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シーメンス・エナジー 企業解説

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COMPANY PROFILE / 水素エネルギー

シーメンス・エナジー
― エネルギー機器の大手が、PEM水電解装置の量産と水素混焼ガスタービンの両方を手がける。ただし水素の規模は小さく、公表も限られる

水素エネルギーでSiemens Energyの名前が挙がるのは、水を電気分解する「PEM水電解装置」のスタックをベルリンで量産し、同じ会社が水素を燃やせるガスタービンも作っているためです。 2023年11月にはAir Liquideとの合弁で、年間1GWの生産能力をもつ電解装置の工場を開きました。 一方、2025年9月期の年次報告書で水素の関連事業として別に開示されているのは、変換装置などを含む区分「Sustainable Energy Systems」(SES)だけで、 受注は4億5,200万ユーロ、売上は2億4,200万ユーロ(会社全体の売上390億ユーロの約0.6%)、利益率はマイナス21.9%です。 本稿は会社全体ではなく水素に関わる範囲に限り、何を投じ、誰と組み、何を公表していないかを一次資料の範囲で整理します。

構成:Siemens Energy Annual Report 2025(2025年9月30日終了の会計年度)、2026年度の決算資料、水素ソリューションの製品ページとパンフレット・ファクトシート、2022〜2023年の公式リリースを一次情報として使用/最終更新 2026年10月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるSiemens Energyと、水素エネルギーでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 水素エネルギーの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. 水素エネルギーにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は水素エネルギーで何を目指しているか
  9. 水素エネルギー分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるシーメンス・エナジーと、水素エネルギーでの立ち位置

正式名称Siemens Energy AGドイツ法上の株式会社。ミュンヘンに登記
本社ドイツ・ミュンヘン登記上の所在地。Otto-Hahn-Ring 6
上場フランクフルト証券取引所
(Xetra)
Prime Standard。DAX 40などの指数に採用
この分野での区分水電解装置(主)
水素混焼ガスタービン(従)
電解の方式はPEM(Elyzer P-300)
会社全体の売上390億7,700万ユーロ2025年9月期。受注は589億2,800万ユーロ
電解装置の工場ベルリン(合弁)Air Liquideと合弁。2023年11月に年間1GWで開所
水素ガスタービン型式により水素75%まで承認100%は試験・実証設備での成功。会社の説明
水素単独の財務非公表関連区分SESの受注・売上・利益率のみ開示
まず押さえるべき1点

Siemens Energyは電力・送電・ガスタービン・風力などを手がける約10万人の総合エネルギー機器メーカーで、水素はその一部です 事実。 年次報告書が電解装置を含む区分として別に示すのは「Sustainable Energy Systems(SES)」で、2025年9月期の売上は2億4,200万ユーロ、 会社全体の売上の約0.6%です 本稿の計算。 ただしSESの範囲(電解装置のみか、ほかの事業を含むか)を年次報告書は定義していないため、これは電解装置だけの数字ではありません。 電解装置の受注額・売上・利益は非公表で、本稿は推計しません 未確定/将来。 一方で、製品の仕様、ベルリンの工場、参照プロジェクトの一覧は会社の資料で具体的に確認できます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Siemens Energy AG(ジーメンス・エナジー、日本語では「シーメンス・エナジー」と書かれることが多い)です。 Siemens AG(シーメンス)とは別の法人です。年次報告書によると、Siemens AGは間接的に議決権の10%超を保有しています。 電解装置の製品名は Elyzer(エライザー)です。風力のSiemens Gamesaは同社のグループ会社ですが、本稿では扱いません。 ロゴ画像は、同社の公式サイトで使われている白抜きのロゴを取得し、暗い背景に置いています。

公式サイト:https://www.siemens-energy.com/global/en/home.html

3. 水素エネルギーの世界で、この会社はどこにいるか

水素エネルギーに関わる企業の4つの類型 同じ「水素の会社」でも、つくる・運ぶ・使う・素材を作るで、強みと売り先が違う 水電解装置 燃料電池・利用機器 ガス・大型案件 材料・部品 水から水素をつくる 水素を電気や動力に変える 水素を大量に作り運ぶ 膜や触媒の素材を供給 nucera/ITM Power Plug Power/Nel Ballard/Bloom Energy トヨタ/川崎重工業 Air Products/Linde Air Liquide/ACWA Chemours/AGC Johnson Matthey ほか 装置の実績と量産体制 用途ごとの製品と実績 ガス供給網と資金力 素材性能と品質の安定 案件と政策に左右 用途の立ち上がりに左右 巨額投資の回収に左右 完成品の需要に左右 Siemens Energyは主に左端の水電解装置(PEM方式)で、従として水素を燃やせるガスタービンも手がける 会社全体の売上は約390億ユーロ。電解装置を含むSESの売上は約2億4,000万ユーロで、水素単独の数字は非公表
図1 水素エネルギーに関わる企業の4類型と、Siemens Energyの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。会社の自己説明(電解装置の製品群と、水素混焼のガスタービン)に基づく本稿の区分です。会社の規模の数字は2025年9月期の年次報告書によります。

4. 会社の規模(水素に関わる範囲で簡潔に)

年次報告書は、会社を4つの事業領域(Gas Services、Grid Technologies、Transformation of Industry、Siemens Gamesa)に分けています。 電解装置は、Transformation of Industry(TI)の製品群に含まれると書かれています 事実。

指標(百万ユーロ)2024年9月期2025年9月期
受注(会社全体)50,22658,928
売上(会社全体)34,46539,077
特別項目前の利益(会社全体)―2,355(利益率6.0%)
研究開発費(会社全体)1,2091,210
Transformation of Industry:受注/売上6,413/5,1096,003/5,723
Transformation of Industry:特別項目前の利益率7.4%11.3%
うち Sustainable Energy Systems(SES):受注/売上422/145452/242
うち SES:特別項目前の利益率−64.0%−21.9%

従業員は102,985人(2025年9月30日)、研究開発の担当は年平均で約4,100人です。

ここで注意

SESの数字は電解装置だけの数字とは限りません。年次報告書はTIの内訳として4つの区分(Compression、Industrial Steam Turbines & Generators、Electrification, Automation, Digitalization、SES)を挙げるだけで、 SESの範囲を説明していません。電解装置の受注・売上・利益・出荷量はどこにも単独で示されていません。 SESについて報告書は「負の利益を再び大きく減らした」とのみ書き、2026年度上半期の報告書は「TIの売上増はSESの新設機器事業が主因」と書いています。 本稿は水素の事業規模を推計しません 未確定/将来。

5. 水素エネルギーにかけているリソース

リソースの種類一次情報で確認できた内容区分
人水素専任の人員数は非公表。会社全体で102,985人、研究開発は約4,100人。電解装置のファクトシートには「サービス要員は世界で1万1,000人超」とあるが、電解装置専任の数字ではない非公表
金(研究開発・設備投資)研究開発費は会社全体で12億1,000万ユーロ。水素分は非公表。ベルリンの電解装置の生産ライン(2,000m²)の投資額は約3,000万ユーロ(2022年3月の発表、2023年11月も同額を記載)事実/水素分は非公表
外部への出資・提携Air Liquideとの合弁(2022年6月に発表。Siemens Energyが74.9%、Air Liquideが25.1%。当時は当局の承認が条件)。ベルリンのスタック工場をこの合弁が運営し、両社に供給する。SSE Thermalと水素100%のガスタービン技術の取り組み「Mission H2 Power」。水素分野での買収・売却は確認できず事実/確認できず
公的資金・研究機関ベルリン工場の研究は、ドイツ連邦研究省がH2Gigaの一部のSEGIWAプロジェクトとして支援(2023年11月の発表)。年次報告書は、合弁により「欧州レベルの資金を申請できるようになった」と記載(採択の結果は記載なし)。大学との共同研究の具体名は確認できず事実/確認できず

主要プロジェクトの状況(会社のパンフレット)

次の一覧は、会社の電解装置パンフレットの「参照プロジェクト」の図に載っている案件と、会社が付けた段階の表示です。 パンフレットに日付は書かれていないため、現在の状況は変わっている可能性があります 未確定/将来。

案件場所規模パンフレットの表示備考
Air Liquide Normand’Hyフランス・ポール=ジェローム200MW(Elyzer P-300を12アレイ)実行中2023年9月に受注発表。2026年から年28,000トンを生産とSiemens Energyが記載。Air Liquideの公式サイトは「2026年に稼働予定」と記載。稼働の確認はできなかった
Kassø(e-メタノール)デンマーク52MW(3アレイ)稼働顧客はEuropean Energy傘下の会社。年最大6,000トンの水素、最大42,000トンのe-メタノールの可能性とパンフレットが記載
Hy4Chem-EI ルートヴィヒスハーフェンドイツ54MW稼働―
WUNH2 ヴンジーデルドイツ8.5MW稼働―
H2Future リンツオーストリア6MW稼働―
Trailblazer オーバーハウゼンドイツ20MW以下稼働Air Liquideの案件と2023年11月の発表に記載
Haru Oniチリ規模の記載なし稼働(e-燃料用)―
Green H₂ Coastlineドイツ280MW実行中―
OMVウィーンオーストリア140MW実行中―
Hamburg Green Hydrogen Hubドイツ100MW実行中―
Air Liquide ELYgatorオランダ200MW以下実行中―
Sakura H₂日本17.5MW実行中―
素材技術者の視点:スタックは「80k時間」で設計され、交換する部品として売られている

会社のパンフレットは、Elyzer P-300のスタックを「80k EOH(等価運転時間)を目標に最適化。それ以上の運転も可能」と説明し、 サービスとしてスタック交換、固定価格でのスタック交換、予備のスタックのプールを挙げています 事実(いずれもメーカー公称)。 つまり会社は、スタックを寿命のある交換部品として扱い、価格と交換を契約に組み込んでいます。 PEM電解のスタックは一般に、高分子電解質膜、アノードのイリジウム系触媒、白金系の触媒、チタンなどの多孔質輸送層とバイポーラ板といった貴金属・高価な材料で構成され、 これらの劣化がスタック寿命を決めます(本シリーズの技術解説「PEM水電解」「水電解スタックと材料」「白金族金属と触媒」を参照)。 ただしSiemens Energyの具体的な材料構成(膜の種類、触媒の担持量、板のコーティング)は、本稿で確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2022年3月31日ベルリンのフッテン通りの工場に、電解装置の量産ライン(2,000m²、約3,000万ユーロ)を設けると発表。2023年の生産開始を予定。ガスタービンの工場の既存設備を活用PEM方式を選び、量産に踏み切る意思表示。同じ日の発表でガスタービンは「最大50%の水素で運転可能、2030年までに水素100%の運転を可能にすべき」と記載
2022年6月23日Air Liquideとの合弁を発表(Siemens Energy 74.9%、Air Liquide 25.1%。当局の承認が条件)。2023年後半に生産開始、2025年に年間3GWまで増強する計画電解装置の量産リスクを分担。Air Liquideが顧客にもなる構造
2023年9月Air LiquideのNormand’Hyに、12台・計200MWの電解装置を供給すると発表合弁の最初の大型案件の1つ
2023年11月ベルリンの電解装置工場を開所。年間1GWで始め、2025年までに少なくとも3GWへ増強する計画と発表。ドイツ連邦研究省のSEGIWAが研究を支援量産の開始。CEOは「リスクと報酬のバランスがとれたビジネスモデルに合意する必要がある」と述べた
2024〜2025年パンフレット上でKassøの52MW(e-メタノール)などが「稼働」と表示。年次報告書はSSE Thermalとの「Mission H2 Power」(Keadby 2、SGT5-9000HL)を記載電解装置の納入実績と、水素ガスタービンの共同開発
2025年9月期年次報告書で、電解装置を含む区分SESの受注4億5,200万ユーロ、売上2億4,200万ユーロ、利益率−21.9%(前年−64.0%)を開示。ガスタービンは「型式により水素75%まで承認、100%は試験設備で実証」と記載水素関連の財務の唯一の手がかり
2026年(製品ページ)ベルリンのスタック生産を「市場の需要に応じて増強する」と記載。以前の「2025年までに3GW」という記述は、本稿で確認した2026年の製品ページには見当たらない増強の時期の表現が、日付つきから需要次第へ変わった

7. 今後の計画

Normand’Hy(200MW)2026年に稼働予定Air Liquideの公式サイトの記載。稼働の確認はできず
ベルリンのスタック生産需要に応じて増強2026年の製品ページ。時期の数字は記載なし
水素100%のガスタービン中型・大型機で開発加速SGT-400では水素100%の燃焼を実証と会社が説明
Mission H2 PowerKeadby 2での水素混焼SSE Thermalとの取り組み。時期は記載なし

上のいずれも会社の計画・目標であり、達成された事実ではありません 未確定/将来。

確認できなかったこと

電解装置だけの受注額・売上・利益・出荷量/ベルリン工場の実際の稼働率と生産量/パンフレットの各案件の現在の状況と日付/Normand’Hyの稼働の確認/ 合弁(Air Liquideとの)の現在の持分と運営の実態(年次報告書は合弁の存在のみ記載)/水素ガスタービンの具体的な受注。 2026年度の上半期報告書と第3四半期の決算資料にも、電解装置の個別の数字は見当たりませんでした。

8. この会社は水素エネルギーで何を目指しているか

会社が書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は一次情報から本稿が読み取った解釈です。

読み取れること根拠となる一次情報区分
電解装置をスタックの量産(部品の標準化)で量産品にしようとしている2023年11月の発表で「電解装置を量産品にする」と記載。ベルリンでスタックを作り、組み立ては案件の現地に近い場所で行うと説明事実(会社の説明)
電解装置だけでなく、発電所・系統・圧縮機・サービスまで含めた一括提供を売りにしているファクトシートが「電解装置から完全なターンキーまで1社で」と記載。Power-to-Xのページは、発電と系統接続の知見をもつ点で自社を「唯一の製造者」と位置づけている(会社の主張であり、本稿は検証していない)事実(会社の説明)
水素の製造側(電解)と利用側(ガスタービン)の両方を持つことを強みと見ている年次報告書がTIで水素の製造・輸送、GSで水素を燃やすタービンを説明。製品ページは両方を同じ水素の枠で紹介推測
事業の拡大は政策と採算の見通し次第と考えているCEOは2023年に「リスクと報酬のバランスがとれたビジネスモデルが必要」と述べ、取締役は「政策担当者の確かな支援、資金・許認可手続きの簡素化」を求めた。2026年の製品ページは増強を需要次第とする事実(発言)/推測(解釈)
推測の根拠を1つだけ詳しく

「拡大は政策と採算次第」という読みの根拠は、同じ会社の2つの記述の変化です。 2022〜2023年の発表は、ベルリン工場を「2025年までに少なくとも年3GW」へ増強する計画と書きました 事実。 これに対し2026年の製品ページ(本稿で確認した範囲)は、「市場の需要に応じて生産を増強する」と書くだけで、年次や容量の数字を挙げていません 事実。 数字の記述がなくなったことから、量産の拡大が需要の立ち上がり次第になっていると読むのが自然だと本稿は考えます。 ただし会社は理由を説明しておらず、これは本稿の解釈です 未確定/将来。

9. 水素エネルギー分野の提携マッピング

Siemens Energyを中心とした水素エネルギー分野の提携関係 公式のリリース・年次報告書・パンフレットに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない Siemens Energy 電解・タービン Air Liquide 合弁25.1%・納入先(点線は出資) European Energy Kassø 52MW(デンマーク) SSE Thermal Mission H2 Power(水素タービン) OMV(ウィーン) 140MW(パンフレットで実行中) ドイツ連邦研究省 SEGIWA(H2Giga)の研究支援 共同開発・合弁 納入先 公的資金
図2 Siemens Energyを中心とした水素エネルギー分野の提携関係。出典:2022年6月の合弁の発表、2023年9月・11月の発表、2025年9月期の年次報告書、電解装置パンフレット。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけです。Air Liquideは合弁の出資者(25.1%、2022年の発表時点)であり、同時にNormand’Hy・ELYgator・Trailblazerなどの納入先でもあります。OMVは、パンフレットの参照プロジェクト名として挙がる顧客です。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品の数値はすべてメーカー公称で、規模(アレイ/100MW参照プラント)と、効率の基準が資料に書かれていない点に注意してください。他社の値とは並べません。

製品公式資料に載っている内容ひとこと
Elyzer P-300(PEM水電解):アレイ24スタックで1アレイ。アレイの消費電力17.5MW、水素335kg/時、プラント効率75.5%超(基準の記載なし)、最小負荷は単一スタックで40%、起動1分未満、出力変化は0〜100%で最大毎秒10%、脱塩水は水素1kgあたり約10L、水素純度は脱酸素乾燥器で最大99.999%。スタックは80k EOH(等価運転時間)向けに最適化PEMの特長として高い動的応答と高いガス純度を会社が説明。「TRL 9(欧州の基準)」と記載
100MW級の参照プラント(ファクトシート)プラント電力約110MW、圧力30bar、水素約2,000kg/時、乾燥ガス純度99.9999%、脱塩水は約10L/kg。敷地は186m×90m(サイリスタ整流の場合)または186m×96m(IGBTの場合)パンフレット(最大99.999%)とファクトシート(99.9999%)で純度の表記が違うが、条件の説明はない。優劣の比較はしない
スタックの量産(ベルリン)PEMスタックの工業生産を2023年に開始。マルチGW規模の工場で、Siemens EnergyとAir Liquideの両方に供給。需要に応じて増強会社全体の経験値として「電解装置の運転時間33万時間超」と記載(ファクトシート)
サービススタック交換、固定価格のスタック交換、スタックのプール、保守、遠隔監視の24時間窓口、予測分析スタックを寿命のある部品として扱う
水素を燃やすガスタービン型式により水素75%まで承認。水素100%の燃焼は試験・実証設備で成功。SGT-400では乾式低エミッション燃焼で水素100%を実証。中型・大型機の水素100%対応を開発中。新設の発電所は将来100%水素へ転換しやすく作るべきと説明本シリーズの技術解説「ガスタービンの水素混焼」を参照。会社自身が「水素は着火エネルギーが低く火炎速度が速い」と課題を挙げる
Power-to-Xの一括提供電解装置、圧縮機、電源・系統接続、制御、エンジニアリング、サービスe-メタノール、e-アンモニア、e-燃料を想定
素材技術者の視点:水素混焼のガスタービンで、材料に何が起きるか

会社は製品ページで、水素は天然ガスに比べて着火エネルギーが低く、火炎速度が速いため、燃焼システムに技術的な課題があると説明しています 事実。 燃焼器の材料の観点では、火炎が燃焼器の壁面に近づきやすく、水蒸気を多く含むガスが高温部に触れるため、 耐熱合金と遮熱コーティングの熱負荷と酸化・水蒸気による劣化が設計上の論点になると考えられます(本シリーズの技術解説「ガスタービンの水素混焼」を参照) 未確定/将来。 ただし、Siemens Energyが具体的にどの材料・部品をどう変えているかは、本稿で確認した公式資料に記載がありません。 会社が示しているのは、承認された水素の割合(型式により75%まで)と、試験設備で100%を成功させたという事実までです。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
水素の規模が小さい電解装置を含むSESの売上は2億4,200万ユーロ(会社全体の約0.6%)、受注は4億5,200万ユーロ(約0.8%)。ただしSESの範囲は不明で、電解装置だけの数字ではない本稿の計算
収益性の課題SESの特別項目前の利益率は2025年9月期で−21.9%(前年−64.0%)。報告書は「負の利益を再び大きく減らした」と記載事実
需要と政策に左右される2023年に取締役が「政策担当者の確かな支援と、資金・許認可手続きの簡素化」を求めた。2026年の製品ページは増強を需要次第とし、「2025年までに3GW」という計画の数字は見当たらない事実(発言)/推測(解釈)
案件の進行と実績の確認が難しいパンフレットの案件は日付がなく、段階(実行中・稼働)の現在の状況が分からない。Normand’Hyの稼働は2026年予定とされるが、確認できなかった未確定/将来
水素ガスタービンの課題水素の輸送にはパイプライン網、場合によっては地下の貯蔵が必要と会社が説明。年次報告書は、EUタクソノミーの基準に合致する割合は、水素に関わる活動を中心にごく一部と記載事実
合弁の運営合弁相手が顧客でもあるため、供給先・価格・生産量の決め方は外部から分からない。年次報告書は合弁の存在以外を記載していない推測
外部からの検証が難しい電解装置の受注・売上・利益・出荷量が非公表で、財務から進捗を確かめられない未確定/将来

12. 用語集

PEM水電解
高分子電解質膜(プロトン交換膜)を使って水を電気分解する方式。出力変動に追従しやすい。
スタック
多数のセルを積み重ねた電解槽の中心部品。「電解装置の心臓部」とも呼ばれる。
アレイ
複数のスタックを組み合わせた、電解装置の構成単位。Elyzer P-300では24スタックで1アレイ。
EOH
等価運転時間(Equivalent Operating Hours)。スタックの寿命設計の目安として会社が使う指標。
SES
Sustainable Energy Systems。Siemens EnergyのTIの内訳の1区分。範囲は年次報告書で定義されていない。
TI
Transformation of Industry。産業向けの事業領域。電解装置、圧縮機、産業用蒸気タービンなどを含む。
H2Giga/SEGIWA
ドイツ連邦研究省の水素研究のフラッグシップ事業とその一部のプロジェクト。電解装置の量産技術を支援。
e-メタノール
再生可能エネルギー由来の水素とCO₂から合成するメタノール。船舶燃料などに想定される。
TRL 9
技術成熟度レベルの最上位。実運用で実証済みの段階を指す。
Siemens Energyのheroを示す概念画像
図3 PEM電解スタックの組み立て場面の概念図(AI生成による概念図。実際の工場や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Siemens Energy Annual Report 2025(2025年9月30日終了の会計年度)。事業領域、売上・受注、SESの数字、研究開発費、従業員数、Air Liquideとの合弁、ガスタービンの水素対応、Mission H2 Power。 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
  2. Siemens Energy 投資家向け情報:株式(上場市場、Prime Standard、採用指数)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/investor-relations/share.html
  3. Siemens Energy 水素ソリューション(PEM電解装置のポートフォリオ、ベルリンの工場、合弁、サービス)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/product-offerings/hydrogen-solutions.html
  4. Siemens Energy Hydrogen and Power-to-X solutions(電解装置パンフレット)。Elyzer P-300の技術データ、参照プロジェクト、Normand’HyとKassøの案件。 https://assets.siemens-energy.com/dam/973beb1b-97e0-4150-9c2e-b29800761a8c/Electrolyzer_Brochure_Hydrogen_PowertoX-pdf_Original%20file.pdf
  5. Siemens Energy Elyzer plant ファクトシート:100MW電解装置の参照プラント。 https://assets.siemens-energy.com/dam/ea4fa194-2ce8-4645-bdea-b35300798c29/Electrolyzer-Factsheet-Elyzer-plant-100MW-pdf_Original%20file.pdf
  6. Siemens Energy Siemens Energy to start production of hydrogen electrolyzers in Berlin(2022年3月31日)。 https://assets.siemens-energy.com/dam/cbe1c4b0-a513-4f4e-8dae-b029018587f6/SE-Press-release-Electrolyzers-BLN-20220331-en-v2-pdf_Original%20file.pdf
  7. Siemens Energy Siemens Energy and Air Liquide form a joint venture for the European production of large scale renewable hydrogen electrolyzers(2022年6月)。持分、計画。 https://www.siemens-energy.com/us/en/home/press-releases/siemens-energy-and-air-liquide-form-joint-venture-european-production-large-scale.html
  8. Siemens Energy 250,000 tons less CO2 thanks to renewable hydrogen: Siemens Energy delivers electrolyzers to Normandy(2023年9月)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/press-releases/250,000-tons-less-CO2-thanks-to-renewable-hydrogen.html
  9. Siemens Energy Siemens Energy and Air Liquide pave the way for the ramp-up of the hydrogen economy with new gigawatt factory for electrolyzers(2023年11月)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/press-releases/siemens-energy-and-air-liquide-pave-the-way-for-the-ramp-up-of-t.html
  10. Siemens Energy Sustainable fuels(ガスタービンの燃料:水素100%の実証、水素の課題)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/solutions-usecase/sustainable-fuels.html
  11. Siemens Energy Gas turbines(水素の対応力、水素への転換を前提とした新設の考え方)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/product-offerings/gas-turbines.html
  12. Siemens Energy Power-to-X:climate-neutral sector coupling(水素利用先、Power-to-Xの一括提供)。 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/solutions-usecase/hydrogen.html
  13. Air Liquide Air Liquide Normand’Hy 公式サイト(200MW以上のPEM電解装置、2026年稼働予定)。 https://normandhy.airliquide.com/en
  14. Siemens Energy Half-year financial report 2026(2026年5月12日)。TIの受注・売上に関するコメント。 https://assets.siemens-energy.com/dam/03cdb4e6-b27a-4272-a911-b4480041e7ca/2026-05-12-Half-year_financial_report-2026-pdf_Original%20file.pdf
  15. Siemens Energy Earnings Release Q3 FY2026(2026年8月5日)。電解装置の個別の数字の有無の確認用。 https://assets.siemens-energy.com/dam/30018eed-275d-4e73-811e-b49d004cdc3d/2026-08-05-Earnings_Release_Q3_FY26_EN-pdf_Original%20file.pdf

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、ミュンヘンへの登記、Siemens AGが間接的に議決権の10%超を保有、従業員102,985人、研究開発約4,100人事実出典1 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
上場市場(フランクフルト〔Xetra〕、Prime Standard、DAX 40)事実出典2 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/investor-relations/share.html
受注589億2,800万ユーロ、売上390億7,700万ユーロ、特別項目前の利益23億5,500万ユーロ(利益率6.0%)、研究開発費12億1,000万ユーロ事実出典1 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
Transformation of Industryの受注・売上・利益率と、SES(受注452、売上242〔百万ユーロ〕、利益率−21.9%と前年−64.0%)事実出典1 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
SESの売上が会社全体の売上の約0.6%、受注が約0.8%(SES÷会社全体)本稿の計算本稿による割り算。SESの範囲は年次報告書で定義されておらず、電解装置だけの数字ではない
電解装置がTIの製品群に含まれること、SESの範囲が定義されていないこと事実出典1 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
2026年度上半期にTIの売上増の主因がSESの新設機器事業であること事実出典14 https://assets.siemens-energy.com/dam/03cdb4e6-b27a-4272-a911-b4480041e7ca/2026-05-12-Half-year_financial_report-2026-pdf_Original%20file.pdf
Elyzer P-300の技術データ(24スタック/アレイ、17.5MW、335kg/時、効率75.5%超、最小負荷40%、起動1分未満、毎秒10%、約10L/kg、99.999%、80k EOH)事実出典4 https://assets.siemens-energy.com/dam/973beb1b-97e0-4150-9c2e-b29800761a8c/Electrolyzer_Brochure_Hydrogen_PowertoX-pdf_Original%20file.pdf
100MW級参照プラントの仕様(約110MW、30bar、約2,000kg/時、99.9999%、敷地)と運転時間33万時間超事実出典5 https://assets.siemens-energy.com/dam/ea4fa194-2ce8-4645-bdea-b35300798c29/Electrolyzer-Factsheet-Elyzer-plant-100MW-pdf_Original%20file.pdf
参照プロジェクト12件の規模と、パンフレットの段階表示(稼働・実行中)。パンフレットに日付はない事実出典4 https://assets.siemens-energy.com/dam/973beb1b-97e0-4150-9c2e-b29800761a8c/Electrolyzer_Brochure_Hydrogen_PowertoX-pdf_Original%20file.pdf
Normand’Hy(200MW、12台、2026年から年28,000トン)の供給と、Air Liquideの「2026年稼働予定」事実出典8・13 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/press-releases/250,000-tons-less-CO2-thanks-to-renewable-hydrogen.html https://normandhy.airliquide.com/en
Normand’Hyの稼働の確認未確定/将来本稿で確認した資料に記載なし。 https://normandhy.airliquide.com/en
ベルリンの量産ライン(2,000m²、約3,000万ユーロ、2023年生産開始)と、ガスタービン「最大50%水素、2030年までに100%」の記載(2022年)事実出典6 https://assets.siemens-energy.com/dam/cbe1c4b0-a513-4f4e-8dae-b029018587f6/SE-Press-release-Electrolyzers-BLN-20220331-en-v2-pdf_Original%20file.pdf
Air Liquideとの合弁(Siemens Energy 74.9%、Air Liquide 25.1%、当局の承認が条件、2023年後半に生産開始、2025年に3GW)事実出典7 https://www.siemens-energy.com/us/en/home/press-releases/siemens-energy-and-air-liquide-form-joint-venture-european-production-large-scale.html
2023年11月の工場開所(年間1GW、2025年までに少なくとも3GW、PEM、SEGIWA支援、CEOの発言)事実出典9 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/press-releases/siemens-energy-and-air-liquide-pave-the-way-for-the-ramp-up-of-t.html
2026年の製品ページで、ベルリンの生産を需要に応じて増強すると記載し、年次の数字がないこと事実出典3 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/product-offerings/hydrogen-solutions.html
年次報告書の記載:合弁による欧州資金の申請、ガスタービンの水素75%承認と100%の実証、SSE Thermalの「Mission H2 Power」事実出典1 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
SGT-400での水素100%の燃焼実証、中型・大型機の開発、水素の課題(着火エネルギー、火炎速度、輸送インフラ)事実出典10・11 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/solutions-usecase/sustainable-fuels.html https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/product-offerings/gas-turbines.html
Power-to-Xの一括提供(電源・系統接続、制御、サービス)事実出典12 https://www.siemens-energy.com/global/en/home/products-services/solutions-usecase/hydrogen.html
電解装置だけの受注額・売上・利益・出荷量、ベルリン工場の稼働率、合弁の現在の持分と運営未確定/将来本稿で確認した資料に記載なし。推計もしない。 https://assets.siemens-energy.com/dam/30018eed-275d-4e73-811e-b49d004cdc3d/2026-08-05-Earnings_Release_Q3_FY26_EN-pdf_Original%20file.pdf
水素混焼ガスタービンの具体的な受注未確定/将来本稿で確認した資料に記載なし。 https://assets.siemens-energy.com/dam/32b27e9a-af91-4915-8b51-b3af012d0d98/A-Siemens_Energy_Annual_Report_2025-pdf_Original%20file.pdf
水素の4類型の区分(水電解装置を主、水素混焼ガスタービンを従)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
製造側と利用側の両方を持つことを強みと見ているという読み推測本稿の解釈。年次報告書と製品ページの構成からの見通し
拡大は政策と採算次第という読み(増強の記述が年次から需要次第へ変わったこと)推測本稿の解釈。2022〜2023年の発表と2026年の製品ページの比較
合弁の運営が外部から分からないというリスク推測本稿の解釈。合弁相手が顧客でもあるという構造からの見通し
スタックを寿命のある交換部品として扱っているという読み推測本稿の解釈。パンフレットのスタック交換・固定価格・プールの記載から

最終更新:2026年10月/Troy Technical
本稿の数値は、Siemens Energyの年次報告書・決算資料・公式リリース・製品パンフレットとファクトシート、およびAir Liquideの公式サイトに基づきます。調査会社の市場推計は使用していません。製品の性能値はメーカー公称で、規模・条件が異なる値を並べて優劣をつけることはしていません。会社の計画・目標は未確定であり、達成された事実ではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。本稿は水素の取扱いに関する助言ではありません。