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ベシ|半導体後工程 企業解説

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COMPANY PROFILE / 半導体後工程

ベシ(BE Semiconductor Industries)
― ハイブリッドボンディング装置の主要供給元となったオランダの会社

「BESI」と「BE Semiconductor Industries」は同じ会社です。 BESIはBE Semiconductor Industries N.V.の略称で、会社自身は年次報告書で「Besi」と表記しています。 この会社は半導体の組立(アセンブリ)装置だけを作るオランダのメーカーで、 後工程の記事に頻繁に登場するのは、 チップとウェハを銅どうしで直接くっつけるハイブリッドボンディング装置の 数少ない供給元になっているからです。

構成:Besiの公式IR資料(2025年度 Annual Report、2026年上半期 Interim Financial Statements)を一次情報として使用。同社は米国SECには提出義務を負わないため、SEC書類は存在しません/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるBesi(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について ― BESIとBE Semiconductor Industriesは同じ会社
  3. 何をしている会社か ― 組立装置だけを作る
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
  8. 直近の投資計画
  9. 提携している大手企業
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるBesi

正式名称BE Semiconductor Industries N.V.略称 BESI/Besi。同一の会社であり、別会社ではない
本社の所在国オランダRatio 6, 6921 RW Duiven(ダイフェン)
設立1995年5月オランダ法に基づき設立。同年12月に新規株式公開
上場ユーロネクスト・アムステルダム BESIAEX指数の構成銘柄。米国ではレベル1 ADR(BESIY)がOTC市場で取引
2025年 売上高5億9,130万ユーロ前年比 −2.7%。受注は6億8,500万ユーロで+16.8%
従業員数1,964人2025年12月31日時点(常勤換算)。固定1,856+臨時108。66%がアジア
企業カテゴリーメーカー
(後工程の組立装置)
会社の言葉で「単一の事業」。前工程装置は作らない
長期の売上目標15億〜19億ユーロ2025〜2029年の戦略計画。従来目標「10億ユーロ超」から引き上げ
まず押さえるべき1点

売上5.9億ユーロ、従業員2千人弱。半導体装置メーカーとしては中堅です。 それでもこの会社が後工程の中心に座っているのは、 ハイブリッドボンディングという、次世代のチップ接続方法の装置で先行しているからです。 会社は2021年の発売以来の累計受注が150台超に達したと述べています 事実。 1台2〜3.5百万ユーロという価格帯なので、台数は少なくても金額は大きく、 何よりこの装置がなければ作れないチップがあるという点で影響力が違います。

2. ロゴと社名の表記について ― ベシとBE Semiconductor Industriesは同じ会社

記事タグを扱ううえでの注意

記事の索引やタグ一覧では「BESI」と「BE Semiconductor Industries」が 別々の項目として並んでいることがありますが、これは同一の会社です。 年次報告書の冒頭は 「BE Semiconductor Industries N.V.(“Besi” または “当社”)」と定義しており 事実、 ユーロネクスト・アムステルダムでのティッカーも「BESI」です。 本稿では以降、会社自身の表記にならって「Besi」と書きます。

Besiのロゴおよび製品ブランド(Datacon、Esec、Fico、Meco など)は同社の 登録商標または商標です。

表記の注意:日本語では「ベシ」「ビーイーセミコンダクター」など複数の読みが使われ、 定訳は定着していません。製品名の Datacon(ダイボンダ)、Fico(封止・切断)、 Meco(めっき)は、いずれも買収によってBesiに加わったブランド名です。

公式サイト:https://www.besi.com/

3. 何をしている会社か ― 組立装置だけを作る

会社は自らの事業を「単一の事業(one line of business)」と定義しています 事実。 すなわち、半導体・電子産業向けの先端パッケージングソリューションの開発・製造・販売・サービスであり、 とくにウェハレベルのAI用途向けの次世代組立ソリューションに焦点を当てる、としています。

年次報告書は、半導体製造を前工程(ウェハ加工)と後工程(組立・テスト)に分けたうえで、 Besiの装置は後工程で使われると明記しています。 具体的には次の工程です 事実。

工程やっていること
ダイソート(ピック&プレース)良品のダイと不良品のダイを選り分ける
ダイボンディングダイをリードフレーム、基板、ウェハ、他のチップに接合して電気的につなぐ
モールディング(封止)組み立てたダイを樹脂で覆い、外部からの汚染から守る
めっき組立工程の各段階で必要な物理特性を与える化学めっき
トリム&フォーム/シンギュレーションリードフレームの切断・成形、基板やウェハレベルデバイスの個片化

そして会社は、生成AI向けの2.5D・3D・チップレット型のアーキテクチャでは ハイブリッドボンディングとTCB(サーモコンプレッションボンディング)が 前工程の製造工程の中で使われるようになったとも書いています 事実。 「後工程の装置メーカー」が前工程の工場に装置を納めるようになった、という転換がここにあります。

素材技術者の視点:はんだが無くなるということ

ハイブリッドボンディングについての会社の説明はこうです。 「従来のリフローしたフリップチップのはんだバンプを、 チップとウェハの間の銅と銅の直接接合に置き換える」 事実。 材料の立場から見ると、これは静かな地殻変動です。 はんだバンプが消えれば、フラックスも、アンダーフィルも、リフロー炉の熱履歴も要らなくなる。 代わりに必要になるのは、原子レベルで平らな表面と、粒子1個も許さない清浄度、 そして銅の熱膨張を織り込んだ酸化膜の設計です。 会社は利点として「データ転送速度とチップ密度の大幅な向上」「消費電力・放熱・保有コストの低減」を挙げますが、 裏返せばこれまで材料で吸収していたばらつきを、表面処理と装置精度で吸収する方式への移行を意味します。 アンダーフィルやフラックスを供給してきた企業にとっては需要構造そのものが変わる話であり、 逆にCMP後の洗浄・平坦化・表面活性化を担う材料にとっては新しい市場が開きます。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

Besi 年間売上高と受注高の推移(€ 百万) 決算期は12月末。棒が売上高、棒の下の数字がその年の受注高 1,000 750 500 250 0 749.3 受注 939.1 722.9 受注 663.7 578.9 受注 548.3 607.5 受注 586.7 591.3 受注 685.0 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2021年をピークに3年下げ、2025年も減収。ただし受注は2025年に+16.8%と先に反転した
図1 Besiの年間売上高と受注高(2021〜2025年)。出典:2025年度Annual Report「Key Highlights」。受注が売上に先行して動くため、装置メーカーは受注のほうを先に見る必要があります。
年売上高(€百万)受注高(€百万)営業利益(€百万)純利益(€百万)研究開発費(€百万)
2021年749.3939.1317.6282.436.4
2022年722.9663.7294.1240.653.9
2023年578.9548.3213.4177.156.4
2024年607.5586.7195.6182.074.3
2025年591.3685.0173.1131.681.0

※売上総利益率は2021年59.6%→2025年63.3%と上がっている一方、営業利益率は42.4%→29.3%へ下がっています。研究開発費が4年で2.2倍になったことが主因です 本稿の計算。

この5年をどう読むか

売上は2021年の749.3百万ユーロから2025年の591.3百万ユーロへ21.1%減りました 本稿の計算。 スマートフォンや自動車向けの従来型の組立装置が落ち込んだ期間だからです。 その間も会社は研究開発費を36.4百万ユーロから81.0百万ユーロへ増やし続けました。 売上が減っているのに開発費を2.2倍にする、という判断が何に向けられていたのかは、 第7節のハイブリッドボンディングの数字を見ると分かります 本稿の計算。

2026年に入ってからの急変

指標2025年上半期2026年上半期増減
売上高(€百万)292.1434.7+48.8%
受注高(€百万)259.9562.6+116.5%
純利益(€百万)63.6140.6+121.1%
純利益率21.7%32.3%+10.6ポイント

※2025年上半期の金額は、会社が開示した2026年上半期の実績と増減率から逆算した参考値です 本稿の計算。増減率は会社の開示値。2026年第2四半期単独の売上高は249.9百万ユーロ、純利益は89.0百万ユーロで、直近12か月の受注高は過去最高の987.6百万ユーロに達しました。

会社は2026年第3四半期について、売上高が第2四半期比で10〜15%増える見通しを示しています。 売上総利益率は製品構成の変化により63〜65%へ低下する見込みです 未確定/将来。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーはメーカー(後工程の組立装置)です。 チップを作らず、パッケージも組み立てず、材料も供給しません。 OSATやIDM、ファウンドリの工場に装置を納める立場にあります。

2025年 製品グループ別の売上構成 会社が年次報告書に記載した概数。金額そのものは開示されていない ダイアタッチ 約80% パッケージング 約17% めっき 約3% 会社推計では2025年売上の約70%が先端パッケージング用途、約60%が配置精度7マイクロメートル未満向け AI用途のシステム受注比率は2025年上半期の約50%から2026年上半期の約60%へ(いずれも会社推計)
図2 2025年の製品グループ別売上構成。出典:2025年度Annual Report「Company Profile」。ダイアタッチ(ダイボンダ)が事業の中心で、封止・切断とめっきがそれに続きます。

この会社を理解するうえで大事なのは、装置1台の単価が工程によってまったく違うという点です 事実。

製品の性格1台あたりの価格受注から納入までの期間
従来型の組立装置平均販売価格 40万ユーロ超の製品が売上の大きな部分を占めるおよそ4〜12週間
サブミクロン精度のウェハレベル装置
(ハイブリッドボンディング、TC Next)
200万〜350万ユーロ6〜9か月

※会社は「ハイブリッドボンディングとTC Nextの伸びは、当社の平均販売価格とリードタイムを引き上げる」と明記しています。受注から売上計上までが長くなるため、四半期ごとの業績のぶれも大きくなります。

6. 拠点と工場のある国

会社の記述はシンプルです。本社はオランダのダイフェン、 開発・生産の拠点がアジアと欧州に8か所、販売・サービス拠点が欧州・アジア・北米に13か所 事実。

地域会社が挙げている拠点名本文で確認できる役割
オランダダイフェン(本社)、スヘルトーヘンボス本社。2025年にダイフェンの建物を1,570万ユーロで買い取った
オーストリアラートフェルト開発人員を大幅に増強。クリーンルームを設置済み
スイスシュタインハウゼン操業プロフィールに記載
中国楽山(レシャン)、蘇州、成都、深圳、上海楽山は再生可能エネルギーで操業する拠点として名指しされている
マレーシア―2023年に125,000平方フィートの新拠点を開設。2025年にクリーンルーム能力を倍増
シンガポール―クリーンルームを設置済み。2025年に先端パッケージング能力を拡張。開発人員を増強
ベトナム―2024年に生産拠点を設立。2026年に新工場の建設を開始する計画
その他チャンドラー(米国)、台湾、韓国、タイ、フィリピン、インド操業プロフィールに記載。台湾と北米はサービス支援を増強

※どの拠点が「生産」でどれが「販売・サービス」かの内訳は、年次報告書の地図の形でのみ示されており、本稿で参照したPDFからは確実には読み取れませんでした 未確定/将来。国名のみ記載の行は、会社が国名だけを示しているためです。

素材技術者の視点:クリーンルームを持つ装置メーカー

この表で目を引くのは、装置メーカーであるBesiが、オーストリア・マレーシア・シンガポールの3か所に クリーンルームを設けていることです 事実。 会社はその目的を「将来のハイブリッドボンディング需要と顧客のプロセス支援に対応するため」と説明しています。 ハイブリッドボンディングは、ウェハ表面の清浄度と平坦度が歩留まりを直接決める工程です。 装置を出荷する前に、自社のクリーンルームで顧客のウェハを使って条件を出す必要がある。 つまりこの会社は装置を売っているだけでなく、接合プロセスそのものを顧客と一緒に作り込んでいる。 材料メーカーから見ると、表面処理・洗浄・CMPスラリーの仕様がここで決まる可能性がある、ということです。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

ハイブリッドボンディングとは何か

はんだバンプ接合と、ハイブリッドボンディングの違い 会社の説明にもとづく概念図。寸法や形状は実物と異なる 従来:はんだバンプで接合 溶かしたはんだの玉でつなぐ ハイブリッドボンディング 銅と銅を直接くっつける はんだの玉が要らないぶん、配線を細かく密に置ける。3次元に積むのにも向く Besiはこのハイブリッドボンディング装置の主要な供給元のひとつ 会社は2021年の発売以来、累計150台超のハイブリッドボンダーを受注したとしている
図3 はんだバンプ接合とハイブリッドボンディングの違い。出典:2025年度Annual Report「Company Profile」の記述にもとづく概念図。実際の構造・寸法を示すものではありません。

会社の説明を、そのまま引き写します 事実。

会社による定義

「ハイブリッドボンディングは、ウェハレベル組立におけるダイ間接続技術の最も重要な進化である。 従来のリフローしたフリップチップのはんだバンプを、チップとウェハの間の銅と銅の直接接続に置き換える。 フリップチップ組立と比べ、データ転送速度とチップ密度を大幅に高めながら、 消費電力、放熱、保有コストを下げる。また3Dチップアーキテクチャの開発を容易にし、 ロジックとメモリの双方で性能・機能・複雑性を高める」。

もうひとつ、これと組み合わせて使われるのがTCB(サーモコンプレッションボンディング)です。 こちらははんだバンプを使いますが、熱と圧力をかけて接合する2.5Dの組立工程で、 会社は「この2つの技術は互換的かつ補完的で、 求められるサイズ・精度・密度・複雑さ・スループット、そして保有コストによって使い分けられる」 と説明しています 事実。

採用はどこまで進んだか

指標数字時点
ハイブリッドボンダーの累計受注150台超2021年の発売以来、2025年末まで
採用顧客数15社 → 21社2025年末 → 2026年第2四半期末
統合ハイブリッドボンディングライン6プラットフォーム、ハイブリッドボンダー30台2025年、ある大手ロジック顧客に初導入
次世代の試作機配置精度 50ナノメートル2025年に完成、顧客の認定用に提供可能
TC Nextの採用顧客5社(ロジック・メモリ・フォトニクス用途)2025年

※2025年度Annual Reportは「採用が18社に拡大(世界最大手のロジック・メモリ生産者、ファウンドリ、委託組立会社、研究機関を含む)」と記載し、2026年上半期報告は「2025年末時点で15社」と記載しています。数え方の範囲が異なるとみられますが、両書類はその違いを説明していません 未確定/将来。本稿は時系列の比較には後者を使いました。

シェアについて ― ここは正直に書きます

確認できなかったこと

Besiはハイブリッドボンディング装置の市場シェアを公式には開示していません。 また、組立装置市場の規模について年次報告書は第三者の調査会社の推計を引用していますが、 本稿は調査会社の推計値を使わない方針のため、その数字は採用しません 未確定/将来。 会社自身が述べているのは「当社は業界の主要な生産者向けのハイブリッドボンディング装置の 開発・販売においてリーダーの位置にある」という定性的な主張までです。

顧客はどこに集中しているか

この会社は、他の2社と違って顧客名を年次報告書に実名で列挙しています 事実。これは珍しいことです。

区分会社が挙げている顧客名
会社が列挙した顧客(アルファベット順)Amkor、ASE、Fabrinet、Forehope、Huatian、Infineon、InnoLight、Intel、LG Innotek、JCET、Luxshare、Nvidia、STMicroelectronics、TDK、Texas Instruments、Tongfu、Unisem、TSMC
集中度の指標2024年2025年
売上の10%以上を占めた顧客1社(14.7%)なし
上位10社が売上に占める比率―約44%
アジアの顧客が売上に占める比率67.0%76.0%

※ただし、どの顧客がいくら買ったかは開示されていません 未確定/将来。列挙されているのは取引のある会社の名前であって、金額の順番ではありません。

8. 直近の投資計画

2025年 設備投資2,100万ユーロダイフェン本社の建物買取1,570万ユーロを含む
2026年 設備投資計画1,000万〜1,200万ユーロ主にベトナム新工場の着工にともなうもの
2025年 研究開発費8,100万ユーロ前年比+9.0%。売上比13.7%(本稿の計算)
長期の売上目標15億〜19億ユーロ2025〜2029年の戦略計画。従来の「10億ユーロ超」から引き上げ

装置メーカーなので設備投資の額は小さく、成長の原資は研究開発と生産能力の拡張に向かっています。 2025年に会社が実施・公表した能力拡張は次のとおりです 事実。

  • マレーシアのクリーンルーム能力を倍増(2023年に125,000平方フィートの拠点を開設済み)
  • シンガポールの先端パッケージング能力を拡張(クリーンルーム施設を完成)
  • ベトナムの生産能力を拡張(2024年に生産拠点を設立。2026年に新工場の建設を開始する計画)
  • オーストリアとシンガポールで開発人員を大幅に増強、台湾と北米でサービス支援を追加
株主への還元も大きい

2025年の資本配分の総額は2億5,480万ユーロで、これは同年の純利益1億3,160万ユーロを上回ります 事実。 内訳は配当と自社株買いで、1株あたり配当は1.58ユーロ、配当性向は95%。 1億ユーロの自社株買いプログラムを完了し、新たに6,000万ユーロのプログラムを開始しました。 稼いだ以上を株主に返しながら、研究開発費は増やし続けているという構造です 本稿の計算。

9. 提携している大手企業

Besiの提携で最も重要なのは、Applied Materialsとの関係です。 これは他の2社のように「一次情報に記載がない」という話にはなりません。 会社が年次報告書で明確に書いています 事実。

種類相手内容一次情報の有無
資本参加Applied MaterialsBesiの株式の9%を取得。会社はこれを「先端パッケージングの協業と製品戦略を強化するもの」と位置づけ2025年度Annual Report 事実
技術協業Applied MaterialsBesiのハイブリッドボンダーを組み込んだ統合ハイブリッドボンディング生産ラインの採用促進。2025年には大手ロジック顧客に6プラットフォーム・30台を初導入同上 事実
共同販売Applied Materials2025年に協業を拡大し、統合ハイブリッドボンディングソリューションの顧客への共同マーケティングと、他用途への技術的探索を開始同上 事実
顧客Amkor、ASE、Intel、Nvidia、TSMC ほか計18社会社が年次報告書で実名を列挙(第7節)。ただし取引金額・契約内容は非開示同上 事実
素材技術者の視点:なぜ前工程の巨人が9%を持つのか

Applied Materialsは会社の言葉で「前工程のウェハ製造装置とプロセスのリーダー」です。 その会社が後工程の中堅メーカーの株式を9%持ち、共同で生産ラインを売る。 これはハイブリッドボンディングが「後工程の一工程」ではなく 「前工程の設備投資の一部」として買われ始めたことの現れです。 接合する前のウェハには、表面の平坦化(CMP)、洗浄、活性化、 銅パッドのディッシング制御といった前工程側の処理が必須で、 接合の歩留まりは接合機だけでは決まらない。 だから接合前の処理と接合を一本のラインとして売る形になった。 材料を納める立場から見ると、これは 商談の相手が「後工程の装置担当」から「前工程のインテグレーション担当」へ移ることを意味します。

確認できなかったこと

Besiの年次報告書には競合企業の実名が記載されていません。 リスク項目として「競争」「価格圧力」「業界再編」は挙げられていますが、社名は出てきません。 したがって本稿は、この分野の競合関係について具体名を書きません 未確定/将来。

10. 今後のこの分野における存在感

事実として確定していること

事実後工程への含意
ハイブリッドボンディングの採用顧客が2025年末の15社から2026年第2四半期末の21社へ実験段階から量産導入へ広がっている
累計受注150台超、1台200万〜350万ユーロ台数は少ないが、金額でも会社の将来を左右する規模になりつつある
Applied Materialsが株式9%を取得し、共同で統合ラインを販売前工程の巨人が後工程の接合技術に資本参加した
直近12か月の受注高が過去最高の9億8,760万ユーロ2026年の売上はさらに伸びる可能性が高い
長期売上目標を10億ユーロ超から15億〜19億ユーロへ引き上げ会社自身が構造的な成長を前提に置いた
戦略の焦点にCoWoS、CoPoS、フォトニクスへの浸透を掲げているAIアクセラレータのパッケージと光インターコネクトの両方を狙っている

見通し

未確定/将来 上の事実から素直に読めば、Besiの後工程における存在感は当面強まる方向です。 理由は、ハイブリッドボンディングが「あれば便利な技術」ではなく、 チップを3次元に積む以上どうしても通らねばならない工程になりつつあるためです。 そして会社は、前工程の最大手と組むことで、 装置単体ではなくラインとして売る形を作りました。

未確定/将来 一方で注意すべき点が2つあります。ひとつは売上の8割がいまだにダイアタッチであり、 その大半は従来型の組立装置であること。 2021年から2025年にかけて売上が21.1%減ったのは、この従来部分が落ち込んだからです。 ハイブリッドボンディングが伸びても、従来部分の循環が消えるわけではありません。 もうひとつはApplied Materialsとの関係の両義性で、 9%の株主であり共同販売の相手でもある会社は、 技術の方向性が変われば立場も変わりうる相手です。 本稿の時点で、この協業の契約条件や期間は公表されていません 未確定/将来。

11. この企業が抱えるリスク

会社がリスク管理の章で挙げている項目のうち、後工程の文脈で重要なものを整理します 事実。

リスク内容裏づけとなる数字
需要の循環性会社は「半導体需要の循環的・季節的な性質」「受注の季節変動と循環的な変動」をリスクに明記2021年749.3→2023年578.9百万ユーロ(−22.7%) 本稿の計算
顧客集中会社はリスク項目に「顧客集中」を挙げる。業界再編や企業連合によりさらに集中が進む可能性も指摘2025年:上位10社で約44%。2024年は1社で14.7%
受注の変動と長いリードタイムサブミクロン精度の装置はリードタイムが6〜9か月。受注は確定注文の受領・受諾時点でのみ計上されるため、四半期ごとの業績が大きくぶれる会社が明記
アジアへの依存2025年の売上の約76%がアジアの顧客向け、従業員の68%がアジア。生産拠点の相当部分がアジア太平洋地域にある年次報告書の開示値
中国での事業環境会社は、政府が地場サプライヤーの使用を求める、知的財産の移転を要求する、地場競合に優遇措置を与えるといったリスクを挙げ、「これらの課題は中国でとくに当てはまる」と明記年次報告書のリスク管理
関税と輸出規制2026年上半期報告で、関税・追加課税・貿易制限・輸出規制がエンドユーザー需要と顧客の投資を圧迫し、供給網の複雑さと製造コストを増やしうると記載2026年上半期報告
欧州への集中リスク項目に「欧州における重要な事業」が挙げられている。開発の中核はオランダ・オーストリア・スイスにある年次報告書のリスク管理
研究開発への投資リスク項目に「研究開発への投資」を明記。研究開発費は4年で36.4→81.0百万ユーロへ2.2倍になり、営業利益率を押し下げている営業利益率 42.4%→29.3% 本稿の計算
素材技術者の視点:この会社を見るときの指標

Besiで最初に見るべきは売上ではなく受注高です。 サブミクロン精度の装置はリードタイムが6〜9か月あるため、 受注は売上の半年以上先を教えてくれます。 実際2025年は減収でしたが、受注は+16.8%と先に反転し、 2026年上半期の売上が+48.8%になりました 本稿の計算。 次に見るべきはハイブリッドボンディングの採用顧客数で、 会社は半期ごとにこの数字を更新しています(2025年末15社→2026年第2四半期末21社)。 台数や金額は開示されませんが、顧客数は 「試している会社」が「使い続ける会社」に変わっているかを示す代理指標になります。

12. 用語集

ハイブリッドボンディング
はんだバンプを使わず、チップとウェハの銅パッドどうしを直接接合する方法。配線を細かく密にでき、3次元積層に向く。
TCB
Thermo Compression Bonding(サーモコンプレッションボンディング)。熱と圧力をかけ、はんだバンプで接合する方式。2.5Dの組立で使われる。
ダイアタッチ
ダイ(チップ)をリードフレームや基板、他のチップに載せて接合する工程。Besiの売上の約80%がこの製品群。
ウェハレベル組立
リードフレームや基板を介さず、入出力密度の高いウェハの上に直接ダイやチップレットを載せて一体化する方式。3ナノメートル未満の世代で必要とされる。
シンギュレーション
まとめて作ったパッケージを1個ずつに切り分ける工程。個片化ともいう。
リードフレーム
チップを載せ、外部端子となる金属の枠。最も伝統的な組立方式で使われる。
受注高
その期間に受け取った確定注文の金額。装置メーカーでは売上の先行指標になる。Besiは確定注文の受領・受諾時にのみ計上する。
AEX指数
ユーロネクスト・アムステルダムの代表的な株価指数。Besiはその構成銘柄。
概念図:装置の中で、薄いチップがウェハの上に精密に降ろされていく様子(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 ウェハレベル接合の概念図(AI生成による概念図。実際の装置や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. BE Semiconductor Industries N.V. Annual Report 2025(オランダ金融市場監督局へのESEF提出に対応するPDF版)。会社概要、正式名称と略称、設立年・上場市場、5年分の売上高・受注高・営業利益・純利益・研究開発費・従業員数、製品グループ別の売上構成、顧客名の列挙、顧客集中度、地域別の売上比率、拠点と生産能力の拡張、設備投資、資本配分、Applied Materialsとの協業と9%取得、ハイブリッドボンディングの採用状況、リスク管理。https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
  2. BE Semiconductor Industries N.V. Unaudited Interim Consolidated Financial Statements for the six months ended June 30, 2026。2026年上半期および第2四半期の売上高・受注高・純利益、直近12か月の受注高、ハイブリッドボンディング採用顧客数の推移、第3四半期の見通し、関税・輸出規制に関する記載、本社住所。https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
  3. BE Semiconductor Industries N.V. 公式サイト(社名表記・製品ブランドの確認用)。https://www.besi.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
BESI/BesiはBE Semiconductor Industries N.V.の略称であり、同一の会社である事実出典1の会社概要の定義https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
本社住所(Ratio 6, 6921 RW Duiven)、1995年5月設立・同年12月上場、ユーロネクスト・アムステルダム BESI、AEX指数構成銘柄、ADR(BESIY)事実出典1・2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
2025年 売上高591.3/受注685.0/営業利益173.1/純利益131.6/研究開発費81.0(€百万)事実出典1「Key Highlights」https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
2021〜2024年の売上高・受注高・営業利益・純利益・研究開発費事実出典1「Key Highlights」https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
売上の21.1%減(2021→2025年)、22.7%減(2021→2023年)、研究開発費2.2倍、研究開発費の売上比13.7%本稿の計算出典1の数値から算出https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
売上総利益率63.3%、営業利益率29.3%、純利益率22.3%、ROE 28.7%(2025年)と5年分の推移事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
従業員1,964人(固定1,856+臨時108)、アジア66%、欧州・北米34%事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
会社の事業定義(単一の事業、先端パッケージングソリューション)と対象工程の説明事実出典1「Company Profile」https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
ハイブリッドボンディングの定義(銅と銅の直接接続、はんだバンプの置き換え、利点)とTCBとの関係事実出典1「Company Profile」https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
製品グループ別売上(ダイアタッチ約80%、パッケージング約17%、めっき約3%)、スペア・サービスが売上の15%事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
会社推計(先端パッケージング用途約70%、配置精度7マイクロメートル未満向け約60%、2025年受注の約50%がAI用途)事実(会社自身の推計)出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
AI用途のシステム受注比率が2026年上半期に約60%へ事実(会社自身の推計)出典2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
装置単価(従来型は平均40万ユーロ超、サブミクロン精度は200万〜350万ユーロ)とリードタイム(4〜12週間/6〜9か月)事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
ハイブリッドボンダー累計受注150台超、統合ラインの初導入(6プラットフォーム・30台)、50ナノメートル試作機、TC Next採用5社事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
採用顧客数 2025年末15社→2026年第2四半期末21社事実出典2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
Annual Reportの「18社(研究機関を含む)」と上半期報告の「15社」の差未確定/将来出典1・2の記載が異なるが、両書類はその差を説明していないhttps://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
顧客名18社の列挙(Amkor、ASE、Intel、Nvidia、TSMCほか)事実出典1「Our customers」https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
顧客集中度(2025年は10%超の顧客なし、上位10社で約44%、2024年は1社で14.7%)、アジア顧客比率76.0%事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
拠点の構成(本社ダイフェン、開発・生産8か所、販売サービス13か所)と各拠点名事実出典1・2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
設備投資2025年2,100万ユーロ(ダイフェン建物1,570万ユーロを含む)、2026年計画1,000万〜1,200万ユーロ(ベトナム新工場)事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
クリーンルーム設置(オーストリア・マレーシア・シンガポール)、マレーシア125,000平方フィート拠点(2023年)、ベトナム生産拠点(2024年)事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
資本配分2億5,480万ユーロ、1株配当1.58ユーロ、配当性向95%、自社株買い1億ユーロ完了・6,000万ユーロ開始事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
純利益を上回る株主還元という指摘本稿の計算出典1の資本配分額と純利益の比較https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
Applied Materialsによる9%の株式取得、統合ハイブリッドボンディングラインの協業、共同マーケティングへの拡大事実出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
長期売上目標の15億〜19億ユーロへの引き上げ(2025〜2029年の戦略計画)未確定/将来(会社目標)出典1https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
2026年上半期の売上434.7/受注562.6/純利益140.6(€百万)、純利益率32.3%、第2四半期の売上249.9・純利益89.0、直近12か月受注987.6事実出典2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
2025年上半期の金額(売上292.1/受注259.9/純利益63.6 €百万)本稿の計算出典2の2026年上半期実績と増減率から逆算した参考値https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
2026年第3四半期の見通し(売上は第2四半期比+10〜15%、売上総利益率63〜65%)未確定/将来(会社見通し)出典2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
リスク項目(需要の循環性、顧客集中、欧州への集中、中国の事業環境、研究開発投資、関税・輸出規制ほか)事実出典1・2https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
ハイブリッドボンディング装置の市場シェア未確定/将来非開示。本稿では記載しない
組立装置市場の規模未確定/将来年次報告書は第三者調査会社の推計を引用しているが、本稿は調査会社の推計値を採用しない
競合企業の社名未確定/将来出典1に記載なし。本稿では具体名を書かないhttps://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
顧客別の取引金額、生産拠点8か所の内訳、各拠点の生産能力未確定/将来いずれも非開示。本稿では記載しない
Applied Materialsとの協業の契約条件・期間未確定/将来出典1に協業の存在のみ記載。詳細は未公表https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)未確定/将来本稿による解釈。事実欄の6項目から導出

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてBE Semiconductor Industries N.V.が公表した年次報告書および中間財務諸表に基づきます。同社はオランダの上場企業であり米国SECへの提出義務を負わないため、SEC提出書類は存在しません。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。