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物質・材料研究機構(NIMS) 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / ナノテクノロジー

物質・材料研究機構(NIMS)
― 日本のナノ材料研究と共用設備のデータを担う、規制権限のない国の研究所

NIMSは、茨城県つくば市に本部を置く国立研究開発法人です。 法律上の目的は、物質・材料科学技術の基礎研究と基盤的研究開発を行い、その水準を高めることです。 ナノテクノロジーとの関わりは、ナノスケールの材料の研究、国際的な研究拠点(MANA)、そして全国の共用設備から生まれるデータをためる「データ中核拠点」という形で表れます。 規制や規格を決める役所ではなく、研究を行って共用する側の機関です。 本稿では、NIMSがナノテクノロジーにどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:NIMSの公式サイト(法人概要、沿革、組織・財務の情報公開、MANAのページ)、文部科学省の審議会資料(ARIMの取組、2023年12月)、ARIMの公式サイトを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

NIMSの構造・工程を示す解説画像
概念画像(ImageGenで生成)。共用の計測設備を用いてナノ材料を研究・評価する場面。 実際の機関・会合・審査を示す写真ではありません。
この記事でわかること
  1. 30秒でわかるNIMS
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. ナノテクノロジーで何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. お金と関係組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる物質・材料研究機構(NIMS)

正式名称国立研究開発法人
物質・材料研究機構
英文 National Institute for Materials Science(NIMS)
国日本茨城県つくば市(千現・並木・桜の3地区)
機関の種類特定国立研究開発法人政府の省庁ではない。中長期目標は文部科学省が定める。2016年10月に「特定」の指定を受けた
設立2001年4月金属材料技術研究所(1956年)と無機材質研究所(1966年)が統合
人数規模1,637人2026年4月1日現在。役員6、定年制職員578、任期制職員等1,053(大学院生141を含む)
予算(収入)369億円令和7年度(2025年度)決算。うち運営費交付金169億円、受託事業収入115億円
ナノテクノロジーへの関与材料研究・MANA・ARIMのデータ中核拠点規制や規格を決める権限はない
影響が及ぶ範囲研究成果と共用設備を通じて日本の研究者・企業が中心。海外とは共同研究と国際共著で結ぶ
まず押さえるべき1点

NIMSは「決める」機関ではなく、「研究して、設備とデータを共用する」機関です。 NIMSの公式サイトは、NIMSの使命を、物質・材料科学技術に関する基礎研究と基盤的研究開発、成果の普及と活用促進、施設・設備の共用、研究者・技術者の養成の4つとしています 事実。 規制、認証、規格の制定は、この4つに含まれていません。ナノ材料の定義や安全の規制は、別の機関(欧州委員会、OECD、ISOなど)の領分です。 それでもナノテクノロジーで存在感があるのは、日本の材料研究の拠点であり、全国の先端設備の共用で生まれるデータの中核を担っているからです。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

ナノテクノロジーの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分ではナノ材料も装置も作りません(NIMSは研究のために作りますが、販売はしません)。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

ナノテクノロジーを動かす「機関」の4つの型 機関は自分ではナノ材料や装置を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 戦略・補助金・法律 規格・計測の物差し 調整の枠組み・研究拠点 NSF/NIH/DOE 欧州委員会/FDA ISO/NIST/OECD NNI/NIMS/imec 何を研究させるか 何を市場に出せるか どう測り、どう比べるか 誰が誰と組むか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国・参加者 届く範囲=参加者 NIMSは「場をつくる」型。研究拠点として共同研究と共用設備・データを提供する。規制や規格は決めない 国の中長期目標のもとで、材料の研究と設備の共用を行う。ナノ材料の定義や規制は別の機関の領分
図1 ナノテクノロジーに関わる機関の4つの型と、NIMSの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関などから例示しています 本稿の計算。NIMSは研究拠点として「場をつくる」型に当たり、企業や大学と共同研究センターをつくり、共用設備とデータを提供します。

3. ナノテクノロジーで何をしているか

活動中身区分
材料の基礎研究・基盤的研究開発研究分野は「エネルギー・環境材料」「ナノスケール材料」「先端基盤技術」。研究センターは、エネルギー・環境材料、電子・光機能材料、磁性・スピントロニクス材料、構造材料、材料ナノアーキテクトニクス(MANA)、高分子・バイオ材料、マテリアル基盤、若手国際研究センター(ICYS)など事実
国際研究拠点 MANA文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の拠点の1つとして2007年10月に発足し、「ナノアーキテクトニクス」という新しい考え方を掲げる。MANA自身は、2007〜2025年に10,002本の論文、2025年12月時点で特許454件、2026年6月時点で国際共著率73.6%と公表している(MANA自己申告)事実
共用設備とデータ(ナノプラ → ARIM)文部科学省の設備共用事業「ナノテクノロジープラットフォーム」(2012〜2021年度)の後継「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」(2021〜2032年度)で、NIMSはデータ中核拠点を担う。全国25法人の共用設備から生まれるデータを集めて構造化する。ARIMの重要技術領域の1つが「次世代ナノスケールマテリアル」事実
企業・大学との共同研究センター公式の沿革に、企業名を冠した共同研究センターの設置が並ぶ。例:NIMS-トヨタ(2008年)、サンゴバン(2010年)、NIMS-デンカ(2013年)、日本電子(JEOL)-NIMS(2015年)、日立金属-NIMS(2016年)、パナソニック-NIMS(2016年)、ソフトバンク-NIMS(2018年)、三菱マテリアル-NIMS(2020年)事実
人材の養成連携大学院、国際協力大学院、若手国際研究センター(ICYS、2003年開始、2008年に再編)などのプログラム事実
素材技術者の視点:NIMSの価値は「共用の設備」と「データ」にある

ナノ材料の研究は、電子顕微鏡や微細加工装置のような高価な設備がないと進みません。 ARIMは、全国の大学・研究機関の先端設備を使えるようにし、その使用で得られた測定データを構造化して残す仕組みです 事実。 文部科学省の審議会資料によると、令和4年度の実績で、ARIMの利用者は5,208人、利用の属性は大学68%、国の研究機関など11%、企業20%、海外1%でした。 材料メーカーの技術者にとっては、自社で持てない設備を使い、データの形式をそろえて他者と比べられる場であることが価値になります。 ただし、得られたデータの品質や再現性は各設備と各測定法に依存し、NIMSが認証するわけではありません。この考え方は技術解説「ナノ計測」とつながります。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点NIMSが持っているもの持っていないもの
権限基礎研究と基盤的研究開発の実施。研究成果の普及。施設・設備の共用。研究者・技術者の養成。ARIMでのデータ中核拠点の運営規制・認証・規格を決める権限。他機関に研究費を配分する業務(公式の使命に書かれていない)
地域日本の国の研究機関。外国人の職員は290人(役員・院生などを含む総数1,637人の内数)。MANAは国際共著率73.6%海外の政府・企業への法的な効力。ARIMの利用者に占める海外の割合は令和4年度で1%
期間国の中長期目標・計画にもとづく。第5期(7年)の計画が2023年に始まった。ARIMは2021〜2032年度の事業事業の継続の保証(予算と国の方針による)
規模人員1,637人(2026年4月)。令和7年度決算の収入369億円ナノテクノロジーだけに使う予算・人員の内訳は公表資料で確認できなかった
数字の読み方の注意

NIMSの公式の「法人概要」ページは「年間予算額 約374億円(令和6年度決算)」と書いています。一方、財務の情報公開ページは令和7年度決算の収入を369億円としており、本稿はこちらを使いました 事実。 369億円には前年度からの繰越金22億円が含まれ、設備整備費31億円や施設整備費21億円のような設備関係の費目も入っています。 また、人員の1,637人には大学院生141人やその他の任期制職員693人が含まれ、定年制職員は578人です。 「NIMSの規模」を言うときは、どの区分を指すかを分けて読む必要があります。

5. お金と関係組織

NIMSの位置づけと収入の内訳 国が目標を定めて計画を認可し、NIMSは研究と共用を行う。収入の約半分が運営費交付金 文部科学省 中長期目標を定め、計画を認可 NIMS 研究・共用設備・データ中核拠点 企業・大学・研究者 共同研究・共用設備の利用 令和7年度決算の収入 369億円の内訳(億円) 運営費交付金 169 受託事業収入 115 設備整備費 31 前年度からの繰越金 22 施設整備費 21 自己収入 9 補助金等 2 濃い棒は収入の大きい2項目。数値は財務の情報公開ページの記載(四捨五入のため合計は一致しない場合がある)
図2 NIMSの位置づけと、令和7年度決算の収入の内訳。出典:NIMSの財務に関する情報(2026年10月1日更新)、NIMSの情報公開ページ(中長期目標は文部科学省が定める旨)。棒の長さは金額に比例します。運営費交付金は収入の約46%、受託事業収入は約31%で、いずれも本稿の計算です 本稿の計算。

公式資料に記載のある関係組織

組織NIMSとの関係(公式資料の記載)
文部科学省NIMSは文部科学省が定めた中長期目標にもとづいて中長期計画を作り、文部科学省が認可した計画にもとづいて年度計画を作る。ARIMも文部科学省の事業
ARIMの参加法人(25法人)大学・研究機関など25法人が参加し、NIMSが全体のデータ中核拠点を担う(文部科学省審議会資料、2023年12月)
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)MANAはWPIの拠点の1つ(2007年度採択)。ほかに東北大学、東京大学、京都大学などの拠点がある
共同研究センターの相手企業公式の沿革に、トヨタ、デンカ、日本電子、パナソニック、ソフトバンク、三菱マテリアルなど、企業名を冠したセンターが並ぶ。個別の研究内容は本稿では確認していない

※公式の沿革には「LG-NIMS」「SAIT-NIMS」というセンター名もありますが、運営主体の正式な会社名は沿革に書かれておらず、本シリーズの企業解説の企業と同一かは確認できませんでした 未確定/将来。経済産業省との直接の関係も、公式資料から確認できませんでした。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
第5期の中長期計画(7年)は2023年に始まった。終了は2029年度末(2030年3月)に当たるNIMSの沿革(2023年に第5期、7年と記載)。終了時期は開始年度からの計算本稿の計算
ARIMの事業期間は2021〜2032年度とされるが、期間中の予算が確保されるかは未確認文部科学省の審議会資料(2023年12月)未確定/将来
ARIMが続く間、データ中核拠点としてのNIMSの役割は、日本の共用設備の利用データを通じて広がり続ける可能性があるARIMの設計(共用設備のデータをNIMSのデータ中核拠点に集める)と、事業期間が2032年度とされていること推測

7. 用語集

国立研究開発法人
国の研究開発を担う法人。省庁そのものではなく、主務大臣が定める中長期目標にもとづいて業務を行う。
特定国立研究開発法人
国立研究開発法人のうち、国が特に世界トップレベルの成果を期待して指定するもの。NIMSは2016年10月に指定。
WPI
世界トップレベル研究拠点プログラム。文部科学省が国際的な研究拠点づくりを支援する事業。
ナノアーキテクトニクス
MANAが掲げる、ナノテクノロジーの新しい概念。MANAの沿革ページが「新しい概念」と説明している。
ARIM
マテリアル先端リサーチインフラ。文部科学省の事業で、先端設備の共用と、そこから生まれるデータの蓄積を進める。
運営費交付金
国立研究開発法人の運営のために国から交付される資金。NIMSの財務ページの収入の区分の1つ。

8. 出典

  1. NIMS 法人概要(組織名称、設立目的、設立年月、所在地、年間予算額〔令和6年度決算〕)。 https://www.nims.go.jp/nims/profile.html
  2. NIMS Our Profile(英語版。使命、研究分野、研究センター、沿革の要点、2026年8月6日更新)。 https://www.nims.go.jp/eng/nims/profile.html
  3. NIMS Our History(英語版。沿革、共同研究センターの設置、特定国立研究開発法人への指定、第5期計画)。 https://www.nims.go.jp/eng/nims/history.html
  4. NIMS 組織に関する情報(NIMSの目的、国の施策との関係、2026年4月1日現在の職員数と内訳)。 https://www.nims.go.jp/nims/disclosure/organization.html
  5. NIMS 財務に関する情報(令和7年度決算の収入・支出の内訳。2026年10月1日更新)。 https://www.nims.go.jp/nims/disclosure/finance.html
  6. NIMS MANA What is MANA?(MANAの位置づけ、論文数・国際共著率・特許数の自己公表値)。 https://www.nims.go.jp/mana/about/introduction.html
  7. NIMS MANA World Premier International Research Center Initiative(WPI拠点の一覧。MANAは2007年採択)。 https://www.nims.go.jp/mana/about/wpi.html
  8. NIMS MANA History of MANA(2007年10月の発足とWPI採択、ナノアーキテクトニクス)。 https://www.nims.go.jp/mana/about/history.html
  9. 文部科学省 マテリアルDXプラットフォームにおいてデータ創出を担うマテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)の取組(科学技術・学術審議会 ナノテクノロジー・材料科学技術委員会、2023年12月1日。PDF)。 https://www.mext.go.jp/content/20240307-mxt-mxt_nanozai-000034134_3.pdf
  10. ARIM ARIM Japan 公式ホームページ(文部科学省 マテリアル先端リサーチインフラ)。 https://nanonet.go.jp/

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
英文名称、所在地、設立年月(2001年4月の統合)、設立目的、令和6年度決算の年間予算額約374億円事実出典1 https://www.nims.go.jp/nims/profile.html
使命の4項目、研究分野、研究センター、2016年10月の特定国立研究開発法人への指定事実出典2 https://www.nims.go.jp/eng/nims/profile.html
共同研究センターの設置年、ICYS、ナノテクノロジー・プラットフォームのセンター設置(2012年)、第5期中長期計画(2023年)事実出典3 https://www.nims.go.jp/eng/nims/history.html
文部科学省が定めた中長期目標・認可した計画にもとづくこと、職員数1,637人とその内訳事実出典4 https://www.nims.go.jp/nims/disclosure/organization.html
令和7年度決算の収入369億円と内訳事実出典5 https://www.nims.go.jp/nims/disclosure/finance.html
MANAの論文数10,002本、国際共著率73.6%、特許454件(自己公表値)事実出典6 https://www.nims.go.jp/mana/about/introduction.html
MANAがWPIの2007年採択拠点であること事実出典7 https://www.nims.go.jp/mana/about/wpi.html
MANAの2007年10月の発足、ナノアーキテクトニクス事実出典8 https://www.nims.go.jp/mana/about/history.html
ナノプラ(2012〜2021)からARIM(2021〜2032)への移行、NIMSのデータ中核拠点、25法人の参加、令和4年度の利用者数・属性事実出典9 https://www.mext.go.jp/content/20240307-mxt-mxt_nanozai-000034134_3.pdf
ARIMが文部科学省のマテリアル先端リサーチインフラであること事実出典10 https://nanonet.go.jp/
運営費交付金・受託事業収入の割合(約46%・約31%)、第5期計画の終了時期、機関の4つの型の区分本稿の計算本稿による計算・整理(出典3・5から)
ARIM期間中の予算確保、LG-NIMS・SAIT-NIMSの運営主体、経済産業省との関係、ナノテクノロジーだけの予算・人員未確定/将来出典1〜10に記載なし。本稿では推計しない
第6章のデータ中核拠点としての役割の見通し推測出典9の設計と事業期間からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月9日/Troy Technical
本稿の数値はNIMSの公式サイトと情報公開ページ、文部科学省の審議会資料に基づきます。MANAの論文数などはMANA自身の公表値です。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。