COMPANY PROFILE / 次世代蓄電
比亜迪(BYD)
― 自社の電気自動車を支えるLFP電池「ブレードバッテリー」を、外部の自動車メーカーと蓄電システムにも広げている垂直統合型の電池事業
比亜迪(BYD)は新エネルギー車、電子部品、電池・太陽光などを手がける企業で、電池はグループの中の一事業です。電池事業の売上は年報で独立した区分として開示されておらず、電池の販売量や売上は本稿の確認範囲で非公表です。一方で、年報は2025年の蓄電システムの出荷が60GWh超と記し、第2世代ブレードバッテリー(2026年3月発表)と、2,710Ahの蓄電専用セルを使うHaohan(1ユニット14.5MWh)を挙げています。本稿は、自動車事業には立ち入らず、電池(LFPのブレードバッテリー)と蓄電システムに絞り、何を作り、どこに投資し、誰と組み、どこまでが実績でどこからが計画かを、香港・深圳の開示と会社の公式資料、政府の公式文書の範囲で整理します。全固体電池は本シリーズの別分野で扱うため、ここでは取り上げません。投資の助言ではありません。
- 30秒でわかるBYDと、次世代蓄電での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(電池に関わる範囲を中心に)
- 次世代蓄電にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
- 次世代蓄電分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるBYDと、次世代蓄電での立ち位置
深圳 002594香港は香港ドルと人民元の2つの窓口、深圳はA株
蓄電システム(従)中心はLFP(ブレードバッテリー)。蓄電にはナトリウムイオンの示範もある。自動車事業は本稿で扱わない
BYDの電池は、自動車事業と同じ報告区分に含まれ、売上・利益が単独では見えません。年報の事業区分の定義は、動力電池・リチウムイオン電池・光伏製品などを、自動車関連の区分(「汽車・汽車相関製品及びその他製品」)に含めています 事実。このため、BYDの電池は「どれだけ売れたか」ではなく、公表された製品・出荷・契約・計画から読むことになります。会社は、動力電池は自社の新エネルギー車の需要を満たしたうえで、外部の戦略顧客にも広げていると述べています 事実。外部顧客の社名や数量は、本稿の確認範囲では開示されていません。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:正式名称は比亜迪股份有限公司(簡体字では比亚迪股份有限公司)、英文は BYD Company Limitedです。Blade Battery(ブレードバッテリー)、Haohan、FLASH Charging(閃充)は製品・技術のブランド名です。BYDは電池を内製しており、年報などでの電池事業の表記は「二次充電電池」ですが、本稿はグループ内の電池子会社の名称を、確認した資料に記載がないため使いません。ロゴ画像は公式サイトが公開しているものを取得しました(解像度が小さい画像です)。
公式サイト:https://www.bydglobal.com/cn3. 次世代蓄電の世界で、この会社はどこにいるか
主たる類型はセル・材料メーカー(自社の車向けが中心で、外部にも供給)です。会社の資料から、化学系と用途を整理します 事実。
| 領域 | 主な用途 | 会社の資料で確認できた内容(メーカー公称) | 区分 |
|---|---|---|---|
| 動力電池(ブレードバッテリー、LFP) | 自社の新エネルギー車、外部の自動車メーカー | LFP(リン酸鉄リチウム)の長い薄型セルを並べ、モジュールを介さずパックに入れる構造。公式ページは、従来のLFPブロック型に比べパックの空間利用率が50%超向上、サイクル寿命は5,000回超(条件の記載なし)と説明。第2世代は第1世代よりエネルギー密度が5%超向上 | 事実(会社の説明) |
| 蓄電システム(Haohan) | 電源側・系統側・工商業・家庭・データセンター | 2,710Ahの蓄電専用ブレードセルを使うLFPのシステム。1ユニットの公称エネルギー量は7,284kWhまたは14,568kWh(BOL)、IP66、適合規格としてIEC 62619・UL 9540・UL 9540Aなどを列記(データシート) | 事実(会社の説明) |
| ナトリウムイオン(蓄電) | 蓄電の示範・実証 | 「百MWh級のナトリウムイオン蓄電プロジェクトの商業化を推進した」と説明(2026年中間報告)。セル仕様・顧客・出荷量の記載はなし | 事実(会社の説明)/未確定/将来 |
| 消費者向けリチウムイオン電池 | 電子機器・スマート機器 | 年報は「各種の消費者向け電子製品に広く使われる」と述べるだけで、数量・売上の記載はなし | 事実/確認できなかった |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf 出典3 https://www.byd.com/mea/news-list/BYD%20Unveils%202nd%20Generation%20Blade%20Battery%20and%20FLASH%20Charging%20Technology 出典4 https://www.byd.com/uk/technology/byd-blade-battery 出典5 https://www.bydenergy.com/material/energy_stroage/serviceandsupport/downloadcenter/pdf/el/en/Datasheet_Haohan_EN.pdf
4. 会社の規模(電池に関わる範囲を中心に)
BYDは電池専業ではないため、会社全体の数字は電池事業の規模を示しません。全社の規模を簡潔に示し、電池について開示されていることを中心にします 事実。金額は人民元のままで、為替換算はしていません。
| 指標(全社) | 2025年 | 2026年上半期 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 営業収入 | 803,964,958千元 | 344,815百万元 | 2025年は前年比+3.46%。2026年上半期は前年同期比-7.13% |
| 親会社株主帰属純利益 | 32,619百万元 | 12,325百万元 | 2025年は-18.97%、2026年上半期は-20.54% |
| 研究開発費 | 約634億元 | 約289億元 | 累計は2,400億元超(2025年末)、2,700億元超(2026年6月)。電池向けの内訳は非公表 |
| 従業員 | 約869.6千人 | 約911.9千人 | 2025年12月31日/2026年6月30日。全社の人数 |
| 資本的支出 | 140,222,131千元 | 記載を確認していない | 全社の合計(固定資産・無形資産の取得)。電池単独は非公表 |
| 事業区分(2025年) | 売上(百万元) | 割合 | 電池との関係 |
|---|---|---|---|
| 自動車、自動車関連製品及びその他製品 | 648,646 | 80.68% | 動力電池・リチウムイオン電池・光伏製品・鉄電池製品を含むと定義(電池の売上は区分内で非公表) |
| 電子部品・組立及びその他製品(旧称:手機部件等) | 155,237 | 19.31% | スマートフォン部品等と組立。電池との関係は記載なし |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf
2026年中間報告は、蓄電システムの出荷順位に調査会社InfoLinkの数値を使っています。調査会社の推計なので本稿は採用しません。年報の「蓄電システムの出荷60GWh超」「650件超のプロジェクト」「110か国超」は会社自身の説明です。また、電池工場の所在地・生産能力(GWh)は、本稿が確認した年報・中間報告に記載を見つけられませんでした 未確定/将来。
5. 次世代蓄電にかけているリソース
電池事業だけを切り出した人員・研究開発費・設備投資は開示されていません。以下は全社の開示と、蓄電に関する会社の説明です。
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 従業員は約869.6千人(2025年末)、約911.9千人(2026年6月末)。エンジニアは12万人超、特許出願は7.1万件超、登録は4.2万件超(全社、2025年)。電池事業の人員は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金 | 研究開発費は2025年に約634億元、2026年上半期に約289億元(全社)。資本的支出は2025年に140,222,131千元(全社)。2025年3月に129,800,000株の新H株を1株335.2香港ドルで発行(会社は約56億米ドルと説明。用途は「技術力の強化と海外展開の加速」で、電池専用とは書かれていない) | 事実/一部非公表 |
| 外部への出資・買収・合弁・事業売却 | 電池を目的とした出資・買収・合弁・事業売却は、本稿が確認した年報・中間報告で確認できなかった。電池は自社グループ内の事業として説明されている | 確認できなかった |
| 大学・研究機関・公的資金 | 電池に関する大学・研究機関との共同研究や公的資金の記載は、確認した年報・中間報告に見つけられなかった | 確認できなかった |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf
主要な製品・設備の状況
| 製品/設備 | 場所・内容 | 規模 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第2世代ブレードバッテリー | 動力電池(LFP)。搭載第1号はDENZA Z9GT(航続1,036km、会社の説明) | 10→70%を5分、10→97%を9分、-30℃で20→97%を12分(公称) | 発表。2026年上半期に搭載車を発売(中間報告) | 2026年3月5日 | 1・2・3 |
| Haohan | 蓄電システム。2,710Ahの蓄電専用セル | 最小ユニット14.5MWh(20フィート換算で10MWh)、体積利用率52.1%(会社の説明) | 2025年9月に発表、2026年上半期に批量交付(量産の納入)を開始 | 2025年9月〜2026年6月 | 1・2・5 |
| サウジアラビアの系統側蓄電 | Saudi Electricity Companyと12.5GWhの契約(会社は世界最大の系統側蓄電プロジェクトと説明) | 12.5GWh | 契約済み、2025年4月に納入を開始(年報)。完了の記載はなし | 2025 | 1 |
| ナトリウムイオン蓄電 | 百MWh級のプロジェクト | 「百MWh級」(個別の数量・顧客は記載なし) | 商業化の推進(会社の説明)。次世代品は開発中 未確定/将来 | 2026年上半期 | 2 |
| 閃充ステーション(蓄電併設) | 自社の1,500kW充電器と蓄電システムを組み合わせる | 2026年末までに2万か所を目標。2026年6月末で7,018か所が稼働 | 目標は未達成の計画、稼働分は実績 未確定/将来 | 2026年6月末 | 2 |
| 電池工場 | 所在地・生産能力(GWh) | 確認できなかった | 記載なし | - | 1・2 |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1995年2月 | 王伝福氏らが深圳で電池会社(深圳市比亞迪実業)を設立。2002年6月11日に現在の会社に改組 | 電池から始まった会社 |
| 2025年3月 | 新H株129,800,000株を発行(3月11日完了)。会社は約56億米ドルと説明 | 全社の資金調達(用途は電池専用ではない) |
| 2025年4月 | Saudi Electricity Companyとの12.5GWhの蓄電契約の納入を開始 | GWh級の系統側蓄電の実績 |
| 2025年9月 | 新世代の蓄電システムHaohan(2,710Ahセル、14.5MWh)を発表 | セルの大型化でシステムを集約 |
| 2025年(通年) | 蓄電システムの出荷は60GWh超、650件超のプロジェクト、110か国超(会社の説明) | 蓄電の出荷実績 |
| 2026年3月5日 | 第2世代ブレードバッテリーと閃充(1,500kW充電器)を発表。「閃充中国」戦略を開始 | 急速充電を軸にしたLFPの更新 |
| 2026年上半期 | Haohanの批量交付を開始。ナトリウムイオン蓄電の百MWh級案件の商業化を推進 | 蓄電の新製品と新化学系 |
| 2026年8月28日 | 2026年中間報告を承認。上半期の売上は前年同期比-7.13% | 最新の開示 |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf 出典3 https://www.byd.com/mea/news-list/BYD%20Unveils%202nd%20Generation%20Blade%20Battery%20and%20FLASH%20Charging%20Technology
7. 今後の計画
上の内容のうち、実績は「稼働中の閃充ステーション7,018か所」「Haohanの納入開始」で、残りは会社の目標・方針です 未確定/将来。
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
電池・蓄電の売上・利益・販売量(GWh)/動力電池を外部に供給している自動車メーカー名/電池工場の所在地と生産能力/ナトリウムイオンのセル仕様と出荷量/ブレードバッテリーのセル質量エネルギー密度の数値/輸出管理・関税が電池に与えた影響額。
8. この会社は次世代蓄電で何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 電池は自社の車を支える内製部品が土台で、外販を広げている | 「自社の新エネルギー車の動力電池の需要を満たしたうえで、外部の戦略顧客に広げる」(年報・中間報告)。電池の売上は自動車と同じ区分に含まれる | 事実 |
| 蓄電ではセルからシステムまで一貫して自社で持つ | 中間報告:3C(セル・パワーチップ・演算チップ)から3S(BESS・PCS・EMS)まで「全スタックの自社開発、全チェーンの供給、量産体制」を築くと説明 | 事実 |
| セルの大型化でシステムの部品点数を減らす方向 | Haohanは2,710Ahセルで、最小ユニット14.5MWh、体積利用率52.1%と会社が説明。データシートは1ユニット最大14,568kWh | 事実/推測 |
| ナトリウムイオンは蓄電向けの技術の保険として並行して進める | 中間報告は「中長期の技術的な強靭性を高めるための多様な技術の備え」としてナトリウムイオン蓄電を挙げる。数量・顧客の記載なし | 事実/推測 |
| 電池の外販の規模は、現時点では外から測れない | 外部顧客の名称・数量・売上が非公表。蓄電の出荷(60GWh超)だけが数量として示されている | 推測 未確定/将来 |
「セルの大型化でシステムの部品点数を減らす」という読みの根拠は、Haohanの説明にあります。会社は、2,710Ahの蓄電専用セルを使い、20フィート換算で10MWh、体積利用率52.1%と述べます 事実。データシートでも1ユニットが14,568kWhとされ、同じ設置面積に載せられるエネルギー量が増える設計です。本稿は、セルを大きくするほど、同じエネルギー量に必要なセル・接続・筐体が減り、設置・保守の手間が減ると読みますが、費用の削減額や故障率は一次資料に示されていません。一般論としてセルの大型化は、内部の発熱の偏りや製造の歩留まりという別の課題も伴うため、これは会社の狙いについての推測です 推測 未確定/将来。
9. 次世代蓄電分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
BYDの電池・蓄電の製品は、セル、パック、蓄電システムにまたがります 事実。以下の性能値はメーカー公称で、条件が異なる値は比べません。
| 製品 | 資料に書かれている内容(メーカー公称) | 出典 |
|---|---|---|
| ブレードバッテリー(第1世代) | LFPの長く薄いセルをハニカム状に並べモジュールを介さない構造。釘刺し試験で発煙・発火なし、表面温度30〜60℃(公式ページ)。サイクル寿命は5,000回超とされるが、試験条件は記載なし。パックの空間利用率は従来のLFPブロック型比で50%超向上(会社の説明) | 4 |
| 第2世代ブレードバッテリー | 第1世代よりエネルギー密度5%超向上、航続1,000km超を支える(年報)。常温で10→70%が5分、10→97%が9分、-30℃で20→97%が12分。「リチウムイオンの高速通路」と「全スペクトル型の熱管理」で発熱を抑える設計と説明(中身の詳細は記載なし)。安全性は新国標を上回ると説明 | 1・3 |
| Haohan | LFPの蓄電システム。DCブロックの公称エネルギー量は7,284kWh(XN2C-B7284)と14,568kWh(XN4C-B14568、2構成)、公称出力は1,820〜3,642kW、IP66、液冷、騒音75dBA以下、使用温度-30〜+55℃。適合規格にIEC 62619、IEC 62620、IEC 63056、UL 9540、UL 9540A、UL 1973、UN 38.3などを列記 | 5 |
| 閃充充電器 | 単口1,500kW。超高速放電の蓄電システムと組み合わせ、電網の負荷を増やさずに大電力の充電を行う構成 | 1・2・3 |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf 出典3 https://www.byd.com/mea/news-list/BYD%20Unveils%202nd%20Generation%20Blade%20Battery%20and%20FLASH%20Charging%20Technology 出典4 https://www.byd.com/uk/technology/byd-blade-battery 出典5 https://www.bydenergy.com/material/energy_stroage/serviceandsupport/downloadcenter/pdf/el/en/Datasheet_Haohan_EN.pdf
会社の資料から、素材が効く場所を読み取れます。(1) LFPの化学:公式ページは、LFPは安定した化学系で酸素を放出しにくく、発熱が小さいと説明しています 事実。これは一般にオリビン構造のLFPが持つ性質ですが、釘刺し試験の結果は会社の試験で、規格試験の合否ではありません。(2) 長く薄いセルの形:セルを長く薄くすると、表面積が体積に対して大きくなり、熱を逃がしやすいと会社は説明します 事実。同時に、モジュールを省くことで空間利用率が上がります。電極の巻き方・積層の方法や集電体は、本稿が確認した資料に書かれていません 推測。(3) 蓄電用セルの大型化:2,710Ahのセルでは、電極の厚みと均一性、電解液の浸透、内部の温度分布が品質の鍵になると本稿は考えますが、会社はこれらの数値を示していません 推測 未確定/将来。素材の基礎は、本シリーズの技術解説「正極材料」「セル形状とセル・トゥ・パック」「熱暴走と電池の安全」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 電池事業が外から見えない | 電池の売上・利益・販売量・工場能力・外部顧客が非公表で、進捗を外部から確かめにくい。「蓄電システムの出荷順位」は調査会社の数値に依拠する説明で、本稿は採用しない | 事実(確認できなかった) |
| 自社の車事業への依存 | 電池は自社の新エネルギー車の需要を満たすことが前提で、2026年上半期は全社の売上が前年同期比-7.13%、自動車関連が-8.98%(会社は新エネルギー車事業の減少が主因と説明)。車の需要が変われば電池の稼働にも影響しうる | 事実/推測 |
| 中国の輸出管理 | 商務部・海関総署の公告2025年第58号は、質量エネルギー密度300Wh/kg以上のリチウムイオン電池(セル・パック)や製造設備などを輸出許可の対象とし、2025年11月8日の施行としましたが、公告第70号(2025年11月7日)で2026年11月10日まで暫定停止。停止後の扱いは記載なし。BYDのセル質量エネルギー密度は確認した資料に記載がなく、閾値との関係は確認できなかった | 事実(段階:公布→施行予定→暫定停止) |
| 米国の関税 | 米国通商代表部は通商法301条の追加関税を、リチウムイオンの非車載用電池で2026年1月1日から25%、車載用で2024年9月27日から25%に引き上げると官報に公示(2024年9月18日)。その後の他の関税も加わり得て、現在の合計税率は本稿では確認していない。BYDの電池の対米売上は確認できなかった | 事実(段階:公示済み・発効日あり) |
| 計画の実現 | 閃充ステーション2万か所は2026年末の目標で、6月末は7,018か所。ナトリウムイオンは次世代品の開発段階。電池工場の増設計画は開示されていない | 未確定/将来 |
| 性能値の条件 | 充電時間・サイクル寿命・安全試験は会社の公称・自社試験で、車両・充電器・温度・試験方法の詳細は発表資料に限られる。異なる会社・製品の数値は比較できない | 事実 |
出典:出典1 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf 出典2 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf 出典3 https://www.byd.com/mea/news-list/BYD%20Unveils%202nd%20Generation%20Blade%20Battery%20and%20FLASH%20Charging%20Technology 出典4 https://www.byd.com/uk/technology/byd-blade-battery 出典6 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_79646f0161564975a938fe00fee158d5.html 出典7 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html 出典8 https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/18/2024-21217/notice-of-modification-chinas-acts-policies-and-practices-related-to-technology-transfer
12. 用語集
- ブレードバッテリー
- BYDのLFP電池。長く薄いセルを並べ、モジュールを省いてパックに入れる。
- LFP
- リン酸鉄リチウム。ニッケル・コバルトを使わない正極材。
- Cell-to-Pack (CTP)
- セルをモジュールにまとめず直接パックに入れる構造。
- 閃充(FLASH Charging)
- BYDの超急速充電の呼称。単口1,500kWの充電器を含む。
- BESS
- 蓄電システム(Battery Energy Storage System)。
- PCS / EMS
- PCSは直流と交流の変換装置、EMSはエネルギー管理システム。
- BOL
- Beginning of Life。使い始めの公称エネルギー量。
- ナトリウムイオン電池
- リチウムの代わりにナトリウムイオンが移動する電池。
- GWh
- 電力量の単位。1GWh=10億Wh。
- 通商法301条
- 米国の通商法に基づき、中国製品に追加関税を課す枠組み。

13. 出典
- 比亜迪(BYD) 2025年年報(取締役会承認は2026年3月27日。中国語と英語の併記。公式サイト掲載版)。事業の説明・売上・事業区分の定義・研究開発費・従業員数・蓄電システムの出荷・第2世代ブレードバッテリー・資金調達。 https://www.bydglobal.com/material/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2025nianbao.pdf
- 比亜迪(BYD) 2026年中間報告(取締役会承認は2026年8月28日。中国語と英語の併記)。2026年上半期の売上・研究開発費・従業員数・Haohan・ナトリウムイオン蓄電・閃充ステーション。 https://www.bydglobal.com/material/__CN/group-official-website/file/cn/investor-relations/financial-reports/2026-interim-report-cn.pdf
- 比亜迪(BYD) 公式ニュース「BYD Unveils 2nd Generation Blade Battery and FLASH Charging Technology」(2026年3月5日)。第2世代ブレードバッテリーと閃充の公称値。 https://www.byd.com/mea/news-list/BYD%20Unveils%202nd%20Generation%20Blade%20Battery%20and%20FLASH%20Charging%20Technology
- 比亜迪(BYD) 公式サイトの技術ページ「Blade Battery」(英国向け)。ブレードバッテリーの構造・安全性・サイクル寿命に関する会社の説明。 https://www.byd.com/uk/technology/byd-blade-battery
- BYD Energy Storage 製品データシート「Haohan」(公式サイト掲載、1ページ)。公称エネルギー量・IP等級・適合規格。 https://www.bydenergy.com/material/energy_stroage/serviceandsupport/downloadcenter/pdf/el/en/Datasheet_Haohan_EN.pdf
- 中国商務部・海関総署 公告2025年第58号「リチウム電池と人造黒鉛負極材料に関連する品目への輸出管制の決定」(2025年10月9日公布、2025年11月8日施行とされた。中国語)。 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_79646f0161564975a938fe00fee158d5.html
- 中国商務部・海関総署 公告2025年第70号「公告第55・56・57・58号等の実施を暫定停止する決定」(2025年11月7日。2026年11月10日まで停止。中国語)。 https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2025/art_b1ec77dd3f0d4762952904df7cdaadec.html
- 米国通商代表部(連邦官報) Notice of Modification: China's Acts, Policies and Practices Related to Technology Transfer, Intellectual Property and Innovation(2024年9月18日、文書番号2024-21217)。リチウムイオン電池の追加関税の引き上げ。 https://www.federalregister.gov/documents/2024/09/18/2024-21217/notice-of-modification-chinas-acts-policies-and-practices-related-to-technology-transfer
- 比亜迪(BYD) 公式サイト(ロゴの取得元。会社概要の確認用)。 https://www.bydglobal.com/cn
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月10日/Troy Technical
本稿の数値は、比亜迪が香港・深圳に提出した年報・中間報告と公式サイト、中国商務部の公告、米国連邦官報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。性能値はメーカー公称で、条件が異なる値は比較していません。