INSTITUTION PROFILE / iPS細胞・再生医療
厚生労働省
― 日本の再生医療の「承認する・届出を受ける」制度の元締め
厚生労働省は日本の国の行政機関で、iPS細胞を含む再生医療の承認、指定、届出の受理、保険適用の提案を担います。審査の実務はPMDA、研究費の助成の事業はAMEDが担い、役割が分かれています。企業が製品として売る道と、医療機関が臨床研究・自由診療で提供する道の、2つの法律の入口を所管しているのが特徴です。本稿では、厚生労働省がiPS細胞・再生医療にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。
- 30秒でわかる厚生労働省
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- iPS細胞・再生医療で何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている企業・組織
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる厚生労働省
日本の再生医療には2つの法律の入口があります。企業が製品として売る道は医薬品医療機器等法(再生医療等製品)、 医療機関が臨床研究や自由診療で提供する道は再生医療等安全性確保法です 事実。 どちらも最終的に決めるのは厚生労働省(大臣)です。審査の実務はPMDA、研究費の助成の事業はAMEDが担い、 厚生労働省は承認し、指定し、届出を受け、保険の価格を審議にかける側に立ちます 事実。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
iPS細胞・再生医療の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では細胞を作りません。その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。
3. iPS細胞・再生医療で何をしているか
厚生労働省の再生医療の役割は、次のように分けられます 事実。
| 役割 | 中身 | 根拠となる資料 |
|---|---|---|
| 製品の承認と指定 | 再生医療等製品の製造販売の承認は厚生労働大臣が行う。医薬局の医療機器審査管理課が、再生医療等製品の製造業の許可、再審査、先駆的・希少疾病用などの指定を所管する | 医薬局の所掌事務、PMDAの製造販売手順の案内 |
| 条件及び期限付承認 | 均質でない再生医療等製品について、大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、条件と7年を超えない期限を付けて承認できる。運用の通知も厚生労働省が出す | 法第23条の26(ガイダンスが引用) |
| 臨床研究・自由診療の届出 | 医療機関が再生医療等を提供するには、事前に提供計画を出す手続が必要。人への影響の大きさで第1種〜第3種に分け、iPS細胞等は第1種の例とされる。2025年5月31日の改正で、細胞加工物を使わない遺伝子治療も対象になった | 再生・細胞医療・遺伝子治療のページ、安全性確保法の概要 |
| 施行状況 | 2026年6月30日時点で、認定再生医療等委員会167、特定細胞加工物等製造施設3,671(許可85、届出3,586)、再生医療等提供計画は治療6,743・研究85 | 施行状況の公表資料 |
| 研究倫理の指針 | ヒトES細胞を医療に使うために樹立する場合は、指針への適合性について大臣の確認が必要で、厚生科学審議会の再生医療等評価部会の意見を求める | 再生・細胞医療・遺伝子治療のページ |
| 保険適用の審議 | 承認された再生医療等製品は、中央社会保険医療協議会(中医協)に、医薬品の例か医療機器の例かと価格案が示される | 中医協の資料(2026年4月〜7月) |
| 研究開発の支援 | 医政局の研究開発政策課が、再生医療等の研究開発と安全性確保法を所管する。2026年度予算案には、再生・細胞医療・遺伝子治療の実用化の促進が盛り込まれた | 医政局の所掌事務、予算案の概要 |
| 通報窓口 | 2026年9月2日に、再生医療等の情報提供・通報窓口を開設 | 再生・細胞医療・遺伝子治療のページ |
企業が製品として売る道では、製造所のGCTP調査と承認審査を通る必要があります。 医療機関が提供する道では、提供計画と、細胞を加工する施設の許可・届出が必要です 事実。 材料や培地を供給する立場では、納め先が「承認を目指す企業」か「届出で提供する医療機関の加工施設」かで、 求められる品質資料や監査の中身が変わると考えられます(本稿の解釈)。
2026年に中医協へ示された、iPS細胞由来の2製品の価格案は次のとおりです 事実。収載の実施そのものは本稿では確認していません。
| 販売名(会社) | 中医協に示された扱い | 価格案と時期 |
|---|---|---|
| リハート(クオリプス) | 医療機器の例(区分C2)。原価計算方式、市場性加算10% | 53,200,000円。2026年9月1日に保険収載 |
| アムシェプリ(住友ファーマ) | 医薬品の例。原価計算方式、市場性加算10%、先駆加算10% | 55,306,737円。2026年5月20日に薬価基準収載 |
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | 厚生労働省が持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | 再生医療等製品の承認、条件及び期限付承認、先駆的指定、外国製造業者の認定。提供計画の受理と、緊急命令・改善命令の運用。保険適用と価格の案の提示 | 審査の実務(PMDA)。研究費の助成の事業の運営(AMED)。保険適用の最終的な審議(中医協) |
| 地域 | 日本の市場と、日本の患者に提供される再生医療等。日本向けに製造する国外の施設も、認定を通じて対象になる(海外の特定細胞加工物製造施設の認定は19件:韓国13、台湾3、中国1、オーストリア1、ギリシャ1) | 他国の承認や研究倫理の決定。国外の患者向けの提供 |
| 規模 | 定員32,939人(2026年度末、省全体)。内部部局は4,520人。2026年度予算案は一般会計35兆433億円 | 再生医療だけの職員数・予算(公表資料に独立した数字がない) |
| 国際的な参照先 | 法令・通知・承認品目を公表している | 他国の規制当局を従わせる権限 |
定員と予算は省全体の数字で、年金、労働、福祉なども含みます 事実。 施行状況の件数は再生医療等安全性確保法にもとづく届出や許可の数で、iPS細胞を使ったものだけの数ではありません。 なお、中医協資料の「収載予定」は当時の記載です。アムシェプリは2026年5月20日、リハートは同年9月1日に実際に収載されました 事実。
5. 関わっている企業・組織
日本の再生医療では、誰が決め、誰が審査し、誰が研究費を配り、誰が価格を審議するかが分かれています。厚生労働省の公表資料から確認できる分担を示します。
役割分担
| 組織 | 再生医療での役割 | 根拠 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 | 承認、指定、外国製造業者の認定、提供計画の受理、通知・ガイダンスの発出、保険適用の提案 | 出典2・3・12・14・15 |
| PMDA | 相談、承認審査、製造所の調査。承認の最終決定はしない | 出典14 |
| AMED | 研究費の助成の事業。厚生労働省のページが事業ページを案内している | 出典1 |
| 薬事・食品衛生審議会/厚生科学審議会 | 条件及び期限付承認で大臣に意見を述べる(前者)。ヒトES細胞の樹立指針の確認などで意見を求められる(後者) | 出典1・12 |
| 中医協 | 再生医療等製品の保険上の取扱いと価格案を審議する | 出典9・10・11 |
| クオリプス、住友ファーマ | リハート、アムシェプリの申請者。承認と価格案の資料に名前が載る | 出典9・10・11・13 |
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| iPS細胞由来の製品が増えるほど、条件及び期限付承認から本承認へ進める判断が、制度の焦点になる | 2026年3月に2品目が条件及び期限付承認を受けた。法は7年を超えない期限を定め、2025年10月の通知が運用を整理した | 推測 |
| 2026年3月承認の2品目が期限内に本承認を得られるか | 各品目の期限と承認条件は本稿では確認していない | 未確定/将来 |
| リハートとアムシェプリの保険収載 | リハートは2026年9月1日に収載(クオリプスの適時開示)。アムシェプリは2026年5月20日に薬価基準収載(住友ファーマの製品情報) | 事実 |
7. 用語集
- 医薬品医療機器等法
- 医薬品、医療機器、再生医療等製品の品質・有効性・安全性を確保する法律。製品として売る道の根拠。
- 再生医療等安全性確保法
- 医療機関が再生医療等を提供する手続と、細胞を加工する施設の許可・届出を定める法律。
- 再生医療等提供計画
- 医療機関が再生医療等を提供する前に、認定委員会の意見を聴いて大臣に出す計画。
- 特定細胞加工物
- 再生医療等に使う、人や動物の細胞に培養などの加工をしたもの(承認された製品を除く)。
- 中医協
- 中央社会保険医療協議会。保険で使える医療の価格などを審議する。
8. 出典
- 厚生労働省 再生・細胞医療・遺伝子治療について(2025年5月31日の法改正、手続、審議会、ヒトES細胞の樹立指針、AMEDの事業ページ、通報窓口。2026年9月2日更新分を含む)。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html
- 厚生労働省 医薬局の所掌事務(医療機器審査管理課:再生医療等製品の製造業の許可、再審査、指定)。 https://www.mhlw.go.jp/content/001280485.pdf
- 厚生労働省 医政局の所掌事務(研究開発政策課:再生医療等の研究開発と再生医療等安全性確保法)。 https://www.mhlw.go.jp/content/000701455.pdf
- 厚生労働省 令和8年度 厚生労働省組織・定員の概要(令和8年度末定員32,939人、内部部局4,520人)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10108000/001620628.pdf
- 厚生労働省 令和8年度予算案の概要(一般会計35兆433億円、研究開発環境の整備71億円、研究開発によるイノベーションの推進557億円)。 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/26syokanyosan/dl/01-01.pdf
- 厚生労働省 所在地案内(東京都千代田区霞が関1-2-2)。 https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/index.html
- 厚生労働省 再生医療等安全性確保法について(3分類、提供計画の手続。第1種の例にiPS細胞等)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000565836.pdf
- 厚生労働省 再生医療等安全性確保法の施行状況について(2026年6月30日現在)。 https://www.mhlw.go.jp/content/001590173.pdf
- 中央社会保険医療協議会 総-11-1 再生医療等製品の医療保険上の取扱いについて(一覧)(2026年4月8日)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001687603.pdf
- 中央社会保険医療協議会 総-5 再生医療等製品の保険適用について(2026年5月13日。アムシェプリの価格案)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001699508.pdf
- 中央社会保険医療協議会 総-2 再生医療等製品の保険適用について(2026年7月22日。リハートの価格案)。 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001726219.pdf
- 厚生労働省(PMDA掲載) 再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画策定に関するガイダンス(法第23条の26の条文)。 https://www.pmda.go.jp/files/000267914.pdf
- PMDA 2025年度承認品目一覧(再生医療等製品。リハート、アムシェプリの承認)。 https://www.pmda.go.jp/files/000280052.pdf
- クオリプス「リハートの保険収載に関するお知らせ」2026年9月1日。 https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260901529995.pdf
- 住友ファーマ「アムシェプリ 製造販売承認・薬価基準収載のご案内」2026年5月20日。 https://sumitomo-pharma.jp/product/amchepry/
- PMDA 再生医療等製品の製造販売手順について(承認は厚生労働大臣、申請書はPMDAの窓口)。 https://www.pmda.go.jp/files/000216666.pdf
- 厚生労働省 中央省庁等改革に伴う厚生労働省設置法等の施行について(平成12年12月27日 医薬発第1318号)。 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta3826&dataType=1&pageNo=1
- PMDA 再生医療等製品外国製造業者の認定申請について(認定は厚生労働大臣、構造設備の調査はPMDA)。 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/foreign-mfr/0011.html
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称、所在地(霞が関1-2-2) | 事実 | 出典6 https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/index.html |
| 中央省庁等改革にともなう厚生労働省設置法の施行 | 事実 | 出典15 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta3826&dataType=1&pageNo=1 |
| 定員32,939人(2026年度末)、内部部局4,520人 | 事実 | 出典4 https://www.mhlw.go.jp/content/10108000/001620628.pdf |
| 一般会計35兆433億円(2026年度予算案)、研究開発関連の予算項目 | 事実 | 出典5 https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/26syokanyosan/dl/01-01.pdf |
| 再生医療等製品の承認は厚生労働大臣が行い、申請書はPMDAの窓口に出すこと | 事実 | 出典14 https://www.pmda.go.jp/files/000216666.pdf |
| 医薬局の所掌事務(製造業の許可、再審査、指定) | 事実 | 出典2 https://www.mhlw.go.jp/content/001280485.pdf |
| 医政局の研究開発政策課の所掌事務 | 事実 | 出典3 https://www.mhlw.go.jp/content/000701455.pdf |
| 2025年5月31日の法改正、手続、審議会、ヒトES細胞の樹立指針の確認、AMEDの事業ページへの案内、通報窓口 | 事実 | 出典1 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/index.html |
| 再生医療等の3分類と提供計画の手続(第1種の例にiPS細胞等) | 事実 | 出典7 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/000565836.pdf |
| 認定委員会167、製造施設3,671、提供計画の件数、海外施設の認定19件(2026年6月30日) | 事実 | 出典8 https://www.mhlw.go.jp/content/001590173.pdf |
| リハート、アムシェプリの医療保険上の取扱い案(医療機器/医薬品) | 事実 | 出典9 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001687603.pdf |
| アムシェプリの価格案55,306,737円(2026年5月13日の資料) | 事実 | 出典10 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001699508.pdf |
| リハートの価格案53,200,000円(2026年7月22日の資料) | 事実 | 出典11 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001726219.pdf |
| 条件及び期限付承認の要件、7年を超えない期限、審議会の意見聴取 | 事実 | 出典12 https://www.pmda.go.jp/files/000267914.pdf |
| リハート、アムシェプリの承認日(2026年3月6日)と承認の形 | 事実 | 出典13 https://www.pmda.go.jp/files/000280052.pdf |
| 外国製造業者の認定は大臣、構造設備の調査はPMDA | 事実 | 出典16 https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/foreign-mfr/0011.html |
| 機関の4つの型の区分、分担図の図示 | 本稿の計算 | 本稿による整理(出典1・2・3・14の記載から作成) |
| 納め先によって材料に求められる品質資料が変わること | 推測 | 出典1・7の2つの道の手続の違いからの本稿の解釈 |
| 条件及び期限付承認から本承認への判断が制度の焦点になること | 推測 | 出典12・13の記載からの本稿の解釈 |
| 2026年3月承認の2品目が期限内に本承認を得られるか | 未確定/将来 | 各品目の期限と承認条件の内容は本稿では確認していない |
| リハートの2026年9月1日の保険収載、アムシェプリの同年5月20日の薬価基準収載 | 事実 | クオリプスの2026年9月1日適時開示、住友ファーマの製品情報(上記参考資料) |
| 再生医療だけの職員数・予算 | 未確定/将来 | 出典4・5に独立した数字なし。本稿では推計しない |
最終更新:2026年10月1日/Troy Technical
本稿の数値は厚生労働省・PMDAの公式サイトと公表資料に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。医療上の助言ではありません。