TECHNOLOGY EXPLAINER
スズ系ペロブスカイト
― 鉛を抜くと、今度は「酸素」との戦いになる
鉛の代わりに同じ14族のスズを B サイトに入れる——これが鉛フリーのペロブスカイトの本命です。 理論上は鉛系より有利なバンドギャップを持ちながら、Sn²⁺ が Sn⁴⁺ に酸化されやすいことが、効率と寿命の両方を縛ってきました。 本稿は、その化学を素材の目で読み、原料の純度・添加剤・界面がなぜ決定的になるのかを整理します。
- スズ系ペロブスカイトとは何か(3行でつかむ)
- スズは鉛の「そのまま置き換え」になるか ― 半径と許容因子
- 弱点は Sn²⁺ の酸化 ― 何が起きるのか
- 酸化が酸化を呼ぶ ― SnI4 とヨウ素の循環
- 素材技術者の視点①:X線回折では同じでも、原料は違っていた
- 本稿の計算:1 m² のスズを1%酸化させる酸素はどれだけか
- 対策の4つの層 ― 原料・添加剤・結晶・界面
- 効率の現在地
- 素材技術者の視点②:「鉛フリー」は「無害」ではない
- 強みと弱み/課題
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料・査読論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
1. スズ系ペロブスカイトとは何か(3行でつかむ)
- 何を変えたか:ABX3 の B サイトを鉛(Pb²⁺)からスズ(Sn²⁺)に置き換えたものです。2014年、Noel らは初めての完全な鉛フリー CH3NH3SnI3 セルで6%超を報告し、バンドギャップ1.23 eV の材料から0.88 V を超える開放電圧を得ました事実
- 何が難しいか:Noel らは同じ論文で、スズの2価の状態が不安定であることが最大の障害だったと述べています事実。Stoumpos らも、Sn 化合物は酸化しやすく、Sn⁴⁺ がドープされて p 型化し、金属的な導電性を示すと報告しています事実
- どこまで来たか:2025年の Nature 論文は、小面積のスズ系セルで17.89%(認証値17.71%、逆方向掃引)、面積1 cm²で14.40%を報告しています事実(詳しくは第8章)
スズ系の課題は「スズそのもの」より「スズの価数」です。 Sn²⁺ がわずかに Sn⁴⁺ に変わるだけで、膜は半導体から金属のようなふるまいに近づきます。 だから対策は、原料の段階から Sn⁴⁺ を持ち込まず、製膜中につくらず、使用中に入れないという工程全体の話になります(本記事による解説)。
2. スズは鉛の「そのまま置き換え」になるか ― 半径と許容因子
スズと鉛はどちらも14族で、2価のイオンをつくります。 Travis らは、ハロゲン化物の実測の結合長から、ヨウ化物中での6配位の陽イオン半径を Sn²⁺ 0.97 Å、Pb²⁺ 1.03 Åと見積もりました事実。 同論文は、Shannon の半径表には Sn²⁺ の値がそもそも載っていない(他の研究者は1.15 Å を使ってきた)とも注記しています事実。
t =(rA+rX)÷[√2 ×(rB+rX)]。rX(I⁻)=2.20 Å、rA は MA⁺ 2.16 Å、FA⁺ 2.53 Å(いずれも Travis ら)、Cs⁺ 1.88 Å(Bartel らの値として本シリーズ「ペロブスカイトの基本」編で使用)本稿の計算。
- Sn(0.97 Å):MASnI3 = 0.97、FASnI3 = 1.06、CsSnI3 = 0.91
- Pb(1.03 Å):MAPbI3 = 0.95、FAPbI3 = 1.04、CsPbI3 = 0.89
読み方:B が小さくなるぶん、同じ A でも t はわずかに大きくなります。 幾何学的には、スズは鉛の「ほぼそのままの置き換え」で、Stoumpos らも Sn と Pb の固溶体が全組成範囲で得られると報告しています事実。 つまり問題は形ではなく、化学(価数の安定性)にあるということです(本記事による解説)。
| 項目 | スズ系(報告値) | 鉛系(報告値) | 出典 |
|---|---|---|---|
| バンドギャップ | MASnI3:1.23 eV(Noel ら)/1.35 eV(Hao ら) | MAPbI3:1.55 eV(Hao ら) | Noel ら/Hao ら |
| 吸収の長波長端 | CsSnI3 で950 nm まで分光感度(Kumar ら) | — | Kumar ら |
| 移動度 | MASnI3 で電子2,000 cm²/(V·s) 超、正孔300 cm²/(V·s) 超と推定 | — | Stoumpos ら |
| 酸化のしやすさ | Sn⁴⁺ ドープで p 型化・金属的導電 | — | Stoumpos ら |
| 1 m² あたりの金属量 | MASnI3 でスズ0.34 g | MAPbI3 で鉛0.53 g | 経済産業省 |
すべて事実(Noel ら[参考資料2]、Hao ら[参考資料10]、Kumar ら[参考資料3]、Stoumpos ら[参考資料1]、経済産業省[参考資料12])。MASnI3 のバンドギャップは報告によって異なり、Stoumpos らは性質が作製法に強く依存するとしています。「—」は本稿で比較値を記載していない項目です。
3. 弱点は Sn²⁺ の酸化 ― 何が起きるのか
鉛は 6s² 電子を保ったまま2価でいるのが得意ですが、スズは4価になりやすい元素です(本記事による解説)。 ペロブスカイトの中で Sn²⁺ が Sn⁴⁺ に変わると、膜は正孔の多い p 型になり、金属のような導電性を示すようになります(Stoumpos ら)事実。 Shao らは、スズ系セルの効率が低い主な原因を「スズの空孔や酸化種(Sn⁴⁺)といった固有欠陥が多いことによる、高いバックグラウンドのキャリア密度」としています事実。
Kumar らは、CsSnI3 にSnF2 を加えると欠陥の濃度が下がり、バックグラウンドのキャリア密度が減って大きな光電流が得られることを示しました事実。 SnF2 はその後、スズ系の標準的な添加剤になり、Nakamura らも「広く使われている方法にならい、10 mol% の SnF2 を加えた」と記しています事実。
4. 酸化が酸化を呼ぶ ― SnI4 とヨウ素の循環
Lanzetta らは、(PEA)0.2(FA)0.8SnI3 の2D/3D 膜の劣化を調べ、次のような循環する劣化機構を示しました事実。
- 酸素による劣化で SnI4 ができる事実
- SnI4 は水分と酸素の共同作用で、速やかにヨウ素(I2)に変わる事実
- ヨウ素は非常に攻撃性の高い化学種で、ペロブスカイトをさらに酸化して SnI4 を増やす。こうして循環する劣化が成立する事実
- 膜の安定性は、下地に選んだ正孔輸送層に強く依存した事実
「一度始まると自分で加速する」という点が、鉛系の劣化とは質的に違うところです(本記事による解説)。 最初の少量の Sn⁴⁺(や SnI4)を入れないことが、後の寿命に大きく効いてきます。
5. 素材技術者の視点①:X線回折では同じでも、原料は違っていた
京都大学化学研究所の若宮淳志氏らのグループ(Nakamura ら)は、市販の SnI2 を3社から入手し、自分たちで精製した SnI2(dmf) 錯体と比べました事実。 結果は、材料屋にとってかなり示唆的です事実。
- X線回折:どの SnI2 からつくった膜でも、回折パターンに違いは見られなかった
- 光吸収:SnI4 を約10 wt% 含む SnI2 からつくった膜だけが、吸収端のずれと広がりで区別できた。残る3つは実質的に同じ
- 発光(PL):SnI2 の出所は、発光の強さと寿命ではっきり区別できた。精製した錯体からの膜がもっとも長寿命・高強度だったが、それでも寿命は2〜4 ns と短く、Sn(IV) がまだ残っていると考えられた
ここから読めるのは、結晶構造の検査(XRD)では合格でも、電子的には不合格という原料がありうるということです(本記事による解説)。 スズ系では、わずかな Sn(IV) が性能を支配するため、受け入れ検査のものさしを「相が合っているか」から「価数が純粋か」へ移す必要があります。
本稿の計算:SnI2 に SnI4 が10 wt% 混ざっている場合、スズ原子のうち Sn(IV) の割合は、 (10 ÷ 626.3)÷[(10 ÷ 626.3)+(90 ÷ 372.5)]= 約6.2 mol% になります本稿の計算(SnI4 626.3 g/mol、SnI2 372.5 g/mol)。
Nakamura らはさらに、前駆体溶液に還元剤(ジヒドロピラジン誘導体 TM-DHP)を加えると、添加剤の SnF2 と選択的に反応して Sn(0) のナノ粒子ができ、それが Sn(IV) を捕まえることを見いだしました。 もともとは還元剤が直接 Sn(IV) を還元すると考えていたが、実際の「掃除役」は溶液中で生まれた Sn(0) ナノ粒子だったと記しています事実。 この処理で変換効率11.5%(開放電圧0.76 V)、封止したセルで第三者機関の認証値11.2%を得ています事実。
6. 本稿の計算:1 m² のスズを1%酸化させる酸素はどれだけか
Sn²⁺ の酸化がどれほど「少量の酸素」で起こりうるかを、桁で確かめます。
- 前提:経済産業省の資料では、MASnI3 の発電層1 m² あたりスズ0.34 g(含有率22.3%)と算出されている事実。これから MASnI3 は約1.5 g/m²(0.34 ÷ 0.223)とする
- 前提:MASnI3 の式量 531.5 g/mol。1.5 g ÷ 531.5 = 2.82 mmol の Sn
- 前提:形式的に 2 Sn²⁺ + O2 → 2 Sn⁴⁺(酸素1分子で電子4個を受け取る)とし、取り込まれた酸素はすべてこの反応に使われる
- 1% = 28.2 µmol の Sn を酸化するのに要る O2 は 14.1 µmol = 約0.45 mg、標準状態で約0.32 mL
結果:発電層1 m² のスズの1%を酸化させるのに、0.3 mL あまりの酸素で足りる計算です本稿の計算。 前提と限界:実際の酸化生成物(SnI4、SnO2 など)や、ヨウ素による循環(第4章)を無視した形式的な見積もりです。 「何%の酸化で性能が何%落ちるか」はこの計算からはわかりません。
本シリーズ「イオン移動と劣化」編では、鉛系の発電層1 m² を水和させる水が約45 mg という計算をしました。 スズ系ではそれに加えて酸素も、ごく少量で効いてきます。 水蒸気と酸素の両方のバリアが要るという点が、スズ系の封止をさらに難しくします(本記事による解説)。
7. 対策の4つの層 ― 原料・添加剤・結晶・界面
| 層 | 報告されている方法 | 報告された結果 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 原料 | 還元剤 TM-DHP と SnF2 の反応で生じる Sn(0) ナノ粒子が Sn(IV) を捕捉 | 実質的に Sn(IV) のない膜、発光の強度と寿命が改善。11.5%(認証11.2%) | Nakamura ら |
| 添加剤 | CsSnI3 に SnF2 を添加 | 欠陥濃度とバックグラウンドのキャリア密度が低下し、高い光電流 | Kumar ら |
| 結晶 | 0.08 m の2D 層状スズペロブスカイトを0.92 m の FASnI3 に混合 | ほぼ単結晶的で配向のそろった膜。キャリア密度が1桁以上低下。p–i–n 構造で9.0%、安定性も改善 | Shao ら |
| 界面 | 下地の正孔輸送層の選択 | 膜の安定性が正孔輸送層に強く依存 | Lanzetta ら |
| 界面 | ホスホン酸をもつ分子膜を下側界面に形成 | 均一な膜の成長と正孔の取り出し改善。小面積17.89%(認証17.71%)、1 cm² で14.40% | Li ら(Nature) |
| 界面 | フッ素化した高分子の非フラーレン電子輸送層 | 0.04 cm² で16.06%(認証15.90%)、1 cm² で14.67%(認証14.51%) | Li ら(Nature Energy) |
すべて事実(Nakamura ら[参考資料5]、Kumar ら[参考資料3]、Shao ら[参考資料4]、Lanzetta ら[参考資料6]、Li ら[参考資料8]、Li ら[参考資料7])。認証を行った機関は、本稿が確認した要旨には記載がありませんでした。
8. 効率の現在地
本稿が確認した範囲では、NLR(旧NREL)の研究セル効率データ表と、Green らの「Solar cell efficiency tables(Version 68)」に、スズ系単独のペロブスカイトセルの行は見当たりませんでした。 そのため、ここでは査読論文が報告した値(論文中で認証値とされているものを含む)を並べます。
- 面積約1 cm²:スズ系 14.51%(認証、Li ら)÷ 鉛系 26.9%(効率表)= 約54%。差は 約12.4ポイント本稿の計算
- 小面積:スズ系 17.71%(小面積の認証値、Li ら Nature。面積は要旨に記載なし)÷ 鉛系 28.0%(0.05 cm²、効率表)= 約63%本稿の計算
前提と限界:測定機関・面積・構造が完全には一致しないため、あくまで目安です。 Li ら(Nature)は、スズ系が理論上33%を超える効率を支える理想的なバンドギャップを持つとしており事実、 本シリーズ「バンドギャップと組成設計」編の計算(1.25〜1.34 eV で限界効率33%台)とも整合します。 伸びしろはバンドギャップではなく、欠陥(価数)と界面にあるということです(本記事による解説)。
9. 素材技術者の視点②:「鉛フリー」は「無害」ではない
Babayigit らは、ゼブラフィッシュを使って鉛系とスズ系のペロブスカイトの環境影響を比較し、スズ系では予想外の経路——酸性化——による毒性が見られたとして、 スズ系ペロブスカイトが鉛の理想的な代替とは限らないと結論づけています事実。 同論文は、スズも有害物質に挙げられていることにも触れています事実。
ここでの教訓は、「鉛を含まない」ことと「環境・健康への影響が小さい」ことは別の問いだということです(本記事による解説)。 スズ系は、第4章で見たように分解するとヨウ素や SnI4 を生じやすい材料でもあります事実。 評価すべきは元素の名前ではなく、破損・廃棄時にどんな化合物が、どれだけ、どこへ出るかです。
一方、Sn–Pb 混合系は鉛を減らしつつ狭いバンドギャップを得る道として、ペロブスカイト同士のタンデムの下部セルで使われています(本シリーズ「全ペロブスカイトタンデム」編)。 「鉛ゼロ」か「鉛を減らす」かは、用途と規制の条件で選ぶことになります(本記事による解説)。鉛の扱いは本シリーズ「鉛とヨウ素」編で扱います。
10. 強みと弱み/課題
| 観点 | 強み(一次情報で確認できたこと) | 弱み・課題 |
|---|---|---|
| バンドギャップ | 1.23〜1.35 eV 程度で、理論上33%超の効率を支える(Noel ら・Hao ら・Li ら) | 作製法で値が変わる(Stoumpos ら) |
| 構造 | Sn と Pb は全組成で固溶(Stoumpos ら) | — |
| 化学 | 還元・捕捉で Sn(IV) を除ける(Nakamura ら) | Sn⁴⁺ ドープで p 型化(Stoumpos ら)。SnI4–I2 の循環劣化(Lanzetta ら) |
| 効率 | 小面積で認証17.71%、1 cm² で認証14.51%(Li ら) | 1 cm² で鉛系の約54%本稿の計算 |
| 環境 | 鉛を含まない | ゼブラフィッシュで酸性化による毒性(Babayigit ら) |
各項目は事実(出典は括弧内)。ただし「約54%」は本稿の計算です。「強み・弱み」の振り分けは本記事による整理です。
(1) 屋外での長期耐久性は確認できていない
Li ら(Nature)は、封止したセルが1-sun 連続照射1,550時間後に初期効率の94%超を保ったと報告しています事実。 ただし、屋外で年単位の耐久性を示した一次情報は、本稿の調査範囲では確認できませんでした未確定/将来。
(2) 大面積化の実績
スズ系で報告されている認証値は、確認できた範囲では面積1 cm²まででした。 モジュール規模での認証効率は、本稿の調査範囲では確認できませんでした未確定/将来。
- スズは幾何学的には鉛のほぼそのままの置き換えです。許容因子は Sn で0.91〜1.06本稿の計算
- 問題は価数。Sn⁴⁺ が入ると p 型化し、金属的になります事実
- SnI4 → I2 → さらに酸化、という自己加速の循環があります事実
- XRD では区別できない原料の違いが、PL では見えた——受け入れ検査のものさしが変わります事実
- 1 m² のスズの1%を酸化させる酸素は約0.32 mLです本稿の計算
- 1 cm² の認証効率は14.51%で、鉛系の約54%本稿の計算。「鉛フリー」は「無害」とは別の問いです
11. 用語集
- 鉛フリー
- B サイトに鉛を使わないペロブスカイト。スズが最有力の代替とされる。
- Sn²⁺/Sn⁴⁺
- スズの2価と4価のイオン。ペロブスカイトでは2価が必要で、4価への酸化が問題になる。
- p 型化
- 正孔が多数キャリアになること。スズ系では Sn⁴⁺ や空孔によって意図せず起きる。
- バックグラウンドのキャリア密度
- 光を当てていないときにもともと存在する電荷の密度。高いと再結合が増える。
- SnF2
- スズ系の前駆体溶液に加える代表的な添加剤。欠陥とキャリア密度を下げる。
- SnI4
- ヨウ化スズ(IV)。スズ系の酸化で生じ、さらにヨウ素に変わって劣化を進める。
- スカベンジャー
- 不純物を選択的に捕まえて取り除く物質。Sn(0) ナノ粒子が Sn(IV) を捕まえる例がある。
- 2D/3D ペロブスカイト
- 大きな有機陽イオンで層状にした2D 相を、通常の3D 相に少量混ぜた構造。
- PL 寿命
- 光で励起したあと発光が減衰するまでの時間。欠陥が多いほど短くなる。
- p–i–n 構造(逆型)
- 下から正孔輸送層・ペロブスカイト・電子輸送層の順に積むセル構造。
- 酸素透過度
- 1日に1 m² を通り抜ける酸素の体積(mL/m²/day など)。封止材の性能指標。
- ゼブラフィッシュ
- 毒性評価によく使われる小型の魚のモデル生物。
12. 参考資料(一次情報)
- Stoumpos, Malliakas, Kanatzidis「Semiconducting Tin and Lead Iodide Perovskites with Organic Cations: Phase Transitions, High Mobilities, and Near-Infrared Photoluminescent Properties」Inorg. Chem. 52, 9019 (2013) https://doi.org/10.1021/ic401215x
- Noel ほか「Lead-free organic–inorganic tin halide perovskites for photovoltaic applications」Energy Environ. Sci. 7, 3061 (2014) https://doi.org/10.1039/C4EE01076K
- Kumar ほか「Lead-Free Halide Perovskite Solar Cells with High Photocurrents Realized Through Vacancy Modulation」Adv. Mater. 26, 7122 (2014) https://doi.org/10.1002/adma.201401991
- Shao ほか「Highly Reproducible Sn-Based Hybrid Perovskite Solar Cells with 9% Efficiency」Adv. Energy Mater. 8, 1702019 (2018) https://doi.org/10.1002/aenm.201702019
- Nakamura ほか(京都大学化学研究所 若宮研究室ほか)「Sn(IV)-free tin perovskite films realized by in situ Sn(0) nanoparticle treatment of the precursor solution」Nat. Commun. 11, 3008 (2020) https://doi.org/10.1038/s41467-020-16726-3
- Lanzetta ほか「Degradation mechanism of hybrid tin-based perovskite solar cells and the critical role of tin (IV) iodide」Nat. Commun. 12, 2853 (2021) https://doi.org/10.1038/s41467-021-22864-z
- Li, He, Shen ほか「Centimetre-scale fullerene-free tin-based perovskite solar cells with a 14.51% certified efficiency」Nat. Energy 11, 219–229 (2026、オンライン公開2025年12月5日) https://doi.org/10.1038/s41560-025-01919-1
- Li, Luo, Wang ほか「Tin-based perovskite solar cells with a homogeneous buried interface」Nature 648, 84 (2025) https://doi.org/10.1038/s41586-025-09724-2
- Babayigit ほか「Assessing the toxicity of Pb- and Sn-based perovskite solar cells in model organism Danio rerio」Sci. Rep. 6, 18721 (2016) https://doi.org/10.1038/srep18721
- Hao ほか「Anomalous Band Gap Behavior in Mixed Sn and Pb Perovskites Enables Broadening of Absorption Spectrum in Solar Cells」J. Am. Chem. Soc. 136, 8094 (2014) https://doi.org/10.1021/ja5033259
- Travis ほか「On the application of the tolerance factor to inorganic and hybrid halide perovskites: a revised system」Chem. Sci. 7, 4548 (2016) https://doi.org/10.1039/C5SC04845A
- 経済産業省「次世代型太陽電池戦略」令和6年11月(PDF) https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf
- Green ほか「Solar cell efficiency tables: Version 68」Joule 10, 102494 (2026) https://doi.org/10.1016/j.joule.2026.102494
13. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| Sn 化合物が酸化しやすく Sn⁴⁺ ドープで p 型化し金属的導電性を示すこと。Sn と Pb の固溶体が全組成範囲で得られること。性質が作製法に強く依存すること。MASnI3 で電子2,000 cm²/(V·s) 超・正孔300 cm²/(V·s) 超の移動度が推定されること | Inorg. Chem. 論文(要旨) 出典1 https://doi.org/10.1021/ic401215x | 事実 |
| 初めての完全な鉛フリー CH3NH3SnI3 セルで6%超。バンドギャップ1.23 eV の材料で0.88 V 超の開放電圧。スズの2価の状態の不安定さが最大の障害であったこと | Energy Environ. Sci. 論文(要旨) 出典2 https://doi.org/10.1039/C4EE01076K | 事実 |
| CsSnI3 セルで950 nm まで分光感度があること。SnF2 添加で欠陥濃度とバックグラウンドのキャリア密度が下がり高い光電流が得られたこと | Adv. Mater. 論文(要旨) 出典3 https://doi.org/10.1002/adma.201401991 | 事実 |
| スズ系の効率が低い主因がスズ空孔や酸化種(Sn⁴⁺)などの固有欠陥による高いバックグラウンドのキャリア密度であること。0.08 m の2D 層状スズペロブスカイトを0.92 m の FASnI3 に混ぜ、配向のそろったほぼ単結晶的な膜でキャリア密度を1桁以上下げたこと。p–i–n 構造で9.0%、安定性の改善 | Adv. Energy Mater. 論文(要旨) 出典4 https://doi.org/10.1002/aenm.201702019 | 事実 |
| 市販 SnI2 3社品と精製した SnI2(dmf) 錯体の比較で、XRD に差がなく、SnI4 約10 wt% を含む SnI2 のみ吸収で区別でき、PL の強度と寿命で出所が区別できたこと。PL 寿命2〜4 ns で Sn(IV) が残存と考えられたこと。10 mol% の SnF2 添加が広く使われる方法であること。TM-DHP と SnF2 の反応で生じた Sn(0) ナノ粒子が Sn(IV) を捕捉すること(当初は TM-DHP が直接還元すると考えていたこと)。11.5%・開放電圧0.76 V、封止セルで認証11.2%。著者所属が京都大学化学研究所ほか | Nat. Commun. 論文(要旨・本文) 出典5 https://doi.org/10.1038/s41467-020-16726-3 | 事実 |
| (PEA)0.2(FA)0.8SnI3 膜で、酸素による劣化で SnI4 が生じ、水分と酸素の共同作用で速やかにヨウ素に変わり、ヨウ素がさらにペロブスカイトを酸化して SnI4 を増やす循環的な劣化機構。安定性が下地の正孔輸送層に強く依存すること | Nat. Commun. 論文(要旨) 出典6 https://doi.org/10.1038/s41467-021-22864-z | 事実 |
| フッ素化高分子の非フラーレン電子輸送層で、0.04 cm² 16.06%(認証15.90%)、1 cm² 14.67%(認証14.51%)。1-sun 連続照射550時間で85%超を保持 | Nat. Energy 論文(要旨) 出典7 https://doi.org/10.1038/s41560-025-01919-1 | 事実 |
| 下側界面の分子膜で小面積17.89%(逆方向掃引で認証17.71%)、1 cm² で14.40%。封止セルが1-sun 連続照射1,550時間後に94%超を保持。スズ系が理論上33%超の効率を支える理想的なバンドギャップを持つこと。逆型構造の認証効率が16%を超えていたこと | Nature 論文(要旨) 出典8 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09724-2 | 事実 |
| ゼブラフィッシュでの比較で、スズ系に酸性化という予想外の毒性経路が見られ、スズ系が鉛の理想的な代替とは限らないとされたこと。スズも有害物質に挙げられていること | Sci. Rep. 論文(要旨) 出典9 https://doi.org/10.1038/srep18721 | 事実 |
| MAPbI3 1.55 eV、MASnI3 1.35 eV(Sn–Pb 混合系の両端) | J. Am. Chem. Soc. 論文(要旨) 出典10 https://doi.org/10.1021/ja5033259 | 事実 |
| ヨウ化物中の6配位陽イオン半径(Sn²⁺ 0.97 Å、Pb²⁺ 1.03 Å)。MA⁺ 2.16 Å、FA⁺ 2.53 Å、I⁻ 2.20 Å。Shannon は Sn²⁺ の半径を与えておらず、1.15 Å が他の研究者により使われてきたこと | Chem. Sci. 論文(本文・表1) 出典11 https://doi.org/10.1039/C5SC04845A | 事実 |
| 発電層1 m² あたり、MASnI3 でスズ0.34 g(含有率22.3%)・ヨウ素1.1 g、MAPbI3 で鉛0.53 g と算出されていること | 経済産業省「次世代型太陽電池戦略」53ページ 出典12 https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/pdf/20241128_1.pdf | 事実 |
| 面積1.017 cm² の鉛系ペロブスカイトセル26.9%、0.05 cm² の28.0%。同表にスズ系単独のセルの行が見当たらないこと | Joule 掲載「Solar cell efficiency tables: Version 68」 出典13 https://doi.org/10.1016/j.joule.2026.102494 | 事実 |
| 許容因子(Sn:MA 0.97・FA 1.06・Cs 0.91、Pb:MA 0.95・FA 1.04・Cs 0.89)。SnI4 10 wt% 混入時の Sn(IV) 約6.2 mol%。MASnI3 約1.5 g/m²・Sn 2.82 mmol、1%酸化に要する O2 約0.45 mg・約0.32 mL、酸素透過度ごとの日数。効率比 約54%(1 cm²)・約63%(小面積)と差12.4ポイント | 本稿の計算。Cs⁺ 1.88 Å(Bartel らの値)、形式的な反応 2Sn²⁺+O2、届いた酸素の全量が酸化に使われることは本稿が置いた前提である。図2・図4の数値部分を含む | 本稿の計算 |
| スズ系の屋外での年単位の耐久性、モジュール規模の認証効率 | 本稿の調査範囲では一次情報を確認できなかった。今後の報告を待つ事項である(本記事による注記) | 未確定/将来 |
| 課題が「スズそのもの」より「価数」にあるという整理。「持ち込まない・つくらない・入れない」の3段階と4つの層の整理。受け入れ検査のものさしを価数の純度へ移すという読み取り。鉛系との劣化の質的な違い(自己加速)。「鉛フリー」と「無害」は別の問いという整理。水蒸気と酸素の両方のバリアが要るという読み取り。鉛は2価、スズは4価になりやすいという一般的な化学の説明 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各論文が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1〜図4が説明のための作図であり、実測データ・反応機構の詳細ではないこと。ヒーロー画像と図5が AI 生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年9月25日/出典は一次情報(査読論文、政府の戦略文書、効率表)に限定しています。 材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 スズ系の屋外での年単位の耐久性、モジュール規模の認証効率は、確認できる一次情報がなかったため記載していません。 論文中の「認証値」について、認証を行った機関は本稿が確認した要旨の範囲では特定していません。 図はすべて説明用の概念図です。図1〜図4はベクター作図、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の測定データ・原料・製品の実物を示すものではありません。