COMPANY PROFILE / 宇宙産業
SpaceX
― 再使用ロケットで打ち上げ回数を押し上げ、2026年に上場。Starshipは初の周回軌道飛行に進んだ
SpaceXは、ロケットの第1段を地上や海上に着陸させて何度も飛ばす(再使用する)ことで、打ち上げの回数を大きく増やした会社です。 2026年6月にはNasdaqへ上場し、米SECへの提出書類(目論見書と四半期報告書)で事業の中身を公開しました。 会社の記載では2025年にFalcon 9を165回打ち上げ、最新の大型ロケットStarshipは2026年9月28日の第14回飛行試験で、同社として初めて地球を周回する軌道に入りました。 本稿は宇宙の事業(ロケット・宇宙船・Starlink衛星)に絞り、何を打ち上げ、どこに投資し、誰と組み、何が未確定かを、会社の提出書類・当局の公開資料の範囲で整理します。 この分野は変化が速いので、機体やミッションの状況には確認日(2026年10月17日)を付けています。
- 30秒でわかるSpaceXと、宇宙産業での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(宇宙事業に絞る)
- 宇宙産業にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は宇宙産業で何を目指しているか
- 宇宙産業分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるSpaceXと、宇宙産業での立ち位置
衛星網(従)有人・月面(Dragon、月着陸機)にも関わる。区分は本稿による
SpaceXの打ち上げの多くは、外部の顧客のためではなく、自社の衛星網Starlinkのためです。10-Qによれば、2026年1〜6月のFalcon打ち上げ77回のうち、顧客の荷物を主目的とした「顧客打ち上げ」は17回、残り60回は自社の打ち上げ(主にStarlink衛星)でした 事実。顧客打ち上げは全体の約22%にあたります 本稿の計算。さらに10-Qは、Starshipのこれまでの打ち上げはすべて自社向けに分類されていると書いています。つまりSpaceXは、「ロケットを売る会社」であると同時に、「自社のロケットで自社の衛星サービスを増やす会社」です。宇宙産業の他の打ち上げ会社と比べるときは、この点を押さえておくと読み違えません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Space Exploration Technologies Corp. で、通称が SpaceX です。 2026年2月にAI企業のxAI(および同社傘下のX)を子会社として取り込んだため、現在のSpaceXの提出書類には宇宙(Space)・通信(Connectivity)・AIの3つの事業区分があります。 本稿は宇宙(ロケット・Dragon・Starship)と、Starlink衛星の打ち上げ・運用に絞り、AI事業は扱いません。 また「Starbase」は同社の本社の所在地であり、同社が開発するStarshipの発射場の名前でもあります。
公式サイト:https://www.spacex.com/3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模(宇宙事業に絞る)
SpaceXの売上は、会社全体ではStarlinkの通信とAIの事業が大きくなっています。ここでは宇宙(Space)事業の数字を中心に示します。金額は百万US$、2025年は目論見書、2026年は10-Qの記載です 事実。
| 指標(百万US$) | 2025年 | 2026年4〜6月 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|
| 会社全体の売上 | 18,674 | 7,814 | 12,508 |
| Space事業の売上 | 4,086 | 962 | 1,581 |
| Space事業の営業損益 | △657 | △542 | △1,204 |
| Space事業の設備投資 | 3,832 | 1,174 | 2,226 |
会社全体の売上はxAIとXを含みます。Space事業の売上は顧客の打ち上げと政府の開発契約だけで、自社のStarlink衛星の打ち上げは含まれません(社内取引として売上計上しないと10-Qに記載)。
Space事業の売上は、2026年1〜6月で会社全体の約12.6%です 本稿の計算。営業損益が赤字なのは、次世代ロケットStarshipの研究開発費が大きいためで、会社は目論見書で「2025年にStarshipの開発へ30億4百万US$の研究開発費を投じた」と説明しています 事実。
打ち上げの規模を、会社が示す指標で比べます。「軌道への投入質量」は、成功した打ち上げ・飛行試験で軌道に届けた質量の合計です(失敗や延期を除く。Starlink衛星・顧客の荷物・開発用の貨物を含む)。
| 指標 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| 打ち上げ回数(全ロケット) | 98 | 138 | 170 | 78(Falcon 77、Starship 1) |
| 軌道への投入質量(トン) | 1,210 | 1,699 | 2,213 | 1,041 |
出典:目論見書(2023〜2025年)と10-Q(2026年)。2026年1〜6月は、2025年1〜6月(打ち上げ84回、1,102トン)と比べて回数が少なく、質量はほぼ同じ水準です。回数・質量には自社のStarlink衛星の打ち上げが含まれます。
従業員は、2026年3月31日時点で2万2千人超(全社の人数)と目論見書に記載されています 事実。宇宙事業だけの人員数は確認できませんでした。
5. 宇宙産業にかけているリソース
4点(人・金・外部への出資や買収・公的機関との契約)について、提出書類と公的資料で確認できたかを表にします。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 2026年3月31日時点で2万2千人超(全社。事業別の内訳は確認できなかった)。Starbaseには数百人の従業員とその家族が移り住んで暮らしていると記載。宇宙事業だけの人員数は確認できなかった | 事実 |
| 金:研究開発費 | Space事業の研究開発費は2026年1〜6月に20.06億US$(前年同期は12.19億US$)。主にStarshipの開発。2025年のStarshipへの研究開発費は30.04億US$(会社の説明) | 事実 |
| 金:設備投資 | Space事業の設備投資は2025年に38.32億US$、2026年1〜6月に22.26億US$。発射場・Starshipの量産設備・推進剤の製造設備などに投じると目論見書が説明 | 事実 |
| 金:資金調達 | 2026年6月のIPOで、手数料と費用を引いた手取りは856.75億US$(会社全体の資金。宇宙以外にも使われる) | 事実 |
| 外部への出資・買収 | 2026年2月2日にxAIを子会社化。5〜8月にはAI関連企業の買収も記載されているが、宇宙産業の範囲外のため本稿では扱わない。宇宙事業に限った出資・売却は確認できなかった | 事実 |
| 公的機関との契約:NASA | 商業補給(CRS)・商業クルー・月着陸システム(HLS)。HLSの契約は上限(潜在価値)で約43億US$(2021年7月に約30億US$、2022年11月に約10億US$)。NASA監察総監室の報告書は、この契約の価値が当初から約6%(約2億5千万US$)増えたと記載 | 事実 |
| 公的機関との契約:その他 | 米政府(NASA、国防総省、GSA、情報機関)と直接契約があると記載。2025年は国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)の中・大型12件のうち11件、NASAの有人・貨物ミッション5件すべてを打ち上げたと会社が記載。契約の個別の金額は確認できなかった | 事実 |
| 大学・研究機関との連携 | 宇宙事業に関する大学との共同研究は、確認した書類に記載なし | 確認できなかった |
主要な機体・ミッションの状況を、会社と当局の資料で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月17日)。性能値は会社の公称で、条件が違う機体どうしの優劣は比べません。
| 機体・船 | 種別と主な諸元(会社の公称) | 実績・段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Falcon 9 | 2段式の再使用ロケット。低軌道へ約23トン(第1段も使い捨てにした場合)、静止トランスファー軌道へ約8トン | 約620回の打ち上げ、成功率99%超(会社の記載)。第1段を34回再飛行。運用中 | 2026年3月31日時点 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026042639/spaceexplorationtechnologi.htm |
| Falcon Heavy | Falcon 9の第1段3本を束ねた超大型。低軌道へ約64トン、静止トランスファー軌道へ約27トン | 11回、すべて荷物の投入に成功(会社の記載)。運用中 | 2026年3月31日時点 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026042639/spaceexplorationtechnologi.htm |
| Dragon(貨物・有人) | 貨物型は打ち上げ時最大6,000kg・帰還時3,000kg。有人型は最大7人。Falcon 9で打ち上げ | 2020年以降に78人の宇宙飛行士を運んだ。ISSへ50回超。貨物ミッションは30回超。運用中 | 2026年3月31日時点 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026042639/spaceexplorationtechnologi.htm |
| Starship | 2段式の完全再使用を目指す超大型。全高124m。ブースター33基+上段6基のRaptorエンジン。ペイロードは100トン超を設計目標 | 2026年9月28日の第14回で初の周回軌道飛行、Starlink V3衛星26機を展開(会社説明)。飛行試験中 | 2026年9月28日 | 出典6・8 https://www.spacex.com/vehicles/starship https://www.spacex.com/launches/starship-flight-14 |
| Starship 月着陸機(HLS) | NASAのアルテミス計画で宇宙飛行士を月面へ運ぶ着陸機 | 開発中。NASA監察総監室は2026年3月、2027年6月の月面着陸には間に合わないとし、NASAは2028年の着陸を目指して提案を評価中と記載 | 2026年3月10日 | 出典4 https://oig.nasa.gov/wp-content/uploads/2026/03/final-report-ig-26-004-nasas-management-of-the-human-landing-system-contracts.pdf |
「段階」の「飛行試験中」「開発中」は、実用が確定したことを意味しません。機体の性能値はいずれも会社の公称で、実測や第三者の認証値とは限りません。
目論見書は、Starshipの課題の1つとして「繰り返しの高速な再突入に耐える、耐久性のある再使用の熱シールド」を挙げています 事実。熱シールドとは、宇宙船が大気圏に戻るときの高熱から機体を守る材料のことです。会社は耐熱タイルを自社の専用施設(「ベーカリー」と呼ぶ)で作っているとも説明しています。一方、Raptor 3エンジンは、前の世代にあった熱シールドを省いて配管を簡単にしたことで、1基あたり約1トン軽くなったと書かれています。
再使用ロケットでは、材料に「何回飛べるか」が直接効いてきます。たとえばFalcon 9の第1段は、会社が「40回の飛行に耐えると設計・実証した」と書く一方、会計上の耐用年数は25回としています。理由として、Starshipへ移ることでFalcon 9の飛行需要が減ることと、政府契約の一部が「5回を超えて飛んだ第1段の使用を禁じている」ことを挙げています 事実。材料の寿命と、顧客が求める条件、会社の事業計画が、それぞれ別の意味で「何回使うか」を決めているわけです。
なお、Starshipの機体構造に何の金属を使っているかは、確認した提出書類には書かれていませんでした。本稿では推測しません。宇宙環境の材料への影響や熱防御の考え方は、本シリーズの技術解説「熱防御システム」「再使用ロケット」で扱っています。
6. これまでの取り組み
Starshipの飛行試験は、日付と結果を会社の説明とNASA監察総監室の記載の範囲で並べます。失敗や機体の喪失は、原因を断定せず、当局の確認状況とあわせて書きます。
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2002年〜2010年 | 2002年に設立。2008年にFalcon 1が液体燃料の民間ロケットとして初めて軌道に到達(会社の主張)。2010年にFalcon 9が初飛行 | 再使用ロケットの前の段階 |
| 2015年12月 | 軌道に到達したロケットの第1段が初めて垂直に着陸(会社の記載)。2017年までに第1段の回収と再使用が日常に | 再使用が打ち上げ回数を増やした土台 |
| 2020年5月 | Dragonが民間開発の機体として初めて宇宙飛行士をISSへ運んだ(Demo-2) | 有人輸送の再開 |
| 2023年4月20日 | Starshipの第1回飛行試験。複数のエンジンが止まり、機体が回転し、飛行終了システムを指令(会社説明) | 統合試験の始まり |
| 2024年10月13日 | 第5回。ブースターを発射塔のアームで初めて捕まえた(会社説明) | 再使用の新しい方式の実証 |
| 2025年1月16日〜5月27日 | 第7・8・9回の3回とも、Starshipの機体を失うmishap(事故・不具合)があった。FAAは会社の調査結果を確認し、3件の調査はいずれも終了(NASA監察総監室)。第9回は初のブースター再飛行(会社説明) | FAAの確認を経て次の飛行へ進む手順 |
| 2025年8月26日・10月13日 | 第10・11回は、会社が「主要な目的をすべて達成」と説明。第11回は第2世代の最終飛行。第10回の準備中の静止燃焼試験でStarshipが爆発したとNASA監察総監室が記載 | 第2世代の締めくくり |
| 2026年2月2日 | xAIを子会社化 | 宇宙以外の事業が加わった |
| 2026年5月22日 | 第12回。V3(第3世代)の初飛行、新しい発射台(Pad 2)の初使用。ブースターは部分的なブーストバック燃焼のあと海面に強く着水、上段は真空エンジン1基を失うも計画の軌道に到達しインド洋に着水(会社説明)。目論見書は第12回でFAAのmishap判断があったと記載 | 新世代の初飛行 |
| 2026年6月 | IPOを完了(手取り856.75億US$) | 資金調達 |
| 2026年7月24日 | 第13回。V3の2回目。初めてStarlink V3衛星20機を展開(計画した準軌道の弾道で、約20分後に再突入して消える見込み)。上段は船体が無傷のまま着水(会社説明) | 衛星展開の実演 |
| 2026年9月28日 | 第14回。初の周回軌道飛行。Starlink V3衛星26機を展開し、上段は太平洋に着水。ブースターは着陸燃焼の終了後に飛行終了システムの作動を実演して着水(会社説明) | 軌道到達と衛星展開 |
表の日付は、第1〜11回はNASA監察総監室の報告書、第12〜14回は会社の各ページで確認しました。会社の説明は会社自身の評価を含むため、「成功」「失敗」の判断は当局の確認状況とあわせて読んでください。
7. 今後の計画
以下は計画・目標であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。
| 項目 | 内容(会社・当局の記載) | 区分 |
|---|---|---|
| 軌道上での推進剤移送 | 会社は2026年9月15日の発表で、第14回以降のStarshipが周回軌道の飛行を始め、「軌道での最初の推進剤移送」などの試験を行うと説明。移送の日程は確認できなかった | 未確定/将来 |
| ブースターの発射場への帰還 | 第14回のブースターは、LOX(液体酸素)を燃やし切る試験的なブーストバックを行い着水。会社は将来の「発射場への帰還」ミッションに向けた試験と説明 | 未確定/将来 |
| 発射台と製造設備の増設 | フロリダのLC-39Aの発射台は2026年末までに完成予定、SLC-37に2基の発射台を作り、2027年末までにStarship用の発射台は合計4つ。KSCに大型の統合施設「Gigabay」を2026年末までに完成予定(会社の目標) | 未確定/将来 |
| 打ち上げ頻度の許可 | FAAの環境審査が完了した範囲は、ボカチカ(Starbase)からの年間最大25回。会社はさらに、第1段階で年間最大100回、第2段階で最大456回の増加をFAAに提案しており、FAAは2026年11月に公開の説明会(スコーピング会合)を予定(提案の段階) | 未確定/将来 |
| 月・火星への貨物便 | 会社の公式ページは、月面・火星への貨物便を「2028年以降(no earlier than 2028)」としている。火星の日程は会社の目標 | 未確定/将来 |
| 周回軌道上のAI計算機 | 目論見書は、2020年代末までに最初の軌道上AI計算機を打ち上げる意図と、年間100ギガワット分を打ち上げる目標を記載。これまで誰も運用したことのない領域で、会社自身が試験されていないと書いている | 未確定/将来 |
次は確認した資料に記載がありませんでした 未確定/将来。
Starship全体の開発費の累計/Starshipの顧客打ち上げの時期と契約額/宇宙事業に限った従業員数/Falcon 9の過去の失敗事例の詳細な原因(目論見書は「過去に一部または全部のミッション失敗があった」と記載するにとどまる)/Starshipの機体構造の材料。「○年に○回打ち上げる」といった報道ベースの数字は本稿では採用しません。
8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| Falcon 9はStarshipへの移行期の収益源で、長期の主力はStarship | 目論見書は、Falcon 9を「打ち上げ収益の土台」としつつ、開発・生産の資源をStarshipへ移していると記載。Falcon 9の第1段の会計上の耐用年数を25回とした理由に「Starshipへの移行」を挙げる | 推測 |
| 打ち上げ需要の中心は自社の衛星網 | 10-Qの打ち上げ内訳(2026年1〜6月にFalcon 77回のうち自社60回)。Starshipの打ち上げはこれまですべて自社向けに分類 | 推測 |
| Starshipの次の山は周回軌道での運用と推進剤移送 | 会社の2026年9月15日の発表(第14回から周回軌道の飛行に移る、軌道での推進剤移送を試験する)。目論見書は軌道上の給油が月・火星の任務に必要と説明 | 事実 |
| 月面事業の鍵はStarship月着陸機の開発の遅れの解消 | NASA監察総監室(2026年3月)は、2027年6月の着陸には間に合わないと記載し、2028年の着陸に向けた提案をNASAが評価中と書いた | 事実 |
| 宇宙事業の投資はStarship・発射場・推進剤設備に集中する | 目論見書が、高頻度の運用に必要な項目として、発射場、Starshipとエンジンの量産、推進剤の製造設備、電力、FAAの承認を挙げる | 推測 |
10-Qの「Space事業の売上」の説明には、自社のStarlink衛星の打ち上げについて、社内取引としての売上を計上しないと書かれています。打ち上げの費用は、衛星の資産(設備)の価値に含める形で処理されます 事実。つまりSpace事業の売上と利益は、顧客の打ち上げと政府の開発契約だけを映したものです。Falcon 9を自社のために飛ばせば飛ばすほど、Space事業の売上は増えず、Connectivity(通信)事業が衛星を増やしていく形になります。ここから、SpaceXの打ち上げ能力は「外に売る商品」であると同時に「自社サービスを増やすための社内インフラ」としての性格が強い、と本稿は読みます 未確定/将来。
9. 宇宙産業分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 区分 | 主な製品 | 会社の資料の記載 |
|---|---|---|
| 打ち上げ | Falcon 9、Falcon Heavy | Merlinエンジンを自社で設計・製造。第1段は海上の無人船または陸上の着陸帯へ着陸し、フェアリング(荷物を覆うカバー)の半分は着水回収して再使用。第2段は回収せず大気圏に再突入させる |
| 超大型ロケット | Starship(Super Heavy+Starship) | メタンと液体酸素を燃やすRaptorエンジン(フルフロー二段燃焼サイクル)。ブースター33基、上段6基。公式ページの公称では全高124m、ペイロード100トン超 |
| 宇宙船 | Dragon(貨物・有人) | ISSへの自動ドッキング。有人型は最大7人、緊急脱出用にSuper Dracoエンジン8基。パラシュートで着水し回収して再使用 |
| 衛星網 | Starlink | 1万200基超の衛星(2026年8月の10-Qの記載)。2025年に約3,100基を打ち上げ(目論見書)。ワシントン州Redmondの工場で週約70基を製造(2025年12月〜2026年4月の平均) |
| 拠点 | Starbase、Hawthorne、McGregor、Cape Canaveral など | Starbase:開発・製造・打ち上げ。McGregor:エンジンの試験(試験台15基)。フロリダ:LC-39AとSLC-40。カリフォルニア州のVandenberg:SLC-4 |
SpaceXの資料で目立つのは、エンジン(Merlin、Raptor)を自社で設計・製造・試験するという点です 事実。テキサス州McGregorには試験台が15基あり、MerlinとRaptorの認定試験・受入試験・飛行後の試験をここで行うと書かれています。推進系の金属や、加圧容器(会社は「複合材で覆った圧力容器」の試験にも触れています)は、ロケットの重さと安全の両方に直結する部分です。
Starshipについて会社は「飛行試験の目的はデータを集めることで、機体を失っても失敗とは考えない」と説明しています。一方、NASA監察総監室は、mishapのたびにFAAが会社の調査結果と是正措置を確認しなければ次の飛行ができないと記載しています。試して壊して直す開発と、公的な安全の確認を、両立させる設計です。材料や構造の細部は一次資料で確認できなかったため、本稿では書きません。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| Starshipの開発が遅れる | 目論見書は、目標の打ち上げ頻度に必要な項目として、高頻度の運用に耐える熱シールド、エンジンの迅速な再整備、発射場の増設、推進剤設備、電力、FAAの承認を挙げ、「期限内に達成できる保証はない」と書く | 事実 |
| 打ち上げの許可・調査 | mishapのたびにFAAによる調査と是正措置の確認が要る。会社は第12回を含む複数の飛行試験でFAAのmishap判断があったと記載。ボカチカの打ち上げ頻度の拡大は、FAAの環境審査(説明会 2026年11月)の結果にも左右される | 事実 |
| 月着陸機の遅れ | NASA監察総監室は、Starshipの月着陸機が2027年6月の着陸に間に合わないと記載。着陸機は宇宙飛行士の命に関わる機体で、手動操縦の要件の解釈でNASAとSpaceXの見解が分かれている点も指摘された | 事実 |
| 保険を掛けない | 目論見書は、衛星・荷物・ロケットには通常、保険を掛けないため、失敗による損失を会社が負担すると記載 | 事実 |
| 事業の幅が広い | 宇宙のほか、通信とAIの事業を持つ。AI事業は営業損失が大きく、設備投資も大きい(2026年1〜6月の設備投資は会社全体で285億US$、うちAIが236億US$) | 事実 |
| 顧客と政府への依存 | 2026年4〜6月の売上の18.3%を「顧客A」(3事業すべてに関わる)が占める。政府契約は、政府が一方的に契約を終了・縮小できる条件が付く | 事実 |
| 宇宙空間の厳しい環境 | 打ち上げの振動、温度変化、放射線、デブリ(宇宙ごみ)などで故障する可能性が目論見書に記載されている | 事実 |
12. 用語集
- 再使用ロケット
- ロケットの一部(主に第1段)を回収して、何度も飛ばすしくみ。
- 第1段・第2段
- ロケットは下の段(第1段)が先に燃え尽き、切り離されて上の段(第2段)が軌道へ向かう。
- 低軌道(LEO)
- 地上から数百〜2,000km程度の軌道。Starlinkやイメージング衛星が飛ぶ。
- Starship
- SpaceXが開発する、2段とも再使用を目指す超大型のロケットと宇宙船。
- Raptor
- Starshipのエンジン。メタンと液体酸素を燃やす。
- mishap
- 米FAAの用語で、打ち上げの事故・不具合。FAAは原因の調査と是正措置の確認を求める。
- HLS(有人着陸システム)
- NASAのアルテミス計画で、宇宙飛行士を月面へ降ろす着陸機。
- CRS/商業クルー
- NASAがISSへ貨物や宇宙飛行士を運ぶために民間と結ぶ契約の枠組み。
- NSSL
- 米国の国家安全保障上の宇宙打ち上げを民間に発注する計画。
- Starlink
- SpaceXの衛星通信サービス。数千〜1万基の低軌道衛星で運用する。
- IPO
- 新規株式公開。会社の株式を初めて証券取引所で売り出すこと。
- 10-Q・目論見書
- 米国上場企業がSECに提出する四半期報告書(10-Q)と、株式公開時の説明書(目論見書)。
13. 出典
- SpaceX Final prospectus(Rule 424(b)(4)、米SEC提出 2026年6月12日)。事業・機体の諸元と実績・拠点・従業員数・規制・リスク要因・2025年の分野別実績・目標。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026042639/spaceexplorationtechnologi.htm
- SpaceX Form 10-Q(2026年6月30日終了四半期、米SEC提出 2026年8月4日)。分野別の売上・損益・設備投資、打ち上げ回数と軌道投入質量、Starshipの研究開発費、IPO、買収。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1181412/000162828026052535/spcx-20260630.htm
- 米SEC EDGAR 提出書類の索引(SpaceXのCIK 0001181412。Nasdaq上場・目論見書・10-Q・S-1などの提出日の確認)。 https://data.sec.gov/submissions/CIK0001181412.json
- NASA 監察総監室 NASA’s Management of the Human Landing System Contracts(IG-26-004、2026年3月10日)。月着陸機の契約額・遅れ・Starship飛行試験の日付とmishap。 https://oig.nasa.gov/wp-content/uploads/2026/03/final-report-ig-26-004-nasas-management-of-the-human-landing-system-contracts.pdf
- 米連邦航空局(FAA) SpaceX Starship Super Heavy Project at the Boca Chica Launch Site(環境審査の状況。最終更新 2026年10月15日)。 https://www.faa.gov/space/stakeholder_engagement/spacex_starship
- SpaceX Starship(機体の公称諸元。確認日 2026年10月17日)。 https://www.spacex.com/vehicles/starship
- SpaceX Updates(2026年9月15日「Starship to Orbit」、10月8日「Starlink Mobile」、8月6日「Terafab」。確認日 2026年10月17日)。 https://www.spacex.com/updates
- SpaceX Starship Flight 14(2026年9月28日)。初の周回軌道飛行の会社説明。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-14
- SpaceX Starship’s Thirteenth Flight Test(2026年7月24日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-13
- SpaceX Starship’s Twelfth Flight Test(2026年5月22日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-12
- SpaceX Starship’s Eleventh Flight Test(2025年10月13日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-11
- SpaceX Starship’s Tenth Flight Test(2025年8月26日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-10
- SpaceX Starship’s Ninth Flight Test(2025年5月27日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-9
- SpaceX Starship’s Eighth Flight Test(2025年3月6日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-8
- SpaceX Starship’s Fifth Flight Test(2024年10月13日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-5
- SpaceX Starship Flight Test(第1回、2023年4月20日)。 https://www.spacex.com/launches/starship-flight-test
- SpaceX 公式サイト(ロゴの取得元。確認日 2026年10月17日)。 https://www.spacex.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月17日/Troy Technical
本稿の数値は、SpaceXが米証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類、NASA監察総監室の報告書、FAAの公開ページ、同社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。機体の性能値は会社の公称であり、条件の異なる機体との優劣は示していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。株価・評価額・投資判断には触れていません。
