COMPANY PROFILE / 宇宙産業
マイクロチップ・テクノロジー
― 売上約47億ドルの半導体大手のうち、「宇宙で壊れにくい部品」を作る部門。宇宙向けの売上は非公表
人工衛星や探査機の電子部品は、宇宙の放射線で誤作動したり壊れたりしないことを、試験と認定で示す必要があります。 Microchip Technologyは、耐放射線のFPGA・マイコン・電源・タイミング部品などを供給する米国の半導体大手で、宇宙向けは同社の事業の一部にあたります。 2026年10月9日には、耐放射線マイコンのVORAGO Technologiesを買収しました。 本稿は、会社全体の事業ではなく宇宙向けの製品と、その「認定」の読み方に絞って、法定開示と公式発表を整理します。
- 30秒でわかるMicrochipと、宇宙産業での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(全社は簡潔に、宇宙は非公表)
- 宇宙産業にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は宇宙産業で何を目指しているか
- 宇宙産業分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるMicrochipと、宇宙産業での立ち位置
(耐放射線の半導体)宇宙専業ではない。宇宙向けは大きな会社の一部門
タイミング、通信IC耐放射線(RT)と放射線硬化(RH)の2系統
VORAGOを買収耐放射線マイコンの会社。価格は非開示
Microchipは、パソコンやスマホの主役になるチップではなく、家電・自動車・産業機器から宇宙まで、機器の中で制御を担う部品(組み込み制御用のチップ)を作る会社です 事実。宇宙向けはその一部で、10-Kは「衛星と宇宙機」を用途の1つとして挙げ、FPGAやRISC-Vの64ビットプロセッサ(PIC64)の用途に「宇宙」を含めています。
宇宙の部品で大事なのは、どの放射線にどこまで耐えるかを試験で示し、米国防兵站局(DLA)が管理するQML(認定メーカーリスト)のような認定で段階を示すことです。本稿は、「QML Q」「QML V」などの言葉の意味と、各製品がどの段階にあるかを分けて書きます。宇宙向けの売上・人員は非公表のため、規模は推計しません 未確定/将来。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Microchip Technology Incorporated(英語圏では Microchip Technology Inc. とも)。日本語では「マイクロチップ・テクノロジー」と書かれます。 ペットの体内に入れる識別用の「マイクロチップ」とは無関係です。 2026年10月に買収した VORAGO Technologies は別の会社でしたが、買収の完了により同社の製品群の一部になりました(2026年10月9日の発表)。
公式サイト:https://ir.microchip.com/ロゴは投資家向け公式サイト(ir.microchip.com)のヘッダー用画像。取得日 2026年10月17日。
3. 宇宙産業の世界で、この会社はどこにいるか
宇宙では、太陽や宇宙線から来る粒子が半導体に当たり、少しずつ性能が落ちる(総線量効果、TID)ことと、1個の粒子で突然誤作動したり壊れたりする(シングルイベント効果、SEE)ことが起きます。耐放射線の部品は、この2つを試験して数字で示します。会社は、「RT(放射線に強い)」と「RH(放射線硬化=さらに強い)」の2系統を持っています(ニュースリリース)。
詳しくは、本シリーズの技術解説「放射線と電子部品」「宇宙用半導体とCOTS」にあります。
4. 会社の規模(全社は簡潔に、宇宙は非公表)
全社の規模は10-Kで確認できます。ただし宇宙向けの売上・人員・研究開発費は開示されていません 事実。
| 指標(全社・US$百万) | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,401.6 | 4,713.1 |
| 研究開発費 | 983.8 | 約1,090($1.09 billionと記載) |
| 設備投資 | 126.0 | 91.1 |
| 全社の補足(2026年3月期) | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 従業員 | 約17,900名(全社) | 事実 |
| 売上の地域 | 外国向けが約75%。うち中国18%、台湾15% | 事実 |
| 外部ウエハー工場への依存 | 売上の約65%が外部のウエハー工場で作られた製品 | 事実 |
| その他の製品ラインの比率 | 「その他」(FPGA、ライセンス収入、航空宇宙向け製品の一部などを含む)が売上の21.8%。宇宙向けの比率ではない | 事実 |
| 航空宇宙・防衛向けの専用拠点 | ドイツ、フランス、アイルランド、英国、フィリピン、タイ、米国に、航空宇宙・防衛向け製品の専用の組立・試験拠点がある(宇宙専用かは記載なし) | 事実 |
上の数字は会社全体のものです。宇宙向けの規模を示す数字ではありません。10-Kは用途の一覧に「衛星と宇宙機」を載せるだけで、宇宙向けの売上、人員、研究開発費は書いていません 未確定/将来。
また、後述のニュースリリースの一部には、世界経済フォーラムなどの市場規模の引用がありますが、本稿は調査会社や外部機関の市場推計を採用しません。
5. 宇宙産業にかけているリソース
4点(人・金・外部への出資や買収・公的機関との契約)と、主要な製品・計画の状況を、一次情報で確認できた範囲で示します。「記載なし」も成果として書きます。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 宇宙向けの人員は非公表。全社で約17,900名。航空宇宙・防衛向けの専用の組立・試験拠点が世界7か国にある。VORAGOの買収で「放射線硬化の専門チーム」が加わったと会社が説明 | 非公表/事実 |
| 金:研究開発 | 全社で約$1.09 billion(2026年3月期)。宇宙向けの内訳は非公表 | 非公表 |
| 金:設備投資 | 全社で$91.1百万。宇宙専用の投資額は非公表 | 非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 2026年10月9日に、耐放射線のマイコン・マイクロプロセッサを持つ VORAGO Technologies(米テキサス州オースティン)を買収。取引条件は非開示で、会社は「連結業績に重要な影響はない見込み」と説明 | 事実 |
| 公的機関との契約・連携 | NASA(ジェット推進研究所)と、宇宙飛行用の高性能プロセッサ(HPSC)の開発契約。2022年8月。契約額は確定した固定価格契約で$50百万(会社も研究開発費を相当額負担)。支払済みの額は開示なし | 事実 |
| 民間企業との連携 | PIC64-HPSCのエコシステムとして、SiFive、Moog、IDEAS-TEK、Ibeos、3D PLUS、Micropac、Wind River、Linux Foundation、RTEMS、Xen、Lauterbach、Entrustなどを挙げている(2024年7月) | 事実 |
主要な製品・計画の状況(会社公称。確認日 2026年10月17日)
| 製品・計画 | 種別 | 主要な諸元(会社公称) | 認定・実績 | 段階/日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| RTG4 FPGA | 耐放射線FPGA | 配線の設定が放射線で化けない構造(設定メモリの誤作動に強い)。鉛フリーのフリップチップバンプ | QML Class Vの認定を取得と会社が説明(2026年2月6日)。RT Mil-Plastic版は初のフライト実績ありと会社が説明 | 量産・供給中 | 出典5 |
| RT PolarFire(RTPF500ZT) | 耐放射線FPGA | 不揮発性の構造で設定メモリの誤作動に強い。従来品比で消費電力が最大50%低いと会社が説明(中規模のSRAM型FPGAとの比較) | MIL-STD-883 Class BとQML Class Qの認定(2025年7月10日発表) | 供給中。QML Vは確認できず | 出典4 |
| RT PolarFire SoC | 耐放射線FPGA(RISC-V内蔵) | FPGAにLinuxを動かせるRISC-Vプロセッサを内蔵 | エンジニアリングサンプル提供(2025年7月)。QML Class V・Class Yへの計画 | 開発中/計画 | 出典4 |
| PIC64-HPSC(RH・RTの2種) | 宇宙用64ビットプロセッサ | RISC-Vの64ビットコア8個(SiFive X280)、ベクトル演算で最大2 TOPS(int8)または1 TFLOPS(bfloat16)、240GbpsのTSN Ethernetスイッチ | 2024年7月9日に発表。NASAは2026年2月に初の動作確認(「Hello Universe」)、2026年3月時点で電力・性能・信頼性・耐放射線の試験中。「宇宙認定」は試験完了後 | 試験中 | 出典6・8 |
| POL-05-20S-T | 耐放射線の電源(GaN) | 20A出力、25g。TID 50 krad、SEE(LET 43 MeV·cm²/mg)まで特性を規定。−55〜+100℃(全負荷) | 量産数量で出荷開始(2026年10月14日) | 供給開始 | 出典3 |
| Space CSAC-SA65 | 原子時計(チップ規模) | 30 kRad以上に耐える、消費電力120mW未満、体積17cc未満。民生品ベースに耐放射線部品を使用 | 購入可能(2026年8月13日発表) | 供給中 | 出典9 |
| DSA504RT | クロック発生器(耐放射線) | 6出力、ジッタ最小200フェムト秒(12kHz〜20MHz) | 限定サンプル(2026年6月25日) | サンプル | 出典10 |
| ATA6571RT | CAN FD通信IC(耐放射線) | 最大5Mbps、64バイトのフレーム。SEEとTIDに耐える設計 | 10個単位で1個$210(2025年11月4日) | 供給中 | 出典11 |
| VORAGOのMCU・MPUとHARDSIL技術 | 耐放射線マイコン/プロセス技術 | 放射線と極端な温度(最大200℃)に耐える。特許のHARDSILプロセス | 買収完了(2026年10月9日)。統合後の製品の扱いは確認できなかった | 買収完了/統合はこれから | 出典2 |
放射線に強いFPGAは、配線の設定を揮発性のSRAM(粒子が当たると値が化けやすい)ではなく、不揮発性の構造に記憶させることで、設定の誤作動を避けています 事実(会社の説明)。RTG4の鉛フリーのフリップチップバンプ(チップとパッケージをつなぐ小さな突起)は、−65〜150℃の温度サイクルを最大2,000回かける信頼性試験を受け、鉛フリーで起きやすい「スズのひげ(ウィスカ)」は見られなかったと会社は説明しています。
宇宙向けは、気密性の高いセラミックのパッケージが伝統的ですが、低軌道向けにはプラスチックパッケージに同じシリコンチップを入れた「RT Mil-Plastic」という選択肢があります(同じ半導体チップで、外側の材料と選別の厳しさを変える考え方)。電源ではGaN(窒化ガリウム)素子が使われ、VORAGOの技術は設計を変えずに既存品の耐放射線性を上げられると会社は説明しています(会社の主張)。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 〜(過去) | 「60年を超える飛行実績」「90を超える宇宙ミッションに搭載」と会社が公式サイトで説明 | 個々のミッションの内訳は本稿では確認していない(会社の主張) |
| 2022年8月 | NASAがMicrochipを、宇宙飛行用の高性能プロセッサ(HPSC)の開発に選定。確定した固定価格契約で$50百万、会社も研究開発費を相当額負担 | 公的機関との契約の最初の大きな記録 |
| 2024年7月9日 | PIC64-HPSCの最初の製品を発表。エコシステムのパートナーを発表 | 開発から製品化へ |
| 2025年7月10日 | RT PolarFire RTPF500ZTがMIL-STD-883 Class BとQML Class Qの認定。RT PolarFire SoCのエンジニアリングサンプルを発表 | 認定の段階を1つ上げた |
| 2025年11月4日 | 耐放射線のCAN FD通信IC(ATA6571RT)を発表 | 部品群の拡大 |
| 2026年2月 | NASAのHPSCが初めて動作(「Hello Universe」と電子メールを送信) | 開発の大きな節目(NASAの公表) |
| 2026年2月6日 | RTG4 FPGA(鉛フリーバンプ)がQML Class Vの認定を取得したと会社がブログで説明 | 最高水準の認定 |
| 2026年6月25日 | 耐放射線のクロック発生器DSA504RTを発表(限定サンプル) | タイミング部品の拡大 |
| 2026年8月13日 | Space CSAC-SA65(耐放射線の原子時計)を発表 | 小型衛星向けの時計 |
| 2026年10月9日 | VORAGO Technologiesを買収 | 耐放射線マイコンの追加 |
| 2026年10月14日 | 耐放射線GaN電源(POL-05-20S-T)の出荷を開始 | 処理能力の増加に伴う電源の需要に対応 |
7. 今後の計画
上の4項目はいずれも計画・見通しで、達成された事実ではありません 未確定/将来。会社は、ニュースリリースの注意書きで、これらの見通しが実際と大きく異なる可能性があると明記しています。
次は、本稿が確認した範囲の一次資料に記載がありません 未確定/将来。
宇宙向けの売上・利益・人員・研究開発費/HPSCの宇宙認定の完了時期と量産時期/RT PolarFireのQML Class Vの取得時期/VORAGO買収の価格と統合後の製品の扱い/DLAの認定一覧上の各製品の登録状況。調査会社の市場規模などの外部推計は採用しません。
8. この会社は宇宙産業で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 同じ製品を「COTS〜QML V」の幅で段階的に提供し、用途に合わせて選べるようにしている | 宇宙向けの公式ページ(「COTSからQMLまで、同じ製品で品質レベルを選べる」)、RTG4のRT Mil-Plastic、PIC64-HPSCのRH/RTの2種 | 事実(会社の説明) |
| 成長の重心を、低軌道の小型衛星網(ニュースペース)にも置いている | HPSC RTを「低コストを優先する低軌道コンステレーション向け」と説明、CSAC-SA65を「成長するニュースペース市場」向けと説明、RTG4 Mil-Plastic | 推測 |
| 耐放射線マイコンの品ぞろえを広げ、放射線硬化の技術と人材を取り込む狙い | VORAGO買収の発表(放射線硬化の専門チーム、特許のHARDSIL、航空宇宙・防衛・宇宙市場でのシェア拡大) | 事実(会社の説明) |
| HPSCは認定の完了後に本格的な供給に入る | NASAは「試験が完了すれば宇宙認定とし、Microchipから商用提供される」と説明。2026年3月時点は試験中 | 推測 |
| 宇宙向けの収益規模は、今後も外から確かめにくい | 10-Kは宇宙向けの売上を開示せず、用途の一覧に挙げるだけ | 推測 |
2024年7月のHPSCの発表は、RH版(放射線硬化)を「月面の探査車の障害物回避や、火星のような長期の深宇宙ミッション」向けと説明し、RT版(耐放射線)を「システム提供者が寿命より低コストを優先する低軌道の衛星網向け」と説明しています 事実。つまり同じ系列の中で、長く確実に動くことと安く大量に載せることを分けて設計しています。
Space CSAC-SA65の発表も、「短期間のミッション向けの、より小型で安価なハードウェア」の需要を理由に挙げています。これらを並べると、同社が低軌道の大量生産の衛星網を、従来の高信頼の宇宙市場と並ぶ需要として見ていると読むのが自然だと本稿は考えます 未確定/将来。
9. 宇宙産業分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
宇宙向けの製品は、計算(プロセッサ・FPGA)、電源、時計(タイミング)、通信の4つの役割に分けると分かりやすくなります(会社の説明による整理)。
| 役割 | 製品の例 | 会社の説明 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 計算 | RTG4、RT PolarFire、PIC64-HPSC、VORAGOのMCU | 放射線に強い設定メモリ、RISC-Vの高性能プロセッサ、耐放射線マイコン | 事実 |
| 電源 | POL-05-20S-T、DC-DCコンバータ、EMIフィルタ | プロセッサの処理能力が増えて必要になる大電流を、小さく安定して供給 | 事実 |
| 時計(タイミング) | Space CSAC-SA65、DSA504RT | GNSS(衛星測位)が使えない時にも同期を保つ原子時計、複数の発振器を1つにまとめるクロック発生器 | 事実 |
| 通信 | ATA6571RT、Ethernet・MIL-STD-1553・SpaceWire | 衛星内のデータ通信の部品。耐放射線・放射線硬化の製品を用意 | 事実 |
POL-05-20S-Tは「TID 50 krad」「SEEはLET 43 MeV·cm²/mgまで特性を規定」、Space CSAC-SA65は「30 kRad以上」と、放射線への耐性を数字で示しています 事実(いずれも会社の公称値)。krad(キロラド)は、半導体が受ける放射線の総量の単位で、ミッションの軌道と期間で必要な値が変わります。
数字を読むときは、試験した条件(温度、電圧、粒子の種類、規格の版)が必要です。この記事の数字は、各ニュースリリースの記述をそのまま写したもので、第三者の試験で確認したものではありません。個々のミッションでの適合は、利用者がデータシートと試験報告書で確認する必要があります。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 宇宙向けの規模が外から見えない | 宇宙向けの売上・人員・研究開発費は10-Kに記載がなく、規模や収益性を外部から確かめる手段がない | 事実 |
| 認定・試験の完了待ち | PIC64-HPSCは2026年3月時点で試験中で、宇宙認定は試験の完了後。RT PolarFire SoCのQML Class V・Yは計画段階 | 事実 |
| 買収の統合 | VORAGO買収は価格非開示。10-Kは、一般に、買収後の統合には費用と時間がかかり、期待した効果が出ない可能性があると記載 | 事実 |
| 外部ウエハー工場への依存 | 全社の売上の約65%が外部のウエハー工場で作られた製品。宇宙向けの比率は不明 | 事実 |
| 政府調達・輸出管理の変更 | 10-Kは、米国の政府調達規則(CMMCなど)や輸出管理の変更が事業に影響しうると記載(全社のリスク) | 事実 |
| 用途の故障による請求 | 10-Kは、航空宇宙・防衛・医療などの用途でシステム故障が起きた場合の請求の可能性を記載 | 事実 |
| 数字の読み違い | 耐放射線性などの値は、試験条件つきの会社公称値で、ミッションごとの適合は別途確認が必要 | 事実 |
| 低軌道向けの低コスト化の影響 | 民生品ベースで耐放射線部品を使う製品は、深宇宙向けの高信頼品と同じ水準ではない。選別の違いを利用者が理解して選ぶ必要がある | 推測 |
12. 用語集
- RT(耐放射線)/RH(放射線硬化)
- RTは放射線にある程度強いこと、RHはさらに強く設計・製造されていること。会社は両方を製品名に使う。
- TID(総線量効果)
- 放射線を浴びた総量で半導体の性能が少しずつ落ちる現象。krad(キロラド)で表す。
- SEE(シングルイベント効果)
- 1個の高エネルギー粒子で突然誤作動や破損が起きる現象。LET(粒子が通る物質に与えるエネルギー)で強さを示す。
- QML
- 米国防兵站局(DLA)が管理する、高信頼な半導体の認定メーカーリスト。QML Q、QML V(最高水準)などの等級がある。
- MIL-STD-883
- 米国防総省が定めた、半導体の環境・機械・電気の試験方法の規格。
- COTS
- 市販の一般向け部品。宇宙専用の選別を受けていない。
- FPGA
- 配線を後から書き換えられる半導体。宇宙では打上げ後に機能を変えるのにも使う。
- HPSC
- NASAが進める宇宙飛行用の高性能プロセッサの計画(High-Performance Spaceflight Computing)。
- GaN(窒化ガリウム)
- 高効率の電源に使われる半導体材料。
- Form 10-K
- 米国上場企業が毎年SECに提出する、監査済みの年次報告書。
13. 出典
- Microchip Technology Form 10-K for the fiscal year ended March 31, 2026(米国SEC提出、2026年5月21日、提出番号 0000827054-26-000016)。事業の内容・売上・研究開発費・従業員・製造拠点・リスク。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/827054/000082705426000016/mchp-20260331.htm
- Microchip Technology ニュースリリース「Microchip Technology Acquires VORAGO Technologies」(2026年10月9日)。耐放射線マイコンのVORAGO買収。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1419/microchip-technology-acquires-vorago-technologies
- Microchip Technology ニュースリリース「Microchip Expands Space Power Portfolio with New Radiation-Tolerant GaN Point-of-Load Converter」(2026年10月14日)。POL-05-20S-T。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1421/microchip-expands-space-power-portfolio-with-new-radiation-tolerant-gan-point-of-load-converter
- Microchip Technology ニュースリリース「Microchip Expands Space-Qualified FPGA Portfolio with New RT PolarFire Device Qualifications and SoC Availability」(2025年7月10日)。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1323/microchip-expands-space-qualified-fpga-portfolio-with-new-rt-polarfire-device-qualifications-and-soc-availability
- Microchip Technology ブログ「RTG4 FPGAs: A Journey From QML-V Qualification for Traditional Space to RT Mil-Plastic Qualification for New Space」(2026年2月6日)。 https://www.microchip.com/en-us/about/media-center/blog/2026/rtg4-fpgas-qml-v-to-rt-mil-plastic
- Microchip Technology ニュースリリース「Microchip Unveils Industry's Highest Performance 64-bit HPSC Microprocessor (MPU) Family」(2024年7月9日)。PIC64-HPSC。 https://www.microchip.com/en-us/about/news-releases/products/microchip-unveils-industrys-highest-performance-64-bit-hpsc-mpu
- NASA ニュースリリース「NASA Awards Next-Generation Spaceflight Computing Processor Contract」(2022年8月)。MicrochipがHPSCプロセッサを開発。 https://www.nasa.gov/news-release/nasa-awards-next-generation-spaceflight-computing-processor-contract/
- NASA プロジェクトページ「High Performance Spaceflight Computing (HPSC)」。2026年2月の初動作確認、2026年3月時点の試験状況。 https://www.nasa.gov/game-changing-development-projects/high-performance-spaceflight-computing-hpsc/
- Microchip Technology ニュースリリース「Microchip Advances Space-Grade Timing with Enhanced Radiation Tolerance and Extended Temperature Performance」(2026年8月13日)。Space CSAC-SA65。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1411/microchip-advances-space-grade-timing-with-enhanced-radiation-tolerance-and-extended-temperature-performance
- Microchip Technology ニュースリリース「Streamline Spacecraft Timing Architecture with Microchip's Radiation-Tolerant, Low-Power, Low-Jitter Six-Output Clock Generator」(2026年6月25日)。DSA504RT。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1402/streamline-spacecraft-timing-architecture-with-microchips-radiation-tolerant-low-power-low-jitter-six-output-clock-generator
- Microchip Technology ニュースリリース「New Radiation-Tolerant, High-Reliability Communication Interface Solution for Space Applications」(2025年11月4日)。ATA6571RT。 https://ir.microchip.com/news-events/press-releases/detail/1343/new-radiation-tolerant-high-reliability-communication-interface-solution-for-space-applications
- Microchip Technology 公式サイト「Space Applications」。宇宙向け製品の概要、飛行実績(60年超・90を超えるミッション)の会社の説明。確認日 2026年10月17日。 https://www.microchip.com/en-us/solutions/aerospace-and-defense/space
- Microchip Technology 投資家向け公式サイト(ロゴの取得元・プレスリリース一覧)。確認日 2026年10月17日。 https://ir.microchip.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月17日/Troy Technical
本稿の数値は、Microchip Technologyの法定開示(Form 10-K)、同社の公式発表、NASAの公表に基づきます。調査会社の市場推計、報道ベースの数値、株価・企業評価額は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。製品の性能値は会社公称値で、第三者の試験で確認したものではありません。計画・日程は変わることがあります。
