主要成果
研究チームは、高い引張強度、迅速な自己修復能、および繰り返しの再処理を単一材料で実現するフランベースのエポキシ・ビトリマーを開発しました。特に最適化された組成である「DGFB-1.0」は、引張強度 75.4 ± 2.3 MPa、ヤング率 512.5 ± 5.2 MPaを達成しました。この強度は、先行研究で報告されている多くのバイオベース・エポキシ・ビトリマー(10–65 MPa)や、β-ヒドロキシエステル交換のみに依存するフランベース・ビトリマー(10–56 MPa)の範囲を上回っています。
技術・詳細
本材料は、動的なボロン酸エステル結合とβ-ヒドロキシエステル結合という、相補的な2つの動的共有結合ネットワークを組み合わせて設計されています。ボロン酸エステル交換は触媒不要で中温域で進行するため、エステルのみのビトリマーで課題となる「触媒の必要性」や「高温条件」を緩和しつつ、機械的強度と熱安定性を維持することに成功しました。
合成プロセスでは、2,5-フランジカルボン酸からジグリシジルフラン-2,5-ジカルボキシレート(DGF)を、また3-アミノベンゼボロン酸とジトリメチロールプロパンからアミノフェニルボロン酸由来の架橋剤(di-BONH2)をそれぞれ合成しています。これらをジメチルホルムアミドに溶解し、80 °Cで12時間乾燥後、100 °Cで6時間、さらに120 °Cで6時間硬化させることでネットワークを形成させました。バイオベース炭素含有量は、DGFB-1.0で25.0%、DGFB-0.7で29.4%となっています。
性能評価では、以下の結果が得られています。
- 自己修復能: 90 °Cで60分間加熱することで、表面の溝がほぼ消失し、引張強度の98.2%を回復しました。
- 再成形性: 切断、ホットプレス、再成形のサイクルを3回繰り返した後も、元の引張強度の81.3%を維持しました。
- 熱安定性: 5%重量減少温度はDGFB-1.0で 286.7 ± 4.3 °Cに達し、ガラス転移温度は62.8〜72.7 °Cの範囲にあります。
- 化学的耐性: DMSO、DMF、メタノール、アセトンなどの溶媒に7日間浸漬しても不溶であり、架橋構造が維持されていることが確認されました。
背景・業界の文脈
従来のエポキシ熱硬化性樹脂は、永久的な架橋ネットワークを形成するため、強度、剛性、化学的耐性、寸法安定性に優れています。しかし、その構造ゆえに一度硬化すると再成形や化学的な回収ができないという欠点がありました。これに対し、ビトリマーは架橋構造を維持しながら、特定の条件下で結合交換が可能な「動的共有結合」を導入することで、熱硬化性樹脂の堅牢さと熱可塑性樹脂のような再処理性を併せ持つ材料として注目されています。
今後の展望
本研究で示されたDGFB-1.0の特性は、バイオベース材料でありながら高い機械的強度と効率的な自己修復能を両立しており、持続可能な高機能材料としての可能性を示しています。なお、本結果はラボスケールの実験によるものであり、工業規模での実証は今後の課題となります。
元記事: https://bioengineer.org/dual-dynamic-bonds-yield-strong-self-healing-bio-based-epoxy-vitrimers/
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