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NVIDIA|半導体後工程 企業解説

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COMPANY PROFILE / 半導体後工程

NVIDIA(エヌビディア)
― 後工程の設備を1つも持たないのに、後工程を動かしている会社

NVIDIAはAI向け半導体で世界最大の設計会社です。工場は1つも持たず、 法定開示書類にも「当社は自社製品の組立・試験・パッケージングを行わない」と明記されています。 それでも半導体後工程の記事にNVIDIAが必ず登場するのは、 後工程の能力を買い占めている発注元がNVIDIAだからです。 「持っていないのに握っている」という構図を、公表資料の数字だけで追います。

構成:NVIDIA の米国SEC提出書類(2026年1月期 Form 10-K、2027年1月期第2四半期 Form 10-Q、EDGAR XBRLデータ)を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるNVIDIA(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 何をしている会社か ― 「ファブレス」という業態
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とシェア
  8. 直近の投資計画
  9. 提携している大手企業
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるNVIDIA

正式名称NVIDIA Corporation日本語では「エヌビディア」。社名は法定書類でも全て大文字の NVIDIA
本社の所在国米国(カリフォルニア州)2788 San Tomas Expressway, Santa Clara, California 95051
設立1993年4月カリフォルニア州で設立、1998年4月にデラウェア州法人へ移行
上場ナスダック
(Nasdaq Global Select Market)
ティッカー NVDA。発行済株式数 243億株(2026年2月20日時点)
2026年1月期 売上高US$2,159億
(215,938百万ドル)
前年比 +65%。会計年度は1月末締めで、この期は2026年1月25日に終了
従業員数約42,000人38か国。うち31,000人が研究開発(2026年1月期末)
企業カテゴリーメーカー
(ファブレス半導体)
設計だけを行い、製造・後工程はすべて外部に委託する
直近の供給コミットメントUS$2,790億供給・能力確保の契約残高。2026年7月26日時点、前四半期のUS$1,190億から急増
まず押さえるべき1点

NVIDIAの後工程売上はゼロです。パッケージングもテストも外部に出しているので、売るものがありません。 10-Kには 「当社はウェハ製造をファウンドリに依存する。当社は自社製品の組立・試験・パッケージングを行わず、独立した下請企業と契約する」 と書かれています 事実。 それでも後工程の記事にNVIDIAが最も多く登場するのは、 後工程の能力を先払いで押さえている当事者がNVIDIAだからです。 同社は10-Kで「半導体パッケージングにCoWoS技術を利用している」と名指しで開示しており、 2026年7月時点の供給・能力コミットメント残高は US$2,790億に達します。 「売上はゼロ、支払いは兆円規模」という非対称が、この会社を後工程の側から見るときの鍵です。

2. ロゴと社名の表記について

NVIDIAのロゴ(緑色の「目」を思わせるシンボルと NVIDIA のワードマーク)は同社の登録商標です。 本稿では生成画像やイラストによる再現は行わず、 掲載する場合は公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。 AIで「それらしく」描き起こしたロゴは、商標としても事実としても誤りになります。

表記の特徴:社名は法定書類でも全て大文字の NVIDIA で表記されます。 「Nvidia」「nVidia」といった表記は公式ではありません。日本語では「エヌビディア」が公式の読みです。

公式サイト:https://www.nvidia.com/en-us/

3. 何をしている会社か ― 「ファブレス」という業態

NVIDIAは半導体を設計するだけの会社です。10-Kの「Manufacturing(製造)」という項には、 次のように書かれています 事実。

10-Kの原文の要旨

「当社はファブレス(自社工場を持たない)かつ委託製造の戦略を採り、 ウェハ製造、組立、試験、パッケージングを含む製造工程のすべての段階について、 主要なサプライヤーと提携している」

「当社は半導体パッケージングにCoWoS技術を利用している。 当社は鴻海精密工業、緯創資通(Wistron)、Fabrinet といった独立した下請企業・受託製造業者と契約し、 最終製品の組立・試験・パッケージングを行わせている」

つまりNVIDIAが自社でやるのは、GPUやCPUのアーキテクチャ設計、ソフトウェア(CUDA、各種ライブラリ)、 システム設計、そして顧客とのやり取りまでです。 シリコンに関わる物理的な工程は1つも自社では行っていません。

事業は2つのセグメントで報告されています 事実。

セグメント内容2026年1月期 売上高営業利益
Compute & Networkingデータセンター向けの演算・ネットワーク基盤、AIソフトウェア、車載プラットフォーム193,479百万ドル130,141百万ドル
Graphicsゲーム・PC向けGeForce GPU、ワークステーション向けRTX GPU22,459百万ドル9,156百万ドル
合計―215,938百万ドル139,297百万ドル

※セグメント営業利益の合計(139,297百万ドル)には全社費用が配賦されていないため、連結の営業利益(130,387百万ドル)とは一致しません。会社がそう注記しています。

素材技術者の視点:なぜ「工場のない会社」が後工程の話に出てくるのか

材料メーカーの営業先として見れば、NVIDIAは顧客ではありません。 アンダーフィルもモールド樹脂もABF基板も、NVIDIAは1グラムも買っていないからです。 買っているのはTSMCであり、OSATであり、基板メーカーです。 にもかかわらずNVIDIAを追う必要があるのは、 「どのパッケージ構造を使うか」を最初に決めるのがNVIDIAだからです。 同社は10-Kで自ら「CoWoS技術を利用している」と書きました。 この一文が、シリコンインターポーザ、それに載せるHBM、外周のモールド材、 巨大化したパッケージを支える基板——という材料要求の連鎖を確定させています。 仕様の起点は発注元にあり、材料の需要量は発注元の生産計画で決まる。 だから後工程の材料を扱うなら、TSMCの設備計画と同じくらい、NVIDIAの供給コミットメントを見る必要があります。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

NVIDIA 年間売上高の推移(US$ 十億) 会計年度は1月末締め。「2026年1月期」は2025年1月27日から2026年1月25日までを指す 250 200 150 100 50 0 26.9 (+61%) 27.0 (+0.2%) 60.9 (+126%) 130.5 (+114%) 215.9 (+65%) 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期 2023年1月期がほぼ横ばいなのは暗号資産向けGPU需要の反動。その翌期からAI向けが立ち上がった
図1 NVIDIAの年間売上高(2022年1月期〜2026年1月期)。出典:各年度のForm 10-K および EDGAR XBRLデータ。括弧内の前年比は本稿で算出した。4年間で売上は8.0倍になっている。
決算期売上高(百万ドル)研究開発費(百万ドル)営業利益(百万ドル)純利益(百万ドル)
2022年1月期26,9145,26810,0419,752
2023年1月期26,9747,3394,2244,368
2024年1月期60,9228,67532,97229,760
2025年1月期130,49712,91481,45372,880
2026年1月期215,93818,497130,387120,067

※2023年1月期に営業利益が大きく落ちているのは、ゲーム向けの在庫調整と、買収断念に伴う費用が重なった期です。売上総利益率は2025年1月期の75.0%から2026年1月期は71.1%へ低下しました(会社の開示値)。

設備投資が極端に小さい

ファブレスであることは、貸借対照表にそのまま出ます 事実。

項目2026年1月期売上高に対する比率
売上高215,938百万ドル―
設備投資(有形固定資産・無形資産の取得)6,042百万ドル2.8% 本稿の計算
研究開発費18,497百万ドル8.6% 本稿の計算
有形固定資産(純額)10,383百万ドル4.8% 本稿の計算

※比較のために書くと、TSMCの2025年の設備投資は売上の33.4%でした。同じ「半導体の会社」でも、資本の使い方がまったく違います。

従業員 約42,000人の中身

人数の内訳も、この会社が何をしているかを示します 事実。

区分人数比率
研究開発約31,000人約74% 本稿の計算
営業・マーケティング・オペレーション・管理約11,000人約26% 本稿の計算
合計約42,000人38か国に分布

会社は「従業員の80%超が技術職、半数超が修士以上の学位を持つ」「2026年1月期の離職率は3.7%」とも開示しています 事実。 製造現場のオペレーターが1人もいない構成で、従業員1人あたりの売上高は約514万ドル(約7.7億円)に達します 本稿の計算。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーはメーカー(ファブレス半導体)です。 後工程業界の地図の上では、NVIDIAは受託側ではなく発注側に立っています。

2026年1月期 エンドマーケット別の売上高(百万ドル) データセンターだけで売上の89.7%。CoWoSを使うのはこの領域である データセンター 193,737(89.7%) ゲーミング 16,042(7.4%) プロ向け可視化 3,191(1.5%) 車載 2,349(1.1%) OEM・その他 619(0.3%) データセンターの内訳は 演算 162,361/ネットワーク 31,376(百万ドル) 比率はいずれも本稿で算出。会社が開示しているのは金額のみ
図2 2026年1月期のエンドマーケット別売上高。出典:2026年1月期 Form 10-K の「revenue by specialized markets」表。先端パッケージングを必要とするのはデータセンター向けの演算製品で、それが売上の大半を占める。
NVIDIAの製品ができるまでと、どこを自社でやるか 橙色の枠が後工程(先端パッケージング)。NVIDIAはここに設備も人も持っていない NVIDIA 設計・ソフトウェア TSMC/Samsung ウェハ製造(前工程) CoWoS 先端パッケージング 鴻海/緯創/Fabrinet 最終製品の組立・試験 顧客 (クラウド事業者など) NVIDIA本体 ここから先はすべて外部委託 ― 工場も後工程設備も持たない NVIDIAが後工程に対して持つ唯一の実体は「発注」である 2026年7月26日時点の供給・能力コミットメント US$2,790億(10-Q 注記10) 社名はいずれもNVIDIAが10-Kで実名を挙げたサプライヤー。工程の分担そのものは会社が明示していない
図3 NVIDIA製品のサプライチェーン上の位置。出典:2026年1月期 Form 10-K「Manufacturing」の記載。ただし、どの企業がどの工程を担当するかの1対1の対応は10-Kには書かれていません。図はあくまで同社が列挙したサプライヤーと工程を並べたものです。
この図の読み方 ― NVIDIAの後工程売上は「非開示」ではなく「存在しない」

TSMCやOSATの記事では「後工程の売上高は非開示」と書くことになりますが、NVIDIAは違います。 後工程サービスを売っていないので、後工程売上という項目が最初から存在しません。 では後工程の費用はどこにあるかというと、売上原価の中です。 10-Kは売上原価の内訳を「半導体のコスト(ウェハ製造、組立、試験、パッケージングを含む)、基板・デバイスコスト、 製造支援コスト、メモリ・部品コスト、関税、輸送費……」と説明しています 事実。 つまりパッケージング費用は売上原価に含まれているが、金額の内訳は開示されていない 未確定/将来。

6. 拠点と工場のある国

工場はありません。10-Kの「Properties(不動産)」の項は非常に短く、次の内容だけです 事実。

区分内容
本社カリフォルニア州サンタクララ。オフィス・建物として約300万平方フィート(約28万平方メートル)を所有および賃借
データセンターサンタクララ市内のデータセンタースペースを賃借。自社の研究開発用
その他の拠点米国内および海外で、データセンター・研究開発・販売管理用の施設を所有または賃借。海外は主に中国、インド、イスラエル、台湾
製造拠点記載なし(保有していない)

国別の有形固定資産(土地・建物・設備の純額)を見ると、この会社の「重さ」がどこにあるかが分かります 事実。

国2026年1月期末(百万ドル)2025年1月期末(百万ドル)構成比
米国5,1253,62649.4% 本稿の計算
台湾3,2191,48131.0% 本稿の計算
イスラエル1,47184014.2% 本稿の計算
その他5683365.5% 本稿の計算
合計10,3836,283100%
素材技術者の視点:台湾に3,219百万ドルの資産がある意味

工場を持たないはずのNVIDIAが、台湾に有形固定資産の31%(32億ドル)を置いています。 しかも1年で2.2倍に増えました 本稿の計算。 10-Kはこの資産の中身を説明していないため、内訳は未確定です 未確定/将来。 ただし、会社が「台湾と韓国からの安定した供給に依存している」とリスク要因に明記していること、 かつ製造装置を自社で持たない企業が製造地に資産を積む典型例が 試験装置・検証用設備・サプライヤー構内に置く設備であることを踏まえると、 後工程・試験工程に近い場所へ資本が寄っているという見方はできます。 材料を納める側にとっては、「発注元が現地に人と設備を置き始めた工程」は 仕様決定のスピードが上がる領域なので、注視する価値があります。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

製品はない。あるのは「採用の決定」

この節は、他の後工程企業の記事と書き方を変えざるを得ません。 NVIDIAは後工程の製品もサービスも売っていないので、後工程における主力製品もシェアも存在しません。 代わりに一次情報から確実に言えることを挙げます。

  1. NVIDIAは半導体パッケージングにCoWoSを使っている ― 10-Kの「Manufacturing」に明記 事実
  2. 組立・試験・パッケージングは自社で行わない ― 10-Kのリスク要因に明記 事実
  3. ウェハはTSMCとSamsungから、メモリはSK hynix・Micron・Samsungから調達している ― 10-Kに実名で記載 事実
  4. 最終製品の組立・試験・パッケージングは鴻海精密工業、緯創資通、Fabrinetに委託している ― 10-Kに実名で記載 事実
  5. 供給・能力確保のコミットメント残高は2026年7月26日時点で US$2,790億、前四半期のUS$1,190億から3か月で1,600億ドル増えた 事実
確認できなかったこと

NVIDIAが世界のCoWoS生産能力のどれだけを押さえているかは、一次情報では確認できません。 「CoWoS能力の○割をNVIDIAが確保」「月産○万枚を予約」といった数字は調査会社や報道の推計であり、 本稿では採用しません 未確定/将来。 同様に、US$2,790億のコミットメントのうち後工程(パッケージング)向けがいくらかも開示されていません。 会社は「主にメモリと製造設備(memory and manufacturing facilities)向け」とだけ述べています 事実。

CoWoSを使うのはどの製品か

10-Kによれば、2026年1月期のデータセンター売上の大半を占めたのは Blackwell アーキテクチャの製品です 事実。 Blackwell は「36個のGrace CPUと72個のBlackwell GPUをデータセンター規模で接続する液冷設計」と説明されており、 2027年1月期の第3四半期からは次世代の Vera Rubin が量産出荷に入ったと10-Qに記載されています 事実。

これらはいずれも、ロジックチップとHBM(積層型の広帯域メモリ)を1つのパッケージに同居させる構造です。 後工程の材料・装置の需要量は、このパッケージが月に何個作られるかで決まります。

8. 直近の投資計画

NVIDIAには「工場に○○億ドル投資する」という計画がありません。代わりにあるのがコミットメント(契約残高)です。 2026年7月26日時点の残高は次のとおりです 事実。

コミットメントの種類合計2027年1月期残り2028年1月期2029年1月期2030年1月期以降
供給・能力の確保2,790億ドル920億ドル870億ドル880億ドル120億ドル
クラウドサービス契約290億ドル30億ドル80億ドル70億ドル110億ドル
未開始のデータセンター賃借250億ドル―10億ドル10億ドル230億ドル
出資コミットメント250億ドル180億ドル30億ドル20億ドル20億ドル
設備投資80億ドル70億ドル10億ドル――
合計3,660億ドル1,200億ドル1,000億ドル980億ドル480億ドル

※会社が10億ドル単位で開示している表をそのまま日本語にしたものです。四捨五入のため各行の合計は必ずしも一致しません。「2030年1月期以降」は会社の表の2030年・2031年・2032年以降の3列を本稿で合算しました 本稿の計算。

US$2,790億という数字の意味

これは2026年1月期の年間売上高(2,159億ドル)を超える金額です 本稿の計算。 会社の説明は「今後数年の需要を満たすために必要な供給と重要部品を確保するため、 広範なネットワークと提携した。供給コミットメントは前四半期のUS$1,190億からUS$2,790億に増加した。 これらは当社のデータセンター基盤システム向けで、主にメモリと製造設備に関するものである」というものです。

後工程の立場から見ると、この数字は「需要予測」ではなく「契約済みの数量」です。 設備投資の裏づけとしては、調査会社の市場予測よりはるかに硬い情報です。 ただし繰り返しになりますが、このうちパッケージング関連がいくらかは開示されていません 未確定/将来。

なお自社の設備投資(有形固定資産・無形資産の取得)は2026年1月期で6,042百万ドルでした。 コミットメント全体の2%未満であり、NVIDIAの「投資」がほぼすべて他社の設備を押さえるための支払いであることを示しています 本稿の計算。

9. 提携している大手企業

10-Kと10-Qで実名が挙がっている相手を、性格別に整理します。 ここに挙げたのは、いずれもNVIDIA自身が法定開示書類に書いた名前だけです。

種類相手内容一次情報の有無
ウェハ調達TSMC、Samsung Electronics「ファウンドリを利用して半導体ウェハを製造する」として実名を記載。取引額・数量は非開示10-Kに記載 事実
メモリ調達SK hynix、Micron Technology、Samsung Electronics「メモリを購入する」として実名を記載。HBMかどうかの区別は書かれていない10-Kに記載 事実
パッケージング技術―(技術名のみ)「半導体パッケージングにCoWoS技術を利用する」と記載。実施主体の社名は書かれていない10-Kに記載 事実
最終製品の組立・試験鴻海精密工業(Hon Hai)、緯創資通(Wistron)、Fabrinet「独立した下請企業・受託製造業者と契約し、最終製品の組立・試験・パッケージングを行わせる」10-Kに記載 事実
出資Groq2026年1月期のキャッシュフロー計算書に単独項目として130億ドルの支出を計上10-Kに記載 事実
債務保証SB Energy Corp.の関連会社2026年8月、顧客(OpenAI系企業)のための土地・電力・建屋整備について、上限1,050億ドルの信用補完を差し入れ10-Qに記載 事実
注意:「NVIDIAとの提携」として語られるが一次情報にない企業

後工程の文脈では、OSAT各社(ASE Group、Amkor、SPILなど)、基板メーカー(Ibiden、Unimicron)、 ABFフィルムの味の素、装置のASMPT/Besi といった名前がNVIDIAとセットで語られます。 しかしNVIDIAの法定開示書類にはこれらの企業名は一切出てきません。 取引の有無自体が同社の一次情報からは確認できないため、本稿では提携として扱いません 未確定/将来。 同じく、CoWoSを実施しているのがTSMCなのか他社なのかについても、 NVIDIAの開示書類は技術名を書いただけで実施主体を書いていません。

10. 今後のこの分野における存在感

ここは予測になるので、判断の根拠となる事実と、そこから導かれる見通しを分けて書きます。

事実として確定していること

事実後工程への含意
供給・能力コミットメントが3か月で1,190億ドル→2,790億ドルへ増加発注元が数年先まで能力を押さえた。後工程の稼働は当面この契約に支えられる
データセンター売上が全体の89.7%を占めるNVIDIAの生産計画は、ほぼそのまま先端パッケージの生産計画になる
10-KにCoWoSの利用が明記されているパッケージ方式の選択は発注元の開示事項になった。材料仕様も同じ側で決まる
Vera Rubin が2027年1月期第3四半期から量産出荷世代交代が起きる。パッケージ寸法・材料要求が更新される時期にあたる
会社が「現在も一定の供給制約を受けている」と10-Qに記載需要ではなく供給が上限を決めている状態が続いている
台湾の有形固定資産が1年で2.2倍(14.8億→32.2億ドル)発注元が製造地の近くに資産を置き始めた

見通し

未確定/将来 上の事実から素直に読めば、後工程業界にとってNVIDIAの存在感は当面さらに大きくなる方向です。 理由は単純で、先端パッケージの需要量を決める最大の1社が、数年ぶんの能力を契約で押さえてしまったからです。 後工程の企業から見れば、NVIDIAは直接の顧客ではないのに、稼働率を左右する相手ということになります。

未確定/将来 この構図が変わるとすれば、方向は2つ考えられます。 ひとつはNVIDIA自身が後工程に踏み込む場合。 現時点では設備も人員も持っておらず、10-Kにもその計画は書かれていませんが、 台湾の有形固定資産の急増は、少なくとも「製造地に近づく動き」の存在を示しています。 もうひとつは顧客の自社設計チップ(クラウド事業者の独自アクセラレータ)が伸びる場合で、 NVIDIA自身も10-Kで「一部の顧客は社内に同等の開発能力を持ち、当社の提供するものを自前の解に置き換えうる」と リスクとして挙げています 事実。 その場合でも先端パッケージの需要そのものは減らず、発注元の名前が分散するだけという点は押さえておく価値があります。

11. この企業が抱えるリスク

NVIDIA自身が10-K・10-Qで挙げているリスク要因を、後工程の文脈で重要なものに絞って整理します 事実。

リスク内容裏づけとなる数字
顧客集中2026年1月期は直接顧客1社で売上の22%、別の1社で14%。いずれもCompute & Networkingセグメント売掛金でも上位3社が25%・18%・13%を占める
供給の地理的集中会社自身が「台湾と韓国の海外パートナーからの一貫した供給に依存している」と明記。製造・最終組立が台湾・韓国・中国・イスラエルに集中台湾に本社を置く顧客向け売上 42,345百万ドル(19.6%) 本稿の計算
コミットメントの固定化キャンセル不可・返品不可の発注を、従来のリードタイムより前倒しで出している。需要が下振れすれば在庫評価損になる供給・能力コミットメント 2,790億ドル。2026年1月期の在庫評価損等は72億ドル
輸出規制2026年1月期末時点で、中国のデータセンター演算市場から事実上締め出されていると会社が記載中国(香港含む)向け売上は25,048→19,677百万ドルへ減少 本稿の計算
利益率の低下売上総利益率が75.0%→71.1%へ低下。HGXシステムからフルスケールのデータセンター製品への転換と、H20関連の45億ドルの費用計上が理由と説明会社の開示値。低下幅は3.9ポイント
在庫の膨張棚卸資産が2026年1月期末で214億ドル、2026年7月末には316億ドルへ。仕掛品の増加が大きい2025年1月期末は101億ドル。1年半で3.1倍 本稿の計算
素材技術者の視点:リスクの向きが逆になる

材料を納める側にとって、NVIDIAのリスクは「取引先を失うリスク」ではありません。 そもそも直接の取引がないからです。効くのは量の振れです。 2,790億ドルのコミットメントは、裏を返せば需要が想定を下回ったときに一気に止まる契約でもあります。 実際NVIDIAは2026年1月期に72億ドルの在庫・発注関連の評価損を計上しました。 発注元が評価損を出す局面では、その手前にいるパッケージング工程と材料の引き合いが先に細ります。 1社の需要予測の修正が、サプライチェーンの末端まで増幅して伝わる—— 多数の顧客に分散して納入する従来の材料ビジネスとは、振れ方の質が違います。 加えてVera Rubin世代への切り替えは、パッケージ寸法と熱設計が変わる節目でもあり、 材料の要求スペックがまとめて書き換わるタイミングにあたります。

12. 用語集

ファブレス
自社の製造工場(ファブ)を持たず、設計だけを行う半導体会社。製造はファウンドリに、後工程はOSATなどに委託する。
CoWoS
Chip on Wafer on Substrate。ロジックチップとHBMを、インターポーザという中間基板の上に横に並べて載せる先端パッケージ方式。NVIDIAは10-Kでこの技術の利用を明記している。
HBM
High Bandwidth Memory。DRAMを積層して帯域を稼いだメモリ。CoWoSでロジックチップの隣に置かれる。
OSAT
Outsourced Semiconductor Assembly and Test。後工程(組立・検査)を専門に受託する会社。NVIDIAの開示書類にはOSATの社名は登場しない。
供給・能力コミットメント
将来の供給枠を確保するために結ぶ契約の残高。会計上は負債ではないが、キャンセルすれば費用が発生する。NVIDIAはこれを四半期ごとに開示している。
会計年度(1月末締め)
NVIDIAの1年は1月末で終わる。本稿の「2026年1月期」は2025年1月27日から2026年1月25日までを指し、暦年の2025年にほぼ相当する。
10-K/10-Q
米国企業が米国証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書と四半期報告書。監査または限定的レビューを受け、記載内容に法的責任が伴う。
Blackwell/Vera Rubin
NVIDIAのデータセンター向けアーキテクチャの世代名。Blackwellが2026年1月期の主力、Vera Rubinは2027年1月期第3四半期から量産出荷に入った。
概念図:設計会社が後工程の能力を先に押さえる構造(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 NVIDIAと後工程の関係を示す概念図(AI生成による概念図。実際の工場配置や設備、製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. NVIDIA Form 10-K(2026年1月25日に終了した会計年度、米国SEC提出、2026年2月25日)。売上高、研究開発費、営業利益、純利益、セグメント別・エンドマーケット別・地域別売上、従業員数、顧客集中度、サプライヤーの実名、CoWoSの利用、Properties、国別の有形固定資産、設備投資額、リスク要因。sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm
  2. NVIDIA Form 10-Q(2026年7月26日に終了した四半期、米国SEC提出、2026年8月26日)。四半期売上高、供給・能力コミットメントの年度別内訳とUS$2,790億という残高、Vera Rubinの量産出荷時期、供給制約、棚卸資産、SB Energy Corp.関連の債務保証。sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000075/nvda-20260726.htm
  3. 米国SEC EDGAR XBRL companyfacts API(CIK 0001045810)。2022年1月期から2026年1月期までの売上高・研究開発費・営業利益・純利益(各年度のForm 10-Kから抽出された値)。data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001045810.json
  4. NVIDIA 公式サイト(社名表記とロゴの確認用)。https://www.nvidia.com/en-us/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社住所、設立年(1993年4月)、上場市場(Nasdaq・NVDA)、発行済株式数事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
2026年1月期の売上高 215,938百万ドル、前年比+65%、売上総利益率71.1%事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
2022年1月期〜2025年1月期の売上高・研究開発費・営業利益・純利益事実出典3data.sec.gov/…/CIK0001045810.json
図1の前年比(+61%/+0.2%/+126%/+114%/+65%)本稿の計算出典3の各年度の売上高から算出data.sec.gov/…/CIK0001045810.json
従業員 約42,000人、38か国、研究開発31,000人、技術職80%超、離職率3.7%事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
従業員1人あたり売上高 約514万ドル、研究開発比率74%本稿の計算出典1の売上高と従業員数から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm
「当社は組立・試験・パッケージングを行わない」「CoWoS技術を利用する」という記載事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
サプライヤーの実名(TSMC、Samsung、SK hynix、Micron、鴻海、緯創、Fabrinet)事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
エンドマーケット別売上(データセンター193,737百万ドルほか)事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
データセンター比率89.7%、設備投資比率2.8%、研究開発比率8.6%本稿の計算出典1の金額から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm
国別の有形固定資産(米国5,125/台湾3,219/イスラエル1,471/その他568百万ドル)事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
台湾の有形固定資産が1年で2.2倍、構成比31.0%本稿の計算出典1の2期分の金額から算出sec.gov/…/nvda-20260125.htm
顧客集中度(直接顧客1社22%、別の1社14%、売掛金上位3社25/18/13%)事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
中国向け売上 25,048→19,677百万ドル、中国市場からの事実上の締め出し事実出典1sec.gov/…/nvda-20260125.htm
コミットメント一覧(供給・能力2,790億ドル、合計3,660億ドル)と年度別内訳事実出典2sec.gov/…/nvda-20260726.htm
「2030年1月期以降」の列(3列の合算)本稿の計算出典2の表を本稿で合算sec.gov/…/nvda-20260726.htm
Vera Rubinの量産出荷時期、供給制約、棚卸資産316億ドル、SB Energy関連の1,050億ドル保証事実出典2sec.gov/…/nvda-20260726.htm
CoWoSの世界シェア、NVIDIAが確保した生産能力(枚数・比率)未確定/将来一次情報が存在しないため本稿では記載しない
US$2,790億のうちパッケージング向けの金額未確定/将来非開示。会社は「主にメモリと製造設備向け」とのみ記載。本稿では内訳を推定しない
NVIDIAが負担しているパッケージング費用の金額未確定/将来売上原価に含まれるが内訳は非開示。本稿では推定しない
台湾の有形固定資産32.2億ドルの具体的な中身未確定/将来出典1に内訳の記載がない。本稿では用途を断定しない
CoWoSを実施している企業名、OSAT・基板・材料各社との取引関係未確定/将来NVIDIA側の一次情報に記載なし。本稿では提携として扱わない
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)未確定/将来本稿による解釈。事実欄の6項目から導出

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてNVIDIAが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。