🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

ASMPT|半導体後工程 企業解説

技術用語・企業解説の一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / 半導体後工程

ASMPT(旧 ASM Pacific Technology)
― AIチップを「積む」装置を、いま最も多く出荷している会社

ASMPTは半導体の組立・パッケージング装置と、電子基板の実装(SMT)装置を作るメーカーです。 売上規模は装置業界の中では決して大きくありません。 それでもHBMや大型AIパッケージの話に必ず名前が出るのは、 チップを熱と圧力で貼り合わせるTCB(サーマルコンプレッションボンディング)装置の主要供給元だからです。 2025年にTCB売上を前年の約2.5倍に伸ばした一方、事業の売却・見直しも同時に進めています。

構成:ASMPT Limited が香港証券取引所(HKEX)に提出した2025年アニュアルレポート、2026年中間報告、HKEX公告、および同社IRサイトを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるASMPT(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 何をしている会社か ― 「装置を売る側」の立ち位置
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
  8. 直近の投資計画と事業の組み替え
  9. 提携している大手企業
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるASMPT

正式名称ASMPT Limited2022年6月1日に ASM Pacific Technology Limited から改称。法人登記はケイマン諸島
本社の所在国シンガポール2 Yishun Avenue 7, Singapore 768924。上場先は香港
設立1975年オランダのASM International N.V.のアジア販売拠点として発足
上場香港証券取引所 05221989年に ASM Pacific Technology Ltd として上場
2025年 売上高HK$137億36百万
(US$17億62百万)
継続事業ベース、前年比 +10.0%
従業員数約9,000人2025年12月31日時点。別に臨時・外注が約1,600人
企業カテゴリーメーカー
(半導体後工程装置・SMT装置)
チップを作るのではなく、チップを組み立てる装置を作る
2026年の投資方針販管・研究開発費を
約HK$2億 増額
主に先端パッケージングのR&Dとインフラ向け
まず押さえるべき1点

ASMPTは半導体を作る会社ではありません。半導体を組み立てる「装置」を売る会社です。 したがって顧客はTSMCやSamsungのようなメーカーと、ASEやAmkorのようなOSAT(後工程の受託企業)になります。 売上規模はHK$137億(US$約18億)で、同じ装置業界のApplied MaterialsやLam Researchと比べると1桁小さいのですが、 AI向けの大型パッケージを組む工程に限ると、代替の効きにくい位置にいます。 この「規模は小さいが、工程の特定の一点を押さえている」という形が、この会社を読むときの軸になります。

2. ロゴと社名の表記について

ASMPTのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像やイラストによる再現は行わず、 掲載する場合は公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。 AIで描き起こしたロゴは、商標としても事実としても誤りになります。

表記の注意:旧社名は「ASM Pacific Technology Limited」で、 2022年5月10日の株主総会決議を経て6月1日に「ASMPT Limited」へ改称しました。 株式の短縮名称も同年7月4日に「ASM PACIFIC」から「ASMPT」へ変わっています。銘柄コード0522は変更されていません。 なおオランダの ASM International N.V. とは別会社で、同社は2025年末時点でASMPT株の24.65%を保有する大株主です。 社名が似ているため混同されやすい点に注意してください。

公式サイト:https://www.asmpt.com/en/

3. 何をしている会社か ― 「装置を売る側」の立ち位置

半導体ができるまでの工程で、ASMPTがどこにいるのかを先に置きます。

工程やること担う会社の例ASMPT
前工程シリコンウェーハ上に回路を作り込むTSMC、Samsung、Intel関与しない
後工程(組立)ウェーハを切り、チップを基板に載せ、積み、封止するASE、Amkor、各メーカーの自社工場この工程の装置を供給
実装(SMT)できたパッケージを電子基板にはんだ付けするEMS各社、機器メーカーこの工程の装置も供給

ASMPTの事業は2つに分かれています 事実。 ひとつがSEMI(Semiconductor Solutions)で、ダイボンダ・ワイヤボンダ・TCB装置など後工程の装置。 もうひとつがSMT(Surface Mount Technology)で、基板に部品を置くマウンタやはんだ印刷機です。 2025年の売上はSEMIがHK$73億81百万、SMTがHK$63億56百万で、ほぼ半々の構成になっています。

会社自身は「電子機器製造の主要工程すべてに対して統合されたソリューションを提供できる、世界で唯一の企業」と説明しています 事実。 この「唯一」という表現は同社自身によるものであり、本稿が検証したものではありません。

素材技術者の視点:装置メーカーが材料の仕様を決めてしまう

後工程の装置メーカーは、材料側から見ると「条件を決める側」にいます。 TCB装置は、チップを載せたあとヘッドで加圧しながら加熱して接合する方式です。 このとき、はんだバンプの融点、アンダーフィル材(NCF=ノンコンダクティブフィルムなど)の硬化温度と粘度、 基板の反り量が、すべて装置側の温度プロファイルと荷重プロファイルに合わせ込まれます。 つまり材料の要求スペックは、装置のレシピが先に決まってから逆算されることが多い。 ASMPTが2025年に「HBM4 12H向けTCB装置で複数の顧客から初めて受注した」と公表していることは 事実、 同時にその世代のNCFや接合材の仕様が固まり始めたことも意味します。 材料を出す側にとって、装置メーカーの世代交代は自社の開発カレンダーそのものです。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

ASMPT 年間売上高(継続事業ベース)の推移(HK$百万) 2025年に売却したNEXX事業を除いた「継続事業」ベース。2021〜2023年は継続・非継続の区分がない数値 24,000 18,000 12,000 6,000 0 21,948 19,363 14,697 12,483 13,736 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2022年をピークに3年続けて減収したが、2025年にAI向けの先端パッケージング需要で増加に転じた
図1 ASMPTの年間売上高(2021〜2025年)。出典:2025年アニュアルレポートの5年財務要約。2021〜2023年の数値は2024年アニュアルレポートから採られたもので、継続事業と非継続事業を分けていない点に注意。
年売上高(HK$百万)税引前利益(HK$百万)当期純利益(HK$百万)備考
2021年21,9484,0923,175区分なし
2022年19,3633,4132,618区分なし
2023年14,6971,036712区分なし
2024年12,483456291継続事業(遡及修正済み)
2025年13,7361,2161,085継続事業

※すべて継続事業ベース。2025年はこれとは別に、非継続事業(NEXX)で HK$182百万の損失が出ており、両方を合わせた連結純利益は HK$902百万です。会社が「グループ売上」として発表した2025年の数字(継続+非継続)は HK$145億2千万(US$18億6千万)、前年比+9.8%です。

研究開発と設備投資の水準

項目2024年2025年
研究開発投資約HK$19億2千万約HK$19億3千万
設備等の取得額HK$4億61.7百万HK$4億47.0百万
人件費総額HK$49億0千万HK$49億3千万
配当(1株あたり年間)HK$0.67HK$1.39

売上がピーク比で4割近く減った局面でも、研究開発投資はほぼ横ばいで維持されています 事実。 会社はこれを「業界サイクルをまたいでR&Dに投資し続ける」方針だと説明しています。 一方で設備投資は年間HK$4〜5億程度で、売上の3%台にとどまります 本稿の計算。 巨大な工場を建て続ける半導体メーカーとは、資本の使い方がまったく違うタイプの会社です。

従業員 約9,000人の分布

国・地域おおよその人数比率
中国本土約4,000人約44%
ドイツ約1,000人約11%
シンガポール約900人約10%
香港約700人約8%
マレーシア約700人約8%
ポルトガル約400人約4%
英国約300人約3%
その他残り―

※比率は会社が示した人数を約9,000人で割った概算です 本稿の計算。このほか臨時・外注の働き手が約1,600人います。研究開発に携わる人員は全体で2,200人超と会社が公表しています。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーはメーカー(半導体後工程装置およびSMT装置)です。 大学でも政府機関でもなく、また半導体そのものを作るメーカーでもありません。 後工程の産業構造でいうと、OSATや半導体メーカーに装置を納める側に立ちます。

2025年売上高 HK$13,736百万のセグメント別内訳 SEMI(半導体)とSMT(表面実装)の2事業。先端パッケージング(AP)は両方にまたがる区分 SEMI 53.7% SMT 46.3% 半導体ソリューション(SEMI) HK$7,380百万(US$9億4,690万) 表面実装ソリューション(SMT) HK$6,356百万(US$8億1,520万) 同じ売上を「先端パッケージング(AP)」で切り直すと AP 30% メインストリーム等 70% AP売上 US$5億3,210万(前年比+30.2%)。グループ売上に占める比率は26%→30%へ APはSEMIとSMTの両方に含まれるため、セグメント別内訳とは別の切り口になる
図2 2025年売上高のセグメント別内訳と、先端パッケージング(AP)の比率。出典:2025年アニュアルレポート。セグメント比率は会社が開示した金額から算出 本稿の計算。AP比率30%は会社が明示している数字。
「AP」と「メインストリーム」という会社独自の分け方

ASMPTは売上をセグメント(SEMI/SMT)とは別に、 AP(先端パッケージング)とメインストリームという軸でも説明します。 APにはTCB、ハイブリッドボンディング、フォトニクス、高精度フリップチップ、AIサーバ基板向けの高精度SMT装置が入ります。 メインストリームは従来型のワイヤボンダ・ダイボンダ・汎用マウンタです。 2025年はAPが+30.2%、メインストリームが+3.3%で、伸びの大半はAP側から来ています 事実。 後工程の記事でASMPTの名前を見るときは、ほぼこのAP側の話だと考えて差し支えありません。

6. 拠点と工場のある国

本社はシンガポール、上場は香港、法人登記はケイマン諸島という分かれた形をとっています 事実。 製造・開発の拠点はアジアと欧州に広がります。

国・地域主な法人役割
シンガポールASMPT Singapore Pte. Ltd./ASMPT SMT Singapore Pte. Ltd.本社所在地。半導体装置とSMT装置の製造・販売。SEMIの先端パッケージングR&Dの中核拠点
中国本土先進科技(惠州)/深圳先進微電子科技/奧芯明半導體設備技術(上海)ほか半導体装置・SMT装置の製造と研究開発。従業員数では最大の国
香港ASMPT Technology Hong Kong Limited ほか半導体装置の製造と研究開発、グループの投資・調達機能
マレーシアASMPT Malaysia Sdn. Bhd.半導体装置とSMT装置の製造
ドイツASMPT GmbH & Co. KG/ASMPT AMICRA GmbHSMT装置(マウンタ・印刷機)の製造。ミュンヘンがSMTのR&D中核拠点。AMICRAは高精度ダイボンダ
オランダASMPT ALSI B.V.レーザーダイシング装置の研究開発・製造・販売
英国ASMPT SMT UK LimitedSMT印刷機の製造・販売(旧DEK)
ポルトガルCritical Manufacturing, S.A.製造実行システム(MES)ソフトウェアの開発・販売
日本・米国・台湾・韓国ASMPT Japan Limited ほか販売・マーケティング拠点(製造は行わない)

※2025年アニュアルレポートの主要子会社一覧に記載された会社のうち、製造・開発機能を持つものを中心に整理しました。同一覧は「重要な子会社」に限られており、全拠点を網羅したものではありません。

素材技術者の視点:R&Dが2か国に割れている意味

会社は「SEMIの先端パッケージングはシンガポール、SMTはドイツ・ミュンヘン」とR&Dの中核を明示しています 事実。 これは材料メーカーから見ると評価サンプルの持ち込み先が分かれるということです。 TCBやハイブリッドボンディングで使うNCF・アンダーフィル・フラックスの評価はシンガポール側、 はんだペーストや基板の実装材料はドイツ側、という具合に窓口が別になります。 さらに製造は中国本土・マレーシア・香港に分散しており、 開発地と量産地が国をまたいで離れている構造です。 装置に組み込まれる消耗品(ボンディングツール、ヒータ、ステージ材)の認定を取る側からすると、 開発拠点で通した仕様がそのまま量産拠点の調達に流れるとは限らない点に注意が要ります。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

製品群

TCB(サーマルコンプレッションボンディング)
チップを載せた状態で加圧しながら加熱し、微細なバンプを一括接合する方式。HBMの積層やAIロジックの実装に使われる。ASMPTのAP売上を牽引している主力。
ハイブリッドボンディング
はんだを使わず、銅と絶縁膜の面同士を直接接合する方式。ASMPTは第2世代装置を展開中で、2026年上期時点では顧客評価のサンプリング段階。
フォトニクス実装装置
光トランシーバの組立装置。800G品で会社は「支配的」と表現しており、2026年上期の売上は前年同期比でほぼ3倍。
ワイヤボンダ/ダイボンダ
従来型の後工程装置。会社の分類では「メインストリーム」。中国のOSAT需要が主な販売先。
SMT装置
基板に部品を置くマウンタとはんだ印刷機。AIサーバ基板やEV向けで伸びている。

シェアについて ― ここは切り分けが必要です

確認できたことと、できなかったこと

ASMPTは自社の市場シェアの実績値を開示していません。 同社が公表しているのは、TCB市場について 「市場規模は2025年の約US$7億6,000万から2028年にUS$16億へ拡大する見込み」という自社推計と、 「35〜40%のシェアを目標としている」という目標値です 未確定/将来。 これは会社の見通しと目標であって、達成されたシェアの実績ではありません。 本稿は調査会社のシェア推計も採用しません。一次情報から確実に言えるのは下の3点です。

  1. 2025年のTCB売上は前年比約146%増で、過去最高(会社の表現)事実
  2. AP売上はUS$5億3,210万で前年比+30.2%、グループ売上の30%(前年26%) 事実
  3. HBM4 12H向けTCB装置で複数の顧客から最初に受注を獲得したと会社が述べている 事実

もうひとつ、シェアの代わりに見られる数字があります。売上の地域別構成です。 TCBの出荷先は先端ロジックとHBMを扱うメーカー・OSATに集中するため、 「中国以外のアジア」の比率がTCBの動きを映します。

売上高の地域別構成比(2024年 → 2025年) TCB需要で「中国以外のアジア」が24%から34%へ拡大し、欧州・米州は縮小した 中国 41% 41% 中国以外のアジア 24% 34% 欧州 20% 13% 米州 15% 11% 2024年 2025年 上位5顧客の合計は売上の約16%。特定顧客への依存度は高くない
図3 売上高の地域別構成比の変化。出典:2025年アニュアルレポート。会社は「TCB需要により中国以外のアジアが24%から34%へ増加した」と説明している。
最終用途2025年の売上構成比会社の説明
コンピューティング約22%最大の用途。うち最も大きいのがTCB
コンシューマ約17%中国向けのメインストリーム製品が牽引
通信約16%フォトニクスと高価格帯スマートフォン向け
車載ほぼ16%中国のEV向けが中心
産業機器10%前年13%から低下。市況の軟調による

8. 直近の投資計画と事業の組み替え

2026年の費用計画販管・研究開発費を
約HK$2億 増額
主に先端パッケージングのR&Dとインフラ投資
2025年の設備等取得額HK$4億47.0百万全額を営業キャッシュフローでまかなったと会社が説明
NEXX事業の売却US$1億2,000万
2026年6月3日 完了
買い手は Applied Materials, Inc.
SMT事業の扱い戦略オプションを評価中2026年1月21日発表。売却・合弁・分社上場・継続保有を検討

この会社の「投資計画」は、新工場を建てる話ではなく事業の組み替えとして現れます。 2025年から2026年にかけて、3つの動きが公表されています。

時期できごと金額・内容状況
2025年11月27日AAMI(Advanced Assembly Materials International)の49%持分を売却現金と、上海証券取引所上場の Shenzhen Original Advanced Compounds Co., Ltd.(603991.SH)の新株で受領。売却益 HK$11.1億完了。2025年末時点で同社株18.99%(簿価HK$20.76億)を保有
2026年1月21日SMT事業の戦略オプション評価を開始売却・合弁・分社と上場・継続保有を含めて検討結論は未公表 未確定/将来
2026年4月30日
/6月3日
NEXX(米国・めっき装置)をApplied Materialsへ売却対価US$1億2,000万(現金)。在庫約US$670万の移管を含む2026年6月3日にクロージング完了。推定純利益は約HK$1,100万
NEXX売却の読み方

NEXXは2018年にASMPTが買収した米国の電気めっき(デポジション)装置メーカーです。 会社は売却理由を「後工程パッケージング事業への集中を鮮明にするため」「新しい所有者のもとで継続的な投資と運営上のシナジーを得られる」と説明しています 事実。 ASMPTは2025年決算でNEXXに配分されていたのれん HK$2億1,739万を全額減損しており、 売却は高値での譲渡ではありません。HKEX公告によれば価格US$1億2,000万は競争入札の最高額で、 推定純利益は約HK$1,100万にとどまります 事実。 撤退にあたる取引と読むのが素直です。

同時に、SMT事業についても2026年1月から戦略オプションの評価が進んでいます。 仮にSMTが切り離されれば、ASMPTは売上規模が半分近くになるかわりに、 ほぼ後工程装置専業の会社になります。ただしどの選択肢を採るかは公表されていません 未確定/将来。

9. 提携している大手企業

ASMPTの場合、「提携」として公表されているものは資本関係と取引関係が中心です。 技術提携の相手先の実名は、ほとんど公表されていません。

種類相手内容一次情報の有無
大株主ASM International N.V.(オランダ)子会社ASM Pacific Holding B.V.を通じて103,003,000株(24.65%)を保有。ASMPTの創業母体にあたる2025年アニュアルレポートに記載 事実
持分法関連会社Shenzhen Original Advanced Compounds Co., Ltd.(603991.SH、上海証券取引所上場)AAMI持分の売却対価として株式を受領し18.99%を保有。リードフレームと後工程材料・装置の製造販売2025年アニュアルレポートに記載 事実
事業売却の相手Applied Materials, Inc.(米国)2026年4月30日にNEXXの株式譲渡契約を締結、6月3日に完了。提携ではなく資産の譲渡HKEX公告に記載 事実
100%子会社Critical Manufacturing, S.A.(ポルトガル)製造実行システム(MES)ソフトウェア。装置とソフトを組み合わせて提供する2025年アニュアルレポートに記載 事実
業界団体Semiconductor Climate Consortium創設メンバーとして参加2025年アニュアルレポートに記載 事実
注意:顧客名は一切公表されていません

ASMPTのアニュアルレポートと中間報告には、 「先端ロジックの主要顧客(the leading advanced logic customer)」 「HBMメーカー」「大手IDM」「OSATパートナー」といった表現しか出てきません。 TSMC、SK hynix、Samsung、Micronなどの実名は、ASMPT側の公表資料には登場しません 未確定/将来。 開示されているのは「上位5顧客の合計が売上の約16%」という集中度だけです。 本稿では報道や推測で顧客名を補うことはしません。

10. 今後のこの分野における存在感

ここは予測になるので、判断の根拠となる事実と、そこから導かれる見通しを分けて書きます。

事実として確定していること

事実後工程への含意
2025年のTCB売上が前年比約146%増、AP売上がグループの30%にAI向け実装装置が会社の成長エンジンになった
2026年上期の継続事業売上がHK$89億3百万、前年同期比+42.5%2025年の伸びは一時的な山ではなく続いている
2026年上期の受注がHK$127億54百万、前年同期比+85.1%売上より受注の伸びが大きく、先行きの積み上がりが厚い
2026年7月にOSAT顧客から50台超のC2S TCB装置を一括受注ロジック側の大型ダイ対応で継続受注が出ている
2026年第3四半期の売上ガイダンスがUS$6億3,000万〜6億9,000万会社自身が増勢の継続を前提に置いている
NEXXを売却し、SMTの戦略オプションを評価中後工程パッケージング装置への集中が進んでいる
ハイブリッドボンディング装置は顧客評価のサンプリング段階次世代方式ではまだ量産採用が確定していない

見通し

未確定/将来 上の事実から素直に読めば、ASMPTの後工程における存在感は当面強まる方向です。 理由は、AIチップの大型化がそのまま「1パッケージあたりの接合点数」を増やし、 はんだを一括で溶かす従来のマスリフロー方式では歩留まりが出にくくなるためです。 接合面の平坦度と温度を1個ずつ管理するTCBは、この流れの受け皿として選ばれています。

未確定/将来 ただし、この構図が揺らぐとすれば方向は2つあります。 ひとつはハイブリッドボンディングへの移行が想定より早く進む場合で、 ASMPTの第2世代装置はまだサンプリング段階であり、量産採用の確定は公表されていません。 もうひとつはHBMの世代交代スケジュールのずれです。 会社自身が2026年上期の中間報告で、メモリ向けの新規装置購入の時期は 「顧客のHBM4製品の立ち上げスケジュール次第」と述べています 事実。 装置メーカーの売上は顧客の投資判断に一段遅れてついてくるため、振れ幅は半導体メーカー以上に大きくなります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容裏づけとなる数字
事業構成が流動的NEXXは売却済み、SMTは戦略オプション評価中。会社の輪郭そのものが変わりうる2026年1月21日の発表。結論は未公表 未確定/将来
循環性が非常に強い2022年から2024年にかけて売上が43%減った。装置需要は顧客の設備投資に連動し、振れ幅が大きいHK$19,363百万→HK$12,483百万 本稿の計算
利益率の水準2025年の調整後純利益率は3.4%。売上が伸びても利益はまだ薄い調整後純利益HK$466.7百万/売上HK$13,736百万
粗利率の低下2025年の調整後粗利率38.3%は前年比−172bp。SEMI・SMTとも低下した会社の開示値 事実
地域の偏り売上の41%が中国。生産拠点でも従業員の約44%が中国本土にいる売上地域別構成と従業員分布 本稿の計算
顧客の投資タイミングメモリ向けの装置購入はHBM4の立ち上げ時期に左右されると会社自身が明記2026年中間報告の記述 事実
為替売上と費用の大半が米ドル・ユーロ・人民元建て。会計上の表示通貨は香港ドル会社が為替予約でヘッジしていると開示
借入シンジケートローン中心の借入があり、2029年2月まで分割返済。負債資本比率は0.1402025年末時点の開示値
素材技術者の視点:装置の受注残は材料の先行指標になる

ASMPTのような装置メーカーの受注(bookings)と受注残(backlog)は、 材料を出す側にとって使い勝手のよい先行指標です。 装置が据え付けられてから量産が立ち上がるまでには時間がかかるので、 いま出た装置の受注は、1年前後あとのNCF・アンダーフィル・フラックスの消費量に対応します。 2026年上期の受注はHK$127億54百万で前年同期比+85.1%、売上の伸び(+42.5%)を大きく上回りました 事実。 受注が売上を上回って積み上がっている状態(book-to-bill が1を超える状態)は、 材料側にとっては生産計画を前倒しで組む根拠になります。 逆に2023〜2024年のように受注が細る局面では、 装置が止まる前に材料の引き合いが先に止まることに留意が要ります。

12. 用語集

TCB
Thermo-Compression Bonding。チップを加圧しながら加熱して接合する方式。接合点が多く細かい先端パッケージで使われる。
ハイブリッドボンディング
はんだを介さず、銅電極と絶縁膜の面を直接くっつける接合方式。接合ピッチをさらに細かくできる。
C2S/C2W
Chip-to-Substrate(チップを基板へ)とChip-to-Wafer(チップをウェーハへ)。TCBの適用先の区別。
HBM
High Bandwidth Memory。DRAMを積層して帯域を稼いだメモリ。積層する工程でTCBが使われる。
OSAT
Outsourced Semiconductor Assembly and Test。後工程を専門に受託する会社。ASMPTにとっては顧客。
SMT
Surface Mount Technology(表面実装技術)。できあがったパッケージを電子基板にはんだ付けする工程。
book-to-bill
受注高÷売上高。1を超えていれば受注残が積み上がっていることを示す。
非継続事業
売却が決まった事業を、会計上ほかの事業と分けて表示する区分。ASMPTではNEXXがこれにあたる。
概念図:加圧ヘッドがチップを基板に押し当てながら加熱して接合している様子(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 TCB(熱圧着接合)の概念図(AI生成による概念図。実際のASMPTの装置や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. ASMPT Limited Annual Report 2025(香港証券取引所提出、2026年4月5日)。売上高、セグメント別業績、5年財務要約、研究開発投資、設備等取得額、従業員数と国別分布、人件費、配当、主要子会社一覧、大株主、NEXXの非継続事業区分とのれん減損、AAMI持分売却、TCB・ハイブリッドボンディング・フォトニクスの事業レビュー、地域別・用途別売上構成、上位5顧客比率、借入と為替の状況。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
  2. ASMPT Limited Interim Report 2026(2026年8月27日)。2026年上期の売上・受注・利益、AP売上US$3億3,900万、TCBのC2S/C2W受注動向、HBM4に関する記述、ハイブリッドボンディングの進捗、NEXX売却の完了と対価の内訳、第3四半期の売上ガイダンス。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/85541/e_00522ir-20260827.pdf
  3. ASMPT Limited 2025年通期業績発表(HKEX公告、2026年3月4日)。2025年通期および第4四半期のセグメント別業績、受注・受注残、配当、SMT戦略オプション評価の公表。 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84503/e0522_results_announcement_2025_q4.pdf
  4. ASMPT Limited HKEX公告「DISCLOSEABLE TRANSACTION – DISPOSAL OF A WHOLLY-OWNED SUBSIDIARY」(2026年5月4日)。2026年4月30日にApplied Materials, Inc.とASMPT NEXX, Inc.の株式譲渡契約を締結、対価US$1億2,000万、在庫約US$670万の移管。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a260504.pdf
  5. ASMPT Limited HKEX公告「CLOSING OF DISCLOSEABLE TRANSACTION IN RELATION TO DISPOSAL OF A WHOLLY-OWNED SUBSIDIARY」(2026年6月4日)。2026年6月3日にクロージング完了、価格決定の根拠、推定純利益約HK$1,100万。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a260604.pdf
  6. ASMPT Limited HKEX公告「CHANGE OF COMPANY NAME AND STOCK SHORT NAME」(2022年6月24日)。ASM Pacific Technology Limited からASMPT Limitedへの社名変更、2022年6月1日発効、株式短縮名称の変更日、銘柄コード0522の据え置き。 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a220624.pdf
  7. ASMPT 公式サイト 沿革ページ(1975年の設立、1989年の香港上場、2011年のシンガポール本社移転、DEK・ALSI・NEXX・AMICRAなどの買収年)。 https://www.asmpt.com/en/company/history/
  8. ASMPT 公式サイト(会社概要・ブランド表記の確認用)。 https://www.asmpt.com/en/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、ケイマン諸島での法人登記、本社住所(シンガポール)、銘柄コード0522事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
社名変更(2022年6月1日発効)、株式短縮名称の変更(2022年7月4日)事実出典6 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a220624.pdf
1975年設立、1989年の香港上場、2011年のシンガポール本社移転事実出典7 https://www.asmpt.com/en/company/history/
2021〜2025年の売上高・税引前利益・当期純利益(継続事業)事実出典1の5年財務要約 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
2025年のセグメント別売上(SEMI HK$7,380百万/SMT HK$6,356百万)事実出典1・3 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84503/e0522_results_announcement_2025_q4.pdf
セグメント比率53.7%/46.3%、設備投資の対売上比、2022→2024年の減収率43%本稿の計算出典1の開示金額から算出 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
AP売上US$5億3,210万、前年比+30.2%、グループ売上の30%(前年26%)事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
TCB売上が前年比約146%増、HBM4 12H向けで複数顧客から初受注事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
研究開発投資 約HK$19億3千万、設備等取得額 HK$4億47.0百万、人件費 HK$49億3千万事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
従業員 約9,000人と国別のおおよその分布、臨時・外注 約1,600人、R&D人員2,200人超事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
国別比率(中国本土 約44% など)本稿の計算出典1の人数を約9,000人で割った概算 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
拠点・主要子会社の所在国と機能、R&D中核がシンガポールとミュンヘンであること事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
地域別売上構成(中国41%、中国以外アジア34%、欧州13%、米州11%)と用途別構成事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
上位5顧客が売上の約16%事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
2025年の受注HK$14,478百万、受注残HK$61億7千万、book-to-bill 1.05、配当HK$1.39事実出典1・3 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84503/e0522_results_announcement_2025_q4.pdf
2026年上期の売上HK$89億3百万(+42.5%)、受注HK$127億54百万(+85.1%)、第3四半期ガイダンス事実出典2 https://www.asmpt.com/site/assets/files/85541/e_00522ir-20260827.pdf
2026年7月にOSAT顧客から50台超のC2S TCB装置を一括受注、AP売上US$3億3,900万事実出典2 https://www.asmpt.com/site/assets/files/85541/e_00522ir-20260827.pdf
ハイブリッドボンディング装置がサンプリング段階であること、HBM4の立ち上げ時期に依存すること事実出典2 https://www.asmpt.com/site/assets/files/85541/e_00522ir-20260827.pdf
NEXXをApplied Materialsへ US$1億2,000万で売却、2026年6月3日完了、推定純利益 約HK$1,100万事実出典4・5 https://doc.irasia.com/listco/hk/asmpt/announcement/a260604.pdf
NEXXののれんHK$2億1,739万を全額減損、AAMI持分売却益HK$11.1億と603991.SH株18.99%の保有事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
ASM International N.V.が24.65%を保有する大株主であること事実出典1 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
TCB市場規模が2025年US$7億6,000万→2028年US$16億、目標シェア35〜40%未確定/将来出典1。会社自身の推計と目標であり実績ではない https://www.asmpt.com/site/assets/files/84854/e_00522ar-20260405.pdf
SMT事業の戦略オプション評価の結論未確定/将来出典3に評価の開始のみ記載。選択肢の決定は未公表 https://www.asmpt.com/site/assets/files/84503/e0522_results_announcement_2025_q4.pdf
ASMPTの実績市場シェア(TCB・ダイボンダ・SMTのいずれも)未確定/将来非開示。本稿では調査会社の推計を採用しない
顧客企業の実名(TSMC・SK hynix・Samsung等)未確定/将来ASMPT側の公表資料に実名の記載なし。本記事では推定しない
2026年以降の新工場建設計画未確定/将来公表資料に具体的な計画の記載なし。本稿では触れない
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)未確定/将来本稿による解釈。事実欄の7項目から導出

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてASMPT Limitedが香港証券取引所に提出した法定開示書類および同社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。