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PMDA|細胞培養技術 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 細胞培養技術

PMDA
― 日本で売る細胞製品を「審査し、製造所を調べる」機関

PMDA(医薬品医療機器総合機構)は厚生労働省が所管する日本の独立行政法人で、自分では薬も細胞も作りません。 役割は、企業が出した承認申請の資料を審査し、製品を作る製造所を調査して、その結果を厚生労働大臣に伝えることです。 iPS細胞から作る細胞製品やCAR-T細胞のような再生医療等製品も、抗体医薬のような細胞培養で作るバイオ医薬品も、 日本で売るならこの審査と調査を通ります。 本稿では、PMDAが細胞培養技術にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:PMDAの機構紹介ページ・業務案内・令和7年度業務実績報告書・再生医療等製品の承認品目一覧、医薬品医療機器等法と再生医療等安全性確保法の条文(e-Gov法令検索)、PIC/Sの加盟当局一覧を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるPMDA
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 細胞培養技術で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 審査を経た製品と企業
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるPMDA

正式名称独立行政法人
医薬品医療機器総合機構
英文 Pharmaceuticals and Medical Devices Agency
国・地域日本本部は東京都千代田区霞が関。関西と北陸に支部
機関の種類独立行政法人厚生労働省の所管。省庁そのものではない
設立2004年4月1日国の審査センターなど3組織の業務を統合
人数規模全職員 1,053人2025年4月1日現在
細胞培養技術への関与審査と製造所の調査再生医療等製品の審査、GCTP・GMP調査
影響が及ぶ範囲日本の市場日本向けに作る海外の製造所も調査の対象
海外拠点タイ・米国アジア事務所 2024年7月、ワシントンD.C.事務所 2024年11月
まず押さえるべき1点

PMDAは審査をする機関で、承認を出す機関ではありません。 医薬品医療機器等法(薬機法)は、再生医療等製品の製造販売には「厚生労働大臣の承認」が要ると定め(第23条の25)、 そのうえで厚生労働大臣が審査と調査をPMDAに行わせることができ、その場合は大臣が自分では審査せず、 PMDAが通知する結果を考慮して承認すると定めています(第23条の27) 事実。 つまり最終判断は厚生労働大臣ですが、申請資料を読み込み、製造所に出向いて調べる実務はPMDAが担います。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

細胞培養技術の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では細胞も製品も作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

細胞培養技術を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では細胞も製品も作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 承認・査察・価格・法律 試験方法・品質要求 学会・研究基盤 AMED/厚生労働省 厚労省/PMDA/FDA/EMA ICH/USP CiRA財団 何を研究させるか 何を市場に出してよいか どう測り、どう比べるか 誰が何を使えるか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の市場 届く範囲=加盟国 届く範囲=利用者 PMDAは「政策・規制」型の実務部隊。審査と製造所の調査を担い、承認の最終判断は厚生労働大臣が行う 日本で売る再生医療等製品は、国内外のどこで作っても、PMDAの審査と製造所の調査を通る
図1 細胞培養技術に関わる機関の4つの型と、PMDAの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う8機関から例示しています 本稿の計算。厚生労働省は規制と研究資金の両方を持つため2つの型に入れています。PMDAは規制の型のうち、審査と調査という実務を受け持つ機関です。

3. 細胞培養技術で何をしているか

PMDAの業務のうち、細胞培養技術に関わるのは次の5つです 事実。

業務中身実績・対象
再生医療等製品の承認審査生きた細胞や遺伝子を使う製品の品質・有効性・安全性を審査。品質が均一になりにくい製品向けの条件及び期限付承認の審査も行う令和7年度に承認された品目の総審査期間(中央値)は優先品目8.9か月、通常品目11.1か月
治験・開発の相談医薬品等を開発する企業や大学・研究機関に、治験の内容や申請資料について助言する医薬品だけでなく再生医療等製品の分野も対象
GCTP適合性調査再生医療等製品の製造所が、製造管理・品質管理の基準(GCTP)に合っているかを書面と実地で調べる対象は国内外の製造所。令和7年度の実地調査は8件(海外3件・国内5件)
GMP適合性調査(バイオ医薬品)細胞培養技術応用医薬品や遺伝子組換え医薬品を作る製造所がGMPに合っているかを調べる国内は生物学的製剤などを作る製造所、海外は医薬品の製造所が対象(それ以外の国内製造所は都道府県が担当)
細胞培養加工施設の調査再生医療等安全性確保法にもとづき、医療機関向けに細胞を加工する施設(特定細胞加工物等製造施設)の構造設備を調べ、立入検査も行う2025年5月の法改正で対象が広がり、令和7年度に新しい対象の施設の調査を始めた
素材技術者の視点:調べられるのは「製造所」

GCTP調査の対象は、PMDAの業務範囲の説明では「再生医療等製品を製造する国内外の製造所」です。 培地や培養装置、シングルユースのバッグを作るメーカーそのものが調査の対象と書かれているわけではありません 事実。 ただし製造所は、使う資材も含めて製造管理と品質管理を説明できなければ調査に通りません。 資材メーカーから見ると、PMDAの影響は顧客である製造所を通して間接的に届く形です 本稿の計算。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点PMDAが持っているもの持っていないもの
権限申請資料の審査と、製造所の書面・実地の調査。結果を厚生労働大臣に通知する承認・許可そのものを出す権限(厚生労働大臣)。保険で払う価格を決める権限(厚生労働省と中央社会保険医療協議会)
地域日本の市場。日本に輸出される製品なら、海外の製造所もGCTP・GMP調査の対象になる他の国での承認や販売を左右する権限
国際的なつながりICH(医薬品規制調和国際会議)に日本の規制当局代表の一員として参加。PIC/S(医薬品査察協定・医薬品査察協同スキーム)には、厚生労働省と合わせて1つの参加当局として2014年7月に加盟国際的な指針を単独で決める権限(ICHでは各国当局と業界が合意して作る)
規模全職員1,053人(2025年4月1日現在)。国内は東京本部と関西・北陸支部、海外はタイとワシントンD.C.に事務所再生医療等製品だけを担当する人数は、業務実績報告書に独立した数字がない
「日本だけの機関」とは言い切れない理由

PMDAの権限は日本の法律にもとづくので、届く範囲は原則として日本です。 ただし、日本で売りたい製品を海外で作る企業にとっては、自社の海外工場にPMDAの調査員が来ることになります。 令和7年度のGCTP実地調査8件のうち3件は海外でした 事実。 さらにPIC/Sの枠組みでは、他国当局との間で査察結果をやり取りしています(令和7年度は6件のGMP調査結果などを他国当局に提供) 事実。

5. 審査を経た製品と企業

再生医療等製品が日本の市場に出るまでとPMDAの役割 PMDAが審査・調査し、その結果を考慮して厚生労働大臣が承認する(薬機法第23条の27) 開発企業・大学 相談・治験・承認申請 PMDA 相談・審査・GCTP調査 厚生労働大臣 承認(条件及び期限付を含む) 細胞培養加工施設(安確法) 許可のための構造設備調査 国内外の製造所 GCTP実地調査 8件(令和7年度) 中央社会保険医療協議会 保険で払う価格を審議 PMDAの審査を経て承認された細胞加工製品(2025〜2026年度の新規承認から抜粋) アムシェプリ(住友ファーマ) iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞 2026年3月 条件及び期限付承認 リハート(クオリプス) iPS細胞由来心筋細胞シート 2026年3月 条件及び期限付承認 アロステムシート(イシンファーマ) 同種の間葉系幹細胞シート 2026年4月 承認 セイビスカス注(富士フイルム富山化学) 自己の滑膜由来間葉系幹細胞 2026年5月 承認 ※遺伝子治療用製品(ウイルスベクター製品など)と、効能追加などの一部変更承認は除いた
図2 再生医療等製品が日本の市場に出るまでの流れと、PMDAが関わる場所。出典:薬機法第23条の25・第23条の27、再生医療等安全性確保法第38条、PMDAの令和7年度業務実績報告書、2025年度・2026年度の再生医療等製品承認品目一覧。品目の抜粋は本稿によるものです 本稿の計算。

2025〜2026年度に審査を経た主な細胞加工製品

製品(企業)承認日・種類中身(PMDAの一覧の記載から要約)このシリーズとの関係
アムシェプリ(住友ファーマ)2026年3月6日
条件及び期限付承認
健康な成人の血液から作ったiPS細胞を培養・分化させたドパミン神経前駆細胞の塊。パーキンソン病の運動症状の改善に使う。先駆け審査指定品目住友ファーマの企業解説
リハート(クオリプス)2026年3月6日
条件及び期限付承認
同種iPS細胞から分化させた心筋細胞のシート。虚血性心筋症による重症心不全に使う本シリーズでは扱っていない
アロステムシート(イシンファーマ)2026年4月3日
承認
健康な成人の皮下脂肪から取った間葉系幹細胞を培養しシート状にした製品。表皮水疱症に使う本シリーズでは扱っていない
セイビスカス注(富士フイルム富山化学)2026年5月8日
承認
患者自身の膝の滑膜から取った細胞を培養した間葉系幹細胞の懸濁液。半月板損傷に使う本シリーズでは扱っていない(富士フイルムグループの別会社)
アクーゴ脳内移植用注(サンバイオ)2025年12月8日
一部変更承認
2024年7月に条件及び期限付承認。治験で使った製品と市販品の品質の同等性が評価され、「承認されるまで出荷しない」という承認条件が削除された本シリーズでは扱っていない

※アクーゴの例は、PMDAの審査が培養した細胞の品質が治験のときと同じかまで見ていることを示しています。細胞を培養して作る製品では、作り方が少し変わるだけで製品が変わりうるためです。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
iPS細胞由来の2品目は、期限内に改めて承認申請し、PMDAの審査を受け直すことになる。そのときに有効性を示せるかが次の山場薬機法第23条の26は、条件及び期限付承認の期限を7年以内(延長は3年以内)とし、期限内の再申請を義務づけている。2品目の承認は2026年3月推測
医療機関向けに細胞を加工する施設の調査が、PMDAの業務として増えていく2025年5月の再生医療等安全性確保法の改正で対象が広がり、PMDAは令和7年度に新たな対象の施設の調査を始めた推測
海外で作られる細胞製品が増えるほど、PMDAの海外製造所の調査の比重が上がるGCTP調査は国内外の製造所が対象で、令和7年度の実地調査8件のうち3件が海外。PMDAは2024年にタイと米国に事務所を開いた推測

7. 用語集

再生医療等製品
人や動物の生きた細胞・組織を加工した製品と、遺伝子治療用の製品。医薬品や医療機器とは別の区分として薬機法に定められている。
条件及び期限付承認
品質が均一でない再生医療等製品について、有効性が推定され安全性が確認されれば、条件と7年以内の期限を付けて早く承認する仕組み。期限内に改めて申請する必要がある。
GCTP
再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準。医薬品のGMPにあたる。
特定細胞加工物
医療機関で行う再生医療に使う、培養などの加工をした細胞のうち、承認された再生医療等製品ではないもの。
PIC/S
医薬品のGMP査察について各国の当局が協力する国際的な枠組み。日本は厚生労働省とPMDAが合わせて1つの参加当局。

8. 出典

  1. PMDA PMDAとは(名称・設立・法人の種別・業務)。 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/outline/0001.html
  2. PMDA 業務案内(2025年5月発行。厚生労働省所管の独立行政法人であること、条件及び期限付承認制度、GCTPの定義、関西・北陸支部、アジア事務所とワシントンD.C.事務所の設置)。 https://www.pmda.go.jp/files/000219906.pdf
  3. PMDA 業務実績報告書(令和7年度)。所在地、全職員数、再生医療等製品の総審査期間、GCTP実地調査の件数、特定細胞加工物等製造施設の調査開始、PIC/Sにもとづく調査結果の提供。 https://www.pmda.go.jp/files/000282524.pdf
  4. PMDA GMP/QMS/GCTP適合性調査業務(PMDA・都道府県・第三者認証機関の分担、GCTPは国内外の製造所が対象)。 https://www.pmda.go.jp/review-services/gmp-qms-gctp/0001.html
  5. PMDA 再生医療等安全性確保法に関する適合性調査(特定細胞加工物等製造施設の構造設備の調査と立入検査)。 https://www.pmda.go.jp/review-services/gmp-qms-gctp/ensure-safety-regen/0001.html
  6. PMDA 2025年度承認品目一覧(再生医療等製品)。アクーゴ、リハート、アムシェプリなど。 https://www.pmda.go.jp/files/000280052.pdf
  7. PMDA 2026年度承認品目一覧(再生医療等製品)。アロステムシート、セイビスカス注など。 https://www.pmda.go.jp/files/000282058.pdf
  8. e-Gov法令検索 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第23条の25 承認、第23条の26 条件及び期限付承認、第23条の27 機構による審査等)。 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
  9. e-Gov法令検索 再生医療等の安全性の確保等に関する法律(第35条 特定細胞加工物等の製造の許可、第38条 機構による調査、第53条 機構による立入検査)。 https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000085
  10. PMDA ICH 医薬品規制調和国際会議(PMDAは日本の医薬品規制当局代表の一員として参加)。 https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html
  11. PIC/S Members(日本は厚生労働省とPMDAで1参加当局、2014年7月加盟)。 https://picscheme.org/en/members

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、英文名、設立2004年4月1日、3組織の業務の統合事実出典1 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/outline/0001.html
厚生労働省所管の独立行政法人、条件及び期限付承認制度の説明、再生医療等製品の分野を含む相談業務、関西・北陸支部、アジア事務所(2024年7月)とワシントンD.C.事務所(2024年11月)事実出典2 https://www.pmda.go.jp/files/000219906.pdf
全職員1,053人(2025年4月1日)、総審査期間 優先8.9か月・通常11.1か月、GCTP実地調査8件(海外3・国内5)、特定細胞加工物等製造施設の調査開始、他国当局への6件の調査結果提供事実出典3 https://www.pmda.go.jp/files/000282524.pdf
GCTP調査は国内外の製造所が対象、GMPでは細胞培養技術応用医薬品などを作る国内製造所と海外製造所が対象、それ以外は都道府県事実出典4 https://www.pmda.go.jp/review-services/gmp-qms-gctp/0001.html
特定細胞加工物等製造施設の構造設備調査と立入検査事実出典5 https://www.pmda.go.jp/review-services/gmp-qms-gctp/ensure-safety-regen/0001.html
アムシェプリ・リハートの条件及び期限付承認(2026年3月6日)、アクーゴの一部変更承認と承認条件の削除事実出典6 https://www.pmda.go.jp/files/000280052.pdf
アロステムシート(2026年4月3日)、セイビスカス注(2026年5月8日)の承認事実出典7 https://www.pmda.go.jp/files/000282058.pdf
承認は厚生労働大臣、審査・調査はPMDAに行わせることができ大臣はその結果を考慮する、条件及び期限付承認の期限(7年以内・延長3年以内)と再申請義務事実出典8 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
特定細胞加工物等の製造許可は厚生労働大臣、調査と立入検査はPMDAに行わせることができる事実出典9 https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000085
ICHへの参加事実出典10 https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0014.html
PIC/Sへの加盟(厚生労働省と合わせて1参加当局、2014年7月)事実出典11 https://picscheme.org/en/members
機関の4つの型の区分、図2の品目の抜粋本稿の計算本稿による整理(品目は出典6・7から選んだもの)
資材メーカーへの影響は製造所を通して間接的に届く本稿の計算出典4の調査対象の定めからの本稿の解釈
再生医療等製品だけを担当する職員数未確定/将来出典3に独立した数字なし。本稿では推計しない
第6章の見通し3項目推測出典2・3・8の制度と実績からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月24日/Troy Technical
本稿の数値はPMDAの公式サイト・業務実績報告書・承認品目一覧と、e-Gov法令検索の条文に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。