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シンスペクティブ 企業解説

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COMPANY PROFILE / 宇宙産業

シンスペクティブ
― 小型SAR衛星「StriX」で、雲や夜でも地表を見るデータを売る。売上より先行投資と補助金が大きい成長期

Synspectiveは、雲を通して夜でも地表を観測できる小型SAR(合成開口レーダー)衛星を自社で作り、打ち上げ、撮った画像データと解析結果を売る東証グロース上場の会社です。 公式サイトの一覧では、2020年から2026年9月26日までにStriXを13回打ち上げています。 一方、有価証券報告書によれば、2025年12月期の売上の約9割は官公庁向けで、衛星の製造・打上げに先に大きなお金が出ていく段階です。 本稿は、この会社が宇宙で何を担い、何にお金を使い、どこまで実績があり、何がまだ計画かを、法定開示と公式発表で整理します。

構成:有価証券報告書(2026年3月26日提出)、2026年12月期 第2四半期決算短信(2026年8月14日)、公式サイトの打上げ一覧とプレスリリースを一次情報として使用/宇宙の事情は変化が速いため確認日を記載/最終更新 2026年10月17日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるSynspectiveと、宇宙産業での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 宇宙産業にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか
  9. 宇宙産業分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるシンスペクティブと、宇宙産業での立ち位置

正式名称株式会社Synspective英文名 Synspective Inc.(2018年2月設立)
本社東京都江東区三好三丁目10番3号。量産工場は神奈川県大和市
上場東証グロース 290A2024年12月に上場(有価証券報告書の沿革)
この分野での区分衛星・軌道上サービス
(SAR衛星データ)
ロケットではなく、観測衛星とそのデータを事業にする
主力衛星StriX(小型SAR衛星)100kg級。13機を打上げ済み(公式の一覧、2026年9月26日)
衛星運用機数の目標2026年末 10機
2028年以降 30機以上
会社の計画(有価証券報告書)。達成の事実ではない
主な売上先内閣府・防衛省2025年12月期の売上の85.3%(58.0%+27.3%)
打上げRocket Lab(13回)
H3・SpaceXも契約
打上げは外部に委託。自社ではロケットを作らない
まず押さえるべき1点:衛星を売る会社ではなく、衛星の「画像データと解析」を売る会社

Synspectiveが売るのは、衛星そのものではなく、自社の衛星が撮ったレーダー画像と、その解析結果です 事実。有価証券報告書は、事業を「データ販売」と「ソリューション提供」の2つに分け、当面の主力はデータ販売と書いています。

同じ報告書には、売上のうち官公庁向けが約9割(2024年12月期・2025年12月期)であること、2025年12月期までは赤字決算であることも明記されています 事実。つまり今は、「衛星の数が増えるほど売れる」ことを前提に、先にお金を使って衛星を増やしている段階です。本稿は、この「先に出ていくお金」と「入ってくるお金」の中身を分けて読みます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社名は 株式会社Synspective(Synspective Inc.)で、社名は英字のSで始まります。 子会社は、シンガポールの Synspective SG Pte. Ltd.、国内の株式会社Synspective Japan(衛星運用を担当)、米国の Synspective USA HD, Inc. と Synspective USA, Inc. の4社です(有価証券報告書)。 衛星の名前は「StriX(ストリクス)」で、公式の一覧には StriX-α、StriX-β、StriX-1 のほか「Fifth StriX」「Seventh StriX」のような号機名も並びます。

公式サイト:https://synspective.com/

ロゴは公式サイトのヘッダーで使われている画像(白地用)。取得日 2026年10月17日。

3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか

宇宙産業に関わる企業の4つの類型 同じ「宇宙の会社」でも、宇宙で担う役割で、強みと課題が違う 打ち上げ 探査・有人・月面 衛星・軌道上サービス 部品・システム ロケットで宇宙へ運ぶ 月や宇宙ステーションへ 軌道で働く・作る 宇宙機を支える SpaceX/Blue Origin Rocket Lab/Firefly Axiom Space/Intuitive Machines ispace/Astrobotic Astroscale/Varda Synspective/Starcloud Northrop Grumman/BAE Systems Microchip/Redwire 打ち上げ能力と再使用 月・ISSへの到達力 新しい用途と市場 実績と信頼性 失敗と日程の遅れ 資金と日程の不確実 実証が途上・収益化 認定と納期に時間 Synspectiveは「衛星・軌道上サービス・製造」の枠。観測衛星を自社で作り、データと解析を売る ロケットは外部に委託(Rocket Lab・SpaceX・三菱重工業)。先行投資が大きく、官公庁への依存度が高い
図1 宇宙産業に関わる企業の4類型と、Synspectiveの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。Synspectiveは、衛星を自社で設計・製造・運用する点で、この類型の中でも「垂直統合」に近い立場です。衛星の打上げと地上局の一部は外部委託です
「SAR」とは何か(やさしい説明)

普通のカメラ(光学衛星)は、太陽の光が地表で反射したものを撮るので、雲があると見えず、夜は暗いのが弱点です。SAR衛星は、衛星自身が電波(マイクロ波)を出して、地表から返ってきた波を受けるので、雲を通り、夜でも撮れます。StriXが使う電波は「X-band(波長約3cm)」で、波長が短いほど細かく見えるとされます(有価証券報告書)。

詳しい原理は、本シリーズの技術解説「衛星リモートセンシングとSAR」にあります。

4. 会社の規模

上場企業なので、有価証券報告書で規模を確認できます。会社は衛星データ事業の単一セグメントで、宇宙以外の事業はありません 事実。

指標(連結・千円)2023年12月期2024年12月期2025年12月期
売上高1,386,2832,316,6492,376,506
経常損失△1,951,232△3,594,948△1,074,946
親会社株主に帰属する当期純損失△1,520,458△3,592,954△371,162
純資産7,870,63819,872,94138,793,398
総資産11,314,94328,195,33649,373,645
2025年12月期の補足金額・人数区分
補助金収入3,764,376千円(営業外収益)事実
総収入(売上高+補助金収入。会社の経営指標)6,140,883千円(前期比144.8%増)事実(会社の指標)
営業損失4,137,638千円事実
従業員(連結)228名(臨時8名を別に記載)。前期比36名増事実
所在地ごとの人数本社(東京都江東区)174名、大和工場(神奈川県)45名(提出会社、2025年12月31日)事実
ここで注意

「総収入」は、会社が経営指標に使っている売上高と補助金収入の合計で、会計上の売上高ではありません(決算短信は「Non-GAAP指標」と表記)。2025年12月期の補助金収入は総収入の約61%(3,764,376÷6,140,883)です 本稿の計算。売上高そのものは前期比2.6%増にとどまっています。

有価証券報告書には、調査会社のSAR市場規模の推計(Global Market Insights、Euroconsultなど)の引用がありますが、本稿は調査会社の市場推計を採用しません。

5. 宇宙産業にかけているリソース

4点(人・金・外部への出資や買収・公的機関との契約)と、機体・ミッションの状況を、一次情報で確認できた範囲で示します。「記載なし」も成果として書きます。

リソースの種類内容区分
人連結228名(2025年12月31日)。拠点は東京本社、神奈川県の大和工場、シンガポール、米国(2025年3月設立)。欧州の子会社設立を2026年2月に決定したと有価証券報告書にある事実
金:研究開発費1,224,219千円(2025年12月期)事実
金:設備投資11,620,077千円(同期)。主に観測衛星と部品、衛星製造設備事実
金:資金調達(2025年)第三者割当(上場時のオーバーアロットメント)1,418,846千円、新株予約権の行使12,527,980千円、ヒューリックへの第三者割当4,509,468千円、シンジケートローン8,100,000千円(2025年2月契約)。沿革は、新株予約権の行使とヒューリックへの割当で総額170.3億円と記載事実
金:資金調達(2026年)2026年9月17日に総額200億円のシンジケートローン(5年3か月、無担保、財務制限条項つき)の締結を決議。契約日は同年9月18日予定事実
外部への出資・買収・合弁・事業売却他社への出資・買収の記載は有価証券報告書の関係会社欄になく、確認できなかった(連結子会社4社は、いずれも自社が設立した会社)確認できず
公的機関との契約・連携(契約額の区別は下表)内閣府、防衛省関連(三菱電機・トライサット・コンステレーション経由)、JAXAの宇宙戦略基金、経済産業省・国土交通省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)事実
打上げ契約Rocket Labとは計47回(うち未打上げ34回)。SpaceXのライドシェアは2025年末時点で5機分。三菱重工業のH3で2機(2027年)事実

公的資金・契約の区別(契約額の種類を分けて読む)

案件金額金額の種類期間・状態
防衛省「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」関連の画像データ取得業務委託(トライサット・コンステレーション及び三菱電機との契約)96,073,447千円(税抜)契約金額(確定した契約額)2026年2月19日〜2031年3月31日。支払済み額は開示なし
同事業全体の予算2,832億円事業全体の予算(他6社を含む。Synspective分ではない)2026年2月に事業契約。当社の取り分は上の契約金額
JAXA 宇宙戦略基金「商業衛星コンステレーション構築加速化」237.9億円支援予定の上限額うち約164億円が交付決定済み(有価証券報告書の2か所で164.4億円と16,464,008,666円と記載され、数字が少し異なる)
経済産業省 中小企業イノベーション創出推進事業4,100,000千円交付決定額補助事業。支払済みの額は開示なし
内閣府「令和7年度 小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」1,067,166千円落札金額2025年4月〜2026年3月
2025年12月期末の受注残高24,960,649千円受注残(補助金の採択分を含めて会社が算出)うち補助金が大きい(会社の定義)

主要な機体・ミッションの状況(確認日 2026年10月17日)

機体・計画種別主要な諸元(会社公称)実績・状況段階/日付出典
StriX(小型SAR衛星)観測衛星100kg級。展開すると5mの展開型スロットアレーアンテナ(1kW級アンプ)。X-band。撮像は分解能0.25m(ステアリングスポットライト)、約1,400平方キロメートルの撮像域(ストリップマップ)。設計寿命は5年程度とリスク欄にある打上げは13回(2020年12月15日〜2026年9月26日、いずれもRocket LabのElectron)。最初の実証機2機(StriX-α・StriX-β)と量産実証機(StriX-1)は商用運用を終了(2026年3月時点)運用(13回打上げ済み)出典1・3・5
11〜13号機(2026年9月に連続3機)観測衛星打上げ後は「数か月かけて撮像能力の試験と調整を行ってから運用に入る」と公式発表2026年9月2日・19日・26日に打上げ。各機の運用開始日は、最新の公式資料では確認できなかった試験・調整中出典3・4・5
量産体制工場大和工場(賃借面積8,594.52平方メートル)。2026年12月期に年産12機まで拡大できる見込み(会社)2024年9月から稼働。製造開始から完成まで約2年かかると会社が説明稼働中/拡大は計画出典1
第3世代StriX次世代機「より多くの撮像キャパシティを持つ第3世代が主力になる予定」(会社)仕様の数値は確認できなかった開発中出典1
素材技術者の視点:小型衛星に「大きなアンテナ」を載せる工夫

SARは、アンテナが大きいほど細かく見え、電波を出す電力が大きいほど遠くの弱い反射も拾えます。ところが衛星は軽く小さくしないと打上げ費用が上がります。StriXは、折りたたんで打ち上げ、軌道で5mに広げる「展開型スロットアレーアンテナ」と、1kW級の高出力アンプ、そのぶん増える熱を逃がす熱制御で、約3トンの大型SAR衛星と同等の撮像能力を、重さ約10分の1で実現したと会社は説明しています 事実(会社の比較。比較対象はJAXAのALOS-4)。

素材の面では、アンテナパネルがJAXAとのライセンス契約(特許・ノウハウ、2022年10月〜2027年3月)の対象で、東京科学大学からも特許のライセンスを受けています。衛星の組立は、セーレン株式会社(2021年に量産を目的とした提携)と東京計器株式会社(2022年に同)が担います。アンテナパネルの具体的な材料(CFRPかどうか等)は、有価証券報告書に記載がないため、本稿は書きません。構造・熱の基礎は、技術解説「人工衛星の構造と小型衛星」「宇宙機の熱制御」「宇宙用CFRPと複合材料」を参照してください。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2018年2月東京都千代田区に設立。内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の小型SAR衛星の成果を社会実装することが出発点官民の研究成果を事業化した会社
2020年12月15日実証初号機StriX-αを打上げ(Rocket Lab Electron)。2021年2月に初画像を取得会社は「民間で日本初」と説明(会社の主張)
2022年3月・9月StriX-β、StriX-1を打上げ。2022年4月、内閣府の実証事業の採択事業者に決定3機目まで。以後、量産へ
2024年3月〜12月StriX-3(3月)、Fifth(8月)、Sixth(12月22日)を打上げ。2024年7月に分解能25cmの画像を取得(会社は「日本最高分解能」と説明)。9月に大和の量産工場が稼働。11月に宇宙戦略基金に採択。12月に東証グロースへ上場量産・上場・公的資金の3つが同じ年に重なる
2025年3月米国に持株会社と事業会社を設立(北米・中南米向け)海外拠点の拡大
2025年10月15日Seventh StriXを打上げ(2025年12月期末で累計7機)年1機ペースからの転換点
2025年12月新株予約権の行使とヒューリックへの第三者割当で、総額170.3億円を調達(会社の記載)打上げ・製造の先行資金
2026年2月19日トライサット・コンステレーション及び三菱電機と、防衛省事業に伴う画像データ取得の業務委託契約を締結(契約金額96,073,447千円・税抜)受注残と売上の見通しを大きく変えた契約
2026年3月〜9月第8号機(3月20日)、第9号機(5月22日)、第10号機(6月27日)、第11号機(9月2日)、第12号機(9月19日)、第13号機(9月26日)を打上げ半年で6機。公式の一覧
2026年8月14日第2四半期決算短信。宇宙戦略基金の第二期「次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術」にも採択と記載公的資金の2本目
2026年8月28日〜10月1日NTTドコモ・NTTデータと災害時の衛星画像利用の協定(8月28日)、OMNIAプログラムの発表(9月15日)、200億円のシンジケートローン決議(9月17日)、三菱重工業とH3の打上げ契約(9月18日)、Rocket Labと20回の打上げ契約(10月1日)打上げ手段・資金・サービス形態の3方向が同時に動いた
StriXの打上げ累計(実績)と、会社が示す運用機数(計画) 左は公式の打上げ一覧、右は有価証券報告書の計画。数え方が違う(右は運用を終えた3機を除く) 打上げ累計(実績) 運用機数の計画(会社) 1 3 6 7 13 2020年末 2022年末 2024年末 2025年末 2026年9月 10 約21 30以上 2026年末 2027年末 2028年以降
図解 StriXの打上げ累計(青、実績)と、会社が示す軌道上の運用機数の計画(橙の破線、未確定)。左は公式の打上げ一覧(2020年12月から2026年9月26日)、右は有価証券報告書(2026年3月26日提出)の計画「2026年末に10機、2027年末に21機前後、2028年以降に30機以上」。計画は打上げ数の予定ではなく、運用中の機数で、打上げの実績・事故・運用終了で変わります 未確定/将来。

7. 今後の計画

軌道上の運用機数2026年末 10機
2027年末 約21機
有価証券報告書(2026年3月)の計画。2028年以降は30機以上
打上げ手段H3(2027年・2機)
Electron(2028〜2031年・20回)
2026年9月18日・10月1日の発表。日程は打上げ側の事情で変わる
量産年産12機まで2026年12月期の見込み(会社)。26〜38号機に262.86億円の投資予定
2026年12月期の業績予想総収入 16,052百万円
売上高 6,353百万円
会社予想(2026年8月14日の決算短信で変更なし)

上の4項目はいずれも会社の計画・予想で、達成された事実ではありません 未確定/将来。会社は、実際の製造機数・打上げ数・時期は、顧客の需要、打上げ事業者の都合、天候などで変わると明記しています。

新しい方向:OMNIAと「解析結果を1時間以内に届ける」目標

2026年9月15日に発表されたSynspective OMNIAは、衛星コンステレーションの撮像能力を複数の利用者で共有するプログラムです 事実。利用者は、特定の地域・軌道の経路について優先的に撮像・取得できる権利を、大きな投資なしに確保できるとされています。発表は、StriXの30機超の星座とは別に専用の新しいコンステレーションを作るとも述べますが、機数・時期・価格は書かれていません 未確定/将来。

有価証券報告書は、2028年以降に30機以上と衛星間通信などの追加機能、自動解析をそろえ、撮像から1時間以内に解析結果を届けることを目指すと書いています(会社の目標)。

確認できなかったこと

次は、本稿が確認した範囲の一次資料に記載がありません 未確定/将来。

11〜13号機の運用開始日/第3世代StriXの諸元/OMNIAの専用星座の機数・時期/防衛省関連契約の支払済み額/公式の号機名にStriX-2と第4号機の記載がない理由。調査会社の市場規模などの外部推計は採用しません。

8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
衛星を増やし、データ販売で収益を積み、ソリューションで高収益化する3段階を描いている有価証券報告書の成長戦略(短期:日本政府向け、中期:海外政府と30機体制、長期:民間向けソリューション)事実(会社の戦略)
当面の売上は、少数の官公庁の契約条件に大きく左右される売上の85.3%が内閣府と防衛省(2025年12月期)。官公庁向けは約9割とリスク欄にも記載推測
衛星が増えても、売上が追いつくまでに時間差がある2025年12月期は設備投資116億円に対し、売上高は2.6%増。製造開始から完成まで約2年、打上げ後も数か月の調整が入る推測
2026年12月期の総収入は、補助金が大きな部分を占める見込み総収入の予想16,052百万円と売上高の予想6,353百万円の差9,699百万円(会社は総収入を売上高+補助金収入と定義)。割合は約60%本稿の計算
打上げを複数の事業者に分散する方向Rocket Lab(47契約)に加え、SpaceX、三菱重工業のH3。有価証券報告書は「複数のロケット事業者による打上げの検討」と記載推測
推測の根拠を1つだけ詳しく:「売上の伸び」と「衛星の数」は同じ速度で進まない

2025年に、Synspectiveは設備投資に11,620,077千円を使い、年末の打上げ累計は7機になりました 事実。ところが2025年12月期の売上高は2,376,506千円で、前期比2.6%の増加です。売上の中身は、内閣府の実証事業の納入と防衛省の宇宙実証の納入などで、衛星データの継続販売が積み上がる形ではないと有価証券報告書の説明からは読めます。

一方、2026年2月の防衛省関連の契約(96,073,447千円・2031年3月まで)は、衛星が増えたあとの継続的な売上の土台になります。会社の予想は、2026年12月期の売上高を6,353百万円とするもので、衛星の追加が売上に変わるのは2026年以降と読むのが自然だと本稿は考えます 未確定/将来。

9. 宇宙産業分野の提携マッピング

Synspectiveを中心とした提携関係 有価証券報告書と公式発表に記載のある関係のみ(確認日 2026年10月17日) 契約・補助・ライセンス 製造・打上げの供給元 契約済み・未実施(点線) Synspective SAR衛星 三菱電機・トライサット 防衛省事業の画像取得を受託 内閣府 小型SAR衛星の実証事業を受注 JAXA 宇宙戦略基金・特許ライセンス Rocket Lab Electronで13回打上げ 三菱重工業 H3で2機を2027年に打上げ予定 セーレン・東京計器 衛星の組立(量産提携) SpaceX(Exolaunch経由):ライドシェア打上げ契約 2025年末時点で5機分が未打上げ
図2 Synspectiveを中心とした提携関係。出典:有価証券報告書、公式のプレスリリース。図に含めたのは記載がある関係だけで、報道で語られる関係は含めていません。NTTドコモ・NTTデータ(災害時の画像利用の協定、2026年8月)など民間の連携は、規模が分かる記載がないため図には入れていません。防衛省へのデータ販売は、覚書により三菱電機のみが行うとされています(有価証券報告書の注記)。

10. 提供している技術・製品・サービス

有価証券報告書は、サービスをデータ販売とソリューション提供の2つに分けています。

サービス内容(会社の説明)区分
データ販売(StriX)自社衛星のSAR画像を、購入枚数の契約で販売。利用者はWeb上のプラットフォームで興味地域を指定し、取得後に同じプラットフォームで受け取る。撮像モードは3種類(ストリップマップ、スライディングスポットライト、ステアリングスポットライト)事実
物体検知・分類SAR画像の自動解析で、船舶・航空機の位置や種類を把握するソリューション事実
地盤変動モニタリング衛星データから数mm単位の地表の動きを時系列で検出するInSAR解析事実
洪水被害分析・災害被害浸水域や被害道路・建物を、悪天候下でも自動解析して特定事実
その他森林の状況(林相・バイオマス)、洋上風力発電所付近の風況など事実
Synspective OMNIA(2026年9月15日発表)撮像能力を複数の利用者で共有。専用の新コンステレーションを建設する計画計画
素材技術者の視点:打上げ後に「試験と調整の期間」が要る理由

公式発表は、打上げ後に「テストと調整(testing and commissioning)」を数か月かけてから運用に入ると書いています 事実。SARは、折りたたんで打ち上げた大型アンテナを軌道で広げ、広げたあとの形(平面度や向き)が画像の質を左右するため、試験が必要です。

有価証券報告書には、衛星が製造上の不具合、宇宙ごみとの衝突、運用上の不具合などで機能を失う可能性があること、その対策として毎年複数機を打ち上げて1機への依存を下げることが書かれています。素材と製造の品質が、運用の継続性に直結する事業です。

衛星の製造・運用と、観測データを地上の用途へつなぐ仕事を分けています。地図は説明用で実測成果ではありません。
図3 概念画像(ImageGen生成)。衛星の製造・運用と、観測データを地上の用途へつなぐ仕事を分けています。地図は説明用で実測成果ではありません。実際の製品・施設・測定結果・設計寸法ではありません。実物と拡大模型を区別してください。線・矢印・色は説明用です。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
官公庁への依存官公庁向けが連結売上高の約9割(2024年12月期・2025年12月期)。入札条件の変更などで継続できない場合、事業に重要な影響があると会社が記載事実
先行投資と赤字2025年12月期まで赤字。今後一定期間は、黒字化よりも売上高の成長を重視する方針と記載事実
継続企業の前提に関する記載連結決算の注記に、継続的な営業損失から「重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在する」と記載がある。一方で、現金16,209,788千円(2026年6月末)、借入枠、防衛省関連の契約、補助金収入を踏まえ、会社は「重要な不確実性は認められない」と判断している事実(会社の判断)
資金の確保製造・打上げの支払いは売上に先行する。借入には財務制限条項(純資産を1円以上に保つ、現預金と将来予定収入から有利子負債を引いた値を0円未満にしない等)がある事実
打上げの機会と失敗新興ロケットの遅れなどで打上げ機会が逼迫。打上げ失敗に備えた保険(点火から衛星の分離まで)に加入しているが、分離後の不具合は対象外事実
衛星の運用設計寿命は5年程度。部品の不具合や衝突などで機能を失う可能性がある事実
量産体制従来は年1〜2機の製造。年産12機規模へ拡大中で、採用・教育・協力企業との連携が課題と会社が記載事実
法規制への対応衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律、電波法への対応に多くの工数・時間がかかると記載事実
補助金への依存度2025年12月期の総収入の約61%が補助金収入(本稿の計算)。2026年12月期の予想も約60%本稿の計算

12. 用語集

SAR(合成開口レーダー)
衛星から電波を出し、地表から返る波で画像をつくる技術。雲や夜でも撮れる。
X-band
SAR衛星が使う電波の帯域のひとつ(波長約3cm)。波長が短いほど細かく見える。
コンステレーション
多数の衛星を連携させて一体で運用する仕組み。「星座」の意味。同じ場所を撮る頻度が上がる。
InSAR(干渉SAR)
同じ場所を2回撮って波の位相の差を取り、数mm単位の地表の動きを調べる解析。
分解能
画像で見分けられる最小の大きさ。0.25mなら25cmの物を区別できるという意味。
宇宙戦略基金
JAXAに置かれた、10年で1兆円規模の民間の宇宙技術開発の支援基金。
総収入
会社が経営指標に使う、売上高と補助金収入の合計。会計上の売上高ではない。
継続企業の前提
会社が事業を続けられる前提で決算を作る考え方。疑義があれば注記が必要。
ライドシェア
1台のロケットに複数の会社の衛星を相乗りさせて打ち上げる方式。
有価証券報告書
日本の上場企業が毎年提出する、監査を受けた年次報告書(EDINETで公開)。

13. 出典

  1. Synspective 有価証券報告書 第8期(2025年1月1日〜12月31日)。EDINET提出、2026年3月26日。事業の内容・経営方針・リスク・従業員・設備・研究開発・重要な契約・後発事象(防衛省関連契約の金額)。 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
  2. Synspective 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)。2026年8月14日、東証TDnet。中間期の業績、通期予想、継続企業の前提に関する記載、宇宙戦略基金の採択。 https://www2.jpx.co.jp/disc/290A0/140120260813519868.pdf
  3. Synspective 公式サイト「Launch Mission」。StriXの打上げ一覧(日付・ロケット)。確認日 2026年10月17日。 https://synspective.com/satellite/launch-mission/
  4. Synspective プレスリリース「11th SAR Satellite Successfully Reaches Target Orbit」(2026年9月2日)。打上げ日時・場所、打上げ後の試験と調整の説明。 https://synspective.com/news/11th_launch/
  5. Synspective プレスリリース「13th SAR Satellite Successfully Reaches Target Orbit」(2026年9月26日)。13機目の打上げ。 https://synspective.com/news/13th_launch/
  6. Synspective プレスリリース「Signs 20-Launch Agreement with Rocket Lab」(2026年10月1日)。2028〜2031年の20回、Rocket Labとの打上げ契約は計47、未打上げ34。 https://synspective.com/news/rocketlab_20_mla/
  7. Synspective プレスリリース「Signs Launch Service Agreement with Mitsubishi Heavy Industries」(2026年9月18日)。H3での2機の打上げ契約(2027年、宇宙戦略基金の枠)。 https://synspective.com/news/mhi_lsa/
  8. Synspective プレスリリース「Announces Synspective OMNIA」(2026年9月15日)。小型SAR衛星の撮像能力を複数の利用者で共有する新プログラム。 https://synspective.com/news/synspective_omnia/
  9. Synspective プレスリリース「Signs Agreement on the Use of Satellite Imagery During Disasters with NTT DOCOMO and NTT DATA」(2026年8月28日)。 https://synspective.com/news/docomo_nttdata_partnership/
  10. Synspective 適時開示「Notice Regarding Conclusion of a Syndicated Loan Subject to Financial Covenants and the Recognition of Non-Operating Expenses」(2026年9月17日)。借入総額200億円・財務制限条項。 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04951/932d829d/d650/4e19/835d/9c1fbf6432f2/140120260917538168.pdf
  11. Synspective 公式サイト(英語トップ)。会社の概要・ロゴの取得元。確認日 2026年10月17日。 https://synspective.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称・本社所在地・上場市場・設立(2018年2月)・子会社4社事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
売上高・経常損失・純損失・純資産・総資産(2023〜2025年12月期)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
補助金収入3,764,376千円、総収入6,140,883千円、営業損失、従業員228名、拠点別人数事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
研究開発費1,224,219千円、設備投資11,620,077千円、資金調達の内訳(2025年)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
防衛省関連の業務委託契約:契約金額96,073,447千円(税抜)、2026年2月19日〜2031年3月31日事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
防衛省事業の予算2,832億円(事業全体)、宇宙戦略基金の上限237.9億円・交付決定約164億円、経産省SBIR 4,100,000千円、内閣府1,067,166千円、受注残24,960,649千円事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
内閣府58.0%・防衛省27.3%の売上割合(2025年12月期)、官公庁向けが約9割事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
StriXの諸元(100kg級、5m展開アンテナ、0.25m、1,400平方キロメートル、年産12機の見込み、設計寿命5年程度)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
StriXの打上げ13回(日付・ロケット)、運用を終えた実証機3機事実出典3・1 https://synspective.com/satellite/launch-mission/ https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
第11号機の打上げ(2026年9月2日12:01 UTC、打上げ後の試験・調整の説明)事実出典4 https://synspective.com/news/11th_launch/
第13号機の打上げ(2026年9月26日00:39 UTC)事実出典5 https://synspective.com/news/13th_launch/
Rocket Labとの20回契約(2028〜2031年)、計47契約・未打上げ34事実出典6 https://synspective.com/news/rocketlab_20_mla/
三菱重工業のH3での2機の打上げ契約(2027年、宇宙戦略基金の枠)事実出典7 https://synspective.com/news/mhi_lsa/
OMNIAプログラム(2026年9月15日)事実出典8 https://synspective.com/news/synspective_omnia/
NTTドコモ・NTTデータとの災害時の衛星画像利用協定(2026年8月28日)事実出典9 https://synspective.com/news/docomo_nttdata_partnership/
200億円のシンジケートローン(2026年9月17日決議)と財務制限条項事実出典10 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS04951/932d829d/d650/4e19/835d/9c1fbf6432f2/140120260917538168.pdf
2026年12月期予想(総収入16,052百万円、売上高6,353百万円)、中間期の業績、現金16,209,788千円、継続企業の前提に関する会社の判断、宇宙戦略基金第二期の採択事実出典2 https://www2.jpx.co.jp/disc/290A0/140120260813519868.pdf
軌道上の運用機数の計画(2026年末10機、2027年末21機前後、2028年以降30機以上)未確定/将来出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100XUO9.pdf
補助金収入が総収入の約61%(2025年12月期)、予想の差9,699百万円(約60%)本稿の計算本稿による計算(3,764,376÷6,140,883、(16,052−6,353)÷16,052)。総収入は売上高+補助金収入という会社の定義
内閣府と防衛省の売上割合の合計85.3%本稿の計算本稿による計算(58.0%+27.3%)
宇宙産業の企業4類型の区分とSynspectiveの位置本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
11〜13号機の運用開始日、第3世代StriXの諸元、OMNIA専用星座の機数・時期、防衛省契約の支払済み額未確定/将来確認できなかった。本稿では推計・外部の数字を採用しない
当面の売上は少数の官公庁の契約条件に大きく左右されるという読み推測売上割合の高さからの本稿の解釈
衛星の増加と売上の増加に時間差があるという読み、打上げを複数の事業者に分散する方向という読み推測設備投資と売上の対比、打上げ契約の構成からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月17日/Troy Technical
本稿の数値は、Synspectiveの法定開示(有価証券報告書、決算短信、適時開示)と公式サイト・プレスリリースに基づきます。調査会社の市場推計、報道ベースの数値、株価・企業評価額は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。計画・予想・日程は変わることがあります。