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CoPoS|半導体後工程 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

CoPoSとは何か
― 円形ウェハから角形パネルへ。公式に言えること、まだ言えないこと

CoPoSは、TSMCが取り組みを認めている、パネル(角形の大型基板)を使う先端パッケージの構想です。 ただし、公式資料で確認できるのは「CoPoSに取り組んでいる」「パイロットラインを建設中」「量産は数年後」という範囲にとどまります。 この記事は、確認できたことと確認できなかったことを分けたうえで、円形から角形に変わると材料とプロセスのどこが難しくなるのかを、学会発表から読み解きます。

構成:TSMCの決算説明会発言録(2026年4月・7月)・公式サイト・プレスリリース、ECTC 2018/2020/2026の発表、SEMI・ASEの公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

クリーンルームの作業台の上に、円形のシリコンウェハと、それより大きな角形のパネルが並び、どちらにも大きな演算チップとメモリチップを載せた四角い部品が敷き詰められている概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。円形ウェハと角形パネルに同じ種類の部品を並べたときの面積の違いを表現したものです。CoPoSの実際の構造・パネル寸法・個数を示すものではありません。
この記事の構成
  1. CoPoSとは何か(3行でつかむ)
  2. 名前の読み方と、CoWoSとの関係
  3. なぜ円形から角形か ― 本稿の計算
  4. TSMCが語っていること、語っていないこと
  5. 素材技術者の視点①:パネル化で、材料のどこが変わるか
  6. パネルで増える課題 ― 露光・平坦化・反り
  7. 素材技術者の視点②:反りを「材料で」下げるという選択
  8. 課題 ― CoPoSを読むときの注意
  9. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=TSMCなどの公表資料・学会発表に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・発言であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料面の読み取りは「解説」として区別しています。公式資料で確認できなかった点は、推測で埋めずに「確認できなかった」と書きます。

1. CoPoSとは何か(3行でつかむ)

名前から読めるのは、「パネル(Panel)の上でチップ(Chip)を扱い、基板(Substrate)に載せる」という並びです。 CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)の「ウェハ」が「パネル」に替わった名前だと読めます(本記事による解説)。

  • 公式に確認できること:TSMCのC.C. Wei会長兼CEOは、2026年4月16日の決算説明会で、CoPoSに取り組んでいること、パイロットライン(pilot line)を今まさに建設していること、量産は数年後を見込むこと、現時点の主力は大型のCoWoSであることを述べました事実
  • 計画の扱い:量産時期は「数年後」と述べられただけで、年は示されていません未確定/将来
  • 確認できなかったこと:名称の展開形、パネルの寸法、基板コアやインターポーザ層の材料、パイロットラインの場所と稼働日、顧客。これらはTSMCの公式資料では見つかりませんでした
この記事の確認状況(先に結論を示します)
項目本稿の確認結果根拠
CoPoSに取り組んでいること確認できたTSMC 2026年4月16日の決算説明会[参考資料1]
パイロットライン「建設している」という発言のみ。場所・稼働日は確認できなかった同上[参考資料1]
量産時期「数年後」という発言のみ。年は確認できなかった未確定/将来同上[参考資料1]
CoWoSとの関係両者を並べて語り、現時点の主力は大型CoWoSとしている。置き換えるのか補うのかは確認できなかった同上[参考資料1]
名称の展開形TSMCの公式資料では確認できなかった。Chip-on-Panel-on-Substrateは名前の読み方として本稿が使う解説
パネルの寸法確認できなかった―
インターポーザ層・基板コアの材料確認できなかった(ガラスか有機かも不明)―
顧客確認できなかった。本稿は報道だけで伝えられる顧客名を使わない―
数字を見かけたときの注意

CoPoSについては、パネルの寸法、拠点、量産の年、顧客を具体的に伝える報道が多く出回っています。 しかし本稿が調べた範囲では、TSMC自身の公開資料(決算説明会の発言録、公式サイト、プレスリリース)にそれらの数字は見当たりませんでした。 この記事は、公式資料で裏が取れない数字を使いません。数字を見かけたら、まず出所が公式資料かを確認してください。

2. 名前の読み方と、CoWoSとの関係

「CoWoS」編で見たとおり、CoWoSはチップをウェハ(インターポーザ)の上に載せ、切り出して基板に載せる順序を名前にしたものです。 CoPoSは、この「ウェハ」を「パネル」に替えた並びです(本記事による解説)。 展開形の「Chip-on-Panel-on-Substrate」は、本稿が調べたTSMCの公式資料には記載が見つかりませんでした。広く使われている読み方として、名前の説明にだけ使います。

CoWoSの3方式から見える、パネルとの相性

TSMCの技術ページは、CoWoSの3方式を次のように説明しています事実。

  • CoWoS-S:シリコンインターポーザ。最大3.3レチクル(約2,700 mm²)まで
  • CoWoS-R:RDLインターポーザ。ポリマーと銅の配線で構成され、比較的柔軟でC4接合の健全性を高める。最小4 µmピッチ(L/S 2/2 µm)で、2023年から量産
  • CoWoS-L:RDLベースのインターポーザに、局所シリコン相互接続(LSI)などを組み合わせる方式。モールドをベースにしたインターポーザと説明され、3.5レチクル級が2024年から量産

ここから読めること(本記事による解説)は次のとおりです。シリコンの板は円形ウェハの形でしか作れませんが、ポリマーと銅の配線層やモールド樹脂は、角形の面でも扱える材料系です。 CoWoS-RとCoWoS-Lで有機・樹脂系のインターポーザがすでに量産されていることは、パネルに移る際の材料面の前提になりえます。 ただし、CoPoSがどの方式を土台にするのかは、確認できませんでした。

名前の読み方と積層のイメージ:Wafer(円形)がPanel(角形)に替わる 左はTSMCが技術ページで説明しているCoWoSの考え方、右はそれを名前どおりに読み替えた概念図です。 CoWoS CoPoS Chip on Wafer on Substrate Chip on Panel on Substrate(読み方) 演算ダイ HBM HBM インターポーザ(円形ウェハ由来) パッケージ基板 演算ダイ HBM HBM インターポーザ層(角形パネル由来) パッケージ基板 円形ウェハから 四角い部品を取る 外周に捨て地が出る 角形パネルから 四角い部品を取る 敷き詰めやすい ※ CoWoSの構成はTSMCの技術ページ[参考資料3]によります。右側は名前を構造に置き換えた概念図です。 ※ CoPoSの層構成・材料・寸法・配線方式はTSMCから公表されていません(点線は未確認の部分を表します)。
図1 概念図(ベクター作図)。CoWoSの構成はTSMCの技術ページ[参考資料3]の説明にもとづきます。右側のCoPoSは「Wafer」を「Panel」に読み替えた本記事の整理で、TSMCが公表した構造図ではありません。層数・個数・寸法比は説明のための模式表現です。

CoWoSとの関係:TSMCは「並べて」語っている

2026年4月16日の決算説明会で、あるアナリストは、大型化の手段として「CoPoSなのか、CoWoS-L(2.5D)なのか、3Dなのか」と質問しました。 IR担当者はこれを「大きなレチクルサイズの話で、CoWoS-Lか、パネルレベルか」と言い換えて取り次ぎ、Wei会長は次の趣旨で答えました事実。

  • 現時点で、非常に大きなレチクルサイズのCoWoSを供給している
  • それに加えてCoPoSにも取り組んでいる。両方を合わせて、妥当なコストで十分な容量を顧客に提供したい
  • そのためにパイロットラインを今建設しており、量産は数年後を見込む未確定/将来
  • ただし、現時点の主力は大型のCoWoSである

CoPoSと「パネル」を結びつけているのは、決算説明会でIR担当者が使った言い換え(panel level)だけです。TSMCがCoPoSの構造や寸法を自分で説明した箇所は、確認できませんでした。

CoPoSがCoWoSを置き換えるのか、補うのかについて、TSMCは明言していません。 一方、同じ2026年4月のシンポジウム発表では、CoWoS自体も5.5レチクル級を生産中で、14レチクル級を2028年に予定すると公表されています事実(計画は未確定/将来)。 少なくとも現時点では、CoWoSの大型化とCoPoSの準備が並行して進んでいると読めます(本記事による解説)。

優劣は論じません

ウェハ型のCoWoSとパネル型のCoPoSのどちらが優れているか、本稿は断定しません。 違いは、土台の形(円か角か)、インターポーザ層の材料と作り方、露光や平坦化の方式、反りの出方といった構造・材料・プロセスの差として整理します。 CoPoSについては、そのうち公式に確認できる部分が少ないため、第3章以降は「パネルに移ると何が問われるか」を関連研究から読み解きます。

左に円形ウェハ上の大型インターポーザとチップ、右に角形パネル上に多数並ぶ同種の部品を、角を切り欠いて層構造が見えるように描いた左右対比の概念イメージ
図2 概念図(AI生成イメージ)。円形ウェハ上の構成と、角形パネル上に同種の部品を並べる構成を、断面を切り欠いて対比した表現です。CoPoSの実際の層構成・材料・寸法・個数を示すものではありません。

3. なぜ円形から角形か ― 本稿の計算

円形のウェハから四角い部品を切り出すと、外周に捨て地ができます。「PLP」編では、50 mm角のパッケージなら、510×515 mmのパネルはφ300 mmウェハの約4.8倍の個数が取れることを計算しました。 ここでは視点を変えて、CoWoSのインターポーザが大きくなる計画に沿って同じ計算をやり直します。TSMCは、CoWoSを5.5レチクル級(生産中)、9.5レチクル級(2025年4月の発表では2027年量産予定)、14レチクル級(2028年予定)へと大きくする計画を公表しています[参考資料4・11]事実(計画は未確定/将来)。

本稿の計算:前提
  • 面積:1レチクル=約830 mm²、3.3レチクル=約2,700 mm²(TSMC公表)事実。ほかは830 mm²×レチクル数
  • 形:インターポーザは同じ面積の正方形として扱う(実際は長方形のことが多い)
  • ウェハ:φ300 mm。正方形を格子状に並べ、4隅すべてが円内に入る区画だけを数え、配置の原点を1 mm刻みで探して最大の個数を採用
  • パネル:端から隙間なく詰めた個数。エッジ除外・切りしろ・部品間の隙間は考慮しない
  • パネル寸法:320×320 mmと510×515 mm。いずれもECTC 2026で、パネル上の有機インターポーザの研究に使われた寸法です事実。CoPoSのパネル寸法ではありません
CoWoSの世代(計画を含む)面積正方形の一辺φ300 mmウェハ320×320 mm510×515 mm
3.3レチクル約2,700 mm²約52 mm17個(65%)36個(95%)81個(83%)
5.5レチクル約4,565 mm²約68 mm9個(58%)16個(71%)49個(85%)
9.5レチクル約7,885 mm²約89 mm5個(56%)9個(69%)25個(75%)
14レチクル約11,620 mm²約108 mm2個(33%)4個(45%)16個(71%)

すべて本稿の計算。()内は土台の面積に対する、取れた部品の面積の合計の割合。3.3レチクルの面積はTSMC公表値[参考資料3]、14レチクルの計画は[参考資料4]。

14レチクル相当(約108 mm角)を並べると、何個取れるか(本稿の計算) 3つの土台を同じ縮尺(0.48 px/mm)で描いています。エッジ除外・切りしろ・隙間は考慮していません。 φ300 mmウェハ:2個 面積利用率 約33% 320×320 mm:4個 面積利用率 約45% 510×515 mm:16個 面積利用率 約71% ※ 約108 mm角は14レチクル(830 mm²×14=11,620 mm²)の平方根です。CoPoSのパネル寸法をTSMCは公表していません。 ※ 320×320 mmと510×515 mmは、ECTC 2026でパネル上の有機インターポーザ研究に使われた寸法です[参考資料5]。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。14レチクルはTSMCの公表した計画値[参考資料4]、1レチクル=約830 mm²は技術ページ[参考資料3]の値です。個数と面積利用率は本記事が格子配置で算出したもので、実際の取り数ではありません。ウェハ側は配置位置を探索した最大値で、パネル側は端から詰めた個数です。
素材技術者の読みどころ:取り数は「割り算の丸め」で決まる

表から読めるのは、ウェハは部品が大きくなるほど急に不利になることです。3.3レチクルで65%だった面積利用率が、14レチクルでは33%まで下がります(本稿の計算)。 取れる個数も17個から2個へ減り、14レチクルでは円の外周より内側に2個しか入りません。 これが、AI向けパッケージの大型化がパネルへの動機を強める理由です(本記事による解説)。

ただし、パネルなら常に有利というわけでもありません。320×320 mmのパネルは、3.3レチクル(約52 mm角)なら6×6の36個できれいに収まり95%に達しますが、14レチクル(約108 mm角)では2×2の4個で、残りは約104 mm幅の余白になります(45%)。 土台の寸法と製品の寸法の割り算の丸めで、利用率は大きく変わります。

この感覚は、材料や装置を供給する側にも直結します。パネルの寸法が定まらないと、装置も材料の供給形態も1つに絞れません。 実際、ECTC 2026でレゾナックは、パネル上の有機インターポーザの研究について「320×320 mmや510×515 mmのパネル」と2つの寸法を並べています[参考資料5]事実。 「PLP」編で扱ったSEMI 3D20がパネルの寸法・厚さ・反り・質量の規定を目指したのは、この事情によります[参考資料8]。 CoPoSが採るパネル寸法が確認できない以上、周辺産業が複数の寸法を並行して見ている状況は、そのまま不確実性の表れだと読めます(本記事による解説)。

なお、取り数が増えることは、1枚の失敗で失う個数が増えることでもあります。14レチクルを510×515 mmのパネルに16個載せる場合、パネル1枚の不良は16個分の損失です(本稿の計算)。 歩留まりの重みは、「PLP」編で扱ったとおりパネル化の共通の課題です。

4. TSMCが語っていること、語っていないこと

CoPoSについて、本稿が確認できたTSMC自身の一次情報は、決算説明会の発言録の一部です。 技術ページ(CoWoSのページ)、2025年4月と2026年4月のシンポジウム関連のプレスリリース[参考資料4・11]、2025年7月・10月と2026年1月・7月の決算説明会の発言録には、CoPoSという語を見つけられませんでした。

日付場内容(趣旨)区分
2026年4月16日決算説明会(第1四半期)[参考資料1]大型化の手段を問う質問に、Wei会長は「非常に大きなレチクルのCoWoSを供給している。CoPoSにも取り組んでいる。パイロットラインを今建設しており、量産は数年後」と回答。現時点の主力は大型CoWoS事実(発言)
未確定/将来(量産時期)
2026年4月16日同上[参考資料1]SoICやパネルレベルで反りなどの課題を解けるかという質問に、Wei会長は、先端パッケージの課題は機械的ストレス(反り)や熱の制約であり、ダイサイズを大きくしながらそれらを解いてきた経験がある、と回答。パネルに個別の言及はない事実(発言)
2026年4月シンポジウム関連のプレスリリース[参考資料4]5.5レチクル級のCoWoSを生産中、14レチクル級は2028年に生産予定。パネルやCoPoSへの言及はない事実
未確定/将来(2028年)
2026年7月16日決算説明会(第2四半期)[参考資料2]ガラス基板・ガラスコアなどの進捗を問う質問に、Wei会長は「現状の大半はCoWoS。コストを下げる代替策を開発しており、基板メーカーとも協力している。以前発表したラインが成熟するまで約1年」と回答(発言録上の語はpipeline)。CoPoSという語は使われていない事実(発言)
未確定/将来(約1年)

発言録はLSEGが編集したものをTSMCが公開しています。内容は趣旨の要約で、逐語の引用ではありません。

TSMCの公式資料で確認できたこと/できなかったこと 緑=実績の記載/紫=発言・計画(実績ではない)。時間軸は等間隔で、実際の間隔とは異なります。 2012年 CoWoSの 量産を開始 TSMC技術ページ 2023〜2024年 CoWoS-R(2023)と CoWoS-L(2024)の 量産を開始 TSMC技術ページ 2026年4月16日 決算説明会で CoPoSに取り組み パイロットライン を建設中と発言 量産は数年後と発言 2026年4月 シンポジウム発表 5.5レチクルを生産中 14レチクルは 2028年を計画 2026年7月16日 決算説明会で、 ガラス基板の質問に 「代替策の成熟まで 約1年」と回答 TSMCの公式資料では確認できなかったこと 名称の展開形 / パネルの寸法 / パイロットラインの場所と稼働日 / 量産の年 インターポーザ層と基板コアの材料(ガラスか有機か) / 顧客 / CoWoSとの置き換え関係 ※ 2026年4月16日・7月16日はTSMC決算説明会の発言録[参考資料1・2]、2026年4月の発表は[参考資料4]によります。 ※ 2026年7月の発言は、質問がガラス関連でCoPoSという語は使われていません。CoPoSとの関係は断定できません。
図4 概念図(ベクター作図)。TSMCの決算説明会発言録[参考資料1・2]と公式発表[参考資料3・4]から、確認できた事項だけを時系列に並べたものです。発言は計画であり、パイロットラインの稼働や量産を示す実績ではありません。報道で伝えられている寸法・場所・時期・顧客は、公式資料で確認できないため載せていません。

2026年7月の発言をどう読むか

第2四半期の質問は、ガラス基板・ガラスコア・ガラスキャリアの進捗についてで、CoPoSという語は質問にも回答にも出てきません。 回答の「代替策」「以前発表したライン」が、4月に述べたパイロットラインを指す可能性はありますが、発言録だけでは断定できません。 また、発言録の語は「pipeline」で、「pilot line」の聞き取りの違いかどうかも確認できませんでした。 本稿はこの発言を、「TSMCが基板まわりの代替策を開発中で、成熟まで約1年と述べた」という範囲でのみ扱い、CoPoSの時期とは結びつけません。

確認できなかったこと(まとめ)

  • 名称の展開形(Chip-on-Panel-on-Substrateが公式の表記か)
  • パネルの寸法、パネルの材料(ガラスか有機か)、インターポーザ層の構造と配線方式
  • パイロットラインの場所と稼働日、量産の年、量産の工場
  • 顧客
  • CoWoSとの置き換え・併存の方針(「主力は当面CoWoS」という以上の説明)
  • CoPoSに関するTSMC自身の学会発表(本稿が調べたECTC 2026の発表紹介資料の範囲では、TSMCのCoPoSの発表は見当たらず、TSMCの発表はCoWoSの信頼性に関するものでした)

業界メディアには、シンポジウム後の質疑でTSMC幹部が述べたとされる発言の報道もあります。 しかし、公式のスライドや発言録で確認できなかったため、本稿では採用しません。

5. 素材技術者の視点①:パネル化で、材料のどこが変わるか

CoPoSの材料構成は公表されていません。そこで、「チップ+パネル上のインターポーザ層+パッケージ基板」という一般的な構成にあてはめたとき、材料とプロセスの論点がどこに現れるかを、一次情報のある範囲で整理します。

パネル化で、材料とプロセスの課題が現れる5つの部位(概念断面) CoPoSの実際の層構成は未公表です。一般的な「チップ+インターポーザ層+基板」の構成にあてはめた整理です。 演算ダイ HBM HBM 封止材 インターポーザ層(ポリマーと銅の配線層を想定) 製造中の支持体(キャリア)/最終的には外れる 基板コア(有機かガラスかは未確認) ビルドアップ層(上下)/パッケージ基板 ①②③④⑤ ① 封止材 パネルの反り低減/CoWoSではシリコン角部の界面剥離が課題 ② 配線層の露光 510×515 mmガラス上で18レチクル相当を一括露光(1.5 µm L/S) ③ 配線層の平坦化(CMP) 320×320 mmガラス上で、L/S 2/2 µmのダマシン配線を実証 ④ C4バンプとリフロー CoWoS-Rは、RDLの柔らかさでC4接合の健全性を高めると説明 ⑤ 基板コアとビルドアップ層 TSMCは基板メーカーと協業と発言。材料は確認できず 一次情報あり(ただしCoPoS以外の研究・製品の例を含む) CoPoSでの採用は、いずれも確認できていない ※ ①はECTC 2018・2026の発表[参考資料5・7]、②③はECTC 2026の発表[参考資料5]、④はTSMC技術ページ[参考資料3]、   ⑤はTSMC決算説明会[参考資料2]によります。部位の整理と番号の付け方は本記事によるものです。
図5 概念図(ベクター作図)。5つの部位の記述は、それぞれ括弧内の参考資料の記載によります。CoPoSの実際の構造・材料ではなく、パネル上で作るインターポーザ層とパッケージ基板を組み合わせたと仮定したときに、材料・プロセスの論点が現れる場所の整理です。層数・厚さ・寸法比は模式的です。
部位ウェハ型(CoWoS)でTSMCが説明していることパネルに移ると問われること(解説)一次情報での確認状況
① 封止材L:モールドをベースにしたインターポーザ[参考資料3]。TSMCの発表予定:CoWoSで封止材とシリコンの界面剥離(ダイ角部)が課題[参考資料5]樹脂の面積が増え、硬化収縮・CTE・弾性率が反りと位置ずれに直結するFOPLP向け低反り封止材の発表[参考資料7]。CoPoSでの採用は確認できず
② ③ インターポーザ層(配線)S:シリコン。R:ポリマーと銅の配線、最小4 µmピッチ。L:RDLベース+LSI[参考資料3]配線層の露光・めっき・平坦化を、角形の大面積で均一に行う。シリコンの剛性に頼らず平坦性を保つパネル上の有機インターポーザの研究が、ECTC 2026で複数発表[参考資料5]。CoPoSでの方式は確認できず
支持体(キャリア)・パネル自体―製造中にパネルを保持する板の剛性・平坦性・重さ。大きいほど自重の影響が出るガラスキャリア(550×650 mm)での反り・ダイシフト解析[参考資料6]。CoPoSでは確認できず
④ C4バンプとリフローRDLの柔軟さがC4接合の健全性を高める。RDL層とC4/アンダーフィルが、SoCと基板のCTE差の緩衝になる[参考資料3]インターポーザ層が大面積になると、リフロー時の面内の膨張差の絶対量が増える(第6章の計算)ウェハ型の説明のみ。パネル型は確認できず
⑤ パッケージ基板(コア+ビルドアップ)―(TSMCは基板メーカーと協力と発言[参考資料2])大型パッケージでは基板の反りも支配的。コア材が有機かガラスかで、剛性とCTEの設計が変わる(「パッケージ基板」「ガラス基板」編)CoPoSの基板コアの材料は確認できなかった

「ウェハ型」「一次情報」の列は事実(各資料の記載)。「パネルに移ると問われること」の列は本記事による解説です。

素材技術者の読みどころ:変わるのは寸法だけでなく、「剛性を誰が受け持つか」

ウェハ型のCoWoS-Sでは、シリコンインターポーザそのものが硬く平坦で、配線の土台になります。 TSMCは、より大きなインターポーザには柔らかいRDLインターポーザ(CoWoS-R)を勧め、その柔軟さがC4接合の健全性を高めると説明しています事実。 つまり、大型化の過程で、TSMCはすでに「硬い土台で受け止める」から「柔らかい層で応力を逃がす」へという設計の移動を進めています(本記事による解説)。

パネルに移ると、平坦性と剛性を受け持つのは、シリコンではなくパネルそのもの(キャリアやコア)と、その上の樹脂層になります。 樹脂の面積が増えるので、材料の設計項目は、収縮率・CTE・ガラス転移温度・弾性率が反りに直接効く方向へ寄っていきます。 「ガラス基板」編で見たガラスコアや、セラミックを分散させたコアが話題になるのは、この文脈です。 ただし、CoPoSがガラスを使うのか有機を使うのかは、公式には確認できませんでした。

もう1つ、TSMCがECTC 2026で発表を予定しているCoWoSの信頼性研究に、封止材とシリコンの界面剥離(ダイ角部)と、インターポーザの剛性が緩和に効くという内容があります[参考資料5]事実。 インターポーザを柔らかくする方向と、剛性で緩和する方向は、設計上のトレードオフになりうる——これは論文の記述の裏返しとして本記事が読み取った論点で、論文自体の主張ではありません(本記事による解説)。

6. パネルで増える課題 ― 露光・平坦化・反り

ここからは、パネル上のインターポーザ層に関する学会発表を取り上げます。どれもCoPoSの発表ではなく、パネル上の有機インターポーザやFOPLP(ファンアウト型パネルレベルパッケージ)の研究です。 CoPoSの課題を直接示す資料ではなく、「パネルに移ると、どんな課題が現れるのか」を知るための参照として読んでください。なお、ECTC 2026の発表は、会期前(2026年5月20日付)のプログラム紹介資料の記述にもとづき、論文本文は参照していません。

(1) 露光:つなぐか、大きく一括で焼くか

ウェハ型のCoWoSでは、TSMCが独自のマスクスティッチング(露光領域のつなぎ合わせ)で、レチクルを超える面積のインターポーザを作ってきました(「CoWoS」編)。 パネルでも同じ問題があります。USHIO(ウシオ電機)は、ECTC 2026で、510×515 mmのガラス基板上で、18レチクル相当の領域を、つなぎ目なしで一括露光し、線幅/線間(L/S)1.5 µmのパターンを形成する手法を発表予定です事実。 同発表は、従来の基板用ステッパより4倍以上広い領域であり、有機基板やガラス基板の厚みの一般的なばらつきを許容できるプロセスマージン(22 µm)を確認したと説明しています[参考資料5]。

素材の側から見ると、ここで効いてくるのは基板の厚みのばらつきです。露光で焦点が合う範囲が限られる以上、パネルの平坦性と厚みの均一性は、材料メーカーが供給するパネル・フィルムの品質そのものになります(「PLP」編参照、本記事による解説)。

(2) 平坦化:銅・バリアメタル・ポリマーを一緒に平らにする

レゾナックは、ECTC 2026で、320×320 mmのガラスパネル上で、L/S 2/2 µmの有機ポリマー・ダマシン配線を、パネルレベルのCMP(化学機械研磨)で平坦化した結果を発表予定です事実。 発表の説明によると、背景は、インターポーザが9.5レチクル級に大型化するにつれ、円形300 mmウェハの有効面積が限界になること、そしてHBM4に必要な、より細い銅配線にはダマシン法が期待されることです。 銅のバルク除去とバリアメタルの研磨の2段階CMPで、銅・チタン・ポリマーの界面の共平坦性(co-planarity)を100 nm未満に収め、研磨後の段差は100 nm未満(L/S 2/2 µm)と報告されています[参考資料5]。

素材技術者の読みどころ:硬さの違う3つの材料を同時に研磨する

銅、バリアメタル、ポリマーは、硬さも研磨のされ方も大きく異なります。同じ面を平らにするとき、軟らかい材料が削られすぎる「ディッシング」や、密な配線領域が削られすぎる「エロージョン」が出ます。 発表は、研磨パッドの溝の設計とスラリーの流れの分布を最適化して、面内の配線の均一性を確保したと述べています[参考資料5]事実。 パネルでは、これを数百mmの面全体で揃える必要があります。研磨の消耗材(パッド・スラリー)と、研磨される側の樹脂・金属の材料設計が、一体で問われる領域です(本記事による解説)。

参考までに、TSMCはCoWoS-Rの最小ピッチを4 µm(L/S 2/2 µm)と説明しています[参考資料3]事実。レゾナックの2/2 µmと数値は同じですが、測定対象も目的も別の値であり、CoPoSの仕様ではありません。数字の一致から、CoPoSの配線密度を推し量ることはできません。

(3) 反り:CTE差・樹脂収縮・自重

パネルの反りは、1つの原因では説明できません。FOPLPの研究と本シリーズの整理から、ここでは次の3つを挙げます。

パネルが反る3つの理由(断面の模式図・変形は大きく誇張) いずれも、パネルが大きいほど変形の絶対量が大きくなります。 ① 材料ごとの膨張差 ② 樹脂の硬化収縮 ③ 自重と支え方 膨張の小さい層 膨張の大きい層 冷えると大きい層が より縮み、反ります 「熱膨張係数」編を参照 チップを埋めた樹脂が縮む 樹脂が固まる時に縮み、 チップ側へ引かれて反ります ECTC 2018[参考資料7] 台に置く 端だけ支える 薄いパネルは自重で垂れ、 支え方で反りが変わります ECTC 2020[参考資料6] ※ ②③は学会発表の記載にもとづく定性的な図で、実際の反り量・形状を示すものではありません。 ※ 3つに整理したのは本記事によるもので、実際のパネルでは複数の要因が同時に働きます。
図6 概念図(ベクター作図)。変形は理解のために大きく誇張しています。②は封止材の硬化に伴う反り[参考資料7]、③は自重と支持方法の影響[参考資料6]という、学会発表の記述にもとづきます。CoPoS自体の反り挙動を示すものではありません。
  • 材料ごとの膨張差:CTEの異なる層が重なれば、温度が変わるたびに反ります(「熱膨張係数」編)
  • 樹脂の硬化収縮:チップを埋める封止材が固まる際に縮み、パネルが反ります[参考資料7]
  • 自重と支え方:シンガポールのA*STAR IMEは、550×650 mmのガラスキャリアを使うモールドファースト方式のFOPLPで、有限要素法とタグチ法により、工程ごとの反りの支配因子を調べています。パネルを台に置くと自重で反りは大きく減りますが、縁だけを支えると反りが増え、薄いパネルの取り扱いが課題になると報告しています[参考資料6]事実

3つ目は、「材料の問題」に見えない点が重要です。パネルが大きく薄くなるほど、どう持つか、どう置くかという搬送・保持の条件が、反りという品質に入り込みます。 素材メーカーにとっては、コア材やキャリアの厚み・剛性の選択が、装置側の搬送設計と一体で決まることを意味します(本記事による解説)。 FOPLPの総説(Lau, 2019)も、反りと、一時的キャリアの種類(ウェハかパネルか)を主要な論点として整理しています[参考資料10]。

本稿の計算:CTE差1 ppm/Kあたりの自由膨張の差

膨張差による「ずれ」の絶対量は、距離に比例します。CTEの差が1 ppm/Kあるとき、温度が235 K変わった場合の、中心から端までの自由膨張の差を計算します本稿の計算。

中心から測る位置距離CTE差 1 ppm/Kあたりのずれ
φ300 mmウェハの端150 mm約35 µm
320×320 mmパネルの辺の中央160 mm約38 µm
510×515 mmパネルの辺の中央255 mm約60 µm
510×515 mmパネルの角約362 mm約85 µm

前提と限界:温度変化235 Kは、リフローのピーク約260 ℃から常温25 ℃まで冷える場合(「熱膨張係数」編と同じ前提)。ずれ=距離×CTE差×温度変化で、完全に自由に伸び縮みすると仮定した上限的な値です。 実際には層どうしが拘束し合うので、ずれの多くは変位ではなく応力になります。また、配線層の形成温度や、層が固定される温度は工程ごとに異なり、この温度差がそのまま当てはまるわけではありません。 それでも、同じCTE差でも、パネルの角ではウェハの端の約2.4倍のずれを生もうとするという比例関係は変わりません(85 ÷ 35)。 配線のL/Sが数µm、バンプのピッチが数十µmの世界で、数十µmのずれは無視できない大きさです(本記事による解説)。

7. 素材技術者の視点②:反りを「材料で」下げるという選択

反りへの対策は、装置や搬送で解く方法と、材料で解く方法があります。後者の例として、リンテックがECTC 2018で報告した、FOPLP向けの封止材があります事実[参考資料7]。同発表は背景として、FOPLPがプリント基板(PCB)製造と同程度の大きさの基板パネルを使うため、PCBの製造ラインを部分的に再利用でき、パッケージ製造の初期投資を抑えられる可能性にも触れています。

項目発表の記載
狙い封止層にシリカ粒子を高充填せずに、パネルの反りを大きく減らす
材料の工夫主成分のエポキシ樹脂の剛直な分子構造の一部を、より柔らかく柔軟な分子鎖に段階的に置き換えた
効果ガラス転移温度付近で強い応力緩和が見られ、粘弾性のマスターカーブが示す特性により、パネルの反りを1/5に低減
トレードオフの確認いずれもガラス転移温度は低いが、シリコン面へのダイシェア強度は250 ℃で50 N超(チップ5×5 mm²)、390 ℃での重量減は5%未満
信頼性試験MSLレベル2条件(85 ℃・60%RH・168時間)後のリフロー、JEDEC条件Bの温度サイクル(−55/+125 ℃・2,000サイクル)、ボードレベル試験を実施

すべて事実(Kikuchi, Nedzu, Sugino, ECTC 2018[参考資料7]。リンテック株式会社の研究者による発表)。FOPLP向けの材料であり、CoPoS向けではありません。

素材技術者の読みどころ:反りを下げる道は「CTEを下げる」だけではない

封止材の低反り化というと、シリカなどの無機フィラーを高充填してCTEを下げる方向が思い浮かびます。この発表が「高充填せずに」と書いているのは、別の道を示しているからです。 それは、樹脂の分子構造そのものに柔らかい鎖を入れ、ガラス転移温度付近で応力を緩和させる方向です(本記事による解説)。

この道には代償があります。発表は「低いガラス転移温度を持つ」と明記していて、そのうえで密着強度と耐熱性が保たれることを確認しています。 つまり、ガラス転移温度を下げることは、高温側での剛性や信頼性に影響しうる設計変更であり、それを実測で確認する必要がある、という構図です(本記事による解説)。 「PLP」編で見たimecの結果が、一時接着材の透明性や封止材の供給形態まで含めた「組み合わせ」の話だったのと同じく、パネルの材料開発は、単独の物性ではなく複数の物性のバランスで決まります。

なお、この結果は2018年のFOPLP向け材料のもので、現在のCoPoSや大型AIパッケージの要求に合うかどうかは、この資料からは分かりません。 CoPoSの封止材について、TSMCや材料メーカーが公表した情報は確認できませんでした。

8. 課題 ― CoPoSを読むときの注意

(1) 公式情報が少ない

本稿の調査時点(2026年10月)で、TSMCがCoPoSについて公に述べたことは、決算説明会での短い発言が中心です。 それ以外の寸法・時期・顧客・材料は、TSMCの公開資料では確認できません。CoPoSの記事や資料に数字が書かれていたら、出所がTSMCの公式資料か、それとも他社の発表や報道かを区別して読む必要があります。

(2) 大きさと細かさの両立

ASEは、パネルレベルのファンアウトで、300×300 mmのパネルを高密度向け(チップラスト)、600×600 mmのパネルを低密度向け(チップファースト)として使い分けています[参考資料9]事実。 「ファンアウト」編で見たとおり、大きなパネルほど反りと位置精度が難しくなり、細かい配線との両立が課題になります。 レゾナックの2/2 µm(320×320 mm)とUSHIOの1.5 µm(510×515 mm)は、研究・実証段階の値であり、量産ラインでの達成値でも、CoPoSの値でもありません。

(3) 歩留まりの重み

パネルに載る個数が増えるほど、1枚の不良が失う個数も増えます。14レチクルを510×515 mmのパネルに16個載せる場合、1枚の不良は16個分です(本稿の計算)。 載っているのは、すでに良品と確認されたチップです。大面積での歩留まりは、CoPoSでも最後まで残る課題だと読めます(本記事による解説)。

(4) 装置と規格

円形ウェハ用の装置は、そのままでは角形パネルに使えません。SEMI 3D20はパネルの寸法・厚さ・反り・質量を規定する規格で、複数のパネルサイズが検討されている状況を前提にしています[参考資料8]事実。 CoPoSの寸法が公表されていない間は、周辺の装置・材料メーカーは複数の寸法を並行して見る必要があります(本記事による解説)。

(5) 熱

Wei会長は、先端パッケージの課題として、機械的ストレス(反り)と並んで熱の制約を挙げています[参考資料1]事実。 パッケージが大きくなるほど、発熱をどう逃がすかが問われます。熱の話はパネル化に固有ではありませんが、材料の熱伝導とCTEのバランスは、どの土台でも設計の中心に残ります。

この記事のまとめ
  • 確認できた:TSMCはCoPoSに取り組み、パイロットラインを建設中で、量産は数年後を見込む。現時点の主力は大型CoWoS事実。量産時期は未確定/将来
  • 確認できなかった:名称の展開形、パネル寸法、材料(ガラスか有機か)、拠点、量産の年、顧客
  • 円形から角形へ:14レチクル級(約108 mm角)では、φ300 mmウェハは2個・面積利用率33%、510×515 mmのパネルは16個・71%本稿の計算。ただし320×320 mmでは4個・45%で、寸法の相性が効く
  • 材料の論点:インターポーザ層の露光・平坦化、封止材の収縮と反り、基板コア、C4とリフロー。どれも関連研究はあるが、CoPoSでの採用は確認できない
  • 反りは材料でも下げられる:封止材の分子構造に柔らかい鎖を入れる道がある(FOPLP向け、2018年)
  • 数字は出所を確認:公式資料で裏が取れない寸法・時期・顧客は使わない

9. 用語集

CoPoS
TSMCが取り組みを認めている、パネルを使う先端パッケージ。名称の展開形は公式資料では未確認(Chip-on-Panel-on-Substrateと読まれる)。
CoWoS
Chip on Wafer on Substrate。TSMCの2.5D先端パッケージング技術。S/R/Lの3方式がある。
パネル
円形ウェハの代わりに使う、角形の大型基板。ガラスや有機材料などがある。
FOPLP
Fan-Out Panel Level Packaging。ファンアウト型パッケージをパネル上で作る方式。
パイロットライン
量産の前に、工程や装置を検証するための小規模な試作ライン。
インターポーザ
チップを載せて相互接続する中間の層。シリコン製とRDL製がある。
RDL
再配線層。ポリマーと銅で作る、薄い配線層。
LSI(局所シリコン相互接続)
CoWoS-Lで必要な箇所にだけ埋め込む、シリコンの配線片。
レチクル
露光装置が一度に転写できる領域。TSMCは1レチクル=約830 mm²としている。
EMC
エポキシ封止材。チップを埋めて保護し、構造体としても働く。
CMP
化学機械研磨。薬液と研磨パッドで面を平らにする工程。
ダマシン配線
絶縁層に溝を掘り、銅を埋めて余分を研磨で除く配線の作り方。
ディッシングとエロージョン
CMPで、軟らかい配線部が凹む現象と、配線が密な領域が削られすぎる現象。
ダイシフト
樹脂の流動や収縮で、並べたチップの位置がずれる現象。
CTE
熱膨張係数。材料間の差が反りと応力を生む。
ガラス転移温度(Tg)
樹脂が硬い状態から柔らかい状態へ変わる温度。
C4バンプ
インターポーザとパッケージ基板をつなぐはんだバンプ。
SEMI 3D20
PLP用途のパネル外形寸法・厚さ・反り・質量を規定するSEMI規格。

10. 参考資料(一次情報)

  1. TSMC「2026年第1四半期 決算説明会 発言録」2026年4月16日(PDF) — investor.tsmc.com
  2. TSMC「2026年第2四半期 決算説明会 発言録」2026年7月16日(PDF) — investor.tsmc.com
  3. TSMC「CoWoS®」技術ページ — 3dfabric.tsmc.com
  4. TSMC「TSMC Debuts A13 Technology at 2026 North America Technology Symposium」2026年4月 — pr.tsmc.com
  5. IEEE ECTC「2026 ECTC Technical Tipsheet」2026年5月20日付(PDF。Resonac Paper 14.2、USHIO Paper 28.2、TSMC Paper 6.3 ほか) — ectc.net
  6. Che, Yamamoto, Rao(A*STAR IME)「Panel Warpage and Die Shift Simulation and Characterization of Fan-Out Panel-Level Packaging」2020 IEEE 70th ECTC(DOI 10.1109/ECTC32862.2020.00325) — ieeexplore.ieee.org
  7. Kikuchi, Nedzu, Sugino(リンテック)「Warpage Analysis with Newly Molding Material of Fan-Out Panel Level Packaging and the Board Level Reliability Test Results」2018 IEEE 68th ECTC(DOI 10.1109/ECTC.2018.00149) — ieeexplore.ieee.org
  8. SEMI「SEMI 3D20 — Specification for Panel Characteristics for Panel Level Packaging (PLP) Applications」 — store-us.semi.org
  9. ASE「Fan-Out Packaging」 — ase.aseglobal.com
  10. John H. Lau「Recent Advances and Trends in Fan-Out Wafer/Panel-Level Packaging」Journal of Electronic Packaging 141(4), 2019(DOI 10.1115/1.4043341) — doi.org
  11. TSMC「TSMC Unveils Next-Generation A14 Process at North America Technology Symposium」2025年4月23日 — pr.tsmc.com

11. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
2026年4月16日の決算説明会で、アナリストの質問(CoPoSかCoWoS-Lか3Dか)をIR担当者が「CoWoS-Lか、パネルレベルか」と言い換え、Wei会長が「非常に大きなレチクルのCoWoSを供給している。CoPoSにも取り組んでいる。両方を合わせて妥当なコストで十分な容量を提供するため、パイロットラインを今建設しており、量産は数年後。現時点の主力は大型CoWoS」と回答したことTSMC 2026年第1四半期 決算説明会 発言録(2026/4/16)[参考資料 1]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-04/3cef85204275f94fd111485cfdf4adb3c0263c45/TSMC%201Q26%20Transcript.pdf事実
量産時期が「数年後(a couple of years later)」と述べられただけで、年は示されていないことTSMC 2026年第1四半期 決算説明会 発言録。発言は計画であり、実績ではない[参考資料 1]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-04/3cef85204275f94fd111485cfdf4adb3c0263c45/TSMC%201Q26%20Transcript.pdf未確定/将来
SoICやパネルレベルで反りなどを解けるかという質問に、Wei会長が、機械的ストレス・反り・熱の制約が先端パッケージの課題であり、ダイサイズを大きくしながら取り組んできたと回答したこと。パネルへの個別の言及がないことTSMC 2026年第1四半期 決算説明会 発言録[参考資料 1]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-04/3cef85204275f94fd111485cfdf4adb3c0263c45/TSMC%201Q26%20Transcript.pdf事実
2026年7月16日の決算説明会で、ガラス基板・ガラスコアの進捗の質問に、Wei会長が「現状の大半はCoWoS。コストを下げる代替策を開発し、基板メーカーとも協力。以前発表したライン(発言録の語はpipeline)が成熟するまで約1年」と回答したこと。CoPoSという語が使われていないことTSMC 2026年第2四半期 決算説明会 発言録(2026/7/16)[参考資料 2]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-08/3e494f0c14dd0890f897aa044415e21d93486cc4/TSMC%202Q26%20Transcript.pdf事実
「約1年」という成熟の見通しTSMC 2026年第2四半期 決算説明会 発言録。計画であり、実績ではない[参考資料 2]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-08/3e494f0c14dd0890f897aa044415e21d93486cc4/TSMC%202Q26%20Transcript.pdf未確定/将来
CoWoS-Sは最大3.3レチクル(約2,700 mm²)。CoWoS-Rは、ポリマーと銅のRDLインターポーザで比較的柔軟、C4接合の健全性を高める。最小4 µmピッチ(L/S 2/2 µm)、2023年から量産。RDL層とC4/アンダーフィルがSoCと基板のCTE差の緩衝になる。CoWoS-Lは、RDLベースのインターポーザにLSIなどを組み合わせ、モールドベースのインターポーザを持つ。3.5レチクル級が2024年から量産。CoWoSは2012年から量産TSMC CoWoS技術ページ[参考資料 3]https://3dfabric.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/cowos.htm事実
1レチクル=約830 mm²TSMC CoWoS技術ページ(本稿は他の世代の面積を830 mm²×レチクル数として算出)[参考資料 3]https://3dfabric.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/cowos.htm事実
2026年4月のシンポジウム関連発表で、5.5レチクル級CoWoSを生産中、14レチクル級(演算ダイ約10個とHBM20個)を2028年に予定。パネル・CoPoSへの言及がないことTSMC プレスリリース(2026年4月)[参考資料 4]https://pr.tsmc.com/english/news/3302事実
14レチクル級の2028年生産予定TSMC プレスリリース。計画であり、実績ではない[参考資料 4]https://pr.tsmc.com/english/news/3302未確定/将来
2025年4月の発表で9.5レチクル級CoWoSを2027年に量産予定とし、パネル・CoPoSへの言及がないことTSMC プレスリリース(2025/4/23)[参考資料 11]https://pr.tsmc.com/english/news/3228事実
2025年7月・10月、2026年1月・7月の決算説明会発言録にCoPoSという語が見当たらないこと(2026年1月の発言録にはアナリストの「panel」への言及はある)TSMC 決算説明会 発言録(本稿が全文を機械的に検索した結果)[参考資料 1]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-04/3cef85204275f94fd111485cfdf4adb3c0263c45/TSMC%201Q26%20Transcript.pdf[参考資料 2]https://investor.tsmc.com/english/encrypt/files/encrypt_file/reports/2026-08/3e494f0c14dd0890f897aa044415e21d93486cc4/TSMC%202Q26%20Transcript.pdf事実
CoWoS-R/-Lの構成が、角形の面でも扱える材料系(ポリマーと銅の配線、モールド樹脂)であるという読み取り。CoPoSがどの方式を土台にするかは確認できなかった公表内容にもとづく本記事の整理。TSMCや他社が表明した見解ではない解説
ECTC 2026でレゾナックが、パネル上の有機インターポーザの研究について「320×320 mmや510×515 mmのパネル」と2つの寸法を挙げていること。インターポーザが9.5レチクル級になると円形300 mmウェハの有効面積が限界になること。320×320 mmガラスパネル上でL/S 2/2 µmの有機ポリマー・ダマシン配線を2段階CMPで平坦化し、Cu/Ti/ポリマー界面の共平坦性100 nm未満、研磨後の段差100 nm未満、パッドの溝設計とスラリー流れの最適化を行ったこと(Paper 14.2)ECTC 2026 技術プログラム紹介資料(2026/5/20付)[参考資料 5]https://ectc.net/wp-content/uploads/2023/03/2026-ECTC-REVISED-Technical-Tipsheet-with-images.pdf事実
ECTC 2026でUSHIO(ウシオ電機)が、510×515 mmガラス基板上で18レチクル相当の領域をつなぎ目なしで一括露光し、L/S 1.5 µmを形成すること。従来の基板用ステッパより4倍以上広いこと。有機・ガラス基板の厚みのばらつきを許容できるプロセスマージン22 µm(Paper 28.2)ECTC 2026 技術プログラム紹介資料[参考資料 5]https://ectc.net/wp-content/uploads/2023/03/2026-ECTC-REVISED-Technical-Tipsheet-with-images.pdf事実
ECTC 2026でTSMCが、CoWoSの封止材(EMC)とシリコンダイ角部の界面剥離が主要な懸念で、インターポーザの剛性がCTE差の緩和に重要であると報告すること(Paper 6.3)。TSMCの発表紹介にCoPoSの発表が見当たらないことECTC 2026 技術プログラム紹介資料。本稿が参照したのは発表の紹介文であり、論文本文ではない[参考資料 5]https://ectc.net/wp-content/uploads/2023/03/2026-ECTC-REVISED-Technical-Tipsheet-with-images.pdf事実
A*STAR IMEの発表:モールドファースト方式のFOPLP(550×650 mmガラスキャリア)で、有限要素法とタグチ法により工程ごとの反りとダイシフトの支配因子を調べ、構造設計・工程最適化・材料選定による低減策を示した。自重の影響をモデル化すると、台に置いた場合は反りが大きく減るが、縁を支えると反りが増え、薄いパネルの取り扱いが課題になるChe, Yamamoto, Rao, ECTC 2020(IEEE Xplore)[参考資料 6]https://ieeexplore.ieee.org/document/9159466事実
リンテックの発表:シリカを高充填せずにパネルの反りを大きく減らす封止材。エポキシ樹脂の剛直な構造の一部を柔軟な分子鎖に置換し、ガラス転移温度で強い応力緩和を示し、反りを1/5に低減。低いガラス転移温度を持つが、シリコン面へのダイシェア強度は250 ℃で50 N超(5×5 mm²)、390 ℃での重量減5%未満。MSLレベル2後のリフロー、JEDEC条件Bの温度サイクル(−55/+125 ℃・2,000サイクル)、ボードレベル試験を実施。FOPLPとPCB製造は同程度のサイズの基板パネルを使うためラインを部分的に再利用できる可能性があるとも述べているKikuchi, Nedzu, Sugino, ECTC 2018(IEEE Xplore)[参考資料 7]https://ieeexplore.ieee.org/document/8429662事実
SEMI 3D20がPLP用途のパネル外形寸法・厚さ・反り・質量を規定し、現行版が3D20-0921であること。多数のパネルサイズが検討されていることSEMI 3D20 規格情報ページ[参考資料 8]https://store-us.semi.org/products/3d02000-semi-3d20-en-specification-for-panel-characteristics-for-panel-level-packaging-plp-applications事実
ASEがパネルレベル・ファンアウトで、300×300 mmパネルを高密度(チップラスト)、600×600 mmパネルを低密度(チップファースト)向けとしていることASE Fan-Out Packaging[参考資料 9]https://ase.aseglobal.com/fan-out-packaging/事実
FOPLPの総説が、反りと、一時的キャリア(ウェハかパネルか)を主要な論点として整理していることLau, J. Electron. Packag. 141(4), 2019[参考資料 10]https://doi.org/10.1115/1.4043341事実
取り数と面積利用率(17/36/81、9/16/49、5/9/25、2/4/16個など)。面積=830 mm²×レチクル数(3.3レチクルは2,700 mm²)、正方形換算、φ300 mmウェハは格子配置・4隅が円内・原点を1 mm刻みで探索、パネルは端から詰めた個数、エッジ除外・切りしろ・隙間は無視。パネル寸法320×320 mm・510×515 mmは研究例の寸法であり、CoPoSの寸法ではない1レチクル=830 mm²、3.3レチクル=2,700 mm²(TSMC公表)、φ300 mmウェハの半径150 mmから算出本稿の計算
14レチクルを510×515 mmパネルに16個載せた場合、パネル1枚の不良は16個分の損失になる16個(上の取り数)にもとづく算出本稿の計算
CTE差1 ppm/K・温度変化235 Kあたりの自由膨張の差:150 mmで約35 µm、160 mmで約38 µm、255 mmで約60 µm、角の約362 mm(√(255²+257.5²))で約85 µm。角はウェハ端の約2.4倍ずれ=距離×CTE差×温度変化。温度変化235 Kはリフロー約260 ℃から25 ℃(「熱膨張係数」編と同じ前提)、完全に自由に伸び縮みする仮定。実際は拘束され、応力になる本稿の計算
パネルの取り数はパネルと製品の寸法の割り算の丸めで決まり、パネルなら常に有利とは限らないこと。パネル寸法が定まらないと装置・材料の供給形態を絞れないという整理上の計算結果と、公表内容にもとづく本記事の整理解説
硬い土台から柔らかい層へ、という設計の移動。パネルでは平坦性と剛性を受け持つのがパネル自体とその上の樹脂層になるという整理。インターポーザを柔らかくする方向と剛性で緩和する方向がトレードオフになりうるという読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。論文や企業が述べた主張ではない解説
露光領域の問題、基板の厚みのばらつきと焦点の関係、銅・バリアメタル・ポリマーの研磨のされ方の違い、封止材の低反り化の2つの道(CTEを下げる/応力緩和)、搬送・保持の条件が反りに入り込むこと材料工学・プロセス上の一般的な関係にもとづく解説。特定製品の数値主張は行っていない解説
名称の展開形(Chip-on-Panel-on-Substrate)TSMCの公式資料(発言録・技術ページ・プレスリリース)で確認できなかったため、公式の表記とは断定しない。本稿は名前の読み方の説明として使用解説
CoPoSのパネル寸法、パネルとインターポーザ層・基板コアの材料(ガラスか有機か)、パイロットラインの場所と稼働日、量産の年と工場、顧客、CoWoSとの置き換え・併存の方針、CoPoSに関するTSMC自身の学会発表TSMCの公開資料では確認できなかったため記載していない。報道で伝えられる数字・顧客名は、公式資料で裏が取れないため使用していない解説
CoPoSのパイロットライン稼働や量産が始まったこと本稿の調査時点(2026年10月)で、実績を示すTSMCの一次情報は確認できなかった未確定/将来
図1・図3・図4・図5・図6が実際の構造図・設計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図2がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月3日/出典はTSMCの決算説明会発言録・公式サイト・プレスリリース、学会(IEEE ECTC)の発表、標準化団体・企業の公表資料に限定しています。 構造の整理や材料面の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 CoPoSの名称の展開形、パネル寸法、材料、パイロットラインの場所と稼働日、量産の年、顧客、CoWoSとの置き換え関係は、TSMCの公開資料で確認できなかったため記載していません。 学会発表は、プログラム紹介資料または抄録で確認した範囲で記述しており、論文本文は参照していません。第6章・第7章の研究は、CoPoSではなく、パネル上の有機インターポーザおよびFOPLPのものです。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図3・図4・図5・図6はベクター作図、ヒーロー画像と図2はAI生成イメージであり、いずれも実際の構造・寸法比を正確に表すものではありません。