主要成果
中国の東北石油大学のFanghua Luo氏および天津大学のHuaiyuan Wang氏らの研究チームは、太陽光パネルの封止材として広く利用されているEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)の熱伝導性を劇的に向上させた複合フィルムを開発しました。この新素材は、純粋なEVAと比較して熱伝導率が1245%向上し、2.96 W/m·Kを達成しています。特筆すべきは、フィラー充填量を110 phr(樹脂100部あたりの重量)という高充填量でありながら、商用封止材に求められる柔軟性、絶縁性、および機械的強度を維持している点です。
技術・詳細
研究チームは、分子・フィラー・界面の3つのレベルからなる設計戦略を採用しました。
- マトリックスの架橋(cEVA): EVAマトリックスを架橋させることで構造的完全性を高め、ラミネート工程や屋外使用時の熱的・機械的ストレスに耐えうる設計としました。これにより、高充填フィラーによる脆化とひび割れを防止しています。
- f-BNハイブリッドネットワーク: 「ホワイトグラフェン」とも呼ばれる六方晶窒化ホウ素(h-BN)を用い、微小プレート(microplatelets)と微小球体(microspheres)を組み合わせた「シート-スフィア・ハイブリッドネットワーク」を構築しました。プレートが広範な高伝導経路を提供し、球体がその隙間を埋めることで接触抵抗を低減し、厚み方向への効率的な熱伝導経路を形成しています。
- デュアルアンカー界面工学: カップリング剤KH550(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を用いて、有機ポリマーと無機フィラーの界面を結合させました。共有結合と水素結合の両方で固定する「デュアルアンカー」構造により、熱担体であるフォノンの散乱を抑えつつ、機械的負荷を効率的に伝達させています。
性能面では、110 phrの充填量において引張強度8.99 MPa、破断伸び89.75%を維持しました。また、体積抵抗率は10の14乗 Ω·cmを超えており、電気的絶縁性も確保されています。
背景・業界の文脈
太陽光パネルは温度が上昇すると発電効率が低下し、内部で発生した熱が蓄積されることでセルや封止材自体の劣化が加速します。業界で標準的なEVAは安価で透明性が高く加工しやすい一方、熱絶縁性が高いため、内部の熱を逃がせないという長年の課題がありました。従来の熱伝導性フィラーの添加は、フィルムを脆くして製造時の破損を招くため、高い熱伝導率と機械的性能の両立は困難とされてきました。
今後の展望
本複合フィルムは、太陽光反射率91.09%、赤外線放射率96.17%という優れた光学特性を示しました。これにより、不要な太陽光を反射し、吸収した熱を赤外線として効率的に放射します。この放射冷却効果と向上した熱伝導率の相乗効果により、従来の封止材を用いたモジュールと比較して、温度を5.34度低下させることが実証されました。ファンやポンプなどの能動的な冷却装置を必要としないパッシブ冷却手法として、パネルの寿命延長と効率維持に寄与することが期待されます。
元記事: https://bioengineer.org/boron-nitride-hybrid-network-cools-solar-panels-while-keeping-films-tough/
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