COMPANY PROFILE / 水素エネルギー
AGC(エージーシー)
― 塩を電気分解する「フッ素系イオン交換膜」で培った技術を、PEM水電解と燃料電池の膜・電極材料へ広げているガラス・化学メーカー
水素エネルギーの話題でAGCの名前が出るのは、水電解と燃料電池の心臓部であるフッ素系のイオン交換膜・電解質ポリマーを、自社の化学事業で作っているからです。 AGCは、板ガラス・自動車ガラス・電子材料・化学品・ライフサイエンスを持つ総合材料メーカーで、2025年12月期の売上は2兆588億円、従業員は52,896人。水素向けの売上は開示されていません。 水素に関わる中心は、PEM水電解用の膜FORBLUE S-SERIES(北九州に新工場を建設中。投資額は約150億円)と、燃料電池用の電解質ポリマー分散液FORBLUE i-SERIES、 そして塩の電気分解(クロルアルカリ)で水素も副生するFLEMIONです。 本稿は、この会社が水素に何を投じ、どの段階にあるかを、会社の決算資料と公式発表の範囲で整理します。水素の取扱いの助言ではありません。
- 30秒でわかるAGCと、水素エネルギーでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 水素エネルギーの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(水素に関わる範囲を中心に)
- 水素エネルギーにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は水素エネルギーで何を目指しているか
- 水素エネルギー分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるAGCと、水素エネルギーでの立ち位置
証券コード 5201Integrated Report 2026の記載
AGCの水素は、「塩の電気分解の膜」の技術を、水の電気分解の膜に広げた材料事業です。 AGCの化学品部門は、フッ素系のイオン交換膜FLEMIONを使って苛性ソーダ・塩素(と水素)を作る事業を長年運営しており、 2025年の連結売上2兆円超に対し、水素向けの数字は開示されていません 事実。 公式発表で数字として示されているのは、北九州の新工場への投資額(約150億円)と2030年度のS-SERIES売上目標(約300億円)の2つで、 後者は会社の目標であり、実績ではありません 未確定/将来。 本稿の計算では、150億円は2025年12月期の連結設備投資(2,513億円)の約6%にあたります 本稿の計算(範囲の違う数字の比較で、水素への配分を示すものではありません)。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社名は AGC株式会社(AGC Inc.)です。AGC Chemicals Company は同社の化学品カンパニーで、別法人ではありません(2026年1月に組織を再編)。 FLEMION、FORBLUE、SELEMION、sunsep は製品ブランド名です。 ロゴ画像は同社の公式サイト(agc.com)が公開しているものを取得しました。
公式サイト:https://www.agc.com/en/3. 水素エネルギーの世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模(水素に関わる範囲を中心に)
AGCは大企業で、会社全体の詳細は本稿の主題ではありません。会社全体は簡潔に示し、水素に関わる部分は開示されている範囲だけを書きます 事実。
| 指標(連結) | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 注記 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 2兆676億円 | 2兆588億円 | Financial Review 2025(IFRS) |
| 営業利益 | 1,258億円 | 1,275億円 | — |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | -940億円 | 692億円 | 2024年は損失 |
| 化学品部門の売上(セグメント) | 5,936億円 | 5,842億円 | 営業利益は530億円(前年比-6.6%)。PVC価格の下落と製造コストの悪化が要因、フッ素関連品は増加(会社の説明) |
| 化学品部門の研究開発費 | — | 112.71億円 | フッ素、高分子、無機、電気化学の技術で新製品を開発。水素に限った額は非公表 |
| 研究開発費(全社)/設備投資(全社) | 618億円/2,575億円 | 603億円/2,513億円 | 水素に限った額は非公表 |
| 従業員 | 53,687人 | 52,896人 | 連結 |
上の数字は会社全体と部門のものです。水素向けの売上・利益は開示されていません 未確定/将来。 化学品部門は、塩化ビニル樹脂・苛性ソーダなどの基礎化学品(Essential Chemicals)と、フッ素製品などの高機能化学品(Performance Chemicals)からなり、PEM水電解用の膜は後者に関わります(2024年7月の発表は、高機能化学品を戦略事業の1つと位置づけたうえで水素向けの膜に言及)。 AGCのIntegrated Report 2026は、水素エネルギー関連の部材を、技術戦略の7つの重点領域のもとにある21の注力分野の1つとして挙げていますが、売上の数字は示していません。
5. 水素エネルギーにかけているリソース
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 連結で52,896人。水素事業の人員は非公表。化学品カンパニーの研究開発部門が、フッ素化学・高分子化学・無機化学・電気化学を基盤に新製品を開発(Financial Review)。北九州事業所の2023年末の従業員は8人(物流拠点・不動産管理が主な機能)で、新工場の要員は公表されていない | 事実/一部非公表 |
| 金(研究開発) | 化学品部門の研究開発費は112.71億円(2025年12月期)。水素に限った額は非公表 | 事実/一部非公表 |
| 金(設備投資) | 北九州事業所のFORBLUE S-SERIES新工場に約150億円(2024年1月30日の発表)。2024年9月4日に着工。2026年6月の稼働開始が予定。「さらに生産能力を増やした後」に、2030年度のS-SERIES売上約300億円を目指す(会社の目標) | 事実/目標は未確定/将来 |
| 出資・買収・合弁・売却 | 水素向けの出資・買収・合弁・事業売却は、本稿が確認した公式資料に記載なし。2024年のECS PRiME発表の告知は「共同研究と生産設備の投資を今年始めた」と書くが、相手と金額は示していない | 確認できず |
| 大学・研究機関・公的資金 | JAXAが宇宙居住向けの酸素生成システムの試験モデルにS-SERIESを採用(2024年7月)。技術発表は国際学会 ECS PRiME 2024(米国ホノルル、2024年10月8日)。水素向けの政府助成(NEDOのグリーンイノベーション基金など)は、本稿が確認した資料に記載なし | 事実/助成は確認できず |
主要プロジェクトの状況
| 案件 | 場所 | 規模 | 段階(2026年10月5日時点で確認できた範囲) | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| FORBLUE S-SERIES(PEM水電解用の膜)の新工場 | 北九州事業所(北九州市戸畑区) | 投資約150億円。生産能力は非公表 | 2024年1月に建設を決定、2024年9月4日に着工。2026年6月の稼働開始が予定。稼働開始の公式発表は確認できなかった | 出典3・4 |
| FORBLUE i-SERIES(燃料電池用の電解質ポリマー分散液) | — | 非公表 | 販売中。トヨタの第2世代MIRAIの燃料電池の電極材料に採用。2026年5月19日に、水電解の実証システムの電極材料にも採用されたと発表(システムの運営者・場所・規模は発表に記載なし) | 出典6・9 |
| FLEMION(塩の電気分解用の膜) | — | 非公表 | 販売中。塩化ナトリウム・塩化カリウムの電解で、苛性ソーダ/苛性カリ・塩素・水素を作る工場に世界中で使われる(会社の説明)。最新品F-9060 | 出典10・11 |
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1907年 | 創業(旭硝子)。板ガラスの国産化から出発(Integrated Report 2026) | ガラスを起点に、電子・化学へ事業を広げた |
| 1960年代〜1980年代 | タイ(1960年代)、インドネシア(1980年代)で塩の電気分解の工場を稼働。東南アジアの苛性ソーダで首位と説明 | クロルアルカリは水素の副生を伴う事業(AGC Chemicalsのページ) |
| FLEMIONの開発 | フッ素系イオン交換膜によるクロルアルカリ電解法を確立。カルボン酸ポリマーはAGCの発明と会社が説明。40年間にわたり膜の電気抵抗の低減に取り組んだと説明 | 水電解用の膜の技術的な土台 |
| 2017年 | FORBLUE S-SERIESの試験販売を開始(2024年1月の発表) | PEM水電解向けの膜の最初の市場投入 |
| 2022年5月16日 | i-SERIES(燃料電池用の電解質ポリマー分散液)が、燃料電池開発情報センターの産業貢献賞を受ける(2026年5月の発表の参考欄) | 燃料電池向けの実績 |
| 2024年1月30日 | 北九州事業所にFORBLUE S-SERIESの新工場を建設すると発表。投資約150億円、2026年6月稼働予定、2030年度に約300億円の売上を目指す。24年ぶりの北九州での化学事業の再開 | 水素向けの量産体制への最初の大きな投資 |
| 2024年7月25日 | JAXAの酸素生成システムの試験モデルにS-SERIESが採用される。「世界トップレベルの電圧性能」「高いガスバリア性」と会社が説明 | 宇宙という過酷な環境での実績を、地上の水電解に生かす考え |
| 2024年9月4日 | 北九州事業所で新工場の着工式 | 建設段階に入った |
| 2024年10月 | ECS PRiME 2024(ホノルル)でPEM水電解用の膜を発表、欧州の水素展示会 Hydrogen Technology Expo Europe に出展 | 国際市場での訴求 |
| 2025年1月 | 北米の Hydrogen & Fuel Cell Seminar に出展(AGC Chemicalsの告知) | 北米の水素需要への訴求 |
| 2025年11月 | FORBLUE S-SERIESの製品カタログ(2025年11月版)を公開 | 系列と主な仕様の公表 |
| 2026年1月 | 化学品カンパニーを再編。日本の基礎化学品と高機能化学品を統合した「統合ケミカルズ総合事業部」を設置(Integrated Report 2026) | 電気分解(上流)から高機能製品(下流)までの一貫した最適化を狙う |
| 2026年5月19日 | i-SERIESが、PEM水電解の実証システムの電極材料に採用されたと発表 | 水素を「使う」用途(燃料電池)に加え、「作る」用途へ広がった |
7. 今後の計画
次はいずれも、本稿が確認した公式資料に記載がありません 未確定/将来。
北九州の新工場の稼働開始の発表と生産能力/水素向けの売上・数量・利益の実績/S-SERIESの購入先の社名と採用先の電解槽の規模/水電解の実証システムの運営者・場所・規模/ 水素向けの公的助成、共同研究の相手先/S-SERIESの耐久時間・性能値の試験条件(カタログの値は試験データで保証値ではない)。
8. この会社は水素エネルギーで何を目指しているか
会社が直接書いている部分と、本稿が読み取った部分を分けます。推測は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 水素を「作る側」と「使う側」の両方の膜・材料で押さえる | S-SERIES(PEM水電解)とi-SERIES(燃料電池、さらに水電解の電極)。2026年の発表が「水素を使う用途だけでなく、作る用途へ広がった」と説明 | 事実(会社の説明) |
| 塩の電気分解の技術を水の電気分解に展開する | i-SERIESは「クロルアルカリ事業で培ったイオン交換膜の技術に基づく」と説明(2026年5月の発表)。S-SERIESはスルホン酸基を持つフッ素系の膜 | 事実(会社の説明) |
| PEM方式の拡大を前提に量産投資をする | 2024年1月の発表:アルカリ式は負荷が安定した電源に向き、変動しやすい太陽光などにはPEM方式が関心を集めている、と会社が説明 | 事実(会社の見方)/推測(需要の見通しを前提にした投資) |
| 量産体制の安定供給を強みにする | JAXAの発表:新工場の計画が「安定供給の確保」で評価されたと説明 | 事実(会社の説明) |
| 水素は全社の中核ではなく、戦略事業の1つ | 全社の売上2兆円超に対し水素向けは非公表、投資150億円は連結設備投資の約6%、化学品の収益はPVCなど基礎化学品に左右される | 推測 |
「水素は全社の中核ではなく、戦略事業の1つ」という読みの根拠は、数字の釣り合いです。 2025年12月期の連結売上は2兆588億円で、水素向けの売上は開示がありません。会社が示した水素関連の目標は、S-SERIESの2030年度の売上約300億円で、連結売上の約1.5%にあたります 本稿の計算(300億円÷2兆588億円。年度と範囲が違う数字の比較)。 一方、化学品部門の営業利益は530億円で、PVC価格の下落などで前年を下回りました 事実。 これらから、本稿は水素向けの膜を、会社全体の収益を左右する柱ではなく、成長を狙う戦略事業の1つとして育てていると読みます 推測 未確定/将来。
9. 水素エネルギー分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
AGCが水素に出しているのは完成品ではなく、イオン交換膜と電解質ポリマーです。AGC Chemicals Companyの「FORBLUE」シリーズは、さまざまな化学品の分離のための製品群で、水素に関わるのは次の3つです 事実。
| 製品 | 内容(会社の説明) | 水素との関わり | 出典 |
|---|---|---|---|
| FORBLUE S-SERIES | スルホン酸基を持つフッ素系の陽イオン交換膜。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の特殊な繊維で補強し、補強布も含めてすべてフッ素樹脂。系列により、従来の膜より最大37%多いイオン交換基を持つ膜と、陽イオン選択性が非常に高い膜がある | PEM水電解、レドックスフロー電池、電気分解・電気透析 | 出典7・8 |
| FORBLUE i-SERIES | フッ素系の電解質ポリマーを溶媒に分散した液。燃料電池の電解質膜と電極に使う。高い発電性能と長期の安定性が特徴と説明 | 燃料電池(トヨタ第2世代MIRAIの電極)、水電解の電極材料(2026年の実証システム) | 出典6・9 |
| FLEMION | 塩の電気分解(苛性ソーダ/苛性カリ、塩素、水素の製造)用のフッ素系陽イオン交換膜。電気抵抗の低さ、高い電流効率、不純物への強さが特徴と説明 | クロルアルカリ。水素は副生。水電解用ではない | 出典10・11 |
| SELEMION/sunsep | SELEMION:炭化水素系のイオン交換膜(排水の浄化、有価物の回収)。sunsep:パーフルオロ系の中空糸膜(気体の除湿・加湿) | 水素向けとしての記載は確認できず | 出典13 |
FORBLUE S-SERIES の系列(メーカーの試験データ。保証値ではない)
| グレード | 厚さ(µm) | 特徴(会社の説明) | 対イオン | 乾湿 |
|---|---|---|---|---|
| Sx-0935DH | 90 | 非常に低い電圧 | H⁺ | 乾 |
| Sx-1235DH | 140 | 低い電圧 | H⁺ | 乾 |
| Sx-2301DH | 280 | 高い陽イオン選択性 | H⁺ | 乾 |
| S-2301WN | 330 | 高い陽イオン選択性 | Na⁺ | 湿 |
| Sx-1831WN | 360 | 低い電圧 | Na⁺ | 湿 |
上の表は製品ページの一覧で、厚さは乾いた状態(DH)または湿った状態(WN)の値です。2025年11月版のカタログは、このうち3グレードのイオン交換容量(Sx-2301DHとS-2301WNは1.0 meq/g、Sx-1831WNは1.25 meq/g)と、高分子の含水率(35〜100 wt%、H⁺型にして100 ℃の水に1時間浸した後)を載せています。 AGCは2024年の発表で、この系列の特徴として「世界トップレベルの電圧性能」と「高いガスバリア性」を挙げますが、数値と試験条件は示していません。 FLEMIONの最新品F-9060については、「旧品F-9010より電圧が40 mV低い」と、AGCの実験室の電解槽(6 kA/m²)で測った値が示されています(メーカー公称、塩の電気分解の条件)。 これらの値は、異なる条件や他社製品と並べて優劣をつけるものではありません。
製品表から、膜の設計の選びどころが読み取れます。 最も薄いSx-0935DH(90 µm)は「非常に低い電圧」、厚いSx-2301DH(280 µm)は「高い陽イオン選択性」と書かれています 事実。 薄いほど電気抵抗が下がって電力を節約しやすく、厚いほど気体や不要なイオンを通しにくい、という一般的な設計の綱引きに沿っています(本シリーズの技術解説「PEM水電解」「水電解スタックと材料」を参照)。 S-SERIESは、PTFE繊維で補強して強度を確保しつつ、補強布を含めた全材料をフッ素樹脂にして耐薬品性を高めた、と説明されています。 また、乾いた状態で扱う膜(DH)と、常に液に触れる使い方に勧める湿った状態の膜(WN)があり、対イオンは前処理で入れ替えられる、とカタログは書きます。 一方、同じ全フッ素の骨格は、PFASをめぐる規制の議論の対象にもなります。AGCのIntegrated Report 2026は、フッ素製品に対する各国・地域の規制が厳しくなる傾向を、化学品のリスクとして挙げています 事実(本シリーズの技術解説「フッ素樹脂とPFAS」を参照)。 実際の電解槽での耐久時間や、厚さと運転条件の組み合わせの実績は、AGCの公開資料に見当たりません 未確定/将来。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 新工場の稼働が確認できない | 北九州の新工場は2026年6月の稼働開始が予定だったが、本稿の確認範囲に稼働開始の公式発表はない。生産能力も非公表 | 未確定/将来 |
| PEM方式の拡大が前提 | 量産投資の前提に、アルカリ式より変動電源に向くPEM方式への関心の高まりを置く(会社の見方)。水素の需要や方式の選択が想定と違えば、売上目標(2030年度に約300億円)に影響する | 事実(会社の見方)/推測(影響) |
| 水素向けの収益が見えない | 水素向けの売上・利益は非公表。化学品部門の営業利益は2025年に前年比-6.6%(530億円)。高機能化学品の需要は「想定外に停滞し、製品の動きが非常に遅い」とIntegrated Report 2026が記す | 事実 |
| フッ素製品の規制 | Integrated Report 2026が、化学品の事業環境のリスクに「フッ素製品への規制が各国・地域で厳しくなる傾向」を挙げる。PFASの規制の個別の内容と、水電解・燃料電池用の膜への適用は、本稿では確認できなかった | 事実/未確定/将来 |
| 性能値の検証 | S-SERIESの値は「試験データで保証値ではない」と明記。電圧性能・ガスバリア性は数値と条件の公表がない | 事実 |
| 競合 | 競合他社の名前と比較は、AGCの公開資料に書かれていない | 事実 |
| 電源の脱炭素 | 基礎化学品(クロルアルカリ)の電気分解は電力を多く使い、電力の脱炭素の動向がリスクと説明。水素向けの膜とは別の事業だが、同じ化学品部門の収益に影響する | 事実 |
12. 用語集
- イオン交換膜
- 特定のイオンだけを通す膜。陽イオン交換膜はH⁺やNa⁺などを通し、気体や陰イオンを通しにくい。
- PEM水電解
- プロトン交換膜(固体高分子膜)で水を電気分解する方式。AGCは、変動しやすい電源に向くと説明。
- クロルアルカリ
- 食塩水を電気分解して塩素と苛性ソーダ(と水素)をつくる産業。FLEMIONの用途。
- 電解質ポリマー分散液
- イオンを通す高分子を溶媒に分散した液。燃料電池・水電解の電極や膜の材料になる。
- イオン交換容量
- ポリマー1gあたりのイオン交換基の量(meq/g)。大きいほどイオンを通しやすい傾向。
- ガスバリア性
- 気体を通しにくい性質。水電解では、水素と酸素が膜を通って混ざるのを防ぐ。
- 戦略事業
- AGCが2016年に、既存の中核事業と区別して定めた成長分野の事業。高機能化学品を含む。
- PFAS
- 有機フッ素化合物の総称。定義は法域で異なる。本稿では規制の個別内容を確認していない。

13. 出典
- AGC Financial Review 2025(2025年12月期、IFRS)。連結の業績、セグメント、研究開発費、設備投資、従業員数、気候変動のシナリオ分析。 https://www.agc.com/en/ir/library/financial/pdf/financial2025e.pdf
- AGC AGC Report(統合報告書)2026。沿革、化学品の事業概要、技術戦略、リスク、会社概要。 https://www.agc.com/en/company/agc_report/pdf/agc_report_en_2026.pdf
- AGC ニュースリリース「AGC to Build New Facility in Kitakyushu City for FORBLUE S-SERIES...」(2024年1月30日)。投資額約150億円、2026年6月稼働予定、2030年度の売上目標。 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240130e.pdf
- AGC Chemicals Company ニュース「AGC Held the Groundbreaking Ceremony for the New Facility of FORBLUE S-SERIES」(2024年9月4日)。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/news/20240904.html
- AGC ニュースリリース「AGC's Water Electrolysis Ion-Exchange Membrane FORBLUE S-SERIES Adopted for JAXA's Test Model of Oxygen Generation System」(2024年7月25日)。 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240725e.pdf
- AGC ニュース「AGC's FORBLUE i-SERIES Fluorinated Electrolyte Polymer Dispersion Adopted as Electrode Material for PEM Water Electrolysis Demonstration System」(2026年5月19日)。 https://www.agc.com/en/news/detail/1211355_2814.html
- AGC Chemicals Company 製品ページ「FORBLUE S-SERIES」。系列の特徴、厚さ・用途の表。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F027
- AGC Chemicals Company 製品カタログ「FORBLUE S-SERIES」(2025年11月版)。系列、厚さ、イオン交換容量。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/products/pdf/S-series_EN.pdf
- AGC Chemicals Company 製品ページ「FORBLUE i-SERIES」。燃料電池用の電解質ポリマー分散液。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F032
- AGC Chemicals Company 製品ページ「FORBLUE FLEMION」。塩の電気分解用の膜、最新品の電圧の比較。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F020
- AGC Chemicals Company 「Chlor & Alkali Business」ページ。クロルアルカリ事業とFLEMIONの位置づけ。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/company/chemical_chain/chloralkali/index.html
- AGC Chemicals Company ニュース「AGC's ion exchange membranes for PEM water electrolysis will be presented at ECS PRiME 2024」(2024年9月30日)。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/news/20240930.html
- AGC Chemicals Company 「FORBLUE Family」ページ。FLEMION、S-SERIES、i-SERIES、SELEMION、sunsepの位置づけ。 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/forblue/
- AGC 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.agc.com/en/
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| AGC株式会社(AGC Inc.)、東京の丸の内、東京証券取引所(5201)、創業1907年 | 事実 | 出典2 https://www.agc.com/en/company/agc_report/pdf/agc_report_en_2026.pdf 出典8 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/products/pdf/S-series_EN.pdf 出典14 https://www.agc.com/en/ |
| 2025年12月期の連結売上2兆588億円(前年2兆676億円)、営業利益1,275億円、親会社帰属の当期利益692億円(前年は-940億円) | 事実 | 出典1 https://www.agc.com/en/ir/library/financial/pdf/financial2025e.pdf |
| 化学品部門の売上5,842億円、営業利益530億円(前年比-6.6%)、研究開発費112.71億円 | 事実 | 出典1 https://www.agc.com/en/ir/library/financial/pdf/financial2025e.pdf |
| 連結の研究開発費603億円、設備投資2,513億円、従業員52,896人 | 事実 | 出典1 https://www.agc.com/en/ir/library/financial/pdf/financial2025e.pdf |
| 北九州の投資150億円が連結設備投資の約6%、S-SERIESの2030年度の目標300億円が連結売上の約1.5% | 本稿の計算 | 本稿の割り算(出典1・3の値から)。範囲の違う数字の比較。 出典1 https://www.agc.com/en/ir/library/financial/pdf/financial2025e.pdf 出典3 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240130e.pdf |
| 水素向けの売上・利益・数量・人員・研究開発費 | 未確定/将来 | 本稿の確認範囲に記載を確認できず。本稿では推計しない。 |
| 北九州事業所のFORBLUE S-SERIES新工場:約150億円、2026年6月稼働予定、2030年度に約300億円の売上を目指す、2017年に試験販売開始 | 事実 | 出典3 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240130e.pdf |
| 新工場の着工式(2024年9月4日)、24年ぶりの北九州での化学事業の再開 | 事実 | 出典4 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/news/20240904.html 出典3 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240130e.pdf |
| 新工場の稼働開始の公式発表と生産能力 | 未確定/将来 | 本稿の確認範囲に記載を確認できず。稼働したとも、していないとも断定しない。 |
| JAXAの酸素生成システムの試験モデルにS-SERIESが採用(2024年7月25日)、世界トップレベルの電圧性能・高いガスバリア性(数値は非公表) | 事実 | 出典5 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240725e.pdf |
| i-SERIES:トヨタの第2世代MIRAIの燃料電池の電極材料に採用、2026年5月19日に水電解の実証システムの電極材料に採用 | 事実 | 出典6 https://www.agc.com/en/news/detail/1211355_2814.html 出典9 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F032 |
| 実証システムの運営者・場所・規模 | 未確定/将来 | 出典6に記載なし(発表の写真の提供元がトヨタであることのみ記載)。本稿では推定しない。 出典6 https://www.agc.com/en/news/detail/1211355_2814.html |
| FORBLUE S-SERIES:スルホン酸基を持つフッ素系陽イオン交換膜、PTFE繊維で補強、最大37%多いイオン交換基、PEM水電解などの用途 | 事実 | 出典7 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F027 出典8 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/products/pdf/S-series_EN.pdf |
| S-SERIESの系列(Sx-0935DH 90µm、Sx-1235DH 140µm、Sx-2301DH 280µm、S-2301WN 330µm、Sx-1831WN 360µm)、イオン交換容量、含水率(試験データで保証値ではない) | 事実 | 出典7 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F027 出典8 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/products/pdf/S-series_EN.pdf |
| FLEMION:クロルアルカリ用、水素は副生、最新品F-9060は旧品F-9010より電圧が40 mV低い(AGCの実験室の電解槽、6 kA/m²) | 事実 | 出典10 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/detail/index.html?pCode=JP-EN-F020 出典11 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/company/chemical_chain/chloralkali/index.html |
| 東南アジアの苛性ソーダの首位、タイ(1960年代)・インドネシア(1980年代)の電解工場 | 事実 | 出典11 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/company/chemical_chain/chloralkali/index.html |
| SELEMION・sunsepの位置づけ(水素向けの記載は確認できず) | 事実 | 出典13 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/products/forblue/ |
| ECS PRiME 2024での発表(S-0935DH、次世代の膜、共同研究と生産設備の投資の開始)、水素の展示会への出展 | 事実 | 出典12 https://www.agc-chemicals.com/jp/en/fluorine/news/20240930.html |
| 水素向けの出資・買収・合弁・売却、公的助成、共同研究の相手先 | 未確定/将来 | 本稿の確認範囲に記載を確認できず。存在しないとも断定しない。 |
| アルカリ式は負荷が安定した電源に向き、変動しやすい電源にはPEM方式が関心を集めているという会社の見方 | 事実 | 出典3 https://www.agc.com/en/news/pdf/20240130e.pdf |
| Integrated Report 2026:水素エネルギー関連の部材が技術戦略の注力分野の1つ、フッ素製品への規制の強化傾向をリスクとして記載、高機能化学品の需要の停滞 | 事実 | 出典2 https://www.agc.com/en/company/agc_report/pdf/agc_report_en_2026.pdf |
| 2026年1月の化学品カンパニーの再編(統合ケミカルズ総合事業部の設置) | 事実 | 出典2 https://www.agc.com/en/company/agc_report/pdf/agc_report_en_2026.pdf |
| 水素を「作る側」と「使う側」の両方の膜・材料で押さえるという記述(2026年の発表の説明) | 事実 | 出典6 https://www.agc.com/en/news/detail/1211355_2814.html |
| 塩の電気分解の技術を水の電気分解に展開するという読み | 推測 | 出典6・7・10の記述からの本稿の解釈(i-SERIESは出典6が「クロルアルカリ事業で培った技術に基づく」と説明)。 |
| PEM方式の拡大を前提に量産投資をしているという読み、投資の影響の読み | 推測 | 出典3の記述からの本稿の解釈。 |
| 水素は全社の中核ではなく戦略事業の1つという読み | 推測 | 出典1・3の数字からの本稿の解釈。 |
| 素材の観点(膜の厚さの綱引き、乾湿グレード)の読み | 推測 | 出典7・8の記述からの本稿の解釈。 |
| AGCの類型(材料・部品)と図1の区分 | 本稿の計算 | 本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示。 |
最終更新:2026年10月5日/Troy Technical
本稿の数値は、AGCの決算資料(Financial Review 2025)、AGC Report(統合報告書)2026、公式ニュースリリース、AGC Chemicals Companyの製品ページ・カタログに基づきます。調査会社の市場推計や報道ベースの数値は使用していません。製品の性能値は、メーカーの試験データ(保証値ではない)であり、他社製品との優劣を示すものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。会社の計画・目標(稼働時期、売上目標など)は未確定の将来の見通しです。本稿は水素の取扱い・運用の助言ではなく、取扱いは法令・規格の対象です。