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Bristol Myers Squibb|創薬・DDS 企業解説

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COMPANY PROFILE / 創薬・DDS

ブリストル マイヤーズ スクイブ
― タンパク質分解・CAR-T・放射性医薬品・ADCを「5つの研究基盤」として並べる製薬企業

ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)は、探索から承認・販売までを自社で担う製薬企業です。 同社は10-Kで自社の研究基盤を「低分子(タンパク質分解薬を含む)、バイオ医薬品、ADC、CAR-T細胞療法、放射性医薬品」と明記しており、 主要な製薬企業の中でもモダリティの幅を正面から戦略に掲げている会社です。 2026年8月には、同社が開発してきた経口の標的タンパク質分解薬iberdomide(ブランド名Zenbexus)が米国で迅速承認を受けました。 本稿では会社全体の規模は簡潔にとどめ、どのモダリティに何を投じ、誰と組み、何を目指しているかに絞ります。

構成:BMSが米国SECに提出した2025年12月期 Form 10-K(2026年2月11日提出)と2026年6月期 Form 10-Q(2026年7月30日提出)、米国FDAの承認情報、ClinicalTrials.govを一次情報として使用/本稿は企業解説であり、医療上の助言ではありません/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるBMSと、創薬・DDSでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(簡潔に)
  5. 創薬・DDSにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか
  9. 創薬・DDS分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるBMSと、創薬・DDSでの立ち位置

正式名称Bristol-Myers Squibb Companyデラウェア州法人。ブランド表記はBristol Myers Squibb
本社米国・ニュージャージー州プリンストンRoute 206 & Province Line Road
上場NYSE: BMY米国SECに10-K・10-Qを提出
この分野での区分製薬企業CAR-Tと放射性医薬品は自社工場も持つ
研究基盤(会社の記載)低分子・分解薬・バイオ
ADC・CAR-T・放射性医薬品
10-Kが挙げる5つの基盤
2026年の節目分解薬iberdomideが
米国で迅速承認
2026年8月13日、FDA
2025年の売上US$48,194百万2025年12月期
開発中の品目45超の独自資産2025年12月期10-Kの記載
まず押さえるべき1点

創薬・DDSの企業は、大きく製薬企業・創薬バイオテック・受託開発製造(CDMO・CRO)の3種類に分かれます。 BMSは製薬企業ですが、同じ製薬企業の中でも「新しいモダリティごとに自前の製造拠点を持つ」点が目立ちます 事実。 CAR-T細胞療法は米国のボセル・サミット・デベンスとオランダのライデンに自社工場を持ち、放射性医薬品は2025年にインディアナポリスに新工場を開設しました。 一方で、主力の低分子・抗体の原薬や製剤の一部は外部の製造業者に頼っています。 作るのが難しい新モダリティほど内製、成熟した品目ほど外部委託という分担が、BMSを読み解く鍵です。

2. ロゴと社名の表記について

BMSのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/bms_logo.svg として設置しています。

表記の注意:SEC提出書類上の法人名はハイフン付きの Bristol-Myers Squibb Companyですが、 ロゴや公式サイトの表記はハイフンなしの Bristol Myers Squibb です。日本語では「ブリストル マイヤーズ スクイブ」、本稿では略称の「BMS」を使います。 同社は2019年11月にCelgeneを買収しており、RevlimidやPomalystなどはCelgene由来の製品です。

公式サイト:https://www.bms.com/

3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか

創薬・DDSに関わる企業の3つの類型 同じ「薬の会社」でも、薬づくりのどこを担うかがまったく違う 製薬企業 創薬バイオテック 受託開発製造・研究 探索から承認・販売まで自社で担う 新しいモダリティや手法で候補を作る 他社の薬の開発・製造を請け負う Eli Lilly/Novo Nordisk 第一三共/Pfizer ほか Alnylam/Arvinas Moderna/Insilico ほか Lonza/Samsung Biologics WuXi AppTec ほか 後期臨床と販売網の資金力 特定の技術基盤の深さ 設備と規制対応の量産力 特許切れで売上が急減しうる 後期開発の資金を提携に頼る 顧客の開発中止・政策の影響 BMSは左端の製薬企業。分解薬・CAR-T・放射性医薬品・ADCを研究基盤として自ら並べる CAR-Tと放射性医薬品は自社工場で作り、放射性医薬品・体内CAR-Tは中央のバイオテック買収で得た
図1 創薬・DDSに関わる企業の3類型と、BMSの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。BMSはCAR-Tと放射性医薬品の自社工場を持ちますが、他社の薬を受託製造する事業は10-Kに記載がなく、区分は製薬企業です。

モダリティ別に並べると、BMSの手札は次のとおりです 事実。 売上の中心は低分子(Eliquis、Revlimid、Pomalyst)と抗体(Opdivo、Yervoy)で、 これに皮下注製剤(Opdivo Qvantig)、CAR-T細胞療法(Breyanzi、Abecma)、経口の配合剤(Cobenfy)が加わっています。 開発では標的タンパク質分解薬(iberdomide、mezigdomide、golcadomideなどのCELMoDと、BCL6やARを分解するLDD)、 放射性医薬品(RayzeBio由来のアクチニウム製剤RYZ101など)、二重特異性抗体(BioNTechと共同のpumitamig)、 二重特異性ADC(SystImmuneと共同のiza-bren)、体内でCAR-T細胞をつくるRNA医薬(Orbital由来のOTX-201)を進めています。 仕組みは本シリーズの技術解説「標的タンパク質分解」「CAR-T細胞」「抗体医薬とADC」「DDSと標的化」で扱っています。

4. 会社の規模(簡潔に)

会社全体の規模は1つの表にとどめます 事実。金額は米ドル、会計年度は12月期です。

指標(US$百万)2023年2024年2025年2026年1〜6月
売上高(Total Revenues)45,00648,30048,19424,462
研究開発費約9,30011,1599,9515,608
取得した仕掛研究開発費(Acquired IPRD)91313,3733,72194
設備投資(Capital expenditures)1,2091,2481,311―

2023年の研究開発費は10-K本文の「US$9.3 billion」という記載。従業員は約32,500人(43か国、2025年12月31日)、拠点は世界約130か所。2026年1〜6月は10-Qの未監査値。

ここで注意

上の数字は会社全体のものです。BMSは研究開発費を「研究」「開発」「その他」に分けて説明していますが、 モダリティ別(分解薬・CAR-T・放射性医薬品など)の金額は開示していません 未確定/将来。 2024年の取得仕掛研究開発費US$13,373百万の大半は、Karuna買収に伴う費用US$12,122百万です 事実。

5. 創薬・DDSにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(研究拠点)研究開発拠点を米マサチューセッツ州ケンブリッジ(2023年)とインド・ハイデラバード(2024年)に開設。カリフォルニア州サンディエゴに新拠点を2026年に開設予定事実
人(人員数)全社約32,500人。研究開発の人員数は記載なし事実(研究人員は確認できず)
金(研究開発費)2025年US$9,951百万、2026年1〜6月US$5,608百万(前年同期比16%増)事実
製造(CAR-T)自社の細胞療法工場をボセル(ワシントン州)、サミット(ニュージャージー州)、デベンス(マサチューセッツ州、2023年6月に商業製造でFDA承認)、ライデン(オランダ、2025年完成)に保有。外部製造業者も利用事実
製造(放射性医薬品)インディアナポリスに放射性医薬品の工場を2025年に開設。RayzeBio由来の製剤を支える。ただし外部供給者にも依存事実
買収RayzeBio(2024年2月、US$4.1 billion)、Karuna(2024年3月、US$14.0 billion)、2seventy bio(2025年5月、US$287百万)、Orbital Therapeutics(2025年12月、US$1.7 billion)事実
導入・共同開発BioNTech(2025年、一時金US$1.5 billion+記念払いUS$2.0 billion)、SystImmune(2024年、一時金US$800百万)、Philochem(2025年、一時金US$350百万)、Hengrui(2026年、初期13品目、一時金US$600百万)事実
大学・公的機関との連携創薬・DDSに関する大学・公的資金との具体的な連携は10-K・10-Qに記載なし確認できず
「モダリティごとに工場を建てる」ことの意味

CAR-T細胞療法は、患者から採った細胞を遺伝子改変して戻す1人1ロットの製造で、放射性医薬品は放射能が時間とともに減衰するため作ってから投与するまでの時間が限られます。 どちらも従来の錠剤や抗体のように「大きな工場でまとめて作って倉庫に置く」ことができません。 BMSの10-Kも、CAR-Tと放射性医薬品の製造工程は「まだ発展途上で、競合より複雑・高コストになりうる」とリスクに挙げています 事実。 専用工場への投資は、このモダリティを本気で事業にする意思表示であると同時に、固定費を抱えるリスクでもあります。

6. これまでの取り組み

時期できごと創薬・DDSでの意味
2023年6月デベンスの工場がCAR-T細胞療法の商業製造でFDA承認細胞療法の自社製造能力を拡大
2024年2月26日RayzeBioを買収(1株US$62.50、US$4.1 billion)。アクチニウムを使う放射性医薬品の基盤とRYZ101を取得放射性医薬品という新モダリティへの参入
2024年3月18日Karunaを買収(1株US$330、US$14.0 billion)。Cobenfy(旧KarXT)を取得。2024年9月26日にFDA承認2成分を組み合わせた経口配合剤
2024年SystImmuneと二重特異性ADC iza-bren(BL-B01D1)の共同開発・共同販売で提携(一時金US$800百万)1つの抗体で2つの標的を狙うADC
2025年1月Opdivo Qvantigを米国で発売(nivolumabとヒアルロニダーゼの皮下注製剤)。5月に欧州委員会が承認抗体を点滴から皮下注射へ
2025年5月13日2seventy bioを買収し、CAR-T細胞療法Abecmaの米国での権利をすべて取得細胞療法の権利を一本化
2025年6月BioNTechとPD-L1×VEGF-A二重特異性抗体pumitamigの共同開発・共同販売で提携次世代の免疫療法を外部から獲得
2025年8月PhilochemからOncoACP3(前立腺がんを狙う放射性の治療・診断薬)の世界独占ライセンスを取得放射性医薬品の品目を追加
2025年インディアナポリスの放射性医薬品工場を開設、ライデンの細胞療法工場が完成新モダリティの製造拠点
2025年12月Orbital Therapeuticsを買収(US$1.7 billion)。体内でCAR-T細胞をつくるRNA医薬OTX-201(前臨床)を取得細胞を体外で加工しないCAR-Tへ
2026年5月Hengruiと、がん・血液・免疫の初期13品目で提携(2026年7月に完了)中国発の初期候補をまとめて獲得
2026年8月13日iberdomide(Zenbexus)が米国FDAで迅速承認。ダラツムマブ(ヒアルロニダーゼ配合の皮下注製剤)とデキサメタゾンとの併用で、多発性骨髄腫の2次治療以降が対象社内開発の標的タンパク質分解薬が承認に到達

臨床試験の例:iberdomideのEXCALIBER-RRMM

iberdomideの迅速承認は、EXCALIBER-RRMM(NCT04975997、フェーズ3、無作為化・非盲検の2段階試験)に基づきます。 対象は1〜2ラインの前治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫の成人で、比較対照はダラツムマブ・ボルテゾミブ・デキサメタゾン(DVd)、 主要な有効性評価項目は「試験期間中のいずれかの時点での微小残存病変(MRD)陰性の完全奏効」です 事実。 FDAの発表では、主要解析集団(最初に無作為化された420人)で、この割合はiberdomide併用群41%、DVd群21%でした 事実。 迅速承認のため、承認の継続は今後の確認試験の結果に左右されます 未確定/将来。 本稿はこの数値で治療法の優劣を論じるものではありません。

7. 今後の計画

分解薬の2剤目mezigdomideを米国申請審査終了目標日 2027年5月13日
放射性医薬品RYZ101が承認用試験ACTION-1(SSTR2陽性の消化管膵神経内分泌腫瘍)
二重特異性ADCiza-brenの中国フェーズ3で
良好な中間結果
トリプルネガティブ乳がん、食道扁平上皮がん
BioNTechへの支払い記念払い計US$2.0 billion2026年第3四半期〜2028年
候補(モダリティ)開発段階・予定区分
mezigdomide(標的タンパク質分解・CELMoD)再発・難治性多発性骨髄腫で米国申請受理。審査終了目標日2027年5月13日未確定/将来
golcadomide(CELMoD)、BMS-986458(BCL6 LDD)、AR LDDリンパ腫・前立腺がんなどで開発中未確定/将来
RYZ101(アクチニウム放射性医薬品)ACTION-1で承認用の試験を実施中未確定/将来
pumitamig(二重特異性抗体、BioNTechと共同)大腸がん・小細胞肺がん・非小細胞肺がん・トリプルネガティブ乳がんなどで評価中。未治療の非小細胞肺がんのフェーズ2で良好な中間結果未確定/将来
iza-bren(二重特異性ADC、SystImmuneと共同)非小細胞肺がん・乳がんなどで評価中未確定/将来
arlo-cel(CAR-T)、zola-cel(CD19 CAR-T、自己免疫疾患)arlo-celは多発性骨髄腫で承認用試験。zola-celは全身性エリテマトーデスなどで開発未確定/将来
OTX-201(体内CAR-T、RNA医薬)前臨床。自己免疫疾患で臨床試験開始の準備段階(IND申請に向けた試験)未確定/将来
確認できなかったこと

次はいずれも10-K・10-Qに記載がありません 未確定/将来。

CAR-T・放射性医薬品の生産能力(年間の治療人数や製造本数)/各工場への投資額/ アクチニウムなど放射性同位元素の調達先と量/OTX-201の送達技術の詳細(どの担体でRNAを届けるか)/iberdomideの確認試験の完了時期。

8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
Revlimid・Pomalystの後継を同じ標的タンパク質分解の系譜で用意する両品目は後発品の参入で売上が急減(2025年に前年比49%減・23%減)。同じ血液がん領域でiberdomideが承認、mezigdomideが申請中推測
CAR-Tは「体外で細胞を加工する」から「体内で細胞をつくる」方向へ移ろうとしている自社工場への投資を続けつつ、体内CAR-TのOrbitalを買収推測
がん領域は免疫療法の次を複数の新モダリティで分散して探す会社は「IOを超えた多様化」を掲げ、放射性医薬品・二重特異性抗体・二重特異性ADC・分解薬を同時に進めている事実
主力抗体は皮下注製剤で寿命を延ばすOpdivo Qvantigの米国の独占期間は2028年(nivolumabの物質特許)とされ、2026年4〜6月にはOpdivo系売上の約9.5%を占めるまで伸びた推測
初期候補の獲得先として中国のバイオテックを重視しているSystImmune(iza-bren)とHengrui(13品目)との提携推測
推測の根拠を1つだけ詳しく:分解薬で「自社の売上の崖」を埋める

Revlimidの2025年の売上はUS$2,951百万で前年比49%減、Pomalystは同23%減でした 事実。 10-Kによれば、Revlimidの米国の後発品は2026年1月31日から数量制限がなくなり、Pomalystの米国の後発品は2026年第1四半期に参入する見込みです。 BMSはこれらと同じ多発性骨髄腫の領域で、経口の分解薬iberdomideを2026年8月に承認まで持ち込み、mezigdomideも申請中です。 10-Kは血液領域について「標的タンパク質分解の基盤に大きな可能性を見ている」と書いており、 本稿はこれをCelgene由来の薬の知見を、次世代の分解薬で引き継ぐ戦略と読みます 未確定/将来。 ただし承認は迅速承認であり、売上の規模は現時点で分かりません。

9. 創薬・DDS分野の提携マッピング

BMSを中心とした創薬・DDSの提携関係 10-K・10-Qに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 共同開発・導入・導出 買収 BMS 製薬企業 BioNTech 二重特異性抗体を共同開発 SystImmune 二重特異性ADCを共同開発 Philochem 放射性医薬品を導入 Hengrui 初期13品目を導入 米国メルク Reblozyl導入・Winrevair導出 RayzeBio 放射性医薬品(2024年2月) Karuna 経口配合剤(2024年3月) 2seventy bio CAR-Tの権利(2025年5月) Orbital 体内CAR-T(2025年12月)
図2 BMSを中心とした創薬・DDSの提携関係。出典:2025年12月期 Form 10-K、2026年6月期 Form 10-Q。SystImmuneは中国本土以外向けの一部の薬剤供給も担います。米国メルクとは、BMSがReblozylを米国メルクから導入し、Winrevairを米国メルクへ導出する双方向のライセンス関係です。図に含めたのは一次情報に記載のある関係だけで、報道で語られる関係は含めていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

創薬・DDSに関係する主な製品を、モダリティ別に示します 事実(US$百万)。

製品モダリティ・剤形主な対象(会社の記載)2025年売上2026年1〜6月
Opdivo抗PD-1抗体(点滴)多くのがん10,0494,631
Opdivo Qvantig抗PD-1抗体+ヒアルロニダーゼ(皮下注)Opdivoの多くの固形がん適応238424
BreyanziCD19 CAR-T(自家)大細胞型B細胞リンパ腫など1,358896
AbecmaCAR-T(自家)再発・難治性多発性骨髄腫427―
Cobenfy経口配合剤(xanomeline+trospium)成人の統合失調症155119
Revlimid/Pomalyst低分子(Celgene由来)多発性骨髄腫など2,951/2,733―
Zenbexus(iberdomide)経口の標的タンパク質分解薬(CELMoD)多発性骨髄腫(2次治療以降)2026年8月に米国で迅速承認―

CAR-T 2品目の2025年売上の合計はUS$1,785百万で、総売上の約3.7%です(本稿の計算)。

素材技術者の視点:Cobenfyは「2つの薬を組み合わせて副作用の場所を分ける」製剤

Cobenfyは、脳のムスカリン受容体(M1/M4)を刺激するxanomelineと、末梢のムスカリン受容体を遮断するtrospium塩化物を1つの経口剤にしたものです 事実。 trospiumは第四級アンモニウム塩で、一般に血液脳関門を通りにくいとされる性質があるため(本稿の解説)、脳の中では作用させ、体の末梢では作用を打ち消すという役割分担が成り立ちます。 新しい分子を作るのではなく、既存の分子の「届く場所」の違いを製剤で組み合わせるという、DDSの発想そのものの製品です。 背景は本シリーズの技術解説「血液脳関門」「薬物動態と前臨床試験」を参照してください。

放射性医薬品では、アクチニウム225のようなα線を出す同位元素の供給と、抗体やペプチドに同位元素をつなぐキレート剤の化学が材料側の要になります。 BMSは10-Kで放射性医薬品について「大規模生産に向けて工程・設備をまだ整備中の外部供給者を使っている」と書いており 事実、 原料の同位元素の確保が事業の律速になりうることを示しています。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
主力品の独占期間満了Eliquisは米国で和解済みの後発品が2028年に参入可能、EUの物質特許・SPCは2026年11月満了。nivolumabの物質特許に基づくOpdivo Qvantigの最低独占期間は米国2028年、EU2030年事実
Celgene由来品の急減Revlimidは2025年に前年比49%減、Pomalystは23%減。米国の後発品の制約は2026年に解消事実
新モダリティの製造の難しさCAR-Tと放射性医薬品の製造工程は発展途上で、原料調達・コストが売上と利益に影響しうると10-Kが記載事実
買収による負債Mirati・Karuna・RayzeBioの買収で負債と利払いが増えたと10-Kが記載事実
外部製造への依存Eliquis・Opdivo・Cobenfyなどの原薬の全部または一部を外部から調達事実
迅速承認の不確実性iberdomideは迅速承認で、確認試験の結果次第で承認内容が変わりうる未確定/将来
モダリティの分散による資源の薄まり5つの研究基盤を同時に進めるため、個々の基盤への投資が競合の専業企業より薄くなる可能性推測

12. 用語集

標的タンパク質分解
病気に関わるタンパク質を、細胞がもともと持つ分解の仕組みに引き渡して取り除く手法。
CELMoD
BMSが標的タンパク質分解の基盤として開発している経口低分子の一群の呼称。iberdomide、mezigdomide、golcadomideなど。
LDD
Ligand Directed Degrader。BMSの用語で、特定のタンパク質(BCL6、ARなど)に結合して分解に導く低分子。
CAR-T細胞療法
患者のT細胞に、がんの目印を認識する受容体(CAR)の遺伝子を入れて戻す治療。
体内(in vivo)CAR-T
細胞を取り出さず、RNAなどを体内に投与してT細胞にCARをつくらせる考え方。
放射性医薬品
がん細胞に集まる分子に放射性同位元素をつなぎ、放射線で細胞を傷つける薬。診断用もある。
二重特異性ADC
2つの標的に結合する抗体に薬物をつないだADC。
MRD陰性
高感度の検査でも骨髄中にがん細胞がほぼ検出されない状態。
迅速承認
米国で、臨床上の利益を合理的に予測できる指標に基づいて早期に与える承認。確認試験が求められる。
概念図:1つの製薬企業の中に並ぶ5つの研究基盤(低分子・分解薬、抗体、ADC、細胞療法、放射性医薬品)と、それぞれの専用設備AI生成による概念図
図3 BMSの創薬・DDSへの取り組み方の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Bristol-Myers Squibb Company Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年2月11日)。研究基盤、研究開発拠点と製造拠点、売上・研究開発費・設備投資・人員、製品別売上、RayzeBio・Karuna・2seventy bio・Orbital買収、BioNTech・SystImmune・Philochemとの契約、特許・独占期間、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
  2. Bristol-Myers Squibb Company Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年7月30日)。2026年上期の売上・研究開発費・製品別売上、Hengruiとの提携、iberdomide・mezigdomideの申請状況、pumitamig・iza-brenの中間結果、米国メルクとのライセンス関係。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
  3. 米国FDA FDA grants accelerated approval to iberdomide with daratumumab and hyaluronidase-fihj and dexamethasone for multiple myeloma(2026年8月13日)。承認内容、EXCALIBER-RRMMの設計と結果。 https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-iberdomide-daratumumab-and-hyaluronidase-fihj-and-dexamethasone
  4. ClinicalTrials.gov NCT04975997(EXCALIBER-RRMM)。試験名、フェーズ、比較対照。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04975997
  5. Bristol Myers Squibb 公式サイト(ロゴ画像の取得元、社名表記の確認用)。 https://www.bms.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、上場市場、従業員約32,500人・43か国、拠点約130か所事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
研究基盤が低分子(分解薬を含む)・バイオ医薬品・ADC・CAR-T・放射性医薬品であること、開発中の独自資産45超事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
2023〜2025年の売上・研究開発費・取得仕掛研究開発費・設備投資、製品別売上事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
2026年上期の売上・研究開発費・製品別売上事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
研究開発拠点(ケンブリッジ、ハイデラバード、サンディエゴ予定)、細胞療法工場(ボセル・サミット・デベンス・ライデン)、インディアナポリスの放射性医薬品工場事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
RayzeBio・Karuna・2seventy bio・Orbital Therapeuticsの買収条件と取得品目事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
BioNTech・SystImmune・Philochemとの契約条件事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
Hengruiとの初期13品目の提携(2026年5月、一時金US$600百万)、米国メルクとのReblozyl・Winrevairのライセンス関係事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
Opdivo Qvantigの構成、米国発売(2025年1月)と欧州承認(2025年5月)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
Cobenfyの構成(xanomelineとtrospium)とFDA承認日事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
iberdomide(Zenbexus)の迅速承認(2026年8月13日)とEXCALIBER-RRMMの結果(MRD陰性CR 41%対21%)事実出典3 https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-iberdomide-daratumumab-and-hyaluronidase-fihj-and-dexamethasone
EXCALIBER-RRMMの試験登録(フェーズ3、比較対照DVd)事実出典4 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04975997
mezigdomideの申請と目標日、pumitamig・iza-brenの中間結果事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
RYZ101のACTION-1、CELMoD・LDD・arlo-cel・zola-cel・OTX-201の開発状況事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
Eliquis・Opdivo・Revlimid・Pomalystの独占期間と後発品参入、製造・負債のリスク事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000004/bmy-20251231.htm
Celgeneの買収(2019年11月)事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
創薬・DDS企業の3類型の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの対象企業から例示
CAR-T 2品目の売上比約3.7%、Opdivo系に占めるQvantigの比率約9.5%本稿の計算出典1・2の数値から本稿が計算
モダリティ別の研究開発費、CAR-T・放射性医薬品の生産能力と投資額、同位元素の調達先、OTX-201の送達技術、確認試験の完了時期未確定/将来出典1・2に記載なし。報道ベースの数値は採用しない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/14272/000001427226000020/bmy-20260630.htm
Revlimid・Pomalystの後継を分解薬で用意するという読み推測売上推移と開発品の対応からの本稿の解釈
CAR-Tが体外加工から体内生成へ移るという読み、主力抗体を皮下注で延命するという読み推測Orbital買収とQvantigの伸びからの本稿の解釈
中国のバイオテックを初期候補の獲得先として重視しているという読み、資源が薄まるリスク推測提携構成と研究基盤の数からの本稿の解釈
trospiumが血液脳関門を通りにくいという性質推測第四級アンモニウム塩の一般的性質に基づく解説。出典1には記載なし

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべてBMSが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類、米国FDAの公表情報、ClinicalTrials.govの登録情報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は特定の医薬品の使用を勧めるものではなく、医療上の判断は必ず医師・薬剤師にご相談ください。