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ビア|半導体後工程 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ビアとは何か
― 穴を開けて、金属を詰める。その難しさのすべて

配線は平面だけでは足りません。層と層を垂直につなぐ穴——それがビアです。 やることは単純で、穴を開けて、きれいにして、金属を詰める。 ところがこの3工程は、レーザーの波長、樹脂の表面粗さ、めっき液の添加剤という、 まったく別分野の材料技術の上に成り立っています。

構成:日本機械学会誌・ビアメカニクス・福岡県産業科学技術振興財団・ウシオ電機・サムコ・JCU・大阪府立大学博士論文・RITAエレクトロニクスの公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

多層基板の内部を無数の細い銅の柱が垂直に貫いている様子を表した概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。ビアの雰囲気を表現したものです。実際の径・深さ・層数・配置を示すものではありません。
この記事の構成
  1. ビアとは何か(3行でつかむ)
  2. ビアの種類 ― 貫くか、途中で止まるか
  3. 穴を開ける ― ドリルとレーザーの守備範囲
  4. 素材技術者の視点①:波長が「削れる材料」を選んでいる
  5. 穴のあとに残るもの ― デスミア
  6. 素材技術者の視点②:粗さと密着のトレードオフ
  7. 穴を埋める ― なぜ底から埋まるのか
  8. 課題
  9. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=各社の公表資料・学術論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画であり、実績が確認できていない事項
このほか、工程の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。

1. ビアとは何か(3行でつかむ)

ビア(via)とは、「基板の層と層を垂直につなぐ、穴とその中の導体」のことです。 語源はラテン語の「道」。層をまたぐための通り道、という意味です。

  • 何のためにあるか:配線は1層では足りません。何層にも重ねた配線を、上下方向につなぐため
  • どう作るか:①穴を開ける ②穴の中をきれいにする ③金属(ふつうは銅)を詰める、の3ステップ
  • 何が難しいか:穴が小さく深くなるほど、開けるのも、洗うのも、詰めるのも、全部難しくなります
この記事が扱う範囲

ビアという言葉は基材によって呼び分けられます。本シリーズでは、それぞれ別に扱っています。

  • シリコンを貫くビア=TSV → 「TSV」編
  • ガラスを貫くビア=TGV → 「ガラス基板」編
  • 再配線層の中のビア(感光性樹脂で形成) → 「RDL」編

この記事は、それらの共通の土台——つまり「穴を開けて金属を詰める」という問題そのものを扱います。 主に有機基板(樹脂)のビアを題材にしますが、考え方はどの基材でも同じです。

2. ビアの種類 ― 貫くか、途中で止まるか

ビアは、どこからどこまでをつなぐかで呼び名が変わります。 日本機械学会誌に掲載されたビアメカニクスの紹介記事では、穴あけ装置が 「スルーホール向けの『ドリル穴あけ機』と、基板内層部にある非貫通のブラインドホール向けの『レーザ加工機』」 として区別されています事実。 貫通するかしないかで、使う装置からして違うということです。

ビアの種類 ― どこからどこまでをつなぐか(概念断面図) 茶=銅(配線とビアの導体)/ベージュ=絶縁層 外層 外層 スルーホール 全層を貫く ドリルで加工 ブラインドビア 表層から途中まで レーザーで加工 ベリードビア 内層どうしをつなぐ 外からは見えない スタックドビア 積み重ねて深くする 真上に重ねる
図1 概念図(ベクター作図)。層数・寸法比・ビアの形状は模式的なもので、実際の基板構成ではありません。スルーホールをドリル、非貫通のブラインドホールをレーザーで加工するという使い分けは、日本機械学会誌に掲載されたビアメカニクスの紹介記事によります[参考資料1]。

ここで大事なのは、ブラインドビアは「途中で止める」必要があるという点です。 ドリルで途中まで開けようとすると、深さの制御が難しい。 そこでレーザーが使われるのですが、レーザーはなぜ「ちょうどいいところ」で止まれるのか。 その答えが、第4章の主題です。

3. 穴を開ける ― ドリルとレーザーの守備範囲

穴を開ける方法は大きく2つ。機械のドリルとレーザーです。 そして2つは、開けられる穴の大きさで、はっきり棲み分けています。

開けられる穴の大きさ ― ドリルとレーザーの守備範囲 横軸=穴の直径(対数目盛り) ドリル(標準機) φ0.1 〜 6.35 mm ドリル(極小径機) φ0.050 mm 〜 CO2レーザー Φ60 〜 400 μm UVレーザー Φ8 〜 68 μm 濃い部分(Φ8〜23μm)は特殊仕様 1 μm10 μm100 μm 1 mm10 mm ※ ドリルはビアメカニクスの製品仕様、レーザーは福岡超集積半導体ソリューションセンターの公表値。装置・条件により異なります。
図2 概念図(ベクター作図)。帯の位置は公表された数値を対数目盛り上に置いたものです。ドリルの径はビアメカニクスの製品仕様[参考資料2]、レーザーの径は福岡県産業科学技術振興財団 福岡超集積半導体ソリューションセンターの公表値[参考資料3]によります。装置・材料・条件によって範囲は変わるため、業界共通の規格値ではありません。

ビアメカニクスのドリル穴明機は、標準機でφ0.1〜φ6.35 mm、極小径機でφ0.050 mmから加工できるとされ、 スピンドル回転数は160k/200k rpm(標準機)、300k/350k rpm(高速機)と公表されています事実。 日本機械学会誌の記事では、「直径0.05mmという微小の穴あけを実現」し、 「最高5000Hz以上の位置決め速度」を持つと紹介されています事実。

緑色の基板の表面にレーザー光が当たり、微細な穴が格子状に開いていく様子を表した概念イメージ
図3 概念図(AI生成イメージ)。レーザー穴あけの雰囲気を表現したものです。実際の装置構成・光路・穴径・加工速度を示すものではありません。

4. 素材技術者の視点①:波長が「削れる材料」を選んでいる

レーザーで穴を開けるとき、どの材料が削れてどの材料が削れないかは、波長で決まります。 そしてプリント基板は、性質の違う3つの材料でできています。 日本機械学会誌の記事は、プリント基板を 「銅、エポキシ樹脂の絶縁層、ガラスの三つが主な構成要素」と説明しています事実。

波長が変わると、削れる材料が変わる ○=よく吸収される(削れる)/×=吸収されない(削れない) 銅 エポキシ樹脂 ガラス CO2レーザー 波長 9400 nm 程度 × 吸収されない ○ 強く吸収 ○ 強く吸収 UV(YAG)レーザー 波長 355 nm 程度 ○ 吸収率が高い ○ 吸収率が高い × 吸収率は低い この表の読みどころ CO2レーザーは樹脂を削りながら銅では止まる。だから「銅の存在がそこを止り穴にする」=ブラインドビアが自動的にできる。 UVレーザーは銅も削れるぶん、深さを自分で制御する必要がある(後半は本記事による整理)。
図4 概念図(ベクター作図)。○×は吸収の有無を模式的に示したもので、吸収率の数値ではありません。波長と吸収特性、および「銅の存在がそこを止り穴にする」という記述は日本機械学会誌に掲載されたビアメカニクスの紹介記事によります[参考資料1]。「UVは深さを自分で制御する必要がある」という部分は、同記事の記述から本記事が導いた整理です。
素材技術者の読みどころ:材料の「弱点」を工程の武器に変えている

同記事は、CO2レーザーについて 「波長9400nm程度のCO2レーザは、銅の存在によりそこが止り穴となる」と述べています事実。

ここで起きていることは、よく考えると転倒しています。 「銅がこの波長を吸収しない」というのは、加工の立場から見れば欠点です。 銅を削りたいときには使えないのですから。

ところがブラインドビアを作る場面では、この欠点がそのまま「ストッパー」という機能になります。 深さを測りながら止める必要がない。材料が勝手に止めてくれる。

一方でUVレーザーは、同記事によれば 「355nm程度のYagレーザによる紫外光は、エポキシ樹脂と銅で吸収率が高くなり、ガラスの吸収率は低い」事実。 銅も削れるぶん、より小さな穴が開けられます—— 福岡超集積半導体ソリューションセンターの公表値では、CO2がΦ60〜400μmなのに対し、UVはΦ8〜68μmです事実。

「よく吸収される=削れる=小さく開けられる」と「吸収されない=止まる=深さを制御しなくていい」は、同じコインの裏表です。 どちらを取るかは、作りたいビアによって変わります(本記事による解説)。

なお同センターは、UVレーザーにアパーチャ(光の径を絞る絞り)を追加することで小径化を進め、 アパーチャ径49〜59μmの条件で、ビア上部径8.3〜22.5μm、下部径3.7〜13.5μmの加工実績を報告しています事実。

5. 穴のあとに残るもの ― デスミア

穴が開いたら、すぐ金属を詰められるわけではありません。 穴の底には、溶けた樹脂のかすが残っています。これをスミア(smear)と呼びます。

サムコは、「レーザー加工後のビアホール底部の有機残渣(スミア)が問題になります」と述べ、 従来は「過マンガン酸等の薬液で洗浄されてきました」と説明しています事実。

この除去工程がデスミアです。ところが、デスミアの役割はひとつではありません。 ウシオ電機は、デスミアを「ブラインドビアのスミアの除去と絶縁樹脂表面の粗さ形成の2つの工程」と説明しています事実。

デスミアには、実は2つの役目がある(概念断面図) ① レーザー加工の直後 穴の底に、溶けた樹脂の 残りかす(スミア)が残る このままでは下の銅とつながらない ② デスミア後 スミアを取り除くと同時に、 樹脂の表面を粗くする 粗さがないと、めっきが密着しない ③ めっき後 粗い面にシード層が食いつき、 銅が密着して詰まる ここで初めて層がつながる
図5 概念図(ベクター作図)。寸法比・粗さの大きさは模式的に誇張したもので、実物を示すものではありません。デスミアが「スミアの除去」と「絶縁樹脂表面の粗さ形成」の2工程であることはウシオ電機の記載[参考資料4]、スミアがビアホール底部の有機残渣であることはサムコの記載[参考資料5]によります。

6. 素材技術者の視点②:粗さと密着のトレードオフ

なぜ、わざわざ樹脂表面を粗くするのでしょうか。 ウシオ電機の説明が明快です。 「デスミア液による表面の浸食により、無電解めっきのシード層がアンカー効果を得てめっき配線の密着性を高めている」事実。

つまり樹脂と銅は、化学的にはくっつきません。 凸凹に食い込ませることで、機械的に引っかけている。これがアンカー(錨)効果です。

ところがここに問題が生じます。同社は 「表面粗さ制御と密着性のトレードオフを解決する技術が求められている」と述べています事実。

粗さを下げながら、密着を上げる 数値はいずれもウシオ電機の公表値 従来のウェットデスミア 過マンガン酸などの薬液 表面粗さ Ra 500 nm 以上 ピール強度 0.4〜0.5 kg/cm 高温の薬液のため保護フィルムが使えない フォトデスミア 172 nm の真空紫外線(VUV) 表面粗さ 数10 nm ピール強度 0.7 kg/cm 以上 粗さは1桁以上小さく、密着はむしろ強い 粗くしないと、めっきが密着しない。粗いと、細い配線が引けない ― これが「表面粗さ制御と密着性のトレードオフ」。 アンカー効果に頼らずに密着を得られれば、この二択から抜けられる。
図6 概念図(ベクター作図)。数値はウシオ電機の技術情報誌「ライトエッジ」(2020年1月)の記載によります[参考資料4]。測定条件・試料構成は本記事では検証していないため、両者を同一条件で比較した値かどうかは確認できていません。「アンカー効果に頼らずに密着を得られれば二択から抜けられる」という一文は、本記事による整理です。
素材技術者の読みどころ:この二択は、他の記事でも何度も出てきた

「粗くしないと密着しない、粗いと微細配線が引けない」—— この構図は、本シリーズで繰り返し登場しています。

  • 「RDL」編:配線を細くするほど、下地の粗さが邪魔になる
  • 「パッケージ基板」編:ビルドアップ材の粗化と、L/S(線幅/間隔)の微細化がぶつかる
  • 「ビルドアップフィルム」編:Df(誘電正接)を下げるために樹脂を変えると、密着が落ちる

高周波では表皮効果により、電流は導体の表面近くを流れます。 表面が粗いほど電流の通り道は長くなり、損失が増えます。 つまり粗さは、微細配線の邪魔をするだけでなく、高速信号の損失そのものにも効いてきます(本記事による解説)。

ウシオ電機のフォトデスミアは、172nmの真空紫外線(VUV)を使い、 「VUV光は酸素分子をオゾンに変化させ、さらにオゾンの分解によって活性酸素を発生させ」有機物を分解し、 その後「無機物を純水で超音波処理する」方式だと説明されています事実。 薬液で「削り取る」のではなく、光と活性酸素で「分解する」。 アプローチを変えることで、粗さと密着のトレードオフに別の解を出そうとしています(本記事による解説)。

なお福岡超集積半導体ソリューションセンターは、小径ビアの加工実績を報告するなかで 「デスミアはWetの場合ビア径が大きく広がるためDryが好ましい」と述べています事実。 薬液は穴の壁も溶かすため、せっかく小さく開けた穴が広がってしまう。 ——ビアを小径化すると、デスミアの方式まで見直しを迫られるということです(本記事による解説)。

7. 穴を埋める ― なぜ底から埋まるのか

きれいになった穴に、いよいよ銅を詰めます。電気銅めっきを使います。 ところがここで、直感に反することが起きます。

ふつうに電気めっきをすると、穴は「上から」塞がります。 穴の入口のほうが電流が集まりやすいからです。 入口が先に塞がると、中に空洞が閉じ込められる。

大阪府立大学に提出された博士論文(林太郎、2015年2月)は、この現象をこう記しています。 「高アスペクト比ビアに対する電気銅めっきではビア開口部での電流集中によってめっき析出の促進が生じやすいため、 ビア開口部が閉塞し、ビア内部にボイドやシームと呼ばれる欠陥が発生する」事実。 そして「ボイドやシームの発生はTSV配線の配線不良を引き起こす」とされています事実。

めっき槽の青い液体に基板が整然と吊り下げられ、気泡が立ちのぼっている様子を表した概念イメージ
図7 概念図(AI生成イメージ)。電気めっき工程の雰囲気を表現したものです。特定メーカーの設備や実際の槽の構造・液の組成を示すものではありません。

だから「底だけ速くする」仕掛けを入れる

同論文は、「ビアの完全充填を達成するためには、ビアの底部を優先的に電気銅めっきするボトムアップフィリングと呼ばれる良好なビアフィリング性が求められる」と述べています事実。

これを実現するのがめっき液の添加剤です。役割の違う成分を同時に入れます。

ボトムアップフィリング ― 底だけ速く、入口は遅く めっき液には、役割の違う成分が同時に入っている 塩化物イオン 有機系添加剤と相互 作用し、その効果を 高める 抑制剤(PEG) ビア開口部のめっき 速度を減らし、開口 部の閉塞を防ぐ 促進剤(SPS/MPS) ビア底部のめっき 速度を増やす レベラー 銅析出の平滑性を 高める。流れの速い ビア上部に吸着 ① 底で加速が始まる ② 底から埋まっていく ③ 閉塞せずに完全充填 促進剤は「めっきが進む → ビア底部の電極面積が減る → 底部の促進剤濃度が増す → さらに加速する」という 正のフィードバックで働く(曲率促進説)。だからビアは、上から塞がるのではなく底から埋まっていく。
図8 概念図(ベクター作図)。充填の進み方は模式的な表現で、実際の断面観察ではありません。各添加剤の役割、および曲率促進説(めっきの進行に伴いビア底部の電極面積が減少し、それに伴い底部で促進剤濃度が増加する)は、大阪府立大学に提出された博士論文の記述によります[参考資料6]。
素材技術者の読みどころ:正のフィードバックを設計に使う

同論文は、促進剤の反応メカニズムについて、T. P. Moffatらの曲率促進説を次のように紹介しています。 「電気銅めっきの進行に伴い、ビア・トレンチ底部の電極面積は減少する。この面積減少に伴い、 ビア・トレンチ底部では促進剤濃度が増加する」事実。

ここが巧妙です。埋まるほど、埋まる速度が上がる。 ふつう、化学反応の設計では暴走を避けるために正のフィードバックを嫌います。 ところがビアフィリングでは、この暴走こそが欲しい機能です。

しかも仕掛けは幾何学的です。促進剤は皮膜に取り込まれず表面に残るので、 面積が縮めば、同じ量の促進剤が狭い場所に濃縮される。 ——添加剤の分子設計ではなく、「面積が減る」という穴のかたちそのものが加速装置になっています(本記事による解説)。

一方でレベラーは逆向きに働きます。同論文によれば、ジアリルアミン系添加剤は 「ビア上部およびビア外部といった主に流速の速い部分に吸着する」とされています事実。 液の流れが速いところに多く付いて、そこを抑える。 促進剤が「面積」を手がかりにするのに対し、レベラーは「流速」を手がかりにしているわけです(本記事による解説)。

うまくいかないと、中に空洞が閉じ込められる(概念断面図) 完全充填 ボイドもシームもない 開口部が先に閉じた場合 ボイド シーム 中に空洞と縦の筋が残る 「高アスペクト比ビアに対する電気銅めっきではビア開口部での電流集中によってめっき析出の促進が生じやすいため、 ビア開口部が閉塞し、ビア内部にボイドやシームと呼ばれる欠陥が発生する」(大阪府立大学 博士論文)
図9 概念図(ベクター作図)。ボイド・シームの形状と大きさは模式的に誇張したもので、実際の断面観察像ではありません。引用は大阪府立大学に提出された博士論文によります[参考資料6]。

現場ではどのくらいの寸法なのか

JCUは、パッケージ基板向けのビアフィリング硫酸銅めっき「CU-BRITE VF7」について、 φ60、φ50μmの穴径、深さ30μmのマイクロビアを用いた評価を示し、 条件を1.5A/dm²、15μm膜厚としています事実。 充填の考え方については「BVH表層のめっき成長を抑制して、内部のめっき成長を促進することで、マイクロビアを銅めっきで充填」と説明しています事実。 また同社は「添加剤は3成分使用。全成分は電気化学測定(CVS)により分析可能」とし、 「配線膜厚均一性が従来プロセスに比べ40%向上」としています事実。

「全成分が分析可能」がなぜ売り文句になるのか

添加剤は、めっきが進むにつれて消費されたり分解したりします。 濃度が狂えば、底から埋まらなくなる。 だから量産では、液中の成分濃度を測りながら足し続ける必要があります。

JCUが「全成分は電気化学測定(CVS)により分析可能」とわざわざ書いているのは、 「管理できる」こと自体が製品価値だからです事実。 測れない成分が入っていると、不具合が出たときに原因を追えません(本記事による解説)。

8. 課題

(1) 深くて細い穴ほど、すべてが難しくなる

ビアの難しさは、アスペクト比(深さ÷径)で表されます。 これが大きくなると何が起きるのか、簡単な計算で見てみます。

本稿の計算:入口の面積に対して、濡らすべき壁はどれだけ増えるか

直径 d、深さ h の円筒形の穴を考えます本稿の計算。

  • 入口の面積= πd²/4
  • 内壁の面積= πdh
  • その比= 4h/d = 4 × アスペクト比

つまり:

  • アスペクト比 0.5(例:径60μm・深さ30μm)なら、内壁は入口の 2倍
  • アスペクト比 2 なら 8倍
  • アスペクト比 10 なら 40倍

前提:穴を単純な円筒とみなした計算です。実際のレーザービアはテーパー(すり鉢状)で、 TSVも完全な円筒ではありません。

それでも示していることは明快です。 めっき液が出入りできる入口は小さいまま、銅で覆わなければならない壁だけが増えていく。 新しい液が底まで届かず、反応でできたものが外へ出ていかない。 高アスペクト比ビアの充填が難しいのは、この「入口と中身の不均衡」が本質です(本記事による解説)。

なお、JCUの評価条件(径50〜60μm、深さ30μm)はアスペクト比0.5〜0.6にあたります本稿の計算。 一方「TSV」編で扱ったシリコン貫通ビアは、これよりはるかに高いアスペクト比を狙う領域です。

(2) 小さくすると、後工程が足を引っぱる

福岡超集積半導体ソリューションセンターは、UVレーザーでΦ8μm台のビアを加工した報告のなかで、 「デスミアはWetの場合ビア径が大きく広がるためDryが好ましい」と述べています事実。 穴を小さくする努力は、次の工程で簡単に台無しになります。 サムコが挙げるように、プラズマ処理なら「薬液処理や高価な付帯設備が不要」という利点もあります事実。

(3) 余った穴が、電気的な邪魔になる

最後は、機械でも化学でもなく電気の話です。 貫通ビアで途中の層に信号を渡すと、その先の使っていない部分が残ります。これがスタブです。

使わない部分が残ると、高速信号の邪魔になる(概念断面図) スタブが残っている スタブ 信号が通る区間 余った部分がアンテナになって共振する バックドリルで削り取る 削り取った ビア径より大きいドリルで、深さを制御して切削する スタブ長が1/4λに相当する周波数でアンテナとなり共振する。第1層と第3層を接続するビアの例では、15GHz以上で20dB程度の改善。
図10 概念図(ベクター作図)。層構成・寸法比は模式的なもので、実際の基板ではありません。スタブが1/4λで共振すること、バックドリル工法の内容、および「第1層(表面)と第3層を接続するビアを対象」として「15GHz以上の周波数において20dB程度伝送特性を改善」した実験例は、RITAエレクトロニクスの技術資料によります[参考資料8]。改善量は同社の特定の実験条件での値であり、一般に成り立つ数値ではありません。

RITAエレクトロニクスは、スタブがある伝送路では「インピーダンスが大きく低下している」とし、 「そのスタブ長が1/4λに相当する周波数でアンテナとなり、共振が発生し、結果として伝送損失が著しく低下する」と説明しています事実。 対策のバックドリル工法は「プリント基板の表面から信号配線層までの深さを制御し、ドリルでスタブを切削除去する工法」で、 実験例では「15GHz以上の周波数において20dB程度伝送特性を改善することができ」たとされています事実。

多層のプリント基板の内部を、銅色の細い柱が上下方向に無数に貫いている様子を表した概念イメージ
図11 概念図(AI生成イメージ)。多層基板を貫くビアを表現したものです。実際の層数・配線構成・ビアの径や本数を示すものではありません。
この記事のまとめ方

ビアは「穴を開けて金属を詰めるだけ」の工程に見えます。 しかし実際には、まったく違う分野の材料技術が3つ直列につながっています。

  • 開ける:レーザーの波長と、材料ごとの吸収特性。銅が吸わないことが、そのままストッパーになる
  • 洗う:樹脂表面の粗さと、めっきの密着。粗くしないと付かず、粗いと細い配線が引けない
  • 詰める:めっき液の添加剤。面積が減ると濃くなる促進剤と、流れが速いところに付くレベラー

そして、どの段階でも「小さくすると急に難しくなる」という同じ壁にぶつかります。 小さい穴は、開けにくく、洗いにくく、詰めにくい。 ビアの微細化が基板技術のボトルネックとして語られるのは、この3つが同時に厳しくなるからです(本記事による解説)。

9. 用語集

ビア
基板の層と層を垂直につなぐ穴と、その中の導体。
スルーホール
基板を全層貫通するビア。主にドリルで加工する。
ブラインドビア
表層から途中の層までをつなぐ非貫通のビア。「止り穴」とも呼ぶ。
ベリードビア
内層どうしをつなぐビア。基板の外からは見えない。
スタックドビア
ブラインドビアを真上に積み重ねて、深い接続を作る構造。
アスペクト比
ビアの深さ÷径。大きいほど加工・洗浄・充填のすべてが難しくなる。
スミア
穴あけ加工でビア底部に残る、溶けた樹脂の残渣。
デスミア
スミアを除去し、あわせて樹脂表面を粗化する工程。
アンカー効果
粗い表面の凹凸にめっきが食い込むことで得られる機械的な密着。
ピール強度
めっき配線を引き剥がすのに要する力。密着性の指標。
表面粗さ Ra
表面の凹凸を平均的に表す指標。算術平均粗さ。
シード層
電気めっきの前に無電解めっきなどで作る、薄い導電性の下地。
ボトムアップフィリング
ビアの底部を優先的にめっきし、底から埋めていく充填のしかた。
促進剤
ビア底部のめっき速度を増やす添加剤。SPS、MPSなど。
抑制剤
ビア開口部のめっき速度を減らし、閉塞を防ぐ添加剤。PEGなど。
レベラー
銅析出の平滑性を高める添加剤。チオ尿素、JGB、ジアリルアミン系など。
塩化物イオン
有機系添加剤と相互作用し、その効果を高める成分。
ボイド
ビア内部に閉じ込められた空洞。配線不良の原因になる。
シーム
ビアの中心に残る縦方向の筋状の欠陥。
曲率促進説
めっきの進行でビア底部の面積が減り、促進剤が濃縮されてさらに加速するという説明。
CVS
Cyclic Voltammetric Stripping。めっき液中の添加剤濃度を電気化学的に測る手法。
スタブ
貫通ビアのうち、信号が通らずに余った部分。
バックドリル
深さを制御してスタブ部分をドリルで切削除去する工法。
表皮効果
周波数が高いほど電流が導体の表面近くに集中する現象。
VUV
真空紫外線。波長がおよそ200nmより短い紫外線。

10. 参考資料(一次情報)

  1. 日本機械学会誌「ビアメカニクス(株)“小さな穴”で世界中の最先端技術を支える」 — jsme.or.jp
  2. ビアメカニクス「プリント基板ドリル穴明機」 — viamechanics.com
  3. 福岡県産業科学技術振興財団(福岡超集積半導体ソリューションセンター)「レーザー加工機 ビア加工の小径化」 — jiss.ist.or.jp
  4. ウシオ電機「フォトデスミアによる有機基板の表面粗さ抑制技術」技術情報誌ライトエッジ(2020年1月) — ushio.co.jp
  5. サムコ「プリント基板のデスミア(プラズマ処理)」 — samco.co.jp
  6. 林 太郎「貫通電極用高アスペクト比ビアの完全充填を目的とした電気銅めっきにおけるCu+イオンの影響」大阪府立大学 博士論文、2015年2月(PDF) — omu.repo.nii.ac.jp
  7. JCU「パッケージ基板対応高面均ビアフィリング硫酸銅めっき CU-BRITE VF7」 — jcu-i.com
  8. RITAエレクトロニクス「ビアスタブのバックドリル工法による伝送特性の改善」 — ritael.co.jp

11. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
プリント基板が「銅、エポキシ樹脂の絶縁層、ガラスの三つが主な構成要素」であること。「波長9400nm程度のCO2レーザは、銅の存在によりそこが止り穴となる」こと(原文ではエポキシ樹脂とガラスに強く吸収されるが銅には吸収されない波長として説明)。「355nm程度のYagレーザによる紫外光は、エポキシ樹脂と銅で吸収率が高くなり、ガラスの吸収率は低い」こと。装置が「スルーホール向けの『ドリル穴あけ機』と、基板内層部にある非貫通のブラインドホール向けの『レーザ加工機』」に分かれること。「直径0.05mmという微小の穴あけを実現」「最高5000Hz以上の位置決め速度」日本機械学会誌「ビアメカニクス(株)“小さな穴”で世界中の最先端技術を支える」[参考資料 1]https://www.jsme.or.jp/kaisi/1233-32/事実
ドリル穴明機の穴径が標準機で「φ0.1~φ6.35 mm」、極小径機で「φ0.050」mm からであること。スピンドル回転数が160k/200k rpm(標準機)、300k/350k rpm(高速機)であることビアメカニクス「プリント基板ドリル穴明機」[参考資料 2]https://www.viamechanics.com/products/drill/事実
CO2レーザーの加工可能ビア径が「Φ60~400 μm」、UVレーザーが「Φ8~68 μm(Φ8~23μmは特殊仕様)」であること。「UVレーザーの径を調整するアパーチャを追加搭載」により小径化したこと。アパーチャ径49~59μmの条件でビア上部径8.3~22.5μm、下部径3.7~13.5μmの加工実績があること。「デスミアはWetの場合ビア径が大きく広がるためDryが好ましい」こと福岡県産業科学技術振興財団 福岡超集積半導体ソリューションセンター「レーザー加工機 ビア加工の小径化」[参考資料 3]https://jiss.ist.or.jp/technology/no31/事実
デスミアが「ブラインドビアのスミアの除去と絶縁樹脂表面の粗さ形成の2つの工程」であること。「デスミア液による表面の浸食により、無電解めっきのシード層がアンカー効果を得てめっき配線の密着性を高めている」こと。「表面粗さ制御と密着性のトレードオフを解決する技術が求められている」こと。従来法は「表面粗さRaが500nm以上」で、「高温の過マンガン酸液中ではがれてしまう」ため保護フィルムが使えないこと。フォトデスミアは「172nmの真空紫外線(VUV)」を用い、「VUV光は酸素分子をオゾンに変化させ、さらにオゾンの分解によって活性酸素を発生させ」、その後「無機物を純水で超音波処理する」こと。粗さが「数10nmに抑えられている」こと。「ピール強度は、フォトデスミア方式の場合0.7kg/cm以上の値を示した(ウエットデスミアの場合は0.4-0.5kg/cm)」ことウシオ電機「フォトデスミアによる有機基板の表面粗さ抑制技術」ライトエッジ(2020年1月)[参考資料 4]https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/202001/500979.html事実
「レーザー加工後のビアホール底部の有機残渣(スミア)が問題になります」こと。従来は「過マンガン酸等の薬液で洗浄されてきました」こと。「プラズマ洗浄装置を用いると薬液処理や高価な付帯設備が不要です」ことサムコ「プリント基板のデスミア(プラズマ処理)」[参考資料 5]https://www.samco.co.jp/products/process/surface-treatment/plasma/desmear.php事実
「高アスペクト比ビアに対する電気銅めっきではビア開口部での電流集中によってめっき析出の促進が生じやすいため、ビア開口部が閉塞し、ビア内部にボイドやシームと呼ばれる欠陥が発生する」こと。「ボイドやシームの発生はTSV配線の配線不良を引き起こす」こと。「ビアの完全充填を達成するためには、ビアの底部を優先的に電気銅めっきするボトムアップフィリングと呼ばれる良好なビアフィリング性が求められる」こと。塩化物イオンが「促進剤や抑制剤などの有機系添加剤と相互作用を示し、有機系添加剤の効果を高める」こと。抑制剤が「ビア開口部の電気銅めっき速度を減少させ、ビア開口部の閉塞を防止する」ものでPEGが代表例であること。促進剤が「ビア底部の電気銅めっき速度を増加させる」ものでSPS/MPSが代表例であること。レベラーが「銅析出の平滑性を高める」ものでチオ尿素、JGB、ジアリルアミン系が挙げられること。曲率促進説として「電気銅めっきの進行に伴い、ビア・トレンチ底部の電極面積は減少する。この面積減少に伴い、ビア・トレンチ底部では促進剤濃度が増加する」こと。ジアリルアミン系添加剤が「ビア上部およびビア外部といった主に流速の速い部分に吸着する」こと林 太郎「貫通電極用高アスペクト比ビアの完全充填を目的とした電気銅めっきにおけるCu+イオンの影響」大阪府立大学 博士論文(2015年2月)[参考資料 6]https://omu.repo.nii.ac.jp/record/166/files/2014900111.pdf事実
CU-BRITE VF7の評価が「φ60、φ50µmの穴径、深さ30µmのマイクロビアを使用」し、条件が「1.5A/dm²、15µm膜厚のめっき」であること。「BVH表層のめっき成長を抑制して、内部のめっき成長を促進することで、マイクロビアを銅めっきで充填」すること。「添加剤は3成分使用。全成分は電気化学測定(CVS)により分析可能」であること。「配線膜厚均一性が従来プロセスに比べ40%向上」することJCU「CU-BRITE VF7」[参考資料 7]https://www.jcu-i.com/technical/…事実
スタブのある伝送路で「インピーダンスが大きく低下している」こと。「そのスタブ長が1/4λに相当する周波数でアンテナとなり、共振が発生し、結果として伝送損失が著しく低下する」こと。バックドリル工法が「プリント基板の表面から信号配線層までの深さを制御し、ドリルでスタブを切削除去する工法」であること。実験例で「第1層(表面)と第3層を接続するビアを対象」として「15GHz以上の周波数において20dB程度伝送特性を改善することができ」たことRITAエレクトロニクス「ビアスタブのバックドリル工法による伝送特性の改善」[参考資料 8]https://www.ritael.co.jp/document/detail12/事実
直径 d・深さ h の円筒形の穴について、内壁面積÷入口面積=4h/d=4×アスペクト比。アスペクト比0.5で2倍、2で8倍、10で40倍本稿の計算。穴を単純な円筒とみなした計算であり、実際のレーザービアはテーパー形状、TSVも完全な円筒ではない本稿の計算
JCUの評価条件(径50〜60μm、深さ30μm)がアスペクト比0.5〜0.6にあたること本稿の計算。前提となる寸法は参考資料7[参考資料 7]https://www.jcu-i.com/technical/…本稿の計算
図4・図6の数値を、同一条件で測定・比較した値かどうかは本記事では検証していないこと本記事による注記。各社が公表した値をそのまま並べたものであり、比較試験の結果ではない解説
「UVレーザーは銅も削れるぶん、深さを自分で制御する必要がある」という整理。「銅がこの波長を吸収しない」という加工上の欠点が、ブラインドビアではストッパーという機能になるという読み取り。促進剤の正のフィードバックが「穴のかたちそのものを加速装置にしている」という読み取り。促進剤が「面積」、レベラーが「流速」を手がかりにしているという対比。高周波では表皮効果により表面粗さが伝送損失に効くという説明。「全成分が分析可能」が製品価値になる理由。小径化するとデスミアの方式まで見直しを迫られるという指摘。ビアの微細化では「開ける・洗う・詰める」の3つが同時に厳しくなるという整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各著者が表明した見解ではない解説
図1・図5・図8・図9・図10の断面図が、実際の観察像(写真・SEM像)ではなく説明のための作図であること本記事による注記解説

最終更新:2026年9月20日/出典は一次情報(装置・材料メーカーの公式製品ページおよび技術資料、学会誌の掲載記事、公的財団の技術報告、大学に提出された博士論文)に限定しています。 工程の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図2・図4・図5・図6・図8・図9・図10はベクター作図、それ以外はAI生成イメージであり、いずれも実際の断面写真・顕微鏡像・装置の実物を示すものではありません。