🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

カリフォルニア再生医療研究所(CIRM)|iPS細胞・再生医療 機関解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

INSTITUTION PROFILE / iPS細胞・再生医療

CIRM(カリフォルニア再生医療研究所)
― 州民の投票でできた、再生医療に「お金を配る」州機関

CIRMは米国カリフォルニア州の機関で、2004年の住民投票(提案71)で設立され、2020年の提案14で追加の資金を得ました。自分では細胞も治療薬も作らず、州債でまかなった資金を、研究から臨床試験まで段階ごとに配ることが仕事です。規制や承認の権限はありません。本稿では、CIRMがiPS細胞・再生医療にどこまで影響を持つのかを、資金の規模とその届く範囲に絞って整理します。

構成:CIRMの公式サイト(機関紹介、年次報告書、公募ページ、FAQ、iPS細胞バンク閉鎖の理事会宛て覚書)を一次情報として使用/最終更新 2026年10月

カリフォルニア再生医療研究所(CIRM) — AI生成の概念画像
AI生成の概念画像。解説対象の技術・活動をイメージしたもので、実在の製品・施設・職員の写真や実測結果ではありません。
この記事でわかること
  1. 30秒でわかるCIRM
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. iPS細胞・再生医療で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 資金の流れとiPS細胞バンク
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるCIRM

正式名称California Institute for
Regenerative Medicine
日本語では「カリフォルニア再生医療研究所」。略称CIRM
国・地域米国カリフォルニア州本部はサウスサンフランシスコ
機関の種類州の機関有権者の住民投票で設立。連邦政府の機関ではない
設立2004年提案71が59%の賛成で可決。2020年に提案14が追加
人数規模理事会 最大35名職員数は本稿で確認できず。理事会はICOCと呼ばれる
予算約5億ドル/年2025-26年度の承認予算は5億570万ドル
iPS細胞・再生医療への関与研究資金の配分探索研究から臨床試験、iPS細胞バンクの造成まで
影響が及ぶ範囲主に州内の機関臨床試験への助成だけは州外の組織も応募できる
まず押さえるべき1点

CIRMの力は、規制ではなく「州民が投票で認めた債券資金の配分」から来ています。提案71が30億ドル、提案14が55億ドルで、あわせて85億ドルの一般財源債です 事実。この資金は有限で、2024年の配分計画の時点で残りは38.6億ドルでした 事実。iPS細胞では、CIRMが約3,200万ドルをかけて2,600株のiPS細胞バンクをつくり世界に配布しましたが、利用が想定を下回り、2025年7月に閉鎖しました 事実。資金で資源をつくっても、収益で維持できなければ畳む ― CIRMはそういう「有限の公的資金」で動く機関です。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

iPS細胞・再生医療の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では製品を売りません。その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

iPS細胞・再生医療を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では製品を売らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 研究開発に予算を配る AMED/CIRM 何を研究させるか 届く範囲=予算の対象 政策・規制を決める 承認・制度・法律 厚生労働省/FDA 何を市場に出せるか 届く範囲=自国の領域 標準を決める 指針・ガイドライン ISSCR/ICH どう作り確かめるか 届く範囲=使う側の自主 場をつくる 研究拠点・年次大会 CiRA/ISSCR 誰が研究し会うか 届く範囲=参加者 CIRMは「資金を出す」型が中心。臨床拠点の網で「場」も持つが、承認はFDAの役割 同じiPS細胞・再生医療でも、どの型の機関かによって影響の届き方がまったく違う
図1 iPS細胞・再生医療に関わる機関の4つの型と、CIRMの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。CIRMは資金を主とし、臨床拠点(Alpha Clinics)などの網で「場」も担うため2つの枠を強調しました。

3. iPS細胞・再生医療で何をしているか

CIRMは、探索研究・橋渡し・臨床・基盤整備・教育の5本柱に資金を配ります 事実。2025-26年度の承認予算(5億570万ドル)の内訳は次のとおりです。

柱2025-26年度の予算中身
探索研究(Discovery)1億5,820万ドル幹細胞と遺伝子がどう働くかを調べる初期の基礎研究
橋渡し研究(Translational)1億6,000万ドル臨床試験の申請に必要な基礎データをそろえる段階(現在は前臨床開発と呼ぶ)
臨床研究(Clinical)1億3,500万ドル臨床試験を最後まで進めるための資金
基盤整備(Infrastructure)5,100万ドル共有研究室、製造ネットワーク、臨床拠点などの設備と体制
教育(Education)150万ドル次世代の再生医療研究者・技術者の育成
具体的な事業中身区分
臨床試験の助成(CLIN2)第1〜3相の臨床試験の完了を支援。助成額は800万〜1,500万ドル、期間は最長4年。2026-27年度は9〜16件の採択を見込む。CIRMはこれまでに100件超の臨床試験に資金を出したとしている事実
iPS細胞バンクの造成(2013〜2018年)9件の助成に計3,200万ドル。2,184人のドナーから2,600株のiPS細胞株を同一の方法で作製し、2015年9月から世界へ配布。細胞株の所有はCIRM、運営はFUJIFILM Cellular Dynamicsが2018年から担当事実
iPS細胞バンクの閉鎖(2025年)運営会社が2025年7月16日で契約を終えると通告。移管には約40万ドル、維持に年約30万ドルが必要で、収益では賄えないため閉鎖。CIRMは各株の少量を保管事実
臨床拠点・共有研究室・製造網Alpha Clinics(9か所の医療機関)、11の共有研究室(4,800万ドル超)、9つのGMP施設をつなぐ製造ネットワーク(1,800万ドル)事実

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点CIRMが持っているものCIRMが持っていないもの
権限州債の資金を公募・審査して配る権限。理事会(ICOC)が資金計画と研究方針を決める再生医療等製品の承認(米国ではFDA)。CIRMは特定の臨床試験への参加を推奨しないと明記している
地域カリフォルニア州の組織が中心。ほとんどの公募は「California Organization」だけが応募できる州外の組織への一般的な助成。例外は臨床試験助成のCLIN2で、州外の組織も応募でき、助成対象の費用に制限がかかる
期間提案71と提案14で認められた資金の範囲内資金を追加する権限(資金を追加する仕組みは本稿では確認できず)
規模承認予算は年約5億ドル。残る資金は2024年時点で38.6億ドル職員数は本稿の確認範囲では不明
数字の読み方の注意

CIRMの公式ページには、CIRM資金から生まれた民間投資や雇用の大きな数字(「250億ドル超」など)も載っていますが、これはCIRMが公表した経済効果の推計で、監査された実績とは性質が違います。本稿では使いません。また、上の臨床試験数(100件超)や9か所のAlpha ClinicsはCIRM自身の集計です。第三者による検証はしていません 未確定/将来。

5. 資金の流れとiPS細胞バンク

CIRMの資金はどう流れるか(カリフォルニア州) 州民の投票で認められた債券資金を、CIRMが5つの柱に配る。承認はCIRMの権限の外にある 州民の投票:2004年 提案71(30億ドル)・2020年 提案14(55億ドル) 一般財源債 計85億ドル(残り38.6億ドル:2024年時点) CIRM(理事会ICOC 最大35名) 2025-26年度の承認予算 5億570万ドル 探索研究 Discovery 1億5,820万ドル 橋渡し研究 Translational 1億6,000万ドル 臨床試験 Clinical 1億3,500万ドル 基盤整備 Infrastructure 5,100万ドル 教育 Education 150万ドル iPS細胞に関わる資金の例 iPS細胞バンク造成 2013〜2018年・計3,200万ドル FUJIFILM Cellular Dynamics 作製・運営(2018年〜) 2025年7月17日に閉鎖 少量の保管のみ継続 ※製品の承認はFDAの役割で、CIRMの資金の流れとは別
図2 CIRMの資金の流れとiPS細胞バンクの経緯。出典:CIRMの機関紹介、2025年次報告書、iPS細胞バンク閉鎖の覚書 事実。図中の分類は本稿の整理です 本稿の計算。

iPS細胞バンクの目的は、アルツハイマー病や肝疾患のような複雑な遺伝的背景をもつ病気をiPS細胞でモデル化することでした。覚書は、細胞株がアカデミアと企業の双方に配布されたこと、使われた量は想定を下回り、年間収入が運営費に届かなかったことを閉鎖の理由に挙げています 事実。本シリーズで扱う企業のうち、FUJIFILM Cellular Dynamicsはこのバンクの作製と運営を担いました。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
CIRMの資金は臨床段階と神経疾患へ重心を移していく2024年の配分計画は、残る38.6億ドルのうち11.4億ドルを神経疾患の研究に充てるとし、希少疾患4〜7件の生物製剤承認申請(BLA)と、15〜20件の後期試験到達を目標に掲げている推測
iPS細胞バンクのように、収益で維持できない共通基盤は縮小や閉鎖の判断を受けやすいバンクは使用が想定を下回り、維持費をCIRMが無期限に負担することになるとして閉鎖された推測
提案14の資金が尽きた後に州が再び資金を出すかどうか提案71・14とも、住民投票で資金が決まった。次の資金に関する公式な計画は、本稿の確認範囲では見つからなかった未確定/将来

7. 用語集

提案71/提案14
カリフォルニア州の住民投票の議案。提案71は2004年にCIRMを創設し30億ドル、提案14は2020年に55億ドルを追加した。
一般財源債
州が返済を約束して発行する債券。CIRMの資金はここから出る。
ICOC
独立市民監督委員会。CIRMの理事会にあたり、最大35名で構成される。
Alpha Clinics
CIRMが支援する、再生医療の臨床試験に経験のある医療機関の網。9か所。
CLIN2
CIRMの臨床試験助成。第1〜3相の試験完了を支援する。
FDA
米国食品医薬品局。再生医療等製品の承認を担う。CIRMとは別の組織。

8. 出典

  1. CIRM About Us(提案71・提案14、総額85億ドルの一般財源債、第3の10年へ)。 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/
  2. CIRM Our Mission(提案71の30億ドル、2020年の提案14の55億ドル)。 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/our-mission/
  3. CIRM Impact Across California(2004年設立、100件超の臨床試験、Alpha Clinics 9か所)。 https://www.cirm.ca.gov/our-impact/
  4. CIRM Our Governing Board(ICOC:最大35名の理事会)。 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/governing-board/
  5. CIRM 2025 Annual Report(2024-25年度・2025-26年度の予算、残額38.6億ドル、共有研究室、製造ネットワーク、本部所在地)。 https://www.cirm.ca.gov/wp-content/uploads/2025/10/remediated_CIRM24_Annual-Report25_100125.pdf
  6. CIRM Strategic Allocation Framework(残る資金の配分方針と6つの目標)。 https://www.cirm.ca.gov/strategic-goals/
  7. CIRM Clinical Trial(CLIN2)Awards(助成額、期間、応募資格、2026-27年度の採択見込み)。 https://www.cirm.ca.gov/clin2/
  8. CIRM Grants Management FAQ(「California Organization」のみが応募できる公募と、州外が応募できるCLIN2)。 https://www.cirm.ca.gov/grants-management-faq/
  9. CIRM IPSC Repository(2025年7月17日に閉鎖、FUJIFILM Cellular Dynamicsの運営)。 https://www.cirm.ca.gov/researchers/ipsc-repository/
  10. CIRM Memorandum: CIRM iPSC Repository Closure(2025年5月20日付。iPS細胞バンクの規模、費用、閉鎖理由)。 https://www.cirm.ca.gov/wp-content/uploads/2025/05/Memo-CIRM-iPSC-Bank-Closure-0520-2025.pdf
  11. CIRM Find Cell & Gene Therapy Trials(CIRMは特定の臨床試験への参加を推奨しないとの注記)。 https://www.cirm.ca.gov/clinical-trials/

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
提案71(2004年・30億ドル・59%)と提案14(2020年・55億ドル)、一般財源債の合計85億ドル事実出典1 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/
CIRMの使命、提案71と提案14の金額事実出典2 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/our-mission/
2004年設立、100件超の臨床試験への資金、Alpha Clinics 9か所事実出典3 https://www.cirm.ca.gov/our-impact/
理事会ICOCが最大35名であること事実出典4 https://www.cirm.ca.gov/about-cirm/governing-board/
2024-25年度・2025-26年度の予算と内訳、残額38.6億ドル、共有研究室11(4,800万ドル超)、製造ネットワーク1,800万ドル、本部所在地事実出典5 https://www.cirm.ca.gov/wp-content/uploads/2025/10/remediated_CIRM24_Annual-Report25_100125.pdf
配分計画の目標(神経疾患11.4億ドル、BLA 4〜7件、後期試験15〜20件)事実出典6 https://www.cirm.ca.gov/strategic-goals/
CLIN2の助成額・期間・応募資格・採択見込み事実出典7 https://www.cirm.ca.gov/clin2/
「California Organization」のみが応募できる公募と、州外が応募できるCLIN2事実出典8 https://www.cirm.ca.gov/grants-management-faq/
iPS細胞バンクの閉鎖日、運営会社事実出典9 https://www.cirm.ca.gov/researchers/ipsc-repository/
iPS細胞バンクの規模(2,600株・2,184人・3,200万ドル)、閉鎖の理由と費用事実出典10 https://www.cirm.ca.gov/wp-content/uploads/2025/05/Memo-CIRM-iPSC-Bank-Closure-0520-2025.pdf
CIRMは特定の臨床試験への参加を推奨しないとの注記事実出典11 https://www.cirm.ca.gov/clinical-trials/
CIRM公表の経済効果の推計(250億ドル超など)が存在すること、およびCIRM自身の集計であること事実出典3 https://www.cirm.ca.gov/our-impact/
機関の4つの型の区分、図2の分類本稿の計算本稿による整理
職員数、資金追加の仕組みと将来の見通し、CIRM集計値の第三者検証未確定/将来出典1〜11に記載なし。本稿では推計しない
第6章の見通し2項目推測出典5・6・10の内容からの本稿の解釈

最終更新:2026年10月1日/Troy Technical
本稿の数値はCIRMの公式サイトと年次報告書、理事会宛ての覚書に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。