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衛星間の光通信 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

衛星間の光通信
― レーザーで衛星どうしを結ぶ仕組みと、材料・部品・標準

衛星どうし、あるいは衛星と地上の間を、電波ではなくレーザー光で結ぶ技術が実用に近づいています。光は電波より細く絞れるため、大量のデータを少ない電力で送れる反面、相手に正確に向ける難しさがあります。この記事は、素材技術者が宇宙工学を知らなくても読めるように、①なぜ光か(数値の例)、②1本のリンクの中身、③光を合わせる「捕捉・追尾」、④実例と標準(CCSDS・SDA の文書の番号と日付)、⑤部品と材料の課題を、図で順に説明します。実証の範囲は「何を・どの規模で・いつ」を添え、企業の発表と標準の値を区別します。

構成:SDA の光通信端末標準(v4.0.0)、CCSDS の標準一覧、ESA の EDRS の解説、NASA の技術報告(TBIRD、LCRD、ILLUMA-T)、査読論文(Optics Express)、ESCC・NIST の公式ページを使用/数値例は本稿で計算/確認日 2026年10月17日

衛星間で光を向け合う端末と、その内部の方向調整部を区別します。破線は接続の説明で、宇宙空間で光線がこのように見えるわけではありません。
図1 概念画像(ImageGen生成)。衛星間で光を向け合う端末と、その内部の方向調整部を区別します。破線は接続の説明で、宇宙空間で光線がこのように見えるわけではありません。実際の製品・施設・測定結果・設計寸法ではありません。実物と拡大模型を区別してください。線・矢印・色は説明用です。
この記事の構成
  1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
  2. なぜ光か ― ビームの細さ(数値の例)
  3. 1本の光リンクの中身
  4. 光を合わせる ― 捕捉・追尾(PAT)
  5. 受け取る光はどれほど弱いか ― 1ビットの光子
  6. 実証と速さの例 ― 何がどこまで確かめられたか
  7. 標準 ― CCSDS と SDA
  8. 部品と材料の課題 ― 素材技術者の視点
  9. 評価・標準の読み方/用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=企業の目標・計画、申請中・審議中の事項など、確定していないこと
推測は太字で示します。たとえ話には、必ず「たとえの限界」を書きます。

この記事の数値の読み方

第2・5章の幅・光子・受光パワーの数値は、本稿が計算した説明用の値で、実在の端末の設計値ではありません。規格の値は、SDA・CCSDS・ESCC の文書にあるとおりに書き、確認日(2026年10月17日)を付けています。企業の発表は企業の主張として扱い、軌道上の実証と地上の装置試験を区別します。この分野は変化が速いため、標準の版・状態は確認日時点のものです。

1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置

  • 光は電波より細く絞れる:同じ口径なら、ビームの広がりは波長に比例します。本稿の計算では、1,000 km先でレーザー光は約15 m、Ka帯の電波は約20 kmに広がります 本稿の計算
  • 難しさは「向けること」:ESA の EDRS では、約45,000 km離れた直径135 mm の目標に、約55秒で光を合わせます。SDA の標準は、捕捉に100秒以下を求めます 事実[参考資料5・1]
  • 実績は積み上がり、標準も整い始めた:EDRS は2023年6月に7万5千本目のリンクに到達し、CCSDS は2026年3月に光通信の青本の第2版を出しました。ただし速さの数字は条件が違い、優劣は言えません 事実[参考資料6・3]
この記事を読む前に知っておくこと

「衛星間リンク(ISL)」は、衛星どうしが直接つながる通信です。電波の代わりに光(レーザー)を使う場合を、光衛星間リンク(OISL)と呼びます。光は目に見えない近赤外線(波長1,550 nmなど)が使われます。「ビットレート」は1秒に送るビット数(Gbpsは10億ビット毎秒)、「ビーム」は光や電波の束、「口径」は望遠鏡やアンテナの開口の直径です。波長が短いほど、同じ口径で、ビームを細く絞れます(たとえの限界:実際のビームは、レンズの精度や振動で理想より広がります)。

シリーズの中での位置

光通信の部品(半導体レーザー、光検出器、光ファイバー、薄膜ニオブ酸リチウムによる光変調、コヒーレント検波)は、本シリーズ「光通信・フォトニクス」編で詳しく扱っています。この記事は、それを宇宙で使うときの違い(放射線、真空、向き合わせ)に絞ります。前の記事は「低軌道コンステレーション」、宇宙でのデータ処理は「軌道上コンピューティング」編です。

2. なぜ光か ― ビームの細さ(数値の例)

夜道で、懐中電灯を遠くの人に向けるとします。広がる光だと、相手に届く光はわずかです。細く絞れる光なら、遠くでも強いままです。電波と光の違いも同じで、光の波長(1.55 µm)は電波(Ka帯で約1 cm)の約6,000分の1と非常に短いので、同じ口径でも細く絞れます。細いビームは、相手の受光口径に多くの光を集められるので、少ない電力で大量のデータを送れます。

ビームの広がりの角度は、波長 ÷ 口径(ラジアン)でおおまかに見積もれます。口径10 cmの望遠鏡で波長1,550 nmなら、約15.5 µrad(マイクロラジアン)です。SDA の標準も、送信ビームの広がりは半値全幅で15 µrad以上と定めており、絞りすぎると向きの誤差に弱くなるための下限、と読めます(解説)事実[参考資料1]。口径0.5 mのアンテナでKa帯(30 GHz)の電波なら、広がりは約20 mradです 本稿の計算。

光の細さ:到達地点でのビームの直径(本稿の計算) 1 m 100 m 10 km 1,000 km 100 1,000 10,000 45,000 相手までの距離 km Ka帯の電波(口径0.5 m・30 GHz) レーザー光(1550 nm・口径10 cm) 15.5 m 20 km 85 m 110 km 約700 m 900 km 円形の開口の回折による広がりを、波長 ÷ 口径(ラジアン)で近似。ポインティング誤差・効率は含めない
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。光は口径10 cm・1,550 nm、電波は口径0.5 m・30 GHz と仮定した本稿の計算です。ビームの広がりを理想的な回折で見積もったもので、実在の端末の値ではありません。

図の読み方:距離1,000 kmで、光は直径約15 m、電波は約20 kmに広がります。受光口径の面積に入る光の割合を単純に見積もると(受光口径は光10 cm、電波0.5 m)、光は約−44 dB、電波は約−92 dBです。差はおよそ48 dB、つまり約6万6千倍です 本稿の計算。この計算は、距離を問わず同じ比です。つまり、光は電波よりずっと小さな電力で届くのですが、その代わりに相手に正確に向けることが不可欠になります。

つまずきやすいところ:dB(デシベル)と「−44 dB」

dB は、比を対数で表す単位です。10 dB 減ると10分の1、20 dB 減ると100分の1、30 dB 減ると1,000分の1です。−44 dB は、約2万5千分の1にあたります。48 dB の差は、約6万6千倍です。小さな数字に見えても、桁の違いを表しています(本稿の計算)本稿の計算。

よくある誤解:「光は雨や雲に弱いから、宇宙でも使えない」

雲や乱流(大気のゆらぎ)が問題になるのは、光が大気を通る衛星と地上の間のリンクです。SDA の標準も、衛星〜地上のリンクでは、大気による「フェードアウト」(信号がしきい値を下回る時間)が遅延に加わる、と書いています 事実[参考資料1]。衛星どうしのリンクは大気を通らないので、この問題はありません。そのかわり、前記のとおり、非常に細いビームを、高速で動く相手に向け続けることが課題になります。

3. 1本の光リンクの中身

光リンクの部品を、順に追ってみます。送信側では、①レーザー光源が光をつくり、②変調器が光の強さや位相でデータを載せ、③光増幅器が光を強め、④望遠鏡が細いビームにして送り出します。受信側では、⑤望遠鏡が弱い光を集め、⑥光検出器が電気信号に変え、⑦復号器が誤りを直してデータを取り出します。これらとは別に、ビームを相手に向け続ける追尾の部品(追尾センサー、高速可動ミラー、ジンバル)が欠かせません。

①送信側の光源・処理、②向きを合わせる光学系、③受信・復号側です。部品をつなぐ概念で、実製品の光学設計図ではありません。
図3 概念画像(ImageGen生成)。①送信側の光源・処理、②向きを合わせる光学系、③受信・復号側です。部品をつなぐ概念で、実製品の光学設計図ではありません。実際の製品・施設・測定結果・設計寸法ではありません。実物と拡大模型を区別してください。線・矢印・色は説明用です。
元のSVG・数値・出典を確認する
1本の光リンクの中身(模式図) 送信側の衛星 受信側の衛星 レーザー光源 変調器 光増幅器 送信望遠鏡 追尾センサー 高速可動ミラー 粗い向き合わせ(ジンバル)と機体の姿勢 受信望遠鏡 光検出器 復号・誤り訂正 データ出力 細いレーザー光 追尾センサー 高速可動ミラー 粗い向き合わせ(ジンバル)と機体の姿勢 各部品の名称と配置は一般的な構成の例。実在の端末の設計を示すものではありません

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。左が送信側、右が受信側(実際はどの衛星も送信と受信の両方を持ちます)。紫は向きを合わせる追尾の部品です。

SDA の標準は、波長を1553.33 nm(193.000 THz)と1536.61 nm(195.100 THz)の2つのチャンネルで定め、変調レーザーの線幅を5 GHz以下、中心周波数の精度を±2.5 GHz以内とします。送信出力は最大で2.5 W以上、最小は40 mW以下まで調整できることが求められます。これらは互いに別メーカーの端末がつながるように決められた要件で、「どの端末が優れているか」を決めるものではありません 事実[参考資料1]。

変調と符号は、標準が定める方式です。SDA の標準は、強度の有無で0と1を表す方式(OOK-NRZ、オンオフ変調)などを使い、2.5 Gbaud(1秒に25億記号)から低い速度まで複数の波形を定め、誤り訂正に LDPC 符号を、再送の仕組み(ARQ)とあわせて使います 事実[参考資料1]。一方、NASA の TBIRD は、光ファイバーと結合したコヒーレント送受信器(光の位相まで読む方式)と ARQ で、大気のゆらぎの中でも誤りのない通信を保証しました 事実[参考資料8]。コヒーレント検波は、本シリーズ「コヒーレント光通信とDSP」編で詳しく扱っています。

4. 光を合わせる ― 捕捉・追尾(PAT)

細い光を遠くの相手に当てるのは、「遠くの的に、動きながら、針の先で当てる」ようなものです。たとえの限界:的も動いており、しかも的の位置は、あらかじめ決まった軌道から計算できるものの、機体の揺れ(ジッター)が加わります。SDA の標準は、光ファイバーのように相手と導波路でつながっているわけではない自由空間の光通信では、端末どうしが空間的に合わせられる必要がある、と書いています。この合わせ込みを、Pointing(向ける)・Acquisition(捕捉する)・Tracking(追尾する)の頭文字でPATと呼びます 事実[参考資料1]。

光を合わせる「捕捉・追尾(PAT)」の3段階 1. 捕捉(探す) 相手の方向の不確かさの範囲を、光ビーム でなぞって探す 2. 引き込み(捕まえる) 相手の光点を追尾センサーの中心に入れ、 高速ミラーで固定する 3. 追尾しながら通信 機体の振動(ジッター)を補正し続け、デ ータを送る 公表されている数値(規格の要求と、実例の説明は別のもの) ・ESA の EDRS:静止軌道〜低軌道(距離 約45,000 km)で、直径135 mm の目標に、約55秒で光を合わせる  相対速度は最大で約8 km/s ・SDA の規格:捕捉の時間は100秒以下(低温・保温のどちらの起動でも)、追尾用の振幅変調の音は40 kHz か 50 kHz 時間は条件(距離・初期の不確かさ)で変わる。2つの数字は同じ条件ではない
図4 概念図(ベクター作図)。3段階の流れは一般的な説明で、実在の端末の動作順序を示すものではありません。数値は ESA と SDA の文書にあるとおりです。

ESA は、EDRS の光端末が、静止軌道〜低軌道の約45,000 km離れた直径135 mmの目標を、約55秒で捉えると述べています。相対速度は最大で秒速約8 kmです。ESA はまた、低軌道の衛星は100分のうち10分程度しか地上局と通信できず、EDRS の1つの中継点で、地上との接触時間を約4倍にできると説明しています 事実[参考資料5]。SDA の標準は、粗い向き(ジンバルなど)と、細かい揺れの補正(高速可動ミラー)を分ける構成を例示し、閉ループの追尾に相手の信号を使う、と述べます 事実[参考資料1]。

つまずきやすいところ:なぜ「ビームが細いほど難しい」のか

ビームが細いほど、相手に届く光は強くなりますが、少しでも向きがずれると、相手の口径を外れてしまいます。距離×角度が、相手の位置でのずれです。1,000 km先なら、1 µradの向きの誤差で、ビームの中心は約1 m ずれます。ビームの直径は約15.5 mなので、半分の約7.8 mずれる(約8 µradの誤差)と、受け取る光はおよそ半分(−3 dB)になります(ビームがガウス形で半値全幅15.5 mと仮定した本稿の計算)。向き合わせを µrad の精度で保つことが、光リンクの中心課題です 本稿の計算。

5. 受け取る光はどれほど弱いか ― 1ビットの光子

光の強さが分かったところで、光子の数を数えてみましょう。光子は光の最小の粒で、1個のエネルギーは、波長1,550 nmで約1.28×10⁻¹⁹ ジュールです(プランク定数と光速から計算)本稿の計算[参考資料17]。SDA の標準は、5,500 km先で受光面の平均の強さが25 µW/m²以上になる送信を要求します(ポインティング誤差やジッターを含む平均値)事実[参考資料1]。口径10 cmの受光面は約7.85×10⁻³ m²なので、受け取るパワーは約0.196 µW(−37 dBm)です。

受け取る光はどれほど弱いか:1ビットあたりの光子の数(本稿の計算) 規格が求める受光強度 25 µW/m²(5,500 km) 受光口径 10 cm の面積 7.85×10⁻³ m² 受け取るパワー 0.196 µW(−37 dBm) 光子1個のエネルギー(1550 nm) 1.28×10⁻¹⁹ J 毎秒に届く光子 約1.5×10¹² 個 2.5 Gbaud の場合の1ビット 約610個 比較:送信 2.5 W を直径約85 m に均等に広げた場合、約438 µW/m²(要求の約17.5倍、12.4 dB) この差は、ポインティング誤差・光学損失・大気(地上リンクの場合)などの余裕に使われる(解説) SDA 規格の要求値を例に、口径10 cm・2.5 Gbaud と仮定した計算
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。SDA 規格の要求値と、口径10 cm・2.5 Gbaud の仮定を使った本稿の計算です。実在の端末の受光パワーではありません。

受け取る光子は毎秒約1.5×10¹²(1.5兆)個、2.5 Gbaud(毎秒25億記号)で割ると、1記号あたり約610個です。610個は多く見えますが、光検出器と電子回路が、この光から正しくビットを読み取るには、ノイズとの勝負になります。だから、検出器の感度(InGaAs などの材料の暗電流の小ささ)と、符号による誤り訂正が重要になります。検出器の材料と暗電流は、本シリーズ「光検出器」編で詳しく扱っています。

6. 実証と速さの例 ― 何がどこまで確かめられたか

光通信の実証は、衛星どうし、衛星と地上、地上の装置など、種類が混ざります。同じ「光リンク」でも、距離・速さ・期間が違うため、種類ごとに区別して見ていきます。

事例何を・どの規模で・いつ区分
ESA の EDRS静止軌道の2つの中継点(約36,000 km上空)が、低軌道の観測衛星と光で結び、地上へ中継。EDRS-C は2019年8月6日に打ち上げ、2020年に運用開始。2023年6月12日に7万5千本目のリンク、4.5ペタバイト超、国際宇宙ステーションも2022年1月から利用(ESA の発表)。光端末は Tesat-Spacecom と DLR が開発 事実[参考資料6・7]事実
NASA の LCRD・ILLUMA-TLCRD は静止軌道(西経112°)の中継、ILLUMA-T は ISS の日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載。双方向、最大1.2 Gbps、カリフォルニアとハワイの地上局。LCRD の2年間の実験計画は2024年6月に完了、ILLUMA-T の試験は2023年12月に開始 事実[参考資料9・10]事実
NASA の TBIRD6U キューブサットから地上へ。2022年5月の打ち上げ後、200 Gbps、1回の通過(約5分)で最大4.8テラバイト。「宇宙からの最速の下り回線」と報告書が述べる(報告書の主張)。衛星間ではなく、衛星から地上のリンク 事実[参考資料8]事実
Axiom/KeplerKepler の光中継衛星に、SDA の Tranche 1 の光通信標準と互換の2.5 Gbps の光リンクを含む。同社は、SDA 互換の衛星間の光リンクの初の商用の軌道上実証を行ったと述べる(企業の主張)、2026年10月6日の発表 事実[参考資料11]事実
Google の Suncatcher の装置試験地上の装置で、1対の送受信器が片方向800 Gbps(双方向計1.6 Tbps)。軌道上ではない。近接して飛ぶ衛星群で数十Tbpsを得る構想の一部 事実未確定/将来[参考資料12]事実

表の整理は本稿の計算(整理)。企業の発表は企業の主張で、第三者の検証は確認できていません。

公表されている「速さ」の例:種類ごとに色分け(対数目盛り) 0.1 1 10 100 1000 通信速度 Gbps SDA 規格・バースト方式(20,000 km 用) 0.049 Gbps ILLUMA-T↔LCRD(ISS・静止軌道・地上) 最大 1.2 Gbps Axiom/Kepler 光リンク(SDA 互換) 2.5 Gbps SDA 規格・2.5 Gbaud の理論上の最大 約2.2 Gbps TBIRD(低軌道→地上、約5分の通過) 200 Gbps Suncatcher の地上の装置試験(片方向) 800 Gbps 規格の値 軌道上の実証 企業の発表 地上の装置試験 距離・条件・測り方(ペイロード速度か回線速度か)が違うため、棒の長さで優劣は言えない
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。棒の長さは数値の大きさを表すだけで、優劣を表しません。区別は色で示しています。ILLUMA-T は「最大」、SDA の理論値は2.5 Gbaud の符号化前の最大のペイロード速度です。
よくある誤解:「Gbps が大きいほど優れた端末」

通信速度は、距離、受信口径、大気の有無、符号・再送の余裕で大きく変わります。TBIRD の200 Gbps は低軌道から地上への数分の通過、ILLUMA-T の1.2 Gbps は ISS・静止軌道・地上の多段の中継、SDA の2.5 Gbaud は規格の標準波形です。さらに、SDA の標準でも、約20,000 km用のバースト方式は、ペイロード速度が約49 Mbps(0.049 Gbps)です 事実[参考資料8・9・1]。条件の違う数字を並べて優劣を決めることは、できません。

7. 標準 ― CCSDS と SDA

光通信の標準は、複数の組織が別々に作っています。CCSDS(宇宙データシステム諮問委員会)は、各国の宇宙機関が参加する国際組織で、通信の規格を作ります。青本(Blue Book)は正式な標準、橙本(Orange Book)は実験的な仕様です。SDA(米国宇宙軍の宇宙開発庁)は、自らの衛星網(PWSA)の端末が互いにつながるための光通信端末標準(OCT Standard)を作っています。ここでは軍事利用の詳細には立ち入らず、技術の標準としての性質だけを書きます。

光通信の標準の地図(層ごとに、どの文書が何を決めるか) CCSDS SDA ESCC / ECSS 物理層 波長・変調・光のパワー 符号化・同期 誤り訂正・フレーム ネットワーク 経路・暗号・運用 部品の試験 レーザー・放射線 141.0-B-2(青)非コヒーレント 141.10-O-1(橙)1550 nm 141.11-O-1(橙)1064 nm ※ 青:標準 橙:実験的 142.0-B-2(青) 142.10-O-1(橙) リード・ソロモン積符号 確認できなかった (本稿では該当文書を 確認していない) 確認できなかった (光通信に特化した文書は 確認していない) OCT 標準 v4.0.0/v3.2.0 波長 1553.33・1536.61 nm 出力 2.5 W 以上、広がり 15 µrad 以上 LDPC 符号と ARQ(再送) 2.5 Gbaud から低速まで OOK-NRZ/マンチェスター NEBULA 標準 v3.05 (PWSA のネットワーク。 暗号装置の要件を含む) 確認できなかった (部品の試験は OCT 標準の 範囲外と読める) 確認できなかった (光端末の物理層の ECSS 文書は未確認) 確認できなかった 確認できなかった ESCC 23201/23202 レーザーダイオード ESCC 22500 変位損傷 ESCC 22900 総線量、25100 単一事象 「確認できなかった」は、本稿の調査範囲で文書を確認できなかったという意味で、存在しないという意味ではない
図7 概念図(ベクター作図)。層ごとに、本稿で確認できた文書を置きました。空欄ではなく「確認できなかった」と書いた箇所は、本稿の調査範囲で確認できなかったという意味です。
  • CCSDS(標準):CCSDS 141.0-B-2「非コヒーレント光通信の物理層」と CCSDS 142.0-B-2「非コヒーレント光通信の符号化と同期」は、ともに第2版が2026年3月に発行された青本です。141.0-B-2 は、光ビーコンと任意のデータ伝送について、中心周波数、レーザーの線幅、信号の放射、変調方式などを定めます 事実[参考資料3]
  • CCSDS(実験的仕様):CCSDS 141.10-O-1「光の高データ速度(HDR)通信―1550 nm」(2022年6月)、141.11-O-1「同―1064 nm」(2018年12月)、142.10-O-1「光通信用リード・ソロモン積符号」(2023年10月)は橙本です。141.10 と 141.11 は、ESA のミッション(EDRS 系列、Sentinel 系列)で実装された HDR のシナリオにもとづくと説明されています 事実[参考資料4]
  • SDA の OCT 標準:v4.0.0(文書番号 9100-001-09、2024年6月28日)と v3.2.0 が公開されています。SDA は、v3.2.0 を第3トランシェの標準とし、v4.0.0 は選ばれた少数の端末に使う意向を述べ、v4.0.0 は新しい長距離用の波形を含みます。v4.0.0 の対象は、通信の階層モデルの第1層(物理層)と、第2層の下位(符号化・同期)で、衛星のバスとのインターフェースや、ネットワークのインターフェースは規定しません 事実[参考資料2・1]
つまずきやすいところ:なぜ「標準」が必要なのか

光リンクは、送る側と受ける側が、波長・変調・符号・合わせ込みの手順まで同じでないと、つながりません。電波の携帯電話は、世界の規格でどのメーカーの端末もつながります。光リンクも同じで、規格がなければ、1つの会社の端末どうしだけの閉じた網になります。SDA の標準が「別メーカーの端末の相互接続」をうたうのは、そのためです(解説)。

8. 部品と材料の課題 ― 素材技術者の視点

素材技術者の視点①:光ファイバー増幅器は放射線で「暗く」なる

送信側の光増幅器には、エルビウムなどの希土類を加えた光ファイバー(EDF)が使われます。ところが、放射線を浴びると、ガラスの中に欠陥ができ、光が吸収されて弱まります(放射線誘起減衰、RIA)。Ma らは、高出力のエルビウム・イッテルビウム共添加ファイバー増幅器に、50 krad(0.5 kGy)を線量率40 rad/sで照射し、ピーク波長と半値幅は変わらなかったものの、特性の劣化は「やや大きい」と述べ、軌道の線量に応じて評価し、必要なら放射線への防護を加えるべきだとしています。1台の試料のみの結果です 事実[参考資料13]。Zhai らは、アルミノシリケートのEDFにセリウム(Ce)を加えると、RIA がCe なしの1桁以上低くなり、最大10 kGy(線量率1.8 kGy/h のガンマ線)の照射後でも、41.6 ± 2.9 dBの利得を保ったと報告しています 事実[参考資料14]。どちらも地上の照射試験で、宇宙の長期の結果ではありません。素材の側では、ガラスの組成(共添加物)で放射線耐性を作るという、材料の工夫が効いている例です。

光ファイバー増幅器の放射線試験:線量の目盛り(対数) 0.1 1 10 30 累積線量 kGy(1 kGy = 100 krad) Er-Yb 増幅器の試験 50 krad(0.5 kGy)、線量率 40 rad/s Ce 共添加ファイバーの試験 最大10 kGy、線量率 1.8 kGy/h(ガンマ線) 低線量の軌道の目安:50 krad 未満(2009年の論文) 試験の対象・条件が違うため、2つの結果を同じ尺度で比べない。どちらも地上の照射試験で、軌道上の結果ではない
図8 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。どちらの試験も地上の照射試験です。線量の単位を kGy にそろえて並べましたが、対象・線量率・測定項目が違うので、結果の優劣は比べられません。
相手を捕まえて追尾するため、望遠鏡・可動ミラー・検出器の調整が重要になります。写真風の場面から通信速度や規格適合を判断することはできません。
図9 概念画像(ImageGen生成)。相手を捕まえて追尾するため、望遠鏡・可動ミラー・検出器の調整が重要になります。写真風の場面から通信速度や規格適合を判断することはできません。実際の製品・施設・測定結果・設計寸法ではありません。実物と拡大模型を区別してください。線・矢印・色は説明用です。
素材技術者の視点②:µrad の精度は、材料の「動かなさ」で決まる

第4章のとおり、向き合わせは µrad の精度が求められます。望遠鏡の筒、鏡、光学ベンチ(光学部品を載せる土台)が、温度の変化で少しでも伸び縮みしたり、ゆがんだりすれば、向きがずれます。宇宙では、日向と日陰の繰り返しで温度が大きく変わります(本シリーズ「宇宙機の熱制御」「宇宙環境と材料への影響」編)。このため、光学ベンチや鏡の材料の熱膨張、熱の伝わり方、軽さ、軌道上でのアウトガスや水分の放出による寸法の変化が、性能を決めます(解説)。本稿では、特定の材料の数値は一次資料で確認できなかったため、扱いません。

素材技術者の視点③:レーザーと検出器は「波長を決める結晶」と「ダメージの試験」

光リンクの波長(1,550 nm など)は、半導体の結晶の組成で決まります。インジウムリン系の半導体レーザーや、InGaAs の光検出器の原理は、本シリーズ「半導体レーザー」「光検出器」編で扱っています。宇宙用では、さらに放射線による劣化の試験が加わります。ESA の ESCC は、レーザーダイオードの評価試験の指針(ESCC 23201 Issue 2)と、レーザーダイオードの検証・ロット受入試験の指針(ESCC 23202 Issue 2)、変位損傷(粒子が結晶の原子を弾き出す損傷)の試験の指針(ESCC 22500 Issue 2)を公開しています 事実[参考資料16]。これらの本文は確認しておらず、題名と版のみです。

未確定の点:まだ確認できなかったこと

本稿では、①軌道上で光リンクが数年にわたり動き続けたときの部品の劣化データ、②光端末の望遠鏡・光学ベンチの材料と熱変形の具体的な数値、③光通信に特化した ECSS の文書、④CCSDS 橙本の実証の範囲、は一次資料で確認できませんでした。EDRS の通信速度(ビットレート)も、確認した ESA の公式ページには数値がなく、記載していません。総説としては Kaushal と Kaddoum(2017)があります 事実[参考資料15]。

9. 評価・標準の読み方

光リンクの「ものさし」は、速さの数字だけでは決まりません。①どの距離で、どれだけの光が届くか(受光強度、リンクの余裕)、②誤りがどれだけ少ないか(フレームの損失率、ビット誤り率)、③どれだけ早く光を合わせられるか(捕捉時間)、④他社の端末とつながるか(標準への適合)、⑤放射線で劣化しないか(部品の試験)、を組み合わせて読みます。

評価項目代表的な試験・評価手法(名称・出典)標準・指針読み方の注意
受光強度とリンクの余裕リンクの収支(リンクバジェット)の解析と試験。SDA は、受光面で25 µW/m²(5,500 km)以上、最大でも10 mW/m²、解析と試験でともに3 dB以上の余裕を要求 事実SDA OCT Standard v4.0.0(2024年6月28日)、v3.2.0[参考資料1・2]事実距離や口径の条件がない数字は比べられない。「余裕」は設計の仮定に依存
誤りの少なさフレーム損失率とビット誤り率。SDA は、25 µW/m² で損失率8×10⁻⁶(ビット誤り率10⁻⁹に相当)を要求 事実SDA OCT Standard v4.0.0[参考資料1]事実/CCSDS 142.0-B-2 非コヒーレント光通信の符号化と同期(2026年3月)、142.10-O-1(2023年10月)[参考資料3・4]事実大気を通る地上リンクは、天候で大きく変わり、再送(ARQ)を含めた遅延を見る
捕捉・追尾PAT の捕捉時間。SDA は100秒以下(低温・保温起動とも)。ESA の EDRS は、約55秒(静止〜低軌道、約45,000 km)と説明(標準の値ではなく実例)事実SDA OCT Standard v4.0.0[参考資料1]、ESA[参考資料5]事実標準の値と実例の説明は、条件が違う
物理層・符号の互換相互接続試験。SDA は別メーカーの端末の相互接続を標準の目的とする。CCSDS の橙本は実験的仕様 事実CCSDS 141.0-B-2(青、2026年3月)、141.10-O-1(橙、1550 nm、2022年6月)、141.11-O-1(橙、1064 nm、2018年12月)[参考資料3・4]事実CCSDS と SDA の標準は別の文書で、波長・方式が違う。どちらに準拠かを確認
部品の放射線・寿命総線量・変位損傷・単一事象の試験。ファイバー増幅器は地上の照射試験(Ma ら:50 krad、Zhai ら:10 kGy)事実ESCC 23201 Issue 2、23202 Issue 2、22500 Issue 2、22900 Issue 5、25100 Issue 2[参考資料16]事実標準の本文は確認していない(題名と版のみ)。地上試験と軌道上の寿命は別
ネットワークの運用端末の上位の網としての標準SDA NEBULA Standard v3.05(2024年11月)[参考資料2]事実本稿では本文を確認していない。暗号装置の要件を含むと SDA が説明
光周波数の国際的な割当—確認できなかった(光の周波数帯の国際的な割当の扱いは、本稿では確認していない)電波の周波数(ITU・FCC)の章は前の記事を参照

表の整理は本稿の計算(整理)。SDA の数値は OCT Standard v4.0.0 の本文、CCSDS の番号・題名・日付は CCSDS の一覧、ESCC の Issue は ESCC の一覧で確認しました(確認日 2026年10月17日)。ESCC・CCSDS の本文は確認していません。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • 地上試験・装置試験と軌道上の実績は別です:Suncatcher の800 Gbps は地上の装置、ファイバー増幅器の放射線試験は地上の照射試験です。軌道上で数年運用した結果ではありません。
  • 企業の発表と、標準の値は別です:Kepler の「SDA 互換」は企業の説明、SDA の数値は標準の要求です。標準の要求を満たすことと、実際の性能が高いことは同じではありません。
  • 標準は推奨か要求か、版はどれかを確認してください:CCSDS の青本は標準、橙本は実験的な仕様です。SDA の標準は SDA の網のための文書です。版(v3.2.0 と v4.0.0)、CCSDS の第2版(2026年3月)を確認してください。
  • 計画と達成は別です:Suncatcher の数十 Tbps や、Axiom の次の軌道上の実証は、確定した事実ではありません。

10. 用語集

衛星間リンク(ISL)
衛星どうしが直接つながる通信。
光衛星間リンク(OISL)
レーザー光で行う衛星間リンク。
ビーム
光や電波を一方向に絞った束。
口径
望遠鏡やアンテナの開口の直径。
回折
波が口径の端で広がる性質。ビームの広がりの下限を決める。
µrad(マイクロラジアン)
角度の単位。100万分の1ラジアン。1 µrad は1,000 km先で1 m。
dB(デシベル)
比を対数で表す単位。10 dB で10倍。
光子
光の最小の粒。
レーザー光源
単色で位相のそろった光を出す光源。
変調器
光の強さや位相を変えてデータを載せる部品。
光増幅器
光を光のまま強める部品。希土類を加えたファイバーなどを使う。
光検出器
光を電気信号に変える部品。
コヒーレント検波
光の位相まで読み取る受信方式。
OOK-NRZ
光の有無で0と1を表す最も単純な変調。
Gbaud
1秒あたり10億記号。
LDPC 符号
誤りを訂正する符号の一種。
ARQ
誤りがあったフレームを再送する仕組み。
PAT
向ける・捕捉する・追尾するの頭文字。光を相手に合わせる一連の動作。
高速可動ミラー
微小な振動を補正するために、鏡を高速で傾ける部品。
ジンバル
望遠鏡などの粗い向きを変える回転機構。
ジッター
機体の細かい揺れ。
放射線誘起減衰(RIA)
放射線でガラスに欠陥ができ、光が吸収されて弱まること。
CCSDS
宇宙データシステム諮問委員会。各国の宇宙機関の通信標準の組織。
青本・橙本
CCSDS の標準(青)と実験的な仕様(橙)。
SDA
米国宇宙軍の宇宙開発庁。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Space Development Agency (SDA) "Optical Communications Terminal Standard Version 4.0.0"(文書番号 9100-001-09、2024年6月28日。公開許可済み) — sda.mil/wp-content/uploads/2024/07/SDA_OCT_Standard_4.0.0_final-20240701.pdf
  2. Space Development Agency (SDA) "Resources"(OCT Standard v3.2.0 と v4.0.0、NEBULA Standard v3.05 の掲載ページ。確認日 2026年10月17日) — sda.mil/home/work-with-us/resources/
  3. CCSDS Blue Books 一覧:CCSDS 141.0-B-2 "Non-Coherent Optical Communications Physical Layer"、CCSDS 142.0-B-2 "Non-Coherent Optical Communications Coding and Synchronization"(ともに第2版、2026年3月) — ccsds.org/publications/bluebooks/
  4. CCSDS Orange Books(実験的仕様)一覧:CCSDS 141.10-O-1(1550 nm、2022年6月)、141.11-O-1(1064 nm、2018年12月)、142.10-O-1(2023年10月) — ccsds.org/publications/orangebooks/
  5. ESA "Laser communications"(EDRS の解説ページ) — esa.int/…/EDRS/Laser_communications
  6. ESA "Relay system speeds vital data flow with 75,000 links"(2023年6月12日) — esa.int/…/Relay_system_speeds_vital_data_flow_with_75_000_links
  7. ESA "Data-relay satellite beams at light speed"(EDRS-C の運用開始。2020年7月16日) — esa.int/…/Data-relay_satellite_beams_at_light_speed
  8. Riesing K. et al. (MIT Lincoln Laboratory, NASA) "Operations and Results from the 200 Gbps TBIRD Laser Communication Mission"(NASA Technical Reports Server、20230007959) — ntrs.nasa.gov/citations/20230007959
  9. Woodward J. et al. (NASA) "Insights and Observations From Operating A Laser Communication Terminal on the International Space Station (ISS)"(NTRS 20240011025。2024年8月) — ntrs.nasa.gov/citations/20240011025
  10. Israel D. et al. (NASA) "Completion of NASA's Two-Year Laser Communications Relay Demonstration (LCRD) Experiment Program"(NTRS 20240011470。2024年9月) — ntrs.nasa.gov/citations/20240011470
  11. Axiom Space "Axiom Space, Kepler Ready Orbital Computing for Quantum Era"(プレスリリース、2026年10月6日) — axiomspace.com/release/axiom-space-kepler-ready-orbital-computing-for-quantum-era
  12. Beals T. (Google Research) "Exploring a space-based, scalable AI infrastructure system design"(2025年11月4日) — research.google/blog
  13. Ma J. et al. "Experimental investigation of radiation effect on erbium-ytterbium co-doped fiber amplifier for space optical communication in low-dose radiation environment", Opt. Express 17, 15571 (2009) — opg.optica.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-17-18-15571
  14. Zhai Z. et al. "Radiation-resistant cerium co-doped erbium-doped fibers for C- and L-band amplifiers in a high-dose gamma-radiation environment", Opt. Express 31, 38910 (2023), DOI 10.1364/OE.502917 — doi.org/10.1364/OE.502917
  15. Kaushal H., Kaddoum G. "Optical Communication in Space: Challenges and Mitigation Techniques", IEEE Commun. Surveys Tuts. 19, 57-96 (2017)(総説), DOI 10.1109/COMST.2016.2603518 — doi.org/10.1109/COMST.2016.2603518
  16. ESCC (ESA) ESCC 発行済み仕様書の一覧(ESCC 22500 Issue 2、22900 Issue 5、23201 Issue 2、23202 Issue 2、25100 Issue 2) — escies.org/specification/listpubspecs
  17. NIST CODATA 2022 "Planck constant" — physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?h

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
SDA OCT Standard v4.0.0(2024年6月28日):波長1553.33・1536.61 nm、線幅5 GHz以下、中心周波数±2.5 GHz、送信出力2.5 W以上・最小40 mW以下、広がり15 µrad以上、25 µW/m²(5,500 km)、10 mW/m²以下、フレーム損失8×10⁻⁶(BER 10⁻⁹相当)、3 dB以上の余裕、PAT 100秒以下、追尾音40・50 kHz、OOK-NRZ・LDPC・ARQ、2.5 Gbaud、理論最大約2.2 Gbps、バースト方式 約49 Mbps(20,000 km)、衛星〜地上のフェードアウト、対象範囲SDA の標準の本文(公開許可済み)
出典1 https://www.sda.mil/wp-content/uploads/2024/07/SDA_OCT_Standard_4.0.0_final-20240701.pdf
事実
SDA:v3.2.0 は第3トランシェの標準とする意向、v4.0.0 は新しい長距離用波形を含む、NEBULA Standard v3.05(2024年11月)SDA の資料ページ
出典2 https://www.sda.mil/home/work-with-us/resources/
事実
CCSDS 141.0-B-2、142.0-B-2(第2版、2026年3月)、141.10-O-1(2022年6月)、141.11-O-1(2018年12月)、142.10-O-1(2023年10月)の番号・題名・日付・概要CCSDS の青本・橙本の一覧
出典3 https://ccsds.org/publications/bluebooks/
出典4 https://ccsds.org/publications/orangebooks/
事実
ESA EDRS:約45,000 km・直径135 mm・約55秒・相対速度約8 km/s、100分のうち約10分、接触時間を約4倍、7万5千本目のリンク(2023年6月12日)・4.5 PB超・ISS は2022年1月から、EDRS-C は2019年8月6日打ち上げ・2020年運用開始、光端末は Tesat-Spacecom と DLRESA の公式ページ
出典5 https://www.esa.int/Applications/Connectivity_and_Secure_Communications/EDRS/Laser_communications
出典6 https://www.esa.int/Applications/Connectivity_and_Secure_Communications/Relay_system_speeds_vital_data_flow_with_75_000_links
出典7 https://www.esa.int/Applications/Connectivity_and_Secure_Communications/Data-relay_satellite_beams_at_light_speed
事実
NASA TBIRD:6U キューブサット、2022年5月、200 Gbps、最大4.8 TB、約5分、コヒーレント送受信器と ARQ。LCRD・ILLUMA-T:最大1.2 Gbps、静止軌道112°W、ISS の日本実験棟、カリフォルニアとハワイ、LCRD の2年の実験は2024年6月完了、ILLUMA-T の試験は2023年12月開始NASA の技術報告(NTRS)
出典8 https://ntrs.nasa.gov/citations/20230007959
出典9 https://ntrs.nasa.gov/citations/20240011025
出典10 https://ntrs.nasa.gov/citations/20240011470
事実
Axiom/Kepler:2.5 Gbps、SDA Tranche 1 互換、初の商用の軌道上実証(企業の主張)、2026年10月6日Axiom Space のプレスリリース
出典11 https://www.axiomspace.com/release/axiom-space-kepler-ready-orbital-computing-for-quantum-era
事実
Suncatcher の装置試験:片方向800 Gbps(双方向計1.6 Tbps)、近接して飛ぶ衛星群で数十Tbps(構想)Google の公式ブログ
出典12 https://research.google/blog/exploring-a-space-based-scalable-ai-infrastructure-system-design/
未確定/将来
Ma ら(2009):Er-Yb 共添加ファイバー増幅器を50 krad・40 rad/sで照射、ピーク波長と半値幅は不変、劣化は「やや大きい」、1台の試料。Zhai ら(2023):Ce 共添加で RIA が1桁以上低い、最大10 kGy・1.8 kGy/h、41.6±2.9 dB査読論文
出典13 https://opg.optica.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-17-18-15571
出典14 https://doi.org/10.1364/OE.502917
事実
ESCC 23201・23202・22500・22900・25100 の番号・題名・Issue、総説(Kaushal と Kaddoum、2017)の存在ESCC の一覧、論文の書誌
出典16 https://escies.org/specification/listpubspecs?pubcode=1&family=1
出典15 https://doi.org/10.1109/COMST.2016.2603518
事実
光子1個のエネルギー(1.28×10⁻¹⁹ J)の計算に使うプランク定数NIST の CODATA
出典17 https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?h
事実
ビームの広がり(15.5 µrad、20 mrad)、距離ごとの幅、受光割合(−44 dB、−92 dB、差約48 dB・約6万6千倍)、受光パワー0.196 µW(−37 dBm)、光子毎秒約1.5×10¹²・1ビット約610個、2.5 Wを85 mに広げると438 µW/m²(約17.5倍)本稿の計算(Python。口径10 cm・波長1,550 nm、電波は口径0.5 m・30 GHz の仮定)本稿の計算
EDRS の通信速度、軌道上で数年運用した光端末の部品の劣化データ、光端末の望遠鏡・光学ベンチの材料と熱変形の数値、光通信に特化した ECSS 文書、CCSDS 橙本の実証の範囲本稿の調査範囲では確認できなかったため記載していない(解説)解説
「光は電波より細く絞れる」「向けることが難しさの中心」「標準がないと閉じた網になる」「µrad の精度は材料の動かなさで決まる」「ガラスの組成で放射線耐性を作る」という読み取り・説明公表内容にもとづく本記事の整理・解説解説

最終更新:2026年10月17日/出典は一次情報(SDA・CCSDS・ESA・NASA・ESCC・NIST の公式資料、査読論文、企業の公式発表)に限定しています。企業の発表は企業の主張として扱い、優劣は論じていません。数値の計算例は本稿の説明用で、実在の端末の設計値ではありません。軍事利用の詳細には立ち入っていません。EDRS の通信速度、軌道上で数年運用した部品の劣化データ、望遠鏡・光学ベンチの材料の数値、光通信に特化した ECSS 文書は、確認できなかったため記載していません。図は説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図9はAI画像の枠(画像は未設置)です。