COMPANY PROFILE / 半導体後工程
NVIDIA(エヌビディア)
― 後工程の設備を1つも持たないのに、後工程を動かしている会社
NVIDIAはAI向け半導体で世界最大の設計会社です。工場は1つも持たず、 法定開示書類にも「当社は自社製品の組立・試験・パッケージングを行わない」と明記されています。 それでも半導体後工程の記事にNVIDIAが必ず登場するのは、 後工程の能力を買い占めている発注元がNVIDIAだからです。 「持っていないのに握っている」という構図を、公表資料の数字だけで追います。
- 30秒でわかるNVIDIA(基本データ)
- ロゴと社名の表記について
- 何をしている会社か ― 「ファブレス」という業態
- 企業規模 ― 過去5年の売上高
- 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
- 拠点と工場のある国
- 半導体後工程における主力製品とシェア
- 直近の投資計画
- 提携している大手企業
- 今後のこの分野における存在感
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるNVIDIA
(Nasdaq Global Select Market)ティッカー NVDA。発行済株式数 243億株(2026年2月20日時点)
(215,938百万ドル)前年比 +65%。会計年度は1月末締めで、この期は2026年1月25日に終了
(ファブレス半導体)設計だけを行い、製造・後工程はすべて外部に委託する
NVIDIAの後工程売上はゼロです。パッケージングもテストも外部に出しているので、売るものがありません。 10-Kには 「当社はウェハ製造をファウンドリに依存する。当社は自社製品の組立・試験・パッケージングを行わず、独立した下請企業と契約する」 と書かれています 事実。 それでも後工程の記事にNVIDIAが最も多く登場するのは、 後工程の能力を先払いで押さえている当事者がNVIDIAだからです。 同社は10-Kで「半導体パッケージングにCoWoS技術を利用している」と名指しで開示しており、 2026年7月時点の供給・能力コミットメント残高は US$2,790億に達します。 「売上はゼロ、支払いは兆円規模」という非対称が、この会社を後工程の側から見るときの鍵です。
2. ロゴと社名の表記について
NVIDIAのロゴ(緑色の「目」を思わせるシンボルと NVIDIA のワードマーク)は同社の登録商標です。 本稿では生成画像やイラストによる再現は行わず、 掲載する場合は公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。 AIで「それらしく」描き起こしたロゴは、商標としても事実としても誤りになります。
表記の特徴:社名は法定書類でも全て大文字の NVIDIA で表記されます。 「Nvidia」「nVidia」といった表記は公式ではありません。日本語では「エヌビディア」が公式の読みです。
公式サイト:https://www.nvidia.com/en-us/3. 何をしている会社か ― 「ファブレス」という業態
NVIDIAは半導体を設計するだけの会社です。10-Kの「Manufacturing(製造)」という項には、 次のように書かれています 事実。
「当社はファブレス(自社工場を持たない)かつ委託製造の戦略を採り、 ウェハ製造、組立、試験、パッケージングを含む製造工程のすべての段階について、 主要なサプライヤーと提携している」
「当社は半導体パッケージングにCoWoS技術を利用している。 当社は鴻海精密工業、緯創資通(Wistron)、Fabrinet といった独立した下請企業・受託製造業者と契約し、 最終製品の組立・試験・パッケージングを行わせている」
つまりNVIDIAが自社でやるのは、GPUやCPUのアーキテクチャ設計、ソフトウェア(CUDA、各種ライブラリ)、 システム設計、そして顧客とのやり取りまでです。 シリコンに関わる物理的な工程は1つも自社では行っていません。
事業は2つのセグメントで報告されています 事実。
| セグメント | 内容 | 2026年1月期 売上高 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| Compute & Networking | データセンター向けの演算・ネットワーク基盤、AIソフトウェア、車載プラットフォーム | 193,479百万ドル | 130,141百万ドル |
| Graphics | ゲーム・PC向けGeForce GPU、ワークステーション向けRTX GPU | 22,459百万ドル | 9,156百万ドル |
| 合計 | ― | 215,938百万ドル | 139,297百万ドル |
※セグメント営業利益の合計(139,297百万ドル)には全社費用が配賦されていないため、連結の営業利益(130,387百万ドル)とは一致しません。会社がそう注記しています。
材料メーカーの営業先として見れば、NVIDIAは顧客ではありません。 アンダーフィルもモールド樹脂もABF基板も、NVIDIAは1グラムも買っていないからです。 買っているのはTSMCであり、OSATであり、基板メーカーです。 にもかかわらずNVIDIAを追う必要があるのは、 「どのパッケージ構造を使うか」を最初に決めるのがNVIDIAだからです。 同社は10-Kで自ら「CoWoS技術を利用している」と書きました。 この一文が、シリコンインターポーザ、それに載せるHBM、外周のモールド材、 巨大化したパッケージを支える基板——という材料要求の連鎖を確定させています。 仕様の起点は発注元にあり、材料の需要量は発注元の生産計画で決まる。 だから後工程の材料を扱うなら、TSMCの設備計画と同じくらい、NVIDIAの供給コミットメントを見る必要があります。
4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
| 決算期 | 売上高(百万ドル) | 研究開発費(百万ドル) | 営業利益(百万ドル) | 純利益(百万ドル) |
|---|---|---|---|---|
| 2022年1月期 | 26,914 | 5,268 | 10,041 | 9,752 |
| 2023年1月期 | 26,974 | 7,339 | 4,224 | 4,368 |
| 2024年1月期 | 60,922 | 8,675 | 32,972 | 29,760 |
| 2025年1月期 | 130,497 | 12,914 | 81,453 | 72,880 |
| 2026年1月期 | 215,938 | 18,497 | 130,387 | 120,067 |
※2023年1月期に営業利益が大きく落ちているのは、ゲーム向けの在庫調整と、買収断念に伴う費用が重なった期です。売上総利益率は2025年1月期の75.0%から2026年1月期は71.1%へ低下しました(会社の開示値)。
設備投資が極端に小さい
ファブレスであることは、貸借対照表にそのまま出ます 事実。
| 項目 | 2026年1月期 | 売上高に対する比率 |
|---|---|---|
| 売上高 | 215,938百万ドル | ― |
| 設備投資(有形固定資産・無形資産の取得) | 6,042百万ドル | 2.8% 本稿の計算 |
| 研究開発費 | 18,497百万ドル | 8.6% 本稿の計算 |
| 有形固定資産(純額) | 10,383百万ドル | 4.8% 本稿の計算 |
※比較のために書くと、TSMCの2025年の設備投資は売上の33.4%でした。同じ「半導体の会社」でも、資本の使い方がまったく違います。
従業員 約42,000人の中身
人数の内訳も、この会社が何をしているかを示します 事実。
| 区分 | 人数 | 比率 |
|---|---|---|
| 研究開発 | 約31,000人 | 約74% 本稿の計算 |
| 営業・マーケティング・オペレーション・管理 | 約11,000人 | 約26% 本稿の計算 |
| 合計 | 約42,000人 | 38か国に分布 |
会社は「従業員の80%超が技術職、半数超が修士以上の学位を持つ」「2026年1月期の離職率は3.7%」とも開示しています 事実。 製造現場のオペレーターが1人もいない構成で、従業員1人あたりの売上高は約514万ドル(約7.7億円)に達します 本稿の計算。
5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
カテゴリーはメーカー(ファブレス半導体)です。 後工程業界の地図の上では、NVIDIAは受託側ではなく発注側に立っています。
TSMCやOSATの記事では「後工程の売上高は非開示」と書くことになりますが、NVIDIAは違います。 後工程サービスを売っていないので、後工程売上という項目が最初から存在しません。 では後工程の費用はどこにあるかというと、売上原価の中です。 10-Kは売上原価の内訳を「半導体のコスト(ウェハ製造、組立、試験、パッケージングを含む)、基板・デバイスコスト、 製造支援コスト、メモリ・部品コスト、関税、輸送費……」と説明しています 事実。 つまりパッケージング費用は売上原価に含まれているが、金額の内訳は開示されていない 未確定/将来。
6. 拠点と工場のある国
工場はありません。10-Kの「Properties(不動産)」の項は非常に短く、次の内容だけです 事実。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 本社 | カリフォルニア州サンタクララ。オフィス・建物として約300万平方フィート(約28万平方メートル)を所有および賃借 |
| データセンター | サンタクララ市内のデータセンタースペースを賃借。自社の研究開発用 |
| その他の拠点 | 米国内および海外で、データセンター・研究開発・販売管理用の施設を所有または賃借。海外は主に中国、インド、イスラエル、台湾 |
| 製造拠点 | 記載なし(保有していない) |
国別の有形固定資産(土地・建物・設備の純額)を見ると、この会社の「重さ」がどこにあるかが分かります 事実。
| 国 | 2026年1月期末(百万ドル) | 2025年1月期末(百万ドル) | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 米国 | 5,125 | 3,626 | 49.4% 本稿の計算 |
| 台湾 | 3,219 | 1,481 | 31.0% 本稿の計算 |
| イスラエル | 1,471 | 840 | 14.2% 本稿の計算 |
| その他 | 568 | 336 | 5.5% 本稿の計算 |
| 合計 | 10,383 | 6,283 | 100% |
工場を持たないはずのNVIDIAが、台湾に有形固定資産の31%(32億ドル)を置いています。 しかも1年で2.2倍に増えました 本稿の計算。 10-Kはこの資産の中身を説明していないため、内訳は未確定です 未確定/将来。 ただし、会社が「台湾と韓国からの安定した供給に依存している」とリスク要因に明記していること、 かつ製造装置を自社で持たない企業が製造地に資産を積む典型例が 試験装置・検証用設備・サプライヤー構内に置く設備であることを踏まえると、 後工程・試験工程に近い場所へ資本が寄っているという見方はできます。 材料を納める側にとっては、「発注元が現地に人と設備を置き始めた工程」は 仕様決定のスピードが上がる領域なので、注視する価値があります。
7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
製品はない。あるのは「採用の決定」
この節は、他の後工程企業の記事と書き方を変えざるを得ません。 NVIDIAは後工程の製品もサービスも売っていないので、後工程における主力製品もシェアも存在しません。 代わりに一次情報から確実に言えることを挙げます。
- NVIDIAは半導体パッケージングにCoWoSを使っている ― 10-Kの「Manufacturing」に明記 事実
- 組立・試験・パッケージングは自社で行わない ― 10-Kのリスク要因に明記 事実
- ウェハはTSMCとSamsungから、メモリはSK hynix・Micron・Samsungから調達している ― 10-Kに実名で記載 事実
- 最終製品の組立・試験・パッケージングは鴻海精密工業、緯創資通、Fabrinetに委託している ― 10-Kに実名で記載 事実
- 供給・能力確保のコミットメント残高は2026年7月26日時点で US$2,790億、前四半期のUS$1,190億から3か月で1,600億ドル増えた 事実
NVIDIAが世界のCoWoS生産能力のどれだけを押さえているかは、一次情報では確認できません。 「CoWoS能力の○割をNVIDIAが確保」「月産○万枚を予約」といった数字は調査会社や報道の推計であり、 本稿では採用しません 未確定/将来。 同様に、US$2,790億のコミットメントのうち後工程(パッケージング)向けがいくらかも開示されていません。 会社は「主にメモリと製造設備(memory and manufacturing facilities)向け」とだけ述べています 事実。
CoWoSを使うのはどの製品か
10-Kによれば、2026年1月期のデータセンター売上の大半を占めたのは Blackwell アーキテクチャの製品です 事実。 Blackwell は「36個のGrace CPUと72個のBlackwell GPUをデータセンター規模で接続する液冷設計」と説明されており、 2027年1月期の第3四半期からは次世代の Vera Rubin が量産出荷に入ったと10-Qに記載されています 事実。
これらはいずれも、ロジックチップとHBM(積層型の広帯域メモリ)を1つのパッケージに同居させる構造です。 後工程の材料・装置の需要量は、このパッケージが月に何個作られるかで決まります。
8. 直近の投資計画
NVIDIAには「工場に○○億ドル投資する」という計画がありません。代わりにあるのがコミットメント(契約残高)です。 2026年7月26日時点の残高は次のとおりです 事実。
| コミットメントの種類 | 合計 | 2027年1月期残り | 2028年1月期 | 2029年1月期 | 2030年1月期以降 |
|---|---|---|---|---|---|
| 供給・能力の確保 | 2,790億ドル | 920億ドル | 870億ドル | 880億ドル | 120億ドル |
| クラウドサービス契約 | 290億ドル | 30億ドル | 80億ドル | 70億ドル | 110億ドル |
| 未開始のデータセンター賃借 | 250億ドル | ― | 10億ドル | 10億ドル | 230億ドル |
| 出資コミットメント | 250億ドル | 180億ドル | 30億ドル | 20億ドル | 20億ドル |
| 設備投資 | 80億ドル | 70億ドル | 10億ドル | ― | ― |
| 合計 | 3,660億ドル | 1,200億ドル | 1,000億ドル | 980億ドル | 480億ドル |
※会社が10億ドル単位で開示している表をそのまま日本語にしたものです。四捨五入のため各行の合計は必ずしも一致しません。「2030年1月期以降」は会社の表の2030年・2031年・2032年以降の3列を本稿で合算しました 本稿の計算。
これは2026年1月期の年間売上高(2,159億ドル)を超える金額です 本稿の計算。 会社の説明は「今後数年の需要を満たすために必要な供給と重要部品を確保するため、 広範なネットワークと提携した。供給コミットメントは前四半期のUS$1,190億からUS$2,790億に増加した。 これらは当社のデータセンター基盤システム向けで、主にメモリと製造設備に関するものである」というものです。
後工程の立場から見ると、この数字は「需要予測」ではなく「契約済みの数量」です。 設備投資の裏づけとしては、調査会社の市場予測よりはるかに硬い情報です。 ただし繰り返しになりますが、このうちパッケージング関連がいくらかは開示されていません 未確定/将来。
なお自社の設備投資(有形固定資産・無形資産の取得)は2026年1月期で6,042百万ドルでした。 コミットメント全体の2%未満であり、NVIDIAの「投資」がほぼすべて他社の設備を押さえるための支払いであることを示しています 本稿の計算。
9. 提携している大手企業
10-Kと10-Qで実名が挙がっている相手を、性格別に整理します。 ここに挙げたのは、いずれもNVIDIA自身が法定開示書類に書いた名前だけです。
| 種類 | 相手 | 内容 | 一次情報の有無 |
|---|---|---|---|
| ウェハ調達 | TSMC、Samsung Electronics | 「ファウンドリを利用して半導体ウェハを製造する」として実名を記載。取引額・数量は非開示 | 10-Kに記載 事実 |
| メモリ調達 | SK hynix、Micron Technology、Samsung Electronics | 「メモリを購入する」として実名を記載。HBMかどうかの区別は書かれていない | 10-Kに記載 事実 |
| パッケージング技術 | ―(技術名のみ) | 「半導体パッケージングにCoWoS技術を利用する」と記載。実施主体の社名は書かれていない | 10-Kに記載 事実 |
| 最終製品の組立・試験 | 鴻海精密工業(Hon Hai)、緯創資通(Wistron)、Fabrinet | 「独立した下請企業・受託製造業者と契約し、最終製品の組立・試験・パッケージングを行わせる」 | 10-Kに記載 事実 |
| 出資 | Groq | 2026年1月期のキャッシュフロー計算書に単独項目として130億ドルの支出を計上 | 10-Kに記載 事実 |
| 債務保証 | SB Energy Corp.の関連会社 | 2026年8月、顧客(OpenAI系企業)のための土地・電力・建屋整備について、上限1,050億ドルの信用補完を差し入れ | 10-Qに記載 事実 |
後工程の文脈では、OSAT各社(ASE Group、Amkor、SPILなど)、基板メーカー(Ibiden、Unimicron)、 ABFフィルムの味の素、装置のASMPT/Besi といった名前がNVIDIAとセットで語られます。 しかしNVIDIAの法定開示書類にはこれらの企業名は一切出てきません。 取引の有無自体が同社の一次情報からは確認できないため、本稿では提携として扱いません 未確定/将来。 同じく、CoWoSを実施しているのがTSMCなのか他社なのかについても、 NVIDIAの開示書類は技術名を書いただけで実施主体を書いていません。
10. 今後のこの分野における存在感
ここは予測になるので、判断の根拠となる事実と、そこから導かれる見通しを分けて書きます。
事実として確定していること
| 事実 | 後工程への含意 |
|---|---|
| 供給・能力コミットメントが3か月で1,190億ドル→2,790億ドルへ増加 | 発注元が数年先まで能力を押さえた。後工程の稼働は当面この契約に支えられる |
| データセンター売上が全体の89.7%を占める | NVIDIAの生産計画は、ほぼそのまま先端パッケージの生産計画になる |
| 10-KにCoWoSの利用が明記されている | パッケージ方式の選択は発注元の開示事項になった。材料仕様も同じ側で決まる |
| Vera Rubin が2027年1月期第3四半期から量産出荷 | 世代交代が起きる。パッケージ寸法・材料要求が更新される時期にあたる |
| 会社が「現在も一定の供給制約を受けている」と10-Qに記載 | 需要ではなく供給が上限を決めている状態が続いている |
| 台湾の有形固定資産が1年で2.2倍(14.8億→32.2億ドル) | 発注元が製造地の近くに資産を置き始めた |
見通し
未確定/将来 上の事実から素直に読めば、後工程業界にとってNVIDIAの存在感は当面さらに大きくなる方向です。 理由は単純で、先端パッケージの需要量を決める最大の1社が、数年ぶんの能力を契約で押さえてしまったからです。 後工程の企業から見れば、NVIDIAは直接の顧客ではないのに、稼働率を左右する相手ということになります。
未確定/将来 この構図が変わるとすれば、方向は2つ考えられます。 ひとつはNVIDIA自身が後工程に踏み込む場合。 現時点では設備も人員も持っておらず、10-Kにもその計画は書かれていませんが、 台湾の有形固定資産の急増は、少なくとも「製造地に近づく動き」の存在を示しています。 もうひとつは顧客の自社設計チップ(クラウド事業者の独自アクセラレータ)が伸びる場合で、 NVIDIA自身も10-Kで「一部の顧客は社内に同等の開発能力を持ち、当社の提供するものを自前の解に置き換えうる」と リスクとして挙げています 事実。 その場合でも先端パッケージの需要そのものは減らず、発注元の名前が分散するだけという点は押さえておく価値があります。
11. この企業が抱えるリスク
NVIDIA自身が10-K・10-Qで挙げているリスク要因を、後工程の文脈で重要なものに絞って整理します 事実。
| リスク | 内容 | 裏づけとなる数字 |
|---|---|---|
| 顧客集中 | 2026年1月期は直接顧客1社で売上の22%、別の1社で14%。いずれもCompute & Networkingセグメント | 売掛金でも上位3社が25%・18%・13%を占める |
| 供給の地理的集中 | 会社自身が「台湾と韓国の海外パートナーからの一貫した供給に依存している」と明記。製造・最終組立が台湾・韓国・中国・イスラエルに集中 | 台湾に本社を置く顧客向け売上 42,345百万ドル(19.6%) 本稿の計算 |
| コミットメントの固定化 | キャンセル不可・返品不可の発注を、従来のリードタイムより前倒しで出している。需要が下振れすれば在庫評価損になる | 供給・能力コミットメント 2,790億ドル。2026年1月期の在庫評価損等は72億ドル |
| 輸出規制 | 2026年1月期末時点で、中国のデータセンター演算市場から事実上締め出されていると会社が記載 | 中国(香港含む)向け売上は25,048→19,677百万ドルへ減少 本稿の計算 |
| 利益率の低下 | 売上総利益率が75.0%→71.1%へ低下。HGXシステムからフルスケールのデータセンター製品への転換と、H20関連の45億ドルの費用計上が理由と説明 | 会社の開示値。低下幅は3.9ポイント |
| 在庫の膨張 | 棚卸資産が2026年1月期末で214億ドル、2026年7月末には316億ドルへ。仕掛品の増加が大きい | 2025年1月期末は101億ドル。1年半で3.1倍 本稿の計算 |
材料を納める側にとって、NVIDIAのリスクは「取引先を失うリスク」ではありません。 そもそも直接の取引がないからです。効くのは量の振れです。 2,790億ドルのコミットメントは、裏を返せば需要が想定を下回ったときに一気に止まる契約でもあります。 実際NVIDIAは2026年1月期に72億ドルの在庫・発注関連の評価損を計上しました。 発注元が評価損を出す局面では、その手前にいるパッケージング工程と材料の引き合いが先に細ります。 1社の需要予測の修正が、サプライチェーンの末端まで増幅して伝わる—— 多数の顧客に分散して納入する従来の材料ビジネスとは、振れ方の質が違います。 加えてVera Rubin世代への切り替えは、パッケージ寸法と熱設計が変わる節目でもあり、 材料の要求スペックがまとめて書き換わるタイミングにあたります。
12. 用語集
- ファブレス
- 自社の製造工場(ファブ)を持たず、設計だけを行う半導体会社。製造はファウンドリに、後工程はOSATなどに委託する。
- CoWoS
- Chip on Wafer on Substrate。ロジックチップとHBMを、インターポーザという中間基板の上に横に並べて載せる先端パッケージ方式。NVIDIAは10-Kでこの技術の利用を明記している。
- HBM
- High Bandwidth Memory。DRAMを積層して帯域を稼いだメモリ。CoWoSでロジックチップの隣に置かれる。
- OSAT
- Outsourced Semiconductor Assembly and Test。後工程(組立・検査)を専門に受託する会社。NVIDIAの開示書類にはOSATの社名は登場しない。
- 供給・能力コミットメント
- 将来の供給枠を確保するために結ぶ契約の残高。会計上は負債ではないが、キャンセルすれば費用が発生する。NVIDIAはこれを四半期ごとに開示している。
- 会計年度(1月末締め)
- NVIDIAの1年は1月末で終わる。本稿の「2026年1月期」は2025年1月27日から2026年1月25日までを指し、暦年の2025年にほぼ相当する。
- 10-K/10-Q
- 米国企業が米国証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書と四半期報告書。監査または限定的レビューを受け、記載内容に法的責任が伴う。
- Blackwell/Vera Rubin
- NVIDIAのデータセンター向けアーキテクチャの世代名。Blackwellが2026年1月期の主力、Vera Rubinは2027年1月期第3四半期から量産出荷に入った。
AI生成・概念図13. 出典
- NVIDIA Form 10-K(2026年1月25日に終了した会計年度、米国SEC提出、2026年2月25日)。売上高、研究開発費、営業利益、純利益、セグメント別・エンドマーケット別・地域別売上、従業員数、顧客集中度、サプライヤーの実名、CoWoSの利用、Properties、国別の有形固定資産、設備投資額、リスク要因。sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm
- NVIDIA Form 10-Q(2026年7月26日に終了した四半期、米国SEC提出、2026年8月26日)。四半期売上高、供給・能力コミットメントの年度別内訳とUS$2,790億という残高、Vera Rubinの量産出荷時期、供給制約、棚卸資産、SB Energy Corp.関連の債務保証。sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000075/nvda-20260726.htm
- 米国SEC EDGAR XBRL companyfacts API(CIK 0001045810)。2022年1月期から2026年1月期までの売上高・研究開発費・営業利益・純利益(各年度のForm 10-Kから抽出された値)。data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001045810.json
- NVIDIA 公式サイト(社名表記とロゴの確認用)。https://www.nvidia.com/en-us/
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称、本社住所、設立年(1993年4月)、上場市場(Nasdaq・NVDA)、発行済株式数 | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 2026年1月期の売上高 215,938百万ドル、前年比+65%、売上総利益率71.1% | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 2022年1月期〜2025年1月期の売上高・研究開発費・営業利益・純利益 | 事実 | 出典3data.sec.gov/…/CIK0001045810.json |
| 図1の前年比(+61%/+0.2%/+126%/+114%/+65%) | 本稿の計算 | 出典3の各年度の売上高から算出data.sec.gov/…/CIK0001045810.json |
| 従業員 約42,000人、38か国、研究開発31,000人、技術職80%超、離職率3.7% | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 従業員1人あたり売上高 約514万ドル、研究開発比率74% | 本稿の計算 | 出典1の売上高と従業員数から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 「当社は組立・試験・パッケージングを行わない」「CoWoS技術を利用する」という記載 | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| サプライヤーの実名(TSMC、Samsung、SK hynix、Micron、鴻海、緯創、Fabrinet) | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| エンドマーケット別売上(データセンター193,737百万ドルほか) | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| データセンター比率89.7%、設備投資比率2.8%、研究開発比率8.6% | 本稿の計算 | 出典1の金額から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 国別の有形固定資産(米国5,125/台湾3,219/イスラエル1,471/その他568百万ドル) | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 台湾の有形固定資産が1年で2.2倍、構成比31.0% | 本稿の計算 | 出典1の2期分の金額から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 顧客集中度(直接顧客1社22%、別の1社14%、売掛金上位3社25/18/13%) | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| 中国向け売上 25,048→19,677百万ドル、中国市場からの事実上の締め出し | 事実 | 出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm |
| コミットメント一覧(供給・能力2,790億ドル、合計3,660億ドル)と年度別内訳 | 事実 | 出典2sec.gov/…/nvda-20260726.htm |
| 「2030年1月期以降」の列(3列の合算) | 本稿の計算 | 出典2の表を本稿で合算sec.gov/…/nvda-20260726.htm |
| Vera Rubinの量産出荷時期、供給制約、棚卸資産316億ドル、SB Energy関連の1,050億ドル保証 | 事実 | 出典2sec.gov/…/nvda-20260726.htm |
| CoWoSの世界シェア、NVIDIAが確保した生産能力(枚数・比率) | 未確定/将来 | 一次情報が存在しないため本稿では記載しない |
| US$2,790億のうちパッケージング向けの金額 | 未確定/将来 | 非開示。会社は「主にメモリと製造設備向け」とのみ記載。本稿では内訳を推定しない |
| NVIDIAが負担しているパッケージング費用の金額 | 未確定/将来 | 売上原価に含まれるが内訳は非開示。本稿では推定しない |
| 台湾の有形固定資産32.2億ドルの具体的な中身 | 未確定/将来 | 出典1に内訳の記載がない。本稿では用途を断定しない |
| CoWoSを実施している企業名、OSAT・基板・材料各社との取引関係 | 未確定/将来 | NVIDIA側の一次情報に記載なし。本稿では提携として扱わない |
| 今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」) | 未確定/将来 | 本稿による解釈。事実欄の6項目から導出 |
最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてNVIDIAが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。