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オントゥ・イノベーション|半導体後工程 企業解説

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COMPANY PROFILE / 半導体後工程

オントゥ・イノベーション(オント・イノベーション)
― 2019年に2社が合併して生まれた、後工程の「目」を作る会社

Onto Innovationは、半導体の製造ラインに置かれる検査(インスペクション)と計測(メトロロジー)の装置を作る会社です。 チップそのものも、パッケージも作りません。作られたものが正しくできているかを見る装置を売っています。 後工程の記事にこの名前が出てくるのは、 バンプ・再配線層・積層体といった後工程特有の構造を見る装置で、数少ない供給者のひとつだからです。 2019年にRudolph TechnologiesとNanometricsが合併してできた会社でもあります。

構成:Onto Innovationの米国SEC提出書類(2025年度 Form 10-K、2026年第2四半期 Form 10-Q、四半期決算発表の Form 8-K 添付資料、2019年の合併に関する Form 8-K)を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるOnto Innovation(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 何をしている会社か ― 2社の合併で生まれた経緯を含めて
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
  8. 直近の投資計画
  9. 提携している大手企業
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるオントゥ・イノベーション

正式名称Onto Innovation Inc.米国デラウェア州法人。旧名 Nanometrics Incorporated
本社の所在国米国マサチューセッツ州ウィルミントン(16 Jonspin Road)
現社名での発足2019年10月25日NanometricsとRudolph Technologiesの合併完了と同時に改称
上場ニューヨーク証券取引所 ONTO発行済株式 49,702,361株(2026年2月5日時点)
2025年度 売上高US$10億0,526万前年比 +1.8%。2025年度は53週決算(〜2026年1月3日)
従業員数約1,615人2026年1月3日時点。うち55%が米国内
企業カテゴリーメーカー
(検査・計測装置)
チップもパッケージも作らない。装置とソフトウェアを売る
受注残高10億ドル超2026年6月末時点。会社は「創業以来初めて」と表現
まず押さえるべき1点

この会社の売上は約10億ドル。同じ半導体装置業界のApplied MaterialsやASMLと比べれば2桁小さい会社です。 それでも後工程の話に必ず出てくるのは、装置の種類が特殊だからです。 後工程では、バンプ(チップをつなぐ小さな金属の突起)や再配線層といった、 前工程の回路パターンとはまったく違う大きさ・形の構造を、 非常に高い速度で全数近く見なければなりません。 この「大きめの欠陥を、広い面積で、速く見る」領域は前工程の検査装置とは別の技術で、 会社によれば競合は世界で数社に絞られます 事実。

2. ロゴと社名の表記について

「Onto Innovation」および製品名(Dragonfly、Firefly、JetStep、Discover、NovusEdge、Element など)は 同社の登録商標または商標です(10-Kの製品名に ® / ™ が付されています)。 本稿では生成画像によるロゴの再現を行いません。掲載する場合は 公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。

表記の注意:日本語では「オント・イノベーション」と書かれますが、 定訳は定着していません。旧社名の「ナノメトリックス」「ルドルフ・テクノロジーズ」で 記憶している人も多く、古い資料ではこの2つの名前で出てきます。

公式サイト:https://www.ontoinnovation.com/

3. 何をしている会社か ― 2社の合併で生まれた経緯を含めて

まず、合併の事実関係

「2019年にRudolph TechnologiesとNanometricsが合併してできた会社」という説明は、 SECの提出書類で次のとおり確認できます 事実。

日付できごと一次情報
2019年6月23日Nanometrics Incorporated、Rudolph Technologies, Inc.、およびNanometricsの完全子会社PV Equipment Inc.の3者が合併契約(Agreement and Plan of Merger)を締結2019年10月28日提出のForm 8-K
2019年10月24日Nanometricsの臨時株主総会で、Rudolph株主への株式発行と授権株式数の増加(4,700万株→9,700万株)を承認2019年10月24日付のForm 8-K
2019年10月25日PV EquipmentがRudolphに吸収合併され、RudolphはNanometricsの完全子会社として存続。同時にNanometricsが「Onto Innovation Inc.」へ改称同上
2019年10月25日Rudolph株1株につきOnto Innovation株0.8042株を交付(交換比率)同上
2019年10月28日ナスダックからニューヨーク証券取引所へ上場を変更し、ティッカーを「NANO」から「ONTO」へ同上
法人としては「Nanometricsが残った」

「対等合併」という言い方をされますが、法人格として存続したのはNanometricsのほうです。 SECの企業データベース上も、CIK 704532という同じ登録番号が 「NANOMETRICS INC」(1995年9月8日〜2019年10月25日)から 「ONTO INNOVATION INC.」へ名称変更された扱いになっています 事実。 Rudolphは子会社として吸収された側です。 本稿の5年分の業績数値が2019年以前とつながっているのは、そのためです。

なお、NanometricsとRudolphそれぞれの創業年は、 本稿で参照した一次情報からは確認できませんでした 未確定/将来。

今の事業

会社は自らを「半導体産業向けの計測・検査ツールの設計・開発・製造・サポートにおける 世界的リーダー」と説明しています 事実。 売っているものは大きく3つです。

売上の区分中身2025年度(US$千)構成比
システム・ソフトウェア検査装置、計測装置、パッケージ用リソグラフィ装置、歩留まり管理ソフトウェア847,83584%
部品補修部品の販売84,2008%
サービス保守契約、システムのアップグレード、実費請求のサービス73,2288%
合計―1,005,263100%

顧客は、シリコンウェハのメーカー、半導体の集積回路(IC)製造会社、 そして先端パッケージングの製造会社です。 会社は自社の製品が「前工程(front-end)と後工程(back-end)の両方で使われる」と明記しています 事実。

素材技術者の視点:前工程の検査と後工程の検査は別物

前工程の検査は、数ナノメートルの回路パターンの中に紛れ込んだ微細な欠陥を探す仕事です。 対して後工程の検査は、数十マイクロメートルのバンプの高さ・位置・形、 再配線層の断線、モールド後の反りやボイド、積層体の位置ずれを見る仕事です。 桁が3つ違います。そして後工程では、1つのパッケージに複数の高価なチップが載るため、 「1個の不良で全部が無駄になる」という構造があります。 会社はこれを「高価なパッケージに欠陥チップが1つ組み込まれるのを防ぐため、 組立工程を通じて先端パッケージの検査率は高い」と表現しています 事実。 材料側から見ると重要なのはこの一文の後半です。 後工程の検査装置の需要は、微細化の世代交代ではなく「組み立てる数量」に連動すると 会社自身が言っている。つまりAIチップの出荷数量がそのまま装置需要になる構造です。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

Onto Innovation 年間売上高の推移(US$ 百万) 決算期は12月末〜1月初。2025年度は53週間(2024年12月29日〜2026年1月3日) 1,200 900 600 300 0 789 純利益 142 1,005 純利益 223 816 純利益 121 987 純利益 202 1,005 純利益 137 2021年度 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度 2025年度は売上ほぼ横ばいで純利益が32.2%減。買収費用と在庫評価減が効いた
図1 Onto Innovationの年間売上高と純利益(2021〜2025年度)。出典:各年度のForm 10-K(SECのXBRL企業ファクトAPIから取得)。2022年度と2025年度がほぼ同額なのは偶然で、中身はかなり変わっている 本稿の計算。
年度売上高(US$千)営業利益(US$千)純利益(US$千)研究開発費(US$千)設備投資(US$千)
2021年度788,899156,407142,34996,11812,039
2022年度1,005,183236,714223,334111,95318,405
2023年度815,868116,078121,159104,44222,573
2024年度987,321187,103201,670116,76731,903
2025年度1,005,263132,927136,759131,97828,513

※2025年度は53週間の決算です。研究開発費は5年で37.3%増え、売上に対する比率は12.2%→13.1%になりました 本稿の計算。

2025年度に何が起きたのか

売上は前年比+1.8%とほぼ横ばいですが、純利益は2億167万ドルから1億3,676万ドルへ32.2%減りました 本稿の計算。 会社は理由を3つ挙げています 事実。

  1. 売上総利益率が52.2%→49.7%へ低下。滞留・陳腐化在庫の評価減、インフラ移行に伴う再編費用、外部委託製造の立ち上げ費用による
  2. 営業費用が3億2,821万ドル→3億6,684万ドルへ増加。再編費用、Semilab USA買収の取引費用と無形資産償却、研究開発プロジェクト費用、人件費の増加による
  3. 売上の中身の変化:NANDとOSAT向けが伸びた一方、ファウンドリとDRAM向けが減った
読み違えやすいところ

「AI向け先端パッケージングが伸びているのに減益」という形になっています。 実際、会社は2025年度のシステム・ソフトウェア売上の減少理由を 「AI用途のチップ向け先端パッケージングを支える検査製品ラインの出荷台数が減ったため」 と書いています 事実。 装置産業では、顧客が能力を積み増す年と、積み増した能力を使い切る年が交互に来ます。 後工程の需要が強いことと、装置が毎年売れ続けることは別の話です。

2026年に入ってから

指標2025年第2四半期2026年第2四半期2026年第3四半期の見通し
売上高(US$百万)253.6343.1380〜400
売上総利益率48.2%53.4%57.3〜57.8%
営業利益率12.7%18.5%21.4〜22.4%
希薄化後1株利益(US$)0.691.211.54〜1.70

※いずれもGAAPベース。2026年第3四半期の数字は会社の見通しであり実績ではありません 未確定/将来。2026年第2四半期の売上343.1百万ドルは四半期として過去最高で、6か月累計は635.1百万ドルでした。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーはメーカー(検査・計測装置)です。 チップも作らず、パッケージも組み立てず、材料も供給しません。 後工程のサプライチェーンでは、OSATやメモリメーカーの工場に装置を納める立場にあります。

2025年度 地域別の売上高(US$ 千) 出荷先の所在地で分類。台湾・韓国の2か国で全体の60%を占める 台湾 318,770(32%) 韓国 279,416(28%) 米国 121,072(12%) 日本 95,428(10%) 中国 70,658(7%) 東南アジア 64,344(6%) 欧州 55,575(5%) 中国向けは2023年度の17%から2025年度の7%へ下がった。会社は輸出規制の影響をリスクに挙げている
図2 2025年度の地域別売上高。出典:2025年度Form 10-K。製造拠点は米国に集中しているのに、売上の8割以上はアジア向けという構造です。

もう少し具体的に、この会社の装置が工程のどこに入るのかを整理します。

同じ会社の装置が、前工程にも後工程にも入る 製品名は2025年度Form 10-Kに記載されたもの 前工程(ウェハ工場) 薄膜計測・OCD計測・ウェハ検査 NovusEdge/Element/MBIR ほか (膜厚・寸法・汚染を測る) 後工程(パッケージ・テスト) マクロ欠陥検査・パッケージ用リソグラフィ Dragonfly G3/Firefly/JetStep X500 (バンプ・RDL・積層体の欠陥を見る) 前工程の装置需要は微細化の世代交代で動き、後工程は組立数量で動く ただし会社は単一の報告セグメントであり、前後工程別の売上は開示していない Dragonfly と Firefly は前工程の工場にも後工程の工場にも設置されると会社は記載している
図3 製品が使われる工程の整理。出典:2025年度Form 10-K「Business」。製品名はいずれも同社の登録商標または商標です 未確定/将来。

6. 拠点と工場のある国

この会社の拠点構成には、はっきりした特徴があります。 製造はすべて米国内、海外は販売とサービスだけです 事実。 10-Kは「当社の長期性資産の実質的にすべては米国内に所在する」と明記しています。

拠点国用途床面積(平方フィート)
ウィルミントン(マサチューセッツ州)米国本社、エンジニアリング、サービス77,500
ミルピタス(カリフォルニア州)米国エンジニアリング、製造、サービス、管理。唯一の自社所有物件134,600
ブルーミントン(ミネソタ州)米国エンジニアリング、製造、サービス、管理98,700
タンパ(フロリダ州)米国エンジニアリング、製造、サービス、管理52,800
バッドレイク(ニュージャージー州)米国エンジニアリング、サービス、管理48,900
ツーソン(アリゾナ州)米国エンジニアリング、製造、サービス18,900
ノースビレリカ(マサチューセッツ州)米国エンジニアリング、製造、サービス14,400
ヒルズボロ/スノコルミー米国(オレゴン州/ワシントン州)エンジニアリング、サービス17,100/20,300
台湾台湾販売、サービス38,600
韓国韓国販売、サービス37,000
中国中国販売、サービス、エンジニアリング28,600
日本日本販売、サービス12,400
シンガポールシンガポール販売、サービス11,300

※10-Kの「主要施設」一覧(2026年1月3日時点)。このほかドイツ、オランダ、マレーシア、ベトナムにも賃借物件があります。賃貸借契約の満了は最長で2035年11月30日。

素材技術者の視点:製造が米国で、顧客がアジアにいるということ

売上の86%がアジア向け(台湾32%+韓国28%+日本10%+中国7%+東南アジア6%、本稿の計算)で、 製造拠点はすべて米国内 本稿の計算。 装置は出荷したら終わりではなく、立ち上げ・条件出し・保守が長く続きます。 だから海外拠点が「販売とサービス」で、人員の内訳でも 営業・アプリケーション・サービス支援が739人と全従業員1,615人の46%を占める のは自然な形です 本稿の計算。 逆にいえば、この会社の競争力は装置の性能だけでなく、 顧客の工場でレシピを作り込む人の数と質に相当程度依存しています。 材料や工程条件が変わるたびに検査レシピを作り直す必要があるため、 ここは材料メーカーが装置メーカーと直接やり取りする接点にもなります。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

後工程に関わる製品

Dragonfly G3
マクロ欠陥検査装置の最新機種。ウェハ工場(前工程)とパッケージ工場(後工程)の双方に設置される。高速で、レシピをウェハなしで作れる。
Firefly
パネルレベルのマクロ検査装置。高解像度の検査を行い、ダイごとの欠陥の位置情報をリソグラフィ装置に渡す。
JetStep X500
先端パッケージング向けのリソグラフィ装置。もとはフラットパネルディスプレイ市場から来た技術で、薄い有機積層パネル上に再配線層(RDL)を作る。
StepFAST
Fireflyが検出した欠陥位置をJetStepに渡し、リソグラフィのスループットを上げる同社独自のプロセス。
Discover
歩留まり管理ソフトウェア。検査で集めた大量のデータを分類・解析し、歩留まりに直結する原因を特定する。
ADC
Automated Defect Classification。明視野と暗視野で同時に撮ったウェハ全面の画像を無欠陥の理想画像と比較し、差分を数学的なベクトルに分解して既知の欠陥ライブラリと照合する。

パネル化という、この会社にとって大きな話

10-Kのなかで後工程に関して最も踏み込んで書かれているのが、 300mmの丸いウェハから、四角いパネルへの移行です 事実。

会社の説明(要旨)

先端パッケージング工場は、保有コストを下げ生産性を上げるために、 300mmウェハから最大650mm×650mmの大きな長方形パネルへ移行しつつある。 丸いウェハの制約を受けなくなるため、1工程あたりで処理できるデバイス数が増える。 JetStep X500はもともとフラットパネルディスプレイ市場から来た装置なので、 この用途にそのまま使える。Fireflyと組み合わせれば、設備投資を抑えながら ウェハベースからパネルベースへ移行する道筋を提供できる ― というのが会社の主張です。

丸いウェハは面積の端が捨て地になりますが、四角いパネルなら隙間なく並べられます。 大きなAIチップのパッケージほど、この差は効きます。 ただし平坦度・反り・熱膨張の管理は難しくなり、検査の必要性はむしろ上がる。 この会社がパネル化を歓迎する理由はそこにあります。

シェアについて ― ここは正直に書きます

確認できなかったこと

Onto Innovationは、後工程向け装置の売上も、市場シェアも公式には開示していません。 会社は単一の報告セグメントで開示しており、 「Advanced Nodes(先端ノード)」「Specialty Devices and Advanced Packaging(特殊デバイスと先端パッケージング)」 という市場区分は決算説明の文章に出てきますが、金額の内訳は示されていません 未確定/将来。 「先端パッケージ検査のシェアは○%」といった数字は調査会社や報道の推計であり、 本稿では採用しません。

一次情報から言えるのは、会社が自ら挙げている競合の顔ぶれです 事実。市場ごとに相手が違う点に注目してください。

市場会社が挙げる主要な競合
薄膜計測・OCD計測(主に前工程)KLA Corporation、Nova Ltd.
先端パッケージング検査KLA Corporation、Camtek Ltd.
先端パッケージング用リソグラフィUshio, Inc.(ウシオ電機)、Canon, Inc.(キヤノン)
パネル市場の検査GigaVis Co. Ltd.

※会社は「一部の競合は当社より大きな財務・研究・製造・マーケティング資源を持つ可能性がある」とも記載しています。

顧客はどこに集中しているか

売上の10%以上を占めた顧客2023年度2024年度2025年度
顧客A14%23%20%
顧客B19%17%15%
顧客C10%未満12%14%
3社合計―52%49%

※合計は本稿の計算 本稿の計算。会社は顧客名を開示していません 未確定/将来。2026年1月3日時点で、1社の売掛金残高が全体の約12%を占めていました。

8. 直近の投資計画

この会社は工場を建てる会社ではないので、設備投資の額は小さく(2025年度で2,851万ドル)、 成長のための支出は研究開発と企業買収に向かいます。

2025年度 研究開発費US$1億3,198万売上比13.1%。5年前(2021年度)は9,612万ドル
2025年度 設備投資US$2,851万売上比2.8%。前年(3,190万ドル)から減少
Semilab USA買収取得価額 US$5億2,660万2025年11月17日取得。2025年度の最大の資金使途
手元資金US$18億8,000万2026年6月末の現金・短期投資。2025年度末は6億3,960万ドル

Semilab USAの買収(2025年11月)

2025年度の第4四半期に、会社はハンガリーのSemilab International Zrt.の子会社である Semilab USA LLCを総額5億2,660万ドルで取得しました 事実。 加わったのは次の3つの製品ラインです。

製品ライン強化される領域
FAaSTインラインのウェハ汚染モニタリング
CnCV表面電荷計測(同社が「独自の」と表現する領域)
MBIR赤外反射測定による材料分析。高アスペクト比構造・膜・エピタキシャル層のプロセス制御
この買収について、数字で見ておくべきこと

取得日から2025年度末(2026年1月3日)までの約1か月半で、 Semilab USAが連結に寄与した売上は860万ドル、営業損失は620万ドルでした 事実。 買収に伴う棚卸資産の評価増(ステップアップ)は非経常の費用として売上原価に乗り、 2025年度に400万ドルを計上済み、残り約910万ドルが取得後1年かけて計上される見込みです。 また無形資産の償却により、繰延税金負債4,660万ドルが計上されています。 取得価額の配分は暫定値で、測定期間(取得日から12か月以内)に変更される可能性があると 会社自身が明記しています 未確定/将来。

なお、この買収は後工程向けではありません。 追加された3製品ラインはいずれもウェハや材料を対象とするもので、 この会社が後工程一本槍ではないことを示す動きだと読めます。

9. 提携している大手企業

確認できなかったこと

Onto Innovationの2025年度Form 10-Kおよび2026年第2四半期Form 10-Qには、 顧客名が一切記載されていません。 売上の10%以上を占める顧客は「顧客A」「顧客B」「顧客C」と匿名で開示されています。 したがって本稿は「Onto Innovationの装置がどの企業の工場に入っているか」を 提携として記載しません 未確定/将来。

一次情報から言える企業間の関係は、次のとおりです。

種類相手内容一次情報の有無
合併(2019年)Rudolph Technologies, Inc.Nanometricsの完全子会社として吸収。交換比率0.8042。同時にNanometricsがOnto Innovationへ改称2019年10月28日のForm 8-K 事実
買収(2025年)Semilab USA LLC(Semilab International Zrt.の子会社)総額US$5億2,660万で取得。FAaST/CnCV/MBIRの3製品ラインを取得2025年度Form 10-K 注記3 事実
競合KLA、Nova、Camtek、ウシオ電機、キヤノン、GigaVis市場ごとに会社が実名で列挙(第7節)2025年度Form 10-K 事実
顧客非開示(A 20%/B 15%/C 14%)2025年度。3社で売上の49%2025年度Form 10-K 注記15 事実

10. 今後のこの分野における存在感

事実として確定していること

事実後工程への含意
2026年6月末の受注残が10億ドルを超え、会社は「創業以来初」と表現年間売上とほぼ同規模の受注を抱えた状態で2026年後半に入った
2026年第2四半期の売上343.1百万ドルは四半期として過去最高先端ノードと先端パッケージングの両方が同時に伸びている
会社は先端パッケージの需要が2.5Dロジック・HBM・シリコンフォトニクスに支えられていると説明この3つはいずれも後工程の構造が複雑な領域であり、検査工程数が多い
先端パッケージの装置需要は「組立数量に連動する」と会社が明記微細化の世代交代を待たずに需要が立つ。ただし数量が止まれば需要も止まる
300mmウェハから最大650mm角パネルへの移行が進行中JetStep X500とFireflyを持つこの会社にとって直接の追い風
Semilab USAの買収で前工程・材料側の製品ラインが増えた後工程一本への依存を自ら減らそうとしている

見通し

未確定/将来 上の事実から素直に読めば、後工程の検査・計測におけるこの会社の存在感は当面続く方向です。 理由は2つあります。ひとつは、先端パッケージング検査の競合として会社が挙げているのが KLAとCamtekの2社しかないこと。もうひとつは、 パッケージが複雑になるほど検査の工程数が増える一方で、 検査装置は工程装置と違って「1台で何枚流せるか」の勝負になりにくく、 数量増がそのまま台数増につながりやすいことです。

未確定/将来 ただし、この会社を見るうえでは弱点も押さえておく必要があります。 売上規模が約10億ドルと、競合のKLAとは桁が違います。 研究開発費は年1億3,198万ドルで、これは大手の一部門にも満たない規模です。 「特定の領域で強いが、資源で押し切られると弱い」という構造は、 会社自身がリスク要因として「一部の競合は当社より大きな資源を持つ可能性がある」と 書いているとおりです 事実。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容裏づけとなる数字
顧客集中上位3社で売上の49%。1社が設備投資を止めるだけで業績が大きく動く2025年度:A 20%/B 15%/C 14% 本稿の計算
装置需要の循環性2023年度は前年比−18.8%の減収、営業利益も半減以下になった2022年度1,005,183→2023年度815,868(US$千) 本稿の計算
中国向けの減少と輸出規制中国向けが売上の17%(2023年度)から7%(2025年度)へ低下。会社は関税・輸出規制が中国など各国の顧客を巡る競争力に「既に悪影響を与えており、今後も与える可能性がある」と明記10-Kのリスク要因とセグメント情報
競合の資源差会社自身が「一部の競合は当社より大きな財務・研究・製造・マーケティング資源を持つ可能性がある」と記載10-Kのリスク要因
装置ベンダー切り替えの壁会社は「装置ベンダーを切り替えるコストが高いため、当社の装置が優れていても競合から新規顧客を獲得するのが難しい場合がある」とリスクに挙げる。参入障壁は自分にも向く10-Kのリスク要因
買収の統合Semilab USAは取得後1か月半で620万ドルの営業損失。取得価額の配分は暫定値で、12か月の測定期間内に変更されうる2025年度Form 10-K 注記3
在庫評価と再編2025年度は滞留・陳腐化在庫の評価減と再編費用で売上総利益率が2.5ポイント低下した52.2%→49.7% 本稿の計算
素材技術者の視点:この会社を見るときの指標

売上高より先に見るべきは受注残高(backlog)です。 装置は受注から検収まで数四半期かかるため、売上はいつも過去の需要を映します。 会社は2026年第2四半期の決算発表で受注残が初めて10億ドルを超えたと述べており、 これは直近の需要を先に教えてくれる数字です 事実。 もうひとつ見るべきは売上総利益率で、 2025年度に49.7%まで下がったものが2026年第2四半期に53.4%、 第3四半期の見通しでは57%台まで戻る計画になっています。 この回復が実現するかどうかが、2025年度の減益が一過性だったかを判定する材料になります 未確定/将来。

12. 用語集

メトロロジー(計測)
寸法・膜厚・形状・組成などを数値として測る技術。良品かどうかの判定ではなく、値そのものを得る。
インスペクション(検査)
欠陥があるかどうかを見つける技術。画像を比較して差分を探す方式が多い。
マクロ欠陥検査
ミクロン〜サブミリの比較的大きな欠陥を、ウェハやパネルの全面にわたって高速で探す検査。後工程で特に重要になる。
OCD計測
Optical Critical Dimension。光の反射スペクトルから、繰り返しパターンの断面形状や寸法を逆算して求める非破壊の計測手法。
RDL
Redistribution Layer(再配線層)。チップの電極を、パッケージ基板につなげる位置まで引き回すための薄い配線層。
パネルレベルパッケージング
丸い300mmウェハではなく、四角い大型パネル(最大650mm×650mm)の上でパッケージを作る方式。面積利用率が上がる。
ヘテロジニアス集積
種類の違うチップ(ロジックとメモリなど)を銅ピラーやバンプで縦横につなぎ、1つのパッケージにまとめる技術。
受注残高
受注済みでまだ売上に計上していない金額。装置産業では将来の売上の先行指標として見られる。
概念図:四角い大型パネルの上に並んだパッケージを、光学系が走査して見ている様子(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 パネルレベルの検査の概念図(AI生成による概念図。実際の装置や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Onto Innovation Form 10-K for the fiscal year ended January 3, 2026(米国SEC提出、2026年2月24日)。売上高・営業利益・純利益・研究開発費・設備投資、売上の区分別内訳、地域別売上、顧客集中度、従業員数と内訳、主要施設一覧、製品と市場の説明、競合企業名、Semilab USA買収の内容、リスク要因。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
  2. Onto Innovation 2026年第2四半期 決算発表(Form 8-K 添付資料 Ex-99.1、2026年8月6日)。第2四半期および6か月の業績、受注残高10億ドル超、先端ノード・先端パッケージングの動向、第3四半期の見通し。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526337990/onto-ex99_1.htm
  3. Onto Innovation(当時 Nanometrics Incorporated) Form 8-K(米国SEC提出、2019年10月28日)。Rudolph Technologiesとの合併完了、交換比率0.8042、Onto Innovation Inc.への改称、ナスダックからNYSEへの上場変更とティッカー変更。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312519275593/d823487d8k.htm
  4. 米国SEC EDGAR XBRL company facts API(CIK 0000704532)。2021〜2025年度の売上高・営業利益・純利益・研究開発費・設備投資(各年度のForm 10-Kから抽出された値)。https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0000704532.json
  5. 米国SEC EDGAR submissions API(CIK 0000704532)。旧社名「NANOMETRICS INC」(1995年9月8日〜2019年10月25日)の記録、上場市場(NYSE)、ティッカー(ONTO)、本社住所。https://data.sec.gov/submissions/CIK0000704532.json
  6. Onto Innovation(当時 Nanometrics Incorporated) Form 8-K(米国SEC提出、2019年10月24日)。臨時株主総会での合併関連議案の承認、授権株式数の4,700万株から9,700万株への増加。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312519273698/d823625d8k.htm

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社住所(16 Jonspin Road, Wilmington, MA)、上場市場(NYSE ONTO)、発行済株式数事実出典1・5https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
旧社名がNanometrics Incorporatedであり、2019年10月25日に改称された事実出典5・3https://data.sec.gov/submissions/CIK0000704532.json
2019年6月23日の合併契約、2019年10月25日の合併完了、交換比率0.8042、Rudolphが完全子会社として存続事実出典3https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312519275593/d823487d8k.htm
2019年10月24日の臨時株主総会での承認、授権株式数の増加事実出典6https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312519273698/d823625d8k.htm
ナスダックからNYSEへの上場変更、ティッカーのNANOからONTOへの変更(2019年10月28日)事実出典3https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312519275593/d823487d8k.htm
2025年度 売上高US$1,005,263千、営業利益US$132,927千、純利益US$136,759千事実出典1・4https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
2021〜2024年度の売上高・営業利益・純利益・研究開発費・設備投資事実出典4(各年度10-K)https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0000704532.json
前年比+1.8%、純利益の32.2%減、研究開発費の5年37.3%増と売上比12.2%→13.1%、2023年度の減収率−18.8%本稿の計算出典1・4の数値から算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
2025年度の減益要因(在庫評価減・再編費用・買収関連費用・製品構成)事実出典1のMD&Ahttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
売上総利益率 49.7%(2025年度)/52.2%(2024年度)/51.5%(2023年度)事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
売上の区分別内訳(システム・ソフトウェア847,835/部品84,200/サービス73,228 US$千)事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
地域別売上(台湾318,770/韓国279,416/米国121,072/日本95,428/中国70,658/東南アジア64,344/欧州55,575 US$千)事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
アジア向けが86%という合計本稿の計算出典1の地域別比率を合算https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
従業員 約1,615人、内訳(研究開発419/オペレーション263/管理194/営業・アプリケーション・サービス739)、米国55%・アジア太平洋40%・欧州5%事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
営業・サービス人員が全体の46%本稿の計算出典1の人員内訳から算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
主要施設の所在地・用途・床面積、ミルピタスのみ自社所有、長期性資産の大半が米国内事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
顧客集中度(2025年度 A 20%/B 15%/C 14%、2024年度 23/17/12%、2023年度 14/19/10%未満)、売掛金の12%が1社事実出典1 注記15https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
上位3社合計49%(2025年度)・52%(2024年度)本稿の計算出典1の開示値を合算https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
製品名(Dragonfly G3/Firefly/JetStep X500/Discover/NovusEdge/Element/MBIRほか)と用途事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
300mmウェハから最大650mm×650mmパネルへの移行、StepFASTの説明事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
先端パッケージの装置需要が「組立数量に連動する」という会社の説明事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
競合企業名(KLA/Nova/Camtek/ウシオ電機/キヤノン/GigaVis)と市場ごとの対応事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
Semilab USA買収(取得価額US$526.6百万、取得日2025年11月17日、FAaST/CnCV/MBIR、寄与売上8.6百万ドル・営業損失6.2百万ドル、棚卸資産ステップアップ400万+残910万ドル、繰延税金負債4,660万ドル)事実出典1 注記3https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
取得価額の配分が暫定値であること未確定/将来(会社が明記)出典1 注記3https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
2026年第2四半期の業績(売上343.1百万ドル、粗利率53.4%、営業利益率18.5%、EPS 1.21)と6か月累計635.1百万ドル事実出典2https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526337990/onto-ex99_1.htm
受注残高が10億ドルを超えたこと(2026年6月末)、手元資金18.8億ドル事実出典2https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526337990/onto-ex99_1.htm
2026年第3四半期の見通し(売上380〜400百万ドル、粗利率57.3〜57.8%ほか)未確定/将来(会社見通し)出典2https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526337990/onto-ex99_1.htm
中国向け売上比率の低下(17%→7%)と輸出規制のリスク記載事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
後工程向け装置の売上高、市場別(Advanced Nodes/Advanced Packagingなど)の金額内訳未確定/将来単一報告セグメントのため非開示。本稿では記載しない
先端パッケージング検査の市場シェア未確定/将来一次情報が存在しないため本稿では記載しない
顧客A・B・Cの企業名未確定/将来出典1・2に記載なし。本稿では推測しないhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/704532/000119312526066937/onto-20260103.htm
NanometricsおよびRudolph Technologiesそれぞれの創業年未確定/将来本稿が参照した一次情報からは確認できなかった
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)未確定/将来本稿による解釈。事実欄の6項目から導出

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてOnto Innovation Inc.(および合併前のNanometrics Incorporated)が米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。