2026年9月15日)(接液材料、防食剤、運転温度) — opencompute.org/wp-content/uploads/2026/10/OCP-PG25-Guide...
  16. ISO/IEC "ISO/IEC 30134-2:2026 Information technology — Data centres key performance indicators — Part 2: Power usage effectiveness (PUE)"(第2版、2026年1月発行。2016年版は撤回) — iso.org/standard/30134-2
  17. ISO/IEC JTC 1/SC 39 SC 39「Sustainability, IT and data centres」の規格一覧(ISO/IEC 22237、30134 の各部、TS 8236-1・-2:2025 など/確認日 2026年10月15日) — iso.org/committee/654019/x/catalogue/p/1/u/0/w/0/d/0
  18. Google "Data center efficiency"(2025年の全世界の年間平均 PUE 1.09、PUEの説明、測定の方法/確認日 2026年10月15日) — datacenters.google/efficiency/
  19. 3M Company Form 10-Q for the quarter ended September 30, 2025(2022年発表の PFAS 製造撤退の記述、2025年末までの撤退に向けて進行中) — sec.gov/Archives/edgar/data/66740/000006674025000089/mmm-...
  20. ECHA "Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)"(EUの PFAS 制限提案の更新一覧:SEAC 意見案の意見募集、2026年10月7日の11月 SEAC 会合の議題公表/確認日 2026年10月15日) — echa.europa.eu/hot-topics/perfluoroalkyl-chemicals-pfas
  21. NVIDIA "NVIDIA H100 Tensor Core GPU"(H100 SXM:最大TDP 700 Wまで(設定可能)/確認日 2026年10月15日) — nvidia.com/en-us/data-center/h100/

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
IEA:2024年に約415 TWh(約1.5%)、過去5年で年12%増、基本ケース2030年に約945 TWh(約15%/年)、2035年約1,200 TWh、感度ケースで2035年に700〜1,700 TWh、系統接続の遅延リスク約20%、送電線4〜8年、変圧器・ケーブルの待ち時間が3年で倍増、ガスタービン納期、米国の容量の半分近くが5地域の集積、AI向けデータセンターの電力出典1 https://www.iea.org/reports/energy-and-ai/executive-summary事実
IEA:サーバー約60%、ストレージ約5%、ネットワーク最大5%、冷却は約7%(効率的なハイパースケール)〜30%超(効率の低い企業)、2030年までの増加の約半分が高速化されたサーバー出典2 https://www.iea.org/reports/energy-and-ai/energy-demand-from-ai事実
LBNL:米国のデータセンターは2014年58 TWh、2018年約76 TWh(1.9%)、2023年176 TWh(4.4%)、2028年は325〜580 TWh(6.7〜12.0%)のシナリオ範囲(稼働率50%の仮定で74〜132 GW)、AIサーバーの運転電力は定格の60〜80%・8 GPU H100ノードの測定は定格TDPの平均74%、PUEの推計(2014年約1.6、2023年約1.4、2028年1.15〜1.35)と設計どおりの運転を仮定したシミュレーションであること、サイト WUE、直接の水消費約660億リットル、間接の水約8,000億リットル出典3 https://escholarship.org/uc/item/32d6m0d1事実
DOE の2024年12月20日の発表(2014年58 TWh、2023年176 TWh・4.4%、2028年325〜580 TWh・6.7〜12%)出典4 https://www.energy.gov/articles/doe-releases-new-report-evaluating-increase-electricity-demand-data-centers事実
DGX H100:8 GPU、最大10.2 kW、1,105 CFM(80%ファン)、38,557 BTU/hr出典5 https://docs.nvidia.com/dgx/dgxh100-user-guide/introduction-to-dgxh100.html事実
GB200 NVL72:ラックの消費電力は約120 kW、計算トレイは液冷・ネットワークとストレージは空冷、電源棚出典7 https://docs.nvidia.com/dgx/dgxgb200-user-guide/hardware.html事実
120 kWの冷却容量に直接液冷を採用、1,400 Aの母線、100ポンド超の鋼材補強、液冷クイックディスコネクトの位置合わせ(2024 OCP Global Summit)出典8 https://developer.nvidia.com/blog/nvidia-contributes-nvidia-gb200-nvl72-designs-to-open-compute-project/事実
GB200 NVL72 が72個の GPU と36個の CPU のラック規模の液冷設計出典9 https://www.nvidia.com/en-us/data-center/gb200-nvl72/事実
NVIDIA の800 VDC:1 MW のITラック、2027年からの Kyber との同期、54 V系比で最大5%の効率向上・同じ導体で85%多く送電などの主張、なお技術革新が必要という記述出典10 https://developer.nvidia.com/blog/nvidia-800-v-hvdc-architecture-will-power-the-next-generation-of-ai-factories/未確定/将来
DGX Vera Rubin NVL72:電源棚4台・各110 kW定格(18.3 kWの空冷電源6個)、ラックの消費電力の記載なし、2026年10月7日更新出典11 https://docs.nvidia.com/dgx/dgxvr-user-guide/hardware.html事実
ASHRAE TC 9.9 白書:液冷のクラス(W17〜W+、下限2℃、機器はクラスの全範囲で性能を発揮)、サーバー内ファンの電力(密なサーバーで10〜20%、50 kWのラックで少なくとも5 kW、UPS容量への影響)、液冷が空冷より多くの倍率で効果的、熱抵抗の考え方、浸漬冷却の留意点(材料適合性の評価、保証への影響)出典12 https://www.ashrae.org/file%20library/technical%20resources/bookstore/emergence-and-expansion-of-liquid-cooling-in-mainstream-data-centers_wp.pdf事実
ASHRAE のデータセンター資料のページが ANSI/ASHRAE Standard 90.4-2025 を掲載していること、2022年版のファクトシート(MLC・ELC、IT負荷10 kW超・電力密度20 W/ft²超に適用)出典13 https://www.ashrae.org/technical-resources/bookstore/datacom-series
出典14 https://www.ashrae.org/file%20library/about/government%20affairs/advocacy%20toolkit/virtual%20packet/standard-90.4-2022-fact-sheet.pdf
事実
OCP PG25 ガイドライン:接液材料の対象、最高運転温度での確認、銅・真ちゅう・ステンレス・ろう材・めっき継手・EPDM の記述、防食剤の消費と記録、運転温度17〜66℃、ワークストリームによる拡充(2026年9月15日、改訂2.0・版1.0.0)出典15 https://www.opencompute.org/wp-content/uploads/2026/10/OCP-PG25-Guidelines-V1.0.0.pdf事実
ISO/IEC 30134-2:2026(PUE、第2版、2026年1月発行)と、30134 の各部・22237-4・TS 8236 の存在出典16 https://www.iso.org/standard/30134-2
出典17 https://www.iso.org/committee/654019/x/catalogue/p/1/u/0/w/0/d/0
事実
ISO/IEC 30134-2:2016 の状態が「撤回」で、改訂版が ISO/IEC 30134-2:2026 と表示されていること出典6 https://www.iso.org/standard/63451.html事実
Google:2025年の全世界の年間平均PUE 1.09(過去12か月、安定運転の大規模施設)、PUEの説明出典18 https://datacenters.google/efficiency/事実
3M が2022年12月に2025年末までの PFAS 製造撤退を発表、2025年9月30日の10-Qは撤退に向けて進行中出典19 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/66740/000006674025000089/mmm-20250930.htm事実
ECHA:EUの PFAS 制限提案の SEAC 意見案への意見募集(2026年5月25日まで)、11月の SEAC 会合の議題公表(2026年10月7日)。最終的な規制は未確定出典20 https://echa.europa.eu/hot-topics/perfluoroalkyl-chemicals-pfas未確定/将来
H100 SXM の最大TDPが700 Wまで(設定可能)出典21 https://www.nvidia.com/en-us/data-center/h100/事実
平均電力への換算(TWh÷8,760)、IT負荷100 MWに対する施設の電力(PUE 1.2で120 MW、1.4で140 MW)と GPU 数の上限的な概算、空気と水の体積流量(空気の温度上昇18 K・水10 K、120 kW)、熱抵抗(85℃・35℃の仮定)、4台のDGX H100のラックの電力本稿の計算。仮定(温度上昇、ケース温度、物性値、PUE)を明記した概算で、特定の施設の設計値・予測ではない本稿の計算
「IT負荷・施設の電力・受電容量・計画の4語の整理」「定格と実際の運転は違う」「接液材料は設計の中心」「冷却液は消耗する材料」「効率と材料の信頼性は温度でトレードオフ」「PUEの分母が減る」という読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
個別の施設の規模、DGX Vera Rubin NVL72 のラック消費電力、規格の本文、ECHA の最終的な規制内容本稿の調査範囲では確認できなかったため記載していない。解説解説

最終更新:2026年10月15日/出典は一次情報(IEA、DOE・LBNL、NVIDIA の公式ガイドとブログ、ASHRAE、OCP、ISO のページ、Google・3M・ECHA の公式資料)に限定しています。個別の施設の規模、DGX Vera Rubin NVL72 のラック消費電力、規格の本文、ECHA の最終的な規制内容については、確認できなかったため記載していません。計画・契約・発表の規模と将来の数字は「未確定/将来」です。図2・5はベクター作図、図3・4・6は本稿の計算を含む作図、図1と図7はAI生成イメージ(枠のみ)です。