TECHNOLOGY EXPLAINER
iPS由来の神経細胞とパーキンソン病
― 脳に移植する「31時間の製品」は、どう作られ、どう審査されたか
2026年3月6日、iPS細胞由来ドーパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」(一般的名称:ラグネプロセル)が日本で 条件及び期限付承認を受けました(期限7年)。製品は凍結せず、有効期間は洗浄開始後31時間、手術の都度つくられます。 一方、米国ではES細胞由来の凍結製品が第3相試験に進んでいます。 分化誘導、純化、品質評価、移植、免疫抑制、審査まで、一次情報で順に追います。
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- パーキンソン病とドーパミン・ニューロン(3行でつかむ)
- 何を補うのか ― 前駆細胞と移植先
- 作り方 ― 分化誘導と、CORIN による純化
- 品質をどう測るか ― 純度と安全性の規格
- 素材技術者の視点①:純度を決めるのは、培養の化学だけではない
- 移植の方法 ― 定位脳手術と、1か所あたりの細胞数
- 免疫抑制と HLA ― 「他人の細胞」を脳に置く条件
- 臨床試験の結果をどう読むか
- 日本の審査と承認 ― 条件及び期限付承認の中身
- 海外の取り組み ― ES細胞由来、自家iPS細胞由来
- 素材技術者の視点②:新鮮な細胞と凍結した細胞、設計の違い
- 課題と未確定事項/用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料・論文・規制当局の資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・審査中の事項など、実績が確認できていない事項
このほか、工程や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
本記事は製造・材料・制度の観点からの技術解説です。特定の治療を勧めるものでも、製品や治療の効き目を比べて優劣をつけるものでもなく、 医療上の助言でもありません。臨床試験の数値は、試験名・対象・評価時点とあわせて、論文と規制当局の資料に記載されたものだけを引用しています。
1. パーキンソン病とドーパミン・ニューロン(3行でつかむ)
パーキンソン病に対する細胞移植は、「失われたドーパミン神経細胞(ドーパミン・ニューロン)を、外から補う」という発想の治療です。
- 何が失われるか:Nature 論文は、パーキンソン病を中脳の黒質にあるドーパミン神経細胞が失われ、動作緩慢・固縮・静止時振戦といった運動症状が生じる病気と説明しています事実
- 薬ではなぜ足りなくなるか:薬物治療は初期の症状を和らげますが、長く使うと運動の変動や薬剤によるジスキネジア(不随意運動)といった合併症が生じる、と同論文は述べています事実
- 細胞移植の歴史:胎児の中脳組織の移植は、初期の非盲検試験では有望でしたが、二重盲検プラセボ対照試験では十分な有効性を示せず、移植片誘発性ジスキネジアも問題になりました。倫理面と安定供給の難しさも障壁でした。その代替として多能性幹細胞が探索されてきました事実
承認された製品の実体は、「1本のチューブ(1 mL)に100万個の細胞、凍結せず、有効期間31時間」です。 住友ファーマの発表によると、1チューブ(1 mL)中の構成細胞は1×106個、副成分は生理食塩液1 mLで、非凍結状態の製品です事実。 厚生労働省の資料は、有効期間を31時間、「手術の都度製造」としています事実。 薬のように棚に置いておける製品ではなく、手術日に合わせてつくる製品だということが、この分野の製造・物流・材料の難しさの出発点です。
2. 何を補うのか ― 前駆細胞と移植先
ドーパミンは神経伝達物質のひとつで、ドーパミン神経細胞の中でつくられます。 住友ファーマの説明では、アムシェプリはドーパミン神経細胞に分化する手前の細胞(ドーパミン神経前駆細胞)です事実。 PMDA の最適使用推進ガイドラインは、作用機序を次のように説明しています事実。
- 線条体の被殻に移植された後、ドーパミンを合成・分泌するドーパミン神経細胞に分化・成熟する
- 失われたドーパミン神経細胞が補われることで、移植部位近傍のドーパミン量が増える
- 補充された神経細胞により、投与されたレボドパの取込み・代謝能力が回復し、ドーパミン量が増える
ただし、最終製品の中身は「前駆細胞だけ」ではありません。京都大学の治験で用いた最終製品は、 ドーパミン神経前駆細胞が約60%、ドーパミン神経細胞が約40%で、セロトニン神経のマーカー(TPH2)を発現する細胞は検出されなかったと報告されています事実。
成熟したドーパミン神経細胞は、長い突起を伸ばした壊れやすい細胞で、培養皿から剥がして針で注入するのには向きません。 そこで、分化の途中の段階の細胞を、細胞塊(凝集塊)の形で移植し、脳の中で成熟させる設計になっています(本記事による解説)。 動物実験では、ヒトiPS細胞由来のドーパミン神経前駆細胞が霊長類のパーキンソン病モデルで生着・機能し、CORIN で分取した細胞は少なくとも2年間腫瘍を作らなかったと報告されています事実。
3. 作り方 ― 分化誘導と、CORIN による純化
京都大学の治験で使われた製造の流れは、Nature 論文の方法の項に書かれています事実。
| 段階 | 内容(Nature 論文の記載) |
|---|---|
| 出発材料 | 健康な個人の末梢血から樹立した臨床用iPS細胞株。日本人で最も多いHLAハプロタイプ(HLA-A 24:02、HLA-B 52:01、HLA-DRB1 15:02 など)をホモ接合体でもち、日本人の17%に適合する。マスターセルバンクをつくり、患者ごとにそのバイアルを1本融解して製造 |
| 培養(0〜11/13日) | ラミニン511-E8断片でコートした培養板に 5.3×105 個/cm2 で播種(0日目)。11〜13日培養。維持培地には StemFit AK03N(味の素)、基材には iMatrix(マトリクソーム)を使用 |
| 純化(11〜13日) | 床板(フロアプレート)のマーカー CORIN が陽性の細胞を、蛍光標識細胞分取(FACS)で選び出す。分取装置は症例により異なる(BD Influx、MACSQuant Tyto、GigaSort) |
| 凝集塊の形成(〜30日) | 分取した細胞を神経分化培地で96ウェルプレートに入れ、球状の凝集塊(スフェア)にして30日目まで培養 |
| 最終製品 | 品質管理基準を満たした新鮮な細胞を、手術当日に使用 |
すべて事実(Sawamoto ら Nature 2025[参考資料1])。1〜3例目の細胞は京都大学で、4〜8例目の細胞は住友ファーマで製造されたと記載されています。
CORIN による純化の原理は、2014年の論文に示されています。iPS細胞由来の分化誘導では、腫瘍化しうる細胞や目的外の細胞が混ざります。 この論文は、床板マーカー CORINで細胞を分取すると、中脳ドーパミン神経前駆細胞のマーカー(FOXA2、LMX1A)を発現する細胞が効率よく得られ、 ラットに移植すると、腫瘍を作らずにドーパミン神経に分化して運動行動が改善した、と報告しています事実。
商業製造は、住友ファーマと住友化学の合弁会社 S-RACMO が担い、非自己iPS細胞由来の再生・細胞医薬品専用の商業用製造施設としては世界初とされる「SMaRT」(大阪府吹田市)で製造される予定と、同社が発表しています事実(会社自身の表現です)。 原材料は京都大学iPS細胞研究財団のiPS細胞ストックで、製造工程の一部ではエーザイが保有する細胞純化技術を活用していると記載されています事実。
4. 品質をどう測るか ― 純度と安全性の規格
細胞製品では、「何を、どの方法で、どこまで測るか」が製品の設計そのものです。 2020年の前臨床試験論文は、治験前の製造試験(マスターセルバンクから25バイアルを使って製造)の規格と結果を、表にして公開しています事実。
| 項目 | 方法 | 基準 | 結果(n=25) |
|---|---|---|---|
| CORIN陽性率(12日目) | フローサイトメトリー | 分取前 >10%/分取後 >90% | 分取前 31.35 ± 12.72%/分取後 93.15 ± 2.127% |
| 未分化マーカー TRA-1-60(12日目、分取前) | フローサイトメトリー | <1% | 0.0%(n=24) |
| 外観 | 顕微鏡観察 | 球状で異物なし | 適合 |
| 生存率 | フローサイトメトリー | >90% | 97.48 ± 1.608% |
| ドーパミン前駆細胞マーカー FOXA2/TUJ1 | フローサイトメトリー | >80% | 92.29 ± 3.964% |
| 未分化マーカー POU5F1、LIN28 | qPCR | 未分化細胞比 <1% | POU5F1 0.08 ± 0.15%、LIN28 0.14 ± 0.13% |
| 未分化マーカー OCT3/4・TRA-2-49/初期神経マーカー SOX1・PAX6 | フローサイトメトリー | いずれも <0.1% | いずれも <0.1% |
| 無菌・マイコプラズマ | 日本薬局方17(メンブレンフィルター/PCR) | 陰性 | 陰性 |
| エンドトキシン | 日本薬局方17(LAL比濁法) | ≤1 EU/mL | 解析せず |
| 残存プラスミド・がん関連遺伝子の変異 | qPCR、SNPアレイ、全ゲノム・全エクソーム解析 | 導入遺伝子の残存なし、異常なし | 検出されず・異常なし(n=6) |
すべて事実(Doi ら Nat Commun 2020 の Table 1[参考資料3])。前臨床試験の製造バッチに対する規格と結果で、承認製品の出荷規格そのものではありません。
承認製品側の資料では、厚生労働省は、製造過程の各段階で腫瘍化に関わるゲノム変異がないこと、未分化細胞が混入していないことを確認し、 出荷の要件として未分化iPS細胞の混入率を「極めて低い割合」とすることを規定した、と説明しています事実(具体的な数値は、本稿が参照した資料では確認できませんでした)。 非臨床安全性試験として、一般毒性試験(26週間)、造腫瘍性試験(39週間)、一般毒性・造腫瘍性の複合試験(52週間)、奇形腫形成試験(26週間)が行われ、 本細胞に関連した毒性変化および造腫瘍性は認められなかったとされています事実(PMDA 最適使用推進ガイドライン[参考資料11])。
分取前のCORIN陽性率の平均 31.35%、分取後の平均 93.15% から、濃縮の程度を求めます本稿の計算。
- 濃縮率:93.15 ÷ 31.35 = 約2.97倍(平均値どうしの比)
- 分取前に目的外だった割合:100 − 31.35 = 約68.7%(CORIN陰性の細胞)
前提と限界:平均値どうしの比であり、個々のバッチの比ではありません。分取の収率(目的の細胞をどれだけ回収できたか)は同表からは分かりません。 規格値(>10%、>90%)を超えていることを示す計算であり、承認製品の出荷規格を示すものではありません。
5. 素材技術者の視点①:純度を決めるのは、培養の化学だけではない
この製品の純度は、「どう分化させるか」という化学だけでなく、どう選び出すかという工程の部材にも依存しています。 前臨床試験論文は、この製造条件で抗CORIN抗体を含むすべての試薬がGMPグレードであり、 使い捨ての流路をもつ臨床用セルソーターを使ってクロスコンタミネーションのリスクを抑えたと記載しています事実。
ここから、素材・部材の面で次のような点が読み取れます(本記事による解説)。
- 抗体は「原料」:分取に使う抗体は、最終製品には残らなくても、純度を決める原料です。ロット間の結合特性の差やグレード管理が、そのまま製品の規格に響きます
- 流路は「使い捨ての接液材」:患者ごとに1バイアルから製造する方式では、バッチ間の汚染を避けるため、細胞が触れる流路を使い捨てにする意味が大きくなります。材質、溶出物、細胞の付着が品質の変動要因になります
- 基材と培地は「化学的に定義された材料」:ラミニン511-E8断片(組換えタンパク質)と、動物由来成分を含まない定義された培地(StemFit AK03N)が使われています事実。動物由来成分を避けることは、ロットの再現性とウイルス安全性の両面で意味があります(本記事による解説)
- マスターセルバンクの凍結液まで規定:前臨床論文では、iPS細胞の凍結にGMPグレードの Stem Cell Banker(タカラバイオ)を使い、プログラムフリーザーで毎分1℃で−80℃まで冷却し、液体窒素の気相で保管したと記載されています事実
細胞製品の素材は、細胞そのものを除けば「見えにくい」ところにあります。 抗体、使い捨て流路、基材、凍結液のどれもが、規制上は「製造に用いる原料・資材」として管理の対象になります(本記事による解説)。 GMPの考え方は本シリーズ「GMP」編、品質の作り込みは「QbDとCMC」編で詳しく扱います。
6. 移植の方法 ― 定位脳手術と、1か所あたりの細胞数
承認された用法及び用量・使用方法は、次のとおりです事実(厚生労働省 中医協資料[参考資料9])。
- 片側あたり5.4×106個を目標として、定位脳手術により両側の被殻に移植する
- 頭蓋骨の小孔1か所を通る3つの投与経路から、1経路あたり約1.8×106個を、1〜2 mm間隔で6〜9か所に分けて移植する
- 注入速度は約0.1 µL/秒
Nature 論文には手技の詳細があります。Leksell Gフレームと専用の注入針(論文の表記は TOP)を使い、注入部位は術中のコーンビームCTで確認し、 1半球あたり3経路、1経路あたり4〜8回の注入で、1つの被殻に2.1〜5.5×106個を移植したと記載されています事実。
用法及び用量の数値から換算します本稿の計算。
- 1か所あたり:約1.8×106 ÷ 9 = 2.0×105 個、約1.8×106 ÷ 6 = 3.0×105 個。つまり 約2〜3×105 個
- 1患者の合計目標:5.4×106 × 2 = 1.08×107 個
- 製品1本との比較:1チューブ(1 mL)に1×106個なので、合計目標は約11本分に相当(1.08×107 ÷ 1×106 = 10.8)
前提と限界:調製時の濃縮や予備の本数は公表資料で確認できなかったため、「11本」は単純な割り算です。実際に使う本数を示すものではありません。 1か所あたりの注入量(µL)も、注入時の細胞濃度が分からないため計算していません。
7. 免疫抑制と HLA ― 「他人の細胞」を脳に置く条件
承認製品は健康成人の細胞から作ったiPS細胞(非自己)を使うため、免疫反応を抑える薬の使用が用法に組み込まれています。 用法及び用量には、タクロリムス水和物の投与方法も記載されています事実(厚生労働省 中医協資料[参考資料9])。
- 初期は1回0.03〜0.15 mg/kgを1日2回、移植日の朝から経口投与
- 目標血中トラフ濃度を5〜10 ng/mLとし、血中濃度を見ながら調整。拒絶反応が認められた場合は10〜20 ng/mL
- 投与開始後1年を目安に、以後12週間かけて漸減して中止(必要に応じて延長)
治験では、移植日から52週間のタクロリムス投与が行われました。主要評価項目のひとつ(IACT16049-02試験)である累積拒絶反応抑制率(非発現率)は、 移植後12週と12か月のどちらの時点でも100%(6/6例)で、有効性解析対象の6例すべてで拒絶反応なしと判定されました事実(PMDA 最適使用推進ガイドライン[参考資料11])。 タクロリムスの副作用は7例中3例(42.9%)で、腎機能障害が2例などでした事実。
使われた細胞株は、HLA-A、-B、-DRB1 など主要な型をホモ接合体でもち、日本人の17%に適合するものです事実(Nature 論文[参考資料1])。 HLAを合わせることと免疫抑制剤の要否の関係は、本シリーズ「MHCとユニバーサルドナー」編と「自家と同種」編で詳しく扱います。
| 試験・製品 | 細胞の由来 | 免疫抑制の記載 |
|---|---|---|
| 京都大学の治験/アムシェプリ | 他人(健康成人)のiPS細胞。HLAホモ接合体の細胞株 | タクロリムス単剤。52週間投与、以後12週間で漸減(Nature では、12か月で半減、15か月で中止) |
| bemdaneprocel 第1相試験 | ヒト胚性幹(ES)細胞。凍結保存 | バシリキシマブ、メチルプレドニゾロン→プレドニゾン、タクロリムス(目標トラフ 4〜7 ng/mL)を1年間 |
| Schweitzer ら(2020) | 患者自身の皮膚細胞由来のiPS細胞。1名 | 免疫抑制なしで移植したと報告 |
すべて事実(厚生労働省[参考資料9]、Sawamoto ら[参考資料1]、Tabar ら[参考資料2]、Schweitzer ら[参考資料6])。細胞の由来が異なるため、免疫抑制の内容を単純に比べることはできません。
8. 臨床試験の結果をどう読むか
(1) 京都大学の治験(第I/II相、jRCT2090220384)
Nature 論文によると、これは単施設・非盲検の第I/II相試験で、京都大学病院で7名(50〜69歳)が両側移植を受け、24か月観察されました事実。 低用量が3名(片側 2.1〜2.6×106個)、高用量が4名(片側 5.3〜5.5×106個)です。 1例目は安全確認のため片側ずつ(8か月の間隔)移植されたため安全性評価のみに含まれ、有効性は両側同時に移植された6名で評価されました事実。
| 項目 | 結果(Nature 論文の記載) |
|---|---|
| 安全性 | 重篤な有害事象(入院や死亡)はなく、有害事象は73件(軽度72件、中等度のジスキネジア1件)。MRIで移植片の腫瘍様の増大なし |
| オフ時の運動症状(MDS-UPDRS Part III) | 解析対象6名のうち4名で改善。6名の平均変化は 9.5 点(20.4%)の改善 |
| オン時の運動症状 | 5名で改善。平均 4.3 点(35.7%)の改善 |
| ホーン・ヤール分類 | 4名で改善 |
| F-DOPA PET(被殻のKi値) | 44.7%増加。高用量群でより大きい増加 |
| ジスキネジア | UDysRS総スコアは、24か月時点で全7名のうち1名(PD06)を除く6名で上昇。抗パーキンソン病薬の用量は、治療上の調整が必要な場合を除き維持され、ジスキネジアの増加がみられたと記載 |
すべて事実(Sawamoto ら Nature 2025[参考資料1])。MDS-UPDRS Part III は医師が運動症状を評価する尺度で、オフ時は薬の効果が乏しい状態での評価です。
(2) 米国の第1相試験(bemdaneprocel、NCT04802733)
同じ日に Nature に掲載されたもう1本の論文は、ヒトES細胞由来の凍結保存・既製(off-the-shelf)のドーパミン神経前駆細胞製品の非盲検・第1相試験です。 12名が、低用量(片側の被殻に90万個、5名)と高用量(270万個、7名)に分かれて両側の被殻へ移植され、全員が1年間の免疫抑制を受けました事実。 安全性と忍容性の主要目的を達成し、細胞製品に関連する有害事象はなく、移植後18か月で被殻のF-DOPA PET取り込みが増加したと報告されています。 オフ時のMDS-UPDRS Part IIIは、18か月で低用量群が平均 8.6 点、高用量群が平均 23.0 点低下し、移植片誘発性ジスキネジアはなかったとされています事実(Tabar ら[参考資料2])。
細胞の由来(iPS細胞とES細胞)、細胞の状態(新鮮と凍結)、投与量、評価時点、患者の選択基準、免疫抑制の内容がいずれも異なります。 どちらも非盲検で対照群がなく、人数も少数です。Nature の2本の論文自身が、プラセボ効果や観察者バイアスの可能性、少数例であることを制限として挙げています事実。 数字の大小で製品の優劣を論じることはできません。
(3) 「承認」で何が判断されたのか
厚生労働省の資料は、承認の判断を次のように説明しています事実(中医協資料[参考資料10])。
- 試験は単施設・非盲検・非対照・少数例の探索的試験で、統計学的な検証を目的としておらず、有効性の閾値は事前に設定されていなかった
- 6例中4例でオフ時の MDS-UPDRS Part III が改善し、うち3例は文献上のプラセボによる最大の改善幅を大きく上回った
- 米国の自然歴データ(PPMI)では、同様の背景をもつ患者のオフ時 MDS-UPDRS Part III は24か月で平均 5.2 点悪化していた
- F-DOPA PET で被殻の取り込みが上昇し(Ki値は6例中5例、被殻/尾状核比は6例全例)、全例で生着が確認された
- 以上を総合し、6例という少数例でも「有効性を推定できる一定の基準を満たしている」と判断した
同じ資料は、運動症状の評価指標がいずれも主観的な評価であり、手術を受けたこと自体によるプラセボ効果が一定程度存在する可能性は否定できないとも明記しています事実。 また、治験の事前基準は「24か月でオフ時スコアが5点以上改善=著効、0〜4点の改善=有効」と定義され、6例中4例が著効と判断されました事実(PMDA ガイドライン[参考資料11])。 著効にならなかった2例は、1例が18か月まで改善した後に24か月で+3点、もう1例が+5点でした。
9. 日本の審査と承認 ― 条件及び期限付承認の中身
承認は条件及び期限付承認です。厚生労働省の資料は、この制度の下で「効能、効果又は性能を有すると推定されるもの」と判断する例のひとつとして、 「進行性かつ不可逆性の疾患であり、一定以上病態が進行すると既存薬の投与による有効性が期待しづらくなる疾患において、当該製品の投与群の一部において、 一定程度の臨床的意義のある情報が得られていること」を挙げ、本品はこれに該当すると判断したと説明しています事実。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 承認日・種別 | 2026年3月6日、条件及び期限付承認。期限は7年。新再生医療等製品(希少疾病用再生医療等製品)。先駆け審査指定(先駆審査(28再)第2号)の対象 |
| 効能、効果又は性能 | レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善 |
| 申請 | 2025年8月5日 |
| 製品の形 | 健康成人の末梢血単核球にエピソーマルベクターで遺伝子導入して作製したiPS細胞を培養し、分化・凝集させたドーパミン神経前駆細胞塊 |
| 承認条件 | 期限後に改めて行う承認申請までの間、本品を使用する全症例を対象とした製造販売後調査等を行うこと。医師が臨床成績と有害事象の知識を習得し、体制の整った医療機関で用いるよう講習等の措置を講ずること |
| 製造販売後臨床試験(予定) | 非盲検・非対照・多施設共同。主コホートは65歳以下30例、副コホートは65歳超5例。移植後96週で、主要評価項目はオフ時 MDS-UPDRS Part III 合計スコアのベースラインからの変化量。実施施設は6〜10施設 |
| 施設の要件(最適使用推進ガイドライン) | 特定機能病院、大学附属病院(脳神経外科を有する場合)、または日本脳神経外科学会・日本定位・機能神経外科学会の認定施設などで、定位脳手術の体制、MRI、専門医の配置、24時間の診療体制などを満たすこと。有効期間(洗浄開始後31時間)内に輸送、細胞調製、手術を完了する必要がある |
すべて事実(PMDA 2025年度承認品目一覧[参考資料12]、厚生労働省 中医協資料[参考資料9・10]、最適使用推進ガイドライン[参考資料11])。
65歳以下に有効性検証の対象を絞った理由について、同資料は、本品の作用機序から、非ドーパミン神経変性による運動症状が目立つ患者では効果が十分に出ない可能性が高いこと、 年齢は非ドーパミン神経変性の予測因子であること、治験で著効にならなかった例のひとつが高齢だったことを挙げています事実。 また最適使用推進ガイドラインは、治験で70歳超への移植経験がないことから、70歳超の患者への移植は有益性と危険性をより慎重に評価するよう求めています事実。
海外の承認状況について、厚生労働省の資料は、2026年3月時点でいずれの国・地域でも承認・販売されていないとし、米国では本品を用いた医師主導治験が実施中(1例目は移植後7か月)としています事実。 FDAの「承認済みの細胞・遺伝子治療製品」一覧(2026年9月17日更新)にも、パーキンソン病を対象とする製品は掲載されていません事実。
10. 海外の取り組み ― ES細胞由来、自家iPS細胞由来
パーキンソン病の細胞移植は、日本のiPS細胞由来製品のほかにも、細胞の由来と製品の形が異なる複数の取り組みが臨床試験に入っています。 ClinicalTrials.gov に登録された内容から、細胞の由来と段階を整理します。
| プログラム | 細胞の由来 | 段階(登録情報) | 登録番号 |
|---|---|---|---|
| bemdaneprocel(BlueRock Therapeutics) | ヒトES細胞由来。凍結保存の既製品 | 第1相は完了(登録12名)。第3相(exPDite-2):無作為化・偽手術対照・二重盲検、約102名、募集中。主要評価項目は、ジスキネジアを伴わない「オン時間」の変化 | NCT04802733/NCT06944522 |
| ANPD001(Aspen Neuroscience) | 患者自身の皮膚細胞からつくるiPS細胞由来(自家) | 第1/2a相、登録は招待による(予定9名) | NCT06344026 |
| STEM-PD(スウェーデン・英国) | ヒトES細胞由来 | 第1相、募集は終了し実施中(予定8名)。ルンド大学・ケンブリッジ大学など | NCT05635409 |
| CT1-DAP001(カリフォルニア大学サンディエゴ校) | iPS細胞由来(登録情報に京都大学・住友ファーマが協力機関として記載) | 第I/II相、医師主導治験、募集中(予定7名) | NCT06482268 |
すべて事実(ClinicalTrials.gov[参考資料13〜17]、2026年10月時点の登録情報)。登録情報は予定や状況が更新されます。ここでは各プログラムの優劣を示すものではありません。
STEM-PD については、2023年の論文が、GMPで製造した製品の品質試験と、ラットでの39週間のGLP安全性試験(毒性、造腫瘍性、体内分布)、効力試験の結果を報告し、 2022年に開始された8名の臨床試験に使われていると述べています事実(Kirkeby ら[参考資料7])。 また、2020年の NEJM 論文は、患者自身のiPS細胞から作ったドーパミン前駆細胞を1名に移植し、免疫抑制なしで行った例を報告しています事実。
11. 素材技術者の視点②:新鮮な細胞と凍結した細胞、設計の違い
同じ「ドーパミン神経前駆細胞を脳に移植する」製品でも、設計は大きく二つに分かれます。
| 設計 | 代表例 | 製造・物流の特徴 |
|---|---|---|
| 新鮮な細胞(非凍結) | アムシェプリ | 手術の都度製造。有効期間は洗浄開始後31時間。製造所で細胞を洗浄してから、輸送、細胞調製、手術までがその時間内事実 |
| 凍結細胞(既製) | bemdaneprocel | 凍結保存したバイアルを手術室で融解し、移植液に懸濁して10万個/µLに調整。単回の手術で、1側につき9回(3経路×3か所)に分けて注入事実 |
凍結の利点は時間の自由、新鮮の利点は融解後の損失がないことと読めます(本記事による解説)。ただし新鮮な細胞は、時間の枠が厳しく、拠点間の距離と手術日程に縛られます。 厚生労働省の資料も、手術の都度iPS細胞の分化誘導段階から製造を始めるため「供給に限界がある」と述べています事実(出典は本シリーズ「自家と同種」編でも扱います)。
この「時間の枠」を実際に支えているのは、材料・部材の領域です。ただし以下は、公表資料に条件の記載がなく、確認できなかった点です。
- 輸送容器と輸送液:31時間のあいだ細胞塊を保つ温度、容器、保存液の仕様は、本稿が参照した公表資料では確認できませんでした
- 注入針・カニューレ:京都大学の治験は専用の注入針(論文の表記は TOP)、bemdaneprocel の試験は改変カニューレ(Smart Flow、ClearPoint Neuro)を使っています事実。0.1 µL/秒という注入速度は、細胞塊が針の内部で受ける剪断や詰まりを抑える設計との関係が考えられますが、公表資料に理由の記載はなく、あくまで推測です(本記事による解説)
- 製品1本の構成:住友ファーマの発表の成分表には、構成細胞(1×106個)と副成分(生理食塩液 1 mL)が記載されています事実。細胞塊を保つ保存液・輸送液の詳細は確認できませんでした
脳という「やり直しのきかない」場所への単回の移植では、製品の「容器から針先まで」が一続きの設計対象になります(本記事による解説)。
12. 課題と未確定事項
(1) 有効性の検証はこれから
承認は有効性が「推定」された段階です。7年の期限内に、製造販売後臨床試験(65歳以下の30例など)で有効性を検証し、改めて承認申請を行う必要があります未確定/将来。 その結果は、本稿の調査時点(2026年10月)では出ていません。
(2) 対照のある試験の結果は未公表
bemdaneprocel の第3相試験(無作為化・偽手術対照・二重盲検)は、2026年10月時点で募集中で、主要評価項目の完了は2027年3月(予定)と登録されています未確定/将来(NCT06944522)。 Aspen Neuroscience の自家iPS細胞由来製品も第1/2a相の段階です未確定/将来。
(3) 長期の安全性と、患者の選び方
Nature 論文は、移植細胞の長期生存、移植片周囲の炎症、造腫瘍性については剖検による組織学的解析が必要であること、細胞移植に最適な患者の基準が未定義であること、 より多数の細胞をより広い範囲に移植する必要があるかもしれないことを、制限として挙げています事実。 PMDA のガイドラインも、移植片の増大や腫瘍形成の理論的リスクを完全には否定できないとして、定期的なMRI観察を求めています事実。
(4) 本稿で確認できなかったこと
- 承認製品の出荷規格の具体的な数値(未分化細胞の混入率など)
- 商業製造の工程条件、輸送容器・輸送液の仕様
- PMDA の審査報告書の内容(本稿の作成時点では内容を確認できなかったため、審査の議論の詳細は、厚生労働省の中医協資料と最適使用推進ガイドラインの記載の範囲にとどまります)
- EUでの承認状況(本稿では独自に確認していません。厚生労働省の資料による2026年3月時点の記載のみ引用)
- 承認製品は「1 mL・100万個・非凍結・有効期間31時間」の細胞塊の製品で、手術の都度つくられます事実
- 純度は CORIN 陽性細胞の分取で上げます。前臨床試験では分取前31.4%が分取後93.2%に、約2.97倍の濃縮です本稿の計算
- 1か所あたりの細胞数は約2〜3×105個、1患者の合計は約1.08×107個の目標です本稿の計算
- 承認は条件及び期限付き(期限7年)。7例の非盲検・非対照の治験にもとづき、有効性が推定されたとして承認されました事実
- 米国のES細胞由来の既製品は偽手術対照の第3相試験に進んでおり、結果は未確定です未確定/将来
13. 用語集
- パーキンソン病
- 中脳の黒質のドーパミン神経細胞が失われ、動作緩慢・固縮・静止時振戦などの運動症状が生じる病気。
- ドーパミン
- 神経伝達物質のひとつ。ドーパミン神経細胞の中でつくられる。
- ドーパミン神経前駆細胞
- ドーパミン神経細胞に分化する手前の細胞。移植後に脳内で成熟することを狙う。
- 黒質・線条体・被殻
- 黒質は中脳の領域。線条体は黒質からドーパミンを受け取る領域で、被殻はその一部。移植先は被殻。
- レボドパ
- 体内でドーパミンに変換される薬。パーキンソン病の薬物療法の中心。
- ジスキネジア
- 意図しない体の動き。薬の長期使用や、移植後に問題になることがある。
- CORIN
- 床板(フロアプレート)のマーカー。iPS細胞由来の分化細胞から、中脳のドーパミン神経前駆細胞を選ぶ目印に使う。
- FACS(蛍光標識細胞分取)
- 蛍光で標識した細胞を、1つずつ選び分ける装置と方法。
- 凝集塊(スフェア)
- 細胞が集まってできた球状の塊。
- MDS-UPDRS Part III
- 医師が運動症状を評価する尺度。点数が高いほど症状が重い。オフ時は薬の効果が乏しい状態での評価。
- F-DOPA PET
- ドーパミンの合成能力を画像でみる検査。被殻の取り込みで移植片の機能を調べる。
- 定位脳手術
- 頭部に固定した座標系を使い、脳の目標位置に針などを正確に進める手術。
- タクロリムス
- 免疫を抑える薬。他人の細胞の拒絶反応を抑えるために用いる。
- HLAホモ接合体
- 父母から同じHLAの型を受け継いでいる状態。細胞が多くの人に適合しやすい。
- 条件及び期限付承認
- 再生医療等製品に設けられた制度。有効性が推定され安全性が確認されたとして、条件と期限を付けて承認する。
- 最適使用推進ガイドライン
- 新規の作用機序をもつ製品を、適切な患者・施設に使うための要件を示した厚生労働省の指針。
14. 参考資料(一次情報)
- Sawamoto N, et al.「Phase I/II trial of iPS-cell-derived dopaminergic cells for Parkinson’s disease」Nature 641:971-977, 2025(jRCT2090220384) — doi.org
- Tabar V, et al.「Phase I trial of hES cell-derived dopaminergic neurons for Parkinson’s disease」Nature 641:978-983, 2025(NCT04802733) — doi.org
- Doi D, et al.「Pre-clinical study of induced pluripotent stem cell-derived dopaminergic progenitor cells for Parkinson’s disease」Nat Commun 11:3369, 2020 — doi.org
- Doi D, et al.「Isolation of Human Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Dopaminergic Progenitors by Cell Sorting for Successful Transplantation」Stem Cell Reports 2(3):337-350, 2014 — doi.org
- Kikuchi T, et al.「Human iPS cell-derived dopaminergic neurons function in a primate Parkinson’s disease model」Nature 548:592-596, 2017 — doi.org
- Schweitzer JS, et al.「Personalized iPSC-Derived Dopamine Progenitor Cells for Parkinson’s Disease」N Engl J Med 382:1926-1932, 2020 — doi.org
- Kirkeby A, et al.「Preclinical quality, safety, and efficacy of a human embryonic stem cell-derived product for the treatment of Parkinson’s disease, STEM-PD」Cell Stem Cell 30:1299-1314, 2023 — doi.org
- 住友ファーマ「日本における非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞『アムシェプリ』の製造販売承認取得に関するお知らせ」2026年3月6日 — sumitomo-pharma.co.jp
- 厚生労働省 中医協「再生医療等製品の取扱いについて(アムシェプリ)」総-11-4、令和8年4月8日(PDF) — mhlw.go.jp
- 厚生労働省 医薬局 医療機器審査管理課「再生医療等製品3品目の条件及び期限付き承認について」中医協 総-11 参考2、令和8年4月8日(PDF) — mhlw.go.jp
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン ラグネプロセル(販売名:アムシェプリ)」令和8年5月(PDF) — pmda.go.jp
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「2025年度承認品目一覧(再生医療等製品)」(PDF) — pmda.go.jp
- ClinicalTrials.govNCT04802733「Phase 1 Safety and Tolerability Study of MSK-DA01 Cell Therapy for Advanced Parkinson's Disease」 — clinicaltrials.gov
- ClinicalTrials.govNCT06944522「exPDite-2: A Phase 3 Study to Assess the Efficacy and Safety of Midbrain Dopaminergic Neuronal Cell Therapy (Bemdaneprocel)」 — clinicaltrials.gov
- ClinicalTrials.govNCT06344026「Phase 1/2a Study of ANPD001 in Parkinson Disease」 — clinicaltrials.gov
- ClinicalTrials.govNCT05635409「STEM-PD Trial」 — clinicaltrials.gov
- ClinicalTrials.govNCT06482268「Transplantation of Human iPS Cell-derived Dopaminergic Progenitors (CT1-DAP001) for Parkinson's Disease (Phase I/II)」 — clinicaltrials.gov
- U.S. FDA「Approved Cellular and Gene Therapy Products」(2026年9月17日更新) — fda.gov
- jRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)jRCT2090220384「パーキンソン病に対するヒトiPS 細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植による安全性及び有効性を検討する医師主導治験(第Ⅰ/Ⅱ相)」 — jrct.mhlw.go.jp
15. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| パーキンソン病が黒質のドーパミン神経細胞の喪失で運動症状を生じること、薬物療法の長期使用で運動の変動やジスキネジアが生じること、胎児中脳組織移植が二重盲検試験で有効性を示せず移植片誘発性ジスキネジアや倫理・供給の問題があったこと | 出典1 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08700-0 | 事実 |
| アムシェプリが1チューブ(1 mL)に1×10⁶個、副成分が生理食塩液1 mL、非凍結状態の製品であること。先駆け指定(2017年2月)、希少疾病用指定(2025年12月)、申請(2025年8月5日)、承認(2026年3月6日、条件及び期限付承認)。S-RACMOとSMaRT、iPS細胞ストックの利用、エーザイの細胞純化技術の活用 | 出典8 https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20260306.html | 事実 |
| 用法及び用量(片側5.4×10⁶個、3経路、1経路約1.8×10⁶個を6〜9か所、1〜2 mm間隔、約0.1 µL/秒)、タクロリムスの投与方法、承認条件、承認日、有効期間31時間・手術の都度製造、1容器あたり1×10⁶個、健康成人の末梢血単核球由来 | 出典9 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001687606.pdf | 事実 |
| 申請区分(新再生医療等製品、希少疾病用)、期限7年、先駆審査(28再)第2号、2026年3月時点で国内外未承認、米国での医師主導治験(1例目は移植後7か月)。承認判断の理由(閾値は事前に設定されていない、プラセボ効果の可能性、PPMI自然歴で24か月5.2点悪化、PET所見、「有効性を推定できる一定の基準」)。製造販売後臨床試験の設計(65歳以下30例・65歳超5例、96週、6〜10施設)。65歳以下に絞る理由。未分化iPS細胞混入率の出荷要件、腫瘍・拒絶への対応 | 出典10 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001687611.pdf | 事実 |
| 作用機序(被殻でドーパミン神経細胞に分化・成熟、レボドパの取込み・代謝能力の回復)、非臨床安全性試験の期間(26週・39週・52週・26週)と所見、治験の選択基準、表2の症例ごとのオフ時スコア(ベースライン・24か月・変化量)、著効の定義(5点以上)、累積拒絶反応抑制率100%(6/6)、有害事象の発現割合、タクロリムス副作用42.9%、施設要件と有効期間31時間内の輸送・調製・手術、70歳超への注意、移植片増大・腫瘍形成の理論的リスクとMRI観察 | 出典11 https://www.pmda.go.jp/files/000280712.pdf | 事実 |
| 7名(50〜69歳)の両側移植、低用量(片側2.1〜2.6×10⁶個)・高用量(5.3〜5.5×10⁶個)、1例目は片側ずつ。細胞株のHLA型と日本人17%への適合。製造の流れ(0日目の播種、5.3×10⁵個/cm²、ラミニン511-E8断片、StemFit AK03N、iMatrix、11〜13日のCORIN陽性細胞分取、分取装置、96ウェルでの凝集塊形成〜30日)。最終製品の組成(前駆細胞約60%、神経細胞約40%、TPH2発現なし)。有害事象73件、MRI所見、UDysRS、オフ時・オン時スコアの平均変化、ホーン・ヤール分類、F-DOPA PETのKi値44.7%増加、タクロリムス0.06 mg/kgの1日2回と12か月で半減・15か月で中止、Leksell Gフレームと専用針、コーンビームCT、3経路・4〜8回注入・2.1〜5.5×10⁶個。制限事項(剖検、最適患者の未定義、より多数・広範囲への移植の可能性) | 出典1 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08700-0 | 事実 |
| bemdaneprocel(ヒトES細胞由来、凍結保存の既製品)の12名(低用量90万個・5名、高用量270万個・7名)、1年間の免疫抑制(バシリキシマブ、メチルプレドニゾロン→プレドニゾン、タクロリムス目標4〜7 ng/mL)、細胞製品に関連する有害事象なし、18か月のF-DOPA PET、オフ時スコアの低下(低用量8.6点、高用量23.0点)、移植片誘発性ジスキネジアなし。凍結バイアルの融解と10万個/µLへの調整、改変カニューレ(Smart Flow)、被殻1つにつき9回の注入 | 出典2 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08845-y | 事実 |
| 前臨床試験の最終製品規格と結果(CORIN陽性率、生存率、FOXA2/TUJ1、未分化マーカー、無菌、エンドトキシン、ゲノム解析)。抗CORIN抗体を含む試薬がGMPグレードであること、使い捨て流路をもつ臨床用セルソーター、マスターセルバンクの凍結(Stem Cell Banker GMP、毎分1℃で−80℃、液体窒素の気相) | 出典3 https://doi.org/10.1038/s41467-020-17165-w | 事実 |
| CORIN陽性細胞がFOXA2・LMX1Aを発現する中脳ドーパミン前駆細胞であり、ラット移植で腫瘍を作らずに運動行動が改善したこと | 出典4 https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2014.01.013 | 事実 |
| ヒトiPS細胞由来ドーパミン前駆細胞が霊長類モデルで機能し、CORIN分取細胞が少なくとも2年間腫瘍を作らなかったこと | 出典5 https://doi.org/10.1038/nature23664 | 事実 |
| 患者自身のiPS細胞由来ドーパミン前駆細胞を1名に免疫抑制なしで移植した報告 | 出典6 https://doi.org/10.1056/NEJMoa1915872 | 事実 |
| STEM-PD製品のGMP製造、39週間のGLP安全性試験、2022年開始の8名の臨床試験 | 出典7 https://doi.org/10.1016/j.stem.2023.08.014 | 事実 |
| アムシェプリの製品の形(末梢血単核球にエピソーマルベクターで遺伝子導入して作製したiPS細胞を分化・凝集させた細胞塊)、承認日、条件及び期限付承認、希少疾病用・先駆け審査指定の区分 | 出典12 https://www.pmda.go.jp/files/000280052.pdf | 事実 |
| bemdaneprocel第1相試験の登録(12名、完了) | 出典13 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04802733 | 事実 |
| bemdaneprocel第3相試験(無作為化・偽手術対照・二重盲検、約102名、募集中、主要評価項目、2027年3月完了予定) | 出典14 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06944522 | 事実 |
| ANPD001の第1/2a相試験(患者自身の皮膚細胞由来のiPS細胞、予定9名) | 出典15 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06344026 | 事実 |
| STEM-PDの第1相試験(ヒトES細胞由来、予定8名、スウェーデン・英国) | 出典16 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05635409 | 事実 |
| CT1-DAP001の第I/II相試験(カリフォルニア大学サンディエゴ校、予定7名、協力機関に京都大学・住友ファーマ) | 出典17 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06482268 | 事実 |
| FDAの承認済み細胞・遺伝子治療製品の一覧(2026年9月17日更新)にパーキンソン病を対象とする製品が掲載されていないこと | 出典18 https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/cellular-gene-therapy-products/approved-cellular-and-gene-therapy-products | 事実 |
| 京都大学病院の治験(jRCT2090220384)が医師主導の第I/II相治験であること | 出典19 https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2090220384 | 事実 |
| 分取前後の濃縮率(93.15÷31.35=約2.97倍)、分取前の目的外細胞の割合(約68.7%)、1か所あたりの細胞数(約2〜3×10⁵個)、1患者の合計目標(1.08×10⁷個)、製品本数への換算(約11本分) | 本稿の計算。濃縮率は平均値どうしの比で、分取の収率は不明。細胞数の換算は用法及び用量の数値を割り・掛けただけで、調製時の濃縮や予備の本数は考慮していない | 本稿の計算 |
| 第2相後の有効性の検証結果、製造販売後臨床試験の結果、本承認の可否、bemdaneprocel第3相試験の結果 | 本稿の調査時点(2026年10月)で結果が公表されていない、または今後の審査・試験で判断される事項である | 未確定/将来 |
| 出荷規格の具体的数値、商業製造の工程条件、輸送容器・輸送液の仕様、PMDA審査報告書の内容、EUでの承認状況 | 本稿が参照した公表資料では確認できなかったため記載していない(解説) | 解説 |
| 抗体・使い捨て流路・基材・凍結液が「原料・資材」として管理対象になるという整理。前駆細胞を移植する理由の説明。新鮮な細胞と凍結細胞の設計の対比。注入速度と針内部の剪断の関係の推測。「容器から針先まで」が一続きの設計対象という整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各社・各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1〜図6が実際の解剖図・工程図・結果の統計図ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月1日/出典は一次情報(Nature 掲載の臨床試験論文、PMDA・厚生労働省の資料、規制当局の一覧、企業の公式発表、ClinicalTrials.gov)に限定しています。 工程や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 承認製品の出荷規格の数値、商業製造の工程条件、輸送容器・輸送液の仕様、PMDA審査報告書の内容、EUでの承認状況については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事は製造・材料・制度の観点からの技術解説であり、医療上の助言ではありません。図はすべて説明用の概念図です。ベクター作図とAI生成イメージのいずれも、 実際の解剖・顕微鏡像・製品の実物を示すものではありません。