COMPANY PROFILE / 半導体後工程
ASMPT(旧 ASM Pacific Technology)
― AIチップを「積む」装置を、いま最も多く出荷している会社
ASMPTは半導体の組立・パッケージング装置と、電子基板の実装(SMT)装置を作るメーカーです。 売上規模は装置業界の中では決して大きくありません。 それでもHBMや大型AIパッケージの話に必ず名前が出るのは、 チップを熱と圧力で貼り合わせるTCB(サーマルコンプレッションボンディング)装置の主要供給元だからです。 2025年にTCB売上を前年の約2.5倍に伸ばした一方、事業の売却・見直しも同時に進めています。
- 30秒でわかるASMPT(基本データ)
- ロゴと社名の表記について
- 何をしている会社か ― 「装置を売る側」の立ち位置
- 企業規模 ― 過去5年の売上高
- 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
- 拠点と工場のある国
- 半導体後工程における主力製品とそのシェア
- 直近の投資計画と事業の組み替え
- 提携している大手企業
- 今後のこの分野における存在感
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるASMPT
(US$17億62百万)継続事業ベース、前年比 +10.0%
(半導体後工程装置・SMT装置)チップを作るのではなく、チップを組み立てる装置を作る
約HK$2億 増額主に先端パッケージングのR&Dとインフラ向け
ASMPTは半導体を作る会社ではありません。半導体を組み立てる「装置」を売る会社です。 したがって顧客はTSMCやSamsungのようなメーカーと、ASEやAmkorのようなOSAT(後工程の受託企業)になります。 売上規模はHK$137億(US$約18億)で、同じ装置業界のApplied MaterialsやLam Researchと比べると1桁小さいのですが、 AI向けの大型パッケージを組む工程に限ると、代替の効きにくい位置にいます。 この「規模は小さいが、工程の特定の一点を押さえている」という形が、この会社を読むときの軸になります。
2. ロゴと社名の表記について
ASMPTのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像やイラストによる再現は行わず、 掲載する場合は公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。 AIで描き起こしたロゴは、商標としても事実としても誤りになります。
表記の注意:旧社名は「ASM Pacific Technology Limited」で、 2022年5月10日の株主総会決議を経て6月1日に「ASMPT Limited」へ改称しました。 株式の短縮名称も同年7月4日に「ASM PACIFIC」から「ASMPT」へ変わっています。銘柄コード0522は変更されていません。 なおオランダの ASM International N.V. とは別会社で、同社は2025年末時点でASMPT株の24.65%を保有する大株主です。 社名が似ているため混同されやすい点に注意してください。
公式サイト:https://www.asmpt.com/en/3. 何をしている会社か ― 「装置を売る側」の立ち位置
半導体ができるまでの工程で、ASMPTがどこにいるのかを先に置きます。
| 工程 | やること | 担う会社の例 | ASMPT |
|---|---|---|---|
| 前工程 | シリコンウェーハ上に回路を作り込む | TSMC、Samsung、Intel | 関与しない |
| 後工程(組立) | ウェーハを切り、チップを基板に載せ、積み、封止する | ASE、Amkor、各メーカーの自社工場 | この工程の装置を供給 |
| 実装(SMT) | できたパッケージを電子基板にはんだ付けする | EMS各社、機器メーカー | この工程の装置も供給 |
ASMPTの事業は2つに分かれています 事実。 ひとつがSEMI(Semiconductor Solutions)で、ダイボンダ・ワイヤボンダ・TCB装置など後工程の装置。 もうひとつがSMT(Surface Mount Technology)で、基板に部品を置くマウンタやはんだ印刷機です。 2025年の売上はSEMIがHK$73億81百万、SMTがHK$63億56百万で、ほぼ半々の構成になっています。
会社自身は「電子機器製造の主要工程すべてに対して統合されたソリューションを提供できる、世界で唯一の企業」と説明しています 事実。 この「唯一」という表現は同社自身によるものであり、本稿が検証したものではありません。
後工程の装置メーカーは、材料側から見ると「条件を決める側」にいます。 TCB装置は、チップを載せたあとヘッドで加圧しながら加熱して接合する方式です。 このとき、はんだバンプの融点、アンダーフィル材(NCF=ノンコンダクティブフィルムなど)の硬化温度と粘度、 基板の反り量が、すべて装置側の温度プロファイルと荷重プロファイルに合わせ込まれます。 つまり材料の要求スペックは、装置のレシピが先に決まってから逆算されることが多い。 ASMPTが2025年に「HBM4 12H向けTCB装置で複数の顧客から初めて受注した」と公表していることは 事実、 同時にその世代のNCFや接合材の仕様が固まり始めたことも意味します。 材料を出す側にとって、装置メーカーの世代交代は自社の開発カレンダーそのものです。
4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
| 年 | 売上高(HK$百万) | 税引前利益(HK$百万) | 当期純利益(HK$百万) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 21,948 | 4,092 | 3,175 | 区分なし |
| 2022年 | 19,363 | 3,413 | 2,618 | 区分なし |
| 2023年 | 14,697 | 1,036 | 712 | 区分なし |
| 2024年 | 12,483 | 456 | 291 | 継続事業(遡及修正済み) |
| 2025年 | 13,736 | 1,216 | 1,085 | 継続事業 |
※すべて継続事業ベース。2025年はこれとは別に、非継続事業(NEXX)で HK$182百万の損失が出ており、両方を合わせた連結純利益は HK$902百万です。会社が「グループ売上」として発表した2025年の数字(継続+非継続)は HK$145億2千万(US$18億6千万)、前年比+9.8%です。
研究開発と設備投資の水準
| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 研究開発投資 | 約HK$19億2千万 | 約HK$19億3千万 |
| 設備等の取得額 | HK$4億61.7百万 | HK$4億47.0百万 |
| 人件費総額 | HK$49億0千万 | HK$49億3千万 |
| 配当(1株あたり年間) | HK$0.67 | HK$1.39 |
売上がピーク比で4割近く減った局面でも、研究開発投資はほぼ横ばいで維持されています 事実。 会社はこれを「業界サイクルをまたいでR&Dに投資し続ける」方針だと説明しています。 一方で設備投資は年間HK$4〜5億程度で、売上の3%台にとどまります 本稿の計算。 巨大な工場を建て続ける半導体メーカーとは、資本の使い方がまったく違うタイプの会社です。
従業員 約9,000人の分布
| 国・地域 | おおよその人数 | 比率 |
|---|---|---|
| 中国本土 | 約4,000人 | 約44% |
| ドイツ | 約1,000人 | 約11% |
| シンガポール | 約900人 | 約10% |
| 香港 | 約700人 | 約8% |
| マレーシア | 約700人 | 約8% |
| ポルトガル | 約400人 | 約4% |
| 英国 | 約300人 | 約3% |
| その他 | 残り | ― |
※比率は会社が示した人数を約9,000人で割った概算です 本稿の計算。このほか臨時・外注の働き手が約1,600人います。研究開発に携わる人員は全体で2,200人超と会社が公表しています。
5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
カテゴリーはメーカー(半導体後工程装置およびSMT装置)です。 大学でも政府機関でもなく、また半導体そのものを作るメーカーでもありません。 後工程の産業構造でいうと、OSATや半導体メーカーに装置を納める側に立ちます。
ASMPTは売上をセグメント(SEMI/SMT)とは別に、 AP(先端パッケージング)とメインストリームという軸でも説明します。 APにはTCB、ハイブリッドボンディング、フォトニクス、高精度フリップチップ、AIサーバ基板向けの高精度SMT装置が入ります。 メインストリームは従来型のワイヤボンダ・ダイボンダ・汎用マウンタです。 2025年はAPが+30.2%、メインストリームが+3.3%で、伸びの大半はAP側から来ています 事実。 後工程の記事でASMPTの名前を見るときは、ほぼこのAP側の話だと考えて差し支えありません。
6. 拠点と工場のある国
本社はシンガポール、上場は香港、法人登記はケイマン諸島という分かれた形をとっています 事実。 製造・開発の拠点はアジアと欧州に広がります。
| 国・地域 | 主な法人 | 役割 |
|---|---|---|
| シンガポール | ASMPT Singapore Pte. Ltd./ASMPT SMT Singapore Pte. Ltd. | 本社所在地。半導体装置とSMT装置の製造・販売。SEMIの先端パッケージングR&Dの中核拠点 |
| 中国本土 | 先進科技(惠州)/深圳先進微電子科技/奧芯明半導體設備技術(上海)ほか | 半導体装置・SMT装置の製造と研究開発。従業員数では最大の国 |
| 香港 | ASMPT Technology Hong Kong Limited ほか | 半導体装置の製造と研究開発、グループの投資・調達機能 |
| マレーシア | ASMPT Malaysia Sdn. Bhd. | 半導体装置とSMT装置の製造 |
| ドイツ | ASMPT GmbH & Co. KG/ASMPT AMICRA GmbH | SMT装置(マウンタ・印刷機)の製造。ミュンヘンがSMTのR&D中核拠点。AMICRAは高精度ダイボンダ |
| オランダ | ASMPT ALSI B.V. | レーザーダイシング装置の研究開発・製造・販売 |
| 英国 | ASMPT SMT UK Limited | SMT印刷機の製造・販売(旧DEK) |
| ポルトガル | Critical Manufacturing, S.A. | 製造実行システム(MES)ソフトウェアの開発・販売 |
| 日本・米国・台湾・韓国 | ASMPT Japan Limited ほか | 販売・マーケティング拠点(製造は行わない) |
※2025年アニュアルレポートの主要子会社一覧に記載された会社のうち、製造・開発機能を持つものを中心に整理しました。同一覧は「重要な子会社」に限られており、全拠点を網羅したものではありません。
会社は「SEMIの先端パッケージングはシンガポール、SMTはドイツ・ミュンヘン」とR&Dの中核を明示しています 事実。 これは材料メーカーから見ると評価サンプルの持ち込み先が分かれるということです。 TCBやハイブリッドボンディングで使うNCF・アンダーフィル・フラックスの評価はシンガポール側、 はんだペーストや基板の実装材料はドイツ側、という具合に窓口が別になります。 さらに製造は中国本土・マレーシア・香港に分散しており、 開発地と量産地が国をまたいで離れている構造です。 装置に組み込まれる消耗品(ボンディングツール、ヒータ、ステージ材)の認定を取る側からすると、 開発拠点で通した仕様がそのまま量産拠点の調達に流れるとは限らない点に注意が要ります。
7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
製品群
- TCB(サーマルコンプレッションボンディング)
- チップを載せた状態で加圧しながら加熱し、微細なバンプを一括接合する方式。HBMの積層やAIロジックの実装に使われる。ASMPTのAP売上を牽引している主力。
- ハイブリッドボンディング
- はんだを使わず、銅と絶縁膜の面同士を直接接合する方式。ASMPTは第2世代装置を展開中で、2026年上期時点では顧客評価のサンプリング段階。
- フォトニクス実装装置
- 光トランシーバの組立装置。800G品で会社は「支配的」と表現しており、2026年上期の売上は前年同期比でほぼ3倍。
- ワイヤボンダ/ダイボンダ
- 従来型の後工程装置。会社の分類では「メインストリーム」。中国のOSAT需要が主な販売先。
- SMT装置
- 基板に部品を置くマウンタとはんだ印刷機。AIサーバ基板やEV向けで伸びている。
シェアについて ― ここは切り分けが必要です
ASMPTは自社の市場シェアの実績値を開示していません。 同社が公表しているのは、TCB市場について 「市場規模は2025年の約US$7億6,000万から2028年にUS$16億へ拡大する見込み」という自社推計と、 「35〜40%のシェアを目標としている」という目標値です 未確定/将来。 これは会社の見通しと目標であって、達成されたシェアの実績ではありません。 本稿は調査会社のシェア推計も採用しません。一次情報から確実に言えるのは下の3点です。
- 2025年のTCB売上は前年比約146%増で、過去最高(会社の表現)事実
- AP売上はUS$5億3,210万で前年比+30.2%、グループ売上の30%(前年26%) 事実
- HBM4 12H向けTCB装置で複数の顧客から最初に受注を獲得したと会社が述べている 事実
もうひとつ、シェアの代わりに見られる数字があります。売上の地域別構成です。 TCBの出荷先は先端ロジックとHBMを扱うメーカー・OSATに集中するため、 「中国以外のアジア」の比率がTCBの動きを映します。
| 最終用途 | 2025年の売上構成比 | 会社の説明 |
|---|---|---|
| コンピューティング | 約22% | 最大の用途。うち最も大きいのがTCB |
| コンシューマ | 約17% | 中国向けのメインストリーム製品が牽引 |
| 通信 | 約16% | フォトニクスと高価格帯スマートフォン向け |
| 車載 | ほぼ16% | 中国のEV向けが中心 |
| 産業機器 | 10% | 前年13%から低下。市況の軟調による |
8. 直近の投資計画と事業の組み替え
約HK$2億 増額主に先端パッケージングのR&Dとインフラ投資
2026年6月3日 完了買い手は Applied Materials, Inc.
この会社の「投資計画」は、新工場を建てる話ではなく事業の組み替えとして現れます。 2025年から2026年にかけて、3つの動きが公表されています。
| 時期 | できごと | 金額・内容 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月27日 | AAMI(Advanced Assembly Materials International)の49%持分を売却 | 現金と、上海証券取引所上場の Shenzhen Original Advanced Compounds Co., Ltd.(603991.SH)の新株で受領。売却益 HK$11.1億 | 完了。2025年末時点で同社株18.99%(簿価HK$20.76億)を保有 |
| 2026年1月21日 | SMT事業の戦略オプション評価を開始 | 売却・合弁・分社と上場・継続保有を含めて検討 | 結論は未公表 未確定/将来 |
| 2026年4月30日 /6月3日 | NEXX(米国・めっき装置)をApplied Materialsへ売却 | 対価US$1億2,000万(現金)。在庫約US$670万の移管を含む | 2026年6月3日にクロージング完了。推定純利益は約HK$1,100万 |
NEXXは2018年にASMPTが買収した米国の電気めっき(デポジション)装置メーカーです。 会社は売却理由を「後工程パッケージング事業への集中を鮮明にするため」「新しい所有者のもとで継続的な投資と運営上のシナジーを得られる」と説明しています 事実。 ASMPTは2025年決算でNEXXに配分されていたのれん HK$2億1,739万を全額減損しており、 売却は高値での譲渡ではありません。HKEX公告によれば価格US$1億2,000万は競争入札の最高額で、 推定純利益は約HK$1,100万にとどまります 事実。 撤退にあたる取引と読むのが素直です。
同時に、SMT事業についても2026年1月から戦略オプションの評価が進んでいます。 仮にSMTが切り離されれば、ASMPTは売上規模が半分近くになるかわりに、 ほぼ後工程装置専業の会社になります。ただしどの選択肢を採るかは公表されていません 未確定/将来。
9. 提携している大手企業
ASMPTの場合、「提携」として公表されているものは資本関係と取引関係が中心です。 技術提携の相手先の実名は、ほとんど公表されていません。
| 種類 | 相手 | 内容 | 一次情報の有無 |
|---|---|---|---|
| 大株主 | ASM International N.V.(オランダ) | 子会社ASM Pacific Holding B.V.を通じて103,003,000株(24.65%)を保有。ASMPTの創業母体にあたる | 2025年アニュアルレポートに記載 事実 |
| 持分法関連会社 | Shenzhen Original Advanced Compounds Co., Ltd.(603991.SH、上海証券取引所上場) | AAMI持分の売却対価として株式を受領し18.99%を保有。リードフレームと後工程材料・装置の製造販売 | 2025年アニュアルレポートに記載 事実 |
| 事業売却の相手 | Applied Materials, Inc.(米国) | 2026年4月30日にNEXXの株式譲渡契約を締結、6月3日に完了。提携ではなく資産の譲渡 | HKEX公告に記載 事実 |
| 100%子会社 | Critical Manufacturing, S.A.(ポルトガル) | 製造実行システム(MES)ソフトウェア。装置とソフトを組み合わせて提供する | 2025年アニュアルレポートに記載 事実 |
| 業界団体 | Semiconductor Climate Consortium | 創設メンバーとして参加 | 2025年アニュアルレポートに記載 事実 |
ASMPTのアニュアルレポートと中間報告には、 「先端ロジックの主要顧客(the leading advanced logic customer)」 「HBMメーカー」「大手IDM」「OSATパートナー」といった表現しか出てきません。 TSMC、SK hynix、Samsung、Micronなどの実名は、ASMPT側の公表資料には登場しません 未確定/将来。 開示されているのは「上位5顧客の合計が売上の約16%」という集中度だけです。 本稿では報道や推測で顧客名を補うことはしません。
10. 今後のこの分野における存在感
ここは予測になるので、判断の根拠となる事実と、そこから導かれる見通しを分けて書きます。
事実として確定していること
| 事実 | 後工程への含意 |
|---|---|
| 2025年のTCB売上が前年比約146%増、AP売上がグループの30%に | AI向け実装装置が会社の成長エンジンになった |
| 2026年上期の継続事業売上がHK$89億3百万、前年同期比+42.5% | 2025年の伸びは一時的な山ではなく続いている |
| 2026年上期の受注がHK$127億54百万、前年同期比+85.1% | 売上より受注の伸びが大きく、先行きの積み上がりが厚い |
| 2026年7月にOSAT顧客から50台超のC2S TCB装置を一括受注 | ロジック側の大型ダイ対応で継続受注が出ている |
| 2026年第3四半期の売上ガイダンスがUS$6億3,000万〜6億9,000万 | 会社自身が増勢の継続を前提に置いている |
| NEXXを売却し、SMTの戦略オプションを評価中 | 後工程パッケージング装置への集中が進んでいる |
| ハイブリッドボンディング装置は顧客評価のサンプリング段階 | 次世代方式ではまだ量産採用が確定していない |
見通し
未確定/将来 上の事実から素直に読めば、ASMPTの後工程における存在感は当面強まる方向です。 理由は、AIチップの大型化がそのまま「1パッケージあたりの接合点数」を増やし、 はんだを一括で溶かす従来のマスリフロー方式では歩留まりが出にくくなるためです。 接合面の平坦度と温度を1個ずつ管理するTCBは、この流れの受け皿として選ばれています。
未確定/将来 ただし、この構図が揺らぐとすれば方向は2つあります。 ひとつはハイブリッドボンディングへの移行が想定より早く進む場合で、 ASMPTの第2世代装置はまだサンプリング段階であり、量産採用の確定は公表されていません。 もうひとつはHBMの世代交代スケジュールのずれです。 会社自身が2026年上期の中間報告で、メモリ向けの新規装置購入の時期は 「顧客のHBM4製品の立ち上げスケジュール次第」と述べています 事実。 装置メーカーの売上は顧客の投資判断に一段遅れてついてくるため、振れ幅は半導体メーカー以上に大きくなります。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 裏づけとなる数字 |
|---|---|---|
| 事業構成が流動的 | NEXXは売却済み、SMTは戦略オプション評価中。会社の輪郭そのものが変わりうる | 2026年1月21日の発表。結論は未公表 未確定/将来 |
| 循環性が非常に強い | 2022年から2024年にかけて売上が43%減った。装置需要は顧客の設備投資に連動し、振れ幅が大きい | HK$19,363百万→HK$12,483百万 本稿の計算 |
| 利益率の水準 | 2025年の調整後純利益率は3.4%。売上が伸びても利益はまだ薄い | 調整後純利益HK$466.7百万/売上HK$13,736百万 |
| 粗利率の低下 | 2025年の調整後粗利率38.3%は前年比−172bp。SEMI・SMTとも低下した | 会社の開示値 事実 |
| 地域の偏り | 売上の41%が中国。生産拠点でも従業員の約44%が中国本土にいる | 売上地域別構成と従業員分布 本稿の計算 |
| 顧客の投資タイミング | メモリ向けの装置購入はHBM4の立ち上げ時期に左右されると会社自身が明記 | 2026年中間報告の記述 事実 |
| 為替 | 売上と費用の大半が米ドル・ユーロ・人民元建て。会計上の表示通貨は香港ドル | 会社が為替予約でヘッジしていると開示 |
| 借入 | シンジケートローン中心の借入があり、2029年2月まで分割返済。負債資本比率は0.140 | 2025年末時点の開示値 |
ASMPTのような装置メーカーの受注(bookings)と受注残(backlog)は、 材料を出す側にとって使い勝手のよい先行指標です。 装置が据え付けられてから量産が立ち上がるまでには時間がかかるので、 いま出た装置の受注は、1年前後あとのNCF・アンダーフィル・フラックスの消費量に対応します。 2026年上期の受注はHK$127億54百万で前年同期比+85.1%、売上の伸び(+42.5%)を大きく上回りました 事実。 受注が売上を上回って積み上がっている状態(book-to-bill が1を超える状態)は、 材料側にとっては生産計画を前倒しで組む根拠になります。 逆に2023〜2024年のように受注が細る局面では、 装置が止まる前に材料の引き合いが先に止まることに留意が要ります。
12. 用語集
- TCB
- Thermo-Compression Bonding。チップを加圧しながら加熱して接合する方式。接合点が多く細かい先端パッケージで使われる。
- ハイブリッドボンディング
- はんだを介さず、銅電極と絶縁膜の面を直接くっつける接合方式。接合ピッチをさらに細かくできる。
- C2S/C2W
- Chip-to-Substrate(チップを基板へ)とChip-to-Wafer(チップをウェーハへ)。TCBの適用先の区別。
- HBM
- High Bandwidth Memory。DRAMを積層して帯域を稼いだメモリ。積層する工程でTCBが使われる。
- OSAT
- Outsourced Semiconductor Assembly and Test。後工程を専門に受託する会社。ASMPTにとっては顧客。
- SMT
- Surface Mount Technology(表面実装技術)。できあがったパッケージを電子基板にはんだ付けする工程。
- book-to-bill
- 受注高÷売上高。1を超えていれば受注残が積み上がっていることを示す。
- 非継続事業
- 売却が決まった事業を、会計上ほかの事業と分けて表示する区分。ASMPTではNEXXがこれにあたる。
AI生成・概念図13. 出典
- ASMPT Limited Annual Report 2025(香港証券取引所提出、2026年4月5日)。売上高、セグメント別業績、5年財務要約、研究開発投資、設備等取得額、従業員数と国別分布、人件費、配当、主要子会社一覧、大株主、NEXXの非継続事業区分とのれん減損、AAMI持分売却、TCB・ハイブリッドボンディング・フォトニクスの事業レビュー、地域別・用途別売上構成、上位5顧客比率、借入と為替の状況。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
- ASMPT Limited Interim Report 2026(2026年8月27日)。2026年上期の売上・受注・利益、AP売上US$3億3,900万、TCBのC2S/C2W受注動向、HBM4に関する記述、ハイブリッドボンディングの進捗、NEXX売却の完了と対価の内訳、第3四半期の売上ガイダンス。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/85541/e_00522ir-20260827.pdf
- ASMPT Limited 2025年通期業績発表(HKEX公告、2026年3月4日)。2025年通期および第4四半期のセグメント別業績、受注・受注残、配当、SMT戦略オプション評価の公表。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84503/e0522_results_announcement_2025_q4.pdf
- ASMPT Limited HKEX公告「DISCLOSEABLE TRANSACTION – DISPOSAL OF A WHOLLY-OWNED SUBSIDIARY」(2026年5月4日)。2026年4月30日にApplied Materials, Inc.とASMPT NEXX, Inc.の株式譲渡契約を締結、対価US$1億2,000万、在庫約US$670万の移管。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a260504.pdf
- ASMPT Limited HKEX公告「CLOSING OF DISCLOSEABLE TRANSACTION IN RELATION TO DISPOSAL OF A WHOLLY-OWNED SUBSIDIARY」(2026年6月4日)。2026年6月3日にクロージング完了、価格決定の根拠、推定純利益約HK$1,100万。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a260604.pdf
- ASMPT Limited HKEX公告「CHANGE OF COMPANY NAME AND STOCK SHORT NAME」(2022年6月24日)。ASM Pacific Technology Limited からASMPT Limitedへの社名変更、2022年6月1日発効、株式短縮名称の変更日、銘柄コード0522の据え置き。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a220624.pdf
- ASMPT 公式サイト 沿革ページ(1975年の設立、1989年の香港上場、2011年のシンガポール本社移転、DEK・ALSI・NEXX・AMICRAなどの買収年)。 https://www.asmpt.com/en/company/history/
- ASMPT 公式サイト(会社概要・ブランド表記の確認用)。 https://www.asmpt.com/en/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてASMPT Limitedが香港証券取引所に提出した法定開示書類および同社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。