COMPANY PROFILE / 半導体後工程
ベシ(BE Semiconductor Industries)
― ハイブリッドボンディング装置の主要供給元となったオランダの会社
「BESI」と「BE Semiconductor Industries」は同じ会社です。 BESIはBE Semiconductor Industries N.V.の略称で、会社自身は年次報告書で「Besi」と表記しています。 この会社は半導体の組立(アセンブリ)装置だけを作るオランダのメーカーで、 後工程の記事に頻繁に登場するのは、 チップとウェハを銅どうしで直接くっつけるハイブリッドボンディング装置の 数少ない供給元になっているからです。
- 30秒でわかるBesi(基本データ)
- ロゴと社名の表記について ― BESIとBE Semiconductor Industriesは同じ会社
- 何をしている会社か ― 組立装置だけを作る
- 企業規模 ― 過去5年の売上高
- 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
- 拠点と工場のある国
- 半導体後工程における主力製品とそのシェア
- 直近の投資計画
- 提携している大手企業
- 今後のこの分野における存在感
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるBesi
(後工程の組立装置)会社の言葉で「単一の事業」。前工程装置は作らない
売上5.9億ユーロ、従業員2千人弱。半導体装置メーカーとしては中堅です。 それでもこの会社が後工程の中心に座っているのは、 ハイブリッドボンディングという、次世代のチップ接続方法の装置で先行しているからです。 会社は2021年の発売以来の累計受注が150台超に達したと述べています 事実。 1台2〜3.5百万ユーロという価格帯なので、台数は少なくても金額は大きく、 何よりこの装置がなければ作れないチップがあるという点で影響力が違います。
2. ロゴと社名の表記について ― ベシとBE Semiconductor Industriesは同じ会社
記事の索引やタグ一覧では「BESI」と「BE Semiconductor Industries」が 別々の項目として並んでいることがありますが、これは同一の会社です。 年次報告書の冒頭は 「BE Semiconductor Industries N.V.(“Besi” または “当社”)」と定義しており 事実、 ユーロネクスト・アムステルダムでのティッカーも「BESI」です。 本稿では以降、会社自身の表記にならって「Besi」と書きます。
Besiのロゴおよび製品ブランド(Datacon、Esec、Fico、Meco など)は同社の 登録商標または商標です。
表記の注意:日本語では「ベシ」「ビーイーセミコンダクター」など複数の読みが使われ、 定訳は定着していません。製品名の Datacon(ダイボンダ)、Fico(封止・切断)、 Meco(めっき)は、いずれも買収によってBesiに加わったブランド名です。
公式サイト:https://www.besi.com/3. 何をしている会社か ― 組立装置だけを作る
会社は自らの事業を「単一の事業(one line of business)」と定義しています 事実。 すなわち、半導体・電子産業向けの先端パッケージングソリューションの開発・製造・販売・サービスであり、 とくにウェハレベルのAI用途向けの次世代組立ソリューションに焦点を当てる、としています。
年次報告書は、半導体製造を前工程(ウェハ加工)と後工程(組立・テスト)に分けたうえで、 Besiの装置は後工程で使われると明記しています。 具体的には次の工程です 事実。
| 工程 | やっていること |
|---|---|
| ダイソート(ピック&プレース) | 良品のダイと不良品のダイを選り分ける |
| ダイボンディング | ダイをリードフレーム、基板、ウェハ、他のチップに接合して電気的につなぐ |
| モールディング(封止) | 組み立てたダイを樹脂で覆い、外部からの汚染から守る |
| めっき | 組立工程の各段階で必要な物理特性を与える化学めっき |
| トリム&フォーム/シンギュレーション | リードフレームの切断・成形、基板やウェハレベルデバイスの個片化 |
そして会社は、生成AI向けの2.5D・3D・チップレット型のアーキテクチャでは ハイブリッドボンディングとTCB(サーモコンプレッションボンディング)が 前工程の製造工程の中で使われるようになったとも書いています 事実。 「後工程の装置メーカー」が前工程の工場に装置を納めるようになった、という転換がここにあります。
ハイブリッドボンディングについての会社の説明はこうです。 「従来のリフローしたフリップチップのはんだバンプを、 チップとウェハの間の銅と銅の直接接合に置き換える」 事実。 材料の立場から見ると、これは静かな地殻変動です。 はんだバンプが消えれば、フラックスも、アンダーフィルも、リフロー炉の熱履歴も要らなくなる。 代わりに必要になるのは、原子レベルで平らな表面と、粒子1個も許さない清浄度、 そして銅の熱膨張を織り込んだ酸化膜の設計です。 会社は利点として「データ転送速度とチップ密度の大幅な向上」「消費電力・放熱・保有コストの低減」を挙げますが、 裏返せばこれまで材料で吸収していたばらつきを、表面処理と装置精度で吸収する方式への移行を意味します。 アンダーフィルやフラックスを供給してきた企業にとっては需要構造そのものが変わる話であり、 逆にCMP後の洗浄・平坦化・表面活性化を担う材料にとっては新しい市場が開きます。
4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
| 年 | 売上高(€百万) | 受注高(€百万) | 営業利益(€百万) | 純利益(€百万) | 研究開発費(€百万) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 749.3 | 939.1 | 317.6 | 282.4 | 36.4 |
| 2022年 | 722.9 | 663.7 | 294.1 | 240.6 | 53.9 |
| 2023年 | 578.9 | 548.3 | 213.4 | 177.1 | 56.4 |
| 2024年 | 607.5 | 586.7 | 195.6 | 182.0 | 74.3 |
| 2025年 | 591.3 | 685.0 | 173.1 | 131.6 | 81.0 |
※売上総利益率は2021年59.6%→2025年63.3%と上がっている一方、営業利益率は42.4%→29.3%へ下がっています。研究開発費が4年で2.2倍になったことが主因です 本稿の計算。
売上は2021年の749.3百万ユーロから2025年の591.3百万ユーロへ21.1%減りました 本稿の計算。 スマートフォンや自動車向けの従来型の組立装置が落ち込んだ期間だからです。 その間も会社は研究開発費を36.4百万ユーロから81.0百万ユーロへ増やし続けました。 売上が減っているのに開発費を2.2倍にする、という判断が何に向けられていたのかは、 第7節のハイブリッドボンディングの数字を見ると分かります 本稿の計算。
2026年に入ってからの急変
| 指標 | 2025年上半期 | 2026年上半期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高(€百万) | 292.1 | 434.7 | +48.8% |
| 受注高(€百万) | 259.9 | 562.6 | +116.5% |
| 純利益(€百万) | 63.6 | 140.6 | +121.1% |
| 純利益率 | 21.7% | 32.3% | +10.6ポイント |
※2025年上半期の金額は、会社が開示した2026年上半期の実績と増減率から逆算した参考値です 本稿の計算。増減率は会社の開示値。2026年第2四半期単独の売上高は249.9百万ユーロ、純利益は89.0百万ユーロで、直近12か月の受注高は過去最高の987.6百万ユーロに達しました。
会社は2026年第3四半期について、売上高が第2四半期比で10〜15%増える見通しを示しています。 売上総利益率は製品構成の変化により63〜65%へ低下する見込みです 未確定/将来。
5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
カテゴリーはメーカー(後工程の組立装置)です。 チップを作らず、パッケージも組み立てず、材料も供給しません。 OSATやIDM、ファウンドリの工場に装置を納める立場にあります。
この会社を理解するうえで大事なのは、装置1台の単価が工程によってまったく違うという点です 事実。
| 製品の性格 | 1台あたりの価格 | 受注から納入までの期間 |
|---|---|---|
| 従来型の組立装置 | 平均販売価格 40万ユーロ超の製品が売上の大きな部分を占める | およそ4〜12週間 |
| サブミクロン精度のウェハレベル装置 (ハイブリッドボンディング、TC Next) | 200万〜350万ユーロ | 6〜9か月 |
※会社は「ハイブリッドボンディングとTC Nextの伸びは、当社の平均販売価格とリードタイムを引き上げる」と明記しています。受注から売上計上までが長くなるため、四半期ごとの業績のぶれも大きくなります。
6. 拠点と工場のある国
会社の記述はシンプルです。本社はオランダのダイフェン、 開発・生産の拠点がアジアと欧州に8か所、販売・サービス拠点が欧州・アジア・北米に13か所 事実。
| 地域 | 会社が挙げている拠点名 | 本文で確認できる役割 |
|---|---|---|
| オランダ | ダイフェン(本社)、スヘルトーヘンボス | 本社。2025年にダイフェンの建物を1,570万ユーロで買い取った |
| オーストリア | ラートフェルト | 開発人員を大幅に増強。クリーンルームを設置済み |
| スイス | シュタインハウゼン | 操業プロフィールに記載 |
| 中国 | 楽山(レシャン)、蘇州、成都、深圳、上海 | 楽山は再生可能エネルギーで操業する拠点として名指しされている |
| マレーシア | ― | 2023年に125,000平方フィートの新拠点を開設。2025年にクリーンルーム能力を倍増 |
| シンガポール | ― | クリーンルームを設置済み。2025年に先端パッケージング能力を拡張。開発人員を増強 |
| ベトナム | ― | 2024年に生産拠点を設立。2026年に新工場の建設を開始する計画 |
| その他 | チャンドラー(米国)、台湾、韓国、タイ、フィリピン、インド | 操業プロフィールに記載。台湾と北米はサービス支援を増強 |
※どの拠点が「生産」でどれが「販売・サービス」かの内訳は、年次報告書の地図の形でのみ示されており、本稿で参照したPDFからは確実には読み取れませんでした 未確定/将来。国名のみ記載の行は、会社が国名だけを示しているためです。
この表で目を引くのは、装置メーカーであるBesiが、オーストリア・マレーシア・シンガポールの3か所に クリーンルームを設けていることです 事実。 会社はその目的を「将来のハイブリッドボンディング需要と顧客のプロセス支援に対応するため」と説明しています。 ハイブリッドボンディングは、ウェハ表面の清浄度と平坦度が歩留まりを直接決める工程です。 装置を出荷する前に、自社のクリーンルームで顧客のウェハを使って条件を出す必要がある。 つまりこの会社は装置を売っているだけでなく、接合プロセスそのものを顧客と一緒に作り込んでいる。 材料メーカーから見ると、表面処理・洗浄・CMPスラリーの仕様がここで決まる可能性がある、ということです。
7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
ハイブリッドボンディングとは何か
会社の説明を、そのまま引き写します 事実。
「ハイブリッドボンディングは、ウェハレベル組立におけるダイ間接続技術の最も重要な進化である。 従来のリフローしたフリップチップのはんだバンプを、チップとウェハの間の銅と銅の直接接続に置き換える。 フリップチップ組立と比べ、データ転送速度とチップ密度を大幅に高めながら、 消費電力、放熱、保有コストを下げる。また3Dチップアーキテクチャの開発を容易にし、 ロジックとメモリの双方で性能・機能・複雑性を高める」。
もうひとつ、これと組み合わせて使われるのがTCB(サーモコンプレッションボンディング)です。 こちらははんだバンプを使いますが、熱と圧力をかけて接合する2.5Dの組立工程で、 会社は「この2つの技術は互換的かつ補完的で、 求められるサイズ・精度・密度・複雑さ・スループット、そして保有コストによって使い分けられる」 と説明しています 事実。
採用はどこまで進んだか
| 指標 | 数字 | 時点 |
|---|---|---|
| ハイブリッドボンダーの累計受注 | 150台超 | 2021年の発売以来、2025年末まで |
| 採用顧客数 | 15社 → 21社 | 2025年末 → 2026年第2四半期末 |
| 統合ハイブリッドボンディングライン | 6プラットフォーム、ハイブリッドボンダー30台 | 2025年、ある大手ロジック顧客に初導入 |
| 次世代の試作機 | 配置精度 50ナノメートル | 2025年に完成、顧客の認定用に提供可能 |
| TC Nextの採用顧客 | 5社(ロジック・メモリ・フォトニクス用途) | 2025年 |
※2025年度Annual Reportは「採用が18社に拡大(世界最大手のロジック・メモリ生産者、ファウンドリ、委託組立会社、研究機関を含む)」と記載し、2026年上半期報告は「2025年末時点で15社」と記載しています。数え方の範囲が異なるとみられますが、両書類はその違いを説明していません 未確定/将来。本稿は時系列の比較には後者を使いました。
シェアについて ― ここは正直に書きます
Besiはハイブリッドボンディング装置の市場シェアを公式には開示していません。 また、組立装置市場の規模について年次報告書は第三者の調査会社の推計を引用していますが、 本稿は調査会社の推計値を使わない方針のため、その数字は採用しません 未確定/将来。 会社自身が述べているのは「当社は業界の主要な生産者向けのハイブリッドボンディング装置の 開発・販売においてリーダーの位置にある」という定性的な主張までです。
顧客はどこに集中しているか
この会社は、他の2社と違って顧客名を年次報告書に実名で列挙しています 事実。これは珍しいことです。
| 区分 | 会社が挙げている顧客名 |
|---|---|
| 会社が列挙した顧客(アルファベット順) | Amkor、ASE、Fabrinet、Forehope、Huatian、Infineon、InnoLight、Intel、LG Innotek、JCET、Luxshare、Nvidia、STMicroelectronics、TDK、Texas Instruments、Tongfu、Unisem、TSMC |
| 集中度の指標 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 売上の10%以上を占めた顧客 | 1社(14.7%) | なし |
| 上位10社が売上に占める比率 | ― | 約44% |
| アジアの顧客が売上に占める比率 | 67.0% | 76.0% |
※ただし、どの顧客がいくら買ったかは開示されていません 未確定/将来。列挙されているのは取引のある会社の名前であって、金額の順番ではありません。
8. 直近の投資計画
装置メーカーなので設備投資の額は小さく、成長の原資は研究開発と生産能力の拡張に向かっています。 2025年に会社が実施・公表した能力拡張は次のとおりです 事実。
- マレーシアのクリーンルーム能力を倍増(2023年に125,000平方フィートの拠点を開設済み)
- シンガポールの先端パッケージング能力を拡張(クリーンルーム施設を完成)
- ベトナムの生産能力を拡張(2024年に生産拠点を設立。2026年に新工場の建設を開始する計画)
- オーストリアとシンガポールで開発人員を大幅に増強、台湾と北米でサービス支援を追加
2025年の資本配分の総額は2億5,480万ユーロで、これは同年の純利益1億3,160万ユーロを上回ります 事実。 内訳は配当と自社株買いで、1株あたり配当は1.58ユーロ、配当性向は95%。 1億ユーロの自社株買いプログラムを完了し、新たに6,000万ユーロのプログラムを開始しました。 稼いだ以上を株主に返しながら、研究開発費は増やし続けているという構造です 本稿の計算。
9. 提携している大手企業
Besiの提携で最も重要なのは、Applied Materialsとの関係です。 これは他の2社のように「一次情報に記載がない」という話にはなりません。 会社が年次報告書で明確に書いています 事実。
| 種類 | 相手 | 内容 | 一次情報の有無 |
|---|---|---|---|
| 資本参加 | Applied Materials | Besiの株式の9%を取得。会社はこれを「先端パッケージングの協業と製品戦略を強化するもの」と位置づけ | 2025年度Annual Report 事実 |
| 技術協業 | Applied Materials | Besiのハイブリッドボンダーを組み込んだ統合ハイブリッドボンディング生産ラインの採用促進。2025年には大手ロジック顧客に6プラットフォーム・30台を初導入 | 同上 事実 |
| 共同販売 | Applied Materials | 2025年に協業を拡大し、統合ハイブリッドボンディングソリューションの顧客への共同マーケティングと、他用途への技術的探索を開始 | 同上 事実 |
| 顧客 | Amkor、ASE、Intel、Nvidia、TSMC ほか計18社 | 会社が年次報告書で実名を列挙(第7節)。ただし取引金額・契約内容は非開示 | 同上 事実 |
Applied Materialsは会社の言葉で「前工程のウェハ製造装置とプロセスのリーダー」です。 その会社が後工程の中堅メーカーの株式を9%持ち、共同で生産ラインを売る。 これはハイブリッドボンディングが「後工程の一工程」ではなく 「前工程の設備投資の一部」として買われ始めたことの現れです。 接合する前のウェハには、表面の平坦化(CMP)、洗浄、活性化、 銅パッドのディッシング制御といった前工程側の処理が必須で、 接合の歩留まりは接合機だけでは決まらない。 だから接合前の処理と接合を一本のラインとして売る形になった。 材料を納める立場から見ると、これは 商談の相手が「後工程の装置担当」から「前工程のインテグレーション担当」へ移ることを意味します。
Besiの年次報告書には競合企業の実名が記載されていません。 リスク項目として「競争」「価格圧力」「業界再編」は挙げられていますが、社名は出てきません。 したがって本稿は、この分野の競合関係について具体名を書きません 未確定/将来。
10. 今後のこの分野における存在感
事実として確定していること
| 事実 | 後工程への含意 |
|---|---|
| ハイブリッドボンディングの採用顧客が2025年末の15社から2026年第2四半期末の21社へ | 実験段階から量産導入へ広がっている |
| 累計受注150台超、1台200万〜350万ユーロ | 台数は少ないが、金額でも会社の将来を左右する規模になりつつある |
| Applied Materialsが株式9%を取得し、共同で統合ラインを販売 | 前工程の巨人が後工程の接合技術に資本参加した |
| 直近12か月の受注高が過去最高の9億8,760万ユーロ | 2026年の売上はさらに伸びる可能性が高い |
| 長期売上目標を10億ユーロ超から15億〜19億ユーロへ引き上げ | 会社自身が構造的な成長を前提に置いた |
| 戦略の焦点にCoWoS、CoPoS、フォトニクスへの浸透を掲げている | AIアクセラレータのパッケージと光インターコネクトの両方を狙っている |
見通し
未確定/将来 上の事実から素直に読めば、Besiの後工程における存在感は当面強まる方向です。 理由は、ハイブリッドボンディングが「あれば便利な技術」ではなく、 チップを3次元に積む以上どうしても通らねばならない工程になりつつあるためです。 そして会社は、前工程の最大手と組むことで、 装置単体ではなくラインとして売る形を作りました。
未確定/将来 一方で注意すべき点が2つあります。ひとつは売上の8割がいまだにダイアタッチであり、 その大半は従来型の組立装置であること。 2021年から2025年にかけて売上が21.1%減ったのは、この従来部分が落ち込んだからです。 ハイブリッドボンディングが伸びても、従来部分の循環が消えるわけではありません。 もうひとつはApplied Materialsとの関係の両義性で、 9%の株主であり共同販売の相手でもある会社は、 技術の方向性が変われば立場も変わりうる相手です。 本稿の時点で、この協業の契約条件や期間は公表されていません 未確定/将来。
11. この企業が抱えるリスク
会社がリスク管理の章で挙げている項目のうち、後工程の文脈で重要なものを整理します 事実。
| リスク | 内容 | 裏づけとなる数字 |
|---|---|---|
| 需要の循環性 | 会社は「半導体需要の循環的・季節的な性質」「受注の季節変動と循環的な変動」をリスクに明記 | 2021年749.3→2023年578.9百万ユーロ(−22.7%) 本稿の計算 |
| 顧客集中 | 会社はリスク項目に「顧客集中」を挙げる。業界再編や企業連合によりさらに集中が進む可能性も指摘 | 2025年:上位10社で約44%。2024年は1社で14.7% |
| 受注の変動と長いリードタイム | サブミクロン精度の装置はリードタイムが6〜9か月。受注は確定注文の受領・受諾時点でのみ計上されるため、四半期ごとの業績が大きくぶれる | 会社が明記 |
| アジアへの依存 | 2025年の売上の約76%がアジアの顧客向け、従業員の68%がアジア。生産拠点の相当部分がアジア太平洋地域にある | 年次報告書の開示値 |
| 中国での事業環境 | 会社は、政府が地場サプライヤーの使用を求める、知的財産の移転を要求する、地場競合に優遇措置を与えるといったリスクを挙げ、「これらの課題は中国でとくに当てはまる」と明記 | 年次報告書のリスク管理 |
| 関税と輸出規制 | 2026年上半期報告で、関税・追加課税・貿易制限・輸出規制がエンドユーザー需要と顧客の投資を圧迫し、供給網の複雑さと製造コストを増やしうると記載 | 2026年上半期報告 |
| 欧州への集中 | リスク項目に「欧州における重要な事業」が挙げられている。開発の中核はオランダ・オーストリア・スイスにある | 年次報告書のリスク管理 |
| 研究開発への投資 | リスク項目に「研究開発への投資」を明記。研究開発費は4年で36.4→81.0百万ユーロへ2.2倍になり、営業利益率を押し下げている | 営業利益率 42.4%→29.3% 本稿の計算 |
Besiで最初に見るべきは売上ではなく受注高です。 サブミクロン精度の装置はリードタイムが6〜9か月あるため、 受注は売上の半年以上先を教えてくれます。 実際2025年は減収でしたが、受注は+16.8%と先に反転し、 2026年上半期の売上が+48.8%になりました 本稿の計算。 次に見るべきはハイブリッドボンディングの採用顧客数で、 会社は半期ごとにこの数字を更新しています(2025年末15社→2026年第2四半期末21社)。 台数や金額は開示されませんが、顧客数は 「試している会社」が「使い続ける会社」に変わっているかを示す代理指標になります。
12. 用語集
- ハイブリッドボンディング
- はんだバンプを使わず、チップとウェハの銅パッドどうしを直接接合する方法。配線を細かく密にでき、3次元積層に向く。
- TCB
- Thermo Compression Bonding(サーモコンプレッションボンディング)。熱と圧力をかけ、はんだバンプで接合する方式。2.5Dの組立で使われる。
- ダイアタッチ
- ダイ(チップ)をリードフレームや基板、他のチップに載せて接合する工程。Besiの売上の約80%がこの製品群。
- ウェハレベル組立
- リードフレームや基板を介さず、入出力密度の高いウェハの上に直接ダイやチップレットを載せて一体化する方式。3ナノメートル未満の世代で必要とされる。
- シンギュレーション
- まとめて作ったパッケージを1個ずつに切り分ける工程。個片化ともいう。
- リードフレーム
- チップを載せ、外部端子となる金属の枠。最も伝統的な組立方式で使われる。
- 受注高
- その期間に受け取った確定注文の金額。装置メーカーでは売上の先行指標になる。Besiは確定注文の受領・受諾時にのみ計上する。
- AEX指数
- ユーロネクスト・アムステルダムの代表的な株価指数。Besiはその構成銘柄。
AI生成・概念図13. 出典
- BE Semiconductor Industries N.V. Annual Report 2025(オランダ金融市場監督局へのESEF提出に対応するPDF版)。会社概要、正式名称と略称、設立年・上場市場、5年分の売上高・受注高・営業利益・純利益・研究開発費・従業員数、製品グループ別の売上構成、顧客名の列挙、顧客集中度、地域別の売上比率、拠点と生産能力の拡張、設備投資、資本配分、Applied Materialsとの協業と9%取得、ハイブリッドボンディングの採用状況、リスク管理。https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Annual_Report_2025.pdf
- BE Semiconductor Industries N.V. Unaudited Interim Consolidated Financial Statements for the six months ended June 30, 2026。2026年上半期および第2四半期の売上高・受注高・純利益、直近12か月の受注高、ハイブリッドボンディング採用顧客数の推移、第3四半期の見通し、関税・輸出規制に関する記載、本社住所。https://www.besi.com/fileadmin/data/Investor_Relations/_Semi__Annual_Reports/Half_Year_2026_Report.pdf
- BE Semiconductor Industries N.V. 公式サイト(社名表記・製品ブランドの確認用)。https://www.besi.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてBE Semiconductor Industries N.V.が公表した年次報告書および中間財務諸表に基づきます。同社はオランダの上場企業であり米国SECへの提出義務を負わないため、SEC提出書類は存在しません。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。