🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

Mitsubishi Electric|光通信・フォトニクス 企業解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス

三菱電機
― データセンター向けEMLチップを累計1億個。パワー半導体の投資を光デバイスへ振り向けた総合電機

三菱電機は売上高5.9兆円の総合電機で、光通信はその中のごく一部です。 それでもこの分野で名前が挙がるのは、データセンター内の光トランシーバーに入る送信用の光源「EMLチップ」を量産し、 2025年度までに累計1億個を出荷したと会社自身が公表しているからです。 2025年度には400億円の増産投資を決め、EMLチップの生産能力を2029年度までに2025年度比で3倍超にする計画を示しています。 本稿では空調・FA・防衛などの事業は最小限にとどめ、光デバイスに何を投じ、誰と組み、どこへ向かっているかに絞ります。

構成:三菱電機株式会社 2025年度(第155期)有価証券報告書(2026年6月19日提出)、IR Day 2026「半導体・デバイス事業2026」(2026年5月29日)と同質疑応答要旨(2026年6月8日)、2025年5月28日の半導体・デバイス事業説明資料、同社の公式ニュースリリースを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかる三菱電機と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(全社は簡潔に)
  5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
  9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる三菱電機と、光通信・フォトニクスでの立ち位置

正式名称三菱電機株式会社英文名 Mitsubishi Electric Corporation
本社東京都千代田区丸の内丸の内二丁目7番3号
上場東証プライム1921年創立。1949年に東京証券取引所へ上場
この分野での区分光部品・光モジュール
(光デバイスのチップ)
光トランシーバー向けのレーザーチップを供給
データセンター向けEMLチップの売上高400億円2025年度。2030年度に800億円へ倍増の計画
高周波・光デバイス事業の売上高554億円2025年度。高周波デバイスを含む
EMLチップの生産能力2029年度に3倍超2025年度比。400億円の投資を2025年度に決定
主な光の領域データセンター内
光トランシーバー用光源
コヒーレント用光源、宇宙光通信も
まず押さえるべき1点

光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 三菱電機の光通信事業は光部品の側にあり、その中でも光トランシーバーの中に入る「チップ」だけを作っています 事実。 光ファイバやケーブル、光トランシーバーそのものを作る会社ではありません。 2026年5月の事業説明資料は、同社を「データセンター向けEMLチップ」の供給者として位置づけ、「ハイパースケーラーやネットワークシステムサプライヤーを含む多層的かつ盤石な顧客基盤」を持つと書いています。 つまり三菱電機は、光トランシーバーメーカーやその先のクラウド事業者に、光源チップを売る化合物半導体メーカーとして光通信に関わっています。

2. ロゴと社名の表記について

三菱電機のロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/mitsubishi_electric_logo.svg として設置しています。

表記の注意:法人名は「三菱電機株式会社」、英文では Mitsubishi Electric Corporation です。 光デバイスは「半導体・デバイス事業」の中の高周波・光デバイス事業に属し、有価証券報告書ではセグメント名が「セミコンダクター・デバイス」です。 同社の製造拠点のうち、1959年に半導体量産専門工場として新設された北伊丹工場は、現在「高周波光デバイス製作所」などになっています。

公式サイト:https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/

3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか

光通信・フォトニクスに関わる企業の3つの類型 同じ「光通信の会社」でも、どこで光を扱うかがまったく違う 光部品・光モジュール 半導体・ファウンドリ 通信装置・通信事業者 光を出す・送る・受ける部品を売る 電気と光をつなぐチップを作る 光でネットワークを作り運用する Lumentum/Coherent InnoLight/Ayar Labs ほか NVIDIA/Broadcom TSMC/Intel ほか NTT/Ciena Nokia/Cisco ほか レーザと光実装の量産力 スイッチ・GPUの出口を持つ 長距離伝送と網の運用知見 大口顧客への依存が大きい 光部品は外部に頼りがち データセンター内は変化が速い 三菱電機はこの左端にいて、光トランシーバーの中に入るレーザーチップ(EML)を供給する 光ファイバや光トランシーバー本体は作らず、InP系の化合物半導体チップに特化している
図1 光通信・フォトニクスに関わる企業の3類型と、三菱電機の位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。三菱電機の区分は、2026年5月の事業説明資料(データセンター向けEMLチップの供給、InP技術を活かしたCPO向けCW光源と変調器デバイスの開発)と、有価証券報告書の研究開発の記述に基づきます。

光のどの領域に関わるかで言えば、中心はデータセンター内で、サーバー間の通信を担う光トランシーバーの送信用光源(EMLチップ)と受信用チップ(pin-PD)です。 ほかに長距離のデジタルコヒーレント通信用の光源(波長モニタ内蔵DFB-CAN)と、宇宙光通信用のレーザー光源モジュールを開発しています 事実。 EMLとCPOの関係は、本シリーズの技術解説『半導体レーザ』『Co-packaged Optics』とあわせて読むと理解しやすくなります。

4. 会社の規模(全社は簡潔に)

全社の規模は表1つにとどめます 事実。

指標2024年度2025年度
連結売上高5兆5,217億円5兆8,947億円
連結営業利益3,918億円4,330億円
連結研究開発費―2,359億円
連結従業員数(人、2026年3月31日)―150,386

2024年度の売上高・営業利益は、有価証券報告書に記載された2025年度の値と前期比増加額から本稿が逆算したもの 本稿の計算

光デバイスは、有価証券報告書では「セミコンダクター・デバイス」セグメントに含まれ、パワー半導体と合算されています。 光だけの数字は、2026年5月の事業説明資料と同質疑応答要旨で会社が示したものを使います 事実。

光デバイスに関わる数字2024年度2025年度2026年度見通し2030年度目標
セミコンダクター・デバイス 売上高2,863億円2,871億円3,000億円0.4兆円
同 調整後営業利益率14.2%(営業利益率)16.1%14.3%20%
高周波・光デバイス事業 売上高―554億円730億円1,000億円
データセンター向けEMLチップ 売上高―400億円―800億円
ここで注意

セミコンダクター・デバイスの売上高は連結売上高の4.9%、その中の高周波・光デバイス事業は19.3%にすぎません 本稿の計算。 ただし高周波・光デバイス事業の売上554億円のうち、データセンター向けEMLチップが400億円を占めるので、この事業の約7割はEMLということになります 本稿の計算。 光デバイスの営業利益率について、会社は「部門全体の25年度実績(調整後営業利益率16.1%)を上回り、パワーデバイスよりも高い水準」と説明していますが、具体的な数値は公表していません 未確定/将来。 なお、光デバイスの2030年度売上目標を、会社は質疑応答で「800億円」と述べています。

5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(専任組織・人員)セミコンダクター・デバイス セグメントの従業員は5,556人(2026年3月31日。うち提出会社2,114人)。パワー半導体を含む数字で、光デバイスだけの人数は非開示。製造拠点は高周波光デバイス製作所など事実
金(研究開発費)セミコンダクター・デバイス分野の研究開発費192億円(連結研究開発費の8.1%、割合は本稿の計算)。光電融合の実装技術は「その他・共通」分野で開発事実
金(設備投資)2025年度に400億円の投資を決定し、EMLチップの生産能力を2029年度までに2025年度比で3倍超(2020年度比20倍)へ事実
資源配分の方針2025年5月に「パワーデバイス事業への投資を抑制・延伸する一方、一部を好調な光デバイス事業へシフト」と表明。2026年5月には「パワーデバイス事業への先行投資に一定のめどをつけ、光デバイス事業への成長投資を加速」事実
外部への出資・買収・合弁光通信分野での出資・買収は、今回確認した一次資料には見当たらない(2025年5月の資料に記載された出資はSiC・酸化ガリウムのパワー半導体関連)確認できず
公的資金(NEDO・NICT等)光通信を対象とする補助金・委託事業の採択は、今回確認した一次資料には見当たらない確認できず
大学・研究機関との連携宇宙光通信用の光源モジュールは「産学連携プロジェクトで開発した超小型人工衛星OPTIMAL-1」に搭載して実証。光通信用EMLでの大学との共同研究の記載はない一部事実

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1921年1月三菱造船神戸造船所の電機製作所を継承して創立総合電機としての出発点
1959年8月半導体量産専門工場として北伊丹工場(現 高周波光デバイス製作所ほか)を新設光デバイスの製造拠点の源流
2023年3月CWDM4波長の200Gbps(112Gbaud PAM4)EMLチップを開発。独自のハイブリッド導波路構造で従来比2倍の高速動作800G/1.6T光トランシーバー向け
2024年3月デジタルコヒーレント通信用の波長モニタ内蔵DFB-CANのサンプル提供を発表(TO-56CAN採用、消費電力1W)長距離通信用の光源
2024年4月200Gbps EMLチップの量産開始1.6T世代の送信用光源の量産
2024年9月民生部品を使った宇宙光通信用レーザー光源モジュールの軌道上実証で全サクセスクライテリアを達成(6か月間で性能劣化なし)会社は宇宙環境での光部品劣化の実環境評価として「世界初」と表現
2024年10月200Gbps pin-PDチップのサンプル提供開始。受信用光デバイスを初めてラインアップ送信と受信の両方をそろえる
2025年5月パワー半導体の投資を抑制・延伸し、一部を光デバイス事業へシフトする方針を表明社内の資源配分が光へ動いた
2025年度データセンター向けEMLチップの売上高400億円、累計1億個出荷。400億円の増産投資を決定EMLが事業の柱になった年
2025年度光電コパッケージに向け、ワイヤボンディングを使わないフリップチップ実装技術を開発(有価証券報告書)CPO向けの実装技術
2025年10月NTT東日本・CC-Link協会と、IOWN APNを使って最大1,600km離れた産業用機器をリアルタイム監視・制御する実証に成功光ネットワークの利用側としての実証
2026年5月新中期事業戦略で、EMLチップの生産能力を2029年度に3倍超、CPO向けのCW光源と変調器デバイスの市場投入を打ち出すEMLの次を見据えた計画

7. 今後の計画

EMLチップの売上高2030年度 800億円2025年度400億円から倍増の計画
高周波・光デバイス事業2030年度 1,000億円2026年度見通し730億円
EMLチップの生産能力2029年度に3倍超2025年度比(2020年度比20倍)
次世代EML300G・400G1.6T向け200G品に続き先行開発

2026年5月の事業説明資料と質疑応答要旨によれば、三菱電機は光デバイスについて次の方針を示しています 事実。 (1) 1.6Tbps向けの200Gbps品に続き、300Gbps・400GbpsのEMLチップを先行開発する。 (2) これまで安価なVCSELが主流だった100m程度の短距離にもEMLを広げる(800Gbps以上の高速化で置き換えが進んでいると説明)。 (3) CPO向けに、InP半導体技術を使ったCW光源と変調器デバイスを市場投入する。 会社はCPO市場の立ち上がりを「28年度から29年度頃、本格的な規模拡大は30年代」と見ており、EMLはサーバー間、CPOはラック内と使用領域を棲み分けながらともに伸長すると説明しています。 2030年度目標の前提為替は1ドル140円です。

確認できなかったこと

次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。

400億円の増産投資の設置場所と稼働時期の詳細/EMLチップの顧客名(「ハイパースケーラーやネットワークシステムサプライヤー」とだけ記載)/ 光デバイス事業の営業利益の金額/CPO向けCW光源・変調器の市場投入時期。 会社は「データセンター向けEMLチップ グローバルシェア1位」と書いていますが、根拠は「24年度実績、当社調べ」であり、市場全体の数量は示されていないため、本稿では参考情報として扱います。 事業説明資料に引用された光トランシーバー市場の規模はLightCounting(調査会社)の予測なので、本稿では採用しません。

8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
光トランシーバー本体には進まず、チップ供給者に徹する事業説明資料の施策はEMLチップ、pin-PDチップ、CW光源、変調器デバイスといったチップ単位の話に限られ、光トランシーバーの製品化計画は書かれていない推測
半導体・デバイス事業の利益率改善の柱をパワー半導体から光デバイスへ移す「利益率の高い光デバイスの規模拡大」を調整後営業利益率20%達成の理由に挙げ、パワーデバイスの投資を光へシフトしている事実
CPOではInP変調器で薄膜LNに対抗する質疑応答で「TFLNはサイズが大きいという課題がある。当社は小型化が可能なInP半導体変調器に強みを持つ」と説明事実
CPOの本格化まではEMLの数量拡大で稼ぐCPO市場の立ち上がりを2028〜2029年度と見る一方、EMLの能力を2029年度までに3倍超にする計画推測
売上目標は意図的に控えめに置いている能力3倍超に対し光デバイス売上目標は800億円。会社は理由として「IT業界特有の市況変動リスク」と「短距離用EMLの単価が低いこと」を挙げ、「800億円以上はしっかり目指していきたい」と述べている事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

質疑応答要旨で、会社は現在のEMLチップを「CW(Continuous Wave)レーザーにInPの変調器を集積した構成」と説明し、 次世代のCPOでは「これらが個別に使われる可能性がある」と述べています 事実。 つまりCPOの時代になると、1つのチップに収めていた光源と変調器が分かれ、それぞれ別の会社から買われるかもしれない、ということです。 三菱電機はその場合でも「レーザーと変調器が分離された形態においても、双方を高性能なワンソリューションとして提供できる」としています。 本稿は、同社がEMLで培った光源と変調器の両方の設計・製造技術を分けて売れることを、CPO時代の生き残り策にしていると読みます 未確定/将来。

9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング

三菱電機を中心とした光通信分野の関係 公式リリース・事業説明資料に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 共同開発・共同実証 産学連携 顧客(社名非開示) 三菱電機 光デバイス ハイパースケーラー等 EMLチップの顧客(社名非開示) 「業界トップ企業」 ニーズに合わせEMLを開発 NTT東日本・CC-Link協会 IOWN APNで遠隔制御(2025年) 超小型衛星 OPTIMAL-1 宇宙光通信光源の軌道上実証
図2 三菱電機を中心とした光通信分野の関係。出典:半導体・デバイス事業2026(2026年5月29日)と質疑応答要旨(2026年6月8日)、公式リリース(2024年9月19日、2025年10月8日)。三菱電機はEMLチップの顧客や共同開発先を「ハイパースケーラーやネットワークシステムサプライヤー」「業界トップ企業」とだけ書いており、社名は開示していません。他の光部品メーカーと比べて、社名つきの提携が少ないこと自体がこの会社の特徴です。OPTIMAL-1は「産学連携プロジェクトで開発した」と説明されていますが、参加機関名はリリースに記載されていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品一次資料での記述段階
200Gbps(112Gbaud PAM4)EMLチップCWDM4の4波長に対応。4個で800Gbps、8個で1.6Tbpsの光トランシーバーを構成できる。埋込型レーザーとハイメサ型変調器を同一チップに集積したハイブリッド導波路構造量産(2024年4月〜)
200Gbps pin-PDチップ受信用。裏面入射型構造と凸レンズ集積構造で光電変換領域を小さくし、フリップチップ実装に対応サンプル提供(2024年10月〜)
波長モニタ内蔵DFB-CANデジタルコヒーレント通信用の光源。TO-56CANに波長モニタチップとDFBレーザーチップを収め、消費電力1W、波長1547.72nmサンプル提供(2024年4月〜)
次世代EMLチップ300Gbps・400Gbps品を先行開発開発中
CPO向けCW光源・変調器InP半導体技術を使った光源と変調器デバイス。光電コパッケージ向けのフリップチップ実装技術も開発開発中
宇宙光通信用レーザー光源モジュール1.5µm帯レーザーを使い、民生部品で構成。軌道上で6か月間、出力劣化なし実証済み(製品化時期は非開示)

「業界初」(コヒーレント用光源でのTO-56CAN採用)、「世界で初めて」(宇宙環境での光部品劣化の実環境評価)は、いずれも会社自身の表現です。 CWDM4(4波長の波長多重)はMSAで定められた方式ですが、三菱電機のリリースは準拠を明記していないため、本稿では「CWDM4の4波長に対応」とだけ書きます。

素材技術者の視点:1つのチップに「2種類の作り方」を同居させる

三菱電機の200Gbps EMLチップは、高光出力に優れる埋込型レーザーと、高消光比・広帯域に優れるハイメサ型変調器を同じチップに集積した「ハイブリッド導波路構造」だと説明されています 事実。 一般に、埋込型は活性層の両脇を別の半導体結晶で埋め戻す(再成長させる)構造で、熱が逃げやすく光出力を上げやすい一方、 ハイメサ型は導波路を深く削り出す構造で、電気容量が小さく高速変調に向いています(本稿の解説)。 つまりこのチップは、結晶を「埋める」工程と「深く削る」工程を1枚のInPウエハの上で両立させていることになります。

材料・プロセスの側から見ると、ここで効くのは再成長界面の品質と、深いエッチング側壁の表面状態です。 どちらも欠陥が残るとレーザーの寿命や変調器の漏れ電流に直結します。 会社が「累計1億個出荷」を強調するのは、この難しい構造を量産の歩留まりで回せていることの主張だと読めます 未確定/将来。 歩留まりや不良率そのものは公表されていません。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
IT市況の変動会社自身が光デバイスの売上目標を控えめに置いた理由として「IT業界特有の市況変動リスク」を挙げている事実
単価の低下短距離用EMLは既存の長距離用200Gbps品より単価が低い傾向にあり、生産能力の3倍超がそのまま売上の倍率にはならないと会社が説明事実
CPOでの構成変化CPOでは光源と変調器が分かれ、変調器に薄膜LN(TFLN)が使われる可能性があると会社自身が認めている事実
顧客の見えにくさ顧客名が開示されておらず、特定顧客への集中度を外部から確かめられない未確定/将来
事業規模の小ささ高周波・光デバイス事業は連結売上高の約1%。全社の中での優先度は、投資配分の方針に左右される推測
為替2030年度目標の前提は1ドル140円。円高は円換算の売上を押し下げる事実

12. 用語集

EML
Electro-absorption Modulator integrated Laser diode。電界吸収型光変調器を集積した半導体レーザー。データセンター用光トランシーバーの送信用光源。
pin-PD
pin型フォトダイオード。光信号を電気信号に変える受信用の素子。
PAM4
4値のパルス振幅変調。1回の変調で2ビットを送れる。
CWDM4
4つの波長を1本のファイバに重ねて送る方式。4波長×200Gbpsで800Gbpsになる。
CWレーザー
Continuous Wave。一定の強さの光を出し続けるレーザー。CPOの外部光源などに使う。
VCSEL
垂直共振器型面発光レーザー。安価で短距離向けだが、超高速動作に課題があると会社は説明している。
TFLN
Thin-Film Lithium Niobate(薄膜ニオブ酸リチウム)。高速変調器の材料として注目されている。
DFB-CAN
DFBレーザーチップを金属の缶型パッケージ(TO-CAN)に収めた光源部品。
概念図:小さな化合物半導体チップが光トランシーバーの中で光を出し、その光がデータセンターのサーバー間を結ぶ様子
図3 三菱電機の光デバイスが担う役割の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. 三菱電機株式会社 有価証券報告書 第155期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月19日提出)。沿革、連結業績、セグメント別業績、研究開発活動(光電融合の実装技術を含む)、従業員数。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/investors/data/negotiable-securities/pdf/155.pdf
  2. 三菱電機株式会社 IR Day 2026「半導体・デバイス事業2026」(2026年5月29日)。財務目標、EMLチップの生産能力増強(400億円、3倍超)、累計1億個出荷、CPO向けCW光源・変調器、顧客基盤の記述。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co5.pdf
  3. 三菱電機株式会社 三菱電機 IR Day 2026 事業戦略 質疑応答要旨(2026年6月8日)。EMLチップの売上高(400億円→800億円)、光デバイスの売上目標800億円、CPO市場の見通し、InP変調器とTFLN、次世代300G・400G EML。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co7.pdf
  4. 三菱電機株式会社 半導体・デバイス事業(2025年5月28日)。2024年度実績、パワーデバイス投資の一部を光デバイスへシフトする方針。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/0528-5.pdf
  5. 三菱電機株式会社 ニュースリリース「CWDM4波長『200Gbps(112Gbaud PAM4)EMLチップ』を開発」(2023年3月2日)。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2023/pdf/0302-b.pdf
  6. 三菱電機株式会社 ニュースリリース「『800Gbps/1.6Tbps光ファイバー通信用200Gbps pin-PDチップ』サンプル提供開始」(2024年8月20日)。200Gbps EMLチップの2024年4月からの量産を含む。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0820/
  7. 三菱電機株式会社 ニュースリリース「デジタルコヒーレント通信方式用『波長モニタ内蔵DFB-CAN』サンプル提供開始」(2024年3月21日)。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0321/
  8. 三菱電機株式会社 ニュースリリース「宇宙光通信用光源モジュールの軌道上実証で全サクセスクライテリアを達成」(2024年9月19日)。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0919-a/
  9. NTT東日本・三菱電機・CC-Link協会 報道発表「IOWN APNを活用した産業用ネットワークCC-Link IE TSNの長距離リアルタイム通信の実証に成功」(2025年10月8日)。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/1008-b.pdf
  10. 三菱電機株式会社 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、1921年創立、1959年の北伊丹工場(現 高周波光デバイス製作所ほか)事実出典1 https://www.mitsubishielectric.co.jp/investors/data/negotiable-securities/pdf/155.pdf
連結売上高・営業利益・研究開発費・従業員数、セミコンダクター・デバイスの売上高・研究開発費・従業員数事実出典1 https://www.mitsubishielectric.co.jp/investors/data/negotiable-securities/pdf/155.pdf
光電コパッケージ向けフリップチップ実装技術の開発事実出典1 https://www.mitsubishielectric.co.jp/investors/data/negotiable-securities/pdf/155.pdf
半導体・デバイス事業の2025年度実績・2026年度見通し・2030年度目標、高周波・光デバイス事業の売上高(554・730・1,000億円)、前提為替事実出典2 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co5.pdf
400億円の投資、2029年度までに3倍超(2020年度比20倍)、累計1億個、CPO向けCW光源と変調器、顧客基盤の記述、光デバイスへの成長投資の加速事実出典2 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co5.pdf
EMLチップの売上高400億円→800億円、光デバイス売上目標800億円とその理由、CPO立ち上がり時期、InP変調器とTFLN、300G・400G品の先行開発、光デバイスの利益率の説明事実出典3 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co7.pdf
2024年度の半導体・デバイス事業の売上高2,863億円・営業利益率14.2%、パワーデバイス投資の一部を光デバイスへシフト事実出典4 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/0528-5.pdf
200Gbps EMLチップの開発とハイブリッド導波路構造事実出典5 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2023/pdf/0302-b.pdf
200Gbps pin-PDチップのサンプル提供と、200Gbps EMLチップの2024年4月からの量産事実出典6 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0820/
波長モニタ内蔵DFB-CANの仕様とサンプル提供事実出典7 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0321/
宇宙光通信用光源モジュールの軌道上実証とOPTIMAL-1事実出典8 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2024/0919-a/
IOWN APNを使った最大1,600kmのリアルタイム監視・制御の実証事実出典9 https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/1008-b.pdf
連結売上高比4.9%、高周波・光デバイスの19.3%、EMLが約7割、研究開発費比8.1%、2024年度の逆算値本稿の計算出典1〜3の数値から本稿が算出したもの
光通信企業の3類型の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの企業から例示
光デバイスの営業利益の金額、増産投資の設置場所と稼働時期、顧客名、CPO向け製品の投入時期未確定/将来出典2・3に記載なし。報道ベースの数値は採用しない https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co5.pdf
「グローバルシェア1位」(当社調べ)、事業説明資料中の調査会社の市場予測未確定/将来会社の自社調査・調査会社の推計のため数値としては採用しない https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2026/pdf/0529_co5.pdf
光通信分野での出資・買収、公的資金の採択、大学との共同研究未確定/将来今回確認した一次資料に記載なし。本稿では存在しないとも断定しない https://www.mitsubishielectric.co.jp/investors/data/negotiable-securities/pdf/155.pdf
チップ供給者に徹するという読み、CPO本格化まではEMLの数量で稼ぐという読み推測出典2・3からの本稿の解釈
光源と変調器を分けて売れることをCPO時代の生き残り策にしているという読み推測出典3の質疑応答からの本稿の解釈
埋込型とハイメサ型の構造上の違いの説明、累計1億個が量産歩留まりの主張だという読み未確定/将来一般的な光半導体の知見に基づく本稿の解説
事業規模の小ささというリスク推測出典1・2からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべて三菱電機株式会社が公表した有価証券報告書・事業説明資料・質疑応答要旨・ニュースリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。