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ASEグループ|半導体後工程 企業解説

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COMPANY PROFILE / 半導体後工程

ASEグループ(日月光投資控股)
― 後工程だけで世界一になった会社の、意外な正体

ASEは半導体の後工程(組立・検査)を専門に請け負うOSATの世界最大手です。 ただし同社の売上の4割は半導体後工程ではなく、スマートフォンや車載機器の受託生産(EMS)が占めています。 「後工程の世界一」が実際に何をどれだけやっているのかを、 同社が米国証券取引委員会に提出した法定開示書類の数字だけで確かめます。

構成:ASE Technology Holding の米国SEC提出書類(2025年度 Form 20-F、2026年第2四半期決算発表)を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるASEグループ(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 何をしている会社か ― 「OSAT」とファウンドリの違い
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とシェア
  8. 直近の投資計画
  9. 提携している大手企業
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるASEグループ

正式名称ASE Technology Holding Co., Ltd.中国語表記:日月光投資控股股份有限公司/日本語では「日月光投資控股」
本社の所在国台湾(中華民国)高雄市楠梓区(26, Chin 3rd Rd., Nanzih Dist., Kaohsiung 811)
設立2018年4月30日持株会社の設立日。事業会社のASE Inc.は1984年3月23日設立
上場台湾証券取引所 3711
ニューヨーク証券取引所 ASX
米国ではADR(1 ADS=普通株2株)で取引
2025年 売上高NT$6,454億
(US$206億)
前年比 +8.4%
従業員数105,947人2025年12月31日時点。2026年6月末は114,179人
企業カテゴリーメーカー
(OSAT+EMS)
後工程受託と電子機器受託生産の兼営
2025年の設備投資NT$1,716億
(US$54.7億)
前年の1.8倍。2026年の計画額は非開示
まず押さえるべき1点

ASEの売上は3つの事業に分かれています。パッケージング47.8%、テスト11.1%、EMS39.8% 本稿の計算。 つまり、後工程(パッケージング+テスト)は売上の約59%で、残り4割はEMS ― スマートフォンのモジュールや車載機器を組み立てる、半導体後工程とは別の事業です。 「OSAT世界最大手」という肩書きだけを見ると全社が後工程の会社に見えますが、 実態は「後工程会社と電子機器受託生産会社の合体」です。 この記事ではこの2つを最後まで分けて扱います。

2. ロゴと社名の表記について

ASEのロゴは同社の登録商標です。本稿では生成画像やイラストによる再現は行わず、 掲載する場合は公式サイトから取得した正規のロゴ画像を上の枠に設置してください。 AIで「それらしく」描き起こしたロゴは、商標としても事実としても誤りになります。

表記の特徴:英語の通称は ASE/ASE Group、持株会社としての略称は ASEH。 法定書類の表紙に載る正式名称は中国語の「日月光投資控股股份有限公司」で、 英語名 ASE Technology Holding Co., Ltd. はその訳と位置づけられています 事実。 日本語の記事では「日月光(にちげっこう)」と書かれることもありますが、 同社自身の英文開示では一貫して ASE です。

公式サイト:https://www.aseglobal.com

3. 何をしている会社か ― 「OSAT」とファウンドリの違い

半導体を作る工程は、大きく前半と後半に分かれます。

工程やること扱う対象主な担い手
前工程
(ウェハ製造)
シリコンの円板の上に、トランジスタと配線を作り込むウェハ(直径300mmの円板)ファウンドリ(TSMC、UMC)、IDM(Intel、Samsung)
後工程
(組立・検査)
ウェハを切り分け、基板に載せ、配線し、樹脂で封じ、電気的に検査するチップ(ダイ)と、完成したパッケージOSAT(ASE、Amkor、SPIL)、IDMの自社工場

ASEは後半だけを請け負う会社です。ウェハは作りません。 顧客(または顧客の依頼でウェハを作ったファウンドリ)から完成したウェハを受け取り、 そこから先を引き受けます。これを OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test、 後工程の受託専業企業)と呼びます。

TSMCとどう違うのか

読者が最も混乱しやすいのがここです。TSMCも後工程(CoWoSなど)をやっているのに、 なぜASEのようなOSATが別に必要なのか。一次情報から確実に言えることを3つ挙げます。

  1. そもそも協力関係にある。ASEは20-Fの中で、 「1997年以来、TSMCとの戦略的提携を維持しており、TSMCが製造した半導体について、 TSMCから非独占の優先パッケージング・テスト供給者に指定されている」と明記しています 事実。競合というより、前工程と後工程の分業です。
  2. 扱う品種の幅が違う。TSMCの後工程は最先端のAI向けパッケージ(CoWoS等)に集中していますが、 ASEは2025年時点でワイヤボンダーを25,001台、テスターを7,456台保有し、 通信・コンピューティング・家電・産業機器・車載の全域を相手にしています 事実。ワイヤボンディングという、1本ずつ金属線でつなぐ古典的な方式が、 いまも主力設備として数万台動いている点が、ファウンドリの後工程とは決定的に違います。
  3. 売上規模ではOSATのほうが小さい。ASEの後工程(ATM)売上はNT$3,802億。 TSMCの「ウェハ以外」の売上枠はNT$5,365億で、こちらのほうが大きい 本稿の計算。 「後工程世界一のASE」でも、TSMCの非ウェハ売上には届きません。
素材技術者の視点:OSATは「材料を選ぶ側」である

ファウンドリの後工程では、パッケージ構造も材料も前工程と一体で設計されるため、 材料の採否はファウンドリ側で決まります。一方OSATは、 顧客の仕様に合わせて基板・封止樹脂・アンダーフィル・ワイヤを組み合わせる立場にあります。 ASEが20-Fで「ICサブストレート(BGAパッケージの主要原材料)の開発にも研究開発費の一部を充てており、 日本・台湾・韓国・中国の一流サブストレートサプライヤーと密に協業している」と書いているのは象徴的です 事実。 さらにASEは子会社ASE Electronics(高雄)でサブストレートそのものを自社生産しており、 材料メーカーにとっては顧客であると同時に競合にもなりうる相手です。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

ASEグループ 年間売上高の推移(NT$ 十億) 括弧内は各年度の20-Fが示した米ドル換算額。換算レートは年ごとに異なる 800 600 400 200 0 570 (US$205億) 671 (US$218億) 582 (US$190億) 595 (US$182億) 645 (US$206億) 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2022年の水準を2025年でもまだ超えていない。台湾ドル建てでは4年間ほぼ横ばいである
図1 ASEグループの年間売上高(2021〜2025年)。出典:各年度のForm 20-F。TSMCが同じ期間に2.4倍になったのとは対照的に、ASEの売上は2022年をピークにいったん減り、2025年でもまだ2022年を下回っている。
年売上高(NT$百万)売上高(US$百万)営業利益(NT$百万)研究開発費(NT$百万)有形固定資産の取得支出(NT$百万)
2021年569,99720,54863,31421,05470,906
2022年670,87321,83181,19024,37072,640
2023年581,91419,00441,64925,49954,158
2024年595,41018,15840,33928,83079,522
2025年645,38820,57351,42132,851164,643

※最終列はキャッシュフロー計算書の「有形固定資産の取得による支出」。20-Fの設備投資表(発生ベース)では2023年48,759/2024年96,208/2025年171,617百万で、2025年はUS$5,470.7百万と併記されています。2025年に設備投資が一気に2倍以上になった点が、この表で最も重要な数字です。

従業員105,947人の中身

職種の内訳を見ると、この会社が「労働集約的な製造業」であることがはっきりします 事実。

職種2023年2024年2025年
直接工(製造ライン)45,82646,82952,173
間接員(製造)29,93327,59630,874
間接員(営業・管理)8,0108,3528,642
間接員(研究開発)12,12512,71514,258
合計92,89495,492105,947

直接工が全体の49.2%を占めます 本稿の計算。 TSMCが従業員の約6割を管理職・専門職で占めるのとは、人の構成がまったく違います。 後工程は工程数が多く、品種ごとに段取りが変わるため、いまも人手に依存する部分が大きい。 さらに2026年6月末の従業員数は114,179人で、半年で8,232人増えています 事実。これは能力増強が現在進行形であることの、最も直接的な証拠です。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーとしてはメーカーです。ただし1社の中に性格の違う2つの事業が同居しています。

2025年の売上高 NT$6,454億のセグメント別内訳 左の2つ(濃い青)が半導体後工程。右の緑はEMSで、後工程とは別の事業である パッケージング 47.8% テスト EMS 39.8% 11.1% その他 1.2% ATM(後工程)NT$3,802億=58.9% EMS NT$2,572億 「OSAT世界最大手」として語られるのは、左側のATMだけである EMSはスマートフォンのモジュール、車載機器、サーバ部品などの受託生産で、ウェハを扱わない
図2 2025年の売上高のセグメント別内訳。出典:2025年度Form 20-Fの注記41(セグメント情報)。外部顧客向け売上をそのまま比率にした 本稿の計算。ATMは Assembly, Testing and Materials の略で、ASEが自社の後工程事業をまとめて呼ぶときの言い方。
この数字の読み方

後工程の記事でASEが「世界最大のOSAT」と紹介されるとき、比較されているのは ATMの NT$3,802億(US$121億)であって、全社の NT$6,454億ではありません。 この区別を落とすと、後述のAmkorやSPILとの比較が一気に狂います。 なお2026年第2四半期はATMの売上が前年同期比+36.3%と急伸し、 四半期の構成比もパッケージング52%・テスト13%・EMS34%へと後工程側に寄りました 事実。AI向け需要の波が、TSMCより1〜2年遅れてOSATにも届き始めた形です。

6. 拠点と工場のある国

ASEの製造拠点は17か国にあります。ただしその多くはEMS側の工場で、 半導体後工程の工場は台湾・中国・韓国・日本・シンガポール・マレーシア・フィリピン・米国に集中しています 事実。

国・地域主な後工程拠点位置づけ従業員数(2025年末)
台湾高雄(ASE Inc./ASE Test Taiwan/ASE Electronics)、中壢、台中・彰化・雲林・新竹(SPIL)中核。高雄がフリップチップ・ウェハバンピング・微細ピッチワイヤボンディングの主力、SPILが台中を中心とする第2の柱。床面積は高雄10,795千sq.ft.、SPIL 11,429千sq.ft.67,870
中国上海(ASE Shanghai)、蘇州(SPILSZ/Asteelflash)、無錫、崑山、恵州ASE Shanghaiはパッケージ材料の設計・生産。SPILSZは組立・検査。2021年に大陸の一部拠点を売却済み19,020
韓国坡州(ASE Korea)、天安(CHE、2024年8月取得)高周波・センサ・車載向けに特化3,053
マレーシア/シンガポールペナン、シンガポールIDM(自社で設計も製造もする半導体会社)向けの組立・検査3,816
日本山形県高畠町(ASE Japan)携帯電話・家電・車載向け。床面積108千sq.ft.と小規模481
米国カリフォルニア州(ISE Labs)フロントエンド・エンジニアリングテストと最終検査の拠点。ファブレス各社の近傍に置く狙い715
フィリピン/ベトナムカビテ(2024年8月取得)、ハイフォンカビテは組立・検査、ハイフォンはウェアラブル向けIC実装3,123

※従業員数は20-Fの国別表から。マレーシア2,880+シンガポール936、フィリピン818+ベトナム2,305はそれぞれ合算しました 本稿の計算。表に載せていないポーランド・フランス・ドイツ・チュニジア・チェコ・ハンガリー・英国・ベルギー・メキシコの拠点は、いずれもEMS側です。

台湾の従業員は67,870人で全体の64.1% 本稿の計算。 TSMCの86%ほどではありませんが、やはり台湾集中です。 一方で、EMSまで含めれば17か国に製造拠点があり、地理的な分散という点では TSMCよりかなり広い網を持っています。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

製品群:ワイヤボンディングから2.5D/3Dまで

ASEの後工程サービスは、古典的な方式から最先端まで一通り揃っています。 20-Fが列挙している主な方式は次のとおりです 事実。

ワイヤボンディング
チップの端子とリードフレームを、金線や銅線で1本ずつつなぐ古典的な方式。ASEは25,001台のワイヤボンダーを保有する。
フリップチップ
チップを裏返し、はんだバンプで基板に直接接合する方式。ワイヤより端子数を増やせる。
FOCoS
Fan-out Chip-on-Substrate。再配線層でチップ間をつなぎ、高ピン数のBGA基板に実装する。ASICとHBMを組み合わせるHPC/AI用途向け。端子数3,000〜7,000。
FOCoS-Bridge
FOCoSに微小なシリコンブリッジを埋め込み、チップレット間をつなぐ方式。端子数3,000〜14,000。
2.5D/3D IC
シリコンインターポーザ上に複数チップを並べる(2.5D)/積む(3D)方式。TSMCのCoWoSと同じ土俵の技術。
CPO
Co-Packaged Optics。光素子を同じパッケージに同居させる方式。ASEは20-Fで対応能力を持つと記載。

用途別の構成 ― AI向けが効き始めている

後工程(パッケージング・テスト)売上の用途別構成 上段が2023年、下段が2025年。コンピューティングだけが6ポイント近く増えている 通信 2023年 50.8% 2025年 45.8% コンピューティング 2023年 18.1% 2025年 24.0% 家電・産業・車載など 2023年 31.1% 2025年 30.2% AI向けのASICやHBM実装はコンピューティングに分類される。ASE自身はAI向けの金額を単独では開示していない
図3 後工程売上の用途別構成(2023年と2025年)。出典:2025年度Form 20-F。AI関連が入るコンピューティングは18.1%→24.0%へ上昇した一方、通信(スマートフォン向けが中心)は5ポイント下がっている。

シェアについて ― ここは正直に書きます

確認できなかったこと

ASEは自社の世界シェアを法定開示書類で数値として示していません。 「OSAT世界シェア○%」「先端パッケージの月産能力○万枚」といった数字は 調査会社や報道の推計であり、一次情報ではありません。本稿はそれらを採用しません 未確定/将来。 方式別(ワイヤボンディング/フリップチップ/FOCoS等)の売上内訳も非開示です。 一次情報から言えるのは次の3点です。

  1. 後工程(ATM)の年間売上はNT$3,802億(US$121億)。これがOSATとして比較されるべき数字 本稿の計算
  2. 設備の実台数は公表されている ― ワイヤボンダー25,001台、テスター7,456台(2026年1月31日時点)事実
  3. 用途別構成も公表されている ― 通信45.8%/コンピューティング24.0%/家電・産業・車載など30.2%(2025年)事実

顧客はどこに集中しているか

指標2023年2024年2025年
上位5社が売上に占める比率(全社)48.0%48.4%46.5%
10%を超える顧客の数1社1社1社
上位10社が売掛金に占める比率非開示47%50%
顧客本社の所在地:米国63.6%60.2%56.7%

※ASEは顧客名を開示していません。TSMCの上位10社78%と比べると、ASEの顧客はかなり分散しています。これはOSATが多品種少量の仕事を大量に抱えていることの表れです。

8. 直近の投資計画

2025年 設備投資(実績)NT$1,716億
(US$54.7億)
2024年 NT$962億の1.8倍
うち後工程向けNT$1,650億パッケージング1,134億+テスト516億=全体の96.2%
未執行の設備投資契約NT$1,352億
(US$43.1億)
2025年末時点。うち206億は支払済み
2026年 設備投資計画金額は非開示「能力増強のための機械装置の追加調達が中心」とのみ記載

ASEは2026年の設備投資額を数字で示していません。20-Fにあるのは 「2026年の設備投資は手元資金・営業キャッシュフロー・既存のクレジットラインで賄う予定であり、 その内容は能力増強のための機械装置の追加調達などである」という記述だけです 事実。 したがって2026年の投資額は未確定として扱います 未確定/将来。

ただし四半期の実績は開示されており、2026年第2四半期だけで設備投資は US$16.95億(うちパッケージング8.40億、テスト8.04億、EMS0.49億)でした 事実。 四半期でこの水準が続けば、年間では2025年を大きく上回ることになります。

資金調達の動き

2026年8月3日、ASEは総額US$10億の通貨連動型ゼロクーポン転換社債(2031年満期)の 条件決定を発表しました 事実。 会社の説明では、調達資金は子会社への資本注入を通じた既存借入の返済と、 外貨建て材料の購入に充てられます。 設備投資そのものの資金としては明示されていませんが、 投資が急増する局面で財務の手当てを進めていることは読み取れます。

素材技術者の視点:設備投資の中身が「建屋」に寄っている

2025年の設備投資 NT$1,716億の内訳は、機械装置1,060億、建屋650億、土地6億です 事実。 前年(機械装置603億、建屋320億)と比べると、建屋が2倍に増えています。 装置だけなら既存工場に詰め込めますが、建屋を建てるということは クリーンルームの面積そのものを増やしているということです。 後工程の新棟は、前工程ほどではないにせよクラス管理された環境を必要とし、 そこに納める基板・樹脂・薬液の需要は、装置の納入よりやや遅れて立ち上がります。 材料側から見ると、2025年の建屋投資は2026〜2027年の材料需要の先行指標として読めます 未確定/将来。

9. 提携している大手企業

種類相手内容一次情報の有無
戦略的提携TSMC1997年以来の提携。TSMCが製造した半導体について、ASEをTSMCの「非独占の優先パッケージング・テスト供給者」に指定。ASEは自社の強みの一つとして20-Fに明記している20-Fに記載 事実
完全子会社SPIL(矽品精密工業)2018年4月30日の株式交換で100%子会社化。後工程の第2の柱。詳細は本シリーズのSPIL回で扱う20-Fに記載 事実
子会社(連結)USIグループ(環旭電子ほか)EMS事業の中核。USI Inc.を100%、上海証券取引所上場のUSI Shanghai(601231)を71.6%保有(2026年1月31日時点)20-Fに記載 事実
装置の調達先Teradyne、東京エレクトロン、アドバンテストテスターの主要な調達先としてASEが社名を明記。テストは後工程で最も資本集約的な工程20-Fに記載 事実
材料の協業先日本・台湾・韓国・中国の一流サブストレートサプライヤーICサブストレートの生産能力向上で協業していると記載。ただし個社名は挙げられていない20-Fに記載(社名は非開示)未確定/将来
注意:顧客名は一次情報では確認できない

ASEの顧客としてNVIDIA、AMD、Qualcomm、Broadcomといった社名が語られることがありますが、 ASEの法定開示書類に顧客の実名は一切出てきません。 20-Fにあるのは「上位5社で売上の46.5%」「10%超の顧客が1社」という比率だけです。 TSMCが2025年3月のリリースで顧客5社を実名で挙げたのとは対照的で、 本稿では顧客企業名を特定しません 未確定/将来。

10. 今後のこの分野における存在感

事実として確定していること

事実後工程への含意
2026年第2四半期のATM売上が前年同期比+36.3%AI向けの波がOSATにも到達した。2023〜2024年の停滞局面は終わったと会社の数字が示している
2025年の設備投資がNT$1,716億へ1.8倍、うち96.2%が後工程向け会社の資源配分が明確に後工程側へ振られた
未執行の設備投資契約がNT$1,352億残っている2026年も高水準の投資が続く蓋然性が高い
従業員が半年で8,232人増(2026年6月末114,179人)装置だけでなく人も増やしている。稼働前提の増強である
TSMCとの提携が1997年から継続ファウンドリの後工程内製化が進んでも、ASEは供給網から外れていない
コンピューティング用途が18.1%→24.0%スマートフォン依存からの転換が進行中

見通し

未確定/将来 上の事実から素直に読めば、ASEの後工程における存在感は当面強まる方向です。 理由は単純で、AIアクセラレータの需要が最先端パッケージの供給能力を上回り続ける限り、 TSMCが自社で捌けない分はOSATに流れるためです。 ASEはFOCoS/FOCoS-Bridge/2.5Dという受け皿を持ち、 1997年以来のTSMCとの提携関係がその受け渡しを制度的に支えています。

未確定/将来 一方で、ASEがTSMCの位置に取って代わることは考えにくい。 最先端ロジックのウェハを持たないOSATは、 歩留まりの作り込みを前工程と一体で行えないからです。 ASEの役割は「TSMCの代替」ではなく「TSMCが取りこぼす領域と、TSMCが作らない世代の受け皿」と見るのが、 一次情報と整合的な読み方だと考えます。 なおEMS事業(売上の4割)は半導体市況とは別の循環を持つため、 ASEの全社業績は後工程の実力をそのままは反映しません。 この会社を後工程の指標として使うときは、必ずATMの数字を見る必要があります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容裏づけとなる数字
価格競争会社自身が「顧客の多くは複数の供給元から調達しており、競合の積極的な価格戦略が競争の水準を高め続ける可能性がある」とリスク要因に明記。中国政府による自国OSATへの支援にも言及している20-Fのリスク要因
EMSの薄い利益率EMSは売上の4割を占めるが、2026年第2四半期の売上総利益率は8.9%。同じ四半期のATMは27.3%で、3倍の開き2026年2Q決算発表
設備投資の回収2025年の設備投資は売上の26.6%。未執行契約もNT$1,352億残る。需要が想定を下回れば固定費が重くのしかかる設備投資÷売上=26.6% 本稿の計算
市況の循環性2023年は前年比−13.3%の減収。2024年も+2.3%にとどまり、2025年でもまだ2022年の水準を回復していない2022年NT$6,709億→2023年NT$5,819億 本稿の計算
地政学会社は「中華民国と中華人民共和国の緊張関係」をリスク要因に列挙。従業員の64.1%、主力工場の床面積の大半が台湾にある台湾67,870人/全体105,947人 本稿の計算
訴訟2015〜2016年のSPIL公開買付に関連するインサイダー取引の刑事事件が現在も係属中。2026年2月11日に台湾高雄地方法院が役員1名に無罪判決、3月2日に検察が控訴した20-Fに記載。結果は未確定

12. 用語集

OSAT
Outsourced Semiconductor Assembly and Test。半導体の後工程(組立・検査)を専門に受託する会社。ASE、Amkor、SPILなど。
ATM
Assembly, Testing and Materials。ASEが自社の後工程事業(パッケージング+テスト+材料)をまとめて呼ぶときの言い方。
EMS
Electronics Manufacturing Services。基板実装や機器組立を丸ごと受託する事業。半導体後工程とは工程も顧客も別。
ワイヤボンディング
チップの端子と外部端子を金属の細線でつなぐ接続方式。後工程で最も歴史が長く、いまも数量ベースの主力。
ICサブストレート
チップを載せて外部端子へ配線する多層の小型基板。BGAパッケージの主要原材料で、供給が逼迫しやすい部材。
テスター
完成したパッケージの電気的特性を検査する装置。後工程で最も資本集約的な設備で、1台あたりの価格が高い。
ADS/ADR
American Depositary Share/Receipt。外国企業の株式を米国市場で取引できるようにした預託証券。ASEは1 ADS=普通株2株でNYSEに上場。
20-F
米国上場の外国企業が米国証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書。監査済みで、記載内容に法的責任が伴う。
概念図:ウェハを受け取ってパッケージに仕立てるOSATの工程と、その横で別に動く受託生産(EMS)のライン(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 ASEグループの事業構造の概念図(AI生成による概念図。実際の工場配置や設備を写したものではありません)。

13. 出典

  1. ASE Technology Holding Form 20-F for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年4月1日)。正式名称・本社住所・上場市場、セグメント別売上、従業員数(職種別・国別)、工場一覧と床面積、設備投資、研究開発費、顧客集中度、用途別・地域別売上、ワイヤボンダー/テスター台数、TSMCとの提携、SPIL・USIの保有状況、リスク要因、訴訟。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
  2. ASE Technology Holding 2026年第2四半期決算発表(Form 6-K、2026年7月30日)。2Q26の売上・セグメント構成比・売上総利益率、設備投資US$16.95億、従業員114,179人、顧客集中度。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000095010326011351/dp250868_6k.htm
  3. ASE Technology Holding US$10億の転換社債の条件決定に関する発表(Form 6-K、2026年8月3日)。2031年満期・通貨連動型ゼロクーポン転換社債、調達資金の用途。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526330709/d77314d6k.htm
  4. 米国SEC EDGAR XBRL companyfacts API(CIK 0001122411)。2021〜2025年の売上高・営業利益・研究開発費・有形固定資産の取得支出(各年度のForm 20-Fから抽出された値)。https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001122411.json
  5. TSMC Form 20-F for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出)。第3節・第5節でASEとの規模比較に使用した TSMC 側の売上高。https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046179/000162828026025362/tsm-20251231.htm
  6. ASE Technology Holding 公式サイト(会社概要・ブランド表記の確認用)。https://www.aseglobal.com

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称(日月光投資控股股份有限公司)、本社住所、上場市場(TWSE 3711/NYSE ASX)、持株会社の設立日2018年4月30日事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
2021〜2025年の売上高・営業利益・研究開発費・有形固定資産取得支出事実出典4https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001122411.json
2025年のセグメント別売上(パッケージング47.8%/テスト11.1%/EMS39.8%/その他1.2%)、ATM合計NT$3,802億本稿の計算出典1の注記41の外部顧客向け売上から比率を算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
従業員105,947人(2025年末)、職種別・国別構成、直接工49.2%、台湾64.1%事実+本稿の計算出典1の従業員表。比率は本稿で算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
従業員114,179人(2026年6月末)、2Q26売上+26.7%、ATM+36.3%、セグメント構成比52/13/34/1%、ATM売上総利益率27.3%・EMS8.9%、設備投資US$16.95億事実出典2https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000095010326011351/dp250868_6k.htm
工場の所在地・床面積(高雄10,795千sq.ft.、SPIL 11,429千sq.ft.ほか)、製造拠点が17か国事実出典1の工場一覧(2026年1月31日時点)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
ワイヤボンダー25,001台、テスター7,456台(2026年1月31日時点)、テスターの調達先3社事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
1997年以来のTSMCとの戦略的提携、非独占の優先供給者指定事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
用途別構成(通信45.8%/コンピューティング24.0%/家電・産業・車載など30.2%)、地域別(米国56.7%)、上位5社46.5%事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
2025年設備投資NT$1,716億(内訳:機械装置1,060億・建屋650億・土地6億)、未執行契約NT$1,352億、後工程向け96.2%事実+本稿の計算出典1の設備投資表とセグメント別支出。96.2%は本稿で算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
US$10億の転換社債(2031年満期)の条件決定事実出典3https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526330709/d77314d6k.htm
SPILを100%保有、USI Inc.を100%・USI Shanghaiを71.6%保有事実出典1(2026年1月31日時点)https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
ASEのATM売上NT$3,802億はTSMCの「ウェハ以外」NT$5,365億より小さい本稿の計算出典1と出典5の数値を突き合わせて算出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046179/000162828026025362/tsm-20251231.htm
リスク要因(価格競争、中国政府の支援、両岸関係)、SPIL公開買付に関する訴訟の係属事実出典1https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
ASEの世界シェア、先端パッケージの生産能力、方式別の売上内訳未確定/将来一次情報が存在しないため本稿では記載しないhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
2026年の設備投資計画額未確定/将来非開示。20-Fは資金調達方法と用途の性格のみを記載https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
顧客の実名、サブストレートサプライヤーの個社名未確定/将来ASE側の一次情報に記載なし。本稿では特定しないhttps://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)、建屋投資が材料需要の先行指標になるという読み未確定/将来本稿による解釈。事実欄の6項目から導出https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1122411/000119312526135585/d50802d20f.htm

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべてASE Technology Holdingが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類および同社の公式発表に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。