TECHNOLOGY EXPLAINER
再使用ロケット
― 回収の方式、変わるものと変わらないもの、実績と整備の課題
ロケットの第1段が自分で着陸して、もう一度飛ぶ。その光景は、いまでは珍しくなくなりました。しかし、「再使用ロケットなら打ち上げは必ず安い」と断定することはできません。この記事は、回収の方式(着陸・捕獲・滑空・パラシュート)、再使用で何が変わり、何が変わらないか(ロケット方程式は変わらない)、公式資料で確認できる実績(回数・日付・機体名)、そして素材技術者に大切な、整備と材料の課題を、やさしく整理します。各社の計画は未確定/将来として区別します。
- 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
- どの部分を回収し、再使用するか
- 回収の4つの方式
- 公式資料で確認できる実績
- 再使用で何が変わるか:荷物と機体
- 変わらないもの:ロケット方程式と、素材の課題
- 整備の課題と、コストを断定できない理由
- 各社の計画(未確定/将来)
- 評価・標準の読み方/限界/用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=企業の計画・目標など、確定していない事項
このほか、素材分野への読み取りは「解説」として区別します。推測は太字で示します。たとえ話には必ず「たとえの限界」を書きます。
飛行回数・着陸回数などは、メーカー自身の公式ページの表示で、数え方の定義はメーカーのものです。「世界初」「初の」は各社の主張として書きます。失敗や事故は、公式の発表の範囲で中立に書き、原因を推測で断定しません。この分野は変化が速いため、機体・計画には確認日(2026年10月17日)を付けています。図の「荷物の減り」は本稿の仮定のモデルで、実在の機体の損失ではありません。
1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
- 再使用の実績は、公式に確認できます。Falcon 9は、2015年12月21日に第1段の回収に成功し、2017年3月30日に、回収した第1段を初めて再び飛ばしました(いずれもSpaceXの発表)[参考資料7・8]事実。2026年10月15日のミッションでは、第1段の28回目の飛行と記されています[参考資料9]事実。
- 再使用しても、変わらないものがあります。必要な速さも、ロケット方程式も変わりません。帰りの推進剤や脚の分だけ、運べる荷物は減ります。本稿の仮定のモデルでは、第1段の推進剤の5 %を帰りに残すと、荷物は約3.6 %から約2.8 %に減ります本稿の計算。
- 「再使用なら必ず安い」とは断定できません。NASAの論文は、整備の費用が新造の費用より低いときに、再使用は成功すると述べます。スペースシャトルは、飛行のたびに2〜3か月の整備が必要でした[参考資料2]事実。コストは、整備の時間・回数・打ち上げの頻度で決まります。
前提知識はありません。ロケットが「燃料を燃やして軽くなりながら進む」こと、段を切り離す理由、荷物が打ち上げ質量の数%にすぎないことは、「ロケットの基礎」編で説明しています。この記事だけでも読めるように、必要な点は本文で短く説明します。
この記事は、「宇宙産業概論」編、「ロケットの基礎」編の次に読むとつながりやすい記事です。エンジンの再使用は「ロケットエンジンと推進剤」編、再突入の耐熱は「熱防御システム」編、タンクや構造の材料は「軽量構造材料」編で、さらに詳しく扱います。
2. どの部分を回収し、再使用するか
「再使用ロケット」と言っても、どこまで回収するかは機体で違います。NASAの論文は、再使用を、設計されているだけでなく、実際に回収・再認定されて、複数回飛んだものと定義します。この定義では、スペースシャトルも、外部タンクを海に捨てたため「部分的な再使用」でした[参考資料2]事実。
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。機体ごとに、回収する部分は違う。NASA[参考資料2・1]、SpaceX[参考資料5・6・10]、Blue Origin[参考資料12・13]の公式資料にもとづく整理(本記事による整理)。Starshipの欄の△は、完全再使用が目標であることを示し、再飛行の実績は確認できませんでした。
いまのところ、公式資料で回収・再使用が確認できるのは、多くの場合、第1段(とエンジン)とフェアリングです。Falcon 9は第1段とフェアリング[参考資料6]、スペースシャトルはオービター・メインエンジン・固体ブースター(外部タンクは使い捨て)でした[参考資料2]。上段まで回収して再使用する完全再使用は、Starshipの目標ですが、本記事では実績を確認できませんでした[参考資料11]。たとえの限界:飛行機は機体全体を毎回使い回しますが、ロケットは、上段が軌道の速さまで加速するため、帰りの熱と質量の負担が桁違いに大きくなります(本記事による解説)。
3. 回収の4つの方式
回収の方式は、大きく4つに分けられます。1つ目は、エンジンを再び噴いて減速し、脚で着地する垂直着陸。Falcon 9の第1段は、4枚のグリッドフィン(空気中で向きを整える羽根)と、4本の展開式の脚を備えています[参考資料6]事実。2つ目は、着地せず、発射台の塔の腕で空中で捕まえる捕獲。SpaceXは、2024年10月13日のStarship第5回飛行で、Super Heavyの第1段を塔の「チョップスティック」の腕で捕まえたと発表しました[参考資料10]事実。
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。回収の4つの方式。概念図。例の根拠:Falcon 9の脚とグリッドフィン[参考資料6]、New Glennの船への着陸[参考資料13・14]、Starship第1段の捕獲[参考資料10]、スペースシャトル[参考資料2・4]。
3つ目は、翼で滑空して滑走路に降りる滑空着陸で、スペースシャトルのオービターがこれにあたります[参考資料1]。4つ目は、パラシュートで海へ降ろす方式です。NASAの1985年の報告は、シャトルの固体ブースターを、船で回収して、整備と再使用のために分解施設へ戻したと説明しています[参考資料4]事実。Rocket LabはElectronを「回収に対応した唯一の小型ロケット」と述べています(メーカーの主張)[参考資料18]。
着陸は、機体が自分の脚で地面に立ちます。捕獲は、機体の側面の部分を、地上の塔の腕が支えます。捕獲では、着地の衝撃を受ける脚を機体に付けなくてよい可能性があり、その分の質量を減らせるかもしれません(本記事による解説。実際の効果の数値は確認できませんでした)。たとえの限界:野球のキャッチのように、位置と速さがぴったり合わないと失敗するため、塔と機体の位置合わせが厳しい要求になります。
4. 公式資料で確認できる実績
実績を、日付の順に並べます(確認日 2026年10月17日)。「初」という言葉は、各社の主張です。
| 機体 | 公式資料で確認できる実績(日付・機体名) | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| スペースシャトル(NASA) | 1981年4月12日の初打ち上げから2011年7月21日の最後の着陸まで、135回のミッション。オービターは、コロンビア、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー[参考資料1]事実 | 部分的な再使用(外部タンクは使い捨て)。2016年の時点で、反復して飛んだ唯一の再使用の打ち上げ機、SSMEは実証済みの唯一の再使用エンジンとNASAの論文は述べる |
| Falcon 9(SpaceX) | 2015年12月21日 ORBCOMM-2で第1段が着陸場LZ-1に着陸(SpaceXが「世界初の軌道級ロケットの回収」と述べる)[参考資料7]/2017年3月30日 SES-10で、CRS-8(2016年4月)に飛んだ第1段を再び飛ばし、無人船OCISLYに着陸(「初の再飛行」と述べる)[参考資料8]/2026年10月15日 USSF-481で、第1段は28回目の飛行[参考資料9]事実 | メーカーのページの表示(2026年10月17日):完了した飛行693回、着陸の合計647回、再飛行の合計613回[参考資料5]事実。ユーザーズガイドは、2025年2月時点で、第1段の再飛行が384回超、フェアリングの再飛行が307ミッションと述べる[参考資料6] |
| Starship(SpaceX) | 2024年10月13日の第5回飛行で、Super Heavyの第1段を塔の腕で捕獲[参考資料10]/2026年9月28日の第14回飛行は、初の軌道飛行で、Starlink V3衛星26機を投入。船は太平洋に着水、第1段はメキシコ湾に着水して飛行終了装置を作動させた[参考資料11]事実 | 再飛行(同じ機体を再び飛ばすこと)の実績は、確認したページでは確認できなかった |
| New Shepard(Blue Origin、宇宙の入り口までの飛行) | 38回飛行し、98人を高度100 km(カーマン線)より上へ運んだ。2026年1月30日に、少なくとも2年間、飛行を休止すると発表[参考資料17]事実 | 軌道には到達しない機体(宇宙の入り口までの飛行)。軌道級ロケットの再使用とは別に扱う |
| New Glenn(Blue Origin) | 2025年11月の第2回ミッションで、第1段「Never Tell Me The Odds」が打ち上げられ、着陸した[参考資料13・14]事実。第3回ミッション(NG-3)は、同じ第1段を整備して使う予定で、2026年4月19日以降の打ち上げが発表された[参考資料14]。NG-3の結果は、確認したページでは確認できなかった | 2026年5月28日、発射台での一体の燃焼試験で重大な異常が起き、原因は、BE-4エンジンの1基の主酸素バルブにあると、2026年8月5日の更新で述べた[参考資料15・16]事実。年内の復帰を目指す(企業の計画、未確定/将来) |
本稿の計算表の整理は本稿。数字はメーカーのページの表示で、数え方の定義はメーカーのものです。失敗・事故の原因は、公式の調査報告の範囲で扱い、推測しません。
メーカーの数字は、定義がメーカーのもので、失敗や部分成功の内訳は別に確認します(公式の調査報告・当局の発表)。また、再飛行の回数が増えても、1機ごとの劣化と、点検の余裕は別の問題です。ユーザーズガイドは、第1段が大気圏再突入と回収の負荷に耐えるよう設計されており、回収した機体を調べて、設計と材料の選定を改善できると述べています[参考資料6]事実。
5. 再使用で何が変わるか:荷物と機体
まず、荷物です。第1段が帰ってくるには、帰りの推進剤を残す必要があります。NASAの論文も、再使用する機体には、使い捨てにはない要素として、再突入に繰り返し耐える耐熱、より強い構造、高い安全率のタンク、そして帰りの軌道変更のための余分な推進剤が必要だと述べます[参考資料2]事実。
この影響を、「ロケットの基礎」編の2段モデル(比推力350秒、構造の割合8 %、各段4.7 km/s)で確かめます。第1段の推進剤の5 %を帰りに残す場合、荷物の割合は 3.6 %から 2.8 %へ、約23 %減ります。第1段の構造が脚などで10 %重くなるだけなら、3.5 %(約4 %減)です。両方なら 2.6 %、推進剤の10 %を残して10 %重くなると 1.7 %です本稿の計算(すべて仮定)。脚などの重さより、帰りに残す推進剤の割合のほうが、荷物を大きく減らします。
第1段が燃え尽きるとき、帰りの推進剤は、燃やされずに残った余分な重さとして一緒に加速され続けます。ロケット方程式では、燃え尽きたあとの質量が大きいほど、同じ速さを出すのに必要な質量比が上がり、荷物を乗せる余裕が急に減ります(「ロケットの基礎」編)。たとえの限界:実機では、帰りの推進剤は、着陸のためだけでなく、再突入の姿勢制御にも使い、回収の方式(捕獲、船への着陸、着陸場への帰還)で必要量が違います(本記事による解説)。
6. 変わらないもの:ロケット方程式と、素材の課題
再使用でも、必要な速さと、ロケット方程式は変わりません。変わるのは、第1段が「使い捨ての空き箱」ではなく、「もう一度使う道具」になること、そして、そのために機体が受ける負荷が増えることです。次の図は、再使用の一巡で、材料が受けるものを並べています。
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。再使用の一巡で、材料が受けるもの。概念図。NASAの論文[参考資料2]が述べる、再突入の環境、耐熱、構造、安全率、点検の要素の整理(本記事による整理)。
素材の面では、いくつかの具体例があります。SpaceXは、Falcon 9の第1段のタンクに、アルミ・リチウム合金を使うと述べます[参考資料5]。ESAのThemis(再使用の実証機)は、軽量のステンレス鋼のタンクを使うとしています[参考資料20]。Blue Originは、New GlennのBE-4エンジンが液化天然ガス(LNG)を使うのは、灯油系の燃料より「エンジンの再使用性を高める」からだと述べます[参考資料12]事実。NASAの論文は、炭化水素の燃料は、すすの付着(コーキング)が起きることがあり、酸素過剰の燃焼サイクルは、排気が清浄なため、再使用に向く面があると述べています[参考資料2]事実。
使い捨ての機体は、「1回の飛行に耐えれば十分」で設計できます。再使用の機体は、同じ部材が、加熱・冷却、荷重、振動、着地の衝撃を何度も受けます。そのため、疲労、熱サイクル、腐食(洋上の着陸では海水も考えられます。これは本記事の推測です)、傷の検出と補修が、材料の選定の中心になります(本記事による解説)。NASAの論文は、タンクを高い安全率で設計して、応力による損傷を抑えることを挙げています[参考資料2]。また、SpaceXは、回収した第1段を調べて、設計と材料の選定を改善すると述べます[参考資料6]。実績データの価値は、材料メーカーにとっても大きく、「何回飛んだ部材が、どこにどんな劣化を示したか」が、次の材料の要求になります。
7. 整備の課題と、コストを断定できない理由
整備にどれだけかかるかは、スペースシャトルの記録が参考になります。NASAの1985年の報告では、打ち上げの準備にかかる日数は、STS-2の187日から、STS-7の60日へ、着陸後の整備は14日から5日へと短縮されました[参考資料3]事実。それでも、2016年のNASAの論文は、シャトルの整備を「2〜3か月」とし、メインエンジン(SSME)は、飛行のたびに機体から外して整備し、直接・間接の作業が2万時間を超え、2か月かかると述べています[参考資料2]事実。
NASAの論文は、再使用は「整備の費用が新造の費用より低いとき」に成功するとし、ライフサイクルのコストは、エンジンの比推力や機体の質量よりも、次の飛行までの日数に強く左右されるという見方(Bowcuttの言葉を引用)を紹介しています。この見方によれば、比推力が約30 %、機体の乾燥質量が100 %変わった効果は、次の飛行までの日数が15日変わった効果に等しいとされます[参考資料2]事実。これは論文が引用する見解で、現在の機体で確かめた数値ではありません。
断定できません。整備の費用、再使用の回数、打ち上げの頻度、荷物の減り、そして失敗したときの損失が、すべて関わります。NASAの論文は、再使用には、上流の投資が必要で、計画が概念の段階から始まる必要があり、「易しくも無料でもない」と述べます[参考資料2]事実。この記事は、メーカーの価格や、コストを比べる数字を載せていません。
8. 各社の計画(未確定/将来)
以下は、各社の公式ページの記述で、未確定/将来として扱います。
- New Glenn(Blue Origin):第1段は「少なくとも25回の飛行」を設計の目標とする(企業の目標)[参考資料12]。年内の飛行再開を目指す[参考資料15]。
- Neutron(Rocket Lab):再使用の中型ロケットで、低軌道へ13,000 kg、第1段は洋上に着陸する計画。確認したページでは、初飛行の状況は確認できなかった(メーカー公称)[参考資料19]。
- Themis(ESA):再使用技術の実証機。最初の飛行は、高度最大100 mの「ホップ」の予定で、スウェーデンのEsrangeから行う計画[参考資料20]。
- Starship(SpaceX):完全再使用が目標。第14回飛行は、初の軌道飛行[参考資料11]。再飛行の実績は確認できなかった。
「25回の飛行」は、設計の目標で、実績ではありません。実績は、実際に回収・再認定されて飛んだ回数で数えます(NASAの論文の定義[参考資料2])。目標の回数が書かれていても、その回数に達した機体があるかを、公式の記録で確認します。
9. 評価・標準の読み方
再使用ロケットの「ものさし」は、性能の数字ではなく、運用の数字が中心です。再使用の回数(「飛行」「着陸」「再飛行」の数え方)、整備に要する日数と作業時間、回収の成功の割合、回収・再突入の安全です。数字だけを並べると誤解します:メーカーによって数え方が違い、定義はメーカーのものだからです(確認日 2026年10月17日)。
| 評価項目 | 代表的な数字・出典 | 標準・指針・法令 | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 再使用の回数・実績 | メーカーの公式ページの表示(飛行・着陸・再飛行)[参考資料5]、ミッションのページ(機体ごとの飛行回数)[参考資料9]事実 | 確認できなかった(再使用の回数の数え方を定めた標準は、本稿の調査範囲で特定できなかった。NASAの論文は、2016年の時点で、再使用の標準は未整備だと述べる) | 数え方の定義はメーカーのもの。「世界初」は主張。同じ定義・同じ日付で比べる |
| 整備・点検 | 整備の日数・作業時間(シャトルの記録:NASA)[参考資料3][参考資料2]事実 | 確認できなかった(現在の再使用ロケットの整備の日数・作業時間の公式な数字は、確認できなかった) | シャトルの数字は、現在の機体の整備の目安にはならない |
| 回収・再突入の安全 | 米国:14 CFR Part 450「Launch and Reentry License Requirements」[参考資料23]事実。日本:JERG-0-047「再突入機の再突入飛行に係る安全基準」(JAXA、題名のみ確認)[参考資料22]事実 | ISO 27875:2026「Space systems — Re-entry risk management for uncrewed spacecraft and launch vehicle orbital stages」/ISO 23020:2021「Space systems — Determination of test methods to characterize material or component properties required for break-up models used for Earth re-entry」(系統的見直し中)/ISO 20893:2021「Space systems — Detailed space debris mitigation requirements for launch vehicle orbital stages」[参考資料21]事実 | 許可の要件(法令)と、技術の標準(ISO)は別のもの。内容は本記事では確認していない。法的助言ではありません |
| 材料・構造の認定 | 再使用で受ける繰り返しの負荷(熱・荷重・着地)への評価。NASAの論文は、再使用する機体は、耐熱・強い構造・高い安全率が必要と述べる[参考資料2]事実 | ISO 24917:2020「Space systems — General test requirements for launch vehicles」(再使用を前提とした規格かは確認できなかった)[参考資料21]事実 | 「1回の飛行の認定」と「複数回の飛行の認定」は別。認定した飛行回数を確認する |
本稿の計算表の整理は本稿。ISOの番号・題名・年・状態は標準の一覧で確認(確認日 2026年10月17日)、JAXAは一覧で題名のみ、FAAはeCFRで題名の存在のみ確認。規格・法令の本文は確認しておらず、要求事項は書いていません。ASTMの規格は扱っていません。
読み方の注意(素材技術者向け)
- 地上試験と軌道上・実運用の実績は違います:1回の認定試験の合格は、何十回の再使用を保証しません。実績のデータは、機体・回数・点検の結果とあわせて読みます。
- メーカー公称と第三者の検証は違います:飛行回数・着陸回数は、メーカー自身の表示です。
- 標準は「推奨」か「要求」か、確認してください:ISOの規格は法的な拘束力を持ちません。打ち上げ・再突入の許可は、法令に基づく許可です[参考資料23]。
- 計画と達成は別です:New Glennの「25回」、Neutronの初飛行、Starshipの完全再使用などは未確定/将来です。
- 認定と受入は違います:再使用では、飛行ごとの点検(受入に近い確認)と、設計としての認定(何回まで使えるか)の両方が関わります。
10. 限界と、確認できなかったこと
- New Glenn NG-3の結果は確認できませんでした:2026年4月19日以降の打ち上げ予定と、同じ第1段を整備して使う計画は確認しましたが、実際の飛行の結果は、確認したページにありませんでした。
- Falcon 9の第1段の最多飛行回数は確認できませんでした:確認できたのは、2026年10月15日のミッションの「28回目」だけです。これが最多とは限りません。
- Starshipの再飛行、Electronの再飛行の実績は確認できませんでした:Electronの回収対応は、メーカーの主張です。
- 中国など他の国・企業は扱っていません:公式資料で確認できた範囲を、米国・欧州の機関と企業に限っています。
- 整備の日数・コスト・荷物の減りの公式な数字は確認できませんでした:荷物の減りは本稿の仮定のモデルで、コストの金額は載せていません。シャトルの整備の数字は、現在の機体の目安ではありません。
- 規格・法令の本文は確認していません:ISO・JAXAは題名と年のみ、FAAのPart 450は題名の存在のみです。
11. 用語集
- 再使用(NASAの定義)
- 設計されているだけでなく、実際に回収・再認定されて、複数回飛ぶこと。
- 完全再使用・部分再使用
- 機体のすべてを再使用/一部だけを再使用。
- 垂直着陸
- エンジンで減速し、脚で着地する回収。
- 捕獲
- 塔の腕で、空中で機体を捕まえる回収。
- グリッドフィン
- 空気中で姿勢を整える格子状の羽根。
- ブースター(第1段)
- 最初に燃えて、機体を押し上げる段。
- フェアリング
- 荷物を空気から守る先端のおおい。
- 無人船(ドローンシップ)
- 洋上に待機する、着陸用の無人の船。
- オービター
- スペースシャトルの本体。滑空して着陸した。
- SSME
- Space Shuttle Main Engine。シャトルのメインエンジン。回収して整備し、再使用した。
- 外部タンク
- シャトルの大きな燃料タンク。使い捨てだった。
- 整備(ターンアラウンド)
- 着陸から次の打ち上げまでの、点検・整備・準備。
- 再認定
- 再び飛ぶために、機体が使える状態であることを確かめ直す手続き。
- コーキング
- 炭化水素の燃料が燃えて、すすが付着すること。
- ライフサイクルコスト
- 作る・使う・整備するの全体にかかる費用。
- 質量比
- 燃え始める前の質量÷燃え尽きた後の質量。
- 飛行終了装置
- 異常のとき、機体の飛行を終わらせる安全装置。
- LEO
- 低軌道。
- メーカー公称
- メーカー自身が示す値。第三者の検証とは別。
- 設計の目標回数
- 設計で狙う再使用の回数。実績ではない。
12. 参考資料(一次情報)
- NASA "Space Shuttle" — www.nasa.gov/space-shuttle/
- Childress-Thompson R., Thomas D., Farrington P. (NASA) "A Framework for Assessing the Reusability of Hardware (Reusable Rocket Engines)" (December 2016) — ntrs.nasa.gov/citations/20170000606
- Schwartz R. (NASA) "Overview of STS ground operations/orbiter turnaround STS-1 through STS-7" (1985) — ntrs.nasa.gov/citations/19850008617
- Rasmussen A. M. (NASA) "Solid rocket booster retrieval operations" (1985) — ntrs.nasa.gov/citations/19850008619
- SpaceX "Falcon 9"の製品ページ(メーカー公称。確認日 2026年10月17日) — www.spacex.com/vehicles/falcon-9
- SpaceX "Falcon User's Guide" (9 May 2025) — content.spacex.com/cms-assets/assets/falcon-users-guide-2025-05-09.pdf
- SpaceX "ORBCOMM-2 Mission" (21 December 2015) — www.spacex.com/launches/orbcomm2
- SpaceX "SES-10 Mission" (30 March 2017) — www.spacex.com/launches/ses10
- SpaceX "USSF-481 Mission" (15 October 2026) — www.spacex.com/launches/ussf481
- SpaceX "Starship's Fifth Flight Test" (13 October 2024) — www.spacex.com/launches/starship-flight-5
- SpaceX "Starship Flight 14" (28 September 2026) — www.spacex.com/launches/starship-flight-14
- Blue Origin "New Glenn" — www.blueorigin.com/new-glenn
- Blue Origin "New Glenn-3 to Launch AST SpaceMobile's BlueBird Satellite" (22 January 2026) — www.blueorigin.com/news/new-glenn-3-to-launch-ast-spacemobile-bluebird-satellite
- Blue Origin "New Glenn's Third Mission Slated for April 19" (16 April 2026) — www.blueorigin.com/news/new-glenn-ng-3-mission
- Blue Origin "New Glenn Return to Flight" (30 June 2026) — www.blueorigin.com/news/new-glenn-return-to-flight
- Blue Origin "GS1-3 Hotfire Updates" (updated 5 August 2026) — www.blueorigin.com/news/gs1-3-hotfire-updates
- Blue Origin "Blue Origin to Pause New Shepard Flights for No Less Than Two Years" (30 January 2026) — www.blueorigin.com/news/new-shepard-to-pause-flights
- Rocket Lab "Electron"の製品ページ(メーカー公称。確認日 2026年10月17日) — www.rocketlabcorp.com/launch/electron/
- Rocket Lab "Neutron"の製品ページ(メーカー公称。確認日 2026年10月17日) — www.rocketlabcorp.com/launch/neutron/
- ESA "Themis" — www.esa.int/Enabling_Support/Space_Transportation/Themis
- ISO/TC 20/SC 14 標準の一覧(ISO 27875:2026、ISO 23020:2021、ISO 20893:2021、ISO 24917:2020 の題名・年・状態を確認) — www.iso.org/committee/46614/x/catalogue/p/1/u/0/w/0/d/0
- JAXA 安全・信頼性推進部「JAXA共通技術文書」の一覧(JERG・JMR) — sma.jaxa.jp/techdoc.html
- U.S. Government Publishing Office / eCFR 14 CFR Part 450 "Launch and Reentry License Requirements" — www.ecfr.gov/current/title-14/chapter-III/part-450
13. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| スペースシャトル:1981年4月12日の初打ち上げ、2011年7月21日の最後の着陸、135回のミッション、5機のオービター | NASAのスペースシャトルのページ 出典1 https://www.nasa.gov/space-shuttle/ | 事実 |
| 再使用の定義(回収・再認定・再飛行)、シャトルは部分的な再使用、2016年時点で唯一の再使用の打ち上げ機・SSMEは唯一の実証済み再使用エンジン、再使用で必要な要素(耐熱・強い構造・高い安全率・帰りの推進剤)、シャトルの整備2〜3か月、SSMEの整備2万時間超・2か月、整備費用<新造費用で成功、Bowcuttの見解、コーキング、再使用の標準は未整備、「易しくも無料でもない」 | NASAの論文(2016年12月) 出典2 https://ntrs.nasa.gov/citations/20170000606 | 事実 |
| 打ち上げ準備187日(STS-2)→60日(STS-7)、着陸後の整備14日→5日 | NASAの1985年の報告 出典3 https://ntrs.nasa.gov/citations/19850008617 | 事実 |
| 固体ブースターを船で回収し、整備と再使用のために分解施設へ戻したこと | NASAの1985年の報告 出典4 https://ntrs.nasa.gov/citations/19850008619 | 事実 |
| Falcon 9:完了693回・着陸647回・再飛行613回(2026年10月17日の表示)、アルミ・リチウム合金のタンク | SpaceXの製品ページ(メーカー公称) 出典5 https://www.spacex.com/vehicles/falcon-9 | 事実 |
| 第1段の再飛行384回超・フェアリング307ミッション(2025年2月)、再突入と回収に耐える設計、回収機体を調べて設計・材料選定を改善、4枚のグリッドフィンと4本の脚 | SpaceX Falcon User's Guide(2025年5月9日) 出典6 https://content.spacex.com/cms-assets/assets/falcon-users-guide-2025-05-09.pdf | 事実 |
| 2015年12月21日 ORBCOMM-2:LZ-1への着陸、「世界初の軌道級ロケットの回収」(SpaceXの主張) | SpaceXのミッションページ 出典7 https://www.spacex.com/launches/orbcomm2 | 事実 |
| 2017年3月30日 SES-10:CRS-8(2016年4月)の第1段の再飛行、無人船OCISLYへの着陸、「世界初の再飛行」(主張) | SpaceXのミッションページ 出典8 https://www.spacex.com/launches/ses10 | 事実 |
| 2026年10月15日 USSF-481:第1段の28回目の飛行 | SpaceXのミッションページ 出典9 https://www.spacex.com/launches/ussf481 | 事実 |
| 2024年10月13日 Starship第5回飛行:Super Heavyの第1段を塔の腕で捕獲 | SpaceXのミッションページ 出典10 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-5 | 事実 |
| 2026年9月28日 Starship第14回飛行:初の軌道飛行、Starlink V3衛星26機、船は太平洋に着水、第1段はメキシコ湾に着水し飛行終了装置を作動 | SpaceXのミッションページ 出典11 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-14 | 事実 |
| New Glenn:第1段は「少なくとも25回の飛行」が設計の目標、BE-4のLNGは再使用性を高める | Blue Originの製品ページ 出典12 https://www.blueorigin.com/new-glenn | 事実 |
| NG-2の第1段「Never Tell Me The Odds」の着陸、同じ第1段をNG-3に使う予定 | Blue Originの発表(2026年1月22日) 出典13 https://www.blueorigin.com/news/new-glenn-3-to-launch-ast-spacemobile-bluebird-satellite | 事実 |
| NG-3の予定(2026年4月19日以降)、NG-2は2025年11月 | Blue Originの発表(2026年4月16日) 出典14 https://www.blueorigin.com/news/new-glenn-ng-3-mission | 事実 |
| 2026年5月28日の燃焼試験の異常、年内の復帰を目指すこと | Blue Originの発表(2026年6月30日) 出典15 https://www.blueorigin.com/news/new-glenn-return-to-flight | 事実 |
| 異常の起点がBE-4の主酸素バルブ(2026年8月5日の更新) | Blue Originの更新 出典16 https://www.blueorigin.com/news/gs1-3-hotfire-updates | 事実 |
| New Shepard:38回飛行、98人、2026年1月30日に2年以上の休止を発表 | Blue Originの発表 出典17 https://www.blueorigin.com/news/new-shepard-to-pause-flights | 事実 |
| Electron:97回の打ち上げ、「回収に対応した唯一の小型ロケット」(主張) | Rocket Labの製品ページ(メーカー公称) 出典18 https://www.rocketlabcorp.com/launch/electron/ | 事実 |
| Neutron:再使用の中型ロケット、低軌道13,000 kg、洋上に着陸する計画 | Rocket Labの製品ページ(メーカー公称) 出典19 https://www.rocketlabcorp.com/launch/neutron/ | 事実 |
| Themis:再使用技術の実証機、軽量ステンレス鋼のタンク、最初は高度最大100 mのホップ(Esrange) | ESAの紹介ページ 出典20 https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Transportation/Themis | 事実 |
| ISO 27875:2026、ISO 23020:2021、ISO 20893:2021、ISO 24917:2020の番号・題名・年・状態 | ISO/TC 20/SC 14の標準一覧 出典21 https://www.iso.org/committee/46614/x/catalogue/p/1/u/0/w/0/d/0 | 事実 |
| JAXA JERG-0-047「再突入機の再突入飛行に係る安全基準」の題名 | JAXA安全・信頼性推進部の一覧(題名のみ) 出典22 https://sma.jaxa.jp/techdoc.html | 事実 |
| 14 CFR Part 450「Launch and Reentry License Requirements」の存在 | eCFR(現行版) 出典23 https://www.ecfr.gov/current/title-14/chapter-III/part-450 | 事実 |
| 2段モデル(比推力350秒、構造8 %、各段4.7 km/s)に帰りの推進剤5 %・10 %と追加の重さ10 %を足した荷物の割合(基準3.6 %、5 %で2.8 %、10 %重くで3.5 %、両方で2.6 %、10 %+10 %で1.7 %)、λの式 | 本稿の計算(すべて仮定。実在の機体の値ではない) | 本稿の計算 |
| 回収の4方式の分類、「捕獲は脚を省ける可能性」、再使用で負荷が増えること、「寿命は繰り返しの強さ」、材料メーカーへの含意、実績のデータの価値、飛行回数の数え方の注意、図2の分類 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説 | 解説 |
| 図1〜図9が実測ではなく説明のための作図であること。図1がAI画像の枠であること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月17日/出典はNASAの技術報告とページ・SpaceXとBlue Originの公式ページ(メーカー公称)・Rocket Labの製品ページ・ESAの紹介ページ・JAXA・ISO・FAA(eCFR)の公式ページに限定しています。メーカーの数字は、定義がメーカーのもので、第三者の検証ではありません。荷物の減りは本稿の仮定のモデルで、実在の機体の値ではありません。NG-3の結果、各機体の最多飛行回数、整備の日数・コスト・荷物の減りの公式な数字、他国の再使用の状況、規格・法令の本文については、確認できなかったため記載していません。



