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ポリイミド 技術解説 | Troy Technical

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ポリイミド
― 「融けない」「溶けない」から、前駆体で作る高耐熱ポリマー

DuPont の Kapton HN は −269 ℃から 400 ℃の用途で使われてきたとされ、融点は「なし」と記載されています。 耐熱性の高さと、加工の難しさは同じ原因から来ています。 その解き方が、溶けるうちに形にして、あとで固める「二段合成」です。

構成:Qnity(旧DuPont)、UBE、三菱ガス化学、住友電気工業、査読論文、ASTM・IPC の公開情報を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

明るい加工室で、琥珀色で半透明の薄いフィルムがロールから繰り出されて巻き取られていき、手前では手袋をした手が、銅の回路を載せて曲げた琥珀色のフィルム片を持っている概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。「薄くて、琥珀色で、しなやかな耐熱フィルム」という印象を表現したものです。実際の製品・色味・厚みを示すものではありません。
この記事の構成
  1. ポリイミドとは何か(3行でつかむ)
  2. 二段合成 ― ポリアミド酸を経て、あとからイミド環を閉じる
  3. 素材技術者の視点①:「溶けない」から前駆体で作る、という制約
  4. 数字で見る ― Kapton HN と UPILEX-S(メーカー公称値)
  5. 本稿の計算:熱膨張とはじめての加熱の収縮
  6. 素材技術者の視点②:ガラス転移点が「ない」とはどういうことか
  7. フレキシブルプリント基板(FPC)の中のポリイミド
  8. 半導体とリチウムイオン電池の中のポリイミド
  9. 透明ポリイミド ― 着色の原因と、折りたたみ型ディスプレイへの道
  10. 素材技術者の視点③:透明にすると、何を失うのか
  11. 課題・限界/用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
物性値は試験法・条件・出所とセットで書き、メーカー公称の数値はそのように明記しています。 製品の優劣を示す記事ではありません。

1. ポリイミドとは何か(3行でつかむ)

ポリイミドとは、「主鎖にイミド環(ふたつのカルボニルが窒素をはさんだ五員環)を持つ高分子」の総称です。 ここで主に扱うのは、ベンゼン環とイミド環が交互につながった芳香族ポリイミドです。

  • 高い耐熱性:Qnity(旧DuPont)は Kapton HN を「−269 ℃から 400 ℃までの温度で使われてきた汎用フィルム」と説明しています事実。DuPont のデータシートには融点が「なし」(ASTM E794)と記載されています事実
  • 溶けないから、前駆体で作る:1965年公開のデュポン社の特許は、ジアミンと二無水物から先にポリアミド酸(可溶な前駆体)を作り、成形したあとで加熱または化学処理でポリイミドにするという二段階の方法を記載しています事実
  • 着色と、透明化の課題:芳香族ポリイミドの膜が黄〜琥珀色なのは、電荷移動(CT)相互作用によるものと論文は説明しています。無色にしながら耐熱性と低熱膨張を保つのは難しい、とされています事実
この記事でいちばん大事な一行

ポリイミドは「高性能だが加工しにくい」のではなく、「加工しにくいことと、高性能であることが同じ原因」の材料です。 分子が剛直で、鎖同士が強く引き合うから、溶けず融けず、高温でも軟らかくなりません。 だから溶けている間(前駆体の段階)に形を決めて、そのあとで性質を固めるという作り方になります(本記事による解説)。

2. 二段合成 ― ポリアミド酸を経て、あとからイミド環を閉じる

ポリイミドの二段合成の流れ

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
ポリイミドの二段合成 ― 溶けるうちに形にして、あとで固める ※ 反応そのものではなく、工程の流れと「溶けるか・溶けないか」の関係を示す概念図です。 原料 芳香族ジアミン + 芳香族二無水物 ポリアミド酸 (前駆体) 有機溶媒に 溶けた状態 成形 流延・塗布して フィルムや被膜 の形にする 加熱・脱水環化 イミド環が閉じ 水が抜ける (化学処理も可) ポリイミド 多くの芳香族系は 溶けにくく 融点を示さない 溶液の状態 = 加工しやすい 固体 = 加工しにくい 第1段:重合 第2段:環化 ※ 二段合成(ポリアミド酸を経て、成形後に加熱または化学処理でポリイミドにする)の考え方は、1965年公開のデュポン社の特許に記載があります。 ※ 溶媒に溶ける可溶性ポリイミドもあり、その場合はイミド化済みのワニスをそのまま塗って乾かす方法が使えます(第9章)。 ※ 各ボックスの文言は本記事による整理で、温度などの条件は書いていません。
図1 概念図(ベクター作図)。二段合成の流れを、「溶液か固体か」の観点で整理したものです。二段階であること自体はデュポン社の特許[参考資料 4・5]と Hasegawa ら[参考資料 6]の記載によります。ボックスの文言と並べ方は本記事の整理で、反応式や反応条件を示すものではありません。

特許 US 3,179,614(Edwards、デュポン社、1961年出願・1965年公開)は、 ピロメリット酸二無水物などと芳香族ジアミンを反応させると、成形できる「ポリアミド酸」が得られ、 それを熱処理または化学処理でポリイミドに変えることができる、と記載しています事実。 関連する特許 US 3,179,634 は、この二段階を好ましい方法として挙げ、 ジアミンと二無水物を有機溶媒中で反応させてポリアミド酸の中間体を作り、そのあとで加熱するか脱水剤で処理してポリイミドにすると述べています事実。

Hasegawa らの論文(2017年)も、同じ流れを「従来の二段階プロセス(前駆体の流延と、それに続く熱イミド化)」と呼んでいます事実。 この論文によると、膜の作り方は3通りあります。

方法流れ論文の記述
二段階(熱イミド化)ポリアミド酸を基板に流延し、加熱して環化不溶性のポリイミド系では、この方法に限られる。熱イミド化は「300〜350 ℃以上」
化学イミド化ポリアミド酸の溶液に脱水剤(無水酢酸とピリジン)を加え、ポリイミドとして取り出して再溶解し、塗って乾かす溶解性の高い系にしか使えない。塗布・乾燥は「250 ℃以下」
ワンポット法モノマー溶液を還流して、溶液のままポリイミドにする最も簡単な経路だが、重合条件の最適化が必要

すべて事実(Hasegawa ら、Polymers 2017, 9, 520[参考資料 6])。

Kapton の化学組成は、規格の書き方から読み取れます

DuPont のデータシートは、Kapton HN が ASTM D5213 の「type 1、item A」の要求を満たすと記載しています事実。 ASTM D5213(電気絶縁・誘電用途の高分子樹脂フィルムの規格)は、対象材料の(A)として ポリ(N,N'-p,p'-オキシジフェニレン ピロメリットイミド)を挙げています事実。 つまり Kapton HN は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4'-オキシジアニリン(ODA)から作るポリイミドに当たります(規格の項目名とデータシートの記載を結びつけた本記事の読み取り)。

UBE の UPILEX は、同社が自社で作るBPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)を原料とすると説明されています事実。 同社の資料はジアミン成分を記載していないため、本稿では書きません。

3. 素材技術者の視点①:「溶けない」から前駆体で作る、という制約

素材技術者の読みどころ:設計の自由度は、環化の工程に握られている

熱可塑性樹脂なら、融かして成形し、冷やして固めればよい。 ポリイミドはそれができないので、形を決める段階(ポリアミド酸の溶液)と、性質が決まる段階(環化後)が分かれています。 このことが、素材技術者にとって3つの意味を持ちます(本記事による解説)。

  • 溶媒が最終物性に残る:論文は、熱イミド化の二段階プロセスで膜の着色度が大きくなる溶媒の順をHMPA ≫ NMP > DMAc ≧ GBL・トリグライムと報告しています(もともと無色になる系での、同論文の経験則)事実。溶媒の沸点や、ポリマーとの相互作用で「膜に残る時間」が変わることが理由と推測されています。
  • 基板に拘束されたまま環化する:同論文は、熱イミド化の最中に膜が基板に固定されていると、主鎖が面内に並び(面内配向)、低い熱膨張係数につながると説明しています事実。つまり低CTEは分子設計だけでなく、プロセスで作り込む性質でもあります。
  • 残留応力が「初回加熱の収縮」として現れる:DuPont のデータシートは、製造時に膜に入った残留応力のため、最初に高温にさらすと収縮すると記載しています事実。熱膨張係数を測る前に、論文は自由状態で最終加熱温度より高い温度でアニールして残留応力を除くことを勧めています事実。

UBE のカタログには、取り扱い上の注意として「微量の DMAC を含み、300 ℃を超えると一酸化炭素を生じる」旨の記載があり、換気を求めています事実。 溶媒や副生物の扱いは、高温で使う製品の設計や現場の安全にも直結します。

4. 数字で見る ― Kapton HN と UPILEX-S(メーカー公称値)

ここでは、ポリイミドフィルムの代表的な2製品について、メーカー自身が公表している値を並べます。 両者は原料も製造法も異なる別の製品で、厚みも試験条件も同じではありません。優劣を示す表ではなく、「どんな項目を、どの試験法で出すか」を見るための表です。

項目Kapton HN(メーカー公称)UPILEX-S(メーカー標準値)試験法・条件
引張強さ231 MPa(23 ℃)/139 MPa(200 ℃)520 MPa(25S, 25 ℃)/290 MPa(25S, 300 ℃)ASTM D882。Kapton は D-882-91 Method A、膜厚 25〜125 μm で同値
引張弾性率2.5 GPa(23 ℃)/2.0 GPa(200 ℃)9.1 GPa(25S, 25 ℃)/3.7 GPa(25S, 300 ℃)ASTM D882
破断伸び72 %(25 μm, 23 ℃)、82 %(50〜125 μm, 23 ℃)、83 %(全厚み, 200 ℃)40 %(25S, 25 ℃)、70 %(25S, 300 ℃)ASTM D882
密度1.42 g/cm³1.47 g/cm³ASTM D1505
融点なしなしKapton:ASTM E794。UPILEX:試験法の記載なし
熱収縮0.17 %(150 ℃・30 分)/1.25 %(400 ℃・120 分)0.05 %(25S, 200 ℃・2 時間)Kapton:IPC-TM-650 2.2.4A/ASTM D5214。UPILEX:ASTM D1204
比誘電率(1 kHz)3.4(25 μm, 23 ℃, 50 %RH)3.5(25S, 25 ℃)ASTM D150
吸水率(本稿では未確認)1.4 %(23 ℃・24 時間浸漬)/0.8 %(50 ℃・60 %RH 平衡)UPILEX:ASTM D570
難燃性UL94 V-0UL94 V-0(表)。本文には VTM-0 の記載もあるUL 94

Kapton HN は Qnity 製品ページ[参考資料 1]と DuPont データシート(2016年12月版)[参考資料 2]、UPILEX-S は UBE カタログ(2022年4月版)[参考資料 3]。すべて事実(メーカー公称)。

数字の読み方の注意

同じ「ASTM D882」と書かれていても、試験片の寸法・つかみ具合・試験速度で値は変わります。 ASTM D882 自身が、引張特性は試験片の厚み、作製方法、試験速度、つかみ具、伸びの測り方で変わるので、比較したいときはこれらを厳密にそろえると述べています事実[参考資料 11]。 DuPont のデータシートは試験片を 25×150 mm、つかみ間隔 100 mm、速度 50 mm/分と記載しています。UBE のカタログには、この種の条件が書かれていません。 また、ここで引用した D882 の版は古い(D-882-91)もので、現行版とは異なります。

ポリイミドの熱膨張は「1つの数字」ではない DuPont Kapton HN(25 μm、熱履歴を与えた後)の区間ごとの熱膨張係数 ― メーカーのデータシート記載 0 10 20 30 40 50 線膨張係数(ppm/℃) 30〜100 ℃ 17 100〜200 ℃ 32 200〜300 ℃ 40 300〜400 ℃ 44 30〜400 ℃(全体) 34 ※ 値は DuPont の Kapton HN データシート(K-15345-2、2016年12月版)の Table 4 による。区間の係数は温度が上がるほど大きくなっています。 ※ 同データシートには別の試験条件の値(−14〜38 ℃で 20 ppm/℃、ASTM D696)もあり、試験条件が異なる数字を並べて比べることはできません。
図2 概念図(ベクター作図)。棒の長さは DuPont の Kapton HN データシート[参考資料 2]の Table 4(25 μm、熱履歴後)の公表値です。棒グラフにしたのは本記事によるもので、区間ごとに温度幅が異なります。他の製品や他の試験条件の値とは比べられません。

図2のとおり、Kapton HN の線膨張係数は温度とともに大きくなります(17 → 32 → 40 → 44 ppm/℃)。 一方で、Qnity の製品ページには 20 ppm/℃(50〜200 ℃、JIS K 7197)と書かれ、2016年のデータシートの Table 2 には20 ppm/℃(−14〜38 ℃、ASTM D696)と書かれています事実。 同じ「20」でも、温度範囲も、試験法も、試料の熱履歴も違います。 JIS K 7197 は、プラスチックの線膨張率を熱機械分析(TMA)で求める試験方法の規格です[参考資料 12]。

5. 本稿の計算:熱膨張とはじめての加熱の収縮

本稿の計算:区間ごとの係数を足し合わせると、全体の係数と合うか

データシートの区間別の係数から、30 ℃から 400 ℃へ加熱したときの伸びを求め、全体の値(34 ppm/℃)と照合します本稿の計算。

  • 30〜100 ℃:70 K × 17 ppm/℃ = 1,190 ppm
  • 100〜200 ℃:100 K × 32 ppm/℃ = 3,200 ppm
  • 200〜300 ℃:100 K × 40 ppm/℃ = 4,000 ppm
  • 300〜400 ℃:100 K × 44 ppm/℃ = 4,400 ppm
  • 合計 = 12,790 ppm = 約 1.28 %(長さ 100 mm で約 1.28 mm)
  • 全体の値で計算すると:370 K × 34 ppm/℃ = 12,580 ppm = 約 1.26 %(100 mm で約 1.26 mm)。差は約 1.7 %

初回の加熱による収縮との比較:データシートの熱収縮は 1.25 %(400 ℃・120 分)です。 これは上の可逆的な熱膨張(約 1.26〜1.28 %)とほぼ同じ大きさです。

前提と限界:区間別の係数は「熱履歴を与えた 25 μm のフィルム」の値で、全体の値との整合は、データシートの数字が互いに矛盾しないことを確かめたにすぎません。 1.25 % の収縮は 400 ℃・120 分という特定条件の値で、試験片の寸法や厚みの記載はデータシートの当該行にありません。 膨張量と収縮量を足したり引いたりして実際の寸法変化を予測するものではありません。

素材技術者の読みどころ:可逆な膨張より、不可逆な収縮のほうが厄介なことがある

熱膨張係数は、温度が戻れば元に戻る量です。ところが初回加熱の収縮は戻りません。 フレキシブル基板の回路のように、フィルムの上に精密な配線を作る用途では、 配線を作る前に一度熱を通して寸法を落ち着かせる(または、はじめから収縮量を見込んで設計する)必要があります(本記事による解説)。 「熱膨張係数が小さい」という数字だけでは、この問題は見えません。 熱膨張係数の読み方は、本シリーズ「熱膨張係数」編で詳しく扱っています。

6. 素材技術者の視点②:ガラス転移点が「ない」とはどういうことか

DuPont のデータシートは、Kapton のガラス転移温度について次のように記載しています(本稿訳)。 「Kapton では 360 ℃から 410 ℃の間で二次転移が起き、これをガラス転移温度と仮定している。測定技術によって、この範囲内で結果が異なる」事実。 同じデータシートの融点は「なし」です。

素材技術者の読みどころ:「耐熱温度」には3つの物差しがある

「耐熱性が高い」の中身を、本記事では3つに分けて整理します(解説)。

物差し何を見るかこの記事で出てきた値(メーカー公称・論文)
短期の耐熱軟化・分解がいつ始まるか(Tg、融点、重量減少)Kapton の二次転移 360〜410 ℃(測定技術で変わる)。Neopulim S100/S200 の Tg は 308 / 327 ℃(TMA)、1 %重量減少温度は 473 / 483 ℃(TGA)
長期の耐熱長く使い続けたとき、特性が許容範囲を下回るまでの寿命(RTI、熱寿命)Kapton HN:UL RTI は電気 240 ℃、機械強度 200 ℃(UL 746B)。UPILEX-25S:引張強さの熱寿命が 290 ℃で 20,000 時間(定温法)
寸法の安定熱で伸び縮みし、元に戻らない量(CTE、熱収縮)第4・5章のとおり

「Tg が高い」ことと「長く使える」ことは別の話です。 また、Tg を超えても弾性率が大きく下がらない(動的粘弾性で明確な Tg が見えない)ことは、基板材料としての理想とされています。 Hasegawa らは、プラスチック基板の目標として、現実的には Tg 350 ℃超、望ましくは400 ℃超、あるいは400 ℃まで目立った軟化が見られない(DMA で明確な Tg が検出されない)ことを挙げています事実。

ガラス転移点の測り方(DSC・TMA・DMA の違い)と、クリープ・応力緩和の考え方は、 本シリーズ「ガラス転移点とクリープ」編で詳しく扱います。

7. フレキシブルプリント基板(FPC)の中のポリイミド

FPCの断面の模式図

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
FPCの中で、ポリイミドは「土台」と「カバー」の両方を担う 片面フレキシブルプリント配線板(FPC)の断面の模式図(層の厚みは実寸比ではありません) カバーレイ(PIフィルム) 接着剤層(熱硬化型) 銅箔(エッチングで回路に) 接着剤層(熱硬化型) ベース PIフィルム 開口部 めっき銅が露出 SEI テクニカルレビュー第172号(2008年)の説明にもとづく整理: ・絶縁層には一般に耐熱性に優れ、熱膨張係数が銅箔に近いPIフィルムが使われる ・PIフィルムの主要な厚みは25 μm と 12.5 μm、銅箔は 35・18・12 μm が一般的 ・接着剤を使わない「2層材」のベースも多く採用されている ※ 開口部はコネクタ接続や部品実装のために、金型打ち抜きなどで設けられます。
図3 概念図(ベクター作図)。片面FPCの層構成を、住友電気工業の技術解説[参考資料 8]の記述にもとづいて模式的に描いたものです。層の厚み・開口部の寸法は実寸比ではなく、特定の製品の断面を示すものでもありません。

住友電気工業の技術解説(SEI テクニカルレビュー第172号、2008年)は、FPC を次のように説明しています事実。

  • 構造:片面 FPC は、中央の銅箔をエッチングして回路を作り、その上下をポリイミドフィルムの絶縁層が熱硬化型接着剤で接着して外部ストレスから守る構造です。耐熱性や薄さの要求から、接着剤を使わない2層材のベースも多く採用されています。
  • なぜポリイミドか:絶縁層には一般に耐熱性に優れ、熱膨張係数が銅箔に近いPIフィルムが使われます。耐熱要求が低い場合はPET、高周波特性を重視する場合は液晶ポリマー(LCP)が使われることもあります。
  • 耐熱の意味:FPC は耐熱性に優れることから、リフローはんだ付け(加熱はんだ処理)による部品実装ができる、とされています。
  • 材料:PI フィルムの主要な厚みは 25 μm(1 mil)と 12.5 μm(1/2 mil)。銅箔は電解銅箔と圧延銅箔があり、耐折性が必要なときは圧延銅箔が採用されます。
素材技術者の読みどころ:「銅に近いCTE」は、折り曲げと寸法の両方のための条件

FPC の絶縁フィルムの選定条件に「熱膨張係数が銅箔に近い」が入っているのは、 張り合わせた2層の伸び縮みがずれると、反りや剥離の原因になるからです。 熱膨張係数の差が部品や層に与える応力については、本シリーズ「熱膨張係数」編で扱っています。 もうひとつは、折り曲げの耐久性です。 データシートの MIT 耐折性(ASTM D2176)で Kapton HN は 25 μm で 285,000 回、125 μm では 5,000 回と、厚いほど少なくなることが示されています事実(メーカー公称、DuPont データシート)。 同じ材料でも、可動部には薄いフィルムを使うのが理にかなっています(本記事による解説)。

FPC 用の金属張積層材料の分類と品質要件は、IPC-4204(フレキシブルプリント基板製造用の金属張誘電体)が定めています。 ANSI ウェブストアに掲載された規格紹介(IPC-4204B-2018)によると、この規格はポリエステル、ポリイミド、液晶ポリマーを誘電体にした材料を扱います事実[参考資料 13]。

8. 半導体とリチウムイオン電池の中のポリイミド

半導体:再配線層(RDL)の絶縁膜

半導体の後工程では、ポリイミドは感光性にして、露光・現像で形を作る絶縁膜としても使われます。 この用途は本シリーズ「RDL」編で詳しく扱っていますので、ここでは繰り返しません。 同編では、感光性ポリイミドとPBO(ポリベンゾオキサゾール)の物性や低温硬化の流れを、メーカーの公表資料にもとづいて整理しています。 二段合成の観点では、前駆体の段階でパターンを作ってから環化する流れの製品もあれば、イミド化済みの可溶性ワニスを使う製品もあります(すべての感光性ポリイミドが前駆体型とは限りません)。 後工程の樹脂が重なる論点(Tg、CTE、反り)は、「熱膨張係数」編・「アンダーフィル」編・「モールディング」編で扱っています。

リチウムイオン電池:シリコン負極のバインダー

Nanomaterials 誌の論文(2021年)は、シリコン負極について次のように述べています事実[参考資料 9]。

  • シリコンは理論容量が黒鉛の約10倍に達する一方、リチウム化で最大約300 %の体積変化を起こし、繰り返し充放電で活物質が割れたり集電体から剥がれたりして、サイクル性能が低下する。
  • 黒鉛負極で一般的な PVDF バインダーは、シリコン負極の機械的ストレスに耐えられないとされる。
  • 著者らは、ポリイミドをバインダーとする着想のもと、水溶性のポリアミド酸塩(W-PAmAS)を合成し、150 ℃の低温処理でシリコン電極を作った。カルボン酸基を導入して接着力を高め、容量 2061 mAh/g、1200 mA/g で 200 サイクル後に 1883 mAh/g を報告している(研究室規模の結果)。
素材技術者の読みどころ:二段合成の「前駆体」は、水に溶かす道具にもなる

この研究で注目したいのは、ポリアミド酸を塩にして水に溶かすことで、有機溶媒を避け、 しかも環化温度を 150 ℃まで下げて電極に使えるようにしている点です。 ポリイミドが一般に「高温で環化して作る」ことを考えると、前駆体の化学を変えて、プロセスの温度と溶媒を変えるという設計になっています(本記事による解説)。 一方で、この論文は研究室規模の報告で、量産電池での採用を示すものではありません。 本稿の調査範囲では、ポリイミド系バインダーを使ったシリコン系電池の量産実績を一次情報で確認できませんでした。

9. 透明ポリイミド ― 着色の原因と、折りたたみ型ディスプレイへの道

無色透明で薄いフィルムが、なめらかな曲線を描いて二つ折りにされ、折り曲げ試験機と琥珀色のフィルムの切片が並んでいる概念イメージ
図4 概念図(AI生成イメージ)。「透明で、折り曲げに耐える薄い膜」という状況を雰囲気として表現したものです。実際の製品・層構成・曲げ半径を示すものではありません。

Hasegawa らの論文は、ディスプレイ用の耐熱プラスチック基板に求められる性質を、次のように整理しています事実。

  • 現在のガラス基板(厚さ 400〜700 μm)に代わる、厚さ 50 μm 未満のプラスチック基板が、軽量化・薄型化・強靭化のために求められている。
  • 透明性、耐熱性、寸法安定性、フィルムの延性、成膜プロセスとの相性を同時に満たすことが難しく、信頼できるプラスチック基板材料はまだない、と論文は述べている(2017年時点)。
  • 透明な市販スーパーエンプラ(例:ポリエーテルスルホン、Tg 225 ℃)では短期耐熱性が足りない。
  • 目標値の例:Tg は 350 ℃超(望ましくは 400 ℃超)、面内の線膨張係数は10 ppm/K 未満(一般の高分子は 50〜120 ppm/K)、20〜30 μm の膜で黄色度 YI < 3、ヘイズ < 1.0 %。

また、折りたたみ型ディスプレイに向けた別の論文(Micromachines 2021)は、 無色ポリイミド(CPI)基板の上にハードコートをした膜を、フレキシブル・折りたたみ型ディスプレイのカバーウィンドウとして使う研究を報告しています事実[参考資料 10]。 カバーガラスに代わるフィルムには、高い透過率、曲げへの強さ、耐傷性、衝撃からの保護が必要とされます。

ポリイミドの着色と電荷移動

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
なぜ普通のポリイミドは黄色いのか ― 電荷移動で説明できる ポリイミドの着色の原因(概念図)― 電子を出す部分と受け取る部分が交互に並ぶ 全芳香族ポリイミド 供与 受容 供与 受容 供与 受容 赤線:電荷移動(CT)相互作用 → 可視光の領域に新しい吸収帯 → 膜が黄色〜褐色に着色 例:UPILEX-S 15 μm の黄色度 YI は 46.0(文献値) 脂環式の構造を導入した設計 供与 脂環 供与 脂環 供与 脂環 受容部の電子の受け取りやすさを下げる → CT 相互作用が弱まる → 可視光の吸収が減り、無色に近づく 代わりに、剛直さや耐熱性とのバランスが課題 ※ 供与=N-芳香族の部分、受容=ジイミドの部分(Hasegawa 2017 の説明にもとづく概念化)。原子の配置を正確に描いたものではありません。 ※ 右側の「脂環」ボックスは、脂環式の二無水物を使うことで着色を抑える方向の設計を、本記事が単純化して示したものです。
図5 概念図(ベクター作図)。電荷移動(CT)による着色の考え方を、Hasegawa ら[参考資料 6]の説明にもとづいて単純化したものです。原子の配置や電子の動きを正確に描いたものではなく、右側の設計は一つの方向性を示す模式です。

なぜ普通のポリイミドは黄色いのか

Hasegawa らは、全芳香族ポリイミドの主鎖を「電子供与体(N-芳香族の部分)と電子受容体(ジイミドの部分)が交互につながった並び」とみなします。 分子内・分子間の供与体―受容体の電荷移動(CT)相互作用が、可視域に元の成分にはない新しい吸収帯を作り、これが芳香族ポリイミド膜の着色の原因とされています事実。 UPILEX-S の 15 μm の膜の黄色度は YI = 46.0 と、論文に例示されています事実。

着色には、CT 相互作用以外に、末端アミノ基の分解、主鎖中の脂肪族部分、鎖の凝集(イミド化の方法や加熱プログラムの影響)、 温度・雰囲気・溶媒といったプロセスの要因も関わります事実。 「ポリマーの設計だけでは決まらない」点が、現場では重要です。

市販の透明ポリイミドワニスの公表値

三菱ガス化学の Neopulim は、イミド化が済んだ、溶媒に可溶な透明ポリイミドのワニスで、溶媒を揮発させるだけで膜になると説明されています。 標準グレードの S100 と S200 は、フッ素成分をまったく含まない(PFAS フリー)とされています事実。

項目Neopulim S100Neopulim S200条件(メーカー公称)
ガラス転移温度 Tg308 ℃327 ℃TMA
1 %重量減少温度473 ℃483 ℃TGA
全光線透過率89.9 %90.4 %膜厚 50 μm(同社ページの表記による)
線膨張係数66 ppm/K57 ppm/K100〜200 ℃
黄色度 YI1.51.3膜厚 50 μm(同社ページの表記による)

すべて事実(三菱ガス化学 Neopulim 製品ページ[参考資料 7]、メーカー公称値)。

10. 素材技術者の視点③:透明にすると、何を失うのか

透明ポリイミドの熱膨張係数と、論文が示す目標 各メーカー・論文が公表する線膨張係数(測定条件が異なるため、順位づけの図ではありません) 0 10 20 30 40 50 60 70 線膨張係数(ppm/K または ppm/℃) Kapton HN(50〜200℃, JIS K 7197) 20 UPILEX-25S(50〜200℃) 12 UPILEX-125S(50〜200℃) 22 Neopulim S100(100〜200℃, TMA) 66 Neopulim S200(100〜200℃, TMA) 57 無色PI 試作例(Hasegawa 2017) 7.3 論文が示す目標:10 以下 着色したPIフィルム(黄〜琥珀色) 透明PI(無色に近い) ※ 出所:Kapton HN=Qnity(旧DuPont)製品ページ、UPILEX-S=UBE のカタログ(標準値)、Neopulim=三菱ガス化学、無色PI試作例=Hasegawa 2017。 ※ 無色PI試作例の 7.3 は CBDA(70);6FDA(30)/AB-TFMB 共重合体の値で、測定温度範囲は本稿では確認していません。 ※ 膜厚・熱履歴・試験法・温度範囲が揃っていないため、数字の大小だけで材料の優劣は決められません。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。公表されている線膨張係数を並べた図です。出所は Qnity[参考資料 1]、UBE[参考資料 3]、三菱ガス化学[参考資料 7]、Hasegawa ら[参考資料 6]。温度範囲・膜厚・熱履歴・試験法がそろっていないため、順位づけの図ではありません。目標線(10)は同論文が示す目標値です。
素材技術者の読みどころ:着色の原因は、耐熱と低CTEの原因と同じ場所にある

図6のように、Neopulim の線膨張係数(57〜66 ppm/K、100〜200 ℃)は、 着色したポリイミドフィルムの公表値(Kapton HN の 20 ppm/℃〔50〜200 ℃〕、UPILEX-25S の 12 ppm/℃〔50〜200 ℃〕)よりも大きく、 Hasegawa らが目標とする 10 ppm/K 未満には届いていません。 測定条件が違うため、この大小で材料の優劣は決められません。 それでも、「透明にすると熱膨張が大きくなりやすい」という傾向は、論文自身が述べる難しさ(透明性と低CTEの両立)と整合しています(本記事による解説)。

理由は分子構造から読み取れます。 低CTEにはモノマーの直線的で剛直な構造が必要で、そうして得られた鎖は膜の面内に並びやすい(面内配向)と論文は説明しています事実。 一方、透明にするには供与体と受容体の相互作用を弱める必要があり、そのために別の構造を入れると、別の問題が出てきます。 論文が挙げる例を3つ示します事実。

  • 6FDA 系:ヘキサフルオロイソプロピリデン基の「蝶番」でイミド部分がねじれ、主鎖の直線性が失われるため、熱イミド化した 6FDA/TFMB 膜は低CTEにならない。
  • 脂環式ジアミン(t-CHDA):重合の初期に強い塩ができて、反応が止まったり、反応に長い時間がかかったりする。s-BPDA と t-CHDA の系は、400 nm の透過率 約80 %、Tg 300 ℃超、CTE 10 ppm/K の膜になる一方、最大破断伸びは約10 %とやや脆い。
  • 脂環式二無水物(CBDA):低CTEに向くが、多くは汎用の有機溶媒に溶けず溶液加工ができない。さらに吸湿で開環しやすく、イミド化により高い温度が必要になる。

また、同論文の系では、化学イミド化で作った膜は、従来の二段階プロセスで作った膜より透明度が高く、CTE が低いと報告されています事実。

つまり、透明ポリイミドの設計では「透明」「耐熱(高Tg)」「低CTE」「靭性」「溶液加工性」の5つの間で、 どれかを取るとどれかが苦しくなります。素材技術者にとっては、金属・セラミックスの合金設計やガラス組成の設計に近い、多目的の最適化の問題です(本記事による解説)。

11. 課題・限界

  • 耐熱性と加工性のトレードオフ:剛直で溶けない構造ほど耐熱性は高く、加工は難しい。可溶性のポリイミドは加工しやすいが、Tg や CTE で譲ることになる。
  • 初回加熱の収縮と寸法管理:製造時の残留応力が初回加熱の収縮として現れる。精密回路では、事前の熱処理や設計での見込みが必要。
  • 溶媒と環境規制:二段合成は DMAc や NMP などの極性溶媒に依存する。取り扱いの安全(高温での一酸化炭素の発生など)とともに、規制動向の確認が必要(本稿では規制の個別評価はしていません)。
  • 透明化の多目的トレードオフ:第10章のとおり、透明性と低CTE・高Tg・靭性の同時達成は難しい。
  • カバーウィンドウ特有の課題:表面硬度(ハードコート)、折り跡、繰り返し折り曲げ後の外観変化は、フィルム材料単独の問題ではなく、積層構成の問題でもある。本稿では、折りたたみ型ディスプレイの量産製品での採用状況や市場規模は、一次情報で確認できなかったため扱っていません。
  • リサイクル・廃棄:多くの芳香族ポリイミドは融けないため、熱で溶かして再成形する再資源化には向きにくいと考えられる(本記事による解説)。ケミカルリサイクルや焼却処理の扱いについては、本稿の調査範囲では一次情報を確認できていません。

12. 用語集

ポリイミド
主鎖にイミド環を持つ高分子。芳香族系は耐熱性が高く、多くは融けず溶けにくい。
ポリアミド酸
ジアミンと二無水物から先にできる前駆体。有機溶媒に溶け、成形したあとで環化してポリイミドになる。
イミド化(環化)
ポリアミド酸が脱水して、イミド環を作る反応。熱でも化学処理でも進む。
PMDA/ODA
ピロメリット酸二無水物/4,4'-オキシジアニリン。Kapton に当たる組み合わせ(規格の記載からの読み取り)。
BPDA
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物。UBE の UPILEX の原料。
電荷移動(CT)相互作用
電子を出す部分と受け取る部分の間の相互作用。芳香族ポリイミドの着色の原因。
黄色度(YI)
フィルムの黄色みの指標。値が小さいほど無色に近い。
TMA
熱機械分析。温度を上げながら試料の寸法変化を測り、線膨張係数や Tg を求める。
DMA
動的粘弾性測定。温度を上げながら弾性率の変化を測り、Tg を調べる。
RTI
相対温度指数。UL 746B で、材料が長期間使える温度の目安を示す指標。
FPC
フレキシブルプリント基板。柔軟な絶縁フィルムの上に銅の回路を作った配線板。
CPI
無色ポリイミド(colorless polyimide)。折りたたみ型ディスプレイのカバーなどの研究で使われる。

13. 参考資料(一次情報)

  1. Qnity Electronics(旧 DuPont の電子材料事業)「Kapton® HN Polyimide Film」製品ページ — https://www.qnityelectronics.com/kapton-hn.html
  2. DuPont「DuPont™ Kapton® HN Polyimide Film」データシート K-15345-2(2016年12月版)。販売店サイトに置かれたコピー — https://www.epectec.com/downloads/DuPont-Kapton-HN-Polyimide-Film.pdf
  3. UBE「UPILEX®-S」カタログ(2022年4月版、PDF) — https://ube.com/upilex/catalog/pdf/upilex_s_e.pdf
  4. W. M. Edwards(E. I. du Pont de Nemours)US 3,179,614「Polyamide-acids, compositions thereof, and process for their preparation」(1965年公開) — https://patents.google.com/patent/US3179614A/en
  5. W. M. Edwards(E. I. du Pont de Nemours)US 3,179,634「Aromatic polyimides and the process for preparing them」(1965年公開) — https://patents.google.com/patent/US3179634A/en
  6. M. Hasegawa「Development of Solution-Processable, Optically Transparent Polyimides with Ultra-Low Linear Coefficients of Thermal Expansion」Polymers 2017, 9(10), 520(DOI: 10.3390/polym9100520、オープンアクセス) — https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6418549/
  7. 三菱ガス化学「Neopulim™(Transparent polyimide varnish)」製品ページ — https://www.mgc.co.jp/eng/products/ac/neopulim.html
  8. 住友電気工業兼広昌之ほか「当社のフレキシブルプリント回路事業の展開」SEI テクニカルレビュー第172号(2008年1月、PDF) — https://sei.co.jp/technology/tr/bn172/pdf/sei10521.pdf
  9. Nanomaterials 2021, 11(12), 3164「Eco-Friendly Water-Processable Polyimide Binders with High Adhesion to Silicon Anodes for Lithium-Ion Batteries」(DOI: 10.3390/nano11123164、オープンアクセス) — https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8705944/
  10. Micromachines 2021, 12(3), 233「Transparent and Flexible SiOC Films on Colorless Polyimide Substrate for Flexible Cover Window」(DOI: 10.3390/mi12030233、オープンアクセス) — https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7996484/
  11. ASTM International「ASTM D882-18 Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting」(歴史版として掲載) — https://store.astm.org/d0882-18.html
  12. 産業技術総合研究所「熱膨張率 標準&測定規格情報」(JIS K 7197:2012 ほかの一覧) — https://unit.aist.go.jp/mcml/rg-tp/research/1/index-3.html
  13. IPC/ANSI Webstore「IPC 4204B-2018 Flexible Metal-Clad Dielectrics For Use In Fabrication Of Flexible Printed Boards」(歴史版として掲載) — https://webstore.ansi.org/standards/ipc/ipc4204b2018
  14. ASTM International「ASTM D5213-19 Standard Specification for Polymeric Resin Film for Electrical Insulation and Dielectric Applications」 — https://store.astm.org/d5213-19.html

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
Kapton HN が「−269 ℃から 400 ℃まで使われてきた汎用フィルム」であること。密度 1.42 g/cm³(ASTM D1505)、熱伝導率 0.20 W/m・K(ASTM D5470)、線膨張係数 20 ppm/℃(50〜200 ℃、JIS K 7197)、UL RTI 電気 240 ℃・機械強度 200 ℃(UL 746B)、UL94 V-0、引張強さ 231.0 MPa(23 ℃、ASTM D882)、用途Qnity 製品ページ[参考資料 1]https://www.qnityelectronics.com/kapton-hn.html事実
Kapton HN の引張強さ 231/139 MPa、弾性率 2.5/2.0 GPa、破断伸び 72 %(25 μm)・82 %(50〜125 μm)(23 ℃)、83 %(200 ℃)、密度、MIT 耐折性(25 μm 285,000 回、125 μm 5,000 回、ASTM D2176)、融点なし(ASTM E794)、−14〜38 ℃で 20 ppm/℃(ASTM D696)、区間別 CTE(17・32・40・44・34 ppm/℃)、熱収縮 0.17 %・1.25 %、比誘電率 3.4、二次転移が 360〜410 ℃で測定技術により異なること、初回加熱で収縮すること、試験片寸法、ASTM D5213 type 1 item A への適合DuPont Kapton HN データシート K-15345-2[参考資料 2]https://www.epectec.com/downloads/DuPont-Kapton-HN-Polyimide-Film.pdf事実
UPILEX が BPDA を原料とすること。UPILEX-S の引張強さ・弾性率・伸び(25S:25 ℃で 520 MPa・9.1 GPa・40 %、300 ℃で 290 MPa・3.7 GPa・70 %)、熱線膨張係数(50〜200 ℃で 12・16・20・22 ppm/℃)、熱収縮(200 ℃・2 時間で 0.05 %)、融点なし、熱寿命(引張強さ、290 ℃で 20,000 時間)、吸水率、比誘電率、密度、DMAC 微量含有と 300 ℃超での一酸化炭素発生の注意UBE UPILEX-S カタログ[参考資料 3]https://ube.com/upilex/catalog/pdf/upilex_s_e.pdf事実
ポリアミド酸を作り、成形後に熱処理または化学処理でポリイミドにするという方法、ピロメリット酸二無水物と芳香族ジアミンからポリアミド酸が得られることEdwards、US 3,179,614[参考資料 4]https://patents.google.com/patent/US3179614A/en事実
ジアミンと二無水物を有機溶媒中で反応させてポリアミド酸の中間体を作り、加熱または脱水剤でポリイミドにする二段階であることEdwards、US 3,179,634[参考資料 5]https://patents.google.com/patent/US3179634A/en事実
熱イミド化(300〜350 ℃以上)・化学イミド化(塗布・乾燥 250 ℃以下)・ワンポット法の3経路。溶媒による着色の順。面内配向と低CTE。残留応力のアニール。着色の原因(CT 相互作用)、YI=46.0(UPILEX-S 15 μm)、基板の目標値(Tg 350〜400 ℃超、CTE 10 ppm/K 未満、YI<3、ヘイズ<1.0 %)。s-BPDA/t-CHDA(T400 約80 %、Tg 300 ℃超、CTE 10 ppm/K、破断伸び約10 %)、CBDA(70);6FDA(30)/AB-TFMB(CTE 7.3 ppm/K、T400=80.6 %、YI=2.5、Tg=329 ℃)。6FDA 系・t-CHDA・CBDA の問題点Hasegawa、Polymers 2017[参考資料 6]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6418549/事実
Neopulim が可溶性でイミド化済みのワニスであること。S100/S200 の Tg 308/327 ℃(TMA)、1 %重量減少温度 473/483 ℃、全光線透過率 89.9/90.4 %、線膨張係数 66/57 ppm/K(100〜200 ℃)、YI 1.5/1.3、膜厚 50 μm、フッ素を含まないこと三菱ガス化学 Neopulim 製品ページ[参考資料 7]https://www.mgc.co.jp/eng/products/ac/neopulim.html事実
FPC の構造(片面・両面・多層、接着剤層、カバーレイの開口)、絶縁層に使われるPIフィルムの条件(耐熱・銅に近い熱膨張係数)、PI フィルムの厚み 25・12.5 μm、銅箔の種類と厚み 35・18・12 μm、リフロー実装が可能なこと、PET・LCP の使われ方、2層材SEI テクニカルレビュー第172号[参考資料 8]https://sei.co.jp/technology/tr/bn172/pdf/sei10521.pdf事実
シリコン負極の体積変化が最大約300 %であること、PVDF が適さないこと、水溶性ポリアミド酸塩バインダーを 150 ℃で処理した電極が 2061 mAh/g、1200 mA/g で 200 サイクル後 1883 mAh/g であることNanomaterials 2021[参考資料 9]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8705944/事実
CPI 基板上にハードコートを施した膜をフレキシブル・折りたたみ型ディスプレイのカバーウィンドウに使う研究があること、カバーウィンドウ用フィルムに求められる性質(透過率・曲げ・耐傷性・衝撃保護)Micromachines 2021[参考資料 10]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7996484/事実
ASTM D882 が「薄いプラスチックシートの引張特性の試験方法」であり、引張特性が試験片の厚み・作製方法・速度・つかみ具・伸びの測り方で変わるため比較には厳密な管理が必要とされることASTM D882-18(Significance and Use 5.1)[参考資料 11]https://store.astm.org/d0882-18.html事実
JIS K 7197:2012 が「プラスチックの熱機械分析による線膨張率の試験方法」であること産業技術総合研究所の規格情報ページ[参考資料 12]https://unit.aist.go.jp/mcml/rg-tp/research/1/index-3.html事実
IPC-4204B-2018 が、ポリエステル・ポリイミド・液晶ポリマーを誘電体とする金属張材料の分類と品質要件を定めることANSI Webstore の規格紹介[参考資料 13]https://webstore.ansi.org/standards/ipc/ipc4204b2018事実
ASTM D5213 が電気絶縁・誘電用途の高分子樹脂フィルムの規格で、対象材料の(A)がポリ(N,N'-p,p'-オキシジフェニレン ピロメリットイミド)であることASTM D5213-19[参考資料 14]https://store.astm.org/d5213-19.html事実
Kapton HN の区間別 CTE を足し合わせると約 12,790 ppm(約 1.28 %)で、全体値 34 ppm/℃ からの 12,580 ppm(約 1.26 %)と約 1.7 %の差であること。400 ℃・120 分の熱収縮 1.25 %が可逆的な熱膨張と同程度の大きさであること本稿の計算。区間別 CTE と熱収縮はデータシートの値で、25 μm・熱履歴後の値。熱収縮の試験片寸法は未確認であり、寸法変化の予測には使えない本稿の計算
Kapton の化学組成が PMDA と ODA の組み合わせに当たること解説:データシートの「ASTM D5213 type 1 item A への適合」と、規格の対象材料(A)の名称を結びつけた本記事の読み取り。DuPont の資料に組成が直接書かれているわけではない解説
「耐熱性の3つの物差し」の整理、「溶けないから前駆体で作る」ことの設計上の意味、FPC における薄膜選定の理由、前駆体の化学を変えてプロセスを変えるという読み取り、透明化の多目的トレードオフの整理、図1・図3・図5の描き方公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない解説
UPILEX-S の分子構造(ジアミン成分)、Kapton HN の吸水率、MGC 資料に記載された試験規格の個別番号本稿の調査範囲では一次情報で確認できなかったため記載していない解説
折りたたみ型ディスプレイにおけるCPIの量産製品での採用、ポリイミド系バインダーを用いたシリコン系電池の量産実績、ポリイミドのリサイクル技術本稿の調査範囲では一次情報で確認できなかったため記載していない(将来の動向として扱わない)未確定/将来
図2・図6は公表値を並べた作図、図4とヒーロー画像はAI生成イメージであり、実際の製品・実験像を示すものではないこと本記事による注記解説

最終更新:2026年10月2日/出典は一次情報(メーカーの製品ページ・データシート・カタログ、特許、査読論文、規格団体・業界団体の公開情報)に限定しています。 物性値はメーカー公称または文献値で、試験法・条件・出所とともに記載し、異なる製品・条件の値を並べて優劣をつけることはしていません。 Kapton HN の吸水率、UPILEX-S のジアミン成分、折りたたみ型ディスプレイにおける量産採用の状況、ポリイミド系バインダーの量産実績、ポリイミドのリサイクルについては、一次情報で確認できなかったため記載していません。 図1・図2・図3・図5・図6はベクター作図、ヒーロー画像と図4はAI生成イメージであり、いずれも実際の顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。