COMPANY PROFILE / iPS細胞・再生医療
ヘリオス
― iPS細胞の技術基盤を持ちながら、現在の主力は成人の骨髄由来の幹細胞製品「HLCM051」。承認済みの製品はまだない
ヘリオスは、2011年にiPS細胞由来の網膜の細胞を使う加齢黄斑変性の治療を目指して設立された会社です。 ただ、2026年10月時点で承認を受けた製品はなく、2025年12月期の売上収益は104百万円にとどまります。 いまの最優先は、iPS細胞ではなく成人の骨髄由来の体性幹細胞製品「HLCM051(invimestrocel)」による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療薬で、日本での条件及び期限付き承認の申請を準備しています。 iPS細胞の側では、遺伝子編集で免疫拒絶を起こしにくくした「ユニバーサルドナーセル(UDC)」、遺伝子改変したNK細胞「eNK」、眼科の網膜色素上皮細胞「HLCR011」(住友ファーマ系のRACTHERAが主導)を持ちます。 また、有価証券報告書には継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況が記載されています。 本稿では、何を投じ、誰と組み、どこまでが確認され、何が未確定かを一次資料の範囲で整理します。
- 30秒でわかるヘリオスと、iPS細胞・再生医療での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- iPS細胞・再生医療にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はiPS細胞・再生医療で何を目指しているか
- iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるヘリオスと、iPS細胞・再生医療での立ち位置
有楽町半期報告書(2026年8月)記載。神戸に研究所
(体性幹細胞が主力)iPS細胞は長期戦略の柱、短期の主力は体性幹細胞
点滴で投与HLCM051。iPS側は免疫拒絶を抑えた細胞と、改変NK細胞
ヘリオスは「iPS細胞の会社」として知られていますが、事業の中身は二層に分かれています 事実。 会社の戦略は、短期は日本で承認の見通しが立つ体性幹細胞製品(HLCM051)、長期はiPS細胞を使う基盤技術という二本立てです。 iPS細胞の側では、眼科の網膜色素上皮細胞の治験は2019年から住友ファーマ側(現RACTHERA)が主体に進めており、ヘリオス自身が主導するiPS細胞由来製品の治験は、一次資料の範囲では始まっていません。 さらに、会社は決算で「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況」を明示しています(対応策により重要な不確実性はないと会社は判断)。 本稿は製品の優劣や治療の適否を述べるものではなく、会社の現状を一次資料で整理するものです。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「株式会社ヘリオス」、英文名は HEALIOS K.K. です。2011年2月に「株式会社日本網膜研究所」として設立され、2013年9月に現社名へ変更しました。 米国子会社は Healios NA, Inc. で、別の会社の名称と混同しないよう注意が必要です。 製品名「HLCM051」は、米国Athersys社が開発したMultiStem(一般名 invimestrocel)に当たり、ヘリオスは2024年4月にAthersys社の実質的な全資産を取得して、グローバルでの権利を持っています。 iPS細胞由来の眼科製品「HLCR011」は、住友ファーマの事業を承継したRACTHERAが主体となって治験を進めています。
公式サイト:https://www.healios.co.jp/3. iPS細胞・再生医療の世界で、この会社はどこにいるか
治療の仕組みの面では、ヘリオスの主力は健康な成人ドナーの骨髄由来の体性幹細胞を、点滴で静脈投与する他家の細胞治療です。 有価証券報告書は、この細胞が炎症免疫細胞の活性化を抑えることで効果を発揮すると考えられている、と説明しています 事実。 iPS細胞の側は、免疫拒絶を起こしにくくした他家iPS細胞(UDC)という「素材」と、遺伝子を導入して強化したNK細胞(eNK)、網膜色素上皮細胞の懸濁液などです。 他家と自家の違いは本シリーズの技術解説「自家と同種」、免疫拒絶を抑える仕組みは「MHCとユニバーサルドナー」を参照してください。
4. 会社の規模
ヘリオスは売上がほとんどない、研究開発型の小さな会社です。金額は日本円、国際会計基準、会計年度は1〜12月です 事実。
| 指標(連結・百万円) | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 121 | 560 | 104 | 15 |
| 税引前損失(△) | △3,626 | △4,061 | △2,126 | △2,278 |
| 親会社の所有者に帰属する損失(△) | △3,823 | △4,235 | △2,217 | △2,286 |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | △2,822 | △1,817 | △3,165 | △2,514 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 6,722 | 3,672 | 5,679 | 9,074 |
| 従業員数(人、期末) | 64 | 65 | 75 | ― |
2025年12月期の研究開発費は2,024百万円(前期1,960百万円)、2026年1〜6月は1,733百万円(前年同期1,066百万円)でした。 発行済株式は115,727,200株(2025年12月31日)で、新株予約権による潜在株式が24,404,700株(発行済株式総数の21.1%)あります。
有価証券報告書と半期報告書は、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」と明記しています。 理由は、営業損失とマイナスの営業キャッシュ・フローが続いていることです。 会社は、収益源の確保、ARDS治療薬の開発、提携先の開拓、コスト削減、新株予約権の行使などの対応策を講じるため、現時点では重要な不確実性はないと判断しています 事実。 これは破綻を意味するものではありませんが、資金調達の成否が事業計画に直結する会社であることを示します。
5. iPS細胞・再生医療にかけているリソース
ヘリオスは体性幹細胞とiPS細胞の2分野に同じ会社の資金を使っており、iPS細胞だけの金額は開示されていません。確認できたものとできなかったものを分けます。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(人員) | 連結従業員75名(研究開発部門57名、管理部門18名、2025年12月31日、臨時雇用者27名は外数)。単体は66名。iPS細胞に専従する人数は非開示 | 確認できず(専従人数) |
| 人(拠点) | 神戸に神戸研究所(2013年開設)。神戸医療イノベーションセンター内にeNK細胞の自社管理の細胞加工施設(2022年7月稼働)、神戸バイオメディカル創造センター内に培養上清用の細胞加工施設(2026年1月稼働) | 事実 |
| 金(研究開発費) | 2025年12月期は2,024百万円(前期1,960百万円)、2026年1〜6月は1,733百万円(前年同期1,066百万円)。体性幹細胞(HLCM051)とiPS細胞の内訳は非開示 | 事実 |
| 金(資金調達) | 2026年1月29日に、海外の投資ファンド7社へ新株式19,275,000株(1株325円、約62.6億円)と第27回新株予約権を発行すると決議し、2月13日に払込完了。2026年1〜6月の「新株の発行による収入」は6,098百万円。2026年6月末の現金及び現金同等物は9,074百万円 | 事実 |
| 金(製造設備と公的資金) | 経済産業省の再生CDMO補助金で約70億円の助成(2026年3月27日に交付決定)。神戸市の貸ラボ内に細胞加工施設を整備し、2028年1月稼働予定。500Lのバイオリアクターを設置し、年間4万人分のARDS治療薬を供給できる規模を目指すと会社が説明 | 事実 |
| 外部への出資・買収 | 2024年4月に米Athersys社の実質的な全資産を取得(同社の破産手続きを受けて、MultiStem/HLCM051のグローバルな権利を獲得)。再生医療関連分野に投資するファンド(Saisei Bioventures, L.P.)を連結子会社として保有。iPS細胞関連の他社の買収は有価証券報告書に記載なし | 事実 |
| 外部からの導入(ライセンス) | iPSアカデミアジャパン(iPS細胞樹立の基本特許、非独占)、理化学研究所(網膜色素上皮細胞の特許、独占)、横浜市立大学(臓器原基の技術)、理化学研究所・大阪大学(網膜色素上皮細胞の製法、2024年4月)。対価は「一定の実施料」で、金額は非開示 | 事実 |
| 外部への導出 | Astellas Institute for Regenerative Medicineへ網膜色素上皮細胞の製法特許を日本以外で非独占許諾(一時金3百万米ドル、米国承認時に8百万米ドル)。RxCell社へGMPグレードのiPS細胞株を提供(一時金50万米ドル)。国内外10社以上にUDCやiPS細胞株を提供して評価を実施 | 事実 |
| 大学・研究機関との連携 | 国立がん研究センター、兵庫医科大学、広島大学、九州大学(eNK/CAR-eNK細胞)、東京大学医科学研究所(肝臓原基)、国立国際医療研究センター(UDCから膵臓β細胞)、米ノースウェスタン大学。米国のCIRM(カリフォルニア州再生医療機構)から次世代UDCの研究に補助金(2023年10月決定)、日本のAMEDからeNK細胞の非臨床研究に補助金(2024年12月決定) | 事実 |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2011年2月 | 株式会社日本網膜研究所として設立。iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞の移植による加齢黄斑変性の治療法の開発を開始 | iPS細胞の眼科応用が出発点 |
| 2013年2月〜12月 | iPSアカデミアジャパンと理化学研究所から特許の実施権を得る。12月に大日本住友製薬(現・住友ファーマ)と網膜色素上皮細胞製品の日本での共同開発に合意 | 眼科の開発体制が決まった |
| 2015年6月 | 東証マザーズに上場 | ― |
| 2016年1月 | 米Athersys社と、日本での体性幹細胞製品MultiStemのライセンス契約を締結 | 体性幹細胞の柱ができた |
| 2019年6月 | 住友ファーマと新たな共同開発契約。臨床試験の実施主体を住友ファーマ側に変更。ヘリオスは開発マイルストンとして網膜色素上皮細胞製品の進捗に応じ総額10億円の実施料を受け取る契約 | 眼科の治験の主導権が移った |
| 2020〜2021年 | UDCの臨床株(2020年)とマスターセルバンク(2021年)が完成 | iPS細胞の基盤技術の整備 |
| 2023年6月 | 網膜色素上皮裂孔を対象とするHLCR011のフェーズ1/2試験が開始(住友ファーマ側が主導) | ヘリオスの技術を使った治験の開始 |
| 2024年4月 | Athersys社の資産を取得し、MultiStem/HLCM051のグローバルな権利を獲得 | 体性幹細胞の権利が自社に |
| 2024年6月 | アルフレッサと業務提携基本契約と社債買取契約。Astellas Institute for Regenerative Medicineとライセンス契約 | 販売網と資金の確保 |
| 2025年1月 | Akatsuki Therapeutics(連結子会社)を設立し、eNK細胞の研究開発を同社が主導する共同事業契約とライセンスオプション契約を締結 | eNK細胞の資金を外部で調達する仕組み |
| 2025年8月 | UDCに関する日本の特許が成立(2026年8月19日に中国の特許成立も開示) | 基盤技術の知財 |
| 2025年10月 | Minaris Advanced TherapiesとHLCM051の商用生産に向けた協業。ニコンとの業務・資本提携を解消 | 製造体制の組み替え |
| 2025年12月9日 | ARDS治療薬の開発を優先し、脳梗塞急性期の申請資料の段階提出(ローリングサブミッション)は行わないと発表 | 資源を絞り込んだ |
| 2026年2月3日 | ARDS治療薬のグローバル第3相試験(REVIVE-ARDS)の日本国内での治験開始の準備が整った(治験届は1月20日に提出) | 条件及び期限付き承認の検証試験 |
| 2026年3月27日 | 経済産業省の補助金(約70億円)の交付決定 | CDMO事業の基盤 |
| 2026年8月24日 | 兵庫県知事から再生医療等製品製造販売業許可を再取得(8月31日に開示) | 承認取得後に販売できる体制の一部 |
7. 今後の計画
申請を準備中申請時期は非公表。会社は「申請に時間を要している」と説明
最大550例2026年2月に日本で開始準備。米国など日本以外は準備中
商用生産を準備50Lでフルスケール製造完了、エンジニアリングラン実施中
稼働予定神戸。500Lバイオリアクター、補助金約70億円
| 計画・開発中の品目 | 現在地(会社の記載) | 区分 |
|---|---|---|
| HLCM051(ARDS) | 日本のONE-BRIDGE試験(フェーズ2)と米英のMUST-ARDS試験の結果に加え、REVIVE-ARDS試験を検証試験とする前提で、国内で条件及び期限付き承認を申請する準備。REVIVE-ARDSは、二重盲検・無作為割付・プラセボ対照で、最大550例(HLCM051 275例、プラセボ275例)、300例と400例で中間解析。主要評価項目は28日間の人工呼吸器非装着日数(VFD)、副次評価項目に投与後90日以内の死亡率 | 未確定/将来 |
| HLCM051(脳梗塞急性期・外傷) | 脳梗塞は、日本のTREASURE試験で主要評価項目が未達だったため、規制当局と協議しながら開発方針を検討中で、申請資料の段階提出は行わない方針。外傷は、米国防総省などの資金による156例のフェーズ2試験(MATRICS-1)を実施中 | 未確定/将来 |
| HLCR011(iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞) | 網膜色素上皮裂孔を対象とする日本のフェーズ1/2試験(jRCT2073230077、企業治験)を、RACTHERA(旧・住友ファーマの再生・細胞医薬事業)が主体で実施中。進捗は募集中 | 未確定/将来 |
| eNK細胞(AKT-01/HLCN061) | 固形がんを対象に、遺伝子を導入したiPS細胞由来のNK細胞を研究。治験の開始を目指して、PMDAと米国FDAに相談中。研究開発はAkatsuki Therapeuticsが主導し、ヘリオスは受託する。CAR-eNK細胞(脳腫瘍・グリオーマ)の研究も進行 | 未確定/将来 |
| UDC(ユニバーサルドナーセル) | HLA型を問わず免疫拒絶を抑える他家iPS細胞のプラットフォーム。臨床株とマスターセルバンクは完成。国内外10社以上に提供して評価。UDCから膵臓β細胞の作製に成功(国立国際医療研究センターとの共同研究)。自社の治験は未開始 | 未確定/将来 |
| 肝臓原基(HLCL041) | 当社からカーブアウトし、ベンチャーキャピタルなど外部パートナーと共同で進める方向で準備 | 未確定/将来 |
| 培養上清(HLSI071など) | 細胞製造の副産物の培養上清を、化粧品原料などとして販売する取り組み。JENECELL社(韓国)の初回注文分1億4,400万円相当の出荷は、物流の手続きの遅れで2026年10月にずれ込み、売上計上は第4四半期になる見込み(2026年9月30日の開示) | 未確定/将来 |
次はいずれも一次資料に記載がないか、非公表です 未確定/将来。
ARDS治療薬の承認申請の具体的な時期と承認の見込み時期/eNK細胞の治験開始時期/UDCを使う自社主導の治験の計画/HLCR011の承認申請時期(RACTHERA側の計画)/米国でのREVIVE-ARDS試験の開始時期(IND準備中とのみ記載)。 会社は2026年8月の決算説明資料で、日本での申請時期はREVIVE-ARDS試験の結果を待たない一方、結果は本承認と米欧展開の前提になると説明しています。 報道ベースの時期や市場規模の数値は本稿では採用しません。
8. この会社はiPS細胞・再生医療で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 当面の事業の軸はiPS細胞ではなくHLCM051(ARDS)に移っている | 2025年12月に「ARDS治療薬の開発を優先」と発表し、申請資料の段階提出も見送り。2026年の決算説明資料の主要マイルストンもARDSの承認申請、商用製造、営業体制の確立が中心 | 推測 |
| iPS細胞は「素材・基盤技術を外に出して収益化する」方向に比重がある | UDCやiPS細胞株を10社以上に提供、RxCell社への提供で一時金、Astellas Institute for Regenerative Medicineへの特許許諾で一時金3百万米ドル(米国承認時に8百万米ドル) | 推測 |
| iPS細胞由来の治療薬の開発は、外部の資金と主体に委ねる形へ | 網膜色素上皮細胞は住友ファーマ側が主体、eNK細胞はAkatsuki社が主導してヘリオスは受託、肝臓原基はカーブアウト予定 | 事実 |
| CDMO事業を安定した収益源の候補と見ている | 補助金約70億円で神戸にCDMO拠点を整備し、「世界一の細胞医療メーカーへ」を事業方針に掲げる。培養上清の販売も収益源の確保策として記載 | 推測 |
| 最終目標はiPS細胞による承認・販売まで自社で行う体制の維持 | 経営の基本方針に「世界中に承認販売まで自社で行う体制を構築し」とある。ただし直近の優先順位とは異なる | 事実 |
「iPS細胞は素材を外に出して収益化する方向」と読むのは、実際に受け取っている対価の種類が根拠です。 有価証券報告書の重要な契約には、RxCell社からの一時金50万米ドル、Astellas Institute for Regenerative Medicineからの一時金3百万米ドルと米国承認時の8百万米ドル、住友ファーマ側からの開発マイルストン総額10億円(網膜色素上皮細胞製品の進捗に応じて)が並びます 事実。 一方で、2025年12月期の売上収益は104百万円にとどまり、これらの対価の多くはまだ売上に結びついていません。 つまり、iPS細胞の技術は価値として外部に認められている一方、自社の収益にはまだ大きく反映されていないと本稿は考えます 未確定/将来。 この推測は、技術の優劣や将来の成否を述べるものではありません。
9. iPS細胞・再生医療分野の提携マッピング
図の見方:ヘリオスは、眼科のiPS細胞製品はRACTHERA、eNK細胞はAkatsuki社に開発を委ね、自社は体性幹細胞のHLCM051とiPS細胞の基盤技術(UDC)に集中するという形です。 製造では、HLCM051の商用生産をMinaris社に委託しつつ、神戸に自社のCDMO拠点(補助金約70億円)を整備する二段構えをとっています 事実。
10. 提供している技術・製品・サービス
| 項目 | 内容(有価証券報告書・公開資料の記載) |
|---|---|
| HLCM051(invimestrocel) | 健康な成人ドナーの骨髄由来の体性幹細胞(MultiStem)。ARDS、脳梗塞急性期、外傷を対象に静脈投与する他家の製品。炎症免疫細胞の活性化を抑えて肺の過剰炎症や毛細血管内皮の損傷を抑えると考えられている。三次元培養(バイオリアクター)で製造。ARDSは日本で希少疾病用再生医療等製品に指定(2019年11月)。米国FDAからFast TrackとRMATの指定を受けていると記載(対象は開発品一覧の注記) |
| UDC(ユニバーサルドナーセル) | 他家iPS細胞からHLA遺伝子を除き、免疫抑制に関わる遺伝子と、安全装置としての自殺遺伝子を導入した細胞。細胞治療の原材料として提供する。日本(2025年8月)と中国(2026年8月)で特許成立 |
| eNK細胞 | 遺伝子導入で細胞傷害活性を高め、患者の免疫細胞の呼び込みやがんへの浸潤特性も強めたiPS細胞由来のNK細胞。肺がん、中皮腫、肝がん、胃がんの動物モデルで抗腫瘍効果を確認(動物・オルガノイドでの結果) |
| HLCR011 | 他家iPS細胞を網膜色素上皮細胞に分化させ、純化した懸濁液として網膜下に投与する製品。網膜色素上皮裂孔を対象に、RACTHERAが主体でフェーズ1/2試験を実施中 |
| 培養上清 | 細胞を培養した際に得られる液体部分。化粧品の原材料や治療法の素材として供給する。AND medical group、アルフレッサ、JENECELL社などとの取引 |
| CDMO(開発製造受託) | プロセス開発、製造、品質管理を一貫して請け負う事業。2028年1月に神戸で稼働予定 |
この会社の製品づくりで材料・プロセスが効くのは、細胞を三次元で大量に培養する工程です 事実。 会社の決算説明資料は、従来の二次元培養は培養皿での手作業でロット差が出やすく、技術移転に熟練者の派遣が必要になるのに対し、密閉型のバイオリアクターで全自動化すれば再現性が高く、移転もしやすい、と説明しています。 すでに50Lのスケールでフルスケール製造を終え、エンジニアリングラン(実生産と同じ条件の確認)を実施中で、次にGCTP下で商用規模の繰り返し製造の品質を確認するPPQランを予定しています。 将来は500Lの装置(会社の資料ではSartorius社製を想定、使用の保証はないと注記)で年間4万人分を目指すとしています。
三次元の浮遊培養では一般に、培地、細胞の足場(担体)、攪拌条件、回収・濃縮の工程、凍結保存液、使い捨ての培養バッグといった資材・工程の仕様が、製品の品質とコストに効きます 未確定/将来。ヘリオスがどの資材を採用しているかは公表されていません。 一方で、商用生産の拠点を海外からMinaris社の横浜事業所に変更したことで、会社は「技術移転からの再構築」になったと開示しています(第11章)。 本シリーズの技術解説「バイオリアクター」「細胞製造とセルバンク」「GMP」「CDMO」もあわせて参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 継続企業の前提 | 営業損失(2025年12月期3,340百万円、2026年1〜6月2,404百万円)と営業キャッシュ・フローのマイナスが続き、「重要な疑義を生じさせるような状況」が存在すると明記。会社は対応策により重要な不確実性はないと判断。対応策には新株予約権の行使による資金調達が含まれる | 事実 |
| 株式の希薄化 | 新株予約権による潜在株式は24,404,700株(2025年12月末、発行済株式総数の21.1%)。2026年にも新株式と第27回新株予約権を発行 | 事実 |
| 承認申請が遅れている | 会社は、承認申請に「時間を要している」と説明し、その理由に、商用生産の拠点を海外からMinaris社の横浜事業所へ変更し、技術移転から再構築になったことを挙げる。申請時期は非公表 | 事実 |
| 検証試験の結果が前提 | 条件及び期限付き承認は、期限内に検証試験(REVIVE-ARDS)で有効性を示す必要がある。会社自身が、結果は本承認と米欧展開の前提になると説明。治験が計画どおり進まない、または主要評価項目を達成できない可能性は常にある | 事実 |
| 過去の治験で未達 | 脳梗塞急性期のTREASURE試験(フェーズ2/3、二重盲検・プラセボ対照、登録206例)は主要評価項目が未達。米欧のMASTERS-2試験は、統計学的有意性のために追加の組み入れが必要との結論になり、ClinicalTrials.govでは終了と表示 | 事実 |
| iPS細胞製品の主導権が他社側 | 眼科のHLCR011は住友ファーマ側(現RACTHERA)が主体、eNK細胞はAkatsuki社が主導。ヘリオスの収益は、相手の治験の進捗に連動するマイルストンに依存する | 推測 |
| 取引先との訴訟 | 一般社団法人AND medical groupが、培養上清の共同研究契約(2024年4月)に関する債務不履行を理由に、ヘリオスに対して120百万円と訴訟費用等の損害賠償を請求(東京地方裁判所、2025年11月提起)。ヘリオスは2026年6月に、66百万円と遅延損害金の対価支払いを求める反訴を提起。判断は出ていない | 事実 |
| 人員の小ささと製造の外部依存 | 連結75名。商用生産はMinaris社、自社のCDMO拠点の稼働は2028年1月の予定で、補助金に依存する部分がある | 推測 |
12. 用語集
- 体性幹細胞
- 骨髄などの組織にある幹細胞。iPS細胞に比べ、変化できる細胞の種類が限られる。
- HLCM051(MultiStem)
- ヘリオスが開発する、健康な成人ドナーの骨髄由来の他家体性幹細胞製品。一般名はinvimestrocel。
- ARDS(急性呼吸窮迫症候群)
- 肺炎や外傷などをきっかけに、肺に水がたまって重い呼吸不全になる状態。
- VFD
- 人工呼吸器を使わなかった日数(28日間のうち)。REVIVE-ARDS試験の主要評価項目。
- 条件及び期限付承認
- 少数例の治験で安全性が確認され、一定の有効性が見込まれる再生医療等製品を、条件と期限を付けて早く承認する制度。販売後に有効性を確かめる。
- UDC
- ユニバーサルドナーセル。遺伝子編集で免疫拒絶を起こしにくくした他家iPS細胞。
- NK細胞
- がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃する免疫細胞(白血球の一種)。
- 網膜色素上皮細胞
- 網膜の視細胞を支え、栄養補給や老廃物の分解を担う細胞。
- 培養上清
- 細胞を培養したあとの液体部分。細胞が分泌したタンパク質などを含む。
- CDMO
- 医薬品や細胞の開発と製造を受託する事業者。
- PPQ
- プロセス・パフォーマンス・クオリフィケーション。商用規模で繰り返し製造して、品質が安定して規格を満たすことを確かめる工程。
- 継続企業の前提
- 会社が将来にわたって事業を続けるという会計上の前提。疑義があるときは決算書に注記される。
AI生成による概念図13. 出典
- ヘリオス 有価証券報告書(第15期、2025年12月期、関東財務局提出 2026年3月24日)。沿革、事業の内容、経営方針、リスク、継続企業の前提、研究開発活動、重要な契約。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/yuho_pdf/S100XTBP/00.pdf
- ヘリオス 半期報告書(第16期中、2026年1〜6月、2026年8月12日提出)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/yuho_pdf/S100YVX6/00.pdf
- ヘリオス 2026年12月期 第2四半期決算説明資料(2026年8月12日)。ARDSの申請と製造の進捗、バイオリアクター。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2871247/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「HLCM051(ARDS及び脳梗塞急性期)に関する開発・申請方針について」(2025年12月9日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2729220/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「ARDS治療薬のグローバル第3相試験(REVIVE-ARDS試験)日本国内での治験開始について」(2026年2月3日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2749345/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「経済産業省 令和6年度補正予算「再生・細胞医療・遺伝子治療製造設備投資支援事業費補助金」交付決定のお知らせ」(2026年3月27日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2782569/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「「再生医療等製品製造販売業許可」取得に関するお知らせ」(2026年8月31日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2879456/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「Minaris Advanced TherapiesとのHLCM051商用生産に向けた協業のお知らせ」(2025年10月7日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2694919/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「第三者割当による新株式及び第27回新株予約権の発行に関するお知らせ」(2026年1月29日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2745520/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「JENECELL社への培養上清製品の初回発注分の出荷時期に関するお知らせ」(2026年9月30日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2889294/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「当社に対する損害賠償請求訴訟の提起に関するお知らせ」(2025年12月29日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2736557/00.pdf
- ヘリオス 適時開示「当社への訴訟に対する反訴提起に関するお知らせ」(2026年6月9日)。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4593/tdnet/2833387/00.pdf
- 厚生労働省 臨床研究等提出・公開システム(jRCT)jRCT2073230077「HLCR011の網膜色素上皮裂孔を有する患者を対象とした第I/II相試験」。 https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2073230077
- 米国国立医学図書館 ClinicalTrials.gov NCT03807804(ONE-BRIDGE試験、日本のARDS第2相)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT03807804
- 米国国立医学図書館 ClinicalTrials.gov NCT02611609(MUST-ARDS試験、米英のARDSフェーズ1/2)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT02611609
- 米国国立医学図書館 ClinicalTrials.gov NCT02961504(TREASURE試験、脳梗塞急性期のフェーズ2/3)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT02961504
- 米国国立医学図書館 ClinicalTrials.gov NCT04533464(MATRICS-1試験、外傷のフェーズ2)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04533464
- 米国国立医学図書館 ClinicalTrials.gov NCT03545607(MASTERS-2試験、脳梗塞急性期)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT03545607
- ヘリオス 公式サイト(ロゴの取得元)。 https://www.healios.co.jp/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月1日/Troy Technical
本稿の数値は、ヘリオスの有価証券報告書・半期報告書・適時開示・決算説明資料、jRCT・ClinicalTrials.govに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は特定の治療や製品を勧めるものではなく、医療上の助言ではありません。