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リプロセル|iPS細胞・再生医療 企業解説

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COMPANY PROFILE / iPS細胞・再生医療

リプロセル
― iPS細胞の「素材屋」として稼ぎながら、4つの再生医療製品に踏み込む小さな会社

リプロセル(REPROCELL Inc.、東証グロース 4978)は、iPS細胞とその分化細胞、試薬、受託サービスを研究者に供給して売上の約9割を稼ぎ、その上で再生医療製品の開発に踏み込んでいる横浜の企業です。 国内で承認申請まで進んだStemchymalは脂肪由来の間葉系幹細胞で、iPS細胞由来ではありません。iPS細胞由来の品目は、ALS向けの臨床試験を準備している段階です。 2026年3月期は売上22億3,300万円(−25.0%)、営業損失8億6,000万円でした。 本稿は、会社の決算短信・説明資料・公式発表と、ClinicalTrials.govの登録情報だけを一次情報とします。治療の選択に関する助言ではありません。

構成:リプロセルの決算短信(2026年3月期、2026年5月14日)と第1四半期決算短信(2026年4〜6月)、決算説明資料、2026年6月・9月の公式発表、ClinicalTrials.govを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるリプロセルと、iPS細胞・再生医療での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(小型の上場企業)
  5. iPS細胞・再生医療にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は何を目指しているか
  9. iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるリプロセルと、iPS細胞・再生医療での立ち位置

正式名称株式会社リプロセル(REPROCELL Inc.)英文名 REPROCELL Inc.
本社神奈川県横浜市港北区
新横浜
9F MetLife新横浜ビル(決算説明資料の記載)
上場東証グロース 4978代表取締役社長 Chikafumi Yokoyama氏(決算短信)
この分野での区分iPS細胞・細胞治療
(研究用細胞の供給+再生医療製品の開発)
主力の売上は研究支援事業
2026年3月期の売上22億3,300万円前期比 −25.0%。営業損失8億6,000万円
開発中の再生医療製品4品目Stemchymal、iPS由来神経グリア、TIL、GPC-1 CAR-T
最も進んだ品目Stemchymal
国内で承認申請済み
2026年6月24日に申請。iPS細胞由来ではない
拠点日本・米国・英国・インド決算説明資料の記載
まず押さえるべき1点

iPS細胞・再生医療に関わる企業は、大きく大手製薬・事業会社/ゲノム編集・遺伝子治療/iPS細胞・細胞治療の3種類に分かれます。 リプロセルは「iPS細胞・細胞治療」の会社ですが、稼ぎ頭は治療薬ではなく、iPS細胞を使った研究用の細胞・試薬・受託サービスです 事実。 2026年3月期の売上22億3,300万円のうち、研究支援事業が19億5,200万円(約87%、本稿の計算)、メディカル事業が2億8,100万円でした 本稿の計算。 開発中の再生医療製品のうち、国内で承認申請まで進んだStemchymalは脂肪由来の間葉系幹細胞で、iPS細胞由来ではありません。iPS細胞由来の品目(神経グリア細胞)は、ALS向けの臨床試験の準備段階です 事実。 つまりリプロセルは「iPS細胞の素材屋」としての事業と、「既に臨床試験が進んだ細胞を導入して売る」事業と、「iPS由来の自社品目」を並走させている会社です。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:社名は「株式会社リプロセル」、英文では REPROCELL Inc. と大文字で書きます。ロゴは公式サイトの構造化データに記載された画像(bioserve・stemgent・alvetex・biopta という下位ブランドを併記したグループロゴ)を取得して設置しており、生成画像による再現はしていません。 海外の子会社はREPROCELL USA、REPROCELL Europe(英国グラスゴー)、Bioserve Biotechnologies India(ハイデラバード)です。

公式サイト:https://www.reprocell.com/

3. iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか

iPS細胞・再生医療に関わる企業の3つの類型 同じ「再生医療の会社」でも、治し方がまったく違う 大手製薬・事業会社 ゲノム編集・遺伝子治療 iPS細胞・細胞治療 提携・買収で参入し、販売網を持つ 遺伝子を直接書き換えて治す 細胞そのものを作り、移植する Vertex/Novartis Bristol Myers Squibb ほか CRISPR Therapeutics/Intellia Beam/Prime Medicine ほか Fate/Sana クオリプス/Heartseed ほか 後期臨床と販売網の資金力 編集ツールと安全性評価の深さ 細胞製造と品質管理の量産力 自社の細胞・遺伝子の基盤は薄い 提携先の方針転換に左右される 製造費と長期の安全性が重い リプロセルは右端の「iPS細胞・細胞治療」。研究用の細胞の供給と、再生医療製品の開発の二本立て 稼ぎ頭はiPS細胞を使った研究用の細胞・試薬・受託サービス。承認申請済みの品目はiPS由来ではない
図1 iPS細胞・再生医療に関わる企業の3類型と、リプロセルの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。区分は本稿による整理で、決算短信の事業の説明に基づきます

治療の仕組みで見ると、リプロセルは複数の仕組みを同時に持つ小さな会社です。本シリーズの技術解説「iPS細胞」「間葉系幹細胞」「エクソソーム」「CAR-T細胞」「ゲノム編集」「MHCとユニバーサルドナー」「細胞製造とセルバンク」「GMP」が、一社の中に並んでいます。

治療の仕組みリプロセルでの使い方区分
iPS細胞(RNA初期化)ウイルスを使わないRNA方式でiPS細胞を作る技術が中核。臨床用(GMP)のiPS細胞をマスターセルバンクとして提供し、FDAにDMF(ドラッグ・マスター・ファイル)を登録事実
間葉系幹細胞Stemchymal:台湾Steminent社が開発した脂肪由来の間葉系幹細胞。リプロセルは日本の脊髄小脳変性症での独占的な商業化権を持つ。静脈への点滴で投与事実
iPS由来の細胞iPS細胞から作る神経グリア細胞をALSなどの神経変性疾患向けに開発(臨床試験の準備段階)。iPS由来エクソソームの製造販売も事実
ゲノム編集2025年4月にHLAノックアウトのiPS細胞株(StemEdit)を発売。2026年1月に、AI設計のゲノム編集システムを使う臨床グレードの編集サービスを開始事実
CAR-T・TIL(自家)TIL療法(患者本人のがん組織から採ったリンパ球を増やして戻す)とGPC-1を狙うCAR-T。いずれも患者本人の細胞を使う自家事実

4. 会社の規模(小型の上場企業)

リプロセルは東証グロース上場の小型企業です。会計年度は3月期で、金額は百万円単位の開示です。

百万円2025年3月期2026年3月期前期比
売上高2,9782,233−25.0%
営業損益−130−860―
経常損益45−581―
親会社株主に帰属する当期純損益103−591―
研究支援事業の売上―1,952−19.1%
メディカル事業の売上―281−50.2%
期末の現金及び現金同等物2,8232,603―

出典:決算短信(2026年3月期)。決算短信のセグメント損益は経常利益ベースで、研究支援事業は利益9,600万円(前期比 −84.5%)、メディカル事業は損失4,300万円(前期は利益1億5,800万円)、全社共通の費用は6億3,300万円で、合計は経常損失5億8,100万円です(営業損失8億6,000万円とは基準が違います)。

財政状態(2026年3月末)値
総資産96億5,200万円
純資産88億4,600万円
自己資本比率91.7%
営業活動によるキャッシュ・フロー(2026年3月期)−3億8,300万円
2027年3月期の予想売上26億2,900万円(+17.7%)、営業損失6億3,000万円
2027年3月期の第1四半期(4〜6月)売上5億4,600万円(+14.9%)、営業損失3億1,000万円

赤字が続く一方で自己資本比率は91.7%と高く、資産の中身は現金と有価証券が中心です。決算短信は、有価証券が2,785百万円増え、投資有価証券が2,489百万円減ったと説明しています 事実。2026年5月には、米国の投資家(CVI Investments)への第三者割当による最大約50億円の資金調達プログラムを決議しました(後述) 事実。

5. iPS細胞・再生医療にかけているリソース

人・金・外部への出資・買収・導入・大学や公的資金との連携の4点を、一次情報で確認できたかどうかで整理します。

観点一次情報で確認できたこと確認状況
人(拠点・人員)日本(横浜)、米国(メリーランド)、英国(グラスゴー)、インドの4拠点。再生医療センター「殿町リプロセル再生医療センター」(特定細胞加工物製造の許可施設)を持つ。従業員数は、本稿が参照した決算短信・説明資料から読み取れず拠点は確認。人員は確認できず
金(研究開発費・設備)研究開発費の金額は決算短信に記載なし。有形固定資産の取得は9,800万円(2026年3月期)、補助金の受取は8,900万円。2026年6月から第三者割当で最大約50億円を調達するプログラムを開始一部確認。研究開発費は確認できず
外部への出資・買収・導入Steminent(台湾)からStemchymalの日本での独占的な商業化権を導入。スペインのHistocellに出資(提携会社)。ファンド(Cell Innovation Partners)は2026年3月期に連結から除外確認できた
大学・研究機関・公的資金慶應義塾大学産婦人科(TIL療法の共同研究)、京都大学と国際医療福祉大学(GPC-1 CAR-Tの共同研究)、日本医療研究開発機構(AMED)の公募事業に採択(2024年12月)。孤児再生医療等製品の指定により、開発費の補助(最大50%)などの対象確認できた
素材技術者の視点:「臨床用のiPS細胞をどう作るか」が売り物

決算短信によると、リプロセルのiPS細胞はRNA初期化で作られ、遺伝子変異のリスクと、外来遺伝子・ウイルスが残るリスクを小さくした「臨床に最適な」細胞だと説明されています 事実。 材料の観点では、(1) 初期化に使うRNAの合成と品質、(2) ドナーの細胞(採取・保管)、(3) マスターセルバンクの作製と試験、(4) 日米欧の規制に合わせた記録、が品質を決めます。 同社は日本、米国、スペイン(提携先のHistocell)の3拠点でマスターセルバンクとワーキングセルバンクを作れる体制を2025年10月までに整え、米国拠点では2026年3月にマスターセルバンクの製造サービスを始めたと書いています 事実。 遺伝子編集では、HLAを欠失させた「ユニバーサルドナー」候補のiPS細胞株を研究用に発売しています。臨床用の遺伝子編集サービスは、特許の許諾関係を単純にする狙いのAI設計の編集システムを使うと説明しています 事実。

培地・増殖因子・凍結液などの具体的な資材は開示されていません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2018年12月Stemchymalが孤児再生医療等製品に指定(日本)優先審査と開発費の補助の対象に
2020年2月〜2022年5月日本でStemchymalの第2相試験。投与を2020年2月に開始し、2022年5月に観察まで完了安全性の確認と有効性の評価
2023年6月慶應義塾大学とTIL療法の製造方法の技術移転に関する共同研究契約を締結自家の免疫細胞療法に参入
2024年10月慶應義塾大学と、TIL療法の新しい培養法に関する共同研究契約を追加早期の商用化が目的と会社が説明
2024年11月StemchymalのメーカーSteminentが、厚生労働大臣による外国製造業者の認定を取得日本での承認申請の要件の一つを満たす
2024年12月GPC-1 CAR-Tの研究開発がAMEDの公募事業に採択公的資金による開発
2025年2月供給先の米国Gameto社が、同社のiPS細胞を基にした技術で、FDAから第3相試験のIND承認を受けた臨床用iPS細胞の供給実績
2025年4月HLAノックアウトのiPS細胞株「StemEdit Human iPSC non-HLA」シリーズを発売拒絶を避けるユニバーサルドナー細胞の研究用
2025年10月Histocell(スペイン)が、リプロセルの臨床グレードiPS細胞を使ったマスターセルバンクの製造でGMP認証を取得日米欧の3拠点体制
2026年1月AI設計のゲノム編集システムを使う臨床グレードの編集サービス「StemEdit」を開始特許の許諾が複雑な従来技術の代替と説明
2026年3月米国拠点で臨床グレードiPS細胞のMCB製造サービスを開始。日本でiPS細胞を使った再生医療等製品2品目が条件・期限付で初めて承認(会社の説明)国内市場の環境の変化
2026年6月24日Stemchymalの国内製造販売承認申請(脊髄小脳変性症のSCA3・SCA6)。同年6月11日に最初の第三者割当優先審査の目標審査期間は申請受理から9か月
2026年9月TOHOホールディングスとStemchymalの国内流通の基本合意(9月17日付、29日公表)。Polyphron(米国)にiPS細胞を提供する協業(28日公表)承認後の供給体制と、AI創薬への供給

7. 今後の計画

Stemchymalの承認審査中申請2026年6月24日。優先審査の目標は受理から9か月
iPS神経グリア(ALS)臨床試験の準備時期は未公表
TIL療法慶應大で10人まで実施予定2026年までに。商用化を目指す
GPC-1 CAR-T食道がん等で臨床試験の準備時期は未公表

会社は2027年3月期に売上26億2,900万円(前期比 +17.7%)、営業損失6億3,000万円を予想し、4つの再生医療製品の早期の事業化を最優先と書いています 事実。 第三者割当の資金は、TIL療法の臨床試験と承認申請の準備(第2回の分では3億円)などに充てる計画です 事実。

確認できなかったこと

次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。

Stemchymalの承認の可否と時期(審査中で、承認見込みは未確定)/薬価/iPS由来神経グリアの臨床試験の開始時期/従業員数/研究開発費の金額/日本の第2相試験の試験番号。 報道ベースの数字や、調査会社の推計は本稿では採用しません。

8. この会社はiPS細胞・再生医療で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
研究支援事業を短中期の収益基盤、メディカル事業を中長期の成長の柱と位置づける決算短信が両事業をそのように説明事実
iPS細胞の「素材・受託製造」で、世界の細胞治療開発を支える立場を目指す日米欧3拠点のGMP体制、DMF登録、MCB製造サービス、StemEditの臨床グレード編集推測
iPS由来の自社品目の前に、既に臨床試験が進んだ細胞を導入して売るStemchymalは導入品で承認申請済み。iPS由来神経グリアは臨床試験の準備段階推測
AI・データとの接点を作るPolyphronへのiPS細胞の提供、IBM Research・Hartree Centreとの機械学習基盤(Pharmacology-AI)事実
健康・予防の市場にも広げるPersonal iPS(JTBと販売)、Well-Mill、遺伝子年齢測定キット事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

リプロセルの売上の約87%を占める研究支援事業は、2026年3月期に売上が19.1%減り、営業利益は84.5%減りました 事実。 一方、メディカル事業も売上が50.2%減って、セグメント損益(経常利益ベース)が損失に転じています 事実。 それでも会社が最優先に置くのはメディカル事業の4つの品目です。第三者割当による調達の資金使途も、TIL療法の臨床試験や、GPC-1 CAR-Tの早期臨床試験の準備が中心です 事実。 ここから本稿は、リプロセルが「安定した収益を生む素材屋」を維持しながら、その収益の減少を、外部資金で補って臨床開発に踏み込んでいる局面にあると読みます。会社自身がそう言っているわけではありません 推測。

9. iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング

リプロセルを中心とした提携関係 決算短信・会社の発表に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない リプロセル 東証グロース Steminent(台湾) Stemchymalの独占商業化権を導入 Gameto(米国) 臨床用iPS細胞の供給先 Histocell(スペイン) MCB製造のGMP認証・出資先 慶應義塾大学 TIL療法の共同研究 京都大学・国際医療福祉大学 GPC-1 CAR-T(AMED事業) TOHOホールディングス Stemchymalの国内流通の基本合意 CVI Investments(Heights Capital)― 第三者割当の引受先 共同開発・導入/導出・親子関係 製造受託・供給 出資・買収・持分 公的資金・大学・研究機関
図2 リプロセルを中心とした提携関係。出典:2026年3月期の決算短信、第1四半期決算短信、会社の発表。図に含めたのは記載がある関係だけです。このほか、JTB(Personal iPSとエクソソームの販売)、Polyphron(iPS細胞の提供、2026年9月)、Nanion・INTERSCIENCE・InnoME(機器の取扱い)があります。
提携先の読み方

リプロセルの提携は、「導入する側」と「供給する側」が混在しています。Stemchymalは台湾Steminent社から導入し、製造もSteminentが担い、リプロセルは日本での販売を担当します 事実。 一方、iPS細胞はGametoなどに供給する側です。 本稿の企業解説『FUJIFILM Cellular Dynamics』と見比べると、iPS細胞の供給という同じ事業でも、FCDIが大手グループの資本で大型の製造拠点を持つのに対し、リプロセルは小規模で、日米欧に拠点を分散して提携先と組んでいる、という違いが見えます(本稿の見方)。

10. 提供している技術・製品・サービス

承認された再生医療製品は、本稿の時点でありません(Stemchymalは審査中)。開発中の品目は次のとおりです。いずれも未承認の治験薬/開発品で、有効性・安全性は確立していません。

品目内容・対象段階主要評価項目
Stemchymal脂肪由来の同種間葉系幹細胞。脊髄小脳変性症(SCA3・SCA6)承認申請済み(日本、2026年6月24日)。日本の第2相は2020〜2022年。台湾の第2相はNCT02540655(Steminent)。米国の第2相はNCT06397274(募集前)SARAスコア(運動失調の評価)
iPS由来神経グリア細胞iPS細胞から作る神経グリア細胞。ALSなどの神経変性疾患前臨床(ALSモデルのラットで運動機能の低下を抑制)。臨床試験の準備中―
TIL療法患者本人のがん組織から採ったリンパ球を増やして戻す。子宮頸がん慶應義塾大学の先進医療Bで受託製造中(2026年までに10人の予定)―
GPC-1 CAR-TGPC-1を狙うCAR-T。食道がんなどの固形がん前臨床。臨床試験の準備中―
臨床グレードiPS細胞再生医療製品の出発材料として提供(法人向け)供給中。DMF登録―

公表されているStemchymalの結果は次のとおりです。限られた人数の第2相で、承認や治療の効果を保証するものではありません。

結果内容比較対照・条件
日本の第2相:安全性重い有害事象は全例で観察されなかった2020年2月に投与開始、2022年5月までに完了
日本の第2相:有効性(主要評価項目のSARAスコア)実薬群で、スコアの上昇(悪化)が自然経過より抑えられる傾向自然経過(外部の資料)との比較。傾向であり、有意差とは書かれていない
日本の第2相:サブグループ投与前スコアが11以上の群で、プラセボ群に比べて52週までの変化が統計的に有意に改善(P=0.042)サブグループ解析。事前に指定されたかは本稿の資料から確認できず
素材技術者の視点:細胞を「遠くから運ぶ」品目の難しさ

Stemchymalは台湾のSteminent社が製造し、日本に運ばれる体制です(2026年6月24日の発表) 事実。 生きた細胞製品を海外で作って国内で使うには、(1) 細胞の凍結・保管・輸送の温度管理、(2) 製造所が日本の外国製造業者として認定されること(2024年11月に取得)、(3) 国内で流通を担う企業との取り決め(TOHOホールディングスと基本合意)が必要です。 材料・容器の観点では、輸送中の細胞の生存率を保つ保存液と容器、解凍後の取扱い手順が、品質を左右します(本稿の解説で、会社が資材名を開示しているわけではありません)。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
赤字が続く2026年3月期は営業損失8億6,000万円。2027年3月期も営業損失6億3,000万円の予想事実
主力事業の売上が減少研究支援事業の売上は前期比19.1%減、営業利益は84.5%減事実
承認が確定していないStemchymalは審査中で、承認の可否・時期は未確定。日本の第2相の有効性は、傾向と、サブグループでの有意差にとどまる未確定/将来
既存株主の持分の希薄化第三者割当は4回に分けた最大約50億円の調達で、株式と新株予約権がそれぞれ発行済株式の12.3%程度(累計)と説明事実
製造を海外の提携先に依存StemchymalはSteminent(台湾)が製造。iPS細胞のMCB製造もスペインのHistocellなどを活用事実
事業が広がり資源が分散4つの再生医療製品、臨床検査、研究用細胞、健康関連サービスを小規模で並走させている(本稿の見方)推測
為替の影響予想は1ドル150円、1ポンド200円などを前提とし、中東情勢など世界情勢にも言及事実

12. 用語集

RNA初期化
RNAを使ってiPS細胞を作る方法。DNAのように細胞のゲノムに組み込まれにくいとされる。
間葉系幹細胞
骨・脂肪・軟骨などになれる体性幹細胞。炎症を抑える作用などが研究されている。
孤児再生医療等製品
患者数が少なく医療上の必要性が高い再生医療等製品に与えられる指定(日本)。開発費の補助や優先審査の対象になる。
条件・期限付承認
安全性が確認され有効性が推定された再生医療等製品を、条件と期限をつけて早く承認する制度(日本)。
SARAスコア
運動失調の程度を診察で点数化する尺度。0〜40点で、高いほど重い。
TIL療法
がん組織の中にいるリンパ球を取り出して増やし、本人に戻す治療。
DMF
FDAに登録しておく製造・品質の情報。取引先の申請で参照できる。
MCB/WCB
マスターセルバンク/ワーキングセルバンク。細胞を安定に供給するために保管する基準の細胞。
第三者割当
特定の相手に新株などを発行して資金を調達する方法。
AMED
日本医療研究開発機構。国の医療研究の資金配分機関。
概念図:iPS細胞を素材として供給しながら、再生医療製品の開発も並走させる小規模な会社の姿AI生成による概念図
図3 リプロセルの事業の二本立てを示す概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. リプロセル Consolidated Financial Results for the Fiscal Year Ended March 31, 2026(決算短信、2026年5月14日)。事業内容、セグメント別売上、財政状態、2027年3月期の予想。 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
  2. リプロセル Consolidated Financial Results for the Three Months Ended June 30, 2026(第1四半期決算短信)。第三者割当の資金調達プログラム。 https://www.reprocell.com/hubfs/202606_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Three%20Months%20Ended%20June%2030%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
  3. リプロセル Financial Results Briefing for the Fiscal Year Ended March 2026(決算説明資料)。拠点、パイプライン、資金調達の概要。 https://www.reprocell.com/hubfs/Financial%20Results%20Briefing%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%202026.pdf
  4. リプロセル REPROCELL Submits Application for Manufacturing and Marketing Approval in Japan for Stemchymal(2026年6月24日)。 https://www.reprocell.com/news/reprocell-submits-application-for-manufacturing-and-marketing-approval-in-japan-for-stem-cell-therapy-stemchymal-for-spinocerebellar-ataxia-sca3-and-sca6
  5. リプロセル Notice Regarding Execution of a Basic Agreement with TOHO HOLDINGS CO., LTD.(2026年9月29日)。Stemchymalの国内流通。 https://www.reprocell.com/hubfs/20260929_Notice%20Regarding%20Execution%20of%20a%20Basic%20Agreement%20with%20TOHO%20HOLDINGS%20CO.%2c%20LTD.%20Concerning%20Domestic%20Distribution%20of%20the%20Stem%20Cell%20Product%20%E2%80%9CStemchymal%E2%80%9D.pdf
  6. リプロセル Notice Regarding Collaboration to Advance AI-Driven Human Tissue Research Using iPSCs(2026年9月28日)。Polyphronとの協業。 https://www.reprocell.com/hubfs/20260928_Notice%20Regarding%20Collaboration%20to%20Advance%20AI-Driven%20Human%20Tissue%20Research%20Using%20iPSCs_revised.pdf
  7. ClinicalTrials.gov NCT02540655(台湾でのStemchymalの第2相。Steminent Biotherapeutics実施)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT02540655
  8. ClinicalTrials.gov NCT06397274(米国でのStemchymalの第2相。募集前)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06397274
  9. リプロセル 公式サイト:トップページ(ロゴの確認、事業案内)。 https://www.reprocell.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、所在地、上場市場、代表者、4拠点事実出典1・3 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/hubfs/Financial%20Results%20Briefing%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%202026.pdf
2026年3月期の売上高・営業損益・経常損益・純損益、セグメント別売上事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
財政状態(総資産、純資産、自己資本比率)、キャッシュ・フロー事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
2027年3月期の予想と第1四半期(2026年4〜6月)の実績事実出典1・2 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/hubfs/202606_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Three%20Months%20Ended%20June%2030%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
第三者割当(CVI Investments)の仕組み、最大約50億円、4回、12.3%、第2回の内容事実出典2・3 https://www.reprocell.com/hubfs/202606_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Three%20Months%20Ended%20June%2030%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/hubfs/Financial%20Results%20Briefing%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%202026.pdf
Stemchymal:Steminentからの導入、孤児再生医療等製品の指定、日本の第2相の結果事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
Stemchymalの国内承認申請(2026年6月24日)と優先審査の目標審査期間事実出典4 https://www.reprocell.com/news/reprocell-submits-application-for-manufacturing-and-marketing-approval-in-japan-for-stem-cell-therapy-stemchymal-for-spinocerebellar-ataxia-sca3-and-sca6
TOHOホールディングスとの基本合意事実出典5 https://www.reprocell.com/hubfs/20260929_Notice%20Regarding%20Execution%20of%20a%20Basic%20Agreement%20with%20TOHO%20HOLDINGS%20CO.%2c%20LTD.%20Concerning%20Domestic%20Distribution%20of%20the%20Stem%20Cell%20Product%20%E2%80%9CStemchymal%E2%80%9D.pdf
台湾の第2相(NCT02540655)、米国の第2相(NCT06397274)事実出典7・8 https://clinicaltrials.gov/study/NCT02540655 https://clinicaltrials.gov/study/NCT06397274
iPS由来神経グリア(ALS)の前臨床、TIL療法(慶應義塾大学)、GPC-1 CAR-T(AMED、京都大学、国際医療福祉大学)事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
臨床グレードiPS細胞(RNA初期化)、DMF登録、Gameto社のIND、Histocellの GMP認証、3拠点体制事実出典1・3 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/hubfs/Financial%20Results%20Briefing%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%202026.pdf
StemEdit(HLAノックアウト株、臨床グレードの編集サービス)、MCB製造サービス事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
Personal iPS、iPS由来エクソソーム、JTBとの販売事実出典1 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf
Polyphronとの協業(2026年9月28日)事実出典6 https://www.reprocell.com/hubfs/20260928_Notice%20Regarding%20Collaboration%20to%20Advance%20AI-Driven%20Human%20Tissue%20Research%20Using%20iPSCs_revised.pdf
売上に占める研究支援事業の割合(約87%)本稿の計算本稿による計算(1,952÷2,233)
3類型の区分、リプロセルを「iPS細胞・細胞治療で研究用細胞の供給が主」とする整理本稿の計算本稿による整理
Stemchymalの承認の可否と時期、薬価未確定/将来出典1・4 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/news/reprocell-submits-application-for-manufacturing-and-marketing-approval-in-japan-for-stem-cell-therapy-stemchymal-for-spinocerebellar-ataxia-sca3-and-sca6
従業員数、研究開発費、iPS由来品目の臨床試験の開始時期、日本の第2相の試験番号未確定/将来出典1・3 https://www.reprocell.com/hubfs/202603_Consolidated%20Financial%20Results%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%2031%2c%202026%20(Under%20Japanese%20GAAP).pdf https://www.reprocell.com/hubfs/Financial%20Results%20Briefing%20for%20the%20Fiscal%20Year%20Ended%20March%202026.pdf
iPSの素材・受託製造で細胞治療開発を支える立場を目指すという読み推測本稿の解釈。根拠は出典1・3の3拠点体制とDMF
既に臨床が進んだ細胞を導入して売るという読み推測本稿の解釈。根拠は出典1のStemchymalの位置づけ
主力事業の減少を外部資金で補い臨床開発に踏み込む局面にあるという読み推測本稿の解釈。根拠は出典1・2の売上・資金使途
FCDIとの比較(規模と拠点の違い)、資源が分散するというリスク推測本稿の見方であり、会社の公表内容ではない
保存液・容器・輸送に関する解説推測本稿の解説であり、会社が資材名を開示しているわけではない

最終更新:2026年10月1日/Troy Technical
本稿の数値はすべてリプロセルの法定開示(決算短信)と公式発表、ClinicalTrials.govの登録情報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は医療上の助言ではなく、特定の治療や製品を勧めるものでも、他社の製品との優劣を述べるものでもありません。