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電力グリッドと再エネ 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

電力グリッドと再エネ
― 水電解は、系統にとって「負荷」か「調整力」か

水電解は、電力系統から見ると大きな負荷です。応答が速く、負荷を下げられるため、再生可能エネルギーの余剰を吸収する調整力になりうるとされています。 しかし、九州エリアで2024年度に出力制御された電力(7.5億 kWh)を水素にするには、稼働率が低い前提だと数百〜千MW超の電解槽が必要で、電力が無料でも水素は約18〜37 US$/kgになります(本稿の計算)。 この記事は、系統・電力の側に絞って、特性、実態、つなぎ方、日本・EU・米国の制度を整理します。

構成:IRENA、IEA、内閣官房(水素基本戦略)、経済産業省・資源エネルギー庁、e-Gov法令、EUR-Lex、米国Federal Register・Public Law、DOEの公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

電力グリッドと再エネのheroを示す概念画像
図1 概念図(AI生成イメージ)。送電網の近くで再生可能エネルギーの電力を水電解に使う場面を、雰囲気として表現したものです。実在の施設・装置・メーカーを示すものではありません。
この記事の構成
  1. 水電解と再エネ・系統の関係(3行でつかむ)
  2. 系統から見た水電解の特性
  3. 再エネの「余剰」とは何か ― 日本の出力制御の実態
  4. 本稿の計算:出力制御電力を水電解で使うと
  5. 素材技術者の視点①:変動運転は、材料の使い方を変える
  6. 電力のつなぎ方 ― 系統、専用の再エネ、太陽光、小型炉
  7. 制度:日本・EU・米国
  8. 素材技術者の視点②:電力側の要求を、材料の評価に翻訳する
  9. 限界と、確認できなかったこと
  10. 評価・標準の読み方
  11. 用語集
  12. 参考資料(一次情報)
  13. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・見通し、または制度の将来の適用で、実績が確認できていない事項
このほか、材料や系統の観点での読み取りは「解説」として区別しています。
制度(法令・規則)は、提案・採択・施行(適用開始)を区別し、確認した日付(2026年10月)を書きます。改正・延期・廃止の動きがある制度は、その後に変わっている可能性があります。
本記事は電力系統と水電解の関係を解説するもので、設備の運転や取り扱い、投資・調達の判断の助言ではありません。水素は可燃性ガスで、取り扱いには法令(高圧ガス保安法など)と規格があります。

1. 水電解と再エネ・系統の関係(3行でつかむ)

  • 系統から見ると:水電解は、出力を速く変えられ、消費をゼロまで下げられる負荷だと、IRENAは整理しています。調整力、再エネの出力制御の抑制、混雑の緩和などの使い方が考えられます事実[参考資料1]。日本の水素基本戦略(2023年)も、余剰電力で水素をつくることを、調整力不足や系統混雑の解決策の一つになりうるとしています事実[参考資料3]。
  • 量の感覚:九州エリアの2024年度の出力制御は4.8%(7.5億 kWh)、2023年度は8.3%(12.9億 kWh)でした事実[参考資料4]。2025年5月4日の昼には、出力制御が509万 kWに達しています[参考資料4]。世界の設置済みの水電解は2024年末で約2 GWです[参考資料2]。
  • ただし稼働率が低い:制御される電力だけで動かす水電解は、稼働率が低く、設備費が水素コストを決めます本稿の計算(第4章)。系統・専用の再エネ・原子力のどれにつなぐかで、稼働率も、EUや米国の制度上の扱いも変わります(第6・7章)。

2. 系統から見た水電解の特性

電解槽の技術(PEM、アルカリ、AEM、SOEC)の材料や構造は、本シリーズの各編で扱います。ここでは、電力系統の側から見た特性だけを整理します。IRENAは、電解槽の柔軟性を、(1) 設定値の変更への応答時間、(2) 落ち着くまでの時間、(3) 消費電力を変える速さ、(4) 運転の下限(最小負荷)、(5) 起動・停止の時間、の5つで評価できるとしています事実[参考資料1]。

  • 応答は速い。約40 kWの小型システムの試験では、設定値の変更に対して消費電力がミリ秒で変わり始め、落ち着くまでは秒のオーダーでした(Eichmanらの2014年の報告を IRENAが引用)。電解槽は、消費電力をゼロまで下げた状態を、時間の制限なく保てるとされています[参考資料1]。
  • 出力変更の速さは整流器で決まる。メーカーは、消費電力の増減を1秒未満で完了すると保証するのが一般的で、これは主に整流システムの機能だとIRENAは述べています。アルカリ型も、ドイツで一次調整力の試験に成功し、実用上はPEM型と同程度に速いとされています[参考資料1]。
  • 低負荷運転はできるが、効率が下がる。5%程度の部分負荷を長時間続けられる一方、整流器の特性のために効率の損失が大きくなりうる、とIRENAは書いています[参考資料1]。
  • 起動・停止:IRENAの本文は、PEM型は冷間起動が5分未満、数秒で完全に停止できるとしています。同報告の表は、2020年の状況として冷間起動がPEM・AEMで20分未満、アルカリで50分未満、SOECで600分超と示しています[参考資料1]。本文と表の差の条件は記されていないため、本稿は両方を示します。
電解槽の運転範囲と冷間起動(IRENA 2020年、状況値の表) 負荷範囲(定格に対する%) 冷間起動(定格出力まで、分、対数軸) PEM 5-120% <20 アルカリ 15-100% <50 AEM 5-100% <20 SOEC 30-125% >600 0 50 100 1 10 100 1,000 ※ IRENAの表6の値(2020年の状況)で、メーカー保証値や規格値ではありません。冷間起動は表の境界値(PEM・AEMは20分未満、アルカリは50分未満、SOECは600分超)。 ※ 同報告の本文は「PEMは冷間起動が5分未満」とも書いています。表の値との差の条件は記されていないため、本稿は区別せず両方を示します。
図2 概念図(ベクター作図)。IRENAの表6(2020年の状況)にもとづく、電解槽の負荷範囲と冷間起動[参考資料1]。メーカーの保証値や規格値ではなく、方式間の優劣を示すものでもありません。

IRENAは、系統へのサービスとして、(a) 再エネの余剰時に消費を急に増やして出力制御を減らす、(b) アグリゲーターを通じて需給調整市場に参加する、(c) 再エネの変動をならすため、オフグリッドの再エネと協調する、(d) 混雑管理のために消費を減らす、の4つを挙げています事実[参考資料1]。同時に、限界も書いています。電解槽は稼働時間を長くしたほうが設備費の負担が軽くなるため、消費を止めるサービスには適切な対価が要ること、水素を使う工程が止められない場合は、水素の貯蔵の大きさが柔軟性を制約することです[参考資料1]。

さらに、IRENAの「重要なメッセージ」は、電解は短い時間の変動に追従するよりも、再エネの季節性に合わせる柔軟性を提供できる、というものです。短い時間の変動は、電池などの短期の蓄エネルギーが担えます。ガスインフラ(岩塩空洞、パイプライン)と組み合わせると、再エネの電気を分子の形で季節をまたいで貯蔵でき、水素の需要を変動する再エネの供給から切り離せるとしています事実[参考資料1]。IEAも、水素・アンモニアは、変動する再エネの割合が高く、他の柔軟性や長期貯蔵の選択肢が限られる系統で、大規模・季節をまたぐ貯蔵の数少ない選択肢の一つになりうるとしています[参考資料2](水素を電気に戻す側の話で、水電解とは別の側面)。

3. 再エネの「余剰」とは何か ― 日本の出力制御の実態

系統には、需要と供給を一致させる制約があります。太陽光が多い昼間に、需要が少ない春・秋の休日が重なると、他の電源の最低出力を下げても、なお供給が需要を上回ることがあります。この余剰は、揚水への蓄電、電池、連系線を通じた他のエリアへの送電、そして再エネの出力制御へと振り分けられます(図3は概念図)。水電解は、この余剰の行き先の1つになりえます。

1日の需給と水電解のイメージ(概念図) 0 6 12 18 24 時刻 需要 他の電源の最低出力+太陽光 他の電源の最低出力 余剰 水電解の負荷 ※ 形は説明用の概念で、実際の数値ではありません。余剰は、揚水・蓄電池・連系線への送電、水電解の負荷、再エネの出力制御などに振り分けられます。 ※ 水電解は余剰の一部だけを吸収する例です。吸収できる量は、設備容量と稼働の仕方で決まります(第3章以降)。
図3 概念図(ベクター作図)。1日の需給と水電解のイメージ。形は説明用で、実際の数値ではありません。余剰の大きさや時間帯は、エリアと日で大きく異なります。

経済産業省・資源エネルギー庁の資料(2026年3月16日)は、日本の出力制御の状況を次のように整理しています事実[参考資料4]。

  • 再エネの導入拡大により、出力制御を行うエリアは全国に広がりました。2026年3月1日(日)の11〜16時に、東京エリアで初めて再エネの出力制御が実施され、これですべてのエリアで出力制御が実施されたことになります。
  • 複数のエリアが同時に制御されることによる域外送電量の減少や、電力需要の減少などもあり、足元の出力制御量は増加傾向にあります。
  • 出力制御は軽負荷期の春と秋に発生しやすい傾向があります。一方、再エネ設備の容量は年々増えていますが、出力制御量が毎年度増えているとは限りません。複合的な要因で発生するため、要因の特定は難しいと同資料は述べています。
エリア出力制御率(2024年度)制御された電力量(2024年度)参考:2023年度の出力制御率
九州4.8%7.5億 kWh8.3%(12.9億 kWh)
東北1.3%2.1億 kWh0.8%(1.3億 kWh)
中国2.3%2.1億 kWh3.6%(3.2億 kWh)
関西2.1%2.0億 kWh0.1%(0.087万 kWh)
四国3.2%1.6億 kWh1.8%(0.92億 kWh)
中部0.3%0.51億 kWh0.2%(0.38億 kWh)
北陸0.9%0.17億 kWh0.6%(0.10億 kWh)
北海道0.04%269万 kWh0.01%(81万 kWh)
沖縄0.15%70万 kWh0.27%(137万 kWh)
東京実施なし(2025年6月時点)――

表1 エリア別の再エネ出力制御(経済産業省・資源エネルギー庁の資料[参考資料4]より。事実)。出力制御率=変動再エネ出力制御量÷(出力制御量+変動再エネ発電量)。関西は淡路島南部地域を除き、四国は含む。東京は2026年3月1日に初めて実施(2025年度の数値は本稿では確認していない)。

表1の2024年度の制御量を足すと、東京を除く全国で約16.0億 kWhです本稿の計算。ただし、数値は各エリアの一般送配電事業者の公表にもとづく同資料の値で、本稿は合計を自分で足しただけです。一方、世界の再エネ水素の量や、日本が掲げる水素の導入量と比べるのは、本稿の範囲を超えます。

九州エリアの最小需要日の需給(2025年5月4日12:00〜12:30、万kW) 発電(供給力) 334 968 1,489 使い道 653 189 134 509 1,489 原子力・水力・地熱 334 火力 109 バイオマス 47 太陽光 968 風力 10 その他 21 需要 653 揚水 189 蓄電池 4 連系線(送電) 134 再エネ出力制御 509 ※ 出典は経済産業省・資源エネルギー庁の資料(次世代電力系統WG、2026年3月16日、第3回WG資料の再掲)。合計は両方とも1,489万kW(本稿の計算)。 ※ 需要に占める変動再エネの割合は149.8%。小さい区分(風力・蓄電池)の数値は省略。1つの時刻の値で、年間や他エリアを代表しません。
図4 実データの作図(ベクター作図)。九州エリアの最小需要日(2025年5月4日12:00〜12:30)の需給。太陽光968万 kWに対し需要は653万 kWで、再エネ出力制御は509万 kW、揚水189万 kW、連系線の送電134万 kW[参考資料4]。1つのエリアの1つの時刻で、年間や他のエリアを代表するものではありません。

この図は、余剰の大きさを具体的に示しています。九州のこの時刻の再エネ出力制御509万 kW(5.09 GW)は、世界の設置済みの水電解の合計(2024年末で約2 GW)を上回ります本稿の計算[参考資料2]。余剰を水素にするには、その時刻の余剰に見合う電解槽が要ることが分かります。一方で、この規模の余剰は年間の限られた時間に集中するため、次章で見るように、設備の稼働率が大きな問題になります。

4. 本稿の計算:出力制御電力を水電解で使うと

九州エリアの2024年度の出力制御電力7.5億 kWhを、すべて水電解に使うと仮定します。比消費電力を52.9 kWh/kg(効率63% LHV、本シリーズ『水素の製造コスト』編の基準ケース)とすると、水素は約14,200 tです本稿の計算。必要な電解槽の容量は、電解槽がどれだけの時間動けるか(稼働率)で決まります。

稼働率必要な電解槽容量(MW)水素のコスト:電力0 US$/MWh電力20 US$/MWh電力50 US$/MWh
5%1,71236.637.739.2
10%85618.319.420.9
20%4289.110.211.8
30%2856.37.49.0

表2 出力制御電力7.5億 kWhを使い切る電解槽の容量と、水素のコスト(US$/kg)(本稿の計算)。前提:比消費電力52.9 kWh/kg、設備費2,300 US$/kW(据付込み)、割引率8%、寿命20年、O&M 3%/年、スタック50,000 h・交換費は設備費の20%(『水素の製造コスト』編と同じ)。稼働率は本稿の仮定で、実際の制御の時間分布は反映していない。

出力制御電力(九州、2024年度 7.5億 kWh)を水電解で使い切るために要る設備容量と、水素のコスト(本稿の計算) 世界の設置済み水電解 約2,000 MW(2024年末、IEA) 必要な電解槽容量(MW) 1,712 稼働率 5% US$ 36.6-37.7 856 稼働率 10% US$ 18.3-19.4 428 稼働率 20% US$ 9.1-10.2 285 稼働率 30% US$ 6.3-7.4 水素のコスト(US$/kg、電力0〜20 US$/MWh) ※ 前提:比消費電力52.9 kWh/kg、設備費2,300 US$/kW、割引率8%、寿命20年、O&M 3%/年(水素の製造コスト編の基準ケース)。電力は制御分のみ。 ※ 制御は特定の時間に集中するため、実際に高い稼働率で吸収できるとは限りません。点線は世界全体の設置量(本稿は変換しない)。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。出力制御電力(九州、2024年度、7.5億 kWh)を水電解で使い切るために要る設備容量(棒)と、水素のコスト(下の数字)。制御の時間分布を反映しない単純な計算で、実際の事業の予測ではありません。

表2と図5から読み取れること本稿の計算:

  • 電力が無料でも、水素のコストは稼働率で決まります。稼働率10%では、電力0 US$/MWhでも約18 US$/kgです。設備費の年価とO&Mが、少ない水素の量に乗るためです(『水素の製造コスト』編の第6章と同じ構造)。
  • 余剰を使い切るには、大きな容量が要ります。稼働率10%なら約856 MW、20%でも約428 MWで、これは世界の設置済みの水電解(約2,000 MW)の約2割〜4割にあたる規模です。
  • 実際の稼働率は、制御がいつ・どれだけ起きるか次第です。制御は春・秋の昼に集中するため、電解槽を年間を通じて動かすには、制御分以外の電力も要ります。その電力の価格と調達の仕方で、制度上の扱いも変わります(第6・7章)。

日本の水素基本戦略も、再エネ由来水素を安くつくるには、安価な余剰の再エネを大量に調達して水電解装置の稼働率を上げることが重要だとしています事実[参考資料3]。また、国内での水素製造は、再エネの電力が高いことなどから、輸入より高いとの見方がある一方、再エネが出力制御される局面では余剰電力の価格が安いことと、調整力として再エネの更なる導入拡大に資することから、国内の製造ポテンシャルを活かす必要がある、としています[参考資料3]。

5. 素材技術者の視点①:変動運転は、材料の使い方を変える

素材技術者の視点①:系統の要求に合わせると、電解槽の材料は「定常運転」の前提から外れる

IRENAは、電解槽の寿命は、通った電流の累積と、運転している時間の両方で決まり、調整力市場に参加して収益を補うなど、運転の仕方を変えると、膜の劣化が速まり、膜とその周辺の部品の交換が増える可能性があるとしています事実[参考資料1]。電流密度を上げれば生産量は増えますが、劣化も速くなる、とも述べています。

DOEのPEM電解の目標表も、同じ点を注記しています。劣化率の評価は、定格付近の運転だけでなく、動的な運転と、用途が要求する場合は起動・停止の繰り返しも含めて行う必要がある、というものです[参考資料11]。

方式によって、弱点は違います。IRENAは、SOEC(固体酸化物形)の寿命は約20,000時間に達しうるが、それは一定の電力で、条件が明確な運転(変動する再エネにつながない運転)での話で、主な劣化の機構は、高温のための熱サイクル(動的運転で冷却が要るため)だと述べています[参考資料1]。アルカリ型では、隔膜が連続した電解液の流れ、ガスの透過、局所的な高温にさらされ、小さなピンホールの故障が時間とともに大きくなってガスの混合に至ります。酸素側の水素濃度を監視し、2%に達するとスタックを修理または廃棄します[参考資料1]。

推測:低い負荷では、発生するガスの量が少なくなるため、同じ透過量でも、酸素側の水素の割合が高くなりやすいと考えられます。変動運転の評価では、負荷の下限での不純物濃度の確認が、材料(隔膜、膜)の試験項目になりうると考えます(IRENAの記述を材料の観点で読んだ推測で、確認した一次資料はありません)。

6. 電力のつなぎ方 ― 系統、専用の再エネ、太陽光、小型炉

水電解に電力を供給する方法は、大きく3つに整理できます(図6)。どの方法でも、稼働率とコストが変わり、EUや米国の制度上の扱いも変わります(第7章)。

水電解の電力のつなぎ方 ― 3つの構成(概念) ① 系統につなぐ 再エネ・他の電源 系統(送電網) 水電解 稼働率を高められる。排出量と制度上の扱 いは、電力の調達方法で決まる ② 専用の再エネ(オフグリッド) 太陽光・風力 (系統なし) 水電解 稼働率は再エネの出力で決まる。変動に合 わせた運転が必要 ③ 専用の原子力(小型炉など) 原子炉 (構内) 水電解 定格で動かしやすい。電力のコストと、実 績の少なさが論点 ※ 3つの整理は本稿によるもので、優劣を示すものではありません。②③は系統とつなぐ構成と組み合わせることもあります。
図6 概念図(ベクター作図)。水電解の電力のつなぎ方。①は系統接続、②は専用の再エネ(オフグリッド)、③は専用の原子力(小型炉など)。3つの整理は本稿によるもので、優劣を示すものではありません。
構成確認できた事例・記述位置づけ
専用の再エネ(オフグリッド)IEAは、2025年にEnvision Energyが、オフグリッドの再エネ電力を使う500 MWの水電解(アンモニア年30万トン規模のプラントの第2期)を稼働させ、世界最大の稼働中の水電解プロジェクトになったとしています。建設中の最大は、サウジアラビアのNEOMグリーン水素プロジェクトで、2027年の稼働までに2 GW超をめざします[参考資料2]事例は稼働・建設中。系統に頼らないため稼働率は再エネの出力で決まり、変動に合わせた運転が前提。NEOMの2027年の稼働は計画 未確定/将来
太陽光とつなぐIRENAは、太陽光だけにつなぐと、年間の運転時間は通常2,000時間未満になりうるとしています。稼働率が低い設備では設備費の割合が大きくなります[参考資料1]稼働率の低さが論点。『水素の製造コスト』編の第6〜7章と『光電気化学セル』編の第9章
原子力(既設炉・小型炉)DOEは、Nine Mile Point原子力発電所(米国ニューヨーク州)で、2023年に低温電解の水素製造設備が運転を始め、発電所の構内で生まれた電力で水を分解し、発電所の運転用の水素を供給したと伝えています。DOEが支援する、商用の原子力発電所での水素製造の実証4件のうちの1つで、費用は1,450万ドルの折半です[参考資料10]。IEAは、東南アジアについて、原子力は水素の製造にとって比較的高価な電源で、中国で観察された資本コスト(2,500 US$/kW、EUより約45%低い)に達したとしても、電力の費用だけで2.8〜4.5 US$/kg(電解槽の費用を除く)になると試算しています。また、小型モジュール炉(SMR)の統治に関する国際的な規則はないとも述べています[参考資料2]既設炉での実証は確認できた。小型モジュール炉での水素製造の商用実績は、本稿では確認できなかった
系統につなぐ日本の水素基本戦略は、再エネの出力が天候で変動するため、余剰の再エネを水素に変換・貯蔵することで調整力の役割を果たしうるとしています[参考資料3]稼働率を上げやすいが、電力の排出量と制度上の扱い(第7章)が論点

表3 電力のつなぎ方と、確認できた記述(事実。NEOMの稼働と小型炉の項は計画または見通し)。

7. 制度:日本・EU・米国

この章は、電力の調達や出力制御に関わる部分に絞ります。補助や税控除の金額、水素全体の支援は、他の編(水素の色分けと炭素強度、水素の製造コスト)が扱います。確認日は2026年10月です。

日本

  • 水素基本戦略(2023年6月6日付、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議の名で公表):余剰電力による水素製造を、調整力不足や系統混雑の解決策の一つになりうるとし、再エネの有効活用と装置の稼働率向上に資するシステム開発を進めるとしています事実[参考資料3]。
  • 水素社会推進法(「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」、令和6年法律第37号):2024年5月24日公布、2024年10月23日施行事実[参考資料5]。事業者が「低炭素水素等供給等事業計画」の認定を受けると、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が、継続的な供給に必要な資金などの助成金を交付できます(第7条、第10条)。経済産業省令は、低炭素水素等の要件を、水素1 kgあたりの製造に伴うCO2排出量が3.4 kg以下と定め(第3条)、助成を受ける場合、供給を続けることを求める期間を、10年(供給の助成は事業終了の翌日から、施設整備の助成は施設の取得日から)と定めています(第4条)[参考資料6]。IEAは、この法律にもとづく価格差支援(差額決済契約)の公募が2024年11月から2025年3月まで行われ、最初の事業は2030年までに運転を始める見込みとしています[参考資料2](未確定/将来)。
  • 電力の調達に関する規則:本稿が確認した法律・省令の条文には、EUや米国のような、電力の追加性・時間・地理の対応を定める規定は見当たりませんでした。電力のCO2排出量の数え方の細則は、本稿では確認していません。

EU

  • 委任規則(EU)2023/1184(2023年2月10日に委員会が採択、2023年6月20日に官報に掲載、官報掲載の20日後に発効=2023年7月10日〔本稿の計算〕):電力を「完全に再生可能」と数える条件を定め、再生可能な非生物起源の液体・気体の輸送用燃料(RFNBO)の製造に適用されます事実[参考資料7]。
  • 系統の電力を再生可能と数える4つの道があります(第4条):(1) 入札ゾーンの前年の再エネ割合が90%超の場合(運転できる時間数に上限)。(2) 電力の排出強度が18 gCO2eq/MJ未満の入札ゾーンで、再エネの電力購入契約(PPA)を結び、時間と地理の対応を満たす場合。(3) 再エネ発電設備が系統の指示で出力を下げた(再給電)時間に、電解がその分の必要を減らした場合。(4) 上記以外で、追加性・時間・地理の3条件を満たす場合[参考資料7]。
  • (3)は、系統の出力制御に直接つながる条文です。再エネ発電設備が下方に再給電されたインバランス精算期間(imbalance settlement period)に消費された電力は、送電系統運用者の証拠により、条件を満たせば完全に再生可能と数えられます[参考資料7]。
  • 追加性(第5条):再エネ発電設備が、燃料製造設備の運転開始の36か月前より後に運転を始めていること、運転支援や投資支援を受けていないこと。時間の対応(第6条):2029年12月31日までは同じ暦月、2030年1月1日からは同じ1時間(加盟国は届出により2027年7月1日から適用できる)。ただし、前日市場の価格が20 EUR/MWh以下、またはCO2排出枠価格の0.36倍未満の1時間は、常に時間の対応を満たすとされます。地理の対応(第7条):同じ入札ゾーン、または価格が同等以上の相互接続された入札ゾーン、または相互接続された洋上の入札ゾーン[参考資料7]。
  • 経過措置(第11条):2028年1月1日より前に運転を始める設備は、追加性の2条件を2038年1月1日まで適用しません。委員会は、時間の対応の影響を含め、2028年7月1日までに欧州議会と理事会に報告します(第10条)[参考資料7]。
  • 状態の確認:EUR-Lexは、この規則に「改正があり、最新の統合版は2024年6月10日」と表示しています(2026年10月に確認)[参考資料7]。IEAは、ドイツなどがRFNBO規則の緩和を求めていると報告しています[参考資料2]。2026年10月時点で、規則の見直しの提案・採択があるかどうかは、本稿は確認できませんでした。

米国

  • 45V(クリーン水素の製造税額控除)の最終規則(財務省・内国歳入庁、TD 10023、90 FR 2224、2025年1月10日公表・同日発効):電力を特定の発電設備から調達する場合、エネルギー属性証書(EAC)を購入して償却し、追加性(incrementality)、時間の対応(temporal matching)、供給可能性(deliverability)の3条件を満たす必要があります事実[参考資料8]。
  • 追加性:発電設備の運転開始が、水素設備の稼働開始の36か月前以降。時間の対応:同じ1時間の発電(2030年1月1日より前の発電分は同じ暦年で足りる移行措置)。蓄電を使う場合は、同じ1時間に放電した電力であることなど。供給可能性:発電設備と水素設備が同じ区域にあること(接続する調整主体で判定。区域は、DOEの全国送電必要性調査の区分にもとづく)[参考資料8]。
  • 税額控除の期限が短くなりました。2025年7月4日に成立した法律(公法119-21)の第70511条は、45V(c)(3)(C)の「2033年1月1日」を「2028年1月1日」に改めました。控除を受けるには、2028年1月1日より前に建設を始める必要があります事実[参考資料9]。同法の第70512条は、風力・太陽光の発電設備に対する別の税額控除(45Y)についても、2027年12月31日より後に運転を始める設備には適用しないと定めています(条文の本文を確認したもので、例外規定や施行の細部は読んでいません)。
  • 状態の確認:2026年10月時点で、財務省による45V規則のその後の改正や、運用の変更の有無は、本稿は確認できませんでした。
電力の調達ルール:EUと米国の「3つの柱」と、日本(本稿が確認できた範囲) EU(委任規則 2023/1184) 米国(財務省規則 45V) 日本(法・省令) 追加性 発電設備が水素設備の運転開始から36か月 以内、運転支援を受けていない 発電設備の運転開始が、水素設備の稼働開始 の36か月前以降 電力の追加性の規定は確認できなかった 時間の対応 2029年末まで同じ暦月、2030年1月 から同じ1時間 同じ1時間(2030年より前の発電分は同 じ暦年) 電力の時間対応の規定は確認できなかった 地理の対応 同じ入札ゾーンなど(相互接続や洋上ゾーン の例外あり) 同じ系統区域(接続する調整主体で判定) 電力の地理対応の規定は確認できなかった ※ 日本は、低炭素水素等の要件を製造に伴うCO2排出量(水素1 kgあたり3.4 kg以下)で定めている(省令第3条)。電力の数え方の細則は本稿では確認していない。 ※ EUと米国の規則は、それぞれ別の目的(EUは再生可能な非生物起源燃料、米国は税額控除)の規則で、そのまま比べられません。
図7 概念図(ベクター作図)。電力の調達ルールの3本柱の比較。EUは委任規則2023/1184[参考資料7]、米国は財務省規則(45V)[参考資料8]、日本は法と省令[参考資料5・6]。EUと米国の規則は目的が異なるため、そのまま比べられません。日本の欄は「確認できなかった」であり、規則が存在しないことを意味しません。

8. 素材技術者の視点②:電力側の要求を、材料の評価に翻訳する

素材技術者の視点②:制度と系統の要求は、材料に「運転パターン」として届く

制度が材料に及ぼす影響は、運転パターンを通じて現れます(本記事による解説)。

  • EUの時間の対応(2030年から1時間単位)や米国の1時間単位の対応は、再エネの発電に合わせて電解槽を動かす圧力になります。EUの規則自身が、時間の対応の実施は、測定の技術的な障壁、電解槽の設計への難しい影響、水素の貯蔵・輸送のインフラの不足によって短期には妨げられる、と前文で述べています事実[参考資料7]。米国の最終規則も、水素製造設備が技術的・経済的な理由で素早く出力を上げ下げする能力が限られるという意見に触れています[参考資料8]。
  • 出力制御の時間に合わせて動かす(EUの再給電の道)と、起動・停止や負荷の変化が増えます。評価する材料は、起動停止の回数、負荷変化の速さ、低負荷・待機の時間を含む試験で見る必要があります(第5章)。
  • 専用の再エネ(オフグリッド)や太陽光だけの運転は、稼働率が低く、昼間に集中します。『水素の製造コスト』編が示したとおり、このとき設備費の割合が大きくなり、「安いが劣化の速い材料」も選択肢になりえます。一方、電力を高く買う条件では、効率が優先されます。

つまり、「電解槽の材料に求める性能」は、電力をどこから、どの時間に調達するかという制度・系統の条件で変わります。材料の評価では、定常運転の寿命だけでなく、想定する電力のつなぎ方(図6)に応じた運転パターンでの劣化を確認することが必要です。

9. 限界と、確認できなかったこと

(1) 出力制御の数値は、一般送配電事業者の公表にもとづく

表1・図4の数値は、経済産業省・資源エネルギー庁の資料に記載された、各エリアの一般送配電事業者の公表値です。全国の出力制御量の推移のグラフ(同資料の第4〜6ページ)の数値は、本稿では確認できませんでした。2025年度の実績も確認していません。

(2) 本稿の計算は、単純化している

第4章の計算は、制御された電力を、稼働率を仮定して水電解で使う単純な計算です。制御が起きる時間の分布、電解槽の最小負荷、水素の貯蔵・需要側の制約、系統の接続費用は含みません。

(3) 制度は変わりうる

  • EUの委任規則2023/1184は、2028年7月1日までの報告が予定され、緩和を求める声も報告されています。2026年10月時点の見直しの状況は確認できませんでした。
  • 米国の45Vは、2025年7月の法律で期限が短縮されました。財務省のその後の規則の変更は確認できませんでした。
  • 日本は、水素社会推進法の価格差支援の個別の認定事業や、電力の排出量の数え方の細則を、本稿は確認していません。

(4) 小型モジュール炉と水素

小型モジュール炉(SMR)で水素をつくる商用の実績は、本稿では確認できませんでした。DOEが伝える原子力発電所での水素製造は既設炉での実証で、小型炉ではありません[参考資料10]。

(5) 他の編との役割分担

水電解の方式ごとの材料・構造は、本シリーズの『PEM水電解』『アルカリ水電解』『AEM水電解』『固体酸化物電解セル』『水電解スタックと材料』の各編で、水素の色分けと炭素強度は『水素の色分けと炭素強度』編で、コストの式は『水素の製造コスト』編で扱います。

この記事のまとめ
  • 水電解は、応答が速く、消費をゼロまで下げられる負荷で、調整力や出力制御の抑制に使えるとされます。IRENAは、電解は短い変動より季節性への対応のほうが適すると述べています事実
  • 日本の出力制御は、九州で2024年度4.8%(7.5億 kWh)。2026年3月に東京でも初めて実施され、全エリアに広がりました事実
  • 制御電力7.5億 kWhを使い切るには、稼働率10%で約856 MWの電解槽が要り、電力が無料でも水素は約18 US$/kgです本稿の計算
  • EUは、再エネの出力制御(再給電)の時間の電力を完全に再生可能と数える道を定め、2030年から1時間単位の対応を求めます。米国の45Vも2030年から1時間単位で、2028年1月1日より前に建設を始める必要があります事実
  • 電力のつなぎ方と制度は、材料に運転パターンとして届きます。変動運転の評価が材料の課題です

10. 評価・標準の読み方

初めて読むときは、「どの数字が大きいか」より先に、次の順番で比較の条件を揃えてください。以下は本記事の編集上の確認手順で、規格が定める合格値や試験条件ではありません。

① 何を測ったか
需給調整量、応答時間、出力抑制、供給信頼度。単位と、材料・部品・完成システムのどこを測った値かを確認します。
② どの条件か
対象地域、時間刻み、天候年、送電制約、需要予測。条件が異なる結果は、まず別の結果として読みます。
③ 比較で間違えやすい点
年間の発電量が等しいことを、毎時間の電力供給が一致することと混同しない
④ 規格の役割は何か
規格番号・名称・発行年・適用範囲を発行機関の資料で確認します。試験方法、安全性、相互接続、管理体制のどれを扱う規格かを分けて読みます。規格名の記載だけで、試験実施・適合・認証まで済んでいるとは判断しません。

比較を始めるためのメモ:対象/単位/測定条件/試料数とばらつき/比較対象/規格の版/確認できない点を、ひとまとまりで残しましょう。公開概要しか確認できない規格の数値条件や合格基準は、推測して補いません。

11. 用語集

出力制御(出力抑制)
需給の制約で、再エネ発電設備の出力を抑えること。軽負荷期の春・秋に起きやすい。
最小需要日
需要に占める変動再エネの割合が最も大きくなる日(春の休日など)。
調整力
需要と供給の差を埋めるために、出力や消費を変えられる能力。
揚水
余った電力で水を上の池に汲み上げ、後で発電に使う蓄電の方式。
連系線
電力系統のエリア間をつなぐ送電線。
再給電(redispatch)
系統の混雑や出力の過剰を避けるため、系統運用者の指示で発電設備の出力を調整すること。
オフグリッド
送電網につながず、専用の発電設備の電力で運転する構成。
追加性(additionality)
水素製造のために新しく建設された再エネの電力を使う、という条件。
EAC(エネルギー属性証書)
発電の環境価値を電力と切り離して証明する証書。米国の45Vで使われる。
RFNBO
再生可能な非生物起源の燃料。EUの制度上の呼び名で、再エネ由来の水素などを指す。
PPA
電力購入契約。再エネ発電事業者から電力を買う長期の契約。
入札ゾーン
EUの卸電力市場で、価格が同じになる地理的な単位。
低炭素水素等
日本の水素社会推進法で、製造に伴うCO2排出量が省令の基準以下の水素等(水素は1 kgあたり3.4 kg以下)。
JOGMEC
エネルギー・金属鉱物資源機構。水素社会推進法の助成金を交付する。

12. 参考資料(一次情報)

  1. IRENA"Green hydrogen cost reduction: Scaling up electrolysers to meet the 1.5°C climate goal"(2020年。p.43、p.49〜50、表6〔p.65〜66〕) — irena.org
  2. IEA"Global Hydrogen Review 2025"(印刷ページ:p.16・p.49=オフグリッドの500 MW、p.74=水素・アンモニアの系統の柔軟性、p.99=設置済み約2 GW、p.215=日本の制度、p.218=米国45V、p.250=原子力の電力コスト) — iea.org
  3. 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(内閣官房ホームページ掲載)「水素基本戦略」令和5年6月6日(PDF) — cas.go.jp
  4. 経済産業省・資源エネルギー庁「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」次世代電力系統ワーキンググループ 資料1、2026年3月16日(PDF) — meti.go.jp
  5. e-Gov法令検索「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律」令和6年法律第37号(2024年5月24日公布、2024年10月23日施行) — laws.e-gov.go.jp
  6. e-Gov法令検索同法施行規則(令和6年経済産業省令第69号、2024年10月23日) — laws.e-gov.go.jp
  7. 欧州委員会(EUR-Lex)Commission Delegated Regulation (EU) 2023/1184 of 10 February 2023 supplementing Directive (EU) 2018/2001(OJ L 157、2023年6月20日) — eur-lex.europa.eu
  8. 米国財務省・内国歳入庁(Federal Register)"Credit for Production of Clean Hydrogen and Energy Credit", Final Rule, TD 10023, 90 FR 2224(2025年1月10日) — federalregister.gov
  9. 米国議会(GovInfo)Public Law 119-21(H.R. 1、2025年7月4日)第70511条・第70512条 — govinfo.gov
  10. 米国エネルギー省(DOE)原子力局"Nine Mile Point Begins Clean Hydrogen Production"(2023年3月7日) — energy.gov
  11. 米国エネルギー省(DOE)"Technical Targets for Proton Exchange Membrane Electrolysis" — energy.gov

13. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
IRENAの記述:電解槽の柔軟性の5つの評価軸、約40 kWの小型システムでミリ秒で応答・秒で落ち着く(Eichmanらの引用)、消費ゼロを時間の制限なく保てる、整流器で決まる1秒未満の増減、5%の部分負荷と効率損失、PEM冷間起動5分未満(本文)、表6の負荷範囲(PEM 5〜120%、アルカリ15〜100%、AEM 5〜100%、SOEC 30〜125%)と冷間起動(PEM・AEM 20分未満、アルカリ50分未満、SOEC 600分超)、4つの系統サービスと限界、季節性への柔軟性、アルカリのピンホールと酸素側の水素2%、SOEC約20,000時間(一定の電力)と熱サイクル、調整力市場への参加が膜の劣化を速める可能性、太陽光直結の年間2,000時間未満IRENA Green hydrogen cost reduction (2020) 出典1 https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2020/Dec/IRENA_Green_hydrogen_cost_2020.pdf事実
IEAの記述:2025年に500 MWのオフグリッドの水電解(アンモニア年30万トン規模のプラントの第2期)が稼働して世界最大、NEOMは2027年の稼働までに2 GW超、設置済みの水電解は2024年末で約2 GW、水素・アンモニアの系統の柔軟性、東南アジアの原子力電力は2,500 US$/kWでも電力費だけで2.8〜4.5 US$/kg、SMRの国際規則はない、日本の水素社会推進法の差額決済契約(公募2024年11月〜2025年3月、2030年までに運転開始)、ドイツなどがRFNBO規則の緩和を求めている、45Vの概要IEA Global Hydrogen Review 2025 出典2 https://www.iea.org/reports/global-hydrogen-review-2025事実 未確定/将来
日本の水素基本戦略:余剰再エネを水素に変換・貯蔵する調整力の役割、余剰電力による水素製造が調整力不足や系統混雑の解決策の一つになりうること、安価な余剰再エネの調達と稼働率向上の重要性、再エネが出力制御される局面での余剰電力の価格の安さ、国内製造は輸入より高いとの見方水素基本戦略(令和5年6月6日) 出典3 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/saisei_energy/pdf/hydrogen_basic_strategy_kaitei.pdf事実
経産省・資源エネルギー庁の資料:出力制御エリアの全国への拡大、東京エリアで2026年3月1日に初めて実施、軽負荷期の春・秋に発生しやすいこと、設備容量は増えても制御量は毎年増えるとは限らないこと、エリア別の出力制御率と制御電力量(2022〜2024年度)、九州の2018〜2024年度、2025年度の見込み、九州の最小需要日(2025年5月4日12:00〜12:30)の需給(太陽光968、需要653、再エネ出力制御509、揚水189、連系線134など、万kW)経産省・資源エネルギー庁 次世代電力系統WG資料1(2026年3月16日) 出典4 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/008_01_00.pdf事実
水素社会推進法:令和6年法律第37号、2024年5月24日公布・2024年10月23日施行、低炭素水素等供給等事業計画の認定(第7条)、JOGMECの助成金(第10条)水素社会推進法(e-Gov法令検索) 出典5 https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000037事実
同法施行規則:低炭素水素等の要件が水素1 kgあたり3.4 kg-CO2以下(第3条)、助成を受ける場合の供給の継続期間が10年(第4条)水素社会推進法施行規則(e-Gov法令検索) 出典6 https://laws.e-gov.go.jp/law/506M60000400069事実
EU委任規則2023/1184:2023年2月10日採択、2023年6月20日官報掲載、20日後に発効、直接接続の条件(第3条)、系統電力を再生可能と数える4つの道(第4条:再エネ割合90%超、排出強度18 gCO2eq/MJ未満とPPA、再給電、追加性・時間・地理)、追加性36か月(第5条)、時間の対応(第6条:2029年末まで暦月、2030年1月から1時間、20 EUR/MWh以下・排出枠価格の0.36倍未満の例外)、地理の対応(第7条)、2028年7月1日までの報告(第10条)、経過措置(第11条)、EUR-Lexの「改正あり、統合版2024年6月10日」の表示EU委任規則2023/1184(EUR-Lex) 出典7 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg_del/2023/1184/oj/eng事実
45V最終規則(TD 10023、90 FR 2224、2025年1月10日公表・同日発効):EACの3条件(追加性36か月、同じ1時間・2030年前は同じ暦年の移行措置、同じ区域の供給可能性)、蓄電の扱い、水素製造設備が素早く出力を上下する能力が限られるという意見への言及45V最終規則(Federal Register) 出典8 https://www.federalregister.gov/documents/2025/01/10/2024-31513/credit-for-production-of-clean-hydrogen-and-energy-credit事実
公法119-21 第70511条:45V(c)(3)(C)の「2033年1月1日」を「2028年1月1日」に改正。第70512条:45Yの風力・太陽光の設備は2027年12月31日より後に運転を始めたものに適用しない(本文のみ確認)Public Law 119-21(GovInfo) 出典9 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-119publ21/html/PLAW-119publ21.htm事実
DOE:Nine Mile Point原子力発電所で2023年に低温電解の水素製造設備が運転開始、DOEと企業の1,450万ドルの折半、発電所の運転用の水素を供給、商用原子力発電所での水素製造の実証4件の1つDOE Nine Mile Point Begins Clean Hydrogen Production 出典10 https://www.energy.gov/ne/articles/nine-mile-point-begins-clean-hydrogen-production事実
DOEのPEM目標表:劣化率の評価は動的運転や、用途が要求する場合は起動・停止も含めて行う必要があるという注記DOE Technical Targets for PEM Electrolysis 出典11 https://www.energy.gov/eere/fuelcells/technical-targets-proton-exchange-membrane-electrolysis事実
表1の2024年度の制御量の合計(東京を除き約16.0億 kWh)、7.5億 kWh→水素約14,200 t、表2・図5(稼働率5〜30%での必要容量と水素のコスト)、509万 kW=5.09 GWと世界の設置量約2 GWの比較、稼働率10%で約856 MW、EUの発効日(2023年7月10日)本稿の計算。比消費電力52.9 kWh/kg、設備費2,300 US$/kW、割引率8%、寿命20年、O&M 3%/年、スタック50,000 h・交換費20%は『水素の製造コスト』編の基準ケース。稼働率は本稿の仮定本稿の計算
余剰の行き先の整理(図3)、水電解が調整力・季節性の柔軟性としてどう位置づくかの整理、電力のつなぎ方の3分類(図6)、制度が運転パターンとして材料に届くという読み取り、低負荷での不純物濃度の推測、日本の欄を「確認できなかった」とした整理公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
全国の出力制御量の推移の数値、2025年度の実績、小型モジュール炉での水素製造の商用実績、2026年10月時点のEU規則・米国45Vの改正・見直しの状況、日本の電力の排出量の数え方の細則、価格差支援の個別の認定事業本稿の調査範囲では公開された一次情報で確認できなかった(または扱わなかった)ため記載していない解説
図3・図6が説明用の概念図で、図2・図4・図5・図7がそれぞれ出典の値・本稿の計算・制度の条文にもとづく作図であること、図1がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月/出典は一次情報(IRENA・IEAの報告書、内閣官房掲載の水素基本戦略、経済産業省・資源エネルギー庁の資料、e-Gov法令、EUR-Lex、米国のFederal Register・公法、DOEの公表資料)に限定しています。市場調査会社の推計は使っていません。制度の確認日は2026年10月です。 材料や系統の観点での読み取りは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 全国の出力制御量の推移の数値、2025年度の実績、小型モジュール炉での水素製造の商用実績、EU規則・米国45Vのその後の改正の有無、日本の電力排出量の数え方の細則は、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事の計算は式と明示した仮定から算出したもので、特定の事業や設備の予測ではありません。 図はすべて説明用の概念図、出典の値の作図、または本稿の計算図です。図1はAI生成イメージであり、実際の施設・装置を示すものではありません。