COMPANY PROFILE / 宇宙産業
スペース・フォージ
― 半導体の「種」になる結晶を宇宙で育て、地上で仕上げる。英国ウェールズ発の軌道上製造ベンチャー
Space Forgeは、無重力に近い軌道上で半導体の材料(結晶)を育て、その結晶を地上に持ち帰って量産品に仕上げることを目指す英国の会社です。 2025年6月に最初の製造衛星「ForgeStar-1」を打ち上げ、同年12月に軌道上でプラズマ(結晶を気相から育てるのに必要な状態)を作ることに成功したと発表しました。 一方で、宇宙で作った材料を地上へ戻す仕組みは、まだ開発の途上です。 本稿では、会社の公式サイトとプレスリリース、英国政府(GOV.UK)の発表、英国の会社登記(Companies House)だけを使い、何ができて、何がこれからなのかを整理します。
- 30秒でわかるSpace Forgeと、宇宙産業での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 宇宙産業にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は宇宙産業で何を目指しているか
- 宇宙産業分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるスペース・フォージと、宇宙産業での立ち位置
Space Forge Inc.(米国)英国法人(会社番号11646188)と、米国のデラウェア州法人
カーディフ米国法人はフロリダ州のスペースコースト
(半導体材料を軌道で育てる)地上へ戻す耐熱シールドも開発
(製造衛星)ForgeStar-1を2025年6月に打ち上げ
(100回超)2025年12月31日発表、2026年3月25日付の頁に100回超と記載
製造衛星の許可2025年3月13日発表。会社は「英国初」と説明
半導体材料を宇宙で作る、というアイデアには「作る」と「戻す」の2つの難所があります。 Space Forgeは、前半の「軌道上で結晶を育てる条件を作る」ことを、2025年末にForgeStar-1で実証したと説明しています 事実。 一方、後半の「作ったものを地上に戻す」ためのシールド(Pridwen)は、地上の放物線飛行での展開試験までで、軌道上での成功は公式資料で確認できませんでした 未確定/将来。 ForgeStar-1自体も、戻ってこない片道の実証機として設計されています。 つまり、現時点で確認できるのは「宇宙の製造環境を作れた」という段階であり、宇宙で作った材料が製品になったという段階ではありません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:英国法人は Space Forge Limited(Space Forgeの名で営業)、米国法人は Space Forge Inc. です。 機体名は ForgeStar、耐熱シールドは Pridwen(アーサー王伝説の盾の名)と呼ばれます。 ロゴは公式サイトのヘッダーに掲載されている白色版のため、暗い背景の枠に置いています。
公式サイト:https://www.spaceforge.com/3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模
Space Forgeは非公開の英国企業で、売上や利益は公式資料で確認できませんでした。確認できたのは、会社が発表した資金調達・公的資金・人員・拠点の情報です(確認日 2026年10月17日) 事実。
| 項目 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 設立・創業者 | 2018年に設立(会社の説明。登記上は2018年10月29日設立)。CEOのJoshua Western氏とCTOのAndrew Bacon氏が共同創業 | 事実 |
| 従業員 | 「70人超、欧州と米国で活動」(会社概要頁。日付の表示はなし) | 事実 |
| 拠点 | カーディフ(本社、管制センター)、スウォンジー大学内の国立微小重力研究センター、ポルトガルのアゾレス諸島(サンタ・マリア島の事務所、2025年5月)、米国フロリダ州スペースコースト(2024年9月の事務所) | 事実 |
| 売上・利益 | 非公表(公式資料に記載なし) | 非公表 |
| 上場の有無 | 上場していない。英国の私的有限会社(登記上の状態は「Active」) | 事実 |
| 資金調達・公的資金 | 発表日 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シード | 2021年12月5日 | US$ 10.2 million | 会社発表。欧州の宇宙ベンチャーで最大のシードと会社が説明 |
| 英国宇宙庁(UKSA)の宇宙クラスター基盤基金 | 2023年11月23日 | 約 £7.9 million | プロジェクト総額£13 million(自己負担などを含む)。国立微小重力研究センターの整備 |
| シリーズA | 2025年5月14日 | £22.6 million(約US$30 million) | NATO Innovation Fund主導。World Fund、NSSIF、British Business Bankなどが参加 |
| UKSAの研究契約 | 2026年2月9日 | £300,000 | 軌道上で半導体の種結晶を作る事業性の研究(英国政府の発表) |
| 欧州宇宙機関の技術開発計画(GSTP)経由の資金 | 2026年6月10日 | £10 million | Pridwenを設計・製造・打ち上げ・回収するミッションへ。英国政府の発表であり、執行の状況は確認できなかった |
資金の額は、会社または英国政府が「発表した額」です。公的資金(£10 millionなど)は、発表の時点で将来の支出を示すもので、実際にいくら支払われたかは公式資料から分かりません 未確定/将来。 また、会社は発表文で「研究によれば、宇宙で作った材料は主要インフラのCO2排出を75%減らせる」と書いていますが、その研究の出典は発表文に示されておらず、本稿は採用しません。 評価額(会社の値段)は公式発表になく、報道の数字も使いません。
5. 宇宙産業にかけているリソース
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 70人超(欧州と米国)。宇宙事業は会社の全事業なので、内訳は非公表 | 事実 |
| 金 | 民間資金(シード、シリーズA)と公的資金(UKSA、ESAのGSTP経由)。研究開発費・設備投資額の内訳は非公表。Companies Houseの提出書類索引には、2026年に新株の割当(5月・7月)と担保の登記(10月2日)の提出があるが、金額や内容は本稿では確認していない | 事実 |
| 設備 | スウォンジー大学のCISM(半導体材料センター)内に国立微小重力研究センター(NMRC)を整備。2026年に反応炉を稼働し、炭化ケイ素(SiC)・窒化ガリウム(GaN)・酸化ガリウム(Ga₂O₃)の地上での材料開発を開始 | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 公式資料に記載なし | 確認できず |
| 公的機関:英国 | 英国民間航空局(CAA)の許可(2025年3月13日)。英国宇宙庁(UKSA)の資金。イノベート・UK(英国の技術開発助成)の2つのプロジェクト(2026年春に完了。金額は記載なし) | 事実 |
| 公的機関:米国 | DARPA ERIS Marketplaceで「Awardable(受注可能)」と評価(2026年9月30日)。契約の獲得ではない。テキサス宇宙委員会の資金がIntuitive Machinesとの提携を支える(金額は記載なし) | 事実 |
主要な機体・ミッションの状況
| 機体・取り組み | 内容(会社の説明) | 実績・状況(日付つき) | 段階 |
|---|---|---|---|
| ForgeStar-0 | 小型の超小型衛星。会社が初めて作り、ウェールズで設計・製造した衛星 | 2023年1月、英国初の国内打ち上げ(スペースポート・コーンウォール)に搭載。ロケットが軌道に届かなかった(会社の説明。原因は本稿では扱わない) | 運用に至らず |
| ForgeStar-1 | 軌道上の製造実証機。自社製の結晶成長チャンバーを搭載。ForgeStar-0の約11倍の大きさ | CAAの許可(2025年3月13日)→ Transporter-14便で2025年6月に打ち上げ(会社の発表は6月27日)→ 2025年12月にプラズマ生成(12月31日発表)。2026年3月25日付の頁で、プラズマ生成は100回超 | 運用済み(実証) |
| ForgeStar-1の終わり方 | 戻らない片道の機体。最後は制御された大気圏突入(燃え尽き)を予定 | 軌道が自然に下がるのを監視しながら終了する計画(2025年12月31日発表) | 計画 |
| Pridwen(展開式耐熱シールド) | 折り畳んで打ち上げ、再突入時に広げる耐熱シールド。会社は「熱をアブレーション(削れ)ではなく放射で逃がす」と説明 | 2025年10月に、無重力を作る放物線飛行で展開試験(ZeroGと)。ForgeStar-1の軌道上での展開結果は確認できなかった。英国政府が2026年6月10日に、商業化の準備を整える回収ミッションへ£10 millionを発表 | 開発中 |
| ForgeStar-2(返却型) | 次世代の「戻せる」製造衛星(シリーズAの発表文での位置づけ) | 打ち上げ時期は確認できなかった | 未確定/将来 |
| Intuitive MachinesのZephyrへの搭載 | Space Forgeの半導体反応炉を、Intuitive Machinesの地球再突入プログラムの回収機へ載せる計画 | 2025年7月10日に提携を発表。日程は確認できなかった | 未確定/将来 |
会社のCEOは2025年6月の記事で、ForgeStar-1の最初の製作は計画どおりにいかなかったと書いています。供給元の会社が破綻し、納入された主要部品で故障率が80%を超えるものがあり、 資格試験に通らなかったため、機体を土台から作り直し、打ち上げ枠も後ろへずらしたという説明です 事実。 この説明は会社自身の言葉であり、本稿は原因を検証していません。ただし、新しい宇宙ハードの開発には、日程の見直しがつきものだということを示す一次情報として紹介します。
会社は、微小重力では対流(温度差で流体が動く現象)と沈降が抑えられ、ガスの混ざり方や温度が均一になり、結晶の粒の境目(粒界)の成長を抑えられると説明しています 事実。 さらに、宇宙の超高真空では窒素などの混入をごく小さくでき、「地上の数桁もきれいな結晶ができうる」という見通しを示しています 未確定/将来。 狙いは、ワイドバンドギャップ半導体(電圧や熱に強い半導体。窒化ガリウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンドなど)の種結晶(結晶を育てる元になる小さな高品質の結晶)です。 その種を地上へ持ち帰り、地上の設備で大きくして量産品にする「ハイブリッド」の方式をとると説明しています。 ここでまだ確認できていない点は、実際に宇宙で育てた結晶が、地上の結晶より本当に良いかどうかです。 会社自身も、ForgeStar-1のプラズマ生成を「材料の性能にどうつながるかを調べる第一歩」と位置づけています。 半導体材料の基礎は、本シリーズの技術解説「宇宙製造と微小重力」「放射線と電子部品」などを参照してください。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2018年 | Space Forge設立 | 英国ウェールズで出発 |
| 2021年12月 | シードでUS$10.2 millionを調達 | 会社は欧州の宇宙ベンチャーで最大のシードと説明 |
| 2023年1月 | ForgeStar-0を、英国初の国内打ち上げに搭載。ロケットが軌道に届かなかった | 最初の衛星は運用に至らなかった(会社の説明) |
| 2023年4月 | 米国での事業開始を発表。Southern Launchと、豪州のKoonibba試験場への返却を探る合意 | 地上への返却地を探る動き |
| 2023年9月12日 | Northrop Grumman UKと、軌道上製造を探る協力合意 | 助言・訓練・材料試験などの協力。成果の記載はない |
| 2023年11月23日 | UKSAから約£7.9 millionを獲得 | 国立微小重力研究センターの整備資金 |
| 2024年9月18日 | 米国法人がフロリダ州に事務所を開設 | 米国事業の拠点 |
| 2024年10月〜12月 | Voyager Space(10月29日)、Sierra Space(12月5日)と覚書 | 商業宇宙ステーションなどとの連携を探る(覚書) |
| 2025年3月13日 | 英国CAAがForgeStar-1の打ち上げを許可 | 英国初の軌道上製造の許可と会社が説明 |
| 2025年5月14日 | シリーズAで£22.6 millionを調達 | NATO Innovation Fund主導 |
| 2025年6月 | ForgeStar-1をTransporter-14便で打ち上げ。会社の発表は6月27日 | 管制センター(カーディフ)と交信を確認 |
| 2025年7月10日/9月23日 | Intuitive Machinesと提携(7月)、United Semiconductorsと覚書(9月) | 米国での回収機・供給網づくり |
| 2025年10月23日 | Pridwenを放物線飛行で展開試験 | 軌道上での展開に向けたデータ取得 |
| 2025年12月31日 | 軌道上でプラズマの生成に成功したと発表 | 結晶を気相から育てるのに必要な環境を、自律する衛星で作れたと会社が説明 |
| 2026年3月 | 国立微小重力研究センターがスウォンジーで開所(英国政府、3月6日)。ForgeStar-1の部品供給元の発表(3月18日) | 地上側の拠点が整う |
| 2026年6月10日 | 英国政府がPridwenの回収ミッションに£10 millionを発表 | 「戻す」部分の商業化に向けた公的支援 |
| 2026年8月17日 | Texas A&M University Systemと基本研究契約 | 米国初の半導体材料製造・加工の拠点づくりの第一歩 |
| 2026年9月30日 | DARPA ERIS Marketplaceで「Awardable」と評価 | 米政府顧客への道が開けたという会社の説明(契約ではない) |
| 2026年10月14日 | 地上での半導体材料の初年度の取り組みを公表 | Microchip Technologyなどとの共同プロジェクトを2026年春に完了 |
7. 今後の計画
回収ミッション英国政府が£10 millionを発表(2026年6月10日)。打ち上げ時期は未確認
基盤にする方針基本研究契約の締結(2026年8月17日)。施設の稼働時期は未確認
Zephyr2025年7月の発表。日程は未確認
提供可能公式サイトの材料表(価格は問い合わせ)。量子用・光学用は開発中
会社の長期の構想は、宇宙で育てた種結晶を地上へ戻し、地上の設備で量産品に仕上げる「ハイブリッド製造」です 事実。 その実現に必要な、戻せる機体と耐熱シールドの実証は、これからの計画です 未確定/将来。
次はいずれも、公式資料に記載がありません 未確定/将来。
売上・利益・研究開発費/ForgeStar-1上でのPridwenの展開結果/返却型の機体の打ち上げ日/ Intuitive Machinesの回収機に載せる日程/宇宙で育てた結晶の品質データ(地上との比較)/ 覚書(Voyager Space、Sierra Space、United Semiconductors)の具体的な契約内容/英国政府の資金の執行状況。 株価や評価に関する数字は、本稿では扱いません。
8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか
ここは、会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 最終目標は宇宙で育てた半導体の種結晶を、地上の量産につなぐこと | 2025年12月の発表で「宇宙の結晶成長と地上の加工を組み合わせる」と説明。国立微小重力研究センターを「地上の拠点」と位置づけ | 事実 |
| 当面の収益は地上での材料開発・供給が中心である | 返却型の機体はまだ飛んでいない一方、2026年に地上の反応炉を稼働し、熱用ダイヤモンドを「提供可能」と掲載。共同プロジェクトも地上で実施 | 推測 |
| 米国での事業を強めている | 米国法人(フロリダ)、Texas A&Mとの契約、Intuitive Machinesとの提携、DARPA ERISでの評価と、米国向けの動きが続いている | 推測 |
| 英国の政府資金・政策の支えが大きい | UKSA、ESAのGSTP経由の資金、研究契約の発表があり、CAAの許可が事業の節目になっている | 推測 |
| 最大の未実証点は「地上へ戻す」部分である | 英国政府の発表は、£10 millionの目的を「Pridwenを商業化の準備が整った状態にする」ことと書いている。ForgeStar-1は戻らない片道機 | 推測 |
会社のCEOは、英国政府の発表(2026年6月10日)の中で「ForgeStar-1で、次世代半導体材料のための製造環境を作れることを証明した。今回資金を得たミッションでは、製品を市場に届けられることを証明できる」と述べています 事実。 これは裏を返せば、現時点では「製品を市場に届ける」段階にまだ到達していないという会社自身の認識だと読めます 未確定/将来。 そのうえで、「戻す」ためのシールドがミッションの中心に置かれていることから、返却の実証が事業全体の次の分かれ目になると本稿は考えます。
9. 宇宙産業分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 提供物 | 内容(会社の説明) | 区分 |
|---|---|---|
| ForgeStar(製造衛星) | 「返却・再利用ができる世界初の軌道上製造プラットフォーム」を目指す機体。高い電力、高い熱制御、柔軟なミッション期間を特徴とする。材料成長・製薬・宇宙制御に使えると説明 | 事実 |
| 軌道上の結晶成長装置 | 化学気相成長(CVD)の装置。コンパクトで消費電力が小さく、自律で動く。ISSや商業宇宙ステーションにも使える設計と説明 | 事実 |
| Pridwen(展開式耐熱シールド) | 折り畳んで打ち上げ、再突入時に広げる。会社は、熱を放射で逃がし、パラシュートのように着地を助けると説明 | 未確定/将来 |
| 地上で提供する材料 | 熱用ダイヤモンド(提供可能・価格は問い合わせ、用途はデータセンター・無線・レーダー)、光学・フォトニクス用ダイヤモンド(開発中)、量子用ダイヤモンド(開発中)、窒化ガリウム(構想段階)、窒化アルミニウム(次世代の電力用) | 事実 |
| 地上の材料開発 | SiC・GaN・Ga₂O₃の薄膜開発。Microchip Technologyとはパッケージの放熱設計、Helia Photonics・Bay Photonicsとはダイヤモンド上の窒化ガリウム試作を行った(2026年春に完了) | 事実 |
| ミッション・ソフトウェア | 軌道追跡と再突入位置の予測を行う「Aether」ソフトウェアなど | 事実 |
再突入の熱から機体を守る方法は大きく2つあります。ひとつはVardaのC-PICAのようなアブレーター(自分が少しずつ焦げて削れながら熱を持ち去る材料)、もうひとつは熱を放射で外へ逃がす高温材料です。 会社はPridwenが後者だと説明しており、「標準的な耐熱材のアブレーションとは違う」としています 事実。 後者は削れないので繰り返し使える可能性がありますが、高温の材料の耐久性と、折り畳んだものが確実に開く機構の信頼性が課題になります。 どの材料を使い、何度の熱に耐えるかは公式資料に書かれておらず、確認できませんでした。 耐熱の基本は、本シリーズの技術解説「熱防御システム」「宇宙機の熱制御」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 地上へ戻す部分が未実証 | ForgeStar-1は戻らない片道機。Pridwenの軌道上展開の結果は確認できず、返却型の機体の打ち上げ時期も未定 | 事実 |
| 宇宙で育てた結晶の優位性が未実証 | 会社は「地上より桁違いにきれいな結晶ができうる」という見通しを示すが、実際の結晶の品質データは公表されていない。ForgeStar-1の成果は「環境を作れた」段階 | 事実 |
| 初期機の失敗と遅れ | ForgeStar-0はロケットが軌道に届かず、ForgeStar-1は最初の製作が不合格となって作り直し、打ち上げ枠を後ろへずらしたと会社が説明 | 事実 |
| 公的資金・政策への依存 | 英国政府の資金と許可が事業の節目を作ってきた。政策や予算の変化の影響を受けうる | 推測 |
| 供給網が薄い | 会社自身が、英国には必要な供給網が十分になく、自社で作る割合が高いと説明 | 事実 |
| 許可の範囲 | CAAの許可はForgeStar-1に対するもの。返却型の機体は、別の許可や審査が必要になりうる(本稿は詳細を確認していない) | 未確定/将来 |
| 財務の外部検証ができない | 売上・費用・評価額が非公表。Companies Houseの決算書の数字は本稿では確認していない | 未確定/将来 |
| 覚書が契約に進むとは限らない | Voyager Space、Sierra Space、United Semiconductorsとの合意は覚書の段階 | 事実 |
12. 用語集
- 軌道上製造(ISAM)
- In-space Servicing, Assembly and Manufacturing。宇宙で修理・組み立て・製造をすること。
- 微小重力
- 重力がほぼ働いていないように見える環境。軌道上では落下し続けるため生じる。
- 種結晶
- 結晶を大きく育てるときの元になる、小さく品質の高い結晶。
- ワイドバンドギャップ半導体
- 高い電圧や熱に強い半導体。窒化ガリウム、炭化ケイ素、ダイヤモンドなど。
- CVD
- 化学気相成長。ガスから基板の上に結晶や膜を育てる方法。
- プラズマ
- ガスを電気で電離した状態。結晶を気相から育てるときに使う。
- アブレーター
- 少しずつ焦げて削れながら熱を持ち去る耐熱材。
- 相乗り打ち上げ
- 複数の衛星を1機のロケットに載せて打ち上げる方式。
- 覚書(MoU)
- 共同で進める意思を示す文書。契約と違い、実施や支払いを約束するとは限らない。
- GSTP
- 欧州宇宙機関の「汎用支援技術計画」。技術の成熟を支援する制度。
- 英国民間航空局(CAA)
- 英国で宇宙機の打ち上げや運用を許可する機関の1つ。
- DARPA ERIS
- 米国の研究機関DARPAの調達の仕組み。「Awardable」は受注可能と評価されたという意味で、契約の獲得ではない。
13. 出典
- Space Forge 公式サイト トップページ(会社の自己紹介)。 https://www.spaceforge.com/
- Space Forge 公式サイト「About Us」(創業、創業者、人員70人超、拠点)。 https://www.spaceforge.com/about-us
- Space Forge 公式サイト「Semiconductors」(対象材料と開発段階の表)。 https://www.spaceforge.com/semiconductors
- Space Forge 公式サイト「In-Space Growth」(微小重力で材料を育てる理由、結晶成長装置の説明)。 https://www.spaceforge.com/in-space-growth
- Space Forge 公式サイト「ForgeStar」(返却・再利用を目指す製造プラットフォームの説明)。 https://www.spaceforge.com/forgestar
- Space Forge 公式サイト ForgeStar-1 ミッション頁(2026年3月25日付、プラズマ生成が100回超)。 https://www.spaceforge.com/missions/forgestar-1
- Space Forge 公式サイト ForgeStar-0 ミッション頁(2023年1月、ロケットが軌道に届かなかった)。 https://www.spaceforge.com/missions/forgestar-0
- Space Forge 公式サイト「Space Forge USA」(米国法人の拠点と役員、DARPA ERISの記載)。 https://www.spaceforge.com/space-forge-usa
- Space Forge プレスリリース「Space Forge - Europe's fastest growing space tech startup - raises record-breaking $10.2M seed round」(2021年12月5日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-europes-fastest-growing-space-tech-startup-raises-record-breaking-seed-round
- Space Forge プレスリリース「Space Forge secures record-breaking Series A funding to revolutionise industrial materials using space」(2025年5月14日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-secures-record-breaking-series-a-funding-to-revolutionise-industrial-materials-using-space
- Space Forge プレスリリース「Space Forge Secures £7.9 Million UK Space Agency Funding to Build Pioneering National Microgravity Research Centre」(2023年11月23日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-secures-ps7-9-million-uk-space-agency-funding-to-build-pioneering-national-microgravity-research-centre
- Space Forge プレスリリース「Space Forge secures licence for ForgeStar-1: The first UK licence for In-Space Advanced Manufacturing」(2025年3月13日、英国民間航空局〔CAA〕の許可)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-secures-licence-for-forgestar-1-the-first-uk-licence-for-in-space-advanced-manufacturing
- Space Forge 記事「The Forge Awakens: The mission so far」(2025年6月17日、CEOによる経緯の説明)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/the-forge-awakens-the-mission-so-far
- Space Forge プレスリリース「The Forge Awakens: Space Forge successfully launches ForgeStar-1」(2025年6月27日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/the-forge-awakens-space-forge-successfully-launches-forgestar-1-the-uks-first-in-space-manufacturing-satellite
- Space Forge プレスリリース「Space Forge ignites a new industrial era: delivering world-first capability for orbital semiconductor manufacturing」(2025年12月31日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-ignites-a-new-industrial-era-delivering-world-first-capability-for-orbital-semiconductor-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Space Forge's ForgeStar-1 mission demonstrates UK supply chain strength in world-first plasma achievement」(2026年3月18日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forges-forgestar-1-mission-demonstrates-uk-supply-chain-strength-in-world-first-plasma-achievement
- Space Forge プレスリリース「Pridwen heat shield deploys in zero gravity: Space Forge and ZeroG mark step towards scalable space manufacturing」(2025年10月23日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/pridwen-heat-shield-deploys-in-zero-gravity-space-forge-and-zerog-mark-step-towards-scalable-space-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Space Forge and Intuitive Machines Partner to Advance U.S. Space-Based Semiconductor Manufacturing」(2025年7月10日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-and-intuitive-machines-partner-to-advance-u-s-space-based-semiconductor-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Space Forge Inc. and United Semiconductors LLC Partner to Develop the Supply Chain for Space-Grown Semiconductor Materials」(2025年9月23日、覚書)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-inc-and-united-semiconductors-llc-partner-to-develop-the-supply-chain
- Space Forge プレスリリース「Space Forge Inc. and Voyager Space Unite to Revolutionize Commercial In-Space Manufacturing」(2024年10月29日、覚書)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-inc-and-voyager-space-unite-to-revolutionize-commercial-in-space-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Sierra Space Signs Agreements to Advance Manufacturing in Microgravity」(2024年12月5日、覚書)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/sierra-space-signs-agreements-to-advance-manufacturing-in-microgravity
- Space Forge プレスリリース「Northrop Grumman UK and Space Forge to explore in-space manufacturing」(2023年9月12日、協力合意)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/northrop-grumman-uk-and-space-forge-to-explore-in-space-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Space Forge expands into the US market and signs groundbreaking agreement with Southern Launch」(2023年4月19日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-expands-into-us-market-signs-agreement-with-southern-launch
- Space Forge プレスリリース「Building US capacity in advanced semiconductor materials: Space Forge selects The Texas A&M University System as manufacturing base」(2026年8月17日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/building-us-capacity-in-advanced-semiconductor-materials-space-forge-selects-texas-am-university-system-as-manufacturing-base
- Space Forge 記事「Forged on Earth: Space Forge's first year of terrestrial manufacturing」(2026年10月14日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/forged-on-earth-space-forges-first-year-of-terrestrial-manufacturing
- Space Forge プレスリリース「Space Forge assessed "Awardable" for DARPA ERIS Marketplace」(2026年9月30日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-assessed-awardable-for-darpa-eris-marketplace
- Space Forge プレスリリース「Space Forge on the Space Coast: Space Forge Inc. Expands into Florida」(2024年9月18日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-on-the-space-coast-space-forge-inc-expands-into-florida
- Space Forge プレスリリース「Space Forge launches EU Expansion with new Portugal office」(2025年5月29日)。 https://www.spaceforge.com/press-releases/space-forge-launches-eu-expansion-with-new-portugal-office
- 英国政府(GOV.UK) 「Joint Statement from the UK Space Agency, the Medicines and Healthcare products Regulatory Agency, the Regulatory Innovation Office and the Civil Aviation Authority」(2026年3月5日。ForgeStar-1が英国民間航空局に許可され、2025年6月に打ち上げられたとの記述)。 https://www.gov.uk/government/news/joint-statement-from-the-uk-space-agency-the-medicines-and-healthcare-products-regulatory-agency-the-regulatory-innovation-office-and-the-civil-avia
- 英国政府(GOV.UK) 「New studies for manufacturing advanced materials in orbit」(2026年2月9日。Space Forgeの研究に£300,000)。 https://www.gov.uk/government/news/new-studies-for-manufacturing-advanced-materials-in-orbit
- 英国政府(GOV.UK) 「Made in Space: UK funding boosts breakthrough space technologies」(2026年6月10日。Pridwen計画に£10 million)。 https://www.gov.uk/government/news/made-in-space-uk-funding-boosts-breakthrough-space-technologies
- 英国政府(GOV.UK) 「National Microgravity Research Centre opens in Swansea」(2026年3月6日)。 https://www.gov.uk/government/news/national-microgravity-research-centre-opens-in-swansea
- 英国 Companies House SPACE FORGE LIMITED(会社番号11646188)の会社情報。2018年10月29日設立、登記住所カーディフ、提出書類の一覧。 https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/11646188
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月17日/Troy Technical
本稿の事実は、Space Forgeの公式サイト・公式プレスリリース、英国政府(GOV.UK)の発表、英国Companies Houseの登記情報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値(評価額を含む)は使用していません。この分野は変化が速いため、機体・ミッションの状態は確認日(2026年10月17日)時点のものです。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。「世界初」「英国初」などの表現は会社または関係機関の主張です。投資や医療上の助言ではありません。
