COMPANY PROFILE / 次世代蓄電
LGエナジーソリューション
― 車載の電池を北米・欧州・韓国でつくりながら、北米のLFPセルで蓄電へ生産能力を振り替えている電池メーカー
LGエナジーソリューション(LGES)は、電気自動車(EV)と蓄電システム(ESS)、IT機器向けのリチウムイオン電池をつくる韓国の電池メーカーです。2025年の売上は23.7兆ウォン(北米の生産インセンティブを含めない従来の表示)で、2026年上半期は14.1兆ウォン(インセンティブを含む新しい表示)。会社はESSが2026年上半期の売上の20%台後半を占め、売上は前年同期の4.6倍になったと説明します。北米では、EV向けの生産能力をESS向けのLFP(リン酸鉄リチウム)セルに振り替え、2026年末に世界のESS生産能力を60GWh超にする目標です。一方で、米国の生産インセンティブを除くと営業損益は赤字という構造があり、政策の変更に左右されます。本稿は、LGESの車載・蓄電用のセルに絞り、何を作り、どこに投資し、誰と組み、どこまでが実績でどこからが計画かを、会社の決算説明資料・プレスリリース・ESGレポートと、米国の法律・内国歳入庁の公式資料の範囲で整理します。全固体電池は本シリーズの別分野で扱うため、ここでは取り上げません。投資の助言ではありません。
- 30秒でわかるLGエナジーソリューションと、次世代蓄電での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(電池・蓄電に関わる範囲を中心に)
- 次世代蓄電にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
- 次世代蓄電分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるLGエナジーソリューションと、次世代蓄電での立ち位置
蓄電システム(従)NCM系(パウチ・円筒形)とLFP(ESS用)、LMR・ナトリウムは開発段階。システム統合は子会社 Vertech
LGESは、2026年1月以降、決算の表示を変えています。以前は、米国の生産インセンティブ(会社の表記は「北米の生産インセンティブ」)を営業利益の側で扱い、売上には含めませんでしたが、2026年から売上に含める表示に変更し、比較のため過去の数値も組み替えています 事実。2025年の売上は、従来の表示で23.7兆ウォン、組替後で25.3兆ウォンです。2つの表示を混ぜて読むと、増減や利益率を誤るので、本稿は表示を明記します。また、会社の説明資料に基づく本稿の計算では、インセンティブを除いた営業損益は2025年も2026年上半期も赤字です(第4章)。LGESは「電池を売って稼ぐ会社」であると同時に、米国の制度に支えられて利益が出る会社でもあります。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:正式名称はLG Energy Solution, Ltd.(日本語表記はLGエナジーソリューション、略称LGES)です。LG化学(LG Chem)は元の親会社で、別の法人です。Ultium Cells(GMとの合弁)、L-H Battery(Hondaとの合弁)、HL-GA Battery(Hyundaiとの合弁)、NextStar Energy(カナダ。Stellantisとの合弁から完全子会社化へ)、LG Energy Solution Vertech(米国の蓄電システム部門)は、それぞれ別の会社名・事業名です。ロゴ画像は公式ニュースルームが公開しているものを取得しました。
公式サイト:https://news.lgensol.com/3. 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
主たる類型はセル・材料メーカーです。会社の資料から、製品の中心を化学系・形状ごとに整理します 事実。
| 領域 | 主な用途 | 会社の資料で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 円筒形(46シリーズ) | EV、小型モビリティ、ロボット | 4680・4695・46100・46110・46120の品揃え(2170比のエネルギー量は5〜8倍と図示)。梧倉で量産を開始(2025年)、アリゾナは2026年末の量産開始が目標。受注残は300GWh超(2025年末)から440GWh超(2026年4月末) | 事実(会社の説明) |
| パウチ形(NCM系・中ニッケル) | EV | 北米・欧州で生産。中・低価格帯の製品が2026年上半期のEVパウチの販売数量の30%台半ばを超えた(会社の説明) | 事実(会社の説明) |
| LFP(パウチ・角形) | ESS(系統・データセンター・商業) | 北米でLFPセルの生産を開始。パウチに加え角形へ形状を広げる計画。2026年末までに世界のESS生産能力を60GWh超(うち北米80%超)にする目標、ESSの受注残は140GWh(2025年末) | 事実(会社の説明)/未確定/将来 |
| LMR(リチウムマンガンリッチ) | 将来のEV | ソウル大学との共同研究で、大型セル(40Ah級)が883サイクル後も初期エネルギーの92.2%を維持と発表(研究の条件下の値)。GMと角形LMRセルの商業化を計画(2025年) | 事実/未確定/将来 |
| ナトリウムイオン | ESS | 製品開発と生産ラインの準備を進め、ESSの顧客へのサンプル出荷を2027年に行うと説明(会社の計画) | 未確定/将来 |
出典:出典1 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典3 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典16 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5222/
4. 会社の規模(電池・蓄電に関わる範囲を中心に)
LGESは電池専業なので、会社全体の数字がそのまま電池事業の規模です。北米の生産インセンティブの扱いと、表示の変更に注意して読みます 事実。金額はウォンのままで、為替換算はしていません。
| 指標(十億ウォン) | 2025年 | 2026年1〜3月 | 2026年4〜6月 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 売上(新表示:インセンティブ込み) | 25,319 | 6,555 | 7,560 | 2026年上半期は14,115(前年同期は12,779)。2025年は組替後 |
| 売上(従来表示) | 23,671 | - | - | 会社は「23.7兆ウォン」と開示。千億単位の端数は本稿の差引(25,319-1,648) |
| 営業利益 | 1,346 | -208 | 113 | インセンティブ込み。2026年上半期の合計は-95(本稿の計算) |
| 北米の生産インセンティブ | 1,648 | 190 | 241 | 2025年は四半期の合計(458・491・366・333、本稿の計算)。2026年上半期は431(本稿の計算) |
| インセンティブを除く営業損益 | -302 | -398 | -128 | 営業利益からインセンティブを引いた本稿の計算(2026年上半期は-526)。会社のグラフも2025年は-1.3% |
| 資本的支出 | 10,417 | 1,648 | 1,041 | 2026年は前年比40%超の削減を計画(会社の目標) |
| 財務の状況(2026年6月末) | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 総資産/負債/自己資本 | 77,878 / 47,591 / 30,287 | 十億ウォン |
| 有利子負債/現金等 | 29,123 / 7,170 | 十億ウォン。現金等は金融機関への預入を含む |
| 負債比率/債務比率/純債務比率 | 157% / 96% / 72% | 2025年末は129% / 77% / 64% |
出典:出典1 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典2 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_1Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典3 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典4 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5130/ 出典5 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4550/
決算説明資料は「外部監査の前の情報」と明記しています。また、会社は表示を2026年から変えたため、2025年の数値は表示により2つある点に注意してください。インセンティブを除く営業損益は本稿が会社の数値から計算したもので、会社が「営業損失」として開示した数値ではありません 本稿の計算。会社の資料に「北米の生産インセンティブ」の法的根拠は明記されていませんが、本稿は米国の先進製造生産税額控除(内国歳入法45X条、第11章)に当たるものと読みます 推測。
5. 次世代蓄電にかけているリソース
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員32,760人(2025年12月)、うち約20,000人(約63%)が海外拠点。研究開発人員は5,073人(2025年、前年4,527人)。研究開発拠点は大田・果川・麻谷(韓国)ほか、米国・ポーランド・中国。特許は10万件超(会社の記載、DART) | 事実 |
| 金 | 研究開発費は2025年に1.3275兆ウォン(+22%、売上の5.6%)。資本的支出は2025年に10.4兆ウォン、2026年上半期に2.7兆ウォン(約-40%)。アリゾナは当初7.2兆ウォン(55億米ドル)の計画。北米の生産インセンティブは2025年に1,648十億ウォン | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 合弁:Ultium Cells(GM、オハイオ・テネシー)、L-H Battery(Honda、オハイオ)、HL-GA Battery(Hyundai、ジョージア)、PT. HLI Green Power(インドネシア)。買収:ランシングの工場を完全保有に(2025年)、NextStar Energyの49%をStellantisから取得すると発表(2026年2月、完了は承認等が条件)。売却:北米の合弁施設の建物を売却(2025年、非中核資産の整理)。リサイクル合弁:Huayou(2023年)、Derichebourg(2025年4月)、トヨタ通商(2025年6月)。資源:Liontown・WesCEF・Compass Minerals・Green Technology Metals(2,000万米ドルの戦略出資と購入の条件書)・Smackover Lithium(2026年8月)・Elevra(2026年10月)などと供給契約 | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金 | 共同研究センター(FRL)をカリフォルニア大学サンディエゴ校・KAIST・ミュンスター大学(MEET)などと運営。電池研究コンテスト(BIC)の対象にハーバード大・カリフォルニア大(サンディエゴ・バークレー)・ミシガン大・アリゾナ州立大・テキサス大オースティン校・GISTなど。ソウル大学とLMR電池を共同研究(Nature Communications掲載、2026年9月)。公的資金:北米の生産インセンティブ(米国の制度。第11章) | 事実 |
出典:出典1 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典3 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典5 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4550/ 出典7 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4601/ 出典15 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/3992/ 出典16 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5222/ 出典17 https://news.lgensol.com/company-overview/fast-facts/ 出典18 https://www.lgensol.com/upload/file/download/LG_Energy_Solution_2025_ESG_Report_EN%5B3%5D.pdf 出典22 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/
主要な製品・設備の状況
| 製品/設備 | 場所・内容 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| ランシング(ミシガン) | LFPのESS用セル、トヨタ向けNMCセル(2027年型Highlander EV) | フルスケールで年産35GWh超、従業員1,700人を見込む | 生産開始(2026年8月18日)。フルスケールは目標 未確定/将来。2026年4月の資料は「稼働中」と記載 | 2026年4〜8月 | 2・6 |
| ホランド(ミシガン) | LFPパウチ(ESS)、パウチ(EV) | 個別の能力は記載なし | 稼働 | 2026年4月 | 2 |
| ウィンザー(オンタリオ)NextStar | LFPパウチ(ESS)ほか。累計100万セル超(2026年3月) | 施設面積4.23百万平方フィート、投資は50億カナダドル超、従業員1,300人 | 稼働(2025年11月生産開始、2026年3月5日に開所式)。Stellantisの49%の取得は発表済みで、完了は承認等が条件 | 2025年11月〜2026年3月 | 2・7・8 |
| Ultium Cells(GM合弁)テネシー | LFPパウチ(ESS)。第2期 | 記載なし | 2026年上半期にESS用セルの生産を開始 | 2026年上半期 | 2・4 |
| L-H Battery(Honda合弁)オハイオ | LFPパウチ(ESS)。発表時はHonda向けのEV用セル | 発表時の計画は総投資44億米ドル・年産約40GWh(2022年) | 2026年上半期にESS用セルの生産を開始。EV用の当初計画からの変更 | 2022年8月〜2026年上半期 | 2・4・11 |
| HL-GA Battery(Hyundai合弁)ジョージア | EV用セル。50対50 | 発表時の計画は年産30GWh・投資43億米ドル超(2023年) | ESGレポートの事業所一覧(2026年6月基準)は「稼働」と記載。生産開始日と現在の能力は確認できなかった | 2023年5月〜2026年6月 | 12・18 |
| アリゾナ(クイーンクリーク) | 円筒形(46シリーズ)とLFPのESS用の複合施設 | 当初計画は円筒形27GWh・LFPパウチ16GWh(計43GWh)、投資7.2兆ウォン | 建設中。円筒形は2025年4月に建設が約半分、2026年末の量産開始が目標 未確定/将来 | 2023年3月〜2026年7月 | 1・3・9・10 |
| 梧倉(韓国) | 46シリーズ円筒形 | 個別の能力は記載なし | 生産開始(2025年) | 2025 | 3 |
| リサイクル前処理(ノースカロライナ) | トヨタ通商との合弁(Green Metals Battery Innovations) | 年13,500トンのスクラップ処理を目指す | 2026年に稼働予定(計画) 未確定/将来 | 2025年6月 | 15 |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2020年12月 | LG化学の電池事業を分割してLGエナジーソリューションを設立 | 電池専業としての出発点 |
| 2022年 | Stellantisとカナダに合弁(NextStar)、Hondaと米国に合弁を発表(8月)。韓国取引所に上場 | 自動車メーカーとの合弁で北米生産を拡大 |
| 2023年3月24日 | アリゾナに7.2兆ウォンの複合施設を発表(円筒形とESS用LFP) | 単独工場としての北米最大の投資と説明 |
| 2023年5月26日 | Hyundai Motor Groupとジョージアで合弁(50対50)を発表 | |
| 2025年 | ランシングの工場を完全保有に。北米のEV向け能力をESS向けに振り替え、非中核の資産を売却。梧倉で46シリーズの生産を開始 | EV需要の減速への対応 |
| 2025年6月19日 | トヨタ通商と米国で電池リサイクルの合弁を設立 | 北米で初のリサイクル合弁 |
| 2026年1月29日 | 2025年の決算と2026年の戦略を発表。表示を変更(インセンティブを売上に含める) | ESSへの重点化と設備投資の抑制 |
| 2026年2月6日 | NextStar Energyの完全子会社化を発表(Stellantisが49%を売却)。3月5日に開所式 | 合弁の整理とESSへの活用 |
| 2026年上半期 | Ultium Cellsテネシー、L-H BatteryでESS用セルの生産を開始 | EV向けに作った拠点をESSに転用 |
| 2026年8月18日 | ランシングの新工場で生産を開始 | ESS用LFPとトヨタ向けNMC |
| 2026年10月8日 | Elevraからカナダ産のスポジュメン精鉱を複数年で調達する契約を発表 | 原料調達の確保 |
出典:出典3 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典5 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4550/ 出典7 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4601/ 出典8 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4710/ 出典9 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/1613/ 出典15 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/3992/ 出典17 https://news.lgensol.com/company-overview/fast-facts/
7. 今後の計画
営業利益率は1桁台半ば2026年1月の会社の見通し(インセンティブ込み)。2026年上半期の営業利益は-95十億ウォン
上の内容は、すべて会社の目標・見通し・計画です 未確定/将来。実績は第4・5章の決算数値と、稼働開始が公表された拠点です。
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
化学系・形状別の売上(ESSは「20%台後半」という割合のみ)/各拠点の実際の生産能力/Hyundai合弁(ジョージア)の生産開始日/NextStar完全子会社化の完了日/関税・輸出管理が売上に与えた影響額/46シリーズの顧客名別の数量。
8. この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| EV需要の減速を受け、EV向けの生産能力をESS向けに振り替えている | 2025年の決算:EVと ESSの間の能力の再配分で新規投資を減らし、遊休ラインを活用。2026年上半期にUltium Cellsテネシー、L-H BatteryでESS用セルの生産を開始 | 事実 |
| EVの差別化は46シリーズの円筒形に置く | 受注残は300GWh超(2025年末)から440GWh超(2026年4月末)に拡大。アリゾナの円筒形ラインを準備 | 事実 |
| 北米での現地生産とシステム統合で、米国の調達要件に合わせる | 会社は、北米の最大級の現地能力を基に「非PFE」(禁止された外国事業体に当たらない)の要件に応えると説明し、Vertechの蓄電契約(DTE 6GWh、Qcells 5GWh)でミシガン製セルを強調 | 事実/推測 |
| 現在の利益は米国のインセンティブに強く依存している | インセンティブを除くと、営業損益は2025年も2026年上半期も赤字(本稿の計算、第4章)。インセンティブの額はEVセルの数量の減少で2025年第1四半期の458から2026年第1四半期の190に減少 | 本稿の計算 推測 |
| 次世代はLMRとナトリウムの2本立てで備える | LMRはGMとの商業化計画とソウル大学の共同研究、ナトリウムはESS顧客へのサンプル出荷を2027年に計画 | 事実/未確定/将来 |
「現在の利益は米国のインセンティブに強く依存している」という読みの根拠は、会社の数値の差し引きです。2026年4〜6月の営業利益は1,133億ウォン(113)でしたが、同じ期のインセンティブは2,410億ウォン(241)です 事実。差し引くと、インセンティブを除いた営業損益は約-128(十億ウォン)で、2026年1〜3月も-398(同)、2025年通期も-302(同)です 本稿の計算。つまりLGESは、北米でESS用セルの生産が増えるにつれてインセンティブが戻り、黒字化したと読めます。ただし、インセンティブの根拠となる米国の制度(第11章)は、2029年12月31日より後の販売分から段階的に縮小するとIRAが定めており、また「禁止された外国事業体」の制限が2025年7月の法律で加わっています。制度が変われば損益の構造が変わるため、会社が収益力を示す指標は、インセンティブを含むものと除くものを分けて見る必要があります 推測 未確定/将来。
9. 次世代蓄電分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
LGESの製品は、セル(パウチ・円筒形・角形)と、システム統合(Vertech)にまたがります 事実。性能値はメーカー公称または研究条件の値で、条件が異なる値は比べません。
| 製品 | 資料に書かれている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 46シリーズ円筒形 | 4680〜46120。熱安全の規制の強化や、セルを車体構造に直接取り付ける方式(CTx)の広がりで需要が増えると説明。10分間の急速充電の仕様の確保を目指す | 1・2 |
| LFPのESS用セル | 大容量のLFPセル(パウチ、今後は角形)。2026年第1四半期に「次世代の大容量LFP」を供給し、調達コスト(ランデッドコスト)が10%超改善と説明(会社の説明、比較の基準は記載なし) | 2 |
| システム統合(Vertech) | ハードとソフトを組み合わせたターンキーのESS。DTE Energyと8案件・1.5GW(6GWh)、Qcellsと5GWh(2028〜2030年)、データセンター向けのUPS・BBUも手がける | 13・14・1 |
| 高出力のタブレス2170 | 2026年に本格量産。BBU(データセンター向けのバックアップ電源)やロボットへ用途を広げる | 1 |
| LMRとナトリウム(開発) | LMRはガス発生の抑制が課題で、充電上限電圧を4.6Vから4.3Vに下げると酸化酸素の還元が86%から97%になったと報告(研究)。ナトリウムは2027年にサンプル出荷を計画 | 1・16 |
出典:出典1 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典2 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_1Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典13 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4978/ 出典14 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4563/ 出典16 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5222/
会社の資料から、素材が効く場所を読み取れます。(1) NCMとLFPの使い分け:EVの高エネルギー向けにニッケル系(NCM)、ESSには安価で安全性に有利とされるLFPを使います 事実。LFPはニッケル・コバルトを使わず、ESSの寿命やコストの面で適します(一般的な性質)。(2) 46シリーズの円筒形:会社は、熱安全性の高さと、セルを車体構造に直接組み込みやすい点を挙げます 事実。大型の円筒形では、電極の巻き取りやタブの設計(タブレス)が内部抵抗と発熱に効くと考えられますが、詳細は資料にありません 推測。(3) LMR:マンガンを主体にしてコバルトを使わず、酸素も電荷の貯蔵に使う正極です。会社の研究は、充電上限電圧と放電終止電圧を調整して酸素の回復を高め、ガス発生を抑える方向を示します 事実。実際の車載での耐久は、まだ実証の途中です 未確定/将来。素材の基礎は、本シリーズの技術解説「正極材料」「セル形状とセル・トゥ・パック」「次世代電池の化学と比較」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 米国の制度への依存(45X) | IRA(公法117-169、2022年8月16日制定)第13502条は、米国内で作った電池セルに1kWhあたり35米ドル、モジュールに10米ドルの税額控除を定めた。2029年12月31日より後の販売分から縮小(2030年75%、2031年50%、2032年25%、2032年末より後は0%)。内国歳入庁は制度の概要と最終規則(2024年10月)を案内している。LGESはこの制度の名称を決算資料に書いていない(本稿はインセンティブがこれに当たると読む) | 事実(段階:制定済み、縮小は2030年から)/推測 |
| 禁止された外国事業体の制限 | 公法119-21(2025年7月4日制定)第70514条は、45X条の控除に、「禁止された外国事業体」から重要な支援を受けた部品の除外と、納税者が特定の外国事業体等である場合の不適格を加えた(制定後に始まる課税年度から適用)。LGESは「非PFE」の要件に応えると説明するが、個別の影響額は記載なし | 事実(段階:制定済み) |
| 収益の構造 | インセンティブを除いた営業損益は2025年・2026年上半期とも赤字(本稿の計算、第4章)。2026年上半期の営業利益は-95十億ウォン(インセンティブ込み) | 本稿の計算 |
| EV需要の減速と主要顧客 | 2025年の売上は前年比-7.6%で、会社は主要顧客のEV販売の減速を挙げた。2025年第4四半期はEVの補助終了と顧客の年末の在庫調整にも触れる。顧客名は決算資料で非開示 | 事実 |
| 立ち上げの負担 | 2026年第1四半期は、ESS用ラインの立ち上げの初期費用とEVパウチの数量減による製品構成の悪化で営業損失。アリゾナの量産開始は2026年末が目標 | 事実/未確定/将来 |
| 財務の負担 | 2026年6月末の有利子負債は29.1兆ウォン、負債比率157%、純債務比率72%(決算説明資料)。設備投資の削減と非中核資産の売却で財務の健全化を図ると説明 | 事実 |
| 関税・輸出管理 | LGESの北米での製造は米国・カナダの現地生産が中心だが、関税や輸出管理が売上や費用に与えた影響額は、本稿の確認範囲で記載を見つけられなかった | 確認できなかった |
| 計画の実現 | ESSの60GWh超、新規受注90GWh超、ナトリウムのサンプル出荷、リサイクル工場の稼働は、いずれも会社の目標・計画で、達成は確認されていない | 未確定/将来 |
出典:出典1 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典3 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf 出典4 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5130/ 出典19 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-117publ169/html/PLAW-117publ169.htm 出典20 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-119publ21/html/PLAW-119publ21.htm 出典21 https://www.irs.gov/credits-deductions/advanced-manufacturing-production-credit
12. 用語集
- ESS
- 蓄電システム(Energy Storage System)。
- LFP
- リン酸鉄リチウム。ニッケル・コバルトを使わない正極材。
- NCM
- ニッケル・コバルト・マンガンの酸化物を正極に使う電池。
- LMR
- リチウムマンガンリッチ。マンガンを主体にした正極材。
- 46シリーズ
- 直径46mmの円筒形セルの総称(4680・4695・46100など)。
- 北米の生産インセンティブ
- LGESの表記。本稿は米国の先進製造生産税額控除(45X)に当たると読む。
- 45X
- 米国の内国歳入法45X条。米国内で作った電池セルなどへの税額控除。
- PFE
- Prohibited Foreign Entity。禁止された外国事業体。
- FTM / BTM
- FTMは系統側(メーターの手前)、BTMは需要家側(メーターの背後)の蓄電。
- UPS / BBU
- UPSは無停電電源、BBUはデータセンター用のバックアップ電源。
- GWh
- 電力量の単位。1GWh=10億Wh。

13. 出典
- LGエナジーソリューション 2026年第2四半期 決算説明会資料(2026年7月30日、英語)。2026年上半期の売上・営業利益・北米の生産インセンティブ・資本的支出・財務比率・ESSの北米拠点・下半期の計画。監査前の数値と明記されている。 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_2Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf
- LGエナジーソリューション 2026年第1四半期 決算説明会資料(2026年4月30日、英語)。北米5拠点の状況・ESS生産能力の目標・46シリーズの受注残・米国政策の説明。 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/26_1Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf
- LGエナジーソリューション 2025年第4四半期 決算説明会資料(2026年1月29日、英語)。2025年の通期実績・ESS生産能力と受注の目標・2026年の見通しと資本的支出の計画。 https://www.lgensol.com/upload/file/irEvent/25_4Q_LGES_business_performance_F_EN.pdf
- LGエナジーソリューション プレスリリース「2026年第2四半期の決算」。売上7.6兆ウォン、営業利益113.3億ウォン…の概要と上半期の進捗(2026年7月30日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5130/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「2025年の決算」。通期売上23.7兆ウォン・営業利益1.3兆ウォン、ESS受注残140GWh、46シリーズ受注残300GWh超(2026年1月29日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4550/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「新しいランシング電池工場で生産を開始」。LFPのESS用セルと、トヨタ向けNMCセル、年産35GWh超(フルスケール時)(2026年8月19日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5163/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「Stellantisとの共同決定でNextStar Energyを完全子会社化」。Stellantisの49%持分の取得(2026年2月6日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4601/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「NextStar Energy、カナダ初の商業規模の電池工場の開所式」。2025年11月の生産開始・累計100万セル(2026年3月6日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4710/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「アリゾナに7.2兆ウォンの電池製造複合施設を建設」。円筒形27GWh・LFPパウチ16GWhの計画(2023年3月24日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/1613/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「アリゾナの建設と採用の進捗」。円筒形工場の建設が約半分、2026年中ごろに試作・年末に量産を目標(2025年4月9日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/3784/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「Hondaと米国で電池合弁を設立へ」。総投資44億米ドル・年産約40GWhの計画(2022年8月29日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/691/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「Hyundai Motor Groupと米国で電池合弁を設立」。50対50、投資43億米ドル超・年産30GWhの計画(2023年5月26日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/1780/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「Vertech、DTE Energyと6GWhの蓄電システムの契約」。8案件・2年間で納入(2026年5月28日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4978/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「VertechとQcells、米国の蓄電プロジェクト5GWhで提携」。2028〜2030年のプロジェクト向け(2026年2月4日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/4563/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「トヨタ通商と米国で電池リサイクルの合弁会社を設立」。ノースカロライナ州の前処理工場、年13,500トンの処理能力、2026年の稼働予定(2025年6月19日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/3992/
- LGエナジーソリューション プレスリリース「ソウル大学と次世代LMR電池の商業化へ」。ガス発生の抑制、Nature Communications掲載(2026年9月7日) https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/5222/
- LGエナジーソリューション 会社概要ページ「Fast Facts」。設立・従業員数(2025年12月)・特許数・大学との共同研究の一覧・沿革。 https://news.lgensol.com/company-overview/fast-facts/
- LGエナジーソリューション 2025年ESGレポート(英語。2026年6月基準の事業所一覧を含む)。研究開発費・研究開発人員・従業員数・事業所の稼働状況。 https://www.lgensol.com/upload/file/download/LG_Energy_Solution_2025_ESG_Report_EN%5B3%5D.pdf
- 米国議会(公法117-169) Inflation Reduction Act of 2022(2022年8月16日制定)第13502条。先進製造生産税額控除(内国歳入法45X条)の創設:電池セル1kWhあたり35米ドル、電池モジュール同10米ドル、2029年12月31日後の販売から段階的に縮小。 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-117publ169/html/PLAW-117publ169.htm
- 米国議会(公法119-21) Public Law 119-21(2025年7月4日制定)第70514条。45X条の控除に「禁止された外国事業体」の制限を追加するなどの改正。 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-119publ21/html/PLAW-119publ21.htm
- 米国内国歳入庁(IRS) 公式ページ「Advanced Manufacturing Production Credit」。制度の概要と、2023年12月の規則案・2024年10月の最終規則の案内。 https://www.irs.gov/credits-deductions/advanced-manufacturing-production-credit
- LGエナジーソリューション プレスリリース一覧(2022年〜2026年)。リサイクル合弁(Huayou、Derichebourg)・資源の供給契約(Liontown、WesCEF、Compass Minerals、Green Technology Metals、Smackover Lithium、Elevra)の発表の標題と日付の確認用。 https://news.lgensol.com/company-news/press-releases/
- LGエナジーソリューション 公式ニュースルーム(ロゴの取得元。会社概要の確認用)。 https://news.lgensol.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、LGエナジーソリューションの決算説明資料・プレスリリース・ESGレポート、米国の法律(公法117-169・119-21)と内国歳入庁の公式ページに基づきます。決算説明資料は外部監査の前の数値です。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。