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ポリアミド 技術解説 | Troy Technical

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ポリアミド(ナイロン)
― 「水を吸う」ことを設計変数として使いこなす樹脂

ナイロンは、高い融点と強さ、耐油性を備えた結晶性の樹脂です。同時に、水を吸うと別の材料のように柔らかく、そして少し大きくなります。 この二面性は、どちらも同じアミド基から生まれます。この記事では、分子構造、炭素鎖の長さ、半芳香族やアラミド、吸水による物性変化、自動車・電気電子での使われ方、乾燥と成形、リサイクルを、公表資料にもとづいて順にたどります。

構成:東レ、BASF、Evonik、Arkema、クラレ、三井化学、Teijin Aramid、Aquafil の公表資料と、ISO・米国連邦規則・査読論文を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

ナイロン加工工場で、手前にクリーム色のペレットと防湿袋、左に細いフィラメントが糸巻きに巻き取られる紡糸の場面、右に黒い強化樹脂の部品・クリップ・歯車・コネクタが並ぶ概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。同じペレットから、溶かして細い糸(繊維)にも、成形して部品にもなるポリアミドの広がりを、加工工場の場面として表現したものです。実際の製品・部品・設備・樹脂の形状や色を示すものではありません。
この記事の構成
  1. ポリアミドとは何か(3行でつかむ)
  2. 分子構造 ― アミド基と水素結合
  3. 炭素鎖の長さが決める性質 ― アミド基濃度と吸水
  4. 種類の地図 ― 脂肪族から半芳香族、全芳香族まで
  5. 素材技術者の視点①:水を吸うと何が変わるのか
  6. 素材技術者の視点②:水が中まで入るのに、どれだけかかるのか
  7. 長鎖ナイロンとバイオ由来ナイロン
  8. 半芳香族ポリアミドとアラミド
  9. 自動車・電気電子での使われ方
  10. 素材技術者の視点③:加工は「乾燥」から始まる
  11. リサイクル ― 3つの経路
  12. 未確定の点と、この記事が扱わなかったこと
  13. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料・規格・論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。 物性値はメーカー公称値であり、グレード・試験法・条件が異なるものを並べて優劣をつけることはしません。

1. ポリアミドとは何か(3行でつかむ)

3行でつかむ
  • 主鎖にアミド基(–CONH–)が繰り返す熱可塑性樹脂です。東レは自社のナイロン樹脂「アミラン」を、アミド基結合を持つ熱可塑性エンジニアリングプラスチックと位置づけ、ナイロン6・66・610と各種の共重合ナイロンを揃えています事実[参考資料1]。
  • 強さも弱点も、同じアミド基から生まれます。アミド基は隣の鎖と水素結合して高い融点と強さを与えますが、水も引き込むため、吸水で寸法と剛性が変わります事実[参考資料1・2](構造との結びつけは解説)。
  • 設計の軸は3つです。炭素鎖の長さ(アミド基濃度)、主鎖への芳香環の導入、そして水分の管理(乾燥と調湿)。この記事はこの3軸で整理します(本記事による解説)。

ナイロン6やナイロン66は、東レによれば「汎用エンプラの中でも非常に高い融点を有する結晶性樹脂」です事実[参考資料1]。 ところが同じ東レの技術資料は、ナイロンが水を吸うことで寸法が変わることを、設計上の前提として最初に説明しています事実[参考資料2]。 つまりこの材料は、「乾いた状態の数字」だけでは使えないという前提で選ぶ必要があります。

本シリーズの「ポリマーの基礎」「熱可塑性と熱硬化性」「ガラス転移点とクリープ」編で、結晶性・ガラス転移・クリープの基本を扱います。 ポリイミドは「ポリイミド」編、PEEKなどの超高耐熱樹脂は「PEEKとスーパーエンプラ」編、リサイクル全般は「プラスチックリサイクル」「ケミカルリサイクル」編、バイオ由来全般は「バイオプラスチック」編で詳しく扱います。 この記事は、それらの前提となる「ポリアミドそのもの」に絞ります。

2. 分子構造 ― アミド基と水素結合

ポリアミドの名前の数字は、原料の炭素数を表します(本記事による解説)。1つの数字は、アミノ酸またはラクタム1種類から作るタイプで、その炭素数です。2つの数字は、ジアミンとジカルボン酸(二塩基酸)から作るタイプで、先がジアミン、後が二塩基酸の炭素数です。 実例を、メーカーの記述で確認しておきます。

  • PA11:Arkema の Rilsan は、ひまし油の18炭素の鎖を切り分けて作る11炭素のアミノウンデカン酸を重合したものです事実[参考資料13]。
  • PA610:Evonik の VESTAMID Terra HS は、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸(炭素数10の二塩基酸)の重縮合物です事実[参考資料14]。
  • PA1010:同 VESTAMID Terra DS は、デカメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合物で、両方の原料がひまし油由来です事実[参考資料14]。
  • PA6:Aquafil は、ナイロン6の廃棄物を元のモノマーであるカプロラクタムまで分解して再生しています事実[参考資料18]。ナイロン6はε-カプロラクタムの開環重合で作る樹脂です(解説)。

ナイロン66は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸(炭素数6の二塩基酸)から作ります(解説)。 成形・押出用ポリアミドの呼称(PA 6、PA 66、PA 610、PA 11、PA 12 など)の付け方と仕様の基礎は、ISO 16396-1(ポリアミド成形・押出材料の呼称体系と仕様の基礎)が定めています事実[参考資料28]。

ポリアミドの水素結合と吸水の概念図

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
アミド基どうしの水素結合と、水分子の入り込み(概念図) ※ 鎖の本数・位置・間隔は説明のための模式です。実際の結晶構造や分子配置ではありません。 乾燥した状態 CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH 水を吸った状態 CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH CONH H2O H2O 緑の破線=アミド基どうしの水素結合 鎖どうしを結び、融点と強さを支える 水分子がアミド基の間に入り、 鎖間の結びつきが緩み、鎖が動きやすくなる ※ 「吸水すると鎖の運動が活発になり柔軟になる」という説明は東レの技術資料[参考資料1]によります。図の描き方は本記事によります。
図1 概念図(ベクター作図)。アミド基どうしの水素結合が鎖を結びつけ、水を吸うとその一部に水分子が入り込む、という関係を示した模式です。「吸水すると水分子がアミド基に配位し、ナイロン分子の運動が活発になって柔軟性が増す」という説明は東レの技術資料[参考資料1]によります。鎖の本数、間隔、水分子の数は説明のための表現で、実際の分子配置ではありません。
素材技術者の読みどころ:アミド基は「接着剤」であり「水の入口」でもある

アミド基の N–H は水素を与え、C=O は水素を受け取れます。この性質があるから、鎖どうしは強く引き合い、融点が上がり、油にも強くなります事実[参考資料1・3](東レは、アミド基が分子間の結びつきを強めて、多くの薬品や海水を含む水に対する耐性を与えると説明しています)。 そして水分子もまったく同じ N–H と C=O に水素結合できます。「強さの源」と「水の入口」は、同じ場所の同じ性質なのです(本記事による解説)。

この裏返しとして、アミド基の数を減らすか、結晶の中に閉じ込めるか、芳香環で鎖を硬くするかが、ポリアミドの設計の3つの手になります。 以降の章は、この3つの手がどう使われているかを追うものです。

なお、アミド基の数が同じでも融点は同じにはなりません。BASF の公表では、無強化のナイロン6は融点220℃、ナイロン66は260℃です(ISO 3146、製品情報)事実[参考資料4・5]。両者は繰り返し単位あたりのアミド基の数が同じ(後述の計算で 8.84 mmol/g)なので、融点の差は鎖の並び方(結晶構造)の差だと読めます(本記事による解説)。

3. 炭素鎖の長さが決める性質 ― アミド基濃度と吸水

クラレは、ポリアミドの吸水率はアミド基濃度で決まり、長鎖のジアミン構造を持つ PA9T はアミド基濃度が低いため吸水しにくい、と説明しています事実[参考資料11]。 その「アミド基濃度」を、繰り返し単位の式量から計算してみます。

本稿の計算:アミド基濃度(mmol/g)

繰り返し単位の式量を、原子量(C 12.011、H 1.008、N 14.007、O 15.999)から求め、1 g あたりのアミド結合のミリモル数を出します本稿の計算。

  • PA6:繰り返し単位 C6H11NO(113.16)にアミド結合1個 → 1000÷113.16 = 8.84
  • PA66:C12H22N2O2(226.32)にアミド結合2個 → 2000÷226.32 = 8.84
  • PA610:C16H30N2O2(282.43)→ 7.08 / PA1010:C20H38N2O2(338.54)→ 5.91
  • PA11:C11H21NO(183.29)→ 5.46 / PA12:C12H23NO(197.32)→ 5.07
  • PA9T:炭素数9のジアミンとテレフタル酸の理想鎖 C17H24N2O2(288.39)→ 6.94

前提と限界:末端基、共重合成分、添加剤、可塑剤は無視した理想鎖の計算です。PA9T は炭素数9のジアミンとテレフタル酸という組成を仮定したもので、クラレの実際の原料構成を示すものではありません(クラレは「長鎖ジアミン構造」としか記しておらず、詳細な組成は本稿の調査範囲では確認できませんでした)。

繰り返し単位あたりのアミド基濃度(本稿の計算) 単位:mmol/g(1 g の樹脂に含まれるアミド結合のミリモル数)。完全な理想鎖を仮定した計算値です。 0 2 4 6 8 10 8.84 PA6 8.84 PA66 7.08 PA610 6.94 PA9T 5.91 PA1010 5.46 PA11 5.07 PA12 東レ公表の平衡吸水率(23℃/60%RH) 3.5% 2.5% 1.5% ※ 青=短鎖の脂肪族、緑=長鎖の脂肪族、茶=半芳香族(PA9T は炭素数9のジアミンとテレフタル酸の理想鎖として計算)。 ※ 吸水率は東レ「アミラン」の公表値[参考資料2]で、他の製品・他社の数値と直接比較できません。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。棒の高さは本文の式による計算値で、公表値ではありません。下段の吸水率は東レ「アミラン」の公表値[参考資料2]です。下段の数字は同一メーカーの同一条件の値であり、他社・他グレードの数値とは直接比較できません。

炭素鎖が長くなると、アミド基濃度は 8.84(PA6・PA66)から 7.08(PA610)、5.91(PA1010)、5.46(PA11)、5.07(PA12)へと下がります本稿の計算。 東レの技術資料は、通常の大気条件(23℃/60%RH)での平衡吸水率を、ナイロン6で3.5%、ナイロン66で2.5%、ナイロン610で1.5%と示しています事実[参考資料2]。同じ東レの製品ページも、ナイロン610のCM2000シリーズの吸水率を、ナイロン6・66の約半分としています事実[参考資料1]。

材料(出所のグレード)吸水率条件・備考出典
ナイロン6(東レ アミラン CM1017)3.5%平衡吸水率、23℃/60%RH東レ[2]
ナイロン66(東レ アミラン CM3001-N)2.5%同上東レ[2]
ナイロン610(東レ アミラン CM2001)1.5%同上東レ[2]
PA6(BASF Ultramid B27 E、無強化)2.2%23℃/50%rh。水中飽和(23℃)は8.5%BASF[4]
PA66(BASF Ultramid A27 E、無強化)2.2%23℃/50%rh。水中飽和(23℃)は8.5%BASF[5]
PA610(Evonik VESTAMID Terra HS16)3.3%「Water absorption at RT」(Evonik 社内法、詳細条件の記載なし)Evonik[14]
PA1010(Evonik VESTAMID Terra DS16)1.8%同上Evonik[14]

すべて各社の公表値(事実)。湿度、試験法、試料形状、グレードが異なるため、この表の数値どうしを直接比較することはできません。たとえば同じ「PA610」でも、東レは1.5%(23℃/60%RHの平衡)、Evonik は3.3%(RT、社内法)です。

素材技術者の読みどころ:「アミド基濃度が同じなら吸水も同じ」にはならない

PA6 と PA66 は、計算上のアミド基濃度が同じ(8.84)です本稿の計算。 それなのに、東レの公表値は 3.5% と 2.5% で、BASF の公表値は両方とも 2.2%(条件は23℃/50%rh)です事実[参考資料2・4・5]。 同じ材料でも出所によって差が出ること自体が、吸水率は「樹脂の種類」だけで決まる数字ではないことを示しています。

1967年の古典的な研究(Puffr と Šebenda)は、結晶性ポリアミド(ナイロン2、3、6、7、8、11)と非晶性ポリアミド、モデルアミドの水の吸脱着等温線などから、ナイロン6では隣り合う2つのアミド基に水分子3個が、ナイロン8〜12では2つのアミド基に水分子1個が吸着すると提案しています事実[参考資料23]。 水が入るのは「到達できる領域(accessible region)」のアミド基であり、結晶の中に閉じ込められたアミド基は、水には使われにくいと読めます(本記事による解説)。 成形条件で結晶化度が変われば、同じ樹脂でも吸水量が変わりうる、ということです。

実務の教訓は単純です。吸水率のカタログ値は、必ず「何℃・何%RH・どの試料の、飽和か平衡か」とセットで読む。それ以外は比較になりません。

4. 種類の地図 ― 脂肪族から半芳香族、全芳香族まで

ここまでの話を、1枚の地図にまとめます。横軸はアミド基濃度、縦軸は主鎖に芳香環があるかどうかです。

ポリアミドの種類の地図(本記事による整理) 横軸は図2と同じ計算によるアミド基濃度。縦軸は主鎖に含まれる芳香環の有無で、点の位置は説明のための模式です。 脂肪族 半芳香族 全芳香族 PA6・PA66 PA610 PA1010 PA11 PA12 PA9T PA6T系 PPTA (三井化学 ARLEN は変性) (繊維。図中のPPTAは理想鎖) 9 8 7 6 5 アミド基濃度(mmol/g) 高い ← → 低い ※ 長鎖になるほどアミド基濃度が下がり吸水が小さくなる傾向は、クラレ[参考資料10・11]・東レ[参考資料1・2]の記述に沿います。
図3 概念図(ベクター作図)。横軸の値は本文の計算によるもので、点の縦位置は説明のための模式です。「ナイロン」と「アラミド」の区別は、米国連邦規則 16 CFR 303.7 の繊維の定義(アミド結合の85%以上が2つの芳香環に直結しているものをアラミドとする)[参考資料17]にもとづきます。PA6T は理想的な組成の計算値で、三井化学の ARLEN など実際の製品は第三成分を加えた変性品です。PPTA は理想鎖の計算値です。

各社が公表している融点などを、出所を分けて並べます。同じ「ナイロン6」でも、BASF は220℃、東レは225℃と記載しており、グレードや測定法によって数字が揺れることがわかります。

材料融点・Tg など条件・備考出典
PA6(Ultramid B27 E)融点 220℃ISO 3146、メーカー公称(製品情報)BASF[4]
PA6(アミラン)融点 225℃製品ページ記載。ガラス繊維強化品の荷重たわみ温度(1.80 MPa)は 215℃東レ[1]
PA6(アミラン)融点 225℃技術資料の記載。連続使用最高温度は 70℃ を超えないのが通常とされる(荷重下の連続使用)東レ[2]
PA66(Ultramid A27 E)融点 260℃ISO 3146、メーカー公称BASF[5]
PA66(アミラン)融点 265℃/255℃製品ページは 265℃(GF強化の荷重たわみ温度 255℃)、技術資料は 255℃。荷重下の連続使用は 100℃ を超えないのが通常東レ[1・2]
PA610(VESTAMID Terra HS16)融点 223℃、Tg 48℃ISO 11357Evonik[14]
PA1010(VESTAMID Terra DS16)融点 200℃、Tg 37℃ISO 11357Evonik[14]
PA11(Rilsan BMNO TLD)融点 189℃DSC、10℃/min。作動温度範囲 −40℃〜+130℃(PA11全般の記載)Arkema[13・34]
PA9T(Genestar)融点 306℃、Tg 125℃メーカー公称クラレ[10]
変性PA6T(ARLEN)融点 310〜330℃メーカー公称。テレフタル酸を用いた半芳香族三井化学[12]

すべて各社の公表値(事実)。試験法・グレード・測定条件が異なるため、数字の優劣を比べる表ではありません。測定法の規格として、DSCによる融解温度は ISO 11357-3[参考資料31]、荷重たわみ温度は ISO 75-1[参考資料30]に規定があります。

この地図から読めること(本記事による解説)
  • 左から右(アミド基濃度が低くなる方向):吸水が小さくなり、融点やTgは下がる傾向があります(PA66の260℃に対し、PA1010は200℃、PA11は189℃)。寸法安定性・低温の柔軟性と引き換えに、耐熱性は下がります。
  • 上から下(芳香環が増える方向):融点とTgが大きく上がります(PA9T は融点306℃、Tg125℃)。クラレは、Tg が 125℃ のため、高温になったエンジンルーム内でも十分に耐えられると説明しています事実[参考資料11]。
  • 連続使用温度は融点よりずっと低い:東レは、荷重下で連続して使うなら、ナイロン66でも100℃、ナイロン6と610では70℃を超えないのが通常、としています事実[参考資料2]。融点が220〜260℃の樹脂でも、使える温度は融点の半分以下です(本記事による解説。クリープとの関係は「ガラス転移点とクリープ」編を参照)。

5. 素材技術者の視点①:水を吸うと何が変わるのか

東レの技術資料は、ナイロンが親水性のアミド基を持つため吸水し、吸水は寸法変化を生む、と最初に述べています事実[参考資料2]。 寸法の変化量は、吸水率1%あたり約0.2〜0.3%の膨張と示されています事実[参考資料2]。

では、強度や剛性はどう変わるのでしょうか。まず、ガラス繊維30%強化のグレードについて、BASF の製品情報にある「乾燥時(dry)」と「調湿後(cond.)」の値を並べます。引張特性は ISO 527-1/-2[参考資料29]、荷重たわみ温度は ISO 75-1/-2、吸水率は ISO 62[参考資料26]に「類似の方法」で測ったと、BASF は記載しています[参考資料6]。

ガラス繊維30%強化ポリアミド:乾燥時と調湿後(BASF 公表値) ISO 527-1/-2、23℃。「cond.」の調湿条件は各データシートに明記なし。保持率は本稿の計算です。 乾燥時(dry) 調湿後(cond.) PA6-GF30(Ultramid B3EG6) 引張弾性率(MPa) 9,500 6,200 保持率 65% 破断応力(MPa) 185 115 保持率 62% PA66-GF30(Ultramid A3WG6 LT) 引張弾性率(MPa) 10,000 6,800 保持率 68% 破断応力(MPa) 190 127 保持率 67% ※ 値は BASF の製品情報[参考資料6・7]。2つのグレードは添加剤・着色が異なり、PA6 と PA66 の優劣を示すものではありません。 ※ 保持率=調湿後÷乾燥時×100(小数点以下四捨五入)。破断ひずみなどは本文の表を参照。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。棒の数値は BASF の製品情報[参考資料6・7](ISO 527-1/-2、23℃)の公表値で、保持率は本記事による計算です。「cond.」の調湿条件は、この2つのデータシートには明記されていません。2つのグレードは着色・添加剤が異なり、PA6 と PA66 の優劣を示すものではありません。
項目(ISO、23℃)PA6-GF30
Ultramid B3EG6
dry / cond.
PA66-GF30
Ultramid A3WG6 LT
dry / cond.
引張弾性率(ISO 527-1/-2)MPa9,500 / 6,20010,000 / 6,800
破断応力(ISO 527-1/-2)MPa185 / 115190 / 127
破断ひずみ(ISO 527-1/-2)%3.5 / 83.6 / 6.5
曲げ弾性率(ISO 178)MPa8,600 / 5,0009,270 / 6,500
シャルピー衝撃(ノッチ付、23℃、ISO 179/1eA)kJ/m²15 / 3010 / 13

すべて BASF の公表値(事実)[参考資料6・7]。

どちらのグレードでも、調湿後は弾性率が乾燥時の約3分の2、破断応力も約3分の2に下がり、一方で破断ひずみは伸び、ノッチ付衝撃は上がります本稿の計算(保持率:PA6-GF30 の弾性率65%・破断応力62%、PA66-GF30 の弾性率68%・破断応力67%)。 「強度が落ちる」だけでなく、「脆さが減る」という性質の入れ替わりが同時に起きているわけです。

ガラス繊維で強化していない状態では、変化はさらに大きく見えます。東レの技術資料にあるナイロン6(CM1017)とナイロン66(CM3001-N)の値を示します。

項目ナイロン6(CM1017)
乾燥 → 平衡吸水
ナイロン66(CM3001-N)
乾燥 → 平衡吸水
引張強さ MPa85 → 4080 → 50
引張破断伸び %150 → 200超100 → 200超
曲げ弾性率 GPa3.0 → 1.02.8 → 1.4
アイゾット衝撃 J/m50 → 40050 → 300
ロックウェル硬さ(Rスケール)119 → 90119 → 100

すべて東レの公表値(事実)[参考資料2]。屋外暴露試験の表の初期値(0年)の欄を抜き出したもので、試験法と試験片の形状は同資料に明記がありません。

素材技術者の読みどころ:「吸水=劣化」ではなく「Tgが室温付近に降りてくる」

無強化のナイロン6で、曲げ弾性率が3.0 GPaから1.0 GPaへ約3分の1になる事実[参考資料2]——この大きさは、単に「水で弱る」というより、水が可塑剤として働き、ガラス転移温度(Tg)が下がったと考えると腑に落ちます(本記事による解説)。 ナイロン6のTgが含水率で変わることは、古くから測られています(Kettle, 1977, Polymer 誌、題名で確認)事実[参考資料24]。 東レも、吸水するとアミド基に水分子が配位して分子の運動が活発になり、柔軟性が増して靭性が向上する、と同じ説明をしています事実[参考資料1]。

Evonik が公表している Tg は、PA610 が 48℃、PA1010 が 37℃(ISO 11357)です事実[参考資料14]。 これらは乾燥状態の値と考えられますが、資料に調湿状態は明記されていません。 もしTgが室温の少し上にあるなら、吸水でTgが室温を下回るかどうかが、「硬いプラスチック」と「しなやかな樹脂」の境目になります(本記事による解説。具体的な含水率とTgの数値は、本稿の調査範囲では原典を確認できなかったため記載しません)。

設計での意味は3つあります。

  • 評価は「乾燥」と「調湿」の両方で:BASF のデータシートが dry と cond. を並べて載せているのはこのためです。剛性で設計するなら cond. の値を、衝撃・脆性破壊で設計するなら dry の値も確認する必要があります。
  • 寸法は吸水で動く:吸水1%あたり0.2〜0.3%の膨張なので、平衡吸水3%なら 0.6〜0.9%の寸法変化の見込みになります本稿の計算(東レの係数の単純な掛け算。ガラス繊維強化品や形状によっては小さくなります)。
  • 成形直後の寸法は「乾燥状態+残留応力」の合成値:東レは、乾燥状態の成形品は成形時の残留応力が緩和して縮む一方、吸水で膨張するため、実際の寸法変化はその差し引きになる、と説明しています事実[参考資料2]。

6. 素材技術者の視点②:水が中まで入るのに、どれだけかかるのか

もうひとつ、見落とされやすい点があります。水はすぐには入りません。東レの資料には、ナイロン6(CM1017)の60 mmφ×3 mm の円板が、20℃/60%RH の大気中で平衡吸水量の80%に達するまで約4,110時間かかる、という計算例が載っています事実[参考資料2]。 完全な平衡には、その約2.5倍かかると書かれています(約10,275時間)。

東レの資料の拡散係数(射出成形品、20℃/60%RH で 6.31×10⁻¹⁴ m²/s)を使って、肉厚の違いで時間がどう変わるかを計算してみます。

本稿の計算:平板の肉厚と、平衡の80%に達する時間

前提:一次元拡散の平板(両面から吸水)、拡散係数 D は東レの公表値(20℃/60%RH)で一定とします本稿の計算。 肉厚を h とすると、80%到達時間は t = π×0.8²×h²÷(16×D) です。

検算:東レの円板(60 mmφ×3 mm、表面積÷体積 ω=733 m⁻¹)に相当する式 t = π×0.8²÷(4×ω²×D) に D=6.31×10⁻¹⁴ を入れると約4,118時間となり、東レの公表値(約4,110時間)と一致します。水中(20℃、D=7.84×10⁻¹³)でも約331時間で、東レの約330時間と一致します。

  • 肉厚1 mm:約553時間(約23日)
  • 肉厚3 mm:約4,979時間(約207日)。円板より長いのは、円板には端面からの吸水があるためです。
  • 肉厚6 mm:約19,915時間(約830日、2年強)

限界:実際の部品は形状、結晶化度、温度、湿度、表面の仕上げで大きく変わります。また拡散係数が濃度によらず一定という仮定は近似です。

肉厚と、吸水が平衡の80%に達するまでの時間(本稿の計算) ナイロン6、20℃/60%RH、一次元拡散の平板を仮定。拡散係数は東レの公表値(射出成形品)を流用。 0 5,000 10,000 15,000 20,000 0 1 2 3 4 5 6 肉厚(mm) 時間(h) 約23日 約92日 約207日 約369日 約830日 東レ公表(円板 60 mmφ×3 mm)約4,110 h ※ 計算式 t=π×0.8²×h²÷(16×D)(h=肉厚、D=6.31×10⁻¹⁴ m²/s)。 ※ 東レの円板の値(約4,110 h)を同形の式で再現できることを確認した上で、平板に適用しています。 ※ 実際の部品は形状・結晶化度・温度・湿度で変わります。D が濃度に依存しないという仮定も近似です。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。拡散係数と円板の値は東レ[参考資料2]の公表値で、平板の各点は本記事の計算です。実際の部品の吸水時間を示すものではありません。
素材技術者の読みどころ:「調湿品」は部品の中で均一ではない

時間は肉厚の2乗に比例して延びます(肉厚が2倍になれば4倍)本稿の計算。 肉厚3 mm の部品でも、大気中で平衡に近づくまでに半年以上かかります。 つまり、製品として出荷された直後の部品は、「乾燥状態でも調湿状態でもない途中の状態」にあり、表層だけ水を吸って内部は乾いたまま、という分布を持ちます(本記事による解説)。

ここから2つの実務上の注意が出ます。

  • 評価用の試験片は肉厚が薄い:試験片を速く調湿して得た状態と、実部品が現場で到達する状態は別物です。ISO 1110 はポリアミドの試験片を促進調湿する方法を定めており、得られる平衡含水量は23℃/50%RH の標準雰囲気に近い、とされています事実[参考資料27]。ただし、その方法で得た機械特性は標準雰囲気での調湿品とわずかに異なりうるとも明記されています。
  • 吸水の進行そのものが寸法を動かす:設計寸法は、乾燥状態、調湿状態、その途中のどこで測るかで変わります。精密部品では、使用環境で数か月かけて動く寸法を見込むか、あらかじめ調湿してから使う、といった運用上の判断が必要になります(本記事による解説)。

7. 長鎖ナイロンとバイオ由来ナイロン

炭素鎖を長くしてアミド基濃度を下げたのが、PA11、PA12、PA610、PA1010 などの長鎖ナイロンです。吸水が小さく寸法が安定するため、燃料や流体を扱うチューブなどに使われます。

  • PA11(Arkema Rilsan):11炭素のアミノ酸単位が高い水素結合密度の結晶を作り、PA12に比べて融点が高く、燃料・ガスの透過が低く、衝撃特性が良い、と説明されています。作動温度範囲は−40℃〜+130℃です。製造は仏・米・中の3か国とされています事実[参考資料13]。
  • PA12(Evonik VESTAMID L):吸水が極めて小さく、寸法安定性と低温の耐衝撃性に優れ、自動車の流体・空気配管、ガス・油の大口径パイプ、ケーブル被覆、カテーテルなどに使われる、と同社は説明しています事実[参考資料15]。
  • PA610・PA1010(Evonik VESTAMID Terra):PA610は融点223℃で、同社は PA612と標準ポリアミド(PA6・PA66)の中間に位置すると説明しています。PA1010は炭素数10のジアミンと二塩基酸から作り、PA12などの長鎖ナイロンと標準ポリアミドの中間に位置する、としています事実[参考資料14]。

ひまし油由来という切り口

上のうち PA11、PA610、PA1010 は、ひまし油を原料のひとつとしています。生物由来の度合いは、Evonik によれば VESTAMID Terra HS(PA610)が63%、Terra DS(PA1010)が100%です(資料の表記で ASTM 6866 にもとづく炭素ベースの値)事実[参考資料14]。 東レは、ナイロン610の CM2000 シリーズについて、ひまし油から抽出したセバシン酸を原料の約60%とするバイオベースナイロンで、ナイロン6・66に比べて吸水率が約50%と低く、低温柔軟性に優れると説明しています事実[参考資料1]。 製造時の温室効果ガス排出などの環境負荷の数値は、メーカーの自己申告であり、本稿では扱いません。

実験台に、ひまし油の種子の小皿、淡い黄色のひまし油のフラスコ、白い結晶粉のシャーレ、クリーム色の樹脂ペレットのトレーが、左奥から右手前へ斜めに並んだ概念イメージ
図6 概念図(AI生成イメージ)。ひまし油の種子から、ひまし油、白い結晶粉(セバシン酸)を経て、樹脂のペレットができるまでの原料の流れを、実験台の上に並べて表現したものです。実際の原料・製品の外観、製造工程、含有率、品位を示すものではありません。
バイオ由来ナイロンを読むときの注意
  • 「バイオ由来」は炭素の出所の話であり、性能の話ではありません。PA610 の吸水3.3%と PA1010 の1.8%の差は、バイオ度の差ではなくアミド基濃度の差で説明できます(図2の計算)。
  • 含有率の定義を確認する:Evonik は ASTM 6866 による炭素ベースの値を示しています[参考資料14]。質量ベースや原料ベースの数字とは別物です。
  • バイオ由来全般は、本シリーズ「バイオプラスチック」編で詳しく扱います。

8. 半芳香族ポリアミドとアラミド

(1) 半芳香族 ― 芳香環でTgを引き上げる

ジカルボン酸にテレフタル酸(芳香環)を使うと、主鎖が硬くなり、融点とTgが上がります。クラレの PA9T「ジェネスタ」は、融点306℃、ガラス転移温度125℃、低吸水、高耐熱、高耐薬品、寸法精度を特長とする、とされています事実[参考資料10]。 同社は、実装時のリフローでブリスター(膨れ)が出にくいこと、耐トラッキング性が高いため USB Type-C やパワー半導体モジュールなど高電圧のコネクタに向くことも挙げています事実[参考資料11]。

三井化学の ARLEN は、テレフタル酸を用いた変性ポリアミド6Tで、同社が1980年代に世界で初めて開発したと説明しています。融点は310〜330℃で、芳香環の導入により吸水率をPA66の半分未満に下げたとしています。第三成分を加えた変性により、鉛フリーはんだの表面実装(リフロー)に耐える耐熱性を持たせ、ブリスターを抑えた、とあります事実[参考資料12]。

素材技術者の読みどころ:半芳香族は、アミド基を残したまま耐熱を引き上げた材料

半芳香族は、ポリアミドの手の内で耐熱性を押し上げた材料です。それでもアミド基は残っているため、吸水の問題は消えず、小さくなっているだけです。 クラレも三井化学も、リフロー後のブリスターを課題として挙げて、それを抑えた設計だと説明しています[参考資料11・12]。 ブリスターは、吸水した水分が高温で一気に蒸気になって起こる現象です(本記事による解説)。 つまり、半芳香族でも「乾燥」と「吸水の少なさ」は設計の中心にあります。

さらに高い耐熱や耐薬品が必要な領域は、アミド基を持たない材料——PPS、LCP、PEEK など——が受け持ちます。これは本シリーズ「PEEKとスーパーエンプラ」編のテーマです。

(2) アラミド ― 「ナイロン」と法令上どう区別されるか

アラミドは、アミド結合のほとんどが芳香環に直結したポリアミドです。米国連邦規則 16 CFR 303.7(繊維製品の総称と定義)は、ナイロンを「合成長鎖ポリアミドで、アミド結合の85%未満が2つの芳香環に直接結合しているもの」、アラミドを「同じく合成長鎖ポリアミドで、アミド結合の85%以上が2つの芳香環に直接結合しているもの」と定義しています事実[参考資料17]。 つまり「ナイロン」と「アラミド」の境目は、主鎖の芳香環直結アミドの割合が85%かどうかで、法令上は線が引かれています。

Teijin Aramid は、パラ系アラミドの Twaron を、重合、紡糸、加工の3段階で作ると説明しています。重合では耐熱性・耐薬品性の高いパラ系アラミドの微粒子状のポリマーを作り、紡糸ではそのポリマーを硫酸に溶かして液晶性の溶液にして糸にします。糸は直径が12 µm ほどで、分子鎖が繊維軸に平行に並んだ構造を持ちます事実[参考資料16]。

ここから読めるのは、アラミドは溶かして紡ぐ(溶液紡糸)材料であり、成形品用のナイロンとは加工法が違うということです(本記事による解説)。Teijin Aramid は硫酸に溶かした液晶性の溶液から糸にしており、溶融して成形するナイロン66(融点260℃、BASF)とは作り方が違います。分子鎖が繊維軸に平行に並ぶことが、繊維の特性の鍵だと同社は説明しています。アラミド繊維を使った複合材料は、本シリーズ「CFRPと複合材料」編と関連します。

9. 自動車・電気電子での使われ方

各社の公表資料に挙がっている用途と、そこで材料が選ばれる理由として書かれている特性を整理します。理由の欄は、各社が自社材料について述べている内容であり、他の材料との比較を示すものではありません。

分野用途例(資料の記載)選ばれる理由として書かれている特性出典
自動車(エンジン周辺・駆動系)クリップ、ファスナー、オイルストレーナー、バッフルプレート、ラジエータータンクなどの冷却部品耐油性・耐薬品性、長期耐熱性、溶着性。冷却部品では PA66 と PA610 のガラス繊維強化品が採用されているとある東レ[1]
自動車(燃料・流体系)燃料管理系、水素燃料系、チューブ・ホース(PA11)/流体・空気配管(PA12)作動温度 −40℃〜+130℃(PA11)、低吸水、寸法安定性、低温の耐衝撃性Arkema[13]
Evonik[15]
自動車(電装・機構)コネクタ、リレー、絶縁体、ワイヤハーネス、摺動部品(ギア、ベアリングリテーナー)、燃料部品、インタークーラータンク、サーモスタットハウジング(PA9T)低吸水、高耐熱、耐薬品、寸法精度、耐トラッキング性クラレ[10]
電気(配電)サーキットブレーカー(配線用遮断器)の筐体難燃性(ほとんどのグレードで UL94 V-0 対応とされる)、熱安定性東レ[1]
電子(実装)コネクタ、ジャック、カメラモジュール、スイッチ、LED反射板(PA9T)/コネクタ、ジャック(変性PA6T)リフロー耐熱性、ブリスターの抑制、低吸水、高い耐トラッキング性クラレ[10・11]
三井化学[12]
電気電子(汎用ポリアミド)BASF は PA6・PA66・共重合体・ポリアミドブレンド・高温用の半芳香族・PPA などを揃え、自動車から電気、家電まで幅広い用途とする。高流動・結晶化の速い HPP グレードで成形サイクルを約30%短縮しうるとし、CTI 600 を示している高い強度と剛性、成形のしやすさ、耐薬品性、摺動特性、寸法安定性、低いクリープ傾向BASF[32]

すべて各社の公表資料の記載(事実)。数値のある項目(HPPの約30%短縮、CTI 600)は、BASF が自社の特定グレードについて述べたもので、一般的なポリアミドの特性ではありません。

耐薬品性の具体的な数字も確認しておきます。東レの技術資料では、ナイロン6(CM1017)の無浸漬の引張強さは85 MPaで、80℃のエンジンオイルに1,000時間浸漬した後は72 MPa、80℃のガソリンに1,000時間浸漬した後は66 MPaという値が示されています事実[参考資料3](試験法の記載なし)。 同じ資料は、ナイロンは酸・アルカリに対しては濃硫酸や濃硝酸、濃塩酸に溶け(一部加水分解を伴う)、5%の硫酸や5%の水酸化ナトリウム水溶液で応力割れ(ソルベントクラッキング)を起こす、と注意しています事実[参考資料3]。

10. 素材技術者の視点③:加工は「乾燥」から始まる

ポリアミドは、溶融して成形する前に乾かしておく必要があります。BASF の製品情報から、実際の数字を拾います。

項目公表内容対象・出典
供給形態予備乾燥した状態で防湿容器に入れて供給。保管は12か月を超えないこと。開封した袋は吸湿を避けるためすぐに使い切るPA6 B27 E、PA66 A27 E(無強化)[4・5]
ペレットの含水率(出荷規格)最大 0.10%(B27 E)、最大 0.20%(A27 E)。測定は ISO 15512[33]BASF[4・5]
吸湿した場合の乾燥除湿乾燥機で露点−20℃以下、推奨時間 2〜4時間PA66-GF33 A 218G V33 ほか[8]
予備乾燥の条件温度 80℃。成形時の許容含水率は最大 0.15%(A 218G V33)/0.2%(B3WG6 RC)。B3EG6 は 80℃・4時間BASF[6・8・9]
溶融温度・金型温度の例PA6-GF30(B3EG6)は溶融 270〜290℃、金型 80〜90℃BASF[6]

すべて BASF のメーカー公称値(事実)。グレードごとに異なる値であり、他のグレードにそのまま適用できません。

素材技術者の読みどころ:水は「汚れ」ではなく「反応物」

乾燥が必要な理由は、水が溶融中のアミド結合と反応しうるからです。ポリアミドの合成は水を出して進む縮合反応で、その逆反応(加水分解)は、高温で水があれば起こりえます(本記事による解説)。 ポリアミドの加水分解で分子量分布が変化することは、古くから研究されています(Chaupart と Serpe, 1998, Polymer 誌、題名で確認)事実[参考資料25]。 分子量が下がれば、強度も靭性も落ちます。溶融前の含水率は、成形品の分子量、つまり最終物性の一部だということです(本記事による解説)。

素材技術者の読みどころ:ガラス繊維強化品は「方向によって別の材料」

BASF の PA6-GF30(Ultramid B3EG6)の製品情報には、線膨張係数が流れ方向で 22×10⁻⁶/K、直角方向で 106×10⁻⁶/K(ISO 11359-1/-2、23〜55℃)と載っています。成形収縮率も、流れ方向で 0.25%、直角方向で 0.70%(ISO 294-4)です事実[参考資料6]。 比を取ると、線膨張係数は約4.8倍、成形収縮率は約2.8倍の差になります本稿の計算(106÷22、0.70÷0.25)。

吸水による寸法変化に、この異方性が重なると、反りの予測は難しくなります。ガラス繊維が拘束する方向は伸びにくく、拘束されない方向は樹脂そのものの値が出るからです(本記事による解説)。 CTE の考え方は本シリーズの「熱膨張係数」編、成形の収縮と配向は「モールディング」編で詳しく扱っています。

11. リサイクル ― 3つの経路

ポリアミドのリサイクルには、現在3つの経路が公表資料に出てきます。

ポリアミドのリサイクルの3つの経路

ImageGenによる説明用の概念画像(実写・実測像ではありません)。正確な数値・名称・構造は元の模式図をご確認ください。

元の模式図(正確な注記・数値)を表示
ポリアミドのリサイクルの3つの経路(本記事による整理) 機械的リサイクル 工程内スクラップ 粉砕・再ペレット化 再び成形(ガラス繊維強化材では繊維長が短くなる) 化学的リサイクル(解重合) ナイロン6の廃棄物 モノマーまで分解 カプロラクタム → 新たなナイロン6 化学的リサイクル(原料化) 混合プラスチック廃棄物 熱分解油にして原料へ マスバランスで製品に割り当て ※ 各経路の内容は Aquafil[18]、BASF[19]、e-Polymers 論文[20]、Gama ほか[21]による。3経路への整理は本記事によります。 ※ 各経路の実施規模・コストは本記事では扱いません(公的統計などの一次情報を確認できなかったため)。
図7 概念図(ベクター作図)。3つの経路は、Aquafil[参考資料18]、BASF[参考資料19]、e-Polymers 掲載論文[参考資料20]、Gama ほか[参考資料21]の記述にもとづく本記事の整理です。各経路の実施規模、コスト、環境負荷は示していません。全般は本シリーズ「プラスチックリサイクル」「ケミカルリサイクル」編を参照してください。

(1) 機械的リサイクル ― 繊維が短くなる

自動車部品に多い PA66-GF30(ガラス繊維30%)の成形工程内スクラップを、粉砕、再ペレット化、再成形のサイクルで3回繰り返し、15〜30 wt%の割合でバージン材に混ぜた研究があります(e-Polymers, 2023)。 熱分析では、サイクル数と再生材の割合による熱安定性と結晶化度の大きな変化は見られませんでした。一方、平均繊維長は 300〜350 µm から 150〜250 µm に短くなり、再生材の割合が25 wt%を超え、かつ3回のサイクルを経たものでは、機械特性とメルトフローの変化が目立ちました。 引張強さ、弾性率、衝撃エネルギーはわずかに下がり、破断伸びとメルトフローインデックスは上がりました事実[参考資料20]。

(2) 化学的リサイクル ― モノマーまで戻す

Aquafil は、ナイロン6の廃棄物(漁網、布の端材、カーペット、工業系のプラスチック)を、解重合して元のモノマーに戻す化学的リサイクルを行っていると説明しています。同社はこの方法で、機械的リサイクルと違い、新品と同じ品質のナイロンが得られると述べています事実[参考資料18](同社の説明)。

学術的には、ナイロン6を ε-カプロラクタムに戻す化学リサイクルの手法(アルコール分解、中性・酸性・アルカリ性の加水分解)を比較した総説があり、ナイロン6廃棄物のうち、化学的にカプロラクタムに戻されているのはごく一部だと指摘しています。シミュレーション上は、アルカリ加水分解が最もエネルギー効率が高く、年産1.2万トンのカプロラクタムの規模なら、アルカリ・酸性加水分解もアルコール分解も5年以内に採算が取れる、という結果です事実[参考資料22](総説の想定による試算であり、実際の事業の採算を示すものではありません)。

別の研究(Gama ほか, 2024)は、ポリアミド廃棄物を塩酸で100℃・4時間分解し、得られた分解生成物を10 wt%まで新しいポリアミドに混ぜると、剛性が上がり、ガラス転移温度とメルトフローインデックスも上がる、と報告しています事実[参考資料21]。

(3) 原料化とマスバランス

BASF の Ultramid Ccycled は、プラスチック廃棄物や廃タイヤを熱分解して得る熱分解油を、製造の入口で化石原料の代わりに使う方式です。再生原料の割合は、第三者が監査するマスバランス方式で製品に割り当てられます事実[参考資料19]。 同社は、このため特性は化石由来の品と同じで、通常グレードと同じように加工できる、としています[参考資料6・19]。 BASF の PA6-GF30 の製品情報も、マスバランス方式のため製品特性は変わらないと記しています事実[参考資料6]。

素材技術者の読みどころ:「再生材入り」は3つの別の意味を持つ

ここまでの3経路は、物性への影響の出方がまったく違います(本記事による整理)。

  • 機械的:分子量とガラス繊維長が落ちる分、物性が下がる。ただし使い方(混合率、サイクル数)で管理できる。
  • 化学的(解重合):モノマーまで戻すので理屈の上では物性は戻るが、廃棄物の分別、精製、コストが課題(総説[22]の趣旨)。
  • 原料化(マスバランス):物性は変わらない。その代わり、製品のペレットの中に再生原料が物理的に入っているとは限らない。再生原料の量は帳簿上で割り当てられる(BASF の説明は「割り当てる」という表現)。環境主張を読むときは、どの意味で「再生」と言っているのかを確認する必要がある。

BASF のガラス繊維強化PA6の暫定データシート(B3WG6 RC)は「再生原料を含むグレード」と表記しています事実[参考資料9]が、どの経路の再生原料か、含有率の定義は、同資料からは確認できません。

12. 未確定の点と、この記事が扱わなかったこと

本稿の調査範囲で確認できなかった点
  • 吸水率とTgの具体的な対応:含水率ごとのTgの数値は、本稿が開けた資料では確認できませんでした。題名で存在を確認した論文[24]の数値は引用していません。
  • BASF の「cond.」の調湿条件:引用した2つのデータシートには明記がありません。
  • PA66 の化学的リサイクルの実態:Aquafil の説明はナイロン6に限られており、PA66 の同様の事業については一次情報を確認できませんでした。
  • PA9T の実際の原料組成:クラレは長鎖ジアミン構造と説明していますが、本稿の計算(図2)は理想鎖の仮定です。
  • 生産量・リサイクル率・市場規模:調査会社の推計は使わない方針のため扱っていません。公的統計や業界団体の数値は、定義と年を確認した上で別編に譲ります。
  • 各社の環境負荷の数値(CO₂削減率など):メーカーの自己申告であり、第三者の評価を本稿では確認していないため記載していません。
この記事のまとめ
  • 強さも吸水も、アミド基から生まれます。PA6とPA66は計算上のアミド基濃度が同じ(8.84 mmol/g)で、炭素鎖を伸ばすと下がります本稿の計算。
  • 吸水は設計変数です。ガラス繊維30%強化でも、調湿後の弾性率・破断応力は乾燥時の約3分の2になり、破断ひずみは伸びます事実。
  • 水は時間をかけて入ります。3 mm の平板で平衡の80%まで約207日という試算です本稿の計算。
  • 連続使用温度は融点より大幅に低く、東レは荷重下でPA66は100℃、PA6・PA610は70℃を超えないのが通常としています事実。
  • リサイクルは3経路で、物性への影響が違います。機械的は繊維長が短くなり、化学的はモノマーに戻し、マスバランスは割り当ての考え方です。

13. 用語集

ポリアミド(PA)
主鎖にアミド結合(–CONH–)を繰り返し持つ高分子。脂肪族のものを一般にナイロンと呼ぶ。
アミド基
–CONH–。N–H が水素を与え、C=O が受け取るため、鎖間・水分子と水素結合する。
水素結合
N–H と C=O などの間に働く比較的強い分子間の引力。ポリアミドの融点と強さ、そして吸水の源。
アミド基濃度
樹脂1 g あたりのアミド結合の量(本稿では mmol/g)。低いほど吸水しにくい傾向がある。
PA6・PA66
ナイロン6・66。炭素数6のラクタム(またはアミノ酸)から作るものと、炭素数6のジアミンと二塩基酸から作るもの。
長鎖ナイロン
PA11、PA12、PA610、PA1010 など。炭素鎖が長く、アミド基濃度が低い。吸水が小さく融点は低め。
半芳香族ポリアミド
主鎖に芳香環(テレフタル酸など)を含むポリアミド。PA9T、変性PA6T など。融点とTgが高い。
アラミド
アミド結合の85%以上が2つの芳香環に直結したポリアミド(16 CFR 303.7 の繊維の定義)。
調湿(cond.)
試験片を所定の湿度で水を吸わせた状態。ISO 1110 は促進調湿の方法を定める。
平衡吸水率
一定の温度・湿度で、吸水量が増えなくなったときの吸水率。飽和(水中)とは別の値。
ガラス転移温度(Tg)
非晶部分が硬いガラス状から柔らかいゴム状に変わる温度。吸水で下がる。
ブリスター
リフローなどの高温で、吸水した水分が蒸気になって生じる膨れ。
解重合
高分子をモノマーまで分解する反応。ナイロン6ではカプロラクタムに戻す。
マスバランス
再生原料の量を、製品に帳簿上で割り当てる方式。製品の中に物理的に含まれるとは限らない。

14. 参考資料(一次情報)

  1. 東レ「ナイロン樹脂 アミラン™」製品紹介ページ — www.plastics.toray
  2. 東レ AMILAN™ 技術資料「Physical properties」 — www.plastics.toray
  3. 東レ AMILAN™ 技術資料「Chemical properties」 — www.plastics.toray
  4. BASF Product Information「Ultramid® B27 E」2024年3月(PDF) — chemicals.basf.com
  5. BASF Product Information「Ultramid® A27 E」2024年3月(PDF) — chemicals.basf.com
  6. BASF Product Information「Ultramid® B3EG6」2026年2月(PDF) — download.basf.com
  7. BASF Product Information「Ultramid® A3WG6 LT BK」2026年2月(PDF) — download.basf.com
  8. BASF Product Information「Ultramid® A 218G V33 BLACK 41N」2023年10月(PDF) — download.basf.com
  9. BASF Preliminary Datasheet「Ultramid® B3WG6 RC BK23379」2024年2月(PDF) — download.basf.com
  10. クラレ「GENESTAR™」製品ページ(グローバル) — www.kuraray.com
  11. クラレ「〈ジェネスタ®〉とは」(ジェネスタ事業部サイト) — genestar.kuraray.com
  12. 三井化学「About ARLEN™」高耐熱ポリアミド樹脂 ARLEN™ — jp.mitsuichemicals.com
  13. Arkema「Rilsan® Polyamide 11 Resins」 — hpp.arkema.com
  14. Evonik「VESTAMID® Terra Technical Biobased Polyamides」(PDF) — products.evonik.com
  15. Evonik「VESTAMID®」製品ページ(PA12・PA612・PEBA) — www.evonik.com
  16. Teijin Aramid「How is Twaron® produced?」Twaron® brochure — product.teijinaramid.com
  17. 米国 eCFR 16 CFR 303.7「Generic names and definitions for manufactured fibers」 — www.ecfr.gov
  18. Aquafil「Sustainability in Business with ECONYL® Regenerated Nylon」 — econyl.aquafil.com
  19. BASF「Ultramid® Ccycled®」 — chemicals.basf.com
  20. Gültürk, Berber“Effects of mechanical recycling on the properties of glass fiber–reinforced polyamide 66 composites in automotive components”, e-Polymers 2023 — doi.org
  21. Gama ほか“Solvolysis of Nylon: A Pathway to Sustainable Recycling and Circular Economy”, Sustainability 2024, 16, 9725 — doi.org
  22. Minor ほか“Chemical Recycling Processes of Nylon 6 to Caprolactam: Review and Techno-Economic Assessment”, Chemical Engineering Journal 2023, 474, 145333 — doi.org
  23. Puffr, Šebenda“On the Structure and Properties of Polyamides. XXVII. The Mechanism of Water Sorption in Polyamides”, J. Polym. Sci. C 1967, 16, 79 — doi.org
  24. Kettle“Variation of the glass transition temperature of nylon-6 with changing water content”, Polymer 1977 — doi.org
  25. Chaupart, Serpe“Molecular weight distribution and mass changes during polyamide hydrolysis”, Polymer 1998 — doi.org
  26. ISO ISO 62:2008 Plastics — Determination of water absorption — www.iso.org
  27. ISO ISO 1110:2019 Plastics — Polyamides — Accelerated conditioning of test specimens — www.iso.org
  28. ISO ISO 16396-1:2022 Plastics — Polyamide (PA) moulding and extrusion materials — Part 1: Designation system and basis for specifications — www.iso.org
  29. ISO ISO 527-1:2019 Plastics — Determination of tensile properties — Part 1: General principles — www.iso.org
  30. ISO ISO 75-1:2020 Plastics — Determination of temperature of deflection under load — Part 1: General test method — www.iso.org
  31. ISO ISO 11357-3:2025 Plastics — Differential scanning calorimetry (DSC) — Part 3: Determination of temperature and enthalpy of melting and crystallization — www.iso.org
  32. BASF「Ultramid® (PA)」製品ページ(Engineering Plastics Finder) — plastics-rubber.basf.com
  33. ISO ISO 15512:2019 Plastics — Determination of water content — www.iso.org
  34. Arkema「Rilsan® BMNO TLD」グレードページ — hpp.arkema.com

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
東レがアミラン™をアミド基結合を持つ熱可塑性エンジニアリングプラスチックと位置づけ、ナイロン6・66・610と共重合ナイロンを揃えていること。「汎用エンプラの中でも非常に高い融点を有する結晶性樹脂」。吸水するとアミド基に水分子が配位して分子の運動が活発になり、柔軟性と靭性が増すこと。ナイロン6・66・610の融点が225・265・225℃、GF強化品の荷重たわみ温度(1.80 MPa)が215・255・205℃であること。ナイロン610 CM2000 シリーズがセバシン酸を約60%原料とするバイオベースで、ナイロン6・66に比べて吸水率が約50%であること。用途(クリップ、ファスナー、パワートレイン部品、冷却部品、サーキットブレーカー)、ほとんどのグレードが UL94 V-0 対応とされること[参考資料 1]https://www.plastics.toray/ja/products/amilan/事実
23℃/60%RH の平衡吸水率がナイロン6で3.5%、ナイロン66で2.5%、ナイロン610で1.5%。吸水率1%あたり寸法が約0.2〜0.3%膨張すること。拡散係数(射出成形品、20℃/60%RH)が 6.31×10⁻¹⁴ m²/s、水中(20℃)が 7.84×10⁻¹³ m²/s。60 mmφ×3 mm の円板で平衡の80%到達に約4,110時間(空気中)、約330時間(水中)、完全平衡は約2.5倍。融点がナイロン66で255℃、ナイロン6で225℃、ナイロン610で220℃。荷重下の連続使用は PA66 で100℃、PA6・PA610 で70℃を超えないのが通常。CM1017 と CM3001-N の乾燥時と平衡吸水時の引張強さ(85→40、80→50 MPa)、曲げ弾性率(3.0→1.0、2.8→1.4 GPa)、破断伸び、アイゾット衝撃(50→400、50→300 J/m)、ロックウェル硬さ(119→90、119→100)[参考資料 2]https://www.plastics.toray/technical/amilan/tec_003.html事実
ナイロン6(CM1017)の無浸漬の引張強さ85 MPa、80℃のエンジンオイル1,000時間後72 MPa、80℃のガソリン1,000時間後66 MPa。濃硫酸・濃硝酸・濃塩酸に溶けること、5%の硫酸や5%の水酸化ナトリウム水溶液でソルベントクラッキングが起きること[参考資料 3]https://www.plastics.toray/technical/amilan/tec_004.html事実
Ultramid B27 E(PA6、無強化)の融点220℃(ISO 3146)、23℃/50%rh の吸水率2.2%、23℃水中飽和8.5%、ペレット含水率の規格が最大0.10%(ISO 15512)、保管12か月以内、開封後はすぐに使い切ること[参考資料 4]https://chemicals.basf.com/dam/jcr:0716d34e-f456-45ca-80d2-0b6beb8ffc2d/TI%20Ultramid%20B27%20E_30644930.pdf事実
Ultramid A27 E(PA66、無強化)の融点260℃(ISO 3146)、吸水率2.2%(23℃/50%rh)・8.5%(23℃水中飽和)、含水率の規格が最大0.20%[参考資料 5]https://chemicals.basf.com/dam/jcr:3900add4-5175-4e68-832a-4590a3a3c131/TI%20Ultramid%20A27%20E%200324.pdf事実
Ultramid B3EG6(PA6-GF30)の引張弾性率 9,500/6,200 MPa、破断応力 185/115 MPa、破断ひずみ 3.5/8%、曲げ弾性率 8,600/5,000 MPa、ノッチ付シャルピー 15/30 kJ/m²(dry/cond.)。水中飽和 6.3〜6.9%、23℃/50%r.h. 平衡 1.9〜2.3%(ISO 62に類似)。線膨張係数 流れ方向22・直角方向106×10⁻⁶/K(ISO 11359-1/-2、23〜55℃)、成形収縮率 0.25%(平行)・0.70%(直角)(ISO 294-4)。予備乾燥 80℃・4時間、溶融 270〜290℃、金型 80〜90℃。マスバランス方式のため製品特性は変わらないこと[参考資料 6]https://download.basf.com/p1/8a8081c57fd4b609017fd640cfa907fa/en/ULTRAMID%25C2%25AE_B3EG6事実
Ultramid A3WG6 LT BK(PA66-GF30)の引張弾性率 10,000/6,800 MPa、破断応力 190/127 MPa、破断ひずみ 3.6/6.5%、曲げ弾性率 9,270/6,500 MPa、ノッチ付シャルピー 10/13 kJ/m²(dry/cond.)[参考資料 7]https://download.basf.com/p1/8a8082587fd4b608017fd65c882559b5/en/ULTRAMID%253Csup%253E%25C2%25AE%253Csup%253E_A3WG6_LT_BLACK事実
Ultramid A 218G V33(PA66-GF33)の吸湿時の乾燥(除湿乾燥機、露点−20℃以下、2〜4時間)、予備乾燥温度 80℃、成形時の許容含水率の上限 0.15%[参考資料 8]https://download.basf.com/p1/8a80828a8b13e68c018b3c4455e14216/en/Ultramid%25C2%25AE_A_218G_V33_BLACK_41N事実
Ultramid B3WG6 RC BK23379(暫定データシート)が再生原料を含むグレードであること、予備乾燥 80℃、許容含水率の上限 0.2%[参考資料 9]https://download.basf.com/p1/8a80823b8dab6121018dcaa07ae55bc9/en/Ultramid%253Csup%253E%25C2%25AE%253Csup%253E_B3WG6_RC_BLACK_23379事実
PA9T「ジェネスタ」の融点306℃・ガラス転移温度125℃、低吸水、高耐熱、高耐薬品、寸法精度。用途(コネクタ、ジャック、カメラモジュール、スイッチ、LED反射板、リレー、絶縁体、ワイヤハーネス、ギア、燃料部品、インタークーラータンク、サーモスタットハウジングなど)[参考資料 10]https://www.kuraray.com/global-en/products/genestar/事実
ポリアミドの吸水率はアミド基濃度で決まり、PA9T は長鎖ジアミン構造のためアミド基濃度が低く吸水しにくいこと。ガラス転移温度125℃で高温のエンジンルームに耐えること。リフロー後もブリスターを抑えること、耐トラッキング性が高く USB Type-C・パワー半導体モジュールなどの高電圧コネクタに向くこと[参考資料 11]https://genestar.kuraray.com/ja/about/事実
ARLEN™ がテレフタル酸を用いた変性ポリアミド6Tで、1980年代に三井化学が世界で初めて開発したこと。融点310〜330℃、吸水率を PA66 の半分未満に下げたこと、第三成分を加えた変性により鉛フリーはんだのリフローに耐え、ブリスターを抑えること[参考資料 12]https://jp.mitsuichemicals.com/en/special/arlen/about/事実
Rilsan PA11 がひまし油由来で、18炭素の鎖から11炭素のアミノウンデカン酸を作ること。PA12に比べて融点が高く、燃料・ガス透過が低く、衝撃特性が良いこと。作動温度範囲 −40℃〜+130℃、製造拠点が仏・米・中。用途に燃料管理系、水素燃料系、チューブ・ホースなどが挙がること[参考資料 13]https://hpp.arkema.com/en/product-families/rilsan-polyamide-11-resins/事実
Rilsan BMNO TLD(PA11系のグレード)の融点189℃(DSC、10℃/min)[参考資料 34]https://hpp.arkema.com/en/products/product/f/spa_hpp_RilsanPellets/p/rilsan-bmno-tld/事実
VESTAMID Terra HS16(PA610):融点223℃、Tg 48℃、吸水3.3%(Evonik 法、RT)、バイオ度63%。DS16(PA1010):融点200℃、Tg 37℃、吸水1.8%、バイオ度100%。PA610 はヘキサメチレンジアミンとセバシン酸、PA1010 はデカメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合物で、原料がひまし油由来。位置づけの説明(HS は PA612 と PA6・PA66 の中間、DS は PA12 などと PA6・PA66 の中間)[参考資料 14]https://products.evonik.com/assets/32/47/VESTAMID_Terra_EN_EN_243247.pdf事実
VESTAMID L が PA12 で、吸水が極めて小さく、寸法安定性と低温の耐衝撃性に優れること。用途(自動車の流体・空気配管、大口径パイプ、ケーブル被覆、カテーテル、精密射出成形部品)。VESTAMID の製品群に PA12・PA612・PEBA があること[参考資料 15]https://www.evonik.com/en/company/businesslines/hp/polyamides/vestamid.html事実
Twaron の製造が重合、紡糸、加工の3段階であること。ポリマーを硫酸に溶かした液晶性の溶液から紡糸し、糸の直径は約12 µm、分子鎖が繊維軸に平行に並ぶこと[参考資料 16]https://product.teijinaramid.com/twaron-brochure/how-is-twaron-produced事実
16 CFR 303.7 が、ナイロンを「アミド結合の85%未満が2つの芳香環に直接結合している合成長鎖ポリアミド」、アラミドを「85%以上が直接結合している合成長鎖ポリアミド」と定義していること[参考資料 17]https://www.ecfr.gov/current/title-16/chapter-I/subchapter-C/part-303/section-303.7事実
Aquafil の ECONYL が、ナイロン6の廃棄物(漁網、布の端材、カーペット、工業系プラスチック)を解重合して元のモノマーに戻す化学的リサイクルで、新品と同じ品質を保つと同社が述べていること[参考資料 18]https://econyl.aquafil.com/sustainability/(同社の説明であり、本稿は品質や環境負荷の主張を独自に検証していない)事実
Ultramid Ccycled が、プラスチック廃棄物や廃タイヤから得る熱分解油を製造の入口で使い、再生原料の割合を第三者が監査するマスバランスで製品に割り当てる方式であること。製品特性は化石由来品と同じとされること[参考資料 19]https://chemicals.basf.com/global/en/Monomers/polyamides-and-precursors/ultramid--ccycled-事実
PA66-GF30 の工程内スクラップを3回の機械的リサイクルで15〜30 wt%混ぜた結果:平均繊維長が300〜350 µm から150〜250 µm に短縮。引張強さ・弾性率・衝撃エネルギーはわずかに低下、破断伸びとメルトフローインデックスは上昇。再生材25 wt%超かつ3回のサイクルで変化が顕著[参考資料 20]https://doi.org/10.1515/epoly-2023-0129事実
塩酸によるポリアミドの溶媒分解(100℃、4時間、HCl/PA=11:1)と、生成物を最大10 wt%まで新しいポリアミドに混ぜると剛性・Tg・メルトフローインデックスが上昇すること[参考資料 21]https://doi.org/10.3390/su16229725事実
ナイロン6を ε-カプロラクタムに戻す化学リサイクルの総説。ナイロン6廃棄物のごく一部しか化学的に戻されていないこと、アルコール分解と中性・酸性・アルカリ性加水分解の比較、アルカリ加水分解が最もエネルギー効率が高いこと、年産1.2万トンのカプロラクタム規模で5年以内に採算が取れる試算[参考資料 22]https://doi.org/10.1016/j.cej.2023.145333(総説の想定による試算)事実
Puffr と Šebenda(1967)の、ナイロン6では2つのアミド基に水3分子、ナイロン8〜12では2つのアミド基に水1分子が吸着するという提案[参考資料 23]https://doi.org/10.1002/polc.5070160109事実
ナイロン6のTgが含水率で変化することを測定した論文が存在すること(題名のみ確認。本文は未確認のため、数値は引用していない)[参考資料 24]https://doi.org/10.1016/0032-3861(77)90244-0事実
ポリアミドの加水分解で分子量分布が変化することを扱った論文が存在すること(題名のみ確認。本文は未確認)[参考資料 25]https://doi.org/10.1016/s0032-3861(97)00414-x事実
ISO 62 が吸水の測定を、ISO 1110 がポリアミド試験片の促進調湿(平衡含水量は23℃/50%RH に近いが、機械特性は標準雰囲気での調湿品とわずかに異なりうる)を、ISO 16396-1 がポリアミド成形・押出材料の呼称体系を、ISO 527-1 が引張特性を、ISO 75-1 が荷重たわみ温度を、ISO 11357-3 がDSCによる融解温度・エンタルピーを、ISO 15512 が含水量を規定していること(題名と適用範囲の記載にとどめる。本文は有料)[参考資料 26]https://www.iso.org/standard/41672.html[参考資料 27]https://www.iso.org/standard/76395.html[参考資料 28]https://www.iso.org/standard/81940.html[参考資料 29]https://www.iso.org/standard/75824.html[参考資料 30]https://www.iso.org/standard/77576.html[参考資料 31]https://www.iso.org/standard/88106.html[参考資料 33]https://www.iso.org/standard/73834.html事実
BASF の Ultramid が PA6・PA66・共重合体・ブレンド・高温用の半芳香族・PPAなどから成ること。HPP グレードが成形サイクルを約30%短縮しうるとされること、CTI 600、1064 nm のレーザーマーキング。高い強度と剛性、成形のしやすさ、耐薬品性、低いクリープ傾向などの特長[参考資料 32]https://plastics-rubber.basf.com/global/en/performance_polymers/products/ultramid事実
アミド基濃度(PA6・PA66=8.84、PA610=7.08、PA9T=6.94、PA1010=5.91、PA11=5.46、PA12=5.07 mmol/g)と PA6T=8.12、PPTA=8.39 の計算本稿の計算。繰り返し単位の式量(C 12.011、H 1.008、N 14.007、O 15.999)から求めた理想鎖の値。末端基・共重合成分・添加剤は無視。PA9T は炭素数9のジアミンとテレフタル酸の理想鎖を仮定(クラレの実際の組成ではない)本稿の計算
調湿後の弾性率・破断応力の保持率(PA6-GF30:65%・62%、PA66-GF30:68%・67%)。吸水3%で0.6〜0.9%の寸法変化の見込み本稿の計算。BASF の dry/cond. の値の比、および東レの係数(吸水率1%あたり0.2〜0.3%)の掛け算。調湿条件は資料に明記なし本稿の計算
平板の肉厚と80%到達時間(1 mm:約553時間、2 mm:約2,213時間、3 mm:約4,979時間、4 mm:約8,851時間、6 mm:約19,915時間)。時間が肉厚の2乗に比例すること本稿の計算。式 t=π×0.8²×h²÷(16×D)、D=6.31×10⁻¹⁴ m²/s(東レの公表値)。東レの円板の値(約4,110時間、約330時間)を同じ形の式で再現できることを確認。一次元拡散、D一定の近似。実部品の吸水時間を示すものではない本稿の計算
線膨張係数の異方性約4.8倍(106÷22)、成形収縮率の異方性約2.8倍(0.70÷0.25)本稿の計算(BASF B3EG6 の公表値の比)本稿の計算
PA6・PA66の融点差は鎖の並び方の差だという読み取り。吸水でTgが室温を下回るかが硬さの境目になるという整理。水が可塑剤として働くという解釈。ブリスターが吸水した水分の蒸気化で起こるという説明。ナイロン6がε-カプロラクタムの開環重合、ナイロン66がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸から作られるという記述。ポリアミドの命名規則。溶融中の加水分解の説明。アラミドが溶液紡糸である点の整理。リサイクル3経路の整理と、マスバランスの注意公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない(一部は教科書的な事項)解説
含水率ごとのTgの数値、BASFの「cond.」の調湿条件、PA66の化学的リサイクルの実態、PA9Tの実際の原料組成本稿の調査範囲で一次情報を確認できなかったため記載していない解説
図1・図2・図3・図4・図5・図7が説明のための作図であること。ヒーロー画像と図6がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月2日/出典は一次情報(企業の公式技術資料・製品情報、規格団体の公式ページ、米国連邦規則、査読論文)に限定しています。 物性値はメーカー公称値であり、グレード・試験法・測定条件が異なるため、数値の優劣を比べるものではありません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 含水率ごとのTgの数値、BASF の「cond.」の調湿条件、PA66の化学的リサイクルの実態、PA9Tの実際の原料組成、生産量・リサイクル率・市場規模については、公開された一次情報で確認できなかった、あるいは扱わない方針のため記載していません。 図1・図2・図3・図4・図5・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の分子配置・製品の実物を示すものではありません。