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NMPA|創薬・DDS 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 創薬・DDS

NMPA
― 審査改革で「中国発の新薬」を増やした中国の承認当局

NMPA(国家薬品監督管理局)は中国政府の規制当局で、自分では薬を作りません。 役割は中国で売られる薬の登録(承認)を管理し、審査の制度と技術指針を定めることです。 2015年に始まった審査・承認制度の改革と、2017年のICH加盟を経て、 中国で承認される創新薬(新薬)は2025年に76品目と過去最高になりました。 本稿では、NMPAが創薬・DDSにどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:国家薬品監督管理局の「三定」規定、国務院の審査承認制度改革の意見(2015年)、薬品注冊管理弁法(2020年)、NMPAの公告とサイト掲載記事、ICHの年次報告、ライセンス契約を結んだ企業の発表を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるNMPA
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 創薬・DDSで何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている企業・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるNMPA

正式名称国家药品监督管理局
(国家薬品監督管理局)
英文 National Medical Products Administration
国中国国家市場監督管理総局(SAMR)が管理する国家局
機関の種類政府の国家局(副部級)医薬品・医療機器・化粧品の監督管理を担う
設立2018年国務院の機構改革で発足。職能を定めた規定は2018年7月29日施行
人数規模本局の行政編制 216名2018年の規定による定員。審査を担う医薬品審評センター(CDE)など所属機関の職員は含まない
審査の規模上市申請の承認 4,087件2025年。うち創新薬76品目
創薬・DDSへの関与登録(承認)と技術指針臨床試験と上市の審査・承認、加速制度、指導原則の策定
影響が及ぶ範囲中国市場+ICHを通じた国際調和2017年にICHの規制当局メンバーに加盟
まず押さえるべき1点

NMPAの影響は2つの方向に働きます。 1つは、中国で薬を売りたい海外企業に対する承認当局としての影響です。 もう1つは、中国企業が生み出した新薬候補を、国際的に通用するデータに育てる土台としての影響です。 NMPAは2017年にICHの規制当局メンバーとなり 事実、 2025年には国際共同治験などを対象に、臨床試験の申請を30営業日で審査する経路を設けました 事実。 中国発の候補を海外の大手製薬企業が導入する契約が増えている背景には、こうした制度の変化があります。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

創薬・DDSの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では薬を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

創薬・DDSを動かす「機関」の4つの型 機関は自分では薬を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究に予算を配る 登録・審査・技術指針 指針の国際調和 学会・臨床データ発表 NIH FDA/EMA/PMDA/NMPA ICH AACR/ASCO 何を研究させるか 何を市場に出してよいか どう試験し、どう申請するか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の市場 届く範囲=加盟当局 届く範囲=参加者 NMPAは「政策・規制を決める」型。中国で薬を売るには、どの国の企業もNMPAの承認が必要 ICHの加盟当局でもあり、中国で得た臨床データが国際的に使われる土台にもなっている
図1 創薬・DDSに関わる機関の4つの型と、NMPAの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う8機関から例示しています 本稿の計算。NMPAは規制の型ですが、審査制度を定める規章(薬品注冊管理弁法)は上位の国家市場監督管理総局の令として公布されています。

3. 創薬・DDSで何をしているか

活動中身数字・例(公表値)
登録(承認)の管理登録管理制度をつくり、上市の審査・承認を厳格に行う(NMPAの職責)。実際の技術審査は医薬品審評センター(CDE)が担う2025年に医薬品の上市申請4,087件を承認、うち創新薬76品目(過去最高)。2021〜2025年の5年間で創新薬230品目
加速制度2020年の薬品注冊管理弁法で、突破性治療薬・条件付き承認・優先審査・特別審批の4つの手続きを定めた審査の期限は上市申請200日、優先審査130日、海外で承認済みの希少疾病薬は70日。臨床試験の申請は60日
臨床試験の30日経路2025年第86号公告。国の重点品目、小児・希少疾病の創新薬、世界同時開発の品目(国内の治験責任医師が主導・共同主導する国際共同第3相試験を含む)が対象対象の申請は受理から30営業日で審査・承認
国際調和国際的な監督ルールと標準の策定に参加する(NMPAの職責)2017年に前身のCFDAがICHの規制当局メンバーに加盟。2018年にICH管理委員会の委員に選出
改革の起点:2015年の国務院の意見

2015年8月の国務院の意見(国発〔2015〕44号)は、当時の課題として審査待ちの申請の滞留と、 臨床で急いで必要な新薬の承認に時間がかかりすぎることを挙げ、 2016年末までに滞留を解消し、2018年に定められた期限どおりの承認を実現する目標を掲げました 事実。 今の加速制度や30日経路は、この改革の延長線上にあります。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点NMPAが持っているもの持っていないもの
権限医薬品の臨床試験と上市の審査・承認、登録管理制度の運用、薬局方などの標準、技術指導原則の策定審査制度の規章を自ら公布する権限(薬品注冊管理弁法は国家市場監督管理総局の令)
地域中国市場。海外企業の薬も中国で売る限り対象。省・自治区・直轄市の薬品監督部門を指導する他国での販売の可否を決める権限
国際的な位置ICHの規制当局メンバー(2017年加盟)で、管理委員会の委員(2018年選出)ICHの創設時メンバーとしての立場(創設時メンバーは日米欧の当局)
中国発の新薬の国外展開国際共同治験を30日経路の対象に含め、世界同時開発を後押しするライセンス契約そのものを審査・承認する権限(契約は企業どうしが結ぶ)
数字の読み方の注意

216名は2018年の規定が定めた本局の行政編制(定員)で、審査を担うCDEなど所属機関の職員数ではありません 事実。 CDEを含むNMPA全体の職員数と予算は、本稿で確認した一次情報には載っていません 未確定/将来。 また「創新薬76品目」は中国の制度上の区分による数で、FDAの「novel drug」と定義が同じとは限らないため、単純には比べられません。

5. 関わっている企業・組織

中国企業の新薬候補を、海外の大手製薬企業が「中国以外の権利」として導入する契約が相次いでいます。 NMPAのサイトに掲載された記事は、2026年1月の全国医薬品監督管理工作会議での局長の説明として、 創新薬の海外へのライセンス取引額が累計1,300億ドルを超えたと伝えています 事実。 ただし集計の期間と方法は示されていません。

中国発の新薬候補が海外へ渡る流れ 中国での臨床試験はNMPAの承認のもとで進み、中国以外の権利が海外企業にライセンスされる NMPA(CDEが審査) 臨床試験の承認(30日経路あり) 中国での上市の承認 中国の製薬企業(導出する側) 3SBio:SSGJ-707(PD-1×VEGF二重抗体) 恒瑞医薬:HRS-9821ほか最大12プログラム 海外の製薬企業(導入する側) Pfizer:契約一時金 12.5億ドル GSK:契約一時金 5億ドル ライセンスの範囲:中国(本土・香港・マカオ・台湾など)を除く全世界 海外での承認はFDA・EMAなど各国の当局が審査する(NMPAの権限の外) 契約はいずれも2025年。金額と範囲は各社の発表による
図2 NMPAと中国発の新薬候補のライセンス導出の関係。出典:Pfizerの発表(2025年5月、3SBioとの契約)、GSKの発表(2025年7月28日、恒瑞医薬との契約)、薬品注冊管理弁法、NMPA第86号公告。Pfizerの契約範囲は「中国を除く全世界」(中国での販売権のオプション付き)です。企業は本シリーズの企業解説の候補のうち、一次資料で契約が確認できたものだけを載せています。
契約中身(各社の発表)このシリーズとの関係
Pfizer × 3SBio(2025年5月)PD-1とVEGFを標的とする二重特異性抗体SSGJ-707の中国を除く全世界の独占ライセンス。一時金12.5億ドル、マイルストーン最大48億ドル。発表時点で中国で複数の臨床試験が進行中Pfizerの企業解説
GSK × 恒瑞医薬(2025年7月28日)COPD向けPDE3/4阻害薬HRS-9821のライセンスと、最大11プログラムのオプション。一時金5億ドル、マイルストーンは全体で約120億ドルの可能性GSKの企業解説

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
国際共同治験を早く始められることで、中国発の候補が早い段階から海外企業の導入対象になりやすくなる30日経路は世界同時開発の第1・2相試験と、国内の治験責任医師が主導する国際共同第3相試験を対象に含む推測
NMPAは2026年、新機序・新標的の創新薬を中国で世界に先駆けて承認する(中国首発)ための支援を強めるNMPAのサイト掲載記事による、2026年の重点工作の説明未確定/将来
医薬品の試験データ保護制度と、小児用・希少疾病用医薬品の市場独占期間の制度の中身と開始時期同じ記事は、データ保護制度を「実施に移す」こと、独占期間の制度を「研究して設ける」ことを挙げるのみ未確定/将来

7. 用語集

CDE(医薬品審評センター)
NMPAの医薬品審評センター。臨床試験と上市の申請の技術審査を担う。
創新薬
中国の制度で「創新薬」に区分される新薬。NMPAが毎年の承認数を公表する。
突破性治療薬
重い病気で既存の治療より明らかな利点が見込まれる薬を指定し、開発中の相談や審査を優先する手続き。
ライセンス導出
自社の薬の候補について、他社に開発・販売の権利を与えること。受け取る側から見ると導入。
三定規定
中国の政府機関の職能・内部組織・人員定員を定めた規定。

8. 出典

  1. 中国政府網(中央機構編制委員会弁公室) 国家药品监督管理局职能配置、内设机构和人员编制规定(国家市場監督管理総局が管理する副部級の国家局、主要職責、薬品注冊管理司、機関の行政編制216名、2018年7月29日施行)。 https://www.gov.cn/zhengce/2018-09/10/content_5320814.htm
  2. 国務院 国务院关于改革药品医疗器械审评审批制度的意见(国发〔2015〕44号、2015年8月9日。審査待ちの滞留の解消、2018年の期限どおりの承認、創新薬の審査の迅速化)。 https://www.gov.cn/zhengce/content/2015-08/18/content_10101.htm
  3. 国家市場監督管理総局(中国政府網・国務院公報) 药品注册管理办法(国家市場監督管理総局令第27号、2020年。第13条の加速制度、第59・63・68条、第96条の審査期限)。 https://www.gov.cn/gongbao/content/2020/content_5512563.htm
  4. NMPA NMPA Announcement on Optimizing of the Review and Approval Process for Clinical Trials of Innovative Drugs ([2025] No. 86)(30営業日の審査、対象となる品目、国際共同治験)。 https://english.nmpa.gov.cn/2025-10/14/c_1138494.htm
  5. NMPA(新華社配信の掲載) 国家药监局:助力创新药“中国首发”(2026年1月7日。2025年の上市申請承認4,087件・創新薬76品目、2021〜2025年の230品目、海外へのライセンス取引額、2026年の重点工作)。 https://www.nmpa.gov.cn/yaowen/ypjgyw/zhyw/20260108085003119.html
  6. ICH ICH Association 2017 Annual Report(2017年にCFDA, ChinaとHSA, Singaporeが規制当局メンバーとして加盟)。 https://admin.ich.org/sites/default/files/inline-files/2017AnnualReport_ICH_Association.pdf
  7. ICH ICH Association 2018 Annual Report(NMPA, Chinaなどが管理委員会の委員に選出)。 https://admin.ich.org/sites/default/files/inline-files/2018_ICH-AnnualReport_2019_0506.pdf
  8. ICH Members & Observers(創設時の規制当局メンバーは日米欧の当局、NMPA, Chinaは規制当局メンバー)。 https://www.ich.org/page/members-observers
  9. Pfizer プレスリリース「Pfizer Enters into Exclusive Licensing Agreement with 3SBio」(2025年5月。SSGJ-707、中国を除く全世界、一時金12.5億ドル、マイルストーン最大48億ドル、中国での臨床試験)。 https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-enters-exclusive-licensing-agreement-3sbio
  10. GSK プレスリリース「GSK and Hengrui Pharma enter agreements to develop up to 12 innovative medicines」(2025年7月28日。一時金5億ドル、HRS-9821、中国本土・香港・マカオ・台湾を除く範囲、マイルストーン約120億ドル)。 https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/gsk-and-hengrui-pharma-enter-agreements/

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
国家市場監督管理総局が管理する副部級の国家局、登録・標準・国際協力などの職責、省の部門の指導、行政編制216名、2018年7月29日施行事実出典1 https://www.gov.cn/zhengce/2018-09/10/content_5320814.htm
2015年の改革の意見:滞留の解消、期限どおりの承認、創新薬の審査の迅速化事実出典2 https://www.gov.cn/zhengce/content/2015-08/18/content_10101.htm
4つの加速制度、審査期限(上市申請200日・優先130日・海外承認済み希少疾病薬70日・臨床試験60日)、国家市場監督管理総局令として公布事実出典3 https://www.gov.cn/gongbao/content/2020/content_5512563.htm
臨床試験の30営業日の審査経路と対象品目事実出典4 https://english.nmpa.gov.cn/2025-10/14/c_1138494.htm
2025年の承認4,087件・創新薬76品目、5年間で230品目、ライセンス取引額累計1,300億ドル超、2026年の重点工作事実出典5 https://www.nmpa.gov.cn/yaowen/ypjgyw/zhyw/20260108085003119.html
2017年のICH加盟(CFDA, China)事実出典6 https://admin.ich.org/sites/default/files/inline-files/2017AnnualReport_ICH_Association.pdf
2018年のICH管理委員会への選出事実出典7 https://admin.ich.org/sites/default/files/inline-files/2018_ICH-AnnualReport_2019_0506.pdf
ICHの創設時メンバーは日米欧、NMPAは規制当局メンバー事実出典8 https://www.ich.org/page/members-observers
Pfizerと3SBioの契約の内容事実出典9 https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-enters-exclusive-licensing-agreement-3sbio
GSKと恒瑞医薬の契約の内容事実出典10 https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/gsk-and-hengrui-pharma-enter-agreements/
機関の4つの型の区分本稿の計算本稿による整理
CDEを含むNMPA全体の職員数と予算、ライセンス取引額の集計期間と方法未確定/将来出典1・5に記載なし。本稿では推計しない
第6章の見通し(推測1項目・未確定2項目)推測出典4・5の記載からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値は中国政府網に掲載された規定・法令、NMPAの公告とサイト掲載記事、ICHの年次報告、および各社の発表に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。本稿は特定の薬を勧めるものではありません。