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Novartis|創薬・DDS 企業解説

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COMPANY PROFILE / 創薬・DDS

ノバルティス
― 放射性医薬品・核酸・遺伝子治療を「重点の技術基盤」に掲げ、買収で厚みを増す製薬企業

ノバルティスは自社の研究開発を5つの技術基盤で説明しています。 確立した2つ(化学=低分子、バイオ医薬品)に加え、遺伝子・細胞治療、放射性リガンド療法(RLT)、xRNA(RNAを使う薬)の3つを「新たな技術基盤」として、研究開発と製造規模への投資を優先すると明記しています。 2026年2月には、抗体に核酸を結合させた「AOC」の技術を持つ米Avidity Biosciencesを約120億ドルで買収しました。 一方で2026年9月には、核酸医薬2品目の第3相試験が相次いで主要評価項目を達成できませんでした。 本稿では会社全体は簡潔にとどめ、3つの新しい技術基盤に何を投じ、どこでつまずいているかに絞ります。

構成:Novartis AGが米国SECに提出した2025年12月期 Form 20-F(2026年2月4日提出)、2026年第2四半期・上半期の財務報告(Form 6-K、2026年7月21日提出)、買収・承認・臨床試験に関するForm 6-K、ClinicalTrials.govを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるノバルティスと、創薬・DDSでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(会社全体は簡潔に)
  5. 創薬・DDSにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか
  9. 創薬・DDS分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるノバルティスと、創薬・DDSでの立ち位置

正式名称Novartis AGスイスの株式会社
本社スイス・バーゼル製品は約120か国で販売
上場SIX: NOVN
NYSE: NVS
米国ではADRで取引。SECに20-Fを提出
この分野での区分製薬企業
(多モダリティ)
ジェネリック事業(Sandoz)は分離済み
2025年12月期 純売上高545億3,200万ドル前年は503億1,700万ドル
研究開発費112億ドル2025年12月期。純売上高の約20.5%
重点の新技術基盤遺伝子・細胞治療
RLT/xRNA
研究開発と製造規模への投資を優先
RLTの主力品Pluvicto2025年の純売上高19億9,400万ドル
まず押さえるべき1点

創薬・DDSに関わる企業は、大きく製薬企業・創薬バイオテック・受託開発製造(CDMO/CRO)の3種類に分かれます。 ノバルティスはこのうち製薬企業で、特徴は薬を運ぶ仕組みそのものを「技術基盤」として会社の戦略の柱に書いていることです 事実。 放射性リガンド療法(RLT)は「がん細胞に結合する分子(リガンド)」に放射性同位体を運ばせる薬、 xRNAはsiRNAやアンチセンスのようにRNAを標的・道具にする薬、遺伝子治療はウイルスベクターで遺伝子を届ける薬で、 どれも「何を・どこへ・どう届けるか」が性能を決めるDDSの典型です。 同社はこれらを自社開発だけでなく、Alnylam・Ionisからの導入や、Mariana Oncology(RLT)・Avidity(AOC)などの買収で積み上げてきました。20-Fの子会社一覧には、RLT関連のAdvanced Accelerator Applications(AAA)やEndocyteも並んでいます。

この記事の読み方

本稿は企業の技術戦略と事業を解説するもので、医療上の助言ではありません。 特定の薬の使用を勧めたり、他社の薬と効き目を比べたりする意図はありません。 臨床試験の結果は、会社が公表した数字を比較対照・評価時点とともに紹介するにとどめます。 治療については必ず医師にご相談ください。

2. ロゴと社名の表記について

Novartisのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/novartis_logo.svg として設置しています。

表記の注意:法定開示上の社名は Novartis AG、日本語では「ノバルティス」と表記されます。 日本法人のノバルティス ファーマ株式会社は子会社です。 研究組織は2025年12月期の20-Fで「Biomedical Research」と呼ばれており、以前の名称はNovartis Institutes for BioMedical Research(NIBR)です。

公式サイト:https://www.novartis.com/

3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか

創薬・DDSに関わる企業の3つの類型 同じ「薬の会社」でも、薬づくりのどこを担うかがまったく違う 製薬企業 創薬バイオテック 受託開発製造・研究 探索から承認・販売まで自社で担う 新しいモダリティや手法で候補を作る 他社の薬の開発・製造を請け負う Eli Lilly/Novo Nordisk 第一三共/Pfizer ほか Alnylam/Arvinas Moderna/Insilico ほか Lonza/Samsung Biologics WuXi AppTec ほか 後期臨床と販売網の資金力 特定の技術基盤の深さ 設備と規制対応の量産力 特許切れで売上が急減しうる 後期開発の資金を提携に頼る 顧客の開発中止・政策の影響 ノバルティスはこの左端にいて、放射性医薬品・核酸・遺伝子治療を重点の技術基盤に掲げる製薬企業 技術の多くは導入や買収で得ており、放射性医薬品では設置中を含め5か所の製造拠点網を持つ
図1 創薬・DDSに関わる企業の3類型と、ノバルティスの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。モダリティは低分子・抗体に加え、放射性リガンド療法(ルテチウム177・アクチニウム225)、siRNA・アンチセンス・マイクロRNA阻害・抗体オリゴ核酸複合体(AOC)、AAV遺伝子治療、CAR-T細胞治療に及び、2026年7月にはADCの買収契約も結んでいます。5つの技術基盤という整理は、2026年第2四半期の財務報告の記載に基づきます。

本シリーズの技術解説『核酸医薬』『ウイルスベクター』『CAR-T細胞』で扱うモダリティを、1社で商用化まで持っている点がこの会社の特徴です。 特に放射性リガンド療法は、本シリーズの他社の記事ではまだ開発段階のものが多い中、ノバルティスは承認品2品目と自社の製造網をすでに持っています。

4. 会社の規模(会社全体は簡潔に)

指標(百万ドル)2024年12月期2025年12月期2026年上半期
純売上高(継続事業)50,31754,53227,521
研究開発費10,02211,2005,587
営業利益(継続事業)14,54417,6448,985
従業員(常勤換算、年末)―75,267人―
ここで注意

上の数字は会社全体のものです。ノバルティスは研究開発費を技術基盤別には開示していません 未確定/将来。 従業員75,267人のうち、臨床開発を担う「Development」部門が13,530人、営業担当が17,491人と開示されていますが、 RLTやxRNAに携わる人数は書かれていません。 2026年上半期は純売上高が恒常為替で2%減となり、会社はジェネリック医薬品との競合が売上を14ポイント押し下げたと説明しています 事実。

5. 創薬・DDSにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(研究拠点・人員)常勤換算75,267人(2025年末)。研究はBiomedical Research、臨床開発はDevelopment(13,530人)が担う。20-Fは人材確保のリスクとして「遺伝子・細胞治療、RLT、xRNAといった先端治療の技術基盤」の専門人材を名指ししている。技術基盤別の人員は非開示事実
金(研究開発費)2025年12月期 112億ドル(純売上高の約20.5%)。2026年上半期は55億8,700万ドル。技術基盤別の内訳は非開示事実
金(製造設備)RLTの製造拠点を米ニュージャージー州ミルバーン、スペイン・サラゴサ、イタリア・イブレア、米インディアナポリスで拡張し、米カリフォルニア州カールスバッドに米国3か所目を設置中(2025年3月時点)。2025年の有形固定資産の取得は15億ドル。RLT工場ごとの投資額は非開示事実
買収(RLT・遺伝子治療)2024年:Mariana Oncology(RLT、現金10億4,000万ドル+最大7億5,000万ドル)、Kate Therapeutics(AAV遺伝子治療、現金4億2,700万ドル+最大7億ドル)事実
買収(xRNA)2025年:Regulus Therapeutics(マイクロRNAを標的とするオリゴ核酸、8億ドル)。2026年2月:Avidity Biosciences(AOC、現金約120億ドル)事実
買収(そのほか)2025年にAnthos Therapeutics(8億ドル)、Tourmaline Bio(12億ドル)。2026年上半期にPikavation Therapeutics(18億ドル)、Excellergy(9億ドル)。2026年7月にADCのMyricx Bioの買収契約(完了時11億ドル+最大4億ドル、2026年下半期に完了予定)事実
導入(ライセンスイン)AlnylamからLeqvio(siRNA)、Ionisからpelacarsen(アンチセンス)の全世界の開発・製造・販売権を取得事実
大学・研究機関・公的資金技術基盤に関する大学との共同研究や公的資金の受け入れは、本稿で確認した20-F・6-Kには具体的な記載がない確認できず
買収の規模感

2024年から2026年上半期までに、本稿で確認できた技術基盤関連の買収(Mariana、Kate、Regulus、Avidity)の現金支払額は、合計で約143億ドルです 本稿の計算(Mariana 10.4億、Kate 4.3億、Regulus 8億、Avidity 120億ドルの合計。条件付きの追加支払いは含まない)。 これは2025年12月期の研究開発費112億ドルを上回る額で、3つの新技術基盤の厚みの多くを買収で得ていることがわかります。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
本稿で確認した資料に時期の記載なしAlnylamとのライセンスでLeqvio(inclisiran)、Ionisとのライセンスでpelacarsenの全世界の権利を取得xRNAの主力を外部から導入
2024年5月Mariana Oncologyを買収(前臨床段階のRLTの複数プログラム)固形がん向けのRLTの候補を補充
2024年10月Kate Therapeuticsを買収(筋肉・心臓疾患向けのAAV遺伝子治療)遺伝子治療の次世代候補
2025年3月米国でPluvictoの適応が化学療法前の転移性去勢抵抗性前立腺がんに拡大(PSMAfore試験)。RLTの製造拠点網の拡張を説明会社は対象患者が約3倍になると説明
2025年6月PSMAddition試験(ホルモン感受性の転移性前立腺がん)が中間解析で主要評価項目を達成と発表RLTをより早い病期へ
2025年Regulus Therapeutics(マイクロRNA)、Anthos、Tourmalineの買収を完了xRNAの候補(farabursen、多発性嚢胞腎)を追加
2025年10月Avidity Biosciencesの買収に合意(約120億ドル)筋肉にRNA医薬を届けるAOC基盤を取得。会社は「xRNA戦略を前進させる」と説明
2025年11月米国FDAがItvisma(オナセムノゲン アベパルボベクの髄腔内投与)を承認。2歳以上の脊髄性筋萎縮症(SMA)が対象AAV遺伝子治療の対象を年齢の高い患者へ広げた
2026年2月Avidityの買収を完了AOCの後期開発品3つ(del-desiran、del-brax、del-zota)が加わる
2026年6月del-brax(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)の第1/2相試験のバイオマーカーコホートが主要評価項目を達成第3相は登録中
2026年上半期del-zota(デュシェンヌ型筋ジストロフィー、エクソン44)を米国で迅速承認申請し、優先審査の指定AOCとして最初の承認申請
2026年7月ADCのMyricx Bioの買収契約(NMT阻害剤をペイロードにするADC、B7-H3とHER2を標的とする2品目)ADCにも本格参入
2026年9月pelacarsenの第3相Lp(a)HORIZONが主要評価項目を達成せず(9月4日)。del-desiranの第3相HARBORも主要評価項目を達成せず(9月8日)xRNAの後期品で2件のつまずきが続いた

主な臨床試験(会社が公表した結果)

試験(NCT番号)フェーズ・対象主要評価項目会社が公表した結果(比較対照・評価時点)
PSMAfore(NCT04689828)第3相。ARPI治療後のPSMA陽性・転移性去勢抵抗性前立腺がん(Pluvicto)画像上の無増悪生存期間(rPFS)ARPIの変更と比べ、画像上の進行または死亡のリスクを59%低減(ハザード比0.41)。2024年2月データカットオフの第3回中間解析。全生存期間の最終解析は数値上Pluvicto側に傾いたが統計学的に有意ではなかった(対照群からの切り替えが60.3%)
PSMAddition(NCT04720157)第3相。PSMA陽性・転移性ホルモン感受性前立腺がん(Pluvicto+ホルモン療法)rPFSホルモン療法単独と比べ、事前に規定した中間解析で主要評価項目を達成(2025年6月発表)。数値は本稿で確認したリリースに記載なし
HARBOR(NCT06411288)第3相。筋強直性ジストロフィー1型(del-desiran)手を開く時間(vHOT)プラセボと比べ統計学的に有意な改善を示せず(2026年9月発表)。副次評価項目などでは臨床活性の兆候があったと会社は説明
Lp(a)HORIZON(NCT04023552)第3相。Lp(a)が高く心血管疾患のある患者(pelacarsen)心血管イベントの複合プラセボと比べ主要評価項目を達成せず(2026年9月発表)。Lp(a)値の低下は見られた

7. 今後の計画

中期の売上成長年率5〜6%
(2025〜2030年)
恒常為替。会社の見通し。2026年9月にも維持を表明
重点投資3つの新技術基盤遺伝子・細胞治療、RLT、xRNAの研究開発と製造規模
AOCの次の山del-zotaの審査
del-braxの規制当局協議
del-desiranは開発方針を再検討中
RLTの拡大乳がん・大腸がん・
肺がん・膵がんへ
新しい同位体・リガンドを探索と会社が説明

会社は2025年11月の中期見通しで、パイプラインの30以上の有望品のうち10以上が過去2年に導入・買収したものだと説明しています 事実。 RLTについては、ルテチウム177を使う現行品に加え、アクチニウム225を使うAc225-PSMA-617の第1相データを2026年のASCOで発表しています。

確認できなかったこと

次はいずれも本稿で確認した一次資料に記載がありません 未確定/将来。

技術基盤ごとの研究開発費と人員/RLT工場ごとの投資額と生産能力/放射性同位体(ルテチウム177、アクチニウム225)の調達先/del-desiranの今後の開発方針/ Lp(a)HORIZON・PSMAdditionの詳しい数値(学会で発表予定と会社が説明)。 「RLT市場は○年に○億ドル」といった調査会社の推計は採用しません。

8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
RLTでは製造・供給網を競争力の源泉にしようとしている承認リリースで「業界をリードするインフラ」「複数の米国RLT工場で供給需要を満たす」と繰り返し強調し、西海岸に3か所目の米国拠点を設けている推測
xRNAでは「肝臓の次」=筋肉へのデリバリーを取りに行ったLeqvio・pelacarsenは肝臓で作られるタンパク質を標的にする薬。Avidity買収を「筋肉にRNA医薬を届ける業界をリードする技術」と説明推測
技術基盤の厚みを自社研究より買収で速く得る方針2024年以降の技術基盤関連の買収の現金支払額が約143億ドルで、年間の研究開発費を上回る。有望品の10以上が過去2年の導入・買収推測
ADCにも本格的に入る2026年7月にMyricx Bio(新しいペイロードのADC)の買収契約。会社は「腫瘍学のパイプラインを強化」と説明事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

xRNAの既存品と新規品を並べると、狙いの変化が見えます。 Leqvio(siRNA)とpelacarsen(アンチセンス)はいずれも肝臓で作られるタンパク質(LDLコレステロール関連、リポタンパク(a))を減らす薬です 事実。 これに対しAvidityのAOCは、抗体の組織選択性と核酸の精密さを組み合わせ、「これまで届けにくかった筋肉細胞」にsiRNAなどを届けると会社は説明しています。 核酸医薬は肝臓には比較的届けやすく、それ以外の臓器が難しいというのが本シリーズの技術解説『核酸医薬』『DDSと標的化』で扱った課題で、 本稿はAvidity買収を「肝臓以外への核酸デリバリー」という次の競争の場への先行投資と読みます 未確定/将来。 ただし2026年9月にdel-desiranの第3相が主要評価項目を達成できなかったことは、届けることと、臨床で効果を示すことは別の問題であることも示しています。

9. 創薬・DDS分野の提携マッピング

ノバルティスを中心とした創薬・DDSの提携関係 SEC提出書類(20-F・6-K)に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 導入(ライセンス、実線・濃紺) 買収完了(点線) 買収契約・手続き中(点線・橙) ノバルティス 製薬企業 Alnylam siRNA「Leqvio」を導入 全世界の開発・製造・販売権 Ionis アンチセンス「pelacarsen」 2026年9月 第3相で未達 Avidity(2026年) AOC・約120億ドル Regulus(2025年) マイクロRNA標的の核酸 Mariana(2024年) 放射性リガンド療法 Kate(2024年) AAV遺伝子治療 Myricx Bio(契約) 新規ペイロードのADC Myricx Bioは2026年7月に買収契約、完了は2026年下半期の予定(7月の財務報告時点で未完了)
図2 ノバルティスを中心とした創薬・DDSの提携関係。出典:2025年12月期 Form 20-F(Alnylam・Ionisとのライセンス、Mariana・Kate・Regulusの買収)、2026年第2四半期の財務報告(Avidityの買収完了、Myricx Bioの買収契約)、Avidity買収に関するForm 6-K(2025年10月)、pelacarsenの試験結果に関するForm 6-K(2026年9月)。Anthos、Tourmaline、Pikavation、Excellergyも買収していますが、抗体や低分子などの既存モダリティの品目の取得であるため図には含めていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

技術基盤主な品目(20-F・6-Kの記載)状況
放射性リガンド療法(RLT)Pluvicto(ルテチウム177、PSMA標的)、Lutathera(ルテチウム177、ソマトスタチン受容体標的)、Ac225-PSMA-617(アクチニウム225)Pluvicto・Lutatheraは承認済み(2025年の純売上高はそれぞれ19億9,400万ドル、8億1,600万ドル)。Ac225-PSMA-617は第1相
xRNALeqvio(siRNA、LDLコレステロール低下、年2回の医療者投与)、pelacarsen(アンチセンス)、farabursen(マイクロRNA標的)、del-zota・del-brax・del-desiran(AOC)Leqvioは承認済み(2025年の純売上高11億9,800万ドル)。ほかは開発中(pelacarsenとdel-desiranは2026年9月に第3相で主要評価項目未達)
遺伝子治療Zolgensma(静脈内投与)/Itvisma(髄腔内投与)。AAVでSMN1遺伝子を届ける承認済み(Zolgensmaグループの2025年の純売上高12億3,200万ドル)
細胞治療Kymriah(CAR-T)承認済み(2025年の純売上高3億8,100万ドル、前年比14%減)
ADCMyricx Bioの2品目(B7-H3、HER2。NMT阻害剤ペイロード)買収契約中(2026年下半期に完了予定)
素材技術者の視点:RLTは「半減期と競争する製造業」

Pluvictoは、PSMAに結合するリガンドにルテチウム177を結合させ、ベータ線をがん細胞とその周囲に届ける薬だと20-Fは説明しています 事実。 放射性同位体は時間とともに減衰するため、作り置きができません。 ノバルティスがミルバーン、サラゴサ、イブレア、インディアナポリスに加え、西海岸のカールスバッドに米国3か所目の拠点を設けるのは、 患者の近くで作って短時間で届ける必要があるからだと本稿は読みます 未確定/将来。 20-Fもリスクとして、放射性同位体を含む「高度に専門化された原材料」の供給と、一部の原材料が単一の供給元に依存していることを挙げています。 材料面では、金属を捕まえるキレート剤とリガンドの結合、同位体の比放射能、遮蔽容器と輸送が品質とコストを左右します。

一方、AvidityのAOCは抗体とオリゴ核酸を結合させる点でADCに近い製造工程を持ちます。 会社はAOCを「抗体の組織特異性と、オリゴ核酸の精密さを組み合わせる」と説明しており、 抗体の培養・精製と核酸の固相合成という性格の違う2つの工程を最後に結合させる、という点でADCと同じ種類の難しさがあります。 本シリーズの技術解説『抗体医薬とADC』『核酸医薬』も参照してください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
xRNAの後期品のつまずき2026年9月にpelacarsen(Lp(a)HORIZON)とdel-desiran(HARBOR)の第3相が相次いで主要評価項目を達成できなかった事実
買収資産の減損20-Fは、Anthos・Regulus・Tourmalineの買収などで計上した無形資産について、公正価値が下がれば大きな減損が生じうるとリスクに書いている。Avidityの約120億ドルはこれより大きい事実
主力品のジェネリック化2026年上半期はジェネリック医薬品との競合が売上を14ポイント押し下げた事実
放射性同位体の供給20-Fが、放射性同位体を含む特殊な原材料の供給不安と単一供給元への依存をリスクとして挙げている事実
細胞治療の縮小Kymriahの純売上高は2024年、2025年と2年続けて減少(2025年は前年比14%減)事実
買収への依存技術基盤の厚みの多くを買収で得ており、買収価格が高いほど、臨床の失敗が財務に与える影響が大きくなる推測

12. 用語集

放射性リガンド療法(RLT)
がん細胞の目印に結合する分子(リガンド)に放射性同位体を結合させ、がん細胞の近くで放射線を出させる治療。
ルテチウム177
ベータ線を出す放射性同位体。Pluvicto・Lutatheraに使われている。
xRNA
ノバルティスが使う言葉で、RNAを標的にしたりRNAを薬として使ったりする技術基盤の総称。
siRNA
二本鎖の短いRNAで、標的のmRNAを分解させてタンパク質の産生を抑える核酸医薬。
AOC
Antibody Oligonucleotide Conjugate。抗体にオリゴ核酸を結合させ、抗体の力で特定の組織に核酸を届ける薬。
AAV
アデノ随伴ウイルス。病原性が低く、遺伝子を細胞に届ける運び屋(ベクター)として使われる。
髄腔内投与
脊髄を包む髄液の中に薬を注入する投与方法。神経に直接届けやすい。
ARPI
アンドロゲン受容体経路阻害薬。前立腺がんの治療に使われるホルモン療法の一種。
概念図:放射性の粒子を運ぶ小さな分子、筋肉細胞へ核酸を運ぶ抗体、遺伝子を運ぶウイルスベクターという3種類の「運び屋」が、それぞれの標的細胞に向かう様子AI生成による概念図
図3 ノバルティスの3つの新しい技術基盤の概念図(AI生成による概念図。実際の製品や分子構造を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Novartis AG Form 20-F for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年2月4日)。純売上高・研究開発費・営業利益・従業員数、製品別売上、Pluvicto・Lutathera・Leqvio・Zolgensma/Itvismaの説明、Alnylam・Ionisとのライセンス、Mariana・Kate・Regulus・Avidityの買収、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000004/nvs-20251231.htm
  2. Novartis AG Form 6-K Exhibit 99.1「Financial Report Q2 2026」(2026年7月21日)。5つの技術基盤、2026年上半期の業績、Myricx Bioの買収契約、Ac225-PSMA-617のデータ。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000012/nvs-20260630-99_1.htm
  3. Novartis AG Form 6-K Exhibit 99.2「Condensed Interim Financial Report Q2 and H1 2026」。Avidity・Pikavation・Excellergyの買収、Myricx Bioの契約条件、研究開発費、開発品一覧。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000012/nvs-20260630-99_2.htm
  4. Novartis AG Form 6-K「Novartis agrees to acquire Avidity Biosciences」(2025年10月26日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325006660/f6k_102625.htm
  5. Novartis AG Form 6-K「Novartis provides update on del-desiran Phase III HARBOR study」(2026年9月8日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326005908/f6k_090826.htm
  6. Novartis AG Form 6-K「Novartis announces Lp(a)HORIZON Phase III topline results for pelacarsen」(2026年9月4日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326005896/f6k_090426.htm
  7. Novartis AG Form 6-K「del-brax Phase I/II study in FSHD meets primary biomarker endpoint」(2026年6月11日)。Avidity買収の完了時期(2026年2月)、AOCの説明。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326004052/f6k_061126.htm
  8. Novartis AG Form 6-K「Novartis receives FDA approval for Itvisma」(2025年11月24日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325007547/f6k_112425.htm
  9. Novartis AG Form 6-K「Novartis projects +5-6% cc sales CAGR 2025-2030」(2025年11月20日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325007445/f6k_112025.htm
  10. Novartis AG Form 6-K「FDA approves Novartis radioligand therapy Pluvicto for earlier use before chemotherapy」(2025年3月28日)。PSMAforeの結果とデータカットオフ、RLT製造拠点。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325001805/f6k_032825.htm
  11. Novartis AG Form 6-K「Pluvicto demonstrates statistically significant and clinically meaningful rPFS benefit in mHSPC」(2025年6月2日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325003556/f6k_060225.htm
  12. ClinicalTrials.gov PSMAfore(NCT04689828)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04689828
  13. ClinicalTrials.gov PSMAddition(NCT04720157)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04720157
  14. ClinicalTrials.gov HARBOR(NCT06411288)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06411288
  15. ClinicalTrials.gov Lp(a)HORIZON(NCT04023552)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04023552
  16. Novartis AG 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.novartis.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
純売上高・研究開発費・営業利益(2024・2025年12月期)、従業員75,267人、Development部門13,530人、営業担当17,491人事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000004/nvs-20251231.htm
研究開発費が純売上高の約20.5%、技術基盤関連の買収の現金支払額が約143億ドル本稿の計算出典1〜3の数値を本稿が割り算・合算したもの。条件付きの追加支払いは含まない
5つの技術基盤(化学・バイオ医薬品と、遺伝子・細胞治療、RLT、xRNA)と、新技術基盤への優先投資事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000012/nvs-20260630-99_1.htm
2026年上半期の純売上高・研究開発費・営業利益、ジェネリック競合の影響14ポイント事実出典2・3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000012/nvs-20260630-99_2.htm
Pluvicto・Lutathera・Leqvio・Zolgensmaグループ・Kymriahの2025年の純売上高事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000004/nvs-20251231.htm
Alnylam(Leqvio)・Ionis(pelacarsen)からの全世界の権利の取得事実出典1・6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326005896/f6k_090426.htm
Mariana Oncology・Kate Therapeutics・Regulus・Anthos・Tourmalineの買収と金額事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000004/nvs-20251231.htm
Avidity買収の合意(約120億ドル、AOC、xRNA戦略の前進)事実出典4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325006660/f6k_102625.htm
Avidity買収の完了(2026年2月)、Pikavation・Excellergyの買収、Myricx Bioの契約条件事実出典3・7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000111444826000012/nvs-20260630-99_2.htm
del-desiranのHARBORが主要評価項目を達成せず、del-zotaの優先審査事実出典5 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326005908/f6k_090826.htm
pelacarsenのLp(a)HORIZONが主要評価項目を達成せず事実出典6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326005896/f6k_090426.htm
del-braxのFORTITUDE試験のバイオマーカーコホートが主要評価項目を達成事実出典7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184326004052/f6k_061126.htm
Itvismaの米国承認(2025年11月、髄腔内投与)事実出典8 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325007547/f6k_112425.htm
2025〜2030年の売上成長年率5〜6%の見通しと、有望品の10以上が過去2年の導入・買収であること事実出典9 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325007445/f6k_112025.htm
Pluvictoの適応拡大、PSMAforeの結果(ハザード比0.41、2024年2月データカットオフ)、RLT製造拠点事実出典10 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325001805/f6k_032825.htm
PSMAdditionが中間解析で主要評価項目を達成事実出典11 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325003556/f6k_060225.htm
各試験のNCT番号・フェーズ・主要評価項目事実出典12〜15 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04689828
PSMAddition・Lp(a)HORIZONの詳しい数値、技術基盤別の研究開発費・人員、RLT工場の投資額と生産能力、同位体の調達先未確定/将来出典1〜11に記載なし。本稿では推計しない https://clinicaltrials.gov/study/NCT04023552
2025〜2030年の売上成長の見通し未確定/将来出典9。会社の見通しであり実績ではない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1114448/000117184325007445/f6k_112025.htm
創薬・DDSの3類型の区分(製薬企業/創薬バイオテック/受託開発製造・研究)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
RLTで製造・供給網を競争力の源泉にしようとしているという読み、患者の近くで作るための拠点配置という読み推測承認リリースの記述と拠点配置からの本稿の解釈
xRNAで肝臓の次=筋肉へのデリバリーを取りに行ったという読み推測既存品の標的とAvidity買収の説明からの本稿の解釈
技術基盤の厚みを自社研究より買収で速く得る方針、買収依存のリスク推測買収額と研究開発費の比較からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべてNovartis AGが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類(20-F・6-K)とClinicalTrials.govの登録情報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は医療上の助言ではありません。